JP3687643B2 - 永久磁石回転子の製造方法 - Google Patents

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Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータヨークの磁極の全磁極又は1つおきの基部に界磁用永久磁石を挿入するようにした永久磁石回転子の製造方法に関する。
【従来の技術】
一般に、コンプレッサにおいて、冷媒とオイルが流通する密閉容器の内部に、駆動モータと圧縮装置とを直列的に配置し、前記駆動モータの回転子に界磁用永久磁石が挿着されている技術が知られている。
図9は、従来の冷凍サイクル用コンプレッサの縦断面を示している。全体を符号500で示す冷凍サイクル用コンプレッサは、冷媒が流通する密閉容器510を有している。この容器510の内部には、圧縮装置(図示を省略)と駆動モータ520とが上下直列に配置されている。
駆動モータ520は、回転子700、固定子600及び回転軸710とから構成されている。前記固定子600は、固定子鉄心610と励磁用コイル620とから構成される。前記回転子700は、ロータヨーク720、界磁用永久磁石730、スペーサ740及びバランスウエイト750を有している。ロータヨーク720は、多数のけい素鋼板760を積層することによって形成されている。ロータヨーク720の外周には磁極770が設けられており、この磁極770の基部には、界磁用永久磁石730を挿入するスロット780が設けられている。
界磁用永久磁石730はスロット780に収容可能な大きさに形成されており、界磁用永久磁石の表面には一般に表面処理が施されていないものである。
冷凍サイクル用コンプレッサの組立に際しては、予め密閉容器510に設置された回転軸710に、ロータヨーク720が焼き嵌め挿入される。すなわち、ロータヨーク720を約450℃に加熱して、中心の回転軸孔を膨張させて若干大径となし、熱いまま回転軸710に挿入する。その後ロータヨーク720が冷却すると、膨張していた回転軸孔が収縮し、当該貫通孔が回転軸710を緊締保持することとなる。尚、コンプレッサ使用時には、コンプレッサ自体の温度が上昇して、約130℃に達するが、この場合は回転軸710も同時に膨張するので、回転軸710に対するロータヨーク720の保持が減じられることはない。
そして、界磁用永久磁石730がロータヨーク720に挿入される。すなわち、ロータヨーク710の冷却後に、防錆紙に包まれた無着磁で表面処理のされていない界磁用永久磁石730がスロット780の内部に挿入される。更に、界磁用永久磁石730の挿入後、界磁用永久磁石の軸方向の固定として、非磁性のスペーサ740がロータヨーク720の端部まで圧入され、次いで、圧縮装置の動バランスをとる磁性のバランスウエイト750が、スペーサ740端部近傍まで圧入される。図中矢印Qは界磁用永久磁石730の挿入方向を示している。
前記各部品が挿着された後、密閉容器510の蓋(図示を省略)が閉められ、そして、励磁用コイル620に高電流を流し、回転軸710をロックして界磁用永久磁石730が着磁され、その後、密閉容器510の内部に温風を吹きかけて乾燥させ、内部水分を蒸発させるものである。
前述した従来技術によると、表面処理のされていない界磁用永久磁石をロータヨークのスロットに挿入するものであるため、界磁用永久磁石を組込むまでのサビの発生防止の管理が以外と大変であり、また、スロット挿着後も、冷媒とオイルが加圧され流通する圧力容器中でモータが作動するので、界磁用永久磁石の素材の内部まで冷媒及びオイルが浸透して、磁石が溶解される問題があった。そこで、近時は、コンプレッサに使われる界磁用永久磁石に表面処理のなされるものが知られている。この場合の表面処理は、磁石単品の対向する2面を針状の固定電極で挟み、これに電流を流して、メッキ槽に浸漬してニッケルメッキが施されるが、磁石素材表面の固定電極が接した部分にはメッキがつかないため、磁石素材が露出する。
このような電気ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石をロータヨークのスロットに挿入する場合は、電極跡から錆が発生することを防止するため、電極跡に補修材を塗布する必要があり(電極跡に補修材を塗布したものを、以下、電極跡つきニッケルメッキとも称する。)、更に、このような補修を行っても、補修材が冷媒又はオイルに解ける問題があった。加えて、焼き嵌め及び温風乾燥の高温に対して、補修材とメッキとの膨張係数の違いにより、補修材の剥がれが生じ易く、また、材質の違いにより耐熱強度の低下もあって、補修部を含めた磁石の寸法管理も大変であった。
更に、電極跡つきニッケルメッキは、固定電極のため、メッキ電流が界磁用永久磁石の端部に集中して、一般に端部が中央部より厚くなる傾向(20μm〜50μm増)があり、従って寸法管理が難しいと同時に、メッキ膜が厚くなると、膜中の残留応力が増大するため、密着力も低下する不都合があった。
【発明が解決しようとする課題】
他方、前述した電気メッキを施した界磁用永久磁石を用いるのでなく、無電解メッキを施した界磁用永久磁石をロータヨークに挿入するものも存在する。この場合は、無電解メッキを施した界磁用永久磁石の熱処理を別途に行い、ロータヨークを回転軸に焼き嵌め挿入した後に、熱処理後の界磁用永久磁石をロータヨークのスロットに挿着している。このような無電解メッキを施した界磁用永久磁石を用いる場合は、無電解メッキを施した界磁用永久磁石の熱処理、ロータヨークの回転軸への焼き嵌め挿入、及び、その後の界磁用永久磁石のロータヨークのスロットへの挿着、という3つの工程を採っているため、工程時間が長くなるとともに、磁石の固定が難しいという問題がある。
本発明は、無電解メッキを施した界磁用永久磁石が、ロータヨークのスロットに挿着されている永久磁石回転子の製造方法を改良して、工程の簡易化及び製造時間の短縮化を図り得る永久磁石回転子の製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、回転子のヨークは多数の鋼板を積層して形成され、外周上に2n倍(nは正整数)の磁極を有し、回転軸孔からほぼ等しい距離の全磁極又は1つおきの基部にスロットを備え、このスロットには、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石を挿入してなる永久磁石回転子の製造方法において、
前記ニッケルメッキの熱処理を、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石をロータヨークの前記スロットに挿着した後に行う永久磁石回転子の製造方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、前記熱処理温度が、350〜400℃である永久磁石回転子の製造方法である。
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して説明する。
図1は、永久磁石回転子を示す分解図である。この永久磁石回転子1は、柱状に積層されたロータヨーク2と、二対の板状の界磁用永久磁石3(3a,3b,3c,3d)とを有している。前記ロータヨーク2は、多数のけい素鋼板4を金型で抜きかつ一体に積層して形成されている。ロータヨーク2は、外周面に放射方向に突出した4つの磁極5(5a,5b,5c,5d)を有している。これら磁極の基部には、界磁用永久磁石を挿着させるスロット6(6a,6b,6c,6d)が設けられている。更に、ロータヨーク2の中心部には、回転軸を貫通させる回転軸孔が設けられている。また、スロットと回転軸孔との最短距離の間に、界磁用永久磁石の軸方向の固定用リベット貫通孔13aが設けられている。
界磁用永久磁石3a,3b,3c,3dは、図2の(a)に示すように、断面矩形の6面体に形成され、界磁用永久磁石の表面には、電気ニッケルメッキM1を施している。この電気ニッケルメッキM1は、後述するメッキ手段によりメッキが施される。
更に、界磁用永久磁石3をスロット6に挿入し、当該界磁用永久磁石の軸方向の固定として、非磁性のスペーサsをロータヨーク2の両端に設置させ、圧縮装置の動バランスをとるバランスウエイト11を被せ、最後にロータヨーク2、スペーサs及びバランスウエイト11をまとめてリベット13で全体をかしめて固定する。これにより、本実施例の永久磁石回転子1が組み立てられる。
本例において、前記電気ニッケルメッキは、メッキの皮膜厚が、図2の(b)に示す界磁用永久磁石3の中央部3Aと、図2の(c)に示す端部3Bとでほぼ均一で、且つ、電極跡がない電気メッキである。
このような電気ニッケルメッキM1は、例えば図3に示すようにしてメッキが施される。すなわち、溶液802を充填した容器801内に、その上面が傾斜面804をなす治具803を設置し、この治具803の近傍に一対の球状の電極805,805を配置してメッキ装置800を構成する。磁石3は、前記傾斜面804にセットされて斜下方に送られると、溶液802内で磁石3が電極805,805に挟持されるとともに、当該電極が回転して、磁石3は更に下方に送られる。電極805,805は回転するもその位置を保持し、この電極805,805にメッキ電源が導通されて磁石3に電気ニッケルメッキがなされる。このとき、磁石3の電極位置が変るので、磁石3の表面に万遍なくニッケルメッキを施すことができる。更に、電極が球状であるため、磁石に対して点接触となり、メッキ厚みにバラツキを生じることが少なくなる。
発明者等の実験によれば、前述したように電極を移動させて電気ニッケルメッキを行うことにより、界磁用永久磁石3の中央部3Aと端部3Bとがほぼ均一で且つ、電極跡のない電気メッキが得られることを確認している。とりわけ、鋭角の角部を保持している界磁用永久磁石において、角部が丸くならずに、均一に磁石素材の形状に沿ってメッキを施すことができた。尚、本実施例でニッケルメッキとしているのは、これにより高い硬度のメッキ層を得ることができ、摩耗しにくく疵の付きにくい表面となるからである。もっとも、本発明はニッケルメッキに限られるものでないことは勿論である。
本例において、メッキ層は、図4に示すように、5〜20μmが好ましい。更に、特に好ましいのは5〜10μmである。図4において、横軸は磁石の長手方向の間隔であって、tが端部、t/2が中央部であり、また、縦軸は、メッキ層の厚みを示している。
界磁用永久磁石に施されるメッキ層は、薄いほどよい。これは、メッキ層が厚くなると、界磁用永久磁石とけい素鋼板との間のギャップが大きくなって磁束の効率が悪くなるし、熱膨張や熱応力によりメッキ層の割れや剥れを生じてしまう。この点、メッキ層の薄い方が受ける熱応力が少なくてすみ、歪を小さくすることができるので、薄い方がよい。しかし、5μm未満であると、振動に対する強度が不足し、例えばコンプレッサに用いられるモータの場合は、コンプレッサの運転範囲(−20〜130℃)でメッキ層が剥がれてしまう不都合を生じる。他方、20μmを超えると、熱膨張や熱応力によりメッキ層の割れや剥れを生じることが判明している。従って、前述したように、メッキ層は、5〜20μmが好ましい。とりわけ、メッキ層を5〜10μmとした場合は、磁石をコンプレッサ組み込み後に強制冷却しても、メッキ層の割れは生じない。強制冷却しないときは、5〜20μmでよい。
図5は、他の電気メッキ装置を示す図で、この例の場合は、溶液802を充填した容器801内に、ローラ状の治具803,803を設置し、この治具803に沿って横方向に移動可能な一対のロール状の電極805,805を配置してメッキ装置800を構成する。電極805,805はスライダ806に支持杆807を介して横方向に移動可能に設けられている。磁石3は、溶液802内に浸漬され且つ前記治具803,803に載置されて、電極805,805に挟持される。この例では、電極805,805が回転して横方向に移動し、磁石3に電気ニッケルメッキがなされる。この例でも磁石3の電極位置が変るので、磁石3の表面に万遍なくニッケルメッキを施すことができる。また、ローラ状の治具803,803は、これが磁石3を載置する際に始終同じ位置で当接するとメッキのなされない箇所を生じるので、ローラ状の治具803,803は若干の正逆回動するようになされている。これにより、磁石3は左右方向に揺動し、前記電極805,805の磁石に対する電極位置が変ることにより、磁石3の表面にニッケルメッキがほぼ均一で、且つ、電極跡が付かずに施されることとなる。
図6は、更に他の電気メッキ装置を示す図で、この例の場合は、溶液802を充填した容器801内に、上下方向に移動可能な複数の電極805,805を設けた治具803を設置し、他方、横方向に移動可能な支持杆807の下部に、電極805が突設されてメッキ装置800を構成する。磁石3は、溶液802内に浸漬され且つ前記治具803,803に載置され、この例では、治具803に設けられた電極805が磁石3の大きい表面積を有する面3Eに当接し、また、支持杆807に設けられた電極805は磁石3の小さい表面積を有する面3Dに当接するようにして、各電極805,805のいずれかが磁石と導通することにより、磁石3に電気ニッケルメッキがなされる。つまりこの例では、適宜択一的に電極と磁石との接触・導通が図られることにより、磁石3の電極位置が変るので、磁石3の表面に万遍なくニッケルメッキを施すことができるようになされている。
このように、磁石と電極が相対的に移動するので、電気メッキの際、磁石に対する電流の集中がなくなって電極跡を生じない表面処理がなされ、中央部及び端部に均一にメッキを施すことができる。更に、電極が移動する構成のため、鋭角の角部を備えている界磁用永久磁石に対しても、当該角部が丸くならずに均一に、磁石素材の形状に沿って、メッキ層を形成することができるものである。
従って、従来の電気メッキによると、電極補修部が前後端面にある場合は、ロータヨーク2と磁石の軸方向の長さを同一に設定することができなかったし、また、電極補修部が磁石の大きい表面積を有する面3Eにある場合は、界磁用永久磁石とけい素鋼板との間のギャップを大きくしなければならず従って磁束の効率が悪くなる不都合があったのに対し、上述した手段によれば、界磁用永久磁石3に従来のような電極補修部の突出部がないため、このような不都合を回避することができ、その結果、寸法管理を簡単に行えるようになった。
次に、組み立てられた永久磁石回転子1は、界磁用永久磁石3のキューリー点から、メッキの性能維持温度又は界磁用永久磁石の素材の性能維持温度のどちらか低い温度の間で、数分以内、加熱がなされる。周知のように、磁石等の強磁性体は、それ自身自発磁気を有し、この自発磁気が外部磁界の印加により整列され、外部に磁気を顕すものであるが、この自発磁気の消滅する温度をキューリー点という。
本例では、界磁用永久磁石の前記キューリー点の温度以上であって、界磁用永久磁石の素材の性能維持温度未満の温度の間で永久磁石回転子1を数分加熱した後、後述するように、この回転子1を冷凍サイクル用コンプレッサの回転軸に挿着する。
以上説明した方法によれば、電気メッキの際、磁石に対する電流の集中がなくなって電極跡を生じない表面処理がなされ、中央部及び端部に均一にメッキを施すことができる。更に、電極が移動する構成のため、鋭角の角部を備えている界磁用永久磁石に対しても、当該角部が丸くならずに均一に、磁石素材の形状に沿って、メッキ層を形成することができる。特に角部3Cはメッキ自身の強度で保持されるため、界磁用永久磁石自身の素材強度の必要性が少なくなった。また、電気ニッケルメッキM1の厚みは、界磁用永久磁石のほぼ中央部3Aにおいて、5μm以上20μm以下の厚みとなし、界磁用永久磁石3をロータヨーク2に挿入後、界磁用永久磁石のキューリー点より高い温度で焼き嵌めすることにより、わずかに着磁された磁石が混入していても、高い温度で消磁される。更に高温をかけることにより、メッキと界磁用永久磁石との境界面の結合力が向上することも本発明者等が新しく得た知見である。また、回転軸に回転子を挿入する場合、5μm以上20μm以下の厚みは、界磁用永久磁石とメッキとの膨張係数の違いによる歪みや割れが発生しにくい最低メッキ厚みであると同時に、ロータヨーク2のスロットに挿入後、振動によるメッキの剥がれが阻止できることも判明した。特に好ましいのは、5〜10μmの厚みとすることであり、前述したように、強制冷却でメッキ割れを生じないものである。更に、電気メッキの材質がニッケルメッキであるため、磁石の素材より硬く、且つ軟磁性の性質を有するので、ロータヨークに挿入前後においてキズが付きにくく耐久性能も向上するものである。また、組み込み後において、仮にメッキが剥がれても、メッキは磁性体であるため、吸着されて磁石素材表面から飛散することがない。更に、本実施例のようにロータヨークのスロットに界磁用永久磁石を挿入する回転子においては、磁性体の電気メッキであるため、スロットと界磁用永久磁石との磁気ギャプを少なく設定できることも大きな利点である。
また、界磁用永久磁石に希土類磁石を用いる場合は、次の実施例が参考になる。すなわち、ロータヨークのスロットに希土類の界磁用永久磁石を挿入した後、界磁用永久磁石の前記キューリー点の温度以上であって、界磁用永久磁石の素材の性能維持温度未満の温度の間で永久磁石回転子1を数分加熱した後、この回転子1を回転軸に挿着し、その後、着磁して、予備乾燥温度(170℃前後)に入る。この点、従来において、界磁用永久磁石は、モータ使用時に温度上昇して初期減磁することが知られている。ところが、希土類磁石の場合は、前記ロータヨークの回転軸への所謂焼き嵌めの際に自発磁気の消滅(減磁)がなされ、そして、その後の着磁そして予備乾燥というプロセスを経ると、将来モータが使用されて予備乾燥温度内に晒されても、前述した初期減磁という事態を回避できることが判明している。
ところで、ニッケルメッキは、前述した電気メッキのほか、無電解メッキも知られている。そして、従来においては、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石がロータヨークのスロットに挿着されるものも用いられている。この場合は、ニッケルメッキを施した界磁用永久磁石をロータヨークに挿着する前に、ニッケルメッキの熱処理を行っている。
すなわち、ニッケルメッキを行った状態のメッキ皮膜は、非晶質で非磁性であり、熱処理を施すことにより、250℃付近から徐々に結晶化し、NiのほかにNi3−Pの共晶体が生じ、磁性も出てくる。また、図7に示すように、400℃をピークにして硬度も得られる。もっとも、更に高い温度では、一旦微細化した結晶粒が大きくなり硬度も低下する。
従って、従来は、無電解メッキを施した界磁用永久磁石を用いる場合は、無電解メッキを施した界磁用永久磁石の熱処理、ロータヨークの回転軸への焼き嵌め挿入及び、その後の界磁用永久磁石のロータヨークのスロットへの挿着という3つの工程を採っているため、工程時間が長くなるとともに、磁石の固定が難しいという問題があった。
本発明者等は、前記図7におけるピーク硬度が350〜400℃、とりわけ400℃で得られることと、回転軸にロータヨークが焼き嵌め挿入されるときの温度が350〜400℃であることとの間で、350〜400℃が共通することに着想を得て、前記ロータヨークの回転軸への焼き嵌め挿入の際に、併せてニッケルメッキの熱処理を同時に行うことを提案するものである。このように、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石をロータヨークに挿入した後、前記ロータヨークを、ニッケルメッキの熱処理温度とほぼ同一の温度(約400℃内外)を加えることにより、今まで別工程で行われていたニッケルメッキの熱処理と、焼き嵌め工程とを、同時に行うことを可能としたものである。ニッケルメッキの熱処理と、焼き嵌め工程の一体化により、工程の簡易化及び時間の短縮化が図れるものである。また、本実施例によると、メッキの割れが少なくなったことを確認している。
図8は、コンプレッサにロータヨークを挿入する断面図を示している。
全体を符号200で示す冷凍サイクル用コンプレッサは、冷媒が流通する密閉容器210を有している。この容器210の内部には、圧縮装置(図示を省略)と駆動モータ220とが上下直列に配置されている。
駆動モータ220は、回転子400、固定子300及び回転軸230とから構成され、前記固定子300は、固定子鉄芯310と励磁用コイル320とから構成されている。前記回転子400は、ロータヨーク、界磁用永久磁石、スペーサs及びバランスウエイト11を一体にしてリベット13でカシメている。
冷凍サイクル用コンプレッサの組み立てに際しては、密閉容器210に設置された回転軸230に、前述したように、回転子を界磁用永久磁石のキューリー温度以上で、界磁用永久磁石の素材の性能維持温度(電気ニッケルメッキの場合)又はメッキの性能維持温度(無電解ニッケルメッキの場合)のどちらか低い温度の間で数分以内で加熱し、爾後、回転子400を回転軸230に矢印Qの方向に挿入し、その後、冷却される。
更に、密閉容器210の蓋(図示を省略)が閉められ、回転軸230を機械的に固定し、励磁コイル320に高電流を流し、これにより界磁用永久磁石が着磁され、その後、密閉容器210の内部に温風を吹きかけて乾燥させ、内部水分を蒸発させる。
上記構成により、ロータの組み立て(界磁用永久磁石のロータヨーク組み込み)と、ロータのコンプレッサの回転軸への組み込みが個別に生産できるようになった。その結果、工程の簡易化及び時間の短縮化が図れる。
【発明の効果】
本発明は以上説明したように、回転子のヨークは多数の鋼板を積層して形成され、外周上に2n倍(nは正整数)の磁極を有し、回転軸孔からほぼ等しい距離の全磁極又は1つおきの基部にスロットを備え、このスロットには、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石を挿入してなる永久磁石回転子の製造方法において、前記ニッケルメッキの熱処理を、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石をロータヨークの前記スロットに挿着した後に行う永久磁石回転子の製造方法であり、これにより、工程の簡易化及び製造時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 永久磁石回転子を分解して示す斜視図である。
【図2】 界磁用永久磁石を示す図で、(a)はその斜視図、(b)はその中央部の断面図、(c)はその端部の断面図である。
【図3】 電気メッキ装置を示す概念構成図である。
【図4】 磁石に施されるメッキ層の厚みを示す図である。
【図5】 電気メッキ装置を示す概念構成図である。
【図6】 電気メッキ装置を示す概念構成図である。
【図7】 無電解ニッケルメッキの熱処理温度とビッカース硬さとの関係を示す図である。
【図8】 コンプレッサに永久磁石回転子のロータヨークを挿入する断面図である。
【図9】 従来の冷凍サイクル用コンプレッサを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 永久磁石回転子
2 ロータヨーク
3 界磁用永久磁石
3A 界磁用永久磁石の中央部
3B 界磁用永久磁石の端部
4 けい素鋼板
5 磁極
6 スロット
M1 電気ニッケルメッキ

Claims (2)

  1. 回転子のヨークは多数の鋼板を積層して形成され、外周上に2n倍(nは正整数)の磁極を有し、回転軸孔からほぼ等しい距離の全磁極又は1つおきの基部にスロットを備え、このスロットには、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石を挿入してなる永久磁石回転子の製造方法において、
    前記ニッケルメッキの熱処理を、無電解ニッケルメッキが施された界磁用永久磁石をロータヨークの前記スロットに挿着した後に行うことを特徴とする永久磁石回転子の製造方法。
  2. 前記熱処理温度が、350〜400℃であることを特徴とする請求項1記載の永久磁石回転子の製造方法。
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