JP3685896B2 - ポリエステル樹脂の乾燥方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂の乾燥方法に関し、さらに詳しくは、水が付着したポリエステル樹脂から水を乾燥、除去する方法に関するものである。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より、調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、ポリエチレンテレフタレートが用いられており、特に容器の機械的強度、耐熱性、透明性などが要求される、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの用途に多く用いられている。このようなポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化触媒の存在下でエステル化した後、重縮合触媒の存在下で液相重縮合し、次いで固相重縮合することにより得ることができる。そして得られたポリエチレンテレフタレートは、射出成形機などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形し、さらに熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形されるのが一般的である。
【0003】
ところが、従来の方法で製造されたポリエチレンテレフタレートには、環状三量体などのオリゴマー類が含まれており、このオリゴマー類がブロー成形金型内面に付着して金型汚れが発生したり、オリゴマー類が上述したような射出成形機の金型内面や金型のガス排気口、排気管に付着して金型汚れが発生していた。このような問題を解消する手段として、特公平7−37515号公報には、液相重縮合後、さらに固相重縮合したポリエチレンテレフタレートを高温の水に長時間浸漬することにより触媒を失活させ、オリゴマーの増加を抑制する方法が記載されている。
【0004】
また、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂には、少量のアルデヒドが含有されている。このアルデヒドを含んだポリエステル樹脂を飲料水等の容器に用いた場合、内容物の味覚を変質させるおそれがある。このため飲料水等の容器等に用いられるポリエステル樹脂は、アルデヒドの含有量ができるだけ少ないことが望まれる。ポリエステル樹脂中のアルデヒドの含有量を少なくする方法としては、特開昭55−13715号公報に記載されているような、ポリエステル樹脂を短時間水に浸漬処理する方法がある。
【0005】
上記いずれの場合も水で処理した後のポリエステル樹脂には大量の水が付着しているため、製品として市場に供するためには水を除去し、ポリエステル樹脂を乾燥する必要がある。従来、このようなポリエステル樹脂に付着した水を除去する方法としては、遠心分離機、振動篩機、シモンカーター等の水切装置で水切りをし、ホッパー型の乾燥機に加熱気体を導入して乾燥させる方法、またはバッチ式乾燥機を用いて真空下または大気下で乾燥気体を通気させながら付着水分またはポリエステル樹脂中の含まれる水分を除去していた。しかし、このような従来の乾燥方法では、乾燥時にしばしばポリエステル樹脂が薄褐色に着色するという問題があった。このように着色した樹脂を用いて製造した容器は内容物の色相を変えるため、用途によっては問題となることがあった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、ポリエステル樹脂の色相を悪化させないポリエステル樹脂の乾燥方法を提供することを目的とするとともに、ポリエステル樹脂の付着水分を効率的に除去する方法を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るポリエステル樹脂の乾燥方法は、水が付着したポリエステル樹脂を気体と接触させてポリエステル樹脂から水分を除去する方法において、その初期段階でポリエステル樹脂を揺動状態で流通気体と接触させて水分を除去した後、さらに前記ポリエステル樹脂を100℃以上かつ該ポリエステル樹脂の融点以下の温度雰囲気下に置く工程を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明では、前記ポリエステル樹脂を少なくとも上下方向に揺動させることが好ましい。前記ポリエステル樹脂を揺動させる手段は気体流であることが好ましく、気体はポリエステル樹脂の下方から吹き込むことが好ましい。
【0010】
本発明では、前記気体は加熱されていることが好ましく、前記気体の温度が20〜90℃の範囲にあることがより好ましく、特に前記気体の温度が35〜50℃の範囲にあることが好ましい。
【0011】
本発明では、前記気体は空気であることが好ましく、前記ポリエステル樹脂は、ペレット状であることが好ましい。
前記水が付着したポリエステル樹脂は、たとえば液相重縮合工程および固相重縮合工程を経たポリエステル樹脂を50〜110℃の熱水に3分間〜5時間浸漬したものである。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリエステル樹脂の乾燥方法について説明する。
本発明では、水が付着したポリエステル樹脂を気体と接触させてポリエステル樹脂から水を除去する方法において、前記ポリエステル樹脂を揺動状態で流通気体と接触させて付着した水を除去している。水が付着したポリエステル樹脂は、たとえば下記のような水処理をしたポリエステル樹脂である。
【0013】
ポリエステル樹脂、たとえばポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを原料として製造されるが、このポリエチレンテレフタレートは20モル%以下の他のジカルボン酸および/またはたのグリコールが共重合されていてもよい。
【0014】
テレフタル酸以外の共重縮合に用いられるジカルボン酸としては、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0015】
エチレングリコール以外の共重縮合に用いられるグリコールとしては、具体的にはトリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。
【0016】
上記したようなテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含む原料は、エステル化触媒の存在下でエステル化された後、重縮合用触媒の存在下で液相重縮合され、次いで固相重縮合される。
【0017】
具体的にはまず、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。このようなスラリーには、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して1.02〜1.4モル、好ましくは1.03〜1.3モルのエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
【0018】
エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いてジヒドロキシ化合物が還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施される。エステル化反応を行なう際の反応条件は、第1段目のエステル化反応の温度が通常240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力が通常0.2〜3kg/cm2 G 、好ましくは0.5〜2kg/cm2 G であり、また最終段目のエステル化反応の温度が通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃、圧力が通常0〜1.5kg/cm2 G 、好ましくは0〜1.3kg/cm2 G である。
【0019】
したがって、エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。
【0020】
たとえば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応は通常反応温度245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜2kg/cm2 G 、好ましくは0.2〜1.5kg/cm2 G である。これらのエステル化反応の反応率は、それぞれの段階においては、とくに制限はないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0021】
これらのエステル化工程により低次縮合物が得られ、この低次縮合物の数平均分子量は、通常、500〜5000である。
このようなエステル化反応はテレフタル酸およびエチレングリコール以外の添加物を添加せずに実施することも可能であり、また後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であるが、さらにトリメチルアミン、トリn-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準に保持できるので好ましい。
【0022】
次いで得られた低次縮合物は、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエチレンテレフタレートの融点以上の温度に加熱し、この際生成するグリコールを系外に留去させて重縮合する液相重縮合工程に供給される。
【0023】
このような液相での重縮合反応は、1段階で行なっても、複数段階に分けて行なってもよい。複数段階で行なう場合、重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度が、通常、250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力が通常500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrであり、また最終段の重縮合反応の温度が通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃であり、圧力が通常10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。
【0024】
重縮合反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目の重縮合反応条件はそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前まで重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件である。
【0025】
たとえば、重縮合反応が3段階で実施される場合には、第2段目の重縮合反応の反応温度は、通常、反応温度260〜295℃、好ましくは270〜285℃であり、圧力は通常、50〜2Torr、好ましくは40〜5Torrの範囲である。これらの液相重縮合工程の各々において到達される固有粘度(IV)はとくに制限はないが、各段階における固有粘度の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目の重縮合反応器から得られるポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は通常0.35〜0.80dl/g、好ましくは0.45〜0.75dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.75dl/gの範囲であることが望ましい。固有粘度はポリエチレンテレフタレート1.2gをo-クロロフェノール15ml中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出される。
【0026】
また最終段目の重縮合反応器から得られるポリエチレンテレフタレートの密度は、通常1.33g/cm3 〜1.35g/cm3 であることが望ましい。
本明細書において、ポリエチレンテレフタレートの密度は、四塩化炭素およびヘプタンの混合溶液を用いた密度勾配管により、23℃で測定される。
上記のような重縮合反応は、触媒および安定剤の存在下で実施されることが好ましい。触媒として二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒またはチタニウムテトラブトキシドなどのチタン触媒を用いることができる。これらの触媒の中では、二酸化ゲルマニウム化合物を用いると生成するポリエチレンテレフタレートの色相および透明性が優れるので好ましい。
【0027】
また、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどの燐酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステルおよびリン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
【0028】
これらの触媒あるいは安定剤の使用割合は、テレフタル酸とエチレングリコールとの混合物の重量に対して、触媒の場合には触媒中の金属の重量として、通常、0.0005〜0.2重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の範囲であり、また安定剤の場合には、安定剤中のリン原子の重量として通常、0.001〜0.1重量%、好ましくは0.002〜0.02重量%の範囲である。これらの触媒および安定剤の供給方法は、エステル化反応工程の段階において供給することもできるし、重縮合反応工程の第1段目の反応器に供給することもできる。
【0029】
ポリエチレンテレフタレートは、上述のようにテレフタル酸以外のジカルボン酸、エチレングリコール以外のジオールが20モル%以下の量で含まれていてもよいが、特に好ましく用いられるポリエチレンテレフタレートは、一般式(I)
【0030】
【化1】
【0031】
で表わされるエチレンテレフタレート成分単位の含有率が、95.0〜99.0モル%の範囲にあり、一般式(II)
【0032】
【化2】
【0033】
で表わされるジオキシエチレンテレフタレート成分単位の含有率が、1.0〜5.0モル%の範囲にあることが望ましい。
このようにして、最終重縮合反応器から得られたポリエチレンテレフタレートは、通常、溶融押出成形法によって粒状(ペレット状)に成形される。このような粒状ポリエチレンテレフタレートは、通常2.0〜5.0mm、好ましくは2.2〜4.0mmの平均径を有することが望ましい。
【0034】
前記粒状ポリエチレンテレフタレートは次いで固相重縮合工程に供給される。固相重縮合工程に供給される粒状ポリエチレンテレフタレートは、予め固相重縮合を行なう場合の温度および低い温度に加熱して予備結晶化を行なった後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0035】
予備結晶化工程は、粒状ポリエチレンテレフタレートを乾燥状態で通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に、1分〜4時間加熱して行なうこともでき、また粒状ポリエチレンテレフタレートを水蒸気雰囲気下、または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で通常、120〜200℃の温度に1分間以上加熱して行なうこともできる。
【0036】
このような粒状ポリエチレンテレフタレートが供給される固相重縮合工程は少なくとも1段からなり、重縮合温度が通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が通常、1kg/cm2 G 〜10Torr、好ましくは常圧〜100Torrの条件下で、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で固相重縮合反応が実施される。これらの不活性ガスの中では窒素ガスが好ましい。
【0037】
固相重縮合工程を経て得られたポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、通常0.7dl/g以上、好ましくは0.72以上であることが望ましい。またポリエチレンテレフタレートの密度は、通常1.37g/cm3 以上、好ましくは1.38g/cm3 以上、さらに好ましくは1.39g/cm3 以上であることが望ましい。
【0038】
水処理は、たとえば前記粒状ポリエチレンテレフタレートを水に浸漬することにより行なわれる。
粒状ポリエチレンテレフタレートと水との接触は、ポリエチレンテレフタレートを50〜110℃の熱水に、3分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間浸漬することにより行なわれる。このように水と接触したポリエチレンテレフタレートは、オリゴマー(環状三量体)含有量が通常0.5重量%以下である。
【0039】
以下に粒状ポリエチレンテレフタレートと水との接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0040】
粒状ポリエチレンテレフタレートをバッチ方式で水と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわち粒状ポリエチレンテレフタレートをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水を供給し接触処理を行なう。あるいは回転筒型の接触処理装置に粒状ポリエチレンテレフタレートを受け入れ、回転させながら接触処理を行ない接触をさらに効率的にすることもできる。粒状ポリエチレンテレフタレートの連続で水を接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレートを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水を連続供給し水と接触処理させることができる。
【0041】
以上、ポリエチレンテレフタレートを例に挙げてポリエステル樹脂の製造工程および水処理工程を説明したが、他のポリエステル樹脂たとえばポリエチレンナフタレートの前記と同様の方法で製造および水処理を行なうことができる。
【0042】
上記のような液相重縮合工程および固相重縮合工程を経て得られたポリエステル樹脂に、水処理を行なったポリエステル樹脂には大量の水が付着しており、このような大量の水が付着したポリエステル樹脂は、水切りを行なった後に本発明の乾燥方法を行なってもよい。
【0043】
本発明では、例えば上記の工程で得た水が付着したポリエステル樹脂から水分を除去する工程において、前記ポリエステル樹脂を揺動状態で流通気体と接触させて付着した水を除去する工程を含んでいる。本発明では、全乾燥工程においてポリエステル樹脂を揺動させてもよく、乾燥工程の一部においてポリエステル樹脂を揺動させてもよい。特に本発明では、少なくともその初期段階においてポリエステル樹脂を揺動状態で流通気体と接触させることが好ましい。また、本発明では、ポリエステル樹脂のすべてを揺動させる必要はなく、ポリエステル樹脂の一部のみを揺動させてもよい。
【0044】
このポリエステル樹脂と接触させる流通気体は、加熱されていることが好ましく、気体の温度は、通常20〜90℃、好ましくは35〜50℃である。気体の温度が上記のような範囲にあると、ポリエステル樹脂を着色させることなく、効率よく乾燥させることができる。
【0045】
本発明で用いることのできる気体は、乾燥空気、窒素、炭酸ガスなど様々な気体を用いることができるが、経済性の点から空気が好ましい。
本発明では、ポリエステル樹脂の揺動方向は特に限定されないが、少なくとも上下方向に揺動させると効率よくポリエステル樹脂を乾燥させることができる。また、上下方向の揺動成分に加えて横方向の揺動成分を加えると、ポリエステル樹脂を横方向に移動させることができるため、ポリエステル樹脂を連続的に処理することができる。
【0046】
ポリエステル樹脂を揺動させる方法としては、ポリエステル樹脂を収容した容器を機械的に振動させてポリエステル樹脂を揺動させる方法、ポリエステル樹脂を収容した容器に設けた1カ所または数カ所のノズル等の開口部から気体を容器内部に吹き込んで気体流によりポリエステル樹脂を揺動させる方法などがある。気体流によりポリエステル樹脂を揺動させる方法においては、気体を吹き込む方向はポリエステル樹脂が揺動する方向であれば特に限定されないが、ポリエステル樹脂の少なくとも下方から吹き込むことが好ましい。気体流によりポリエステル樹脂を揺動させる方法では、ポリエステル樹脂を揺動させる気体流が、ポリエステル樹脂と接触させる流通気体であってもよく、ポリエステル樹脂を揺動させる気体流に加えて、さらにポリエステル樹脂を乾燥させる流通気体を導入してもよい。
【0047】
本発明の乾燥方法は、上記処理に具体的に使用できる装置としては、例えば流動床、下からの気体導入口を設けた回転ディスク等を挙げることができる。
本発明では、ポリエステル樹脂に付着した水分を除去するために、揺動状態で流通気体と接触させる操作のみによってポリエステル樹脂を乾燥してもよく、水分除去工程の初期段階に揺動状態で流通気体と接触させる操作を行なった後、他の乾燥方法を行なってもよい。他の乾燥方法としては、従来公知の乾燥方法を採用することができ、たとえば、ホッパー型の乾燥機に加熱気体(窒素、空気等)を導入して乾燥させる方法、バッチ式乾燥機を用いて真空下または大気下で乾燥気体(窒素、空気等)を通気させながら乾燥させる方法などが挙げられる。
【0048】
これらの方法のなかでは、真空中または窒素、空気等の気体を導入しながら、100℃以上かつポリエステル樹脂の融点以下の温度、好ましくは120〜180℃の温度雰囲気下にポリエステル樹脂を置くことにより水分を除去する方法を採用することが好ましい。
【0049】
このようにポリエステル樹脂を揺動状態で流通気体と接触させてポリエステル樹脂に付着した水分を除去する方法と、他の乾燥方法を組み合わせて行なうと、ポリエステル樹脂に付着した水分およびポリエステル樹脂中に含まれる水分を効率よく除去することができる。
【0050】
本発明ではポリエステル樹脂は、ペレット状であることが好ましいが、パウダー状のものであっても前記と同様に乾燥処理は可能である。
【0051】
【発明の効果】
本発明の乾燥方法によれば、従来法に比較してポリエステル樹脂の色相を悪化させずに、効率よくポリエステル樹脂の付着水分を除去できる。
【0052】
また、水処理および前記乾燥方法を経て製造されたポリエステル樹脂は、アセトアルデヒド含有量および/または成型時のオリゴマー発生量が少なく、しかも色相が優れている。
【0053】
本発明の乾燥方法で得られたポリエステル樹脂は、色相が良好なことから、食品、飲料水、医薬品等の各種容器、フィルム、シート等の用途に好適に使用できる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
【実施例1】
固相重合工程を経て製造され、固有粘度が0.80dl/gであり、密度が1.40g/cm3 であり、オリゴマー含有量が0.31重量%であり、平均粒径が2.8mmであるポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット5kgを、ステンレス容器内で6.5kgの蒸留水に浸漬させた。
【0056】
次に、PETペレットおよび蒸留水が入ったステンレス容器を外部より加熱し、内部を90℃にコントロールし(内温が90℃になるまでの時間を10分とした)、4時間保持して熱水処理を行なった後、脱水し、10リットル入りの金網製容器にPETペレットを入れ、良く水切りした後、第一段の乾燥として55〜60℃の温度に調節した空気を金網製容器の下部に設けたブロアーからPETペレットが容器内で跳ねる程度の風量で吹き上げ、この状態で5分間放置後、空気の吹き込みを停止した。続いて、第二段の乾燥として、上記処理したPETペレット30gを乾燥皿(ステンレス製、80mmφ)に取り、150℃の温度に保ったエアーオーブンに入れ、さらに24時間放置した後に取り出した。このPETペレットの色相を以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0057】
[色相の測定]
色相は、PETペレットを試料セル一杯に入れ色差計を用いて以下の条件でb値を測定した。
【0058】
【0059】
【比較例1】
実施例1において、第一段の乾燥を省略し、水切り後直ちにPETペレット30gを乾燥皿にとり150℃の温度に保ったエアーオーブンに入れ、さらに24時間放置した後に取り出した。このPETペレットの色相を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【実施例2】
実施例1において蒸留水に代えて、イオン交換水を用いた以外は実施例1と同様にしてPETペレットを水処理した後、乾燥した。このPETペレットの色相を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【比較例2】
実施例2において、第一段の乾燥を省略し、水切り後直ちにPETペレット30gを乾燥皿にとり150℃の温度に保ったエアーオーブンに入れ、さらに24時間放置した後に取り出したこと以外は実施例2と同様にしてPETペレットを乾燥した。このPETペレットの色相を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【比較例3】
実施例2において、第一段の乾燥としてPETペレットを入れた金網製容器を80℃に保った乾燥器に入れ、乾燥器内に窒素ガスを約1リットル/分の量で流し、1時間放置したこと以外は実施例2と同様にしてPETペレットを乾燥した。このPETペレットの色相を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【比較例4】
実施例2において、第一段の乾燥としてPETペレットを入れた金網製容器を80℃に保った真空乾燥器に入れ、真空乾燥器内を1〜10Torrに保ち1時間放置したこと以外は実施例2と同様にしてPETペレットを乾燥した。このPETペレットの色相を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
Claims (10)
- 水が付着したポリエステル樹脂を気体と接触させてポリエステル樹脂から水を除去する方法において、その初期段階でポリエステル樹脂を揺動状態で流通気体と接触させて付着した水を除去した後、さらに前記ポリエステル樹脂を100℃以上かつ該ポリエステル樹脂の融点以下の温度雰囲気下に置く工程を含むことを特徴とするポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記ポリエステル樹脂を少なくとも上下方向に揺動させる請求項1に記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記ポリエステル樹脂を揺動させる手段が気体流である請求項1または2に記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記気体をポリエステル樹脂の下方から吹き込む請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記気体は加熱されている請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記気体の温度が20〜90℃の範囲にある請求項1ないし5のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記気体の温度が35〜50℃の範囲にある請求項1ないし5のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記気体は空気である請求項1ないし7のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記ポリエステル樹脂は、ペレット状である請求項1ないし8のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
- 前記水が付着したポリエステル樹脂は、液相重縮合工程および固相重縮合工程を経たポリエステル樹脂を50〜110℃の熱水に3分間〜5時間浸漬したものである請求項1ないし9のいずれかに記載のポリエステル樹脂の乾燥方法。
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