JP4624590B2 - 金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法、ならびに中空成形体用プリフォームおよび中空成形体の製造方法 - Google Patents

金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法、ならびに中空成形体用プリフォームおよび中空成形体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物製造方法、中空成形体用プリフォームおよび中空成形体製造方法に関し、さらに詳しくは、核剤として含有する金属化合物の含有量のばらつきが少ない金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物製造方法、金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物からなる中空成形体用プリフォームおよび中空成形体製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリエステル樹脂は、その優れた機械物性、水分およびガスの遮断性、耐薬品性、保香性、透明性、衛生性を有していることから、食品、医薬品、化粧品などの容器として近年広く使用されており、例えばいわゆるペットボトルは、果汁飲料などの高温にて充填される飲料の容器として数多く使用されている。
【0003】
このようなポリエステル樹脂製中空成形体は、一般に射出成形などによりプリフォームを成形し、次いでこのプリフォームを二軸延伸ブローする方法により成形される。しかし、二軸延伸ブローされただけの中空成形体は口部が胴部のように二軸延伸配向されていないため口部の耐熱性が低く、そのまま高温の内容物を充填することができない。そのため、口部を加熱処理して結晶化する方法が採られている。
【0004】
口部を加熱結晶化する方法としてはいくつかの方法が知られているが、二軸延伸ブローする前のプリフォームの口部を加熱結晶化する方法が多く採用されている。
また高温の内容物を充填する用途のポリエステル樹脂製中空成形体は、ブロー成形時の金型温度を上げたり、ブロー成形後に中空成形体に熱処理(ヒートセット)を行ったりして、胴部の耐熱性を向上させている。
【0005】
このようにして製造される耐熱性を向上させたポリエステル樹脂製中空成形体の素材として用いられるポリエステル樹脂は、成形体の生産サイクルを向上させる目的から、結晶化速度の速いことが求められる。しかし、結晶化速度の速いポリエステル樹脂は、高い金型温度条件でのブロー成形時やヒートセット時に白化しやすいという問題がある。
【0006】
これらの問題を解決する方法として、例えば特開昭56−2342号公報、特開昭56−21832号公報、特開昭56−21833号公報、特開平10−6387号公報、特開平10−16934号公報には、ポリエステル樹脂に微量の無機核剤を添加する方法が開示されている。
これら公報の中では、ポリエステル樹脂と核剤とを混合して組成物とする方法として、ポリエステル樹脂チップと核剤とをタンブラー、ヘンシェルミキサーなどの混合機で直接混合し溶融混練する方法、ポリエステル樹脂と金属核剤とを溶融混練してマスターバッチを作製し、そのマスターバッチをポリエステル樹脂に適宜配合する方法が明示されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法で得られたポリエステル樹脂では、ポリエステル樹脂チップ中の核剤の含量にばらつきが大きいため、口部を加熱結晶化する工程で結晶化が充分に進まなかったり、ブロー成形時にボトルが白化したりして、実際のボトル製造においては規格外の製品が多量にできてしまうという問題がある。
【0008】
また、上記問題を解決する手段として、特開昭62−131055号公報、特開平9−71639号公報、特開平9−194697号公報には、ポリエステル樹脂にポリエチレンまたはポリプロピレンを少量添加する方法が記載されている。しかしながら、ポリエチレン、ポリプロピレンは、通常高い耐熱性を有していないため、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂の成形温度では劣化し、成形後の核剤としての効果を失ったり、劣化したポリオレフィンが異物となり成形物の外観を悪化させたりするという問題がある。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、金属化合物を均一に含有する金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物安定的に製造する方法、この金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物からなる中空成形体用プリフォーム製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
発明に係る金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、チップ状のポリエステル樹脂を、金属化合物を含有したポリエステル樹脂からなる部材に流動条件下で接触させて、金属化合物を含有するポリエステル樹脂を得ることを特徴としている。本発明では、上記金属化合物の含有量が1ppb〜1000ppmの範囲にある金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物を得ることが好ましい。
【0012】
上記金属化合物としては、金属粉末、金属酸化物、無機酸の金属塩および有機酸の金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物がある。
本発明に係る中空成形体用プリフォームおよび中空成形体は、上記金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物からなることを特徴としている。
本発明に係る中空成形体用プリフォームの製造方法は、上記金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物を射出成形することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る中空成形体の製造方法は、上記の方法で得られた金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物を射出成形して中空成形体用プリフォームを成形し、さらに該プリフォームの口栓部を加熱・結晶化させた後、二軸延伸ブロー成形することを特徴としている。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物製造方法、中空成形体用プリフォーム、中空成形体製造方法について具体的に説明する。
本発明に係る金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物は、チップ状のポリエステル樹脂を、金属化合物を含有したポリエステル樹脂からなる部材に流動条件下で接触させて得られる。まず本発明で用いられるポリエステル樹脂および金属化合物について説明する。
【0015】
ポリエステル樹脂
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル誘導体から導かれるジカルボン酸単位と、ジオールまたはそのエステル誘導体から導かれるジオール単位とからなる。
ジカルボン酸として具体的には、例えばテレフタル酸、フタル酸(オルソフタル酸)、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、1,3-ビスカルボキシメトキシベンゼンなどの芳香族ジカルボン酸類;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロへキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類などが挙げられる。
【0016】
これらのジカルボン酸は2種以上の組み合わせであってもよい。ジカルボン酸としては、これらのうちでもテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
ジオールとして具体的には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコール類;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール類;1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族基を含むグリコール類;ビスフェノール類;ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。
【0017】
これらのジオールは、2種以上の組み合わせであってもよい。ジオールとしては、これらのうちでもエチレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが好ましい。
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、3以上のカルボキシル基を有する多官能カルボン酸類、または3以上のヒドロキシ基を有する多官能アルコールから導かれる単位を含有していてもよく、例えばトリメシン酸、無水ピロメリット酸などの多官能カルボン酸類;グリセリン、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコール類から導かれる単位を含有していてもよい。
【0018】
また、本発明で用いられるポリエステル樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリグリコール類から導かれる単位を含有してもよい。
本発明ではポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0019】
ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸単位の合計を100モル%としたときにテレフタル酸単位を80モル%以上、特に85〜100モル%の量で含有し、ジオール単位の合計を100モル%としたときにエチレングリコール単位を80モル%以上、好ましくは85〜100モル%の量で含有することが望ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、固有粘度[η](フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶媒(50/50重量比)を用いて0.5dl/gの試料溶液を調整し、25℃で測定)が、0.2〜1.0dl/g、好ましくは0.4〜1.0dl/gであることが望ましい。
このようなポリエステル樹脂は、例えばジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、ジオールまたはそのエステル誘導体とをエステル化またはエステル交換反応し、次いで得られたエステル化物を液相重縮合反応させることにより製造される。必要に応じ、予備結晶化、固相重合反応、触媒失活化などの任意の工程を付加してもよい。
【0021】
以下、本発明で用いられるポリエステル樹脂の好ましい製法をポリエチレンテレフタレートを例に挙げて具体的に説明する。なお他のポリエステル樹脂も原料、製造条件などを適宜改変することにより同様にして製造できる。
まずテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含む原料は、エステル化される。具体的にはまず、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
【0022】
このようなスラリーには、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して1.02〜2.0モル、好ましくは1.03〜1.7モルのエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
エステル化反応は、一個または二個以上のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施される。エステル化反応を行う際の反応条件は、複数段で行う場合は第一段目のエステル化反応の温度が通常240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が通常0.05〜3kg/cm2 G(0.005〜0.3MPaG)、好ましくは0.1〜2kg/cm2 G(0.01〜0.2MPaG)であり、また最終段目のエステル化反応の温度が通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が通常0〜1.5kg/cm2 G(0〜0.015MPaG)、好ましくは0〜1.3kg/cm2 G(0〜0.13MPaG)である。一段でエステル化反応を行う場合には前記最終段目と同様の条件が採用される。
【0023】
従って、エステル化反応を二段階で実施する場合には、第一段目及び第二段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、三段階以上で実施する場合には、第二段目から最終段の一段目までエステル化反応の反応条件は、上記第一段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。
例えば、エステル化反応が三段階で実施される場合には、第二段目のエステル化反応の反応温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜2kg/cm2 G(0〜0.2MPaG)、好ましくは0.1〜1.5kg/cm2 G(0.001〜0.015MPaG)である。これらのエステル化反応の反応率は、それぞれの段階においては、特に制限はないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0024】
これらのエステル化工程によりエステル化物(低次縮合物)が得られ、このエステル化物の数平均分子量は、通常500〜5000である。このようなエステル化反応はテレフタル酸およびエチレングリコール以外の添加物を添加せずに実施することも可能であり、また後述する重縮合の触媒の共存下に実施することも可能であるが、さらにトリエチルアミン、トリn-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第三級アミン;水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第四級アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準に保持できるので好ましい。
【0025】
次いで得られたエステル化物は、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエチレンテレフタレートの融点以上の温度に加熱し、この際生成するグリコールを系外に留去させて重縮合する液相重縮合工程に供給される。
このような液相での重縮合反応は、一段階で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。複数段階で行う場合、重縮合反応条件は、第一段階目の重縮合の反応温度が、通常、250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力が、通常、20〜500Torr(0.003〜0.7MPa)、好ましくは30〜200Torr(0.004〜0.03MPa)であり、また最終段階の重縮合反応の温度が通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃であり、圧力が通常0.1〜10Torr(0.01〜1kPa)、好ましくは0.5〜5Torr(0.07〜0.7kPa)である。
【0026】
重縮合反応を二段階で実施する場合には、第一段目および第二段目の重縮合反応条件はそれぞれ上記の範囲であり、三段階以上で実施する場合には、第二段目から最終段目の一段前までの重縮合反応の反応条件は上記一段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件である。
例えば、重縮合反応が三段階で実施される場合には、第二段目の重縮合反応の反応温度は通常260〜295℃、好ましくは270〜285℃であり、圧力は通常、2〜50Torr(0.3〜7kPa)、好ましくは5〜40Torr(0.7〜5kPa)の範囲である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される固有粘度(IV)は特に制限はないが、各段階における固有粘度の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目の重縮合反応器から得られるポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は通常0.35〜0.80dl/g、好ましくは0.45〜0.75dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.75dl/gの範囲であることが望ましい。
【0027】
上記のような重縮合反応は触媒および安定剤の存在下に実施されることが好ましい。
触媒としては、例えば二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn-ブトキシなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒;チタニウムテトラブトキサイドなどのチタン触媒を用いることができる。これらの触媒の中では、二酸化ゲルマニウム化合物を用いると生成するポリエチレンテレフタレートの色および透明性が優れるので好ましい。
【0028】
また、安定剤としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル;リン酸、亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
【0029】
これらの触媒または安定剤の使用割合は、テレフタル酸とエチレングリコールとの混合物の重量に対して、触媒の場合には触媒中の金属の重量として、通常0.0005〜0.2重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の範囲であり、また安定剤の場合には、安定剤中のリン原子の重量として通常、0.001〜0.1重量%、好ましくは0.002〜0.02重量%の範囲である。これらの触媒および安定剤は、スラリー調製の段階から重縮合反応工程の第一段目の反応器までの任意の段階で供給することができる。
【0030】
このようにして、最終重縮合反応器から得られたポリエチレンテレフタレートは、通常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形される。
このような粒状ポリエチレンテレフタレートは、通常2.0〜5.0mm、好ましくは2.0〜4.0mmの平均粒径を有することが望ましい。このようにして液相重縮合工程を経た粒状ポリエチレンテレフタレートには、必要に応じて固相重縮合工程が加えられる。
【0031】
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエチレンテレフタレートは、予め固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエチレンテレフタレートを乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分〜4時間加熱することによって行うことができ、また粒状ポリエチレンテレフタレートを水蒸気雰囲気下、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下または水蒸気含有空気雰囲気下で通常、120〜200℃の温度に1分間以上加熱することによって行うことができる。
【0032】
このような粒状ポリエチレンテレフタレートが供給される固相重縮合工程は、少なくとも一段からなり、重縮合温度が通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が通常、10Torr〜1kg/cm2 G(0.001〜0.1MPa)、好ましくは常圧ないし100Torr(0.01MPa)の条件下で、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で固相重縮合反応が実施される。これらの不活性ガスの中では窒素ガスが好ましい。固相重縮合工程で得られる粒状ポリエチレンテレフタレートは、固有粘度が通常0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.5〜1.5dl/g、より好ましくは0.6〜1.2dl/gの範囲、アセトアルデヒド含量が10重量ppm以下、環状三量体の含有量が0.5重量%以下になるように固相重縮合反応の温度、時間、不活性ガスの流量、圧力を任意に選択できる。
【0033】
このように固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエチレンテレフタレートには、含有されている重縮合触媒を失活させるために、60℃以上の水蒸気又は水蒸気含有ガスに30分以上接触させる水蒸気処理工程か、または40℃以上の水に10分以上浸漬させる水処理工程を加えてもよい。かくして得られる重縮合触媒が失活した粒状ポリエチレンテレフタレートは、窒素ガス流通下215℃で再固相重縮合を行ったときの固有粘度上昇速度が0.0030dl/g/時間以下である。
【0034】
工業的な水蒸気処理方法は、例えば粒状ポリエチレンテレフタレートの滞留時間を制御するための連続供給及び排出設備を有する塔型装置に、粒状ポリエチレンテレフタレートを一定の滞留時間になるように連続供給排出しつつ、並流または向流で水蒸気圧および温度を調節した空気を連続供給し、接触処理する方法が採られている。
【0035】
工業的な水処理方法は、例えば傾斜した底面と温度調節した水を循環する設備を有する水槽中に連続的に粒状ポリエチレンテレフタレートを供給しつつ傾斜底面の最底部に取り付けた気液縁切り用のロータリーバルブで粒状ポリエチレンテレフタレートを連続的に排出しつつ水切りを行う浸漬処理方法が採られる。前記の水蒸気処理工程か、または水処理工程を加えられた粒状ポリエチレンテレフタレートは、通常、必要に応じて乾燥処理を行う。乾燥方法は、通常用いられるポリエチレンテレフタレートの乾燥処理条件を用いることができ、連続式若しくはバッチ式、減圧下若しくは乾燥ガス流通下に行われる。
【0036】
金属化合物
本発明で用いられる金属化合物としては核剤作用を有するものであれば特に限定されない。これらの金属化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いられる金属化合物としては、例えば金属粉末、金属酸化物、無機酸の金属塩、有機酸の金属塩などが挙げられ、具体的には
金属粉末としては、アルミニウム、亜鉛などが挙げられ、
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタンなどが挙げられ、
無機酸の金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩;硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなどの酢酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩などが挙げられ、
有機酸の金属塩としては、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸塩などが挙げられる。
【0037】
これらの金属化合物が固体状である場合には、その粒径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であることが望ましい。粒径が1μm以下の粒子を用いることにより、透明性を損なうことなく結晶化温度を好適な範囲に制御することができる。
金属化合物を含有したポリエステル樹脂からなる部材
本発明で用いられる金属化合物を含有するポリエステル樹脂からなる部材(以下「金属化合物含有ポリエステル部材」という。)は、上記ポリエステル樹脂と、上記金属化合物とからなる。
【0038】
金属化合物含有ポリエステル部材に含まれる金属化合物の量は、特に限定されず、金属化合物の核剤能、金属化合物の分散性、部材の形状、チップ状のポリエステル樹脂チップと金属化合物含有ポリエステル部材とを接触させる工程によって適宜選択されるが、通常1ppm〜99重量%、好ましくは100ppm〜90重量%の範囲である。
【0039】
ポリエステル部材の形状は特に限定されないが、例えばシート状、フィルム状、ロッド状、繊維状、網状、パドル状、ブロック状などが挙げられる。
ポリエステル部材を製造する方法としては特に限定されないが、例えば金属化合物とポリエステル樹脂とを、タンブラー、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて混合し、その混合物を、例えば射出成形、押出成形などの公知の成形方法によって所望する形状の部材に成形することが可能である。
【0040】
また金属化合物の含有量の少ないポリエステル部材を成形する場合、金属化合物とポリエステル樹脂との混合物を、直接成形するより、金属化合物とポリエステル樹脂との混合物を一軸あるいは二軸の押出機等を使用して溶融混練し、ペレタイズして金属化合物を含有するポリエステル樹脂のチップを作製し、そのチップを用いて所望する形状の部材を成形した方が、金属化合物の均一分散の点から好ましい。
【0041】
一方、金属化合物の含有量がポリエステル樹脂の量より多いポリエステル部材を成形する場合、粉末のポリエステル樹脂を金属化合物と混合し、圧縮成形法を用いて部材を形成する方法が好ましい。
ポリエステル樹脂組成物の製法
本発明に係るポリエステル樹脂組成物は、チップ状のポリエステル樹脂を金属化合物含有ポリエステル部材と流動条件下で接触させることにより製造される。チップ状のポリエステル樹脂を金属化合物含有ポリエステル部材との接触は、少なくともチップ状のポリエステル樹脂が流動状態であればよく、金属化合物含有ポリエステル部材は固定されていてもよく、また揺動、回転など可動状態であってもよい。
【0042】
チップ状のポリエステル樹脂と金属化合物含有ポリエステル部材との接触は、ポリエステル樹脂が液相重縮合反応を終了し、チップ状の形態になった以降であれば、任意の段階で行うことができる。
具体的には例えば、液相重縮合後、予備結晶化前、予備結晶化後、固相重縮合前、固相重縮合後、水処理または水蒸気処理前、水処理または水蒸気処理工程時、水処理または水蒸気処理工程後、充填前(乾燥工程や気力輸送工程、包装工程など)などが挙げられる。
【0043】
チップ状のポリエステル樹脂と金属化合物含有ポリエステル部材との接触は、チップ状のポリエステル樹脂が流動条件下にあればよく、具体的な接触方法としては、上記いずれかの工程から次の工程へ移動する配管を金属化合物含有ポリエステル部材に置き換える方法、該配管内部に金属化合物含有ポリエステル部材でライニングする方法、該配管内に網状または棒状の金属化合物含有ポリエステル部材を設置する方法、上記いずれかの工程の槽内を金属化合物含有ポリエステル部材でライニングする方法、上記いずれかの工程の槽内に網状または棒状の金属化合物含有ポリエステル部材を設置する方法、上記いずれかの工程の槽内の攪拌に使用するパドルなどを金属化合物含有ポリエステル部材とする方法などが挙げられる。
【0044】
このような方法により、金属化合物をポリエステル樹脂中に組成変動少なく、安定的に配合することが可能であり、金属化合物含量のばらつきが少ないポリエステル樹脂組成物(ポリエステル樹脂組成物チップ)を製造することができる。
金属化合物ポリエステル樹脂組成物
上記のような方法により得られる金属化合物ポリエステル樹脂組成物は、上記ポリエステル樹脂と上記金属化合物を含有する。該金属化合物ポリエステル樹脂組成物中に含まれる核剤の含有量は、目的とする樹脂組成物の成形品の昇温結晶化温度(Tcc)、核剤の種類等により変動するので、特に限定されるものではないが、通常1ppb〜1000ppm、好ましくは1ppb〜100ppm、より好ましくは1ppb〜10ppmの範囲であることが望ましい。
【0045】
金属化合物ポリエステル樹脂組成物の昇温結晶化温度(Tcc)は、132〜160℃、特に140〜155℃の範囲であることが好ましい。昇温結晶化温度(Tcc)は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC)を使用して、試料をサンプルパンに10mg秤量し、室温から10℃/分の昇温速度で昇温し、その際に発生する発熱ピークのピーク温度とする。)
中空成形体用プリフォーム、中空成形体およびその製造方法
次に中空成形体用プリフォームおよび中空成形体の製造方法について具体的に説明する。
【0046】
まず上記の方法で得られた金属化合物ポリエステル樹脂組成物から中空成形体用プリフォームを製造する。該中空成形体用プリフォームは、従来公知の方法、例えば押出成形、射出成形により製造することができる。
該中空成形体用プリフォーム成形時の樹脂の加熱温度は、使用する樹脂により異なるが、例えば270〜320℃、好ましくは270〜310℃であることが好ましい。
【0047】
このようにして得られた中空成形体用プリフォームは、ブロー成形する前に該中空成形体用プリフォームの口部部分を加熱することにより結晶化する。
次に上記中空成形体用プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いで該中空成形体用プリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより製造することができる。
【0048】
より具体的には、前記中空成形体用プリフォームを近赤外線ヒータなどを用いて延伸適正温度まで加熱し、ブロー成形する。ブロー成形時の加熱温度は、通常80〜130℃、特に90〜120℃であることが好ましい。ブロー金型温度は通常20〜170℃、特に20〜160℃であることが好ましい。また、必要に応じブロー金型温度を一旦必要な容量よりも大型の中空成形体を成形し、加熱オーブンにて収縮させ、再びブロー成形して中空成形体を成形する、いわゆる2段ブロー成形法を採用することもできる。
【0049】
【発明の効果】
本発明に係る金属化合物ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂中の金属化合物含量のばらつきが少ない。
本発明に係る金属化合物ポリエステル樹脂組成物の製造方法によればポリエステル樹脂中に金属化合物を組成変動少なく、安定的に配合することが可能であり、金属化合物含量のばらつきが少ない金属化合物ポリエステル樹脂組成物を製造することができる。
【0050】
本発明に係る金属化合物ポリエステル樹脂組成物から得られる中空成形体用プリフォームおよび中空成形体は、規格外製品が少ない。
【0051】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
【実施例1〜3】
(金属化合物含有ポリエステル部材用ペレットの成形)
予め凍結粉砕したパウダー状のポリエチレンテレフタレート(三井化学(株)社製J125)を150℃で10時間真空乾燥した。該ポリエチレンテレフタレート 99.0重量部に対して、表1に挙げる金属化合物 1.0重量部を窒素パージしたタンブラーミキサーにて15分間混合した。
【0053】
スクリュー径35mmの二軸押出機(株式会社池貝社製)を使用し、押出し温度280℃にて上記混合したポリエチレンテレフタレートを押出してストランドにし、それをカッティングし金属化合物含有ポリエステルペレットを製造した。
(金属化合物含有ポリエステル部材の成形)
上記金属化合物含有ポリエステルペレットを150℃で10時間真空乾燥し、のスクリュー径50mmの押出機(日立造船(株)製)を使用し、ダイス温度270℃にて、厚み1mmのシートを作製した。
【0054】
(部材との接触)
チップ状のポリエステル樹脂が貯蔵されるホッパー内上部に上記で作製したシートを貼り付けた。なお、ホッパーのこの部分は気力輸送にて送られるチップ状のポリエステル樹脂が流動状態で接触する部分である。シートを貼り付けた状態で気力輸送にて、ポリエチレンテレフタレートペレット(三井化学(株)社製J125)をホッパー内へ輸送した。得られたポリエチレンテレフタレートペレット(金属化合物含有ポリエステル組成物)はホッパー下部より回収した。
【0055】
(添加量)
金属化合物の添加量はポリエステル樹脂の輸送量とポリエステル樹脂輸送前後の部材重量の減少量より算出した。
(プリフォーム作製)
上記で製造したポリエチレンテレフタレートペレットを、150℃で10時間真空乾燥した。
【0056】
ペレットを射出成形機(名機製作所製 M−100)を使用し、成形温度280℃、金型温度10℃にて、厚み3.8mm、重量55gの1.5リットル用ボトルのプリフォームを作製した。
(口部結晶化)
得られたプリフォームの口部に近赤外線ヒータを一定の出力で170秒間照射させ、口部を結晶化させた。連続して200本結晶化し、前半の100本を結晶化の評価として密度を測定した。後半の100本を使用してボトルを成形した。
【0057】
(密度測定)
結晶化したプリフォーム口部の端部より3mm角の試験片を切り出し、密度勾配管法により密度を測定した。1.375g/cm3以上を合格とした。
(ボトル成形)
二軸延伸ブロー成形機(コーポプラスト社製、型:LB01)を使用して、延伸温度110℃、ブロー金型温度150℃の条件で延伸ブロー成形することにより、1.5リットルのボトルを成形した。
【0058】
目視にてボトルの透明性を評価した。濁りや白化が無く透明で変形が無いものを合格とした。結果を表1に示す。
【0059】
【比較例1】
ポリエチレンテレフタレート(三井化学(株)社製J125)99.9995重量部と酸化マグネシウム0.0005重量部をタンブラーにて15分間混合し、150℃で10時間真空乾燥したものを用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして、プリフォームを作製し、口部を結晶化し、ボトルを成形した。得られたボトルについて実施例1〜3と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0060】
【比較例2】
ポリエチレンテレフタレート(三井化学(株)社製J125)のみを150℃で10時間真空乾燥したものを用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして、プリフォームを作製し、口部を結晶化し、ボトルを成形した。得られたボトルについて実施例1〜3と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0004624590

Claims (5)

  1. チップ状のポリエステル樹脂を、金属化合物を含有したポリエステル樹脂からなる部材に流動条件下で接触させて、金属化合物を含有するポリエステル樹脂を得ることを特徴とする金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  2. 上記金属化合物が、金属粉末、金属酸化物、無機酸の金属塩および有機酸の金属塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  3. 上記金属化合物の含有量が1ppb〜1000ppmの範囲にある金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物を得る請求項1または2に記載の金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法で得られた金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物を射出成形することを特徴とする中空成形体用プリフォームの製造方法。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法で得られた金属化合物含有ポリエステル樹脂組成物を射出成形して中空成形体用プリフォームを成形し、さらに該プリフォームの口栓部を加熱・結晶化させた後、二軸延伸ブロー成形することを特徴とする中空成形体の製造方法。
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