JP3685788B2 - 給与支払いシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は給与支払いシステム、特に銀行のコンピュータシステムを用いた給与支払い技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、企業の従業員等は、特定の給料日に銀行振込により給与を受け取っている。すなわち、企業側で従業員の基本給や労働時間等から従業員の給与を計算し、給与日に先立って銀行に対して給与の振込を依頼する。給与の振込依頼は、インターネットを用いてオンラインで行われる場合もある。銀行のコンピュータシステムでは、企業からの振込依頼あるいはネットを経由した依頼データに基づき、その企業が指定した給与日に従業員の口座に対して給与を振り込む。
【0003】
一方、近年においては、企業においてもアルバイトやパートタイマ(パート)の比率が増大しており、これらのアルバイトやパートは、正規の従業員と同様に月締めで給与を受け取ることを希望する場合もあるが、週払い、あるいは日払いを希望する場合も少なくない。企業側では、アルバイト又はパートに対して日払いにより賃金を支払う場合、日毎に賃金計算を行い銀行に対して振込依頼を行う必要が生じるため、アルバイト又はパートに対しても一括して月締めで給与を支払うことが多く、アルバイト又はパートの希望する方法で賃金が支払われていなかった。
【0004】
図11には、従来の賃金支払システムの概念構成図が示されている。アルバイトやパート等の臨時労働者10は雇用者12との間の雇用契約に基づき労働を提供する。雇用者12は、雇用契約により定められた時給及び臨時労働者10の実際の労働日あるいは労働時間に基づき賃金を計算し、賃金支払日の所定日前までに銀行システム14に対して振込依頼を行う。月締めであれば、臨時労働者の賃金を月締めで集計して振込依頼を行う。銀行システム14では、この振込依頼に基づいて雇用者の口座から賃金相当の金額を引き落とすとともに、臨時労働者10の口座に賃金を振り込む。
【0005】
図12には、図11における銀行システム14での賃金支払処理が模式的に示されている。銀行システム14内のコンピュータシステム14aに雇用者からの振込依頼データが入力されると、コンピュータシステム14aは雇用者の口座14bから賃金相当分を引き落とし、臨時労働者10の口座14c1に振り込む。臨時労働者10の口座が自己の銀行ではなく他行に存在する場合、コンピュータシステム14aは当該他行のコンピュータシステム17に対して振込処理を依頼し、他行のコンピュータシステム17が臨時労働者10の口座14c2に賃金を振り込む。賃金の振込は、雇用者口座からの引落処理と臨時労働者口座への振込処理という振替処理により実行される。雇用者からの振込依頼が月締めで入力される場合、これらの処理も月締めで実行される。
【0006】
もちろん、このように雇用者12が月締めで賃金を支払うのではなく、例えばアルバイトやパートの労働日や労働時間をタイムカードで管理し、タイムカードからのデータと当該アルバイト又はパートの時給データから日当を自動計算し、日当データを自動的に銀行のコンピュータシステムに毎日送信してアルバイト又はパートが希望するように賃金を日払いすることも考えられる(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−28337号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においても基本的には雇用者側で日当賃金を計算し、得られた日当賃金データを毎日銀行のコンピュータシステムに送信する必要があり、雇用者側に新たなシステムの構築を要求することになる。また、例えばアルバイト又はパートが支払方法の変更、例えば週払いから日払いへの変更、あるいは逆に日払いから週払いへの変更を希望する場合、その都度雇用者側のシステムを変更する必要があり、フレキシビリティに欠ける問題もある。
【0009】
本発明の目的は、労働者に対して労働者の希望する態様で給与を支払うことのできるシステムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、労働者が雇用者に対して労働を提供することで順次累計される給与を、予め設定された給与日、及び前記給与日前であって労働者の希望する任意のタイミングにおいて支払う給与支払いシステムであって、該給与支払いシステムは、銀行口座にアクセスして引落処理及び振込処理を実行する銀行コンピュータを有し、該銀行コンピュータは、データを入力するインタフェース、前記インタフェースに接続された記憶装置、及び前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理するとともにデータ処理結果に応じて前記引落処理及び振込処理を実行する処理装置を有し、前記インタフェースは、労働者端末から送信された、前記労働者が前記雇用者に対して労働を提供した後でかつ前記給与日前の任意の日を指定する希望日データ及び任意金額の資金データを入力するとともに、前記労働者の労働状況を管理するコンピュータから送信された、前記労働者の労働が提供される毎の労働データを入力し、前記記憶装置は、前記給与日と、前記インタフェースから入力された前記労働者の労働データを格納する労働データ管理ファイルと、前記労働データに基づき順次算出された前記労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び前記労働者に資金交付された金額データを格納する給与データ管理ファイルと、前記インタフェースから入力された希望日データ及び任意金額の資金データを格納する資金データ管理ファイルとを記憶し、前記処理装置は、前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルの希望日データにより指定される日に、前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の資金データで特定される金額を取得するとともに、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記希望日データにより指定される日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記資金データで特定される金額と前記残余の給与金額とを大小比較する比較処理を実行し、前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲内である場合に、前記労働者の口座に対して前記資金データで特定される金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額の引落処理を実行し、前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲を超える場合に、前記振込処理を拒否する処理を実行し、又は、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行し、前記給与データ管理ファイルの前記資金交付された金額データを更新し、かつ、前記記憶装置に記憶された給与日に、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記給与日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行することを特徴とする。
【0011】
労働者が雇用者に対して労働を提供すると、労働の対価としての給与が日々発生し蓄積されていく。銀行コンピュータの記憶装置が記憶する給与データ管理ファイルには労働データに基づき順次算出された労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び労働者に資金交付された金額データが格納されており、処理装置は、記憶装置内の各ファイルにアクセスして労働者の希望する資金データで特定される金額と、累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の金額とを大小比較する比較処理を実行する。そして、比較結果が資金データで特定される金額が残余の金額以内である場合に、労働者の口座に対して資金データで特定される金額分を振込処理するとともに雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額分だけ引落処理を実行する。所定の給与日前の任意のタイミングにおいてその時点の給与の範囲内における任意の金額が労働者の口座に振り込まれるから、労働者にとっては実質的に自己の希望する日に希望する金額の給与を受け取ることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1には、本実施形態の概念構成図が示されている。アルバイト(またはパートタイマ)等の臨時労働者10、雇用者12、及び銀行システム14の関係を示したものである。
【0014】
臨時労働者10は、雇用者12との労働契約に基づき労働を提供する。臨時労働者10は、労働データを銀行システム14に提供する。労働データは、基本的には労働日や労働時間等であるが、臨時労働者10の時給や基礎控除額その他臨時労働者10の給与を計算するために必要なデータを含んでいてもよい。源泉徴収票を作成するデータを用いることもできる。労働データは、臨時労働者10が雇用者12に対して労働を提供する毎に順次発生し、銀行システム14に提供される。銀行システム14では、これらの時系列的労働データを順次蓄積していく。
【0015】
また、臨時労働者10は、適当なタイミングで希望データを銀行システム14に提供する。希望データには、臨時労働者10が金銭の受領を希望する日、すなわち資金交付日と、臨時労働者10が希望する金銭の額が含まれる。資金交付日は、臨時労働者10が雇用者12に対して労働を提供した後の任意の日に設定できる。
【0016】
本実施形態において、臨時労働者10が資金交付日を指定することで労働の対価としての金銭の受領を希望する場合、銀行システム14は、雇用者12からの依頼に従い、臨時労働者10に支払う。すなわち、銀行システム14は、臨時労働者10からの希望に応じ、資金を臨時労働者10の口座に振込むことで臨時労働者10の要求を満たす。資金は、臨時労働者10の労働により生じた賃金総計(給与)の範囲内で交付される。臨時労働者10にとっては、自己の労働の対価、すなわち賃金を自己の希望する任意の日に受け取ることができる。銀行システム14は、臨時労働者10に対して臨時労働者10の希望する日に資金を交付した後、振込データを雇用者12に対して出力し、資金交付が実行されたことを通知する。なお、雇用者12に対する振込データの出力は、臨時労働者10の口座への振込処理に先立って実行してもよく、雇用者12からの承諾を受信した後に振込処理を実行してもよい。
【0017】
従来、労働者が自己の給与日前に前貸しを希望する場合、雇用者12に対して申し込んでいるが、本実施形態では、臨時労働者10は雇用者12に対して申し込むのではなく銀行システム14に対して資金交付希望を送信し、銀行システム14において雇用者12の資金交付事務を代行している点に着目されたい。臨時労働者10は必要なときに必要な額だけの資金交付を受けることができ、雇用者12にとっても資金交付の作業をなくすことができる。臨時労働者10からの希望データの送信は、例えば臨時労働者10の有する携帯電話やPDA(携帯情報端末)、パーソナルコンピュータで行うことができる。
【0018】
図2には、図1における銀行システム14の構成ブロックが示されている。銀行システム14は、コンピュータシステム14aの他、労働データ管理ファイル14b、資金管理ファイル14c、給与データ管理ファイル14dを有する。コンピュータシステム14aは、通常の資金移動取引処理、すなわち、自行内の特定の口座ファイルに対して書き込み処理を行うことで引落、あるいは振込、あるいは振替処理を行う。資金移動取引処理を行うべき口座が自行ではなく他行に存在する場合、他行のコンピュータシステムに対して同様の処理を依頼する。コンピュータシステム14aは、臨時労働者10から提供された労働データ及び希望データを入力するインタフェースを備える。労働データは労働データ管理ファイル14bに格納され、希望データは資金管理ファイル14cに格納される。
【0019】
労働データ管理ファイル14bは、臨時労働者10の労働データを管理する。具体的には、臨時労働者10毎の労働日や労働時間等である。労働データとして、臨時労働者10の基礎的なデータ、例えば年齢や時給などを管理してもよい。臨時労働者10の時給及び労働時間から、臨時労働者10の給与が算出され、給与データ管理ファイル14dに格納される。給与の算出は、コンピュータシステム14aで実行してもよいが、労働データ管理ファイル14bや給与データ管理ファイル14dを管理する他のコンピュータで実行してもよい。
【0020】
資金管理ファイル14cは、臨時労働者10から提供された希望データを管理する。希望データは、具体的には資金交付日と交付希望金額である。資金管理ファイル14cは、この他に実際に銀行システム14により実行された資金交付の結果を記憶してもよい。すなわち、実際に資金交付された日と、実際に臨時労働者10の口座に振り込まれた資金の額である。臨時労働者10に交付される資金は、臨時労働者10の給与の範囲内であり、臨時労働者10が希望する資金交付額が給与の範囲内であれば、希望額と実際に交付された額は一致する。
【0021】
給与データ管理ファイル14dは、臨時労働者10の労働データから算出された給与データを管理する。臨時労働者10が複数回、あるいは複数日にわたって雇用者12に労働を提供した場合、給与データは順次発生することになり、給与データ管理ファイルに順次格納されていく。コンピュータシステム14aは、給与データ管理ファイル14dを参照することで、臨時労働者10に対して資金を交付できる限度額を決定することができる。すなわち、臨時労働者10から提供された交付希望額が交付希望日までの当該臨時労働者10の給与の範囲内であればコンピュータシステム14aはその交付希望額を交付希望日に交付する。一方、交付希望額が交付希望日までの当該臨時労働者10の給与の範囲を超える場合、コンピュータシステム14aは複数のオプションのいずれかを実行する。第1に、交付希望額が給与を超えている場合には交付を拒否する処理である。第2に、交付希望額が給与を超えている場合には給与と同額の交付金額に限定する処理である。交付金額が確定した場合、コンピュータシステム14aは交付希望日に当該交付金額を臨時労働者10の口座14fに振り込む。また、雇用者12の口座14eから交付金額に相当する金額を引き落とす。これにより、雇用者12の口座14eから臨時労働者10の口座14fへの振替が完了し、臨時労働者10は希望する任意の日に金銭を受け取ることができる。受け取る金銭は基本的に給与の範囲内であるため、臨時労働者10にとっては給与を自己の希望する日に受け取ることと実質的に同一の経済効果が生じる。
【0022】
給与データ管理ファイル14dには臨時労働者10の給与データが格納され、資金管理ファイル14cには交付金額及び交付日が格納される。したがって、コンピュータシステム14aは、両ファイルを照合することで、給与データの内、交付処理とされていない残余の給与を抽出することができる。給与データ管理ファイルに交付の実績を併せて格納してもよく、この場合には給与データファイル内の給与データと交付実績データを照合することで残余の給与を抽出できる。コンピュータシステム14aは、雇用者12の指定する日、すなわち雇用者12の指定する給与振込日における残余の給与データを算出ないし抽出し、雇用者12の指定する給与振込日に臨時労働者10の口座14fに振り込む。このときも、雇用者12の口座14eから同額の金額を引き落とすことは云うまでもない。なお、残余給与が存在しない場合、すなわち給与の全てを臨時労働者10に交付した場合には、コンピュータシステム14aは給与の振込処理を実行しない。
【0023】
図3〜図5には、図2における労働データ管理ファイル14b、資金管理ファイル14c、及び給与データ管理ファイル14dが模式的に示されている。図3は労働データ管理ファイル14bであり、臨時労働者10の氏名、雇用者12、労働時間が関連付けて記憶されている。例えば、氏名A(コードでもよい)の臨時労働者10の雇用者12はX社であり、労働時間はh1等である。労働時間ではなく、労働開始時刻と労働終了時刻でもよい。また、各臨時労働者10の休憩時間や時給、加金データ、控除金データを併せて記憶してもよい。要は、労働データ管理ファイル14bには、臨時労働者10の日々の給与を算出するために必要なデータが記憶される。
【0024】
図4は資金管理ファイル14cであり、臨時労働者10の氏名、雇用者12、希望日(資金交付希望日)、希望額(交付希望額)が関連付けて記憶されている。例えば、氏名Aの臨時労働者10の雇用者12はX社で、希望日はd1、希望額はm1等である。希望日は、「1日」、「15日」などと日で指定する他、「毎日」、「1日おき」、「日払い」、「週払い」などと間隔や支払方法で指定することもできる。希望額は、臨時労働者10が指定しない場合もあり得る。例えば、臨時労働者10が「日払い」を希望するのみで希望額を入力しない場合である。この場合、日々発生する給与が自動的に希望額に設定される。図4において、A,Bの雇用者はX社、Cの雇用者はY社となっている。このように、雇用者12は必ずしも単一である必要はなく、複数の臨時雇用者10、複数の雇用者12を管理してもよい。
【0025】
図5は給与データ管理ファイル14dであり、臨時労働者10の氏名、雇用者12、既に交付した資金、給与が関連付けて記憶される。上述したように、給与データは基本的に図3の労働データから算出される給与を管理するファイルであるが、給与と併せて交付実績を管理することもできる。図5にはこの場合のファイルが示されている。図5において、交付金≦給与である。給与データは順次発生し、交付金も順次発生する。給与データ管理ファイル14dは、日々発生する給与及び交付金を順次ファイルに追加していく。臨時労働者10から新たに希望データが送信され入力された場合、コンピュータシステム14aは給与データ管理ファイル14dの給与データと交付実績データとを参照し、残余の給与を算出して新たな希望額がこの残余の給与を越えていないか否かを判定し、資金交付の可否を決定する。
【0026】
図6には、銀行システム14により実行される資金交付の模式的な説明図が示されている。労働データに基づき算出される給与データ20は日々発生し、これらが蓄積されて臨時労働者10の総給与データ22が形成される。従来の給与支払いシステムでは、この総給与データ22が所定の給与振込日に臨時労働者10の口座14fに振り込まれる。本実施形態では、総給与データ22の内、臨時労働者10の希望する任意の金額が資金交付データ24として処理され、臨時労働者10の希望する日に臨時労働者10の口座14fに振り込まれる。臨時労働者10がその後労働を提供した場合には総給与データ22が新たに蓄積される。雇用者12の指定する給与振込日において、総給与データ22の内、未だ資金交付データとして処理されていない残余の給与データ26は、給与振込日において臨時労働者10の口座14fに振り込まれる。以上のようにして、月締めの給与振込処理が完了する。
【0027】
図7には、図6の変形例が示されている。臨時労働者10が「日払い」での資金交付を希望した場合である。臨時労働者10がある日に雇用者12に対して労働を提供すると、その労働により給与データ20が発生し、その日までの総給与データ22も作成される。総給与データ22はそのまま資金交付データ24として処理され、翌日あるいは翌々日までに臨時労働者10の口座14fに振り込まれる。残余の給与データ26は存在しないため、所定の給与振込日における振込処理は実行されない。資金交付を受けた後、臨時労働者10が再び労働を提供した場合、新たに給与データ20及び総給与データ22が発生し、総給与データ22がそのまま資金交付データ24として処理される。
【0028】
図8には、図6の他の変形例が示されている。臨時労働者10が「週払い」での資金交付を希望した場合である。臨時労働者10が1週間内の複数日にわたって雇用者12に対して労働を提供すると、これらの労働により順次給与データ20が発生し、1週間分の総給与データ22が作成される。総給与データ22はそのまま資金交付データ24として処理され、臨時労働者10の口座14fに振り込まれる。次週においても同様の処理が実行され、総給与データ22が資金交付データ24として処理されて振り込まれる。残余の給与データ26は存在しないため、所定の給与振込日における振込処理は実行されない。なお、「週払い」であっても、例えば臨時労働者10が交付希望額を指定した場合、その交付希望額が1週間分の総給与データ22より小さい場合には残余の給与データ26が存在するため所定の給与振込日における給与振込処理が実行される。
【0029】
図9には、本実施形態の全体処理フローチャートが示されている。臨時労働者10は、携帯電話やPDA等を用いて労働データや希望データを送信する(S101)。労働データは、臨時労働者10から直接的に送信する必要はなく、例えば臨時労働者10の労働状況を管理するコンピュータシステムやタイムカードシステムから定期的に送信してもよい。労働データの送信と希望データの送信は同期している必要はなく、例えば労働データは臨時労働者10が労働を提供する毎に送信し、希望データは任意のタイミングで送信する。
【0030】
労働データを入力した銀行システム14では、労働データに基づいて給与を算出する(S102)。給与算出に先立ち、雇用者12の有する労働データと入力した労働データを照合してもよい。あるいは、労働データに基づき算出された給与データを雇用者12の側で作成した給与データと照合してもよい。
【0031】
銀行システム14は、臨時労働者10の給与データを作成した後、入力した希望データに基づいて、交付希望日に給与の範囲内で資金を臨時労働者10の口座に振込む(S103)。振込に際し、雇用者12に対して振込を通知し、雇用者12からの承諾を待って振込んでもよい。交付希望額が給与の範囲内であるか否かを判定する処理を実行した上で振り込んでもよく、交付希望額が給与の範囲を超える場合に臨時労働者10に通知する処理を実行してもよい。銀行システム14は資金交付に相当する額の金額を雇用者12の口座14eから自動的に引き落とす(S104)。
【0032】
資金交付の振込処理及び雇用者12の口座からの引落処理は、必要に応じて繰り返し実行される。そして、雇用者12から指定された給与振込日の所定日前の時点で、給与のうち既に資金交付されていない残余の給与を算出して給与振込日に臨時労働者10の口座14fに振り込む(S105)。また、同額を雇用者12の口座14eから引き落とす。
【0033】
以上のようにして給与を前提とした資金交付処理が行われる。残余の給与振込を完了した後、銀行システム14は当該月の資金交付振込処理及び残余の給与振込処理を併せて雇用者12に通知する。雇用者12は、臨時労働者10に対する日払い、あるいは週払い等を認識する必要はなく、従来と同様の月締め処理で済む。
【0034】
以下、本実施形態の処理をより具体的に説明する。
【0035】
臨時労働者10としてA,B,Cが存在し、労働データは表1のようであったとする。
【0036】
【表1】
【0037】
表1のデータは、労働データ管理ファイル14bに格納される。また、各臨時労働者の基礎データは表2のようであったとする。
【0038】
【表2】
【0039】
ここで、時間給Bは18:00以降に適用される時給であるとする。表2の基礎的労働データは、労働データ管理ファイル14bに記憶してもよく、別のファイルに記憶してもよい。
【0040】
表1及び表2から、各臨時労働者の日々の給与が作成される。表3には、給与データが示されている。
【0041】
【表3】
【0042】
表3における日々の給与データは、給与データ管理ファイル14dに順次格納されていく。給与は、基本的に従来と同様に月締めで処理される。月締めにおける総給与が表4に示されている。
【0043】
【表4】
【0044】
表4における月締めの給与データも、給与データ管理ファイル14dに格納される。一方、A,B,Cから送信された希望データは表5のようであったとする。
【0045】
【表5】
【0046】
表5のデータは、資金管理ファイル14cに格納される。希望データとして、(希望日,希望金額)が示されている。Aは1日目に5000円を希望し、2日目に5000円を希望している(いわゆる日払い)。Bは2日目に9000円を希望している。Cは希望データを送信していない。
【0047】
表6,表7,表8には、給与データ管理ファイルで管理される給与データ及び資金交付実績が示されている。
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
Aに着目すると、1日目の給与は5,225円であり、1日目の交付金は5,000円であって、残余の給与(すなわち資金交付利用可能額)は225円である。2日目の給与は5,225円であって給与の累計は10,450円である。2日目の交付金は5,000円であって、交付金の累計は10,000円である。残余の給与は450円となる。所定の月締日における給与は5,225円であって月締め日までの累計給与は15,675円となる。月締め日における残余の給与は5,675円となる。すなわち、累計給与15,675円の内、10,000円を交付され、残りの5,675円が給与として振り込まれることになる。同様に、Bに関しては、累計給与14,100円の内、9,000円が交付され、残りの5,100円が給与として振り込まれる。Cに関しては、累計給与13,500円がそのまま給与として振り込まれる。
【0052】
表9には、給与データ管理ファイル14dで管理され、雇用者12の指定する給与振込日に振り込まれる給与が示されている。
【0053】
【表9】
【0054】
このように、本実施形態では、臨時労働者10の給与の範囲内で臨時労働者10の希望する日に希望する金額の資金を交付するため、臨時労働者10は自己の希望する日あるいは希望する間隔で労働の対価に相当する金銭を受領することができる。また、臨時労働者10からの希望データの入力、臨時労働者10への資金交付の振込は銀行システム14が雇用者12に代わって実行するため、雇用者12の負担も軽減される。
【0055】
なお、本実施形態では、銀行システム14において労働データの入力及び管理、給与データの作成及び管理、資金交付希望データの入力及び管理を行っているが、他のコンピュータシステムにこれらの処理を分散させることも可能である。
【0056】
図10には、この場合の概念構成図が示されている。臨時労働者10、雇用者12、銀行システム(銀行コンピュータ)14の他に、労働管理コンピュータ16及び資金交付管理コンピュータ18を備える。
【0057】
労働管理コンピュータ16は、臨時労働者10の労働状況を管理するコンピュータであり、臨時労働者10から送信された労働データを入力する。労働データは、臨時労働者10から直接入力するのではなく、雇用者12の管理下にあるタイムレコーダ等から送信して入力してもよい。一つの態様としては、臨時労働者10は自己の携帯電話から労働希望日及び労働時間を入力して労働管理コンピュータ16に送信する。雇用者12は、労働管理コンピュータ16に対してASP(アプリケーションサービスプロバイダ)契約を締結し、Webページ形式などで臨時労働者10の労働希望日や労働希望時間を確認する。臨時労働者10が入力した労働希望日や労働時間は労働データとして資金交付管理コンピュータ18に送信される。労働管理コンピュータ16は、臨時労働者10の労働データを送信する際に、雇用者12において実際に提供された労働データと照合した上で送信することが好適である。労働管理コンピュータ16は、労働データの他に、各臨時労働者の時給等の基礎データも記憶しており、労働データと併せて、あるいは労働データとは別個に資金交付管理コンピュータに送信する。
【0058】
さらに、労働管理コンピュータ16は、任意のタイミングで臨時労働者10から送信された希望データを入力する。希望データは、少なくとも希望日(資金交付希望日)を含み、好適には希望日と希望金額の組み合わせからなる。労働管理コンピュータ16は、入力した希望データを記憶するとともに、資金交付管理コンピュータ18に送信する。希望日は、臨時労働者10が実際に雇用者12に対して労働を提供した日以後であるが、希望データの送信自体は労働提供日前であってもよい。労働管理コンピュータ16は、入力した希望データを記憶しておき、実際に労働が提供された日後に労働データと併せて希望データを資金管理コンピュータ18に送信する。
【0059】
労働管理コンピュータ16は、雇用者12あるいは銀行システム14とは異なる第三者の管理下にあってもよい。臨時労働者10と労働管理コンピュータ16との間、及び労働管理コンピュータ16と資金交付管理コンピュータ18との間は公衆回線、専用回線、有線、無線の任意の組み合わせで接続される。一つの接続形態は、臨時労働者10と労働管理コンピュータ1との間をインターネット回線で接続し、労働管理コンピュータ16と資金交付管理コンピュータ18との間を専用回線で接続するものである。
【0060】
資金交付管理コンピュータ18は、上述した労働データ管理ファイル14b、資金管理ファイル14c及び給与データ管理ファイル14dを備える。すなわち、資金交付管理コンピュータ18は、労働管理コンピュータ16から送信された労働データや基礎データを入力し、労働データ管理ファイル14bに格納する。そして、基本的には労働時間と時給とに基づいて日々発生する給与を算出して給与データ管理ファイル14dに順次格納する。また、資金交付管理コンピュータ18は、労働管理コンピュータ16から送信された希望データを入力し、資金管理ファイル14cに格納する。資金交付管理コンピュータ18は、日々発生する給与を順次蓄積し、希望日までに蓄積された給与データ、すなわち総給与(累計給与)が希望額以上であるか否かを判定して、振込データを作成する。振込データには、臨時労働者10を特定するデータ(ID)、雇用者12を特定するデータ(ID)、交付日、及び交付金額が含まれる。振込データは、銀行システム(銀行コンピュータ)14に送信される。銀行システム14では、振込データに応じて、交付日に交付金額に相当する額の金額を臨時労働者10の口座14fに振込み、また、雇用者12の口座14eから交付金額に相当する額の金額を引落とす。振込データは、基本的には資金交付管理コンピュータ18から銀行システム14に送信されるが、送信前あるいは送信後に雇用者12に送信してもよい。
【0061】
また、資金交付管理コンピュータ18は、雇用者12の指定する給与振込日の所定日前を締日として総給与データ及び総資金交付データを算出し、総給与データの内、資金交付として処理されていない残余の給与データを算出ないし抽出して給与振込データを作成する。給与振込データには、臨時労働者10を特定するデータ(ID)、雇用者12を特定するデータ(ID)、振込日、及び振込額が含まれる。銀行システム14では、給与振込データに応じて、振込日に給与に相当する額の金額を臨時労働者10の口座14fに振込み、また、雇用者12の口座14eから引き落とす。給与振込日は、雇用者12から資金交付管理コンピュータ18に送信してもよく、あるいは雇用者12と銀行システム14との契約により定められる場合、銀行システム14から資金交付管理コンピュータ18に送信してもよい。
【0062】
資金交付管理コンピュータ18と銀行システム(銀行コンピュータ)14との間も任意の通信回線で接続できる。一つの接続形態は、セキュリティを考慮した専用回線である。資金交付管理コンピュータ18は、銀行システム14の管理下にあってもよい。この場合、資金交付管理コンピュータ18は銀行システム14の一部として機能することになり、労働データや希望データは労働管理コンピュータ16を介して臨時労働者10から銀行システム14に提供されることになる。
【0063】
本実施形態では、労働者として臨時労働者10を例にとり説明したが、アルバイトやパートの他、派遣社員や正規の社員にも同様に適用することができる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、労働者の希望する態様で給与を支払うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の概念構成図である。
【図2】図1における銀行システムの構成ブロック図である。
【図3】労働データ管理ファイルの説明図である。
【図4】資金管理ファイルの説明図である。
【図5】給与データ管理ファイルの説明図である。
【図6】給与と交付貸金との関係を示す説明図(その1)である。
【図7】給与と交付資金との関係を示す説明図(その2)である。
【図8】給与と交付資金との関係を示す説明図(その3)である。
【図9】実施形態の全体処理フローチャートである。
【図10】他の実施形態の概念構成図である。
【図11】従来の賃金支払システム構成図である。
【図12】図11における銀行システムの構成ブロック図である。
【符号の説明】
10 臨時労働者、12 雇用者、14,114 銀行システム(銀行コンピュータ)、16 労働管理コンピュータ。
Claims (1)
- 労働者が雇用者に対して労働を提供することで順次累計される給与を、予め設定された給与日、及び前記給与日前であって労働者の希望する任意のタイミングにおいて支払う給与支払いシステムであって、
該給与支払いシステムは、銀行口座にアクセスして引落処理及び振込処理を実行する銀行コンピュータを有し、該銀行コンピュータは、データを入力するインタフェース、前記インタフェースに接続された記憶装置、及び前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理するとともにデータ処理結果に応じて前記引落処理及び振込処理を実行する処理装置を有し、
前記インタフェースは、労働者端末から送信された、前記労働者が前記雇用者に対して労働を提供した後でかつ前記給与日前の任意の日を指定する希望日データ及び任意金額の資金データを入力するとともに、前記労働者の労働状況を管理するコンピュータから送信された、前記労働者の労働が提供される毎の労働データを入力し、
前記記憶装置は、前記給与日と、前記インタフェースから入力された前記労働者の労働データを格納する労働データ管理ファイルと、前記労働データに基づき順次算出された前記労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び前記労働者に資金交付された金額データを格納する給与データ管理ファイルと、前記インタフェースから入力された希望日データ及び任意金額の資金データを格納する資金データ管理ファイルとを記憶し、
前記処理装置は、
前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルの希望日データにより指定される日に、
前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の資金データで特定される金額を取得するとともに、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記希望日データにより指定される日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記資金データで特定される金額と前記残余の給与金額とを大小比較する比較処理を実行し、
前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲内である場合に、前記労働者の口座に対して前記資金データで特定される金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額の引落処理を実行し、
前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲を超える場合に、前記振込処理を拒否する処理を実行し、又は、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行し、
前記給与データ管理ファイルの前記資金交付された金額データを更新し、かつ、
前記記憶装置に記憶された給与日に、
前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記給与日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行する
ことを特徴とする給与支払いシステム。
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