JP3685236B2 - 曝気槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は曝気槽に係り、特に下水や産業排水等の処理に使用される曝気槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、下水処理や産業排水処理の分野では、被処理水中のBODや窒素を高速且つ短時間で処理するために、微生物を高濃度で固定化する固定化微生物法が広く用いられている。例えば、被処理水を硝化する場合では、硝化菌を高分子ゲルに固定化した担体が、図9に示すような曝気槽1内の被処理水2に投入されている。曝気槽1には、散気手段3が設けられ、この散気手段3が細かい気泡状のエアを吹き出して溶存酸素を供給すると共に、被処理水2を攪拌している。これにより、担体4は流動し、溶存酸素を取り入れながら被処理水2に接触して、効率よく被処理水2を浄化する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の曝気槽では、図9に示したように、担体が曝気槽の底部に滞留し、溶存酸素及び被処理水に接触しにくくなって被処理水の浄化効率が低下するという欠点が生じる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、担体を滞留させることなく確実に流動させて、被処理水の浄化効率を向上させることのできる曝気槽を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決する為の手段】
本発明は前記目的を達成するために、供給管から被処理水が槽内に供給されると共に、該槽内の底部に配設した散気手段から上方に向かって曝気される曝気エアで微生物固定化担体を前記被処理水中で流動させることにより、前記被処理水を前記微生物固定化担体で生物学的に浄化する曝気槽において、前記供給管の出口を前記槽内の底部に配置すると共に、前記出口に前記被処理水を前記散気手段に向かって吐出する吐出手段を設け、前記吐出手段と前記散気手段は、長尺状に形成され、前記槽内の底面に、交互に且つ平行に配置されることを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、被処理水を槽内に供給する供給管の出口を槽内の底部に配置すると共に、その出口に被処理水を吐出する吐出手段を設けて、吐出手段から散気手段に向けて被処理水を吐出するようにした。これにより、散気手段の位置で上昇する上昇水流と、槽の底部で吐出手段から散気手段へ流れる水流とが形成されて、槽内を循環する循環流が形成される。従って、槽の底部に落下する担体は、吐出手段が吐出して形成した水流によって散気手段まで運ばれ、散気手段が形成する水流によって上昇するので、担体が槽の底部に滞留することはない。しかも、吐出手段を供給管に連結させて、曝気槽に供給する被処理水を吐出手段から吐出するので、コストを向上させることなく浄化効率を向上させることができる。
【0006】
また、本発明は、曝気槽の使用状況によって適正な散気量が決定している散気手段だけでなく、吐出速度等の各条件を変更できる吐出手段によって循環流を形成しているので、担体の流動を簡単に制御することができる。例えば、吐出手段が吐出する吐出速度や吐出口の高さ等から、吐出手段から吐出した被処理水が担体を流動させる流動距離を求めることができる。従って、吐出手段と散気手段との間隔を前記流動距離に設定すると、担体を堆積させず確実に流動させる水流を形成することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って、本発明に係る曝気槽の好ましい実施の形態について詳説する。尚、本実施の形態は、被処理水の硝化を行う曝気槽10の例で説明する。
図1は、曝気槽10の縦断面図であり、図2は、本発明の要部を示した図1の部分拡大図である。
【0008】
図1に示すように、曝気槽10は、脱窒槽12の後段に設けられ、内部に被処理水14が満たされている。この被処理水14には、硝化菌を固定化した担体16(図4参照)が投入されている。硝化菌の固定化は、付着固定でも包括固定でもよい。
また、曝気槽10は主として、吐出装置20及び散気装置22で構成されている。吐出部材20及び散気部材22は、長尺状に形成され、曝気槽10の底面に後述する所定の間隔Lをおいて交互に且つ平行に配置される。
【0009】
吐出装置20は、図2に示すように、断面略5角形の中空状に形成され、一端に供給管26が連結されている。供給管26は、ポンプ24を介して脱窒槽12に連通しており、ポンプ24を駆動することにより被処理水14が吐出装置20に送液される。
また、吐出装置20の両側板下部には、スリット状に開口した吐出口28が設けられている。これにより、吐出口28から両隣に設けられた散気装置22に向けて、脱窒槽12から送液された被処理水14を吐出することができる。吐出口28の上端には、つば部30が設けられており、吐出口28から被処理水を水平に、即ち、曝気槽10の底面に沿って吐出することができる。
【0010】
散気装置22は、中空の断面矩形状に形成され、上面には無数の細かな孔の開いた散気板32が設けられる。散気装置22の一端には、送気管34が連結し、この送気管34には、ブロア36が連結される。これにより、ブロア36を駆動すると、エアが送気管34を介して散気装置22に送気され、散気板32の孔より被処理水14中に上向きに散気される。
【0011】
以下に、吐出装置20と散気装置22との所定の間隔Lについて詳説する。
曝気槽10を起動する際、担体16は、曝気槽10の底部に堆積しているので、吐出装置20から吐出する被処理水14は、堆積した担体16を全て流動させなければならない。吐出装置20から吐出した被処理水14が、堆積した担体16を全て流動させることのできる流動距離Lは、吐出口28の高さをh[m]、吐出装置14が吐出する吐出速度をV[m/s]、担体16の密度をρP [kg/m3 ]、被処理水14の密度をρ[kg/m3 ]、重力加速度をg[m/s2 ]とすると、次式(1)で表される。
【0012】
【数1】
L=a×g-1/2×〔(ρP /ρ)−1〕-1/2×h1/2 ×V …(1)
ここで、aは、実験から求められる係数であり、上記した曝気槽10で実験を行った結果、5〜7であった。従って、被処理水14の吐出流量、即ち、吐出口28の高さhと吐出流速Vから、担体16を流動させることのできる流動距離Lを求めることができる。この求めた流動距離Lを、図2に示したように、散気装置22と吐出装置20との間隔とすると、曝気槽10の底部に落下した担体16を堆積させることなく流動させることができる。このように、曝気槽10では、被処理水14の吐出流量から所定の間隔Lを決定することができる。また、吐出装置20と散気装置22を設置した後であっても、被処理水14の吐出流量を調節することにより、担体16の滞留を防ぐことができる。
【0013】
次に、上記の如く構成された曝気槽10の作用について詳説する。
図3は、曝気槽10の作用説明図であり、曝気槽10の一部上面図を示している。また、図4は図3の縦断面図である。尚、図中、供給管26及び送気管34は省略する。
先ず、曝気槽10を起動して、ポンプ24及びブロア36を駆動する。ポンプ24を駆動すると、脱窒槽12から吐出装置20に被処理水14が送液されて、両側板に設けられた吐出口28からこの被処理水14が吐出する。即ち、曝気槽10の底面に沿って水平水流40が形成される。上述したように散気装置22と吐出装置20は、その間隔が流動距離Lとなるように設置しているので、曝気槽10の起動時に曝気槽10の底部に堆積している担体16を、吐出した被処理水14によって確実に散気装置22の上方に流動させることができる。
【0014】
また、ブロア36を駆動させてエアを散気装置22に送気すると、散気装置22の上面の散気板32からエアが被処理水14中に吹き出される。吹き出されたエアは、細かな気泡38となって周囲の被処理水14と共に上昇するので、上昇水流42が形成される。これにより、散気装置22の上方まで流動した担体16は、上昇水流42によって水面近くまで流動する。
【0015】
また、水平水流40及び上昇水流42が形成されると、散気装置22上方の水面近辺から吐出装置20に流れる水流44が誘発される。これにより、水面近くまで流動した担体16は、落下して曝気槽10の底面まで流動する。吐出装置20は、前述したように十分に担体16を流動させる量の被処理水が吐出されているので、落下した担体16は、曝気槽10の底部に滞留することなく、再び散気装置22の上方まで流動する。
【0016】
このように、本実施の形態の曝気槽10では、上面から散気する散気装置22と、散気装置22に向けて被処理水14を吐出する吐出装置20とを曝気槽10の底面に所定の間隔Lで設置したので、担体16を曝気槽10の底部に滞留させることなく確実に流動させることができる。これにより、被処理水14の浄化効率を向上させることができる。
【0017】
また、吐出装置20と供給手段であるポンプ24を連結して、曝気槽10に供給する被処理水を吐出装置20から吐出しているので、コストを上昇させることなく、浄化能力を向上させることができる。
尚、散気装置22と吐出装置20は、上述した形状や配置に限定するものではない。例えば、図5は、曝気槽10において、吐出装置20の側面の片側にのみ吐出口28を形成した場合である。この場合、散気装置22は、吐出口28側には所定の間隔Lで配置し、吐出口28の反対側には吐出装置22に近接して設置する。これにより、吐出装置20の近くにも上昇水流が形成されるので、吐出装置20の上方で担体16の濃度が高くなることはない。これにより、担体16は、均一な濃度で流動するので、浄化効率を向上させることができる。
【0018】
また、図6及び図7に示すように、散気装置22と吐出装置20を設置してもよい。尚、図6は上面図であり、図7は、図6のA─A断面図である。
これらの図に示す曝気槽50は、両側面下部に内側に傾斜する傾斜面52が設けられ、この傾斜面52の下端に吐出装置20の吐出口28が設けられる。吐出装置20は、曝気槽10と同様に、ポンプ等の供給手段に連結され、被処理水14を吐出して曝気槽50の底面に水平な水流54を形成する。また、曝気槽50中央の底面には、2つの傾斜面58が凸状に組み合わされており、この傾斜面58の上方位置に4個の長尺状の散気装置22が設置されている。散気装置22は、上面から散気して、上昇水流56を形成するように構成される。
【0019】
この曝気槽50では、上述した曝気槽10と同様に、曝気槽50の底部に落下した担体16は、水流56によって散気装置22の上方に流動し、散気装置22の形成する上昇水流56によって上昇して再び曝気槽50の底部に落下する。これにより、担体16を滞留させることなく、確実に流動させることができ、浄化効率を向上させることができる。尚、図8に示すように、散気装置22を囲むように吐出口28を配置すると、曝気槽50の側面部分において担体16の濃度が上昇するのを防止することができる。
【0020】
このように、本発明の曝気槽10は,曝気槽10の底部から上昇水流を形成する散気装置22と、曝気槽10の底面に沿って散気装置22への水流を形成する吐出装置20であれば何でもよい。従って、上述した実施の形態では、散気装置22は、上面から散気したが、これに限定するものではなく、曝気槽10の底部から上昇水流を形成するのならば何でもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る曝気槽では、曝気槽の底部に、散気を行う散気手段を設置すると共に、被処理水を散気手段に向けて吐出する吐出手段とを設けたので、微生物固定化担体を滞留させることなく確実に流動させることができる。これにより、コストを上昇させることなく、被処理水の浄化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る曝気槽の縦断面図
【図2】図1の部分断面図
【図3】図1の曝気槽の作用を説明する作用説明図
【図4】図3の上面図
【図5】吐出口を吐出装置の片側に形成した曝気槽の上面図
【図6】散気装置及び吐出装置の配置を変えた曝気槽の上面図
【図7】図6の縦断面図
【図8】別形状の吐出装置を備えた曝気槽の上面図
【図9】従来の曝気槽の断面図
【符号の説明】
10…曝気槽
14…被処理水
16…担体
20…吐出装置
22…散気装置
26…供給管
28…吐出口
Claims (2)
- 供給管から被処理水が槽内に供給されると共に、該槽内の底部に配設した散気手段から上方に向かって曝気される曝気エアで微生物固定化担体を前記被処理水中で流動させることにより、前記被処理水を前記微生物固定化担体で生物学的に浄化する曝気槽において、
前記供給管の出口を前記槽内の底部に配置すると共に、前記出口に前記被処理水を前記散気手段に向かって吐出する吐出手段を設け、前記吐出手段と前記散気手段は、長尺状に形成され、前記槽内の底面に、交互に且つ平行に配置されることを特徴とする曝気槽。 - 前記吐出手段の前記散気手段側には、その長手方向に沿ってスリット状の吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1の曝気槽。
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