JP3683866B2 - 箔転写装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被転写物に対して箔を転写する領域を決定する箔転写領域形成部と、前記箔転写領域形成部からの指令により、前記被転写物の表面に沿って移動可能な走行部とを備えると共に、前記走行部には、前記被転写物に対して垂直方向に昇降自在な移動部を設けてあり、さらに、前記移動部には、温度調節手段を備えた加熱刻印ヘッドを設けてあると共に、前記被転写物に対する圧力調節手段を前記走行部と前記移動部とに亘って設けてある箔転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被転写物に転写物である箔を文字や図形等の形状を有するように転写することが行われており、例えば、厚紙や革製品等の被転写物の表面に前記箔を転写することにより、文字の視認性や前記被転写物の装飾性を向上させていた。
【0003】
このような箔転写の方法を開示したものとして特開平11−216998号公報がある。ここでは、刻印すべき文字等の画像をコンピュータ画像上で作成し、作成された画像の画像信号は加熱刻印部に供給される。この加熱刻印部は、供給された画像信号に応答して前記作成された画像を描くように加熱刻印しながら移動する走行部を有する。そして、刻印すべき箔を刻印されるべき材料(被転写物)に重ね、前記加熱刻印部によって、前記重ねた箔及び被転写物の上から前記画像信号に応じて加熱刻印することによって画像形状に箔が刻印される。
【0004】
この箔転写方法においては、図8〜9に示したように、刻印すべき画像を作成して画像信号を出力する画像形成部B、及び、箔81を被転写物82に所定の圧力及び温度で加熱刻印する走行部87を有する加熱刻印部Aを設けた箔転写装置Xが使用され、前記走行部87には、変更可能な一定の温度で加熱し且つ変更可能な一定の圧力(刻印圧力)で刻印できる加熱刻印ヘッド11が使用されていた。
【0005】
前記箔81及び被転写物82は、前記箔81を前記の上に重ねた状態で前記加熱刻印部Aに設けられたテーブル83上に配置される。
【0006】
前記加熱刻印ヘッド11は、先端部12が尖ったペン形状をしているため画像の細かい形状を忠実に再現でき、また、コイルばね84,85等の弾性体で支持することにより常に一定の刻印圧力となるように構成してある。刻印圧力は、例えば、前記加熱刻印ヘッド11を支持するコイルばね84,85の強さ又は応力を変化させることによって設定することができるとされており、さらに、前記加熱刻印ヘッド1の温度調節は、例えば、前記加熱刻印ヘッド内にヒーター21等を配設し、このヒーター21に供給する電力を変えることによって行うことができるとされており、熱伝導性の高い筒状部材86及び先端部12を介して前記箔81を加熱していた。
【0007】
このように構成される箔転写装置Xは、ヒーター21によって前記加熱刻印ヘッド11を所定の温度に維持しつつ、前記加熱刻印ヘッド11を含んだ走行部の自重とコイルばね84,85の弾性支持力とによりバランスが保たれ、被転写物82に対して被転写物82の材料に応じた適正な圧力をかけることができるとされていた。これにより、画像形成部Bにおいて形成された画像と同一の画像が、前記加熱刻印ヘッド11によって前記被転写物82上に正確に刻印されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の箔転写装置によれば、前記加熱刻印ヘッドを含んだ走行部の重量とコイルばねの弾性支持力とによりバランスが保たれ、前記加熱刻印ヘッドに一定の刻印圧力を加える構成となっている。刻印圧力は、上述したように、前記加熱刻印ヘッドを支持するコイルばねの強さ又は応力を変化させることによって設定することができる。
【0009】
前記コイルばねは、前記被転写物を確実に押圧するため、或いは、前記箔を前記被転写物に確実に転写するために強力な応力を有するばねを用いることが望ましく、このコイルばねの強さは前記被転写物の材料に応じて最適な圧力に変更できることが望ましい。
【0010】
しかし、強力な応力を有するコイルばねを用いると、刻印圧力が高すぎるために前記被転写物に損傷を与えたりする虞があり、また、前記コイルばねの強さを前記被転写物の材料に応じて最適な刻印圧力を有するように変更しようとしても、微妙な応力の調節を行うのが困難であるという問題点があった。そのため、前記被転写物上に転写される前記箔の転写状態を前記被転写物の材料に応じて最適化するのは非常に困難となる。
【0011】
さらに、図9に示したように、前記コイルばね84,85は、その上端及び下端がストッパ93,94及びヘッド軸受95により固定されているため、常に前記加熱刻印ヘッドを含んだ走行部の重量が刻印圧力を決定する要素の一部となる。そのため、前記刻印圧力の調節は、前記加熱刻印ヘッドを含んだ走行部の重量も考慮して行わなければならず、この点においても、前記箔の転写状態を前記被転写物の材料に応じて最適化するのは非常に困難な理由の一つとなっていた。
【0012】
従って、本発明の目的は、被転写物を刻印する圧力の微調整が可能であり、被転写物の材料に応じた最適な刻印圧力で箔を被転写物に転写可能な箔転写装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
〔構成1〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、
被転写物に対して箔を転写する領域を決定する箔転写領域形成部と、
前記箔転写領域形成部からの指令により、前記被転写物の表面に沿って移動可能な走行部とを備えると共に、
前記走行部には、前記被転写物に対して垂直方向に昇降自在な移動部を設けてあり、さらに、前記移動部には、温度調節手段を備えた加熱刻印ヘッドを設けてあると共に、前記被転写物に対する圧力調節手段を前記走行部と前記移動部とに亘って設けてある箔転写装置であって、
前記移動部の重量を相殺するバランサ部材を前記走行部と前記移動部との間に介装してあり、前記バランサ部材が前記移動部の重量を相殺した状態で、前記走行部と前記移動部とに各別に設けた互いに当接可能な当接部が、当接するか近接するように構成してある点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0014】
〔作用効果1〕
前記バランサ部材は、例えば、後述の実施例にも記載したように、垂直方向かつ上向きの力で前記移動部を支持する機構等が適用可能である。
【0015】
つまり、このようなバランサ部材が前記走行部と前記移動部との間に介装してあり、前記移動部の重量を相殺した状態で前記走行部と前記移動部とに各別に設けた互いに当接可能な当接部が当接するか近接するように構成してあると、前記圧力調節手段により前記走行部と前記移動部との間隔を狭める調節を行った時には前記移動部が下降しようとするが、前記当接部同士は既に当接しているか直ちに当接するから、前記移動部は下降することは無い。
【0016】
このことは、前記加熱刻印ヘッドの刻印圧力を設定すべく調節した前記圧力調節手段の圧力が、全て前記加熱刻印ヘッドの刻印圧力になることを意味する。仮に、前記当接部同士が当初離間しているとすると、前記圧力調節手段の調節に際して前記移動部が押し下げられ、前記バランサ部材が縮められるから、前記圧力調節手段の圧力の増加分のうちのいくらかが前記バランサ部材の変形に奪われることになる。
【0017】
しかし、本構成であれば、前記被転写物の材料等に応じて前記走行部が前記被転写物を押圧する刻印圧力を設定する際には、前記圧力調節手段による設定圧力が、即ち、前記被転写物に対する移動部の刻印圧力となるため、前記移動部の重量や、前記バランサ部材の持つ力を考慮する必要がなく、圧力調節を容易に行うことが可能となる。
【0018】
従って、前記圧力調節手段によって刻印圧力の微調整が可能となり、前記被転写物上に転写される前記箔の転写状態を、前記被転写物の材料に応じて最適化することができる。また、刻印圧力が高すぎて前記被転写物に損傷を与える虞も減少する。
【0019】
〔構成2〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、上記構成1において、
前記圧力調節手段が、前記走行部に対して前記移動部の昇降方向に沿って位置調節可能な螺合部材を備えており、当該螺合部材と前記移動部とに亘って作用する加圧手段を備えてある点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0020】
〔作用効果2〕
つまり、圧力調節を行う部材が、前記走行部に対して前記移動部の昇降方向に沿って位置調節可能な螺合部材であると、圧力調節時の操作は、単に前記螺合部材を回転させる操作を行うだけでよいため、容易に圧力調節を行うことができる。
【0021】
さらに、前記加圧手段が、前記螺合部材と前記移動部とに亘って作用するものであると、前記螺合部材により調節された圧力は、容易に前記移動部に伝達される。そのため、前記移動部の前記被転写物に対する圧力調節手段は、前記加圧手段と前記螺合部材とで構成することができるため、前記圧力調節手段を単純化することができる。
【0022】
このような圧力調節手段において、前記圧力調節手段により前記被転写物を押圧する刻印圧力を変化させた時には、前記当接部同士は、当接するか近接するように構成してあるため、前記当接部同士が直ちに当接した位置となり、この状態で前記移動部の高さが決定される。つまり、前記圧力調節手段による圧力調節の際に、圧力調節前と比較して前記移動部の高さ位置は変化しない。このため、前記被転写物と前記移動部との距離の調節が簡単に行えるため、箔転写効率が向上する。
【0023】
〔構成3〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、上記構成1又は2において、
前記加熱刻印ヘッドの先端部分であるヘッド先端部に、前記被転写物と当接するボール部材を備えている点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0024】
〔作用効果3〕
つまり、前記加熱刻印ヘッドの先端部分であるヘッド先端部に、前記被転写物と当接するボール部材を備えてあれば、箔転写の際には、前記箔の表面上を前記ボール部材が転がるように移動できるため、摩擦の少ない円滑な移動が可能となる。そのため、箔の転写を容易に行うことができ、箔転写の効率化を図ることができる。
【0025】
〔構成4〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、上記構成1〜3の何れかの構成において、
前記移動部は、前記加熱刻印ヘッドの突出量を調節可能なノーズガード部材を設けてあると共に、当該ノーズガード部材には、前記被転写物に当接可能な被転写物当接面を設けてある点にあり、その作用効果は以下の通りである。
【0026】
〔作用効果4〕
つまり、前記ノーズガード部材が前記加熱刻印ヘッドの突出量を調節可能であると、前記被転写物の材料に応じて前記加熱刻印ヘッドの突出量を変化させることができる。
【0027】
また、当該ノーズガード部材には、前記被転写物に当接可能な被転写物当接面を設けてあると、前記被転写物表面に凹凸があったとしても、この被転写物当接面が前記凹凸に倣って昇降するため、前記加熱刻印ヘッドの刻印の深さを安定させることができる。そのため、前記被転写物の材料に応じた最適な転写条件を決定して前記箔の転写状態を容易に最適化することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は同一又は相当の部分を示している。
【0029】
図1に、本発明の箔転写装置の実施形態を示す。箔刻印装置Xは、主に、被転写物82に対して箔81を転写する領域を決定する箔転写領域形成部Bと、前記箔転写領域形成部Bからの指令により、前記被転写物82の表面に箔81を転写する刻印部Aとから構成してある。以下に各構成について詳述する。
【0030】
(1)箔転写領域形成部
この箔転写領域形成部Bは、被転写物82に箔転写する領域を決定するため、例えば、コンピュータ画像処理によって箔転写する文字や図形等の画像を形成でき、さらに、形成された画像に対応する画像信号を出力できるものであれば適用可能である。
【0031】
このような箔転写領域形成部Bは、パソコン等の端末101から構成され、好適な実施形態として、CAD/CAM等のシステムを使用して被転写物に箔転写する文字等や図形等の画像を作成する。
この箔転写領域形成部Bで形成された画像に対応する画像信号は、ケーブル102等によって後述の刻印部Aに転送される。
【0032】
(2)刻印部
刻印部Aは、前記箔転写領域形成部Bからの指令により、前記被転写物82の表面に箔81を転写するよう構成してある。この刻印部Aの主要な構成部材としては、例えば、前記箔転写領域形成部Bからの指令により前記被転写物82の表面に沿って移動可能な走行部87、前記走行部87を駆動させる駆動機構88、箔81及び被転写物82等の載置物80を載置するテーブル83、前記駆動機構88の制御を行う操作部89等を有している。
【0033】
前記走行部87は、図1に示したように、駆動機構88の側面に設けられた走行溝部91に沿って水平方向(図1、A−A’方向)、或いは、前記走行溝部91から突出するアーム(図示しない)により前後方向(図1、B−B’方向)に移動自在に走行部取り付け部90を介して前記駆動機構88に取付けられている。従って、前記走行部87は、前記走行部取り付け部90と共に前記駆動機構88側面を水平移動自在となっている。
【0034】
一方、前記テーブル83は、高さ方向において微調整ができるように前記駆動機構88に取付けられている。
【0035】
従って、前記テーブル83の高さを微調整した後、走行部取り付け部90が適宜移動することにより、走行部取り付け部90に取り付けられた走行部87は、テーブル83上に載置された前記載置物80表面のいかなる位置にも移動可能となる。
【0036】
ここで、走行部取り付け部90は、前記箔転写領域形成部Bからの指令に応答して移動する。そのため、前記走行部87は、前記被転写物82上に載置された前記載置物80の表面上を、前記箔転写領域形成部Bにおいて決定された領域と同一の領域を正確に移動することができる。
【0037】
尚、前記操作部89は、走行部取り付け部90の動作を制御可能であるため、走行部取り付け部90を、前記操作部89から制御して移動させることも可能である。
【0038】
図2〜6に示したように、前記走行部87は、前記被転写物82に対して垂直方向に昇降自在な移動部10、前記移動部10を収容する収容筒部材31、前記移動部10の重量を相殺するバランサ部材41等を有している。
以下に前記走行部87の各構成を詳述する。
【0039】
(2−1)移動部
前記移動部10は、前記被転写物82に対して垂直方向に昇降自在に構成してある。図3〜4に示したように、前記移動部10は、芯部材13、芯部材ホルダー14、ホルダー収容部材15を有する。
【0040】
前記芯部材13は中空の筒状部材であり、先端側には熱伝導性の優れた加熱刻印ヘッド11を設けてある。この加熱刻印ヘッド11は前記被転写物82と直接接する部位である。前記加熱刻印ヘッド11の先端は、細かい形状を正確に刻印するためにペン状に尖っているのが好ましいが、画像や文字の形状等に応じて適宜変更することもできる。前記加熱刻印ヘッド11の先端には、耐摩耗性を有する材料等で形成するのが好ましい。
【0041】
前記芯部材ホルダー14は中空の筒状部材であり、前記芯部材13を装入保持する部材である。前記ホルダー収容部材15は中空の筒状部材であり、前記芯部材13を装入保持した前記芯部材ホルダー14を装入保持する部材である。
【0042】
前記ホルダー収容部材15の内周には係止部15aが設けられており、この係止部15aが前記芯部材13の係止部13bと当接することにより前記芯部材13は前記ホルダー収容部材15内で係止する。また、前記芯部材13の中間付近の外周には係止部13aが設けられており、この係止部13aが前記芯部材ホルダー14の係止部14aと当接することにより前記芯部材ホルダー14は係止する。
【0043】
従って、芯部材13、芯部材ホルダー14及びホルダー収容部材15から構成される移動部10は、これら3つの部材が一体となって前記収容筒部材31に対して昇降可能となる(図5〜6参照)。
【0044】
前記ホルダー収容部材15の端部外周壁には、例えばEリング等のリング部材22を装着可能なリング装着溝16が設けられている。
【0045】
(2−1−1)温度調節手段
また、前記加熱刻印ヘッド11の中空部分には温度調節手段21を備えている。前記温度調節手段21は、セラミックヒーター等が適用可能であり、この温度調節手段21に接続された配線103は、中空の前記芯部材13内部を経て外部に設けられたヒーターコントローラー104と接続されている。そのため、前記温度調節手段21は所定温度に調節可能となり、前記加熱刻印ヘッド11の内周壁と当接するように前記温度調節手段21を配置すると、熱伝導性の優れた前記加熱刻印ヘッド11は温度調節可能となる。
【0046】
この時、前記箔81の材質にも左右されるが、一般に、前記加熱刻印ヘッド11の温度が高すぎると転写された箔の光沢が失われ、温度が低すぎると箔が前記被転写物82に転写され難いということが知られている。そのため、前記加熱刻印ヘッド11は、140〜180℃程度に調整することが好ましい。
【0047】
(2−1−2)圧力調節手段
前記ホルダー収容部材15には、前記被転写物82を含む載置物80に対する圧力調節手段92が設けてある。
この圧力調節手段92は、例えば、前記走行部87に対して前記移動部10の昇降方向に沿って位置調節可能な螺合部材51を備えており、当該螺合部材51と前記移動部10とに亘って作用する加圧手段42を備えてあるように構成してある。
【0048】
前記螺合部材51は、前記走行部87に対して前記移動部10の昇降方向に沿って位置調節可能に設けられており、例えば、後述の収容筒部材31にネジ溝54において螺合することにより装着される。そのため、前記螺合部材51を前記収容筒部材31に対して回転させてそれらの軸線方向位置を変えることにより、前記螺合部材51の収容筒部材31に対する軸線方向位置が調節され、前記走行部87に対する位置の調節が可能となる。
【0049】
前記加圧手段42は、前記螺合部材51と前記移動部10とに亘って作用する部材であり、例えば、直径1.6mmの線材からなるコイルばね等により形成される。
詳述すると、前記加圧手段42の下端は、前記ホルダー収容部材15の下部に装着されているワッシャ23により係止されており、前記加圧手段42の上端は、前記加圧手段42の一部を収容する加圧手段収容部52の係止部53により係止されている。
【0050】
この加圧手段42を圧縮するように前記螺合部材51を調節すると、前記加圧手段42が前記ワッシャ23を押圧することになる。前記ワッシャ23は前記ホルダー収容部材15に装着されているため、前記加圧手段42が前記ワッシャ23を押圧する力は前記移動部10に伝達され、載置物80を押圧することができる。
【0051】
尚、前記ワッシャ23は、前記加圧手段42が有するバネの強度等に応じて適宜枚数を装入することができる。本実施例には3枚のワッシャ23を装入した場合を例示してある。
【0052】
前記加圧手段42の加圧力は、前記被転写物82の材料等に応じて変更する必要がある。そのため、前記螺合部材51を前記走行部87に対して前記移動部10の昇降方向に沿って位置調節することにより、前記加圧手段42の上端から下端の幅を変更でき、これにより前記加圧手段42の加圧力を調節することができる。
【0053】
具体的には、前記螺合部材51を下降させる位置調節をした場合は、前記加圧手段42の上端から下端の幅を狭める調節となって前記加圧手段42の圧縮力が増大し、前記螺合部材51を上昇させる位置調節をした場合は、前記加圧手段42の上端から下端の幅を広げる調節となって前記加圧手段42の圧縮力が減少する。
【0054】
従って、前記圧力調節手段92を設けた前記移動部10は、前記被転写物に対して圧力調節可能となる。
【0055】
尚、前記圧力調節手段92の外表面には、調節用の目印等を適宜設けることが可能である。
【0056】
(2−1−3)ボール部材
図7に示したように、この加熱刻印ヘッド11の先端部分であるヘッド先端部12に、前記被転写物と当接するボール部材17を備えることが可能である。これにより、前記ボール部材17は前記箔81の表面上を転がるように移動できるため、箔の転写を容易に行うことができる。
【0057】
(2−2)収容筒部材
前記収容筒部材31は、前記移動部10を収容する部材であり、好ましくは、スピンドル等のような中空の筒状部材である。
前記収容筒部材31の内周壁の摺動部32は、前記移動部10におけるホルダー収容部15の外周壁と当接する。前記収容筒部材31の内径は、前記ホルダー収容部15の外径より、例えば0.001mm程度大きくなるように設定する。
【0058】
また、前記摺動部32より大径に形成される前記収容筒部材31の内周壁と前記ホルダー収容部15の外周壁とで囲まれる空間には、後述のバランサ部材41を収容するバランサ部材収容部33が設けられている。
【0059】
また、前記収容筒部材31は、スリーブ部材7を介して前記走行部取り付け部90に固定されている。このスリーブ部材7には、ネジ穴71が設けられており、このネジ穴71にネジを装入してネジ締めすることにより前記収容筒部材31が前記スリーブ部材7に固定される。
【0060】
(2−3)バランサ部材
前記バランサ部材41は、前記移動部10の重量を相殺する部材であり、前記走行部87と前記移動部10との間に介装してある。例えば、前記バランサ部材41は、直径1.6mm程度のコイルばね等により形成し、前記バランサ部材収容部33に収容して垂直方向かつ上向きの力で前記移動部10を支持する。
【0061】
また、前記バランサ部材41は、コイルばねに限らず、空気圧を利用したエアスプリングやエアダンパー等を使用することも可能であるが、本実施例では、前記コイルばねを適用した場合を例示し、他の部材においても、このコイルばねを適用した場合を想定して各部材を設計したものを例示する。
【0062】
前記バランサ部材41の下端は、前記収容筒部材31の内周壁に設けられたバネ係止部34aにより係止されており、前記バランサ部材41の上端は、前記リング装着溝16に装着されたリング部材22により係止されている。
【0063】
つまり、前記リング部材22は前記ホルダー収容部15の外周壁に装着されているため、前記移動部10は、前記バランサ部材41により上向きに支持され、前記移動部10の重量が相殺される。
【0064】
そして、前記バランサ部材41が前記移動部10の重量を相殺している状態では、前記移動部10と前記収容筒部材31とに各別に設けた互いに当接可能な当接部が当接するか、或いは、極めて小さな隙間を有する状態で近接しているのが好ましい。前記当接部は、図5〜6に示したように、前記移動部10の側に設けたものを当接部35a、前記収容筒部材31の側に設けたものを35bとする。
【0065】
本構成であれば、以下の効果を有する。即ち、前記加熱刻印ヘッド11の刻印圧力を調節する際には、前記圧力調節手段92における前記螺合部材51を螺進させる。この時、前記加圧手段42の押圧力によって前記移動部10が下降しようとするが、前記当接部35a,35bとは既に当接しているか直ちに当接するから、前記移動部10は下降することは無い。このことは、前記加熱刻印ヘッド11の刻印圧力を設定すべく調節した前記圧力調節手段92における前記加圧手段42の押圧力が、全て前記加熱刻印ヘッド11の刻印圧力になることを意味する。仮に、前記当接部35a,35bとが当初離間しているとすると、前記圧力調節手段92における前記加圧手段42の調節に際して前記移動部10が押し下げられ、前記バランサ部材41が縮められるから、前記圧力調節手段92における前記加圧手段42の押圧力の増加分のうちのいくらかが前記バランサ部材41の変形に奪われることになる。
【0066】
しかし、本構成であれば、前記圧力調節手段92における前記加圧手段42の設定圧力は、即ち、前記加熱刻印ヘッド11の刻印圧力となるから、刻印圧力の概念が明解になり、刻印圧力の設定作業が容易となる。
【0067】
これにより刻印圧力の微調整が可能となり、前記被転写物82上に転写される前記箔81の転写状態を前記被転写物82の材料に応じて最適化することができる。
【0068】
(2−4)ノーズガード部材
以上の構成を有する走行部87において、前記移動部10には、前記被転写物82に当接可能な被転写物当接面69を有すると共に、前記加熱刻印ヘッドの突出量を調節可能な以下に詳述するノーズガード部材を設けることが可能である。
【0069】
このノーズガード部材61は、例えば、図7に示したように、ノーズガード部材本体64が、前記移動部10(ホルダー収容部材15)に対しネジ溝62で螺合して装着される。そして、前記被転写物82に当接する被転写物当接面69を有する当接部材65がネジ溝63において前記ノーズガード部材本体64に螺合装着されている。
【0070】
また、前記当接部材65には、前記加熱刻印ヘッド11の先端部分が突出する突出孔66が設けられている。また、前記被転写物当接面69の周辺部は、前記載置物80に対する滑りを良くするために、面取りを行った構成としてもよい。
【0071】
そして、このノーズガード部材本体64を前記ホルダー収容部材15に対して回転させてその軸線方向位置を変えることにより、前記ノーズガード部材本体64の前記ホルダー収容部材15に対する軸線方向位置が調節される。これにより、前記突出孔66から突出している前記加熱刻印ヘッド11の突出量が調節可能となる。つまり、前記被転写物82の材料に応じて前記加熱刻印ヘッド11の突出量を変化させることができると共に、前記加熱刻印ヘッド11の刻印の深さを安定させることができる。
【0072】
尚、図2に示したように、ノーズガード部材本体64の外周には、前記加熱刻印ヘッド11の突出量を示す目盛り67が設けられており、好ましくは前記ホルダー収容部材15の外周に固定された目盛り指示部材68等を備えることにより、現時点での前記加熱刻印ヘッド11の突出量を確認できる。前記目盛り67の1目盛りは、前記ネジ溝62のピッチに応じて設定でき、例えば、1目盛りの調節で前記加熱刻印ヘッド11の突出量が0.025mm変化するように設定することが可能である。
【0073】
【実施例】
上述した本発明の箔転写装置を使用して、本の表紙に箔転写する場合を説明する。
【0074】
まず、前記箔転写領域形成部Bの端末101において、本の表紙に転写する文字等の画像を作成する。そして、この箔転写領域形成部Bで形成された画像に対応する画像信号は、ケーブル102経由で刻印部Aに転送される。
【0075】
次に、表紙の材料となる被転写物82を刻印部Aのテーブル83に載置し、その上に箔81を重ね、更に、その上にパラフィン紙を重ねたものを載置物80として、これらを固定する。前記パラフィン紙は、必ずしも使用しなくてもよいが、前記加熱刻印ヘッド11の滑りを良くする、前記加熱刻印ヘッド11が前記載置物80に鋭く食込むのを緩和する、或いは、前記加熱刻印ヘッド11による加熱が局所的に行われるのを防止するためには使用した方が好ましい。
【0076】
前記載置物80を固定後、前記テーブル83の高さを微調整した後、操作部10により加熱刻印ヘッド11を刻印開始位置にセットする。この時、前記被転写物82の材料に応じて刻印圧力を前記圧力調節手段92により調節することが可能である。
【0077】
そして、前記操作部10に設けられたスタートボタンを押して刻印を開始する。前記加熱刻印ヘッド11は、転送された画像信号に応じて前記載置物80の最上層に固定されているパラフィン紙の表面上を滑りながら前記画像信号に応じた領域を加熱刻印する。
【0078】
この時、前記加熱刻印ヘッド11は、前記ヒーターコントローラー104により所定温度に維持されている。前記所定温度は前記被転写物82の材料等によって適宜設定可能であるが、好ましくは前記ヘッド先端部12が約180℃になるように調節する。さらに、前記加熱刻印ヘッド11の突出量は、0.2〜0.3mm程度になるように前記ノーズガード部材61を調節する。前記加熱刻印ヘッドの高さ及び刻印圧力もまた、箔の材料及び前記被転写物82の材質及び厚さ等によって適宜調節される。
【0079】
前記加熱刻印ヘッド11の箔転写速度は、転写する文字や図形の形状により異なるが、最大で35mm/秒程度であれば、斑の無い仕上がりが期待できる。
【0080】
刻印が終了すると、前記載置物80をテーブル83から取り外し、次いで、パラフィン紙と箔81とを被転写物82から剥がすと、加熱刻印された箔の部分のみが前記被転写物82上に残り、余分の箔部分はパラフィン紙と共に除去されるため、文字や図形が前記被転写物82に転写される。
【0081】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏するものであれば、各部構成を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の箔転写装置の概略図
【図2】走行部の側面概略図
【図3】走行部を構成する各部材の相関概略図
【図4】移動部を構成する各部材の相関概略図
【図5】走行部の要部概略図
【図6】箔転写時の要部概略図
【図7】ヘッド先端部近傍の要部概略図
【図8】従来の箔転写装置の概略図
【図9】従来の加熱刻印ヘッドの概略図
【符号の説明】
X 箔転写装置
10 移動部
31 収容筒部材
41 バランサ部材
35a,b 当接部
Claims (4)
- 被転写物に対して箔を転写する領域を決定する箔転写領域形成部と、
前記箔転写領域形成部からの指令により、前記被転写物の表面に沿って移動可能な走行部とを備えると共に、
前記走行部には、前記被転写物に対して垂直方向に昇降自在な移動部を設けてあり、さらに、前記移動部には、温度調節手段を備えた加熱刻印ヘッドを設けてあると共に、前記被転写物に対する圧力調節手段を前記走行部と前記移動部とに亘って設けてある箔転写装置であって、
前記移動部の重量を相殺するバランサ部材を前記走行部と前記移動部との間に介装してあり、前記バランサ部材が前記移動部の重量を相殺した状態で、前記走行部と前記移動部とに各別に設けた互いに当接可能な当接部が、当接するか近接するように構成してある箔転写装置。 - 前記圧力調節手段が、前記走行部に対して前記移動部の昇降方向に沿って位置調節可能な螺合部材を備えており、当該螺合部材と前記移動部とに亘って作用する加圧手段を備えてある請求項1に記載の箔転写装置。
- 前記加熱刻印ヘッドの先端部分であるヘッド先端部に、前記被転写物と当接するボール部材を備えている請求項1又は2に記載の箔転写装置。
- 前記移動部は、前記加熱刻印ヘッドの突出量を調節可能なノーズガード部材を設けてあると共に、当該ノーズガード部材には、前記被転写物に当接可能な被転写物当接面を設けてある請求項1〜3の何れか一項に記載の箔転写装置。
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