JP3683606B2 - HMG−CoAリダクターゼ抑制剤およびその中間体の酵素ヒドロキシル化製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はHMG−CoAリダクターゼ抑制剤およびその中間体の酵素ヒドロキシル化製造法、更に詳しくは、HMG−CoAリダクターゼ抑制剤としておよび/またはHMG−CoAリダクターゼ抑制の製造の中間体として有用な化合物の酵素ヒドロキシル化法による製造法に関する。
【0002】
【発明の構成と効果】
本発明は、式:
【化6】
(式中、Rは−C(CH3)2−CH2−CH3または−CH(CH3)−CH2−CH3;
Zは式:
【化7】
の開鎖成分基または式:
【化8】
のラクトン基;および
R2は水素である)
の化合物(I)の製造法であって、式:
【化9】
(式中、R,ZおよびR2は上記式Iの場合と同意義である)
の化合物(II)を、該化合物(II)のヒドロキシル化を触媒して、上記化合物(I)を形成しうる微生物と、または該微生物から誘導される酵素あるいは該酵素の構造を有する酵素と接触せしめ、次いでヒドロキシル化を行う工程から成り、
上記微生物はアミコラータ(Amycolata)属、サッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属、サッカロスリックス(Saccaharothrix)属またはジルベールテラ(Gilbertella)属から選ばれ、但し、化合物(II)がコンパクチン(compactin)のとき、微生物はアミコラータ属でないことを特徴とする製造法を提供するものである。
【0003】
本発明の酵素ヒドロキシル化法(製造法)は、それ自体がHMG−CoAリダクターゼ抑制活性を呈しうる、および/または他のHMG−CoAリダクターゼ抑制剤の製造の中間体として使用しうる、化合物(I)を得る有効な手段を付与する。すなわち、本発明のヒドロキシル化法を採用することにより、副生物の減少または削除が達成され、またこのヒドロキシル化法は、穏やかな反応条件下で行うことができる。
以下、本発明方法について詳述する。
【0004】
定義
本明細書において、単独または他の基の一部として用いる各種語句の定義は、以下の通りである。
「酵素法」とは、酵素または微生物を用いる方法を意味する。
「アルキル」とは、ノルマル鎖の炭素数1〜12、好ましくは1〜6の、必要に応じて置換された直鎖および分枝鎖炭化水素基の両方を意味し、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、これらの各種分枝鎖異性体等が挙げられる。置換基の具体例としては、ハロ(特にクロロ)、トリハロメチル、アルコキシ(たとえば2つのアルコキシ置換基がアセタールを形成する場合)、非置換アリール(たとえばフェニル)、アルキル−アリールまたはハロアリールなどのアリール、非置換シクロアルキルまたはアルキル−シクロアルキルなどのシクロアルキル、ヒドロキシまたは保護されたヒドロキシ、カルボキシル、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノ、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ、アセチルアミノなどのアルキルカルボニルアミノ、アミノ、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、およびアルキルチオの群から選ばれる少なくとも1つの基が包含される。好ましいアルキルの置換基は、ヒドロキシ基である。
【0005】
「アルケニル」とは、アルキルの場合に上述した、必要に応じて置換された直鎖または分枝鎖炭化水素基であって、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するものを意味する。
「シクロアルキル」とは、好ましくは1〜3つの環およびホモ環式環1つ当り3〜12、好ましくは3〜8つの炭素を有する、必要に応じて置換された飽和ホモ環式炭素環系を意味し、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、およびアダマンチルが挙げられる。任意の置換基の具体例としては、上記アルキル基の少なくとも1つ、またはアルキルの置換基で上述した基の少なくとも1つが包含される。
【0006】
「アリール」とは、環部の炭素数6〜12のモノ環式またはジ環式置換または非置換芳香族基を意味し、たとえばフェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルが挙げられる。置換基(好ましくは3つもしくはそれ以下)の具体例としては、非置換アルキル、ハロアルキルまたはシクロアルキルアルキルなどのアルキル、ハロゲン、非置換アルコキシまたはハロアルコキシなどのアルコキシ、ヒドロキシ、フェニルまたはハロフェニルなどのアリール、フェノキシなどのアリールオキシ、アルキルカルボニルオキシまたはアロイルオキシ、アリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノまたはアリールカルボニルアミノなどのアミド、アミノ、ニトロ、シアノ、アルケニル、チオール、アルキルカルボニルまたはアリールカルボニル、またはメチレンジオキシ(ここで、メチレン基は低級アルキル基、すなわち、上述の炭素数1〜6のアルキル基、アリールアルケニル基および/またはアルキルチオ基で置換されていてもよい)の群から選ばれる少なくとも1つの基が包含される。
【0007】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、塩素、フッ素、臭素または沃素を意味する。
「塩」とは、酸性塩および/または無機および/または有機塩基によって形成される塩基性塩を指称する。非毒性の医薬的に許容しうる塩が好ましい。医薬的に許容しうる塩の具体例としては、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛およびテトラメチルアンモニウムなどのカチオンから形成される塩並びにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リシン、アルギニン、オルニチン(ornitine)、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1'−イル−メチルベンズイミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのアミンから形成される塩が包含される。
【0008】
「医薬的に許容しうるカチオン」とは、たとえば上述の、医薬的に許容しうる塩を形成する陽カウンターイオンを意味する。
「ATCC」とは、微生物寄託所の、メリーランド州20852、ロックビル、パークラウン・ドライブ12301のザ・アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(the American Type Culture Collection)の受入番号を指称する。
【0009】
出発物質
本発明のヒドロキシル化法で使用すべき化合物(II)は、当業者に公知の方法によって得ることができる。かかる化合物(II)は、たとえばU.S.特許No.4450171に開示されている。
【0010】
好ましい化合物
下記式Iaを有する化合物(I)が好ましい。
【化10】
(式中、RおよびR2は式Iの記載と同意義である)
特に好ましい具体例は、式:
【化11】
のメチルプラバスタチンである。
【0011】
下記式IIaを有する化合物(II)が、出発物質としての使用に好適である。
【化12】
(式中、RおよびR2は式IIの記載と同意義である)
特に好ましい具体例は、式:
【化13】
のメチルコンパクチンである。
【0012】
二重結合が存在しない、化合物(I)、または本明細書に記載のいずれの化合物も、かかる二重結合が存在する対応化合物を、当業者に公知の方法に従って水素化することによって得ることができる。
本発明方法のいずれの生成物も、公知の方法、たとえば細胞または細胞性物質の濾去により、適当な場合には、抽出、結晶化、薄層またはカラムクロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー等によって単離および精製しうる。
【0013】
本明細書において、上記メチルコンパクチンおよびメチルプラバスタチンで示される構造を、これらの化合物の酸型と称す。これらの化合物のカルボキシル基がアルカリ金属塩の形状にある場合、該化合物を塩型と称す。
以下で説明するように、本発明のヒドロキシル化法を行うのに水性媒体の使用が好ましい。従って、Zが上述の開鎖成分基である化合物を製造したり、あるいは出発物質として用いることが好ましい。何故なら、かかる化合物は、Zがラクトン基である対応化合物より水溶性が比較的に大きいためである。Zがラクトン基である化合物(II)は、たとえば、本発明方法での使用に先立ち、加水分解することによって開鎖型にすることができる。
【0014】
酵素および微生物
本発明方法で用いる酵素または微生物は、起源または純度に拘らず、上述の変換を触媒する能力を有するものであれば、いずれの酵素または微生物であってもよい。触媒酵素の源として適当な微生物の属としては、アミコラータ、サッカロポリスポラ、アミコラトプシス、サッカロスリックスまたはジルベールテラが包含される。
本発明の使用に好適な具体種としては、アミコラータ・オートトロフィカ(Amycolata autotrophica)(たとえばATCC35204)、アミコラトプシス・メディターラネイ(Amycolatopsis mediterranei)(たとえばATCC21411)、サッカロスリックス・オストラリエンシス(Saccharothrix australensis)(たとえばATCC31497)、ジルベールテラ・ペルシカリア(Gilbertella persicaria)(たとえばATCC38591)、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(Saccharopolyspora hirsuta)(たとえばATCC27875、27876または20501)、サッカロポリスポラ・エリスラ(Saccharopolyspora erythraea)(たとえばATCC11635)等が挙げられる。特に好ましいのは、アミコラータ・オートトロフィカ(たとえばATCC35204)およびサッカロポリスポラ・ヒルスタ(たとえばATCC20501)である。
【0015】
微生物の使用に関し、上述の変換を触媒する能力を有するいずれの微生物細胞性物質をも使用して、本発明方法を実施しうる。細胞は、元の状態の湿潤細胞、あるいは凍結乾燥、噴霧乾燥または加熱乾燥などによる乾燥細胞の状態で使用しうる。また細胞は、破壊細胞または細胞抽出物などの処理細胞物質の状態でも使用しうる。細胞または細胞性物質、たとえば単離真菌菌糸体は、フリー状態で、または物理的吸着あるいは閉じ込めなどによって支持体に固定して使用することができる。本発明方法の実施に際し、少なくとも1種の微生物を使用しうる。
【0016】
本発明方法は、使用する微生物の生長に続いて実施されてよく、たとえば出発物質である化合物(II)の存在下あるいは非存在下で微生物を生長させ、微生物物質を回収し、好ましくは洗浄し(たとえば水で)、次いで得られる微生物物質を出発物質である化合物(II)と接触せしめる。また本発明方法は、現場での発酵および反応によって、すなわち、活発に生長する微生物存在下の反応によっても実施することができる。
反応は、静かな(静止)状態下、または撹拌を用いて行うことができる。出発物質の化合物(II)を活発に生長する培養物に加えるときは、フラスコ振盪培養あるいは通気兼撹拌などの撹拌の使用が好ましい。かかる場合に、消泡剤を使用しうる。
【0017】
微生物の生長は、当業者によって、たとえば炭素および窒素源などの栄養素および微量元素を含有する適当な培地の使用によって達成される。同化しうる炭素源の具体例としては、グルコース、グリセロール、マルトース、デキストリン、スターチ、ラクトース、スクロース、糖密、大豆油、綿実油等が挙げられる。同化しうる窒素源の具体例としては、大豆ミール、ピーナッツミール、綿実ミール、魚ミール、コーン浸出液、ペプトン、米ぬか、肉エキス、酵母、酵母エキス、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。かかる培地に、塩化ナトリウム、リン酸塩、炭酸カルシウムなどの無機塩を加えてもよい。また少量の金属塩または重金属を加えてもよい。
【0018】
微生物の生長の種々の段階で、同一または異なる培地を使用しうる。微生物の生長に好ましい培地は、後記実施例に記載のもので、該培地は本発明方法で採用する微生物の生長に使用しうる。
酵素を用いるとき、上述の微生物から誘導される酵素が好ましく、あるいは合成または他の方法で製造したものでもよい。たとえば、これらの酵素は遺伝子工学設計の宿主細胞から誘導しうる。遺伝子工学設計の宿主細胞自体、あるいは他の方法で変性された細胞の使用も意図されるが、この場合、かかる細胞は上記列挙した属の微生物から誘導される酵素の構造を有する酵素を産生しうることが条件である。
【0019】
反応条件
本発明方法は、水性培地(たとえば緩衝水性培地)で行ってよい。水性相は便宜上、水、好ましくは脱イオン水、あるいは適当水性緩衝剤溶液、特にリン酸塩緩衝剤溶液である。本発明のヒドロキシル化法にあっては、水性培地の使用が好ましい。
【0020】
また本発明での反応は、有機培地または有機培地と水性培地の混合物である培地で行ってもよい。有機または有機/水性培地の使用は、出発物質として水溶性の小さい化合物(II)、たとえばZがラクトン基である化合物(II)の可溶化を高めうる。水溶性の小さい出発物質は、たとえばメチルまたはエチルアルコールなどの有機溶剤に溶解し、該溶液を変換用の水性培地に加えることができる。かかる有機培地を形成する液体は水に不混和性であってよく、あるいは好ましくは、水に混合性のものであってよい。有機培地の具体例としては、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサン、キシレン、トリクロロトリフルオロエタン、メチルもしくはエチルアルコールまたはブタノールなどのアルカノール等が挙げられる。
【0021】
出発物質は、反応培地に加えるに先立ち、たとえば水またはアルコールに溶解することが好ましい。
反応培地は、液体培地1ml当り、約0.5〜3mgの化合物(II)(出発物質)を含有することが好ましい。反応培地のpHは、約6.0〜7.5が好ましい。
本発明のヒドロキシル化反応を実施するため、水または有機アルコール(たとえばメチルもしくはエチルアルコールなどのアルカノール)を加えてもよい。これらの物質は、化合物(II)(出発物質)に対してモル過剰、好ましくは多大モル過剰をもたらす量で使用することが好ましい。
【0022】
本発明方法で微生物細胞を用いる場合、その添加量は、化合物(II)(出発物質)1mg当り約10〜1000mgの量が好ましい。本発明方法で酵素を用いる場合、その添加量は、化合物(II)(出発物質)1mg当り約1〜100mgの量が好ましい。
反応培地は、約27〜40℃の温度に保持することが好ましく、最も好ましくは、約28〜34℃に保持する。反応時間は、微生物細胞によって産生される酵素の量、あるいは微生物細胞の使用量、およびその比活性に応じて、適当に変えることができる。反応時間の典型例は、約2.5〜72時間である。なお、反応時間は、反応温度の上昇および/または反応溶液に加える酵素量の増大によって、縮小してもよい。
【0023】
HMG−C o Aリダクターゼ抑制剤の製造
HMG−CoAリダクターゼ(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aリダクターゼ、EC1.1.1.34)は、コレステロール生合成の基本酵素である。この酵素の抑制剤は、抗コレステロール血症剤として、すなわち、血漿コレステロール量の低下または維持の用途が認められる。HMG−CoAリダクターゼ抑制剤は、高コレステロール血症の治療や予防に加えて、アテローム硬化症、高リポタンパク血症、および/または高リピド血症の治療や予防の用途も認められる。
【0024】
上記化合物(II)は(たとえばメチルコンパクチン)それ自体、HMG−CoAリダクターゼ抑制活性を呈することができ、および/またはHMG−CoAリダクターゼ抑制活性を有する他の化合物の製造の中間体として使用しうる。後者の場合、本発明はさらに、上記本発明方法に従ってヒドロキシル化を行った後、形成されるヒドロキシル化生成物をHMG−CoAリダクターゼ抑制剤の製造に用いる(たとえば各種基を脱保護、付加または他の方法で変性する)方法から成る方法を提供する。好ましくは、このようにして製造した抑制剤は、その製造原料のヒドロキシル化生成物が有しうるようなHMG−CoAリダクターゼ抑制活性と比べて該活性が増大している。
【0025】
本発明方法に従って得られるHMG−CoAリダクターゼ抑制剤は、たとえば、当業者にとって公知の方法に従い選ばれた方式および用量で、哺乳動物(特にヒト)に投与することができる。
【0026】
本発明のHMG−CoAリダクターゼ抑制剤の特に好ましい製造法は、
(A)Rが
【化14】
である化合物(IIa)を、アミコラータ・オートトロフィカ(ATCC35204)またはサッカロポリスポラ・ヒルスタの亜種コベンシス(kobensis)(ATCC20501)でヒドロキシル化して、式:
【化15】
の構造を有するメチルプラバスタチンを得ることから成る。
【0027】
【実施例】
次に挙げる実施例は、本発明の好ましい具体例を示すが、特許請求の範囲に記載の技術的範囲または精神を限定するものではない。これらの実施例(本発明対象外の微生物の使用を含む)で用いる培地の成分は、以下の通りである。
【0028】
培地 培地組成
M124 セレロース10g/L、NZアミンB 15g/L、酵母エキス10g/L、NaCl 5g/L、CaCO3 1g/L、全体を水道水で1L(オートクレーブによる滅菌処理の前にpH6.8〜7.0 に調整)
ブイヨン1 ビーフインフュージョン300g/L、カザミノ酸,テクニカル
(注1) 17.5g/L、スターチ1.5g/L、全体を蒸留水または脱イ オン水で1L(沸とう加熱して完全溶解、最終pH7.4)
ブイヨン2 トリプチケース・ペプトン17g/L、フィトン・ペプトン3g/
(注2) L、NaCl 5g/L、K2HPO42.5g/L、デキストロース2.5g/L、全体を蒸留水で1L(アートクレーブ中滅菌)
Y17 酵母窒素ベース6.7g/L、グルコース50g/L、シグマ(Sigma)アデニンHCl 0.09g/L、シグマ1−チロシン0.0 6g/L、ディフコ(Difco)カザミノ酸2g/L(沸とう加熱およびミックス)、寒天20g/L、全体を蒸留水で1L(オートクレーブ中滅菌)
注1)ミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)ブイヨン(ディフコ商標)
注2)トリプチケースソイブイヨン(BBL商標)
【0029】
実施例1
1本の凍結バイアルのアミコラータ・オートトロフィカ(ATCC35204)および1本の凍結バイアルのサッカロポリスポラ・ヒルスタ亜種コベンシス(ATCC20501)を解凍し、これらを別々のそれぞれ100mlのF4培地を含有する500mlフラスコへ接種するのに用いる。各フラスコを約280rpm,25℃の振盪器に設置し、72時間振盪する。72時間A.オートトロフィカ培養ブイヨンの各2.5mlアリコートを用い、50mlのF7培地含有の6つの250mlフラスコおよび50mlのK28培地含有の6つの250mlフラスコへ接種する。同様に、72時間S.ヒルスタ培養ブイヨンの各2.5mlアリコートを用い、50mlのF7培地含有の6つの250mlフラスコおよび50mlのK28培地含有の6つの250mlフラスコへ接種する。この結果、トータル24のフラスコが存在する。24全てのフラスコを振盪器に設置し、約280rpm,25℃で振盪する。
24時間の振盪後、それぞれ培養した3つのF7フラスコおよび3つのK28フラスコに、フィルター滅菌した5mg/mlのメチルコンパクチン塩溶液1mlを無菌的に加える。(塩溶液はラクトンから、該ラクトンを最小量のエタノールに溶解し、約15mlの水を加え[幾つかの沈澱物が生成]、pHを約11.8に調整し、沈澱物が溶解するまで65℃ウォーターバスで培養し、次いでpHを注意深く7.5まで降下せしめることによって製造する。蒸留水を加えて、計算濃度を5mg/mlに調整する。)この時点で、新しい2つのフラスコを追加し、各培地の非接種フラスコに塩を投入して、非生物学的変性の対照とする。以後、これらのフラスコに、接種したフラスコと同じ処理を行う。
【0030】
同様に、それぞれ培養した3つのF7フラスコおよび3つのK28フラスコに、滅菌500+μg/ml用量のコンパクチンを加える。新しい2つのフラスコを追加し、各培地の非接種フラスコに、コンパクチンを投入する。(接種コンパクチンフラスコの使用目的は、コンパクチンのヒドロキシル化が正常に起っていることを示す、陽性対照としての役目を果すことである。非接種フラスコは、基質の可能性のある非生物学的変化のための対照として役立つ。)
振盪をさらに24時間再開する。次いで全てのフラスコに、前に投入したものと同じ2回目用量の塩を入れる。さらにまた振盪を24時間再開した後、それぞれ培地−基質組合せにつき1つを含む、8つのフラスコの培養物を回収する(時間T1にて)。回収フラスコのブイヨンを、基質およびヒドロキシル化生成物のアッセイに付す。
さらに24時間の振盪後、10メチルコンパクチン塩サンプルおよび10コンパクチンサンプルを含む、残った20のフラスコの培養物を回収する(時間T2にて)。これらのブイヨンを適当な基質−生成物アッセイに付す。
【0031】
結果を下記表1および2に示す。
【表1】
【表2】
【0032】
実施例2
1本の凍結バイアルのサッカロポリスポラ・ヒルスタ亜種コベンシス(ATCC20501)を解凍し、これを100mlのF4培地を含有する500mlフラスコへ接種するのに用いる。フラスコを約280rpm,25℃の振盪器に設置し、72時間振盪する。
72時間ブイヨンのアリコートを用い、45mlのK28培地含有の2つの250mlフラスコに接種する。2つのフラスコを振盪器に設置し、約280rpm,25℃で振盪する。
24時間の振盪後、メチルコンパクチン塩を水に溶解して溶液を得、これをフィルター滅菌する。この溶液の一部を、1つのK28フラスコに加える。6時間後、同フラスコに上記溶液の同量部を加える。第2K28フラスコにも、第3非接種K28フラスコと同様に一部の溶液を入れる。3つ全てのフラスコを振盪器に設置し、振盪を18時間再開する。
【0033】
次いで第1フラスコに、3回目用量を入れる。6時間後、第1フラスコに4回目用量(最終)を入れ、第2フラスコに2回目用量(最終)を入れ、そして非接種フラスコに2回目用量(最終)を入れる。
さらに42時間の振盪後、3つのフラスコの培養物を回収し、かかる全てのブイヨンをメチルコンパクチンおよびメチルプラバスタチンのアッセイに付す。結果を下記表3に示す。
【表3】
【0034】
実施例3
それぞれ1本の凍結バイアルのアミコラータ・オートトロフィカ(ATCC35204)、ストレプトミセス・カリホルニカス(ATCC15436)、アミコラータ・ハイドロカーボンオキシダンス(Amycolata hydrocarbonoxydans)(ATCC15104)、アミコラトプシス・メディターラネイ(ATCC21411)、アミコラトプシス・ファスティディオーサ(Amycolatopsis fastidiosa)(ATCC31181)およびサッカロポリスポラ・ヒルスタ亜種コベンシス(ATCC20501)を解凍し、これらを100mlのF7培地を含有する500ml発芽フラスコへ接種するのに用いる。全てのフラスコを約280rpm,25℃の振盪器に設置し、72時間振盪する。
各発芽フラスコの10mlアリコートを用い、それぞれ120mlのK28培地含有の別々のフラスコに接種する。次いで、全てのフラスコを振盪器へ戻す。
24時間後、各フラスコに500μg/mlのフィルター滅菌したコンパクチン(酸型)を加える。再度、フラスコを振盪器へ戻す。
さらに24時間後、各フラスコから15mlアリコートを取出し、後のアッセイのため凍結する(T1)。2回目500μg/ml用量の滅菌酸型コンパクチンを各フラスコに加え、該フラスコを振盪器へ戻す。
その24時間後に、各フラスコから2回目の15mlアリコートを取出し、後のアッセイのため凍結する(T2)。さらに24時間後、各フラスコから最終15mlアリコートを取出し、後のアッセイのため凍結する(T3)。
【0035】
全てのサンプルを解凍し、アッセイに付す。結果を下記表4〜6に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【0036】
実施例4
46時間培養のサッカロポリスポラ・ヒルスタ亜種コベンシス(ATCC20501)(28℃で生長)およびアミコラータ・オートトロフィカ(ATCC35204)(25℃で生長)を用い、各種培地のフラスコ(50ml培地/250mlフラスコ)に接種する。フラスコ1つに、5mlの接種物を用いる。
以下の培地:F7、F46、K28、M124、ブイヨン1(ミューラー−ヒントン)、ブイヨン2[トリプチケースソイブイヨン(TSB)]またはY17のそれぞれを含有する2つの別々のフラスコに、S.ヒルスタを接種する。各培地の一方のフラスコを約280rpm,25℃の振盪器に設置し、各培地の他方のフラスコを約280rpm,28℃の振盪器に設置する。別途F7培地およびK28培地のそれぞれのフラスコに接種し、32℃のウォーターバス振盪器に置く。
【0037】
それぞれF7培地およびK28培地の2つの別々のフラスコに、A.オートトロフィカを接種する。各培地の一方の接種フラスコを約280rpm,25℃の振盪器に設置し、各培地の他方の接種フラスコを約280rpm,28℃の振盪器に設置する。
24時間後、各フラスコに500μg/g用量のフィルター滅菌したコンパクチン(酸型)を加える。これらのフラスコを、同温度の振盪器へ戻す。
さらに24時間後、各フラスコから10mlアリコートを取出し、後のアッセイのため凍結する(T1)。各フラスコに、2回目の500μg/g用量の滅菌酸型コンパクチンを加え、これらのフラスコを再度、同温度の振盪器へ戻す。
さらに48時間後、2回目の10mlアリコートを採取する(T2)。T1サンプルを解凍し、T2サンプルと共にアッセイに付す。結果を下記表7〜9に示す。
【0038】
【表7】
【表8】
【表9】
【0039】
実施例5
25℃のF4培地で生長した67時間培養の各種微生物を用い、これらを50mlのF7培地含有の250mlフラスコ、および50mlのK28培地含有の250mlフラスコに接種する。フラスコ1つに、5mlの接種物を用いる。用いた微生物は、セルロモナス・セルランス(Cellumonas cellulans)(ATCC12830)、エルスコビア・サンシネオリティカ(Oerskovia xanthineolytica)(ATCC27402)、プロミクロモノスポラ・シトレ(Promicromonospora citrea)(ATCC15908)、サッカロモノスポラ・ビリディス(Saccharomonospora viridis)(ATCC15736)、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(ATCC27875)、サッカロスリックス・オストラリエンシス(ATCC31497)およびストレプトミセス・ハルステジィ(Streptomyces halstedii)(ATCC13449)である。
サッカロモノスポラ・ビリディスおよびS.ヒルスタ(ATCC27875)変換フラスコを約280rpm,28℃の振盪器に設置し、他の培養物は約280rpm,25℃の振盪器に設置する。なお、サッカロポリスポラ・ヒルスタ亜種コベンシス(ATCC20501)対照を、25℃と28℃の両方で用いる。
【0040】
24時間後、各フラスコに500μg/g用量のコンパクチンを加える。
さらに24時間後に、各フラスコに2回目の500μg/g用量のコンパクチンを加える。
96時間後、各フラスコから15mlアリコートを取出し、後のアッセイのため−50℃で凍結する。
これらのサンプルを解凍し、アッセイに付す。結果を下記表10および11に示す。
【0041】
【表10】
【表11】
【0042】
実施例6
8つのATCCムコラレス(Mucorales、ケカビ目)真菌および1つのスタウロホマ(Staurophoma)種ATCC14288を、よく生長した斜面培養から、F4培地の発芽フラスコ(100mlのF4培地/500mlフラスコ)に接種し、25℃のスロー振盪器(約200rpm)に設置する。8つのムコラレス真菌は、アブシディア・ラモサ(Absidia ramosa)(ATCC11613)、シルシネラ・ムスカ(Circinella muscae)(ATCC16008)、カニングハメラ・エチヌラタ(Cunninghamella echinulata)変異菌エチヌラタ(ATCC36190)、カニングハメラ・エチヌラタ変異菌エレガンス(elegans)(ATCC8688A)、ジルベールテラ・ペルシカリア(ATCC38591)、リゾムーコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)(ATCC26912)、リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)(ATCC22959)およびリゾプス・ストロニファー(Rhizopus stolonifer)(ATCC14037)である。
72時間の振盪後、全ての発芽フラスコ内の生長は、1つの大きな固体真菌集団であるC.エチヌラタ変異菌エチヌラタブイヨンの場合を除き、良好である。この真菌集団を捨てる。残りの7つのムコラレスフラスコ、および1つのスタウロホマフラスコをそれぞれ用い、F7培地およびK28培地の生変換フラスコ(250mlフラスコ当り50ml培地を含有)に接種する。フラスコ1つに、2mlの接種物を用いる。全てのフラスコを25℃の一定スピード(約280rpm)振盪器に設置する。
【0043】
24時間後、2つの非接種フラスコ、F7培地およびK28培地の各1つを含む、全てのフラスコに、500μg/ml用量のコンパクチンを入れる。全てのフラスコを、280rpm,25℃の振盪器へ戻す。
さらに24時間後、全てのフラスコに2回目の500μg/ml用量のコンパクチンを入れ、次いで振盪器へ戻す。
さらに48時間後、各フラスコから15〜20mlのサンプルを取り、アッセイに付す。結果は、以下の通りである。
ジルベールテラ・ペルシカリアF7−コンパクチン621μg/g;プラバスタチン274μg/g;プラバスタチン:副生物の比2.3:1;および
K28−コンパクチン822μg/g;プラバスタチン54μg/g;プラバスタチン:副生物の比3.4:1。
他の培養物の2つは、せいぜい、痕跡量のプラバスタチンが認められる(アブシディアおよびリゾプス・オリゴスポラス)。他の全てはプラバスタチンに対して陰性であった。
【0044】
実施例7
F4培地中2日、3日および4日経過したサッカロポリスポラ・ヒルスタ亜種コベンシス(ATCC20501)接種物を用い(100mlのF4培地/500mlフラスコ、それぞれ凍結バイアルで接種)、K28培地の生変換フラスコ(50mlのK28/250mlフラスコ)に接種する。5mlの接種物を用い、各発芽フラスコから3つのK28培地フラスコに接種する。3日経過の発芽フラスコの接種物を用い、異なる容量の接種物で3回K28培地フラスコに接種する。詳しくは、0.25ml、1.0ml、2.5ml、7.5mlおよび10ml容量を用いた。全てのフラスコを約280rpm,28℃の振盪器に設置する。
24時間後、各フラスコに500μg/ml用量のコンパクチンナトリウム塩を加える。
さらに24時間後に、各フラスコに1000μg/ml用量のコンパクチンナトリウムを加える。
48時間後に、25のフラスコの培養物を回収し、アッセイに付す。結果は、下記表12の通りである。
【表12】
注*)672μg/gコンパクチンの1つのフラスコと、痕跡量を示す2つのフラスコを平均した結果
**)2つのフラスコの平均;汚染の可能性がある3ツ目のフラスコは無視
Claims (17)
- 式:
Zは式:
R2は水素である)
の化合物(I)の製造法であって、式:
の化合物(II)を、該化合物(II)のヒドロキシル化を触媒して、上記化合物(I)を形成しうる微生物と、または該微生物から誘導される酵素あるいは該酵素の構造を有する酵素と接触せしめ、次いでヒドロキシル化を行う工程から成り、
上記微生物はアミコラータ属、サッカロポリスポラ属、アミコラトプシス属、サッカロスリックス属またはジルベールテラ属から選ばれ、但し、化合物(II)がコンパクチンのとき、微生物はアミコラータ属でないことを特徴とする製造法。 - Zが開鎖成分基である請求項1に記載の製造法。
- 化合物(II)を微生物と接触せしめる請求項1に記載の製造法。
- 微生物が、アミコラータ・オートトロフィカATCC35204、アミコラトプシス・メディターラネイATCC21411、サッカロスリックス・オストラリエンシスATCC31497、ジルベールテラ・ペルシカリアATCC38591、サッカロポリスポラ・ヒルスタATCC27875、サッカロポリスポラ・ヒルスタATCC27876、サッカロポリスポラ・ヒルスタATCC20501またはサッカロポリスポラ・エリスラATCC11635である請求項4に記載の製造法。
- 微生物が、アミコラータ・オートトロフィカATCC35204またはサッカロポリスポラ・ヒルスタATCC20501である請求項5に記載の製造法。
- 化合物(II)を水またはアルコールに溶解した後、微生物または酵素と接触せしめる請求項1に記載の製造法。
- 化合物(II)と微生物または酵素との接触工程を、水性培地中で行う請求項1に記載の製造法。
- 水性培地1ml当りに約0.5〜3mgの化合物(II)を含ませる請求項8に記載の製造法。
- 水性培地のpHが約6.0〜7.5である請求項8に記載の製造法。
- 水性培地の温度が約27〜40℃である請求項8に記載の製造法。
- 水性培地の温度が約28〜34℃である請求項11に記載の製造法。
- 化合物(II)と微生物または酵素との接触工程を、約2.5〜72時間続行する請求項1に記載の製造法。
- Zがラクトン基である請求項1に記載の製造法。
- 化合物(II)を微生物または酵素と接触せしめる前に、加水分解しておく請求項14に記載の製造法。
- 化合物(I)をHMG−CoAリダクターゼ抑制剤の製造に用いる請求項1に記載の製造法。
- 請求項1に記載の方法に従って、化合物(II) をヒドロキシル化して、化合物(I) を得る工程から成ることを特徴とするHMG−CoAリダクターゼ抑制剤の製造法。
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