JPH07206886A - ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質fo−3929物質及びその製造法 - Google Patents

ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質fo−3929物質及びその製造法

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JPH07206886A
JPH07206886A JP519494A JP519494A JPH07206886A JP H07206886 A JPH07206886 A JP H07206886A JP 519494 A JP519494 A JP 519494A JP 519494 A JP519494 A JP 519494A JP H07206886 A JPH07206886 A JP H07206886A
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JP519494A
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Satoshi Omura
智 大村
Junji Inokoshi
淳嗣 猪腰
Rokurou Masuma
碌郎 増間
Yuzuru Iwai
譲 岩井
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Kitasato Institute
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Kitasato Institute
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安定でかつ毒性が低く、しかも酵素阻害活性
の強いファルネシルトランスフエラーゼ阻害物質及びそ
れを製造する方法である。 【構成】 ペニシリウム属に属するFO−3929A物
質、FO−3929B物質および/またはFO−392
9C物質を生産する能力を有する微生物を培地に培養
し、その培養物中にFO−3929A物質、FO−39
29B物質および/またはFO−3929C物質を蓄積
せしめ、該培養物からFO−3929A物質、FO−3
929B物質および/またはFO−3929C物質を採
取することにより、FO−3929A物質、FO−39
29B物質および/またはFO−3929C物質を製造
する方法である。 【効果】 ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質は
抗癌剤としての効果が期待される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒト由来のファルネシ
ルトランスフェラーゼの活性を阻害するファルネシルト
ランスフェラーゼ阻害物質FO−3929A物質、FO
−3929B物質および/またはFO−3929C物質
(以下、総称してFO−3922物質という)及びその
製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまでに数多くの抗癌剤が開発されて
きているが、その殆どはまだ完全な治療薬とは言えない
のが現状である。また、発癌の機構についても充分な解
析はなされていないが、いわゆる癌遺伝子と称される遺
伝子について、その癌化への関連性が明らかにされてい
る例がある。例えばras癌遺伝子とよばれているもの
がそれで、この遺伝子は酵母からヒトに至るあらゆる真
核生物の染色体に保存されていることが数多くの研究例
から証明されている。
【0003】この遺伝子と癌化との関連は、以下のよう
に説明されている。ras癌遺伝子の産物である分子量
21000のタンパク質(rasp21)は、そのカル
ボキシル末端から4番目のアミノ酸残基であるシステイ
ン残基にファルネシルトランスフェラーゼによって脂質
の一種であるファルネシル基が付加することにより活性
化され、更にプロセッシングされて癌化を引き起こすと
されている。そこで、このrasp21の活性化への第
一段階であるファルネシル基の付加を阻止することがで
きれば少なくともras遺伝子産物であるタンパク質の
活性化が抑えられ、その結果、発癌は抑制できることが
期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記と同様の作用をす
る物質としては、ペプチシンナミンをはじめとしてグリ
オトキシン等の天然物や、更らには、種々の合成ペプチ
ドの例が知られている。(トレンド イン バイオケミ
カル サイエンス、第18巻、第349頁(199
3))。しかしながら、これらいずれのペプチドも細胞
内で直ちに加水分解され、安定な活性を発現するに至ら
ないのが現状である。かかる実情において、本発明は、
ヒトの医学上または社会問題の解決策としてきわめて重
要であることに鑑みて研究開発されたものである。本発
明はかかる知見に基づいて完成されたものである。従っ
て、本発明は安定でかつ毒性が低く、しかも酵素阻害活
性の強い、新しい骨格を有するFO−3929物質およ
びその製造法を得ることを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記のごと
き課題を解決すべく、新規なファルネシルトランスフェ
ラーゼ阻害物質の探索を目的として種々の土壌から菌株
を分離し、その生産物について研究を続けた結果、東京
都港区の土壌から分離した糸状菌FO−3929菌株の
培養液中にファルネシルトランスフェラーゼ活性を阻害
する物質が生産されることを見出した。
【0006】次いで、該培養物からファルネシルトラン
スフェラーゼ阻害活性物質を分離、精製した結果、後記
の物理化学的性質を有する物質は、従来全く知られてい
ないことから、本物質をFO−3929A物質、FO−
3929B物質およびFO−3929C物質と称するこ
とにした。
【0007】更に、本発明は、ペニシリウム属に属し、
FO−3929A物質、FO−3929B物質および/
またはFO−3929C物質を生産する能力を有する微
生物を培地に培養して、培養物にFO−3929A物
質、FO−3929B物質および/またはFO−392
9C物質を蓄積せしめ、該培養物からFO−3929A
物質、FO−3929B物質および/またはFO−39
29C物質を採取することを特徴とするFO−3929
物質の製造法を提供するものである。
【0008】FO−3929A物質、FO−3929B
物質および/またはFO−3929C物質を生産する能
力を有する微生物(以下、FO−3929物質生産菌と
称する)はペニシリウム属に属するが、例えば本発明者
らが分離したペニシリウム属に属するFO−3929菌
株は本発明の最も有効に使用される菌株の一例であっ
て、本菌株の菌学的性状を示すと次の通りである。
【0009】本発明のFO−3929A物質、FO−3
929B物質および/またはFO−3929C物質(以
下、総称してFO−3929物質という)を生産するた
めに使用される菌株としては、例えば本発明等によって
東京都港区の土壌から新たに分離されたペニシリウム
エスピー(Penicillium sp.)FO−3
929株が挙げられる。
【0010】(I)形態的性質 本菌株はバレイショ・ブドウ糖寒天培地、YpSs寒天
培地、コーンミール寒天培地等で比較的良好に生育し、
分生子の着生も良好である。YpSs寒天培地に生育し
たコロニーを顕微鏡で観察すると菌糸は透明で隔壁を有
しており、分生子柄は基底菌糸より直生している。ペニ
シラスは複輪生で、ときに不規則な単輪生を含む。梗子
はとっくり型で3〜5個群生し、大きさは7.5〜1
0.0×2〜3μmである。はじめはフィアロ型分生子
が、梗子の頂端に一個着生し、培養時間の経過とともに
連鎖状となり、最終的にはこの連鎖は150μm前後に
達する。分生子は亜球形で、大きさは2.5〜3.0μ
mであり、その表面は平滑である。
【0011】(II)各種培地上での諸性状 各種培地上で25℃、14日間培養した場合の肉眼的に
観察した結果を表1に示した。尚、各種培地において、
菌の生育に伴う分泌液および菌核の形成は観察されなか
った。
【0012】
【表1】
【0013】(III)生理学的性質 1)最適生育条件 本菌株の最適生育条件はYpSs培地においてpH3〜
10であり、生育温度は14〜32℃である。 2)生育の範囲 本菌株の生育範囲はYpSs培地においてpH2〜1
0、生育温度は11〜34℃である。 3)好気性、嫌気性の区別:好気性
【0014】以上の形態的特徴、培養性状および生理的
性状に基づき、既知菌種との比較を試みた結果、本菌株
はペニシリウム(Penicillium)属に属する
菌種であると考えられる。なお、本菌株はペニシリウム
エスピー・FO−3929(Penicillium
sp・FO−3929)として、工業技術院生命工学
工業技術研究所に寄託されている。受託番号はFERM
P−14001、受託日は平成5年12月6日であ
る。
【0015】以上、FO−3929物質生産菌について
説明したが、糸状菌の一般的性状として菌学上の性状は
きわめて変異し易く、一定したものではなく、自然的に
あるいは通常行われる紫外線照射またはX線照射または
変異誘導剤などを用いる人工的変異手段により変異する
ことは周知の事実であり、このような人工的変異株は勿
論、自然変異株も含め、ペニシリウム属に属し、FO−
3929物質を生産する能力を有する菌株はすべて本発
明に使用することができる。又、細胞融合、遺伝子操作
などの細胞工学的に変異させた菌株もFO−3929物
質生産菌として包含される。
【0016】本発明においては、先ずペニシリウム属に
属するFO−3929物質を生産する能力を有する生産
菌が培地に培養される。培地としては、通常の糸状菌の
培養に適する炭素源、資化し得る窒素源および無機物、
さらに必要に応じてその他の栄養物をほどよく含有する
合成培地または天然培地を使用することができる。培地
に使用される炭素源および窒素源としては、使用菌株の
利用可能なものならばいずれの種類でもよい。
【0017】培地としては、微生物が同化し得る炭素
源、資化し得る窒素源、さらには必要に応じて無機塩類
などを含有させた栄養培地が使用される。同化し得る炭
素源としては、例えばグリセリン、グルコース、ガラク
トース、フルクトース、マンノース、キシロース、リボ
ース、澱粉またはその加水分解物等の種々の炭水化物が
利用できる。その濃度は通常、培地に対して0.1〜5
%が好ましい。又、グルコン酸、ピルビン酸、乳酸、酢
酸等の各種有機酸、グリシン、グルタミン酸、アラニン
酸等の各種アミノ酸、さらにはメタノール、エタノール
等のアルコール類やノルマルパラフィン等の非芳香属炭
化水素、あるいは植物もしくは動物性の各種油脂等も使
用可能である。
【0018】資化し得る窒素源としては、例えばアンモ
ニア、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アン
モニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸あるいは
有機酸のアンモニウム塩類、尿素、ペプトン、肉エキ
ス、コーン・ステイープ・リカー、酵母エキス、乾燥酵
母、NZ−アミン、綿実粉、落花生粉、大豆粉あるいは
その消化物、カゼインあるいはその水分解物などの含窒
素有機物質、さらには、グリシン、グルタミン酸、アラ
ニン等の各種アミノ酸が使用可能である。
【0019】無機物としては、例えば食塩、各種リン酸
塩、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム等を使用でき
る。さらには必要に応じて微量の金属塩、消泡剤として
の動物、植物、鉱物油等を添加することもできる。ま
た、栄養要求性を示す変異株を用いる場合には、当然そ
の栄養要求性を満足させる物質を培地に加えなければな
らないが、この種の栄養素は、天然物を含む培地を使用
する場合は、とくに添加を必要としない場合がある。
【0020】培養は通常振とうまたは通気攪拌培養など
の好気的条件下で行うのがよい。工業的には深部通気攪
拌培養が好ましい。培養のpHはたとえば5.0〜8.
0であるが、pH6.5付近で培養を行うのが好まし
い。培養温度は例えば20〜32℃で行い得るが、通常
は26〜30℃(好ましくは27℃付近)に保つのがよ
い。培養時間は液体の場合、通常2〜6日間培養を行
い、本発明のFO−3929物質が蓄積されるので、培
養中の蓄積量が最大に達した時に、培養を終了すればよ
い。
【0021】これらの培地組成、培地の液性、培養温
度、攪拌速度、通気量などの培養条件は使用する菌株の
種類や外部の条件などに応じて好ましい結果が得られる
ように適宜調節、選択されることはいうまでもない。液
体培養において、発泡があるときは、シリコン油、食物
油、界面活性剤などの消泡剤を適宜使用できる。
【0022】このようにして得られた培養物に蓄積され
る本発明のFO−3929物質は通常は培養濾液中に含
有されるので、培養濾液からFO−3929物質を採取
するには、通常の微生物の培養物から代謝物を採取する
のに用いられる手段を単独あるいは任意の順序に組み合
わせ、または反復して用いられる。すなわち、例えば抽
出濾過、遠心分離、透析、濃縮、乾燥、凍結、吸着、脱
着、各種溶媒に対する溶解度の差を利用する例えば沈
澱、結晶化、再結晶、転溶、向流分配法、クロマトグラ
フイー等の手段が用いられる。
【0023】培養液からFO−3929物質を採取する
には、菌体を除去した培養濾液から採取すればよい。例
えば、培養濾液からクロロホルムや酢酸エチル等の有機
溶剤などで抽出する。抽出液を濃縮した後シリカゲルカ
ラムクロマトグラフイー、セファデックスLH−20、
ODSカラムクロマトグラフイー等によって本発明のF
O−3929物質を個々の成分、即ちFO−3929A
物質、FO−3929B物質およびFO−3929C物
質に単離することができる。
【0024】次に本発明のFO−3929A物質、FO
−3929B物質およびFO−3929C物質の理化学
的性状について述べる。 〔1〕FO−3929A物質 (1)性状:白色粉末 (2)分子量:487(M+H、高速原子衝撃質量マス
スペクトル) (3)分子式:C28387 (4)融点:131〜135℃ (5)比旋光度:〔α〕D 28−46.391°(c=
0.6、メタノール中)
【0025】(6)紫外部吸収スペクトル:メタノール
中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示す通りで
あり、212、235(肩)、250(肩)、285n
m付近に特徴的な吸収極大を示す (7)赤外部吸収スペクトル:KBr法で測定した赤外
部吸収スペクトルは図2に示す通りであり、3440.
4、2950.6、2879.2、1737.5、17
16.3、1625.7、1452.1、1434.
8、1376.9、1326.8、1247.7、12
14.9、1054.9、1031.7cm -1付近に特
徴的な吸収帯を有する
【0026】(8)溶剤に対する溶解性:メタノール、
エタノール、アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可
溶、水、ヘキサンに難溶 (9)呈色反応:硫酸に陽性、ニンヒドリンに陰性 (10)プロトン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール
中で測定した化学シフト(ppm)は表2に示すとおり
である。 (11)13C核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で
測定した化学シフト(ppm)は表3に示すとおりであ
る。 (12)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
【0027】〔2〕FO−3929B物質 (1)性状:白色粉末 (2)分子量:489(M+Na、高速原子衝撃マスス
ペクトルによる) (3)分子式:C28407 (4)融点:136〜139℃ (5)比旋光度:〔α〕D 28−27.945°(c=
1.0、メタノール中)
【0028】(6)紫外部吸収スペクトル:メタノール
中で測定した紫外部吸収スペクトルは図3に示すとおり
であり、212、234(肩)、251(肩)、285
に特徴的な極大吸収を有する。 (7)赤外部吸収スペクトル:KBr法で測定した赤外
部吸収スペクトルは図4に示すとおりであり、344
0.4、2954.4、2883.1、1739.5、
1708.6、1627.6、1456.0、143
6.7、1376.9、1326.8、1243.9、
1216.9、1031.7、1016.3cm-1付近
に特徴的な吸収帯を有する。
【0029】(8)溶剤に対する溶解性:メタノール、
エタノール、アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可
溶、水、ヘキサンに難溶 (9)呈色反応:硫酸に陽性、ニンヒドリン反応は陰性 (10)プロトン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール
中で測定した化学シフト(ppm)は表2に示すとおり
である。 (11)13C核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で
測定した化学シフト(ppm)は表3に示すとおりであ
る。 (12)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
【0030】〔3〕FO−3929C物質 (1)性状:白色粉末 (2)分子量:473(M+H、高速原子衝撃マススペ
クトルによる) (3)分子式:C28406 (4)融点:115〜120℃ (5)比旋光度〔α〕D 28−30.275°(C=1.
2、メタノール中)
【0031】(6)紫外部吸収スペクトル:メタノール
中で測定した紫外部吸収スペクトルは図5に示す通りで
あり、212、235(肩)、249(肩)、285n
m付近に特徴的な吸収極大を示す (7)赤外部吸収スペクトル:KBr法で測定した赤外
部吸収スペクトルは図6に示す通りであり、3440.
4、2950.6、2877.3、1737.5、17
16.3、1625.7、1454.1、1434.
8、1380.8、1324.9、1245.8、12
11.1、1054.9、1031.7cm -1に特徴的
な吸収帯を有する
【0032】(8)溶剤に対する溶解性:メタノール、
エタノール、アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可
溶、水、ヘキサンに難溶 (9)呈色反応:硫酸に陽性、ニンヒドリン反応に陰性 (10)プロトン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール
中で測定した化学シフト(ppm)は表2に示すとおり
である。 (11)13C核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で
測定した化学シフト(ppm)は表3に示すとおりであ
る。 (12)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】次に、本発明FO−3929物質のファル
ネシルトランスフェラーゼ阻害作用について説明する。
公知の反応系(サイエンス、第245巻、第379頁
(1989))に準じて酵素反応を行った。反応液中に
はファルネシルトランスフェラーゼの他に〔 3H〕ファ
ルネシルピロリン酸、p21タンパク質、MgCl2、ジ
チオスレイトールおよびトリス・塩酸緩衝液(pH7.
5)の各溶液を含む。
【0036】反応の結果、FO−3929A物質、FO
−3929B物質およびFO−3929C物質のヒト由
来のファルネシルトランスフェラーゼに対するIC50
それぞれ12.1μM、23.0μMおよび6.8μM
であった。
【0037】
【発明の効果】以上に説明したとおり、本発明によりフ
ァルネシルトランスフェラーゼ阻害物質およびその製造
法が提供され、かつまた、ファルネシルトランスフェラ
ーゼ阻害物質は、抗癌剤としての効果が期待される。
【0038】次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれのみに限定されるものではな
い。
【実施例】500ml容三角フラスコにグルコース2.0
%、酵母エキス(オリエンタル酵母工業(株)製)0.
2%、硫酸マグネシウム7水塩0.05%、ポリペプト
ン0.5%、リン酸2カリウム0.1%、寒天0.1%
からなる液体培地(pH6.0)を100mlずつ分注
し、121℃で15分間高圧蒸気滅菌し、これにデンプ
ン(溶性)1.5%、酵母エキス(オリエンタル酵母工
業(株)製)0.4%、硫酸マグネシウム7水塩0.0
5%、リン酸2カリウム0.1%、寒天2.0%を含む
寒天斜面培地で27℃で培養したペニシリウム エスピ
ー・FO−3929株(FERM P−14001)を
1白金耳づつ接種し、回転式振とう機を用いて27℃、
4日間振とう培養し、種培養液を得た。
【0039】一方、30l ジャーファーメンター1基に
デンプン(溶性)3.0%、グリセリン1.0%、きな
粉2.0%、ドライイースト(fermipan、旭化
成工業販売)0.3%、塩化カリウム0.3%、炭酸カ
ルシウム0.2%、硫酸マグネシウム0.05%、リン
酸1カリウム0.05%からなる液体培地(pH6.
5)を20l 仕込み、121℃で30分間蒸気滅菌し
た。これに種培養液4本分を接種し攪拌速度250rp
m、通気量15l /分で27℃で2日間培養した。
【0040】培養液をシャープレスで遠心分離(100
00rpm)して得られた上清のpHを3.0に調整し
た後、20l の酢酸エチルを加え攪拌し、これを再びシ
ャープレスで遠心分離(10000rpm)して水層と
酢酸エチル層に分別した。得られた酢酸エチル層に無水
硫酸ナトリウム500gを加え、脱水した後、酢酸エチ
ル層を減圧濃縮し、8.12gの粗物質Iを得た。これ
を少量のクロロホルムに溶解し、クロロホルムで充填し
たシリカゲル(160g、Merck Art.773
4)の上端にのせ、クロロホルムでカラムを洗った後ク
ロロホルム−メタノール(99:1及び98:2)で活
性物質を溶出した。
【0041】これを減圧下で濃縮することによって1.
15gの粗物質IIを得た。これを少量のメタノールに溶
解し、あらかじめメタノールで充填したセファデックス
LH−20カラム(2.38×112cm)の上端に負
荷し、メタノールにて溶出した。活性画分を集め、減圧
下で濃縮することによって、867.8mgの粗物質II
I を得た。これを少量のメタノールに溶解し、50%メ
タノールで充填したODSシリカゲルカラム(ODS
R−30608、(株)センシュー科学製、1.7×1
2.6cm)の上端に負荷し、50%メタノールにて洗
浄した。
【0042】次いで、60%メタノールと80%メタノ
ールで段階的に展開した。60%メタノールで溶出され
た粗物質IV−1を139.6mg、粗物質IV−2を
181.03mgをそれぞれ得た。また、80%メタノ
ールで溶出された粗物質IV−3を109.15mg、
粗物質IV−4を63.27mgをそれぞれ得た。
【0043】前記の粗物質IV−2とIV−3を少量の
メタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフイー(Y
MC−Pack ODS、φ20×250mm、(株)
ワイエムシー製)にかけ、0.05%リン酸を含む50
%アセトニトリルを移動相として204nmの吸収を検
出しながら、11ml/分の流速において、33分に溶出
するピークを集めた。
【0044】また、粗物質IV−1を少量のメタノール
に溶解し、高速液体クロマトグラフイー(YMC−Pa
ck ODS、φ20×250mm、(株)ワイエムシ
ー製)にかけ、0.05%リン酸を含む50%アセトニ
トリルを移動相として204nmの吸収を検出しなが
ら、11ml/分の流速において、14分に溶出するピー
クを集めた。
【0045】また、粗物質IV−4を少量のメタノール
に溶解し、高速液体クロマトグラフイー(YMC−Pa
ck ODS、φ20×250mm、(株)ワイエムシ
ー製)にかけ、0.05%リン酸を含む60%アセトニ
トリルを移動相として204nmの吸収を検出しなが
ら、11ml/分の流速において、42分に溶出するピー
クを集めた。
【0046】次いで、それらを減圧濃縮しアセトニトリ
ルを留去したのち酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を
分別し、脱水した後、減圧濃縮してファルネシルトラン
スフェラーゼ阻害物質FO−3929A物質、FO−3
929B物質およびFO−3929C物質の白色粉末を
それぞれ181.25mg、40.65mgおよび2
9.33mgをそれぞれ得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質FO
−3929A物質の紫外部吸収スペクトルである。
【図2】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質FO
−3929A物質の赤外部吸収スペクトルである。
【図3】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質FO
−3929B物質の紫外部吸収スペクトルである。
【図4】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質FO
−3929B物質の赤外部吸収スペクトルである。
【図5】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質FO
−3929C物質の紫外部吸収スペクトルである。
【図6】ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質FO
−3929C物質の赤外部吸収スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩井 譲 東京都港区白金5丁目9番1号 社団法人 北里研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性質を有するFO−39
    29A物質、FO−3929B物質およびFO−392
    9C物質からなる群より選ばれたFO−3929物質ま
    たはその薬学的に許容し得る塩。 〔1〕FO−3929A物質 (1)性状:白色粉末 (2)分子量:487(M+H、高速原子衝撃マススペ
    クトルによる) (3)分子式:C28387 (4)融点:131〜135℃ (5)比旋光度:〔α〕D 28−46.391°(C=
    0.6、メタノール中) (6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した
    紫外部吸収スペクトルは図1に示す通りであり、21
    2、235(肩)、250(肩)、285nm付近に特
    徴的な吸収極大を示す (7)赤外線吸収スペクトル:KBr法で測定した赤外
    部吸収スペクトルは図2に示す通りであり、3440.
    4、2950.6、2879.2、1737.5、17
    16.3、1625.7、1452.1、1434.
    8、1376.9、1326.8、1247.7、12
    14.9、1054.9、1031.7cm -1付近に特
    徴的な吸収帯を有する (8)溶剤に対する溶解性:メタノール、エタノール、
    アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可溶、水、ヘキ
    サンに難溶 (9)呈色反応:硫酸に陽性、ニンヒドリンに陰性 (10)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質 〔2〕FO−3929B物質 (1)性状:白色粉末 (2)分子量:489(M+H、高速原子衝撃マススペ
    クトルによる) (3)分子式:C28407 (4)融点:136〜139℃ (5)比旋光度:〔α〕D 28−27.945°(c=
    1.0、メタノール中) (6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した
    紫外部吸収スペクトルは図3に示す通りであり、21
    2、234(肩)、251(肩)、285nm付近に特
    徴的な吸収極大を示す (7)赤外部吸収スペクトル:KBr法で測定した赤外
    部吸収スペクトルは図4に示す通りであり、3440.
    4、2954.4、2883.1、1739.5、17
    08.6、1627.6、1456.0、1436.
    7、1376.9、1326.8、1243.9、12
    16.9、1031.7、1016.3cm -1付近に特
    徴的な吸収帯を有する (8)溶剤に対する溶解性:メタノール、エタノール、
    アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可溶、水、ヘキ
    サンに難溶 (9)呈色反応:硫酸に陽性、ニンヒドリン反応は陰性 (10)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質 〔3〕FO−3929C物質 (1)性状:白色粉末 (2)分子量:473(M+H、高速原子衝撃マススペ
    クトルによる) (3)分子式:C28406 (4)融点:115〜120℃ (5)比旋光度〔α〕D 28−30.275°(C=1.
    2、メタノール中) (6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した
    紫外部吸収スペクトルは図5に示す通りであり、21
    2、235(肩)、249(肩)、285nm付近に特
    徴的な吸収極大を示す (7)赤外部吸収スペクトル:KBr法で測定した赤外
    部吸収スペクトルは図6に示す通りであり、3440.
    4、2950.6、2877.3、1737.5、17
    16.3、1625.7、1454.1、1434.
    8、1380.8、1324.9、1245.8、12
    11.1、1054.9、1031.7cm -1付近に特
    徴的な吸収帯を有する (8)溶剤に対する溶解性:メタノール、エタノール、
    アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可溶、水、ヘキ
    サンに難溶 (9)呈色反応:硫酸に陽性、ニンヒドリン反応に陰性 (10)酸性、中性、塩基性の区別:弱酸性物質
  2. 【請求項2】 ペニシリウム属に属するFO−3929
    A物質、FO−3929B物質および/またはFO−3
    929C物質を生産する能力を有する微生物を培地に培
    養し、培養物中にFO−3929A物質、FO−392
    9B物質および/またはFO−3929C物質を蓄積せ
    しめ、該培養物からFO−3929A物質、FO−39
    29B物質および/またはFO−3929C物質を採取
    することを特徴とするFO−3929A物質、FO−3
    929B物質および/またはFO−3929C物質の製
    造法。
  3. 【請求項3】 ペニシリウム属に属するFO−3929
    A物質、FO−3929B物質および/またはFO−3
    929C物質を生産する能力を有する微生物がペニシリ
    ウム エスピー FO−3929(FERM P−14
    001)である請求項2記載の製造法。
  4. 【請求項4】 ペニシリウム属に属しFO−3929A
    物質、FO−3929B物質および/またはFO−39
    29C物質を生産する能力を有する微生物。
  5. 【請求項5】 微生物がペニシリウム エスピー FO
    −3929(FERM P−14001)である請求項
    4記載の微生物。
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