JP3682392B2 - 積層セラミックコンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

積層セラミックコンデンサ及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサ(以下、適宜「積層コンデンサ」と略称する)は、内部電極と誘電体層とからなる積層体を焼成し、この積層体外部に各内部電極の一端(本明細書において「端部」という)と導通接続される外部電極を形成することによって製造する。内部電極は金属によって構成されている一方、誘電体層はセラミックによって構成されており、このため積層コンデンサ内部に熱膨張係数の差(熱膨張係数のミスマッチ)が生じる。熱膨張係数のミスマッチは、焼成後の誘電体層とその近傍の内部電極との間に残留応力を生じさせる。
【0003】
他方、積層コンデンサのキャパシタンスは内部電極の面積に比例して増加するので、できるだけ大きなキャパシタンスを得るためには、内部電極を構成する各内部電極の面積をできるだけ広くする必要がある。このため、端部の反対側に位置する各内部電極の開放端は、これらを長さ方向(幅方向)の位置関係を揃わせておくのが一般的な方法である。
【0004】
しかしながら、上述した揃わせる方法を採用すると、各内部電極の開放端近傍に生じやすい残留応力が、揃わされた開放端群近傍に集中することになる。残留応力が集中した状態の積層コンデンサに半田付け等による熱衝撃が加えられると、この熱衝撃による熱応力と残留応力との合力が発生し、この合力がクラックやデラミネーション(層間はく離)等を生じさせる場合があった。
【0005】
このクラック等の問題を解決するために開発されたのが、実開昭55−62031号公報に開示された積層コンデンサ(以下、適宜「従来の積層コンデンサ」という)である。従来の積層コンデンサには、内部電極開放端の角部に熱応力が集中することから、この角部に丸みを形成してその集中を緩和させる方法が講じられている。このように形状が急変する角部に丸みを形成すれば、丸みを形成していない場合に比べて応力が集中する度合いが低いので、それだけクラックやデラミネーションが生じる可能性を低くすることができることになるからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内部電極開放端に丸みを形成するだけでは、内部電極の平面方向への応力集中をある程度まで緩和することは可能であるが、図6(従来の積層コンデンサ101の縦断面図)に示すように内部電極開放端が積層方向(厚み方向)に揃わされているので積層方向に対する残留応力の緩和には充分ではない。すなわち、図6に示す内部電極103,・・103の開放端105,・・105が縦方向に破線で示すように積層方向に整列させられているため、各開放端105,・・105の近傍に生じた残留応力を破線近傍に集中させてしまうおそれがあった。この残留応力を緩和させない限り、先に述べたクラックやデラミネーションの発生を有効に防ぐことができない。本発明が解決しようとする課題は、積層方向に対する残留応力を緩和することによって、積層コンデンサのクラックやデラミネーションを可及的に防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために発明者は、内部電極の開放端を長さ(幅)方向に揃わないように構成することによって、残留応力を緩和させることを考えついた。その詳しい構成と作用効果については、項をあらためて説明する。なお、何れかの請求項において述べる用語の定義等は、その性質上可能な限り他の請求項においても適用されるものとする。
【0008】
(請求項1に記載した発明の構成)
請求項1に記載した発明に係る積層コンデンサ(以下、「請求項1の積層コンデンサ」という)は、内部電極群と、当該内部電極群間に配された誘電体セラミックと、を含む積層体と、前記内部電極群の端部に導通接続された一対の外部電極と、備えるコンデンサである。同一外部電極に接続された(すなわち、同電位の)内部電極群の一部又は全部は、その長さ及び/又は幅が少なくとも隣接する内部電極間で互いに異なっている。すなわち、少なくとも隣接する内部電極の開放端が長さ(幅)方向に揃わないように構成した、こと、さらに、前記内部電極群の一部又は全部は、前記端部の他に開放端部群を有し、前記開放端部群を構成する各開放端部の一部又は全部が積層方向に屈曲する屈曲部を備えている、ことを特徴とする。内部電極群の「一部又は全部」というのは、内部電極群を構成する全内部電極の一部についてその長さ及び/又は幅を隣接する内部電極間で互いに異ならせてもよいし、全内部電極の全部について上記同様に異ならせてもよい、という意味である。「長さ及び/又は幅」と記載したのは、内部電極の長さだけ異ならせてもよいし、幅だけを異ならせてもよいし、長さと幅の両者を異ならせてもよい、という趣旨である。「少なくとも」と記載したのは、ある内部電極と、この内部電極に隣接する他の内部電極とを比べた場合に、両内部電極の長さ及び/又は幅が異なれば足りる、という趣旨である。内部電極の長さ及び/又は幅を異ならせる方法には、たとえば、印刷等によって表面に内部電極を形成した複数枚のグリーンシートを平面方向(二次元方向)にずらして積層した後に所望の大きさに切断することによって形成する方法や、一端形成した内部電極をトリミング等によって後発的に異ならせる方法がある。
【0009】
(請求項1に記載した発明の作用効果)
請求項1の積層コンデンサは、内部電極の開放端が揃っていない箇所において残留応力の集中が緩和される、という作用効果を生じる。このため、この残留応力と半田付け作業等に伴い加えられた熱衝撃による熱応力との合力は、残留応力の集中が緩和されていない場合に比べて緩和された分だけ小さくなる。よって、クラックやデラミネーション等が積層コンデンサに生じる可能性が低くなる。屈曲部の働きによってその近傍における電界の回り込み効果(縁端効果)を大きくすることができる、という作用効果を生じる。その結果、屈曲部を有しない場合に比べて静電容量を大きくすることができるので、各内部電極の開放端を揃わなくした結果、発生する静電容量のロスを可及的に補償することができる。なお、屈曲部を設けると、その部分に応力が集中するが、各内部電極の開放端を揃わないようにして応力の集中を緩和しているため、この屈曲部が原因でクラックやデラミネーション等が積層コンデンサに生じることはない。
【0010】
(請求項2に記載した発明の構成)
請求項2に記載した発明に係る積層コンデンサ(以下、「請求項2の積層コンデンサ」という)は、請求項1の積層コンデンサの構成に限定が加わり、前記内部電極群(すなわち、応力緩和に寄与する内部電極群)は、すべての内部電極群のうち少なくとも半数を占めていることを特徴とする。
【0011】
(請求項2に記載した発明の作用効果)
請求項2の積層コンデンサは、請求項1の積層コンデンサの作用効果に加え、少なくとも半数の内部電極が応力緩和に寄与するので、残留応力と熱応力との合力を効率よく緩和するので、これによって、クラックやデラミネーション等が積層コンデンサに生じる可能性が半数に満たない場合より低くなる、という作用効果が生じる。応力緩和だけに観点をおけば、内部電極のすべてを不揃いの対象とするのが好ましいことはいうまでもないが、不揃いの対象を増やすことは積層コンデンサの静電容量の減少につながりかねない。そこで、コンデンサ容量の許容誤差範囲を考慮しながら、不揃いの対象とする内部電極の割合を設定するとよい。
【0012】
(請求項3に記載した発明の構成)
請求項3に記載した発明に係る積層コンデンサ(以下、「請求項3の積層コンデンサ」という)は請求項1又は2の積層コンデンサの構成に限定が加わり、各内部電極を構成する、材料の種類又は材料の構成比率を、少なくとも隣接する内部電極同士で異ならせたことを特徴とする。すなわち、材料を異ならせてもよいし、材料を異ならせずにその構成の割合を異ならせてもよい。「材料」は、たとえば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)等の内部電極の構成主体となる金属類、各種のバインダ(接合剤)や溶剤、その他の添加物や混合物等のことをいう。
【0013】
(請求項3に記載した発明の作用効果)
請求項3の積層コンデンサは、請求項1又は2の積層コンデンサの作用効果に加え、材料の種類又は材料の構成比率を異ならせることによって内部電極間における熱膨張係数を異ならせ、この結果、残留応力の集中が緩和させるとともに、熱衝撃を受けた際の熱応力の集中も緩和させる、という作用効果が生じる。この緩和によって、緩和された分だけ残留応力と熱応力との合力が小さくなり、これによって、クラックやデラミネーション等が積層コンデンサに生じる可能性が低くなる。
【0014
【発明の実施の形態】
次に、図1〜5を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。図1は積層コンデンサの分解斜視図を、図2は図1のX−X線を含む断面図を矢印方向に見た図である。図3はグリーンシートを積層する様子を示す斜視図であり、図4は図3のY−Y線を含む断面図を矢印方向に見た図である。図5は図4の変形例を示す図である。
【0015
(コンデンサの全体構造)
図1に基づいて、積層コンデンサの全体構造について説明する。積層コンデンサ1は、誘電体層3と内部電極5とを交互に積層させて構成した切断積層体7と、切断積層体7の両端部において内部電極5に一層おきに接続された一対の外部電極9a,9bと、から構成されている。
【0016
(積層体の構成)
切断積層体7は、セラミック焼成体からなる誘電体層3に金属ペースト(導電ペースト)を印刷、乾燥させて形成した内部電極5とを交互に積層させ加熱圧着し、その後、焼成により一体化させたものである。本実施形態におけるセラミック焼成体は、セラミック粉末を主成分とするグリーンシートを上記手順で焼成したものが使用されている。内部電極5は、グリーンシートに印刷した金属ペースト(導電性ペースト)を焼成形成した金属薄膜によって構成されている。本実施形態における金属ペーストは、Ag−Pd粉末やNi(ニッケル)粉末やCu(銅)粉末等を主成分とするものが使用されている。セラミック焼成体と金属ペーストの製造方法は、別項にて説明する。
【0017
(内部電極の構成)
内部電極5は、図1にも示すように、ほぼ長方形の形に形成されており、外部電極9a,9bに接続される端部13と、端部11以外の三辺によって構成される開放端13と、を備えている。開放端13は、端部11の反対側に位置する開放端13と、端部11と先方開放端13との間に位置する側方開放端15,15と、を備えている。本実施形態における内部電極5は、側方開放端15,15間の距離、すなわち、内部電極5の幅は各内部電極ともに同じ寸法に形成されているが、端部11と先方開放端13との距離、すなわち、内部電極5の長さは、次に述べるように互いに異なるように形成されている。なお、図には示していないが、従来の技術の欄で説明した従来の積層コンデンサのように、内部電極5の角部に丸みを形成して平面方向への応力集中を緩和するように構成してもよい。
【0018
(内部電極の長さ)
図2に基づいて、内部電極5の長さについて説明する。図2に示す積層コンデンサ1については、各内部電極5の長さの違いや厚み等を、理解を容易にするために若干誇張して描いてある。また、説明の都合上、各内部電極を示す符号を5a〜5c,5p〜5rとして示し、内部電極5aの先方開放端を13aと、内部電極5bの先方開放端を13bと、内部電極5cの先方開放端を13cと、それぞれを示している。さらに、Laは内部電極5aの長さを、Lbは内部電極5bの長さを、Lcは内部電極5cの長さを、それぞれ示している。
【0019
図2に示すように、内部電極5aの長さLaと内部電極5bの長さLbと内部電極5cの長さLcとは、互いに異なるように、すなわち、隣接する内部電極5a,5b,5cの先方開放端13a,13b,13cは切断積層体7の積層方向(厚み方向)に揃わないように、換言すると、不揃いになるように形成されている。先方開放端13a,13b,13cを不揃いになるように形成したのは、揃っていれば集中したであろう各先方開放端13a,13b,13cにおける残留応力を分散によって緩和させるためである。
【0020
不揃いの程度、すなわち、長さLaと長さLbとの差、長さLbと長さLcとの差、或いは、長さLcと長さLaとの差の大きさは、積層コンデンサ1に要求される静電容量を満たす範囲内において設定する。つまり、長さLaと長さLbとを、長さLcと同じにした方が、本実施形態のように互いに異ならせるより内部電極5a,5b,5c全体の静電容量が大きくなるが、異ならせて短くした分だけ静電容量を犠牲にしなければならないことになる。そこで、残留応力の緩和という観点と、静電容量の確保という観点から、両者の均衡を保つために長さを異ならせる内部電極の枚数を定めるようにすることが好ましい。発明者らが行った実験によれば、全部の内部電極のうち少なくとも過半数のものの長さを互いに異ならせることによって好結果を得ている。
【0021
ここで、「少なくとも過半数」と記載したのは、たとえば100枚ある内部電極5のうち50枚以上(たとえば、60枚)の長さを互いに異ならせれば足り、この場合に残った40枚の内部電極5の長さは互いに異ならせてもよいし異ならせなくてもよい、という趣旨である。長さの異ならせ方は、本発明の目的の範囲内であれば何ら制限を受けるものではないが、たとえば、隣接する内部電極5,5間の差を常に均等に設定して図2に示す内部電極5a,5b,5cのように階段状に異ならせたり、内部電極5p,5q,5rのように不規則に異ならせたりすることができる。
【0022
異なる長さの内部電極5は、上記例の場合に、たとえば、上中下段の三層に分け、上下段の各々に30枚ずつ配し、残る中段に同じ長さの内部電極40枚を配するようにしたり、上下段の二層に分け、上段又は下段の何れかに異なる長さの内部電極5を60枚全部配するようにしたり、数枚ごとに異なる長さの内部電極5と同じ長さの内部電極5とを互い違いに配するようにしたりすることができる。なお、長さを異ならせる場合には、図2に示す内部電極5a,5b,5cのように、少なくとも隣接するもの同士の長さLa,Lb,Lcが異なれば足り、たとえば、隣接しない他の内部電極(図示を省略)が長さLbと同じ長さを有することになったとしてもそのことを排除する趣旨ではない。
【0023
他方、図5に示すように、その開放端部群11P1,11P2,11P3..を屈曲させて屈曲部群を形成するようにしてもよい。屈曲部を形成すると、その屈曲部群における電界(電気力線)の縁端効果(eddge effect)によって静電容量を稼ぐことができるので、これによって内部電極5の長さを短くした結果生じる静電容量の減少を可及的に補償できるからである。屈曲部群を形成する方法の説明は、後述する積層コンデンサの製造方法の説明の欄において行う。
【0024
(外部電極の構成)
外部電極9a,9bは、切断積層体7の両端部において内部電極5に一層おきに接続するように金属ペーストを塗布し、その後に焼付け形成したものである。金属ペーストは、内部電極5と同様にAg−Pd粉末或いはNi、Cu粉末を主成分とするものが使用されている。外部電極9a,9bは、その表面に半田メッキを施しておくことが好ましい。半田メッキによって、外部電極9a,9bの半田ぬれ性がよくなり、溶融した半田がなじみやすくなるからである。半田ぬれ性の向上は半田付けの迅速性につながり、これによって熱衝撃による熱応力集中の抑制に貢献することができる。外部電極9aは内部電極5a,5b,5cに、外部電極9bは内部電極5p,5q,5rに、それぞれ導通接続されている。
【0025
(積層コンデンサの製造方法)
図3及び4を参照しながら、積層コンデンサ1の製造方法について説明する。まず、誘電体層の原料粉末に有機バインダーを15重量%添加し、さらに水を50重量%加え、これらをボールミルに入れて十分に混合させてスラリー(泥奨)を製造する。次に、このスラリーをドクターブレード法によりポリエステルフィルム等のキャリアフィルム上に所定の厚み(十μm〜数百μm程度)に延ばし、乾燥させてセラミック誘電体のグリーンシートを製造する。こうして製造したグリーンシートを後述するように焼成したものが、誘電体層3を構成する。以下の説明においては、誘電体層3の代わりに、必要に応じてグリーンシート3と記載する。
【0026
一方、内部電極5に使用する導電性ペーストは、導電性のある微粒子を、高濃度で均一になるように混合して製造する。本実施形態の導電性ペーストは、均粒径が1.5μm程度のパラジウム粉末10gと、プチルカルビトール3.1gにセルロース0.9gを溶解させたものとを攪拌器に入れ、約10時間攪拌することによって製造する。導電性ペーストをグリーンシートの片面上にスクリーン印刷して乾燥させると、内部電極5が形成される(第1工程)。
【0027
(グリーンシートの積層)
次に、導電性ペーストを印刷した面(以下、「印刷面」という)を上にしてグリーンシート3を、複数枚積層する。積層する様子を、図3及び4を参照しながら説明する。なお、積層するグリーンシート3,…3の上下関係を説明しやすくするために、図3及び4において、積層するグリーンシート(誘電体層)を3g1〜3gnにて、内部電極を5p1〜5pn(5pnは図示を省略)にて、さらに、内部電極5p1〜5pnの開放端を13p1〜13pnにて、それぞれ示している。
【0028
各グリーンシート3g1,・・3gnの積層は、隣接するグリーンシートを長さ方向に僅かにずらして行う。すなわち、図3に示す3枚のグリーンシート3g1〜3g3について説明すると、グリーンシート3g3の上に位置するグリーンシート3g2を、グリーンシート3g3より長さ方向左側に僅かにずらして積層し、さらに、グリーンシート3g2より上に位置するグリーンシート3g1をグリーンシート3g2より長さ方向左側に僅かにずらして積層する。この積層作業は、少なくとも積層する全グリーンシートの過半数になるまで行う。最後に、この積層物の上下面に内部電極の印刷されていないグリーンシートを積層して積層作業を完了する(第2工程)。
【0029
積層作業の完了したグリーンシートを、図4に示すように一点鎖線を含むように格子状に切断すると、複数の切断積層体7が形成される(第3工程)。ここで、切断積層体7を構成する内部電極に着目すると、最上段の内部電極5p1の長さが一番短く、次いで、内部電極5p2、内部電極5p3の順で長くなっており、このため、先方開放端13p1,13p2,13p3は、積層方向に不揃いの位置関係になっている。これは、グリーンシートを長さ方向にずらして積層した結果であり、これによって各先方開放端近傍に生じる残留応力が分散されるようになっている。
【0030
次に、切断積層体7を焼成する。切断積層体7を雰囲気焼成できる炉に入れ、待機中で600℃程度まで加熱して有機バインダーを除去する。その後、炉の雰囲気を大気中の雰囲気とし、切断積層体7の加熱温度を600℃から焼成温度の1150℃に上昇させ、この状態を3時間続ける。次いで、1時間に100℃の割合で600℃まで温度を下げ、その後は室温まで自然冷却させる。これで、切断積層体7の焼成を完了する(第4工程)。なお、この焼成を完了した積層体を、焼成前の切断積層体7と区別するために、以下、焼結積層体7と呼ぶことにする。
【0031
次に、外部電極9a,9bの形成を行う。切断積層体7の側面には、切断によって内部電極が露出しているので、この側面に銀とガラスフリットとビヒクルからなる導電性ペーストを塗布して乾燥させ、これを大気中で800℃の温度で15分間焼き付けて銀電極層を形成する(第5工程)。さらに、この銀電極層の表面に銅を無電解メッキで施し、さらに、半田ぬれ性をよくするために半田メッキを施しておく。これで、一対の外部電極9a,9bを備える積層コンデンサ1が完成する。
【0032
なお、前述した積層コンデンサの製造方法の第1工程において、スラリーの中に適量の凝集剤を加えてからグリーンシートを製造すると、グリーンシートの表面に凹凸が形成され、この凹凸によって、図5に示す内部電極5p1〜5p5の開放端13p1〜13p5に屈曲部が形成される。これは、凝集剤がセラミック粒子や有機バインダーなどの粒子の表面に吸着し、粒子の凝集を起こさせるからであり、開放端13p1〜13p5に屈曲部が形成されるのは、この凹凸の影響によるものである。
【0033
(本実施形態の変形例)
上述したように、本実施形態の積層コンデンサは、隣接する内部電極5の長さを互いに異ならせることによって残留応力を分散緩和するものである。この内部電極5の長さに代え、又は、内部電極5の長さとともに、隣接する内部電極5の幅(側方開放端15,15間の距離)を互いに異ならせるように構成してもよい。前者における残留応力の分散緩和は、側方開放端15,15の不揃いによって実現され、後者における残留応力の分散緩和は、側方開放端15,15及び先方開放端13の不揃いによって実現される。
【0034
さらに、内部電極5を構成する材料の種類又は材料の構成比率を、少なくとも隣接する内部電極同士で異ならせ、これによる熱膨張係数の相違を利用して残留応力を分散緩和させることもできる。
【0035
【発明の効果】
各請求項に記載した発明によれば、積層方向に対する残留応力を緩和することによって、積層コンデンサのクラックやデラミネーションを可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 積層セラミックコンデンサの分解斜視図である。
【図2】 図1のX−X線を含む断面図を矢印方向に見た図である。
【図3】 グリーンシートを積層する様子を示す斜視図である。
【図4】 図3のY−Y線を含む断面図を矢印方向に見た図である。
【図5】 図4の変形例を示す図である。
【図6】 従来の積層セラミックコンデンサの縦断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
3 誘電体層(グリーンシート)
5 内部電極
7 積層体
9 外部電極
11 端部
12 開放端
13 先方開放端
13p 屈曲部
15 側方開放端

Claims (3)

  1. 内部電極群と、当該内部電極群間に配された誘電体セラミック群と、を含む積層体と、
    前記内部電極群の端部に導通接続された一対の外部電極と、を備える積層セラミックコンデンサにおいて、
    同一外部電極に接続された内部電極群の一部又は全部は、その長さ及び/又は幅が少なくとも隣接する内部電極間で互いに異なり、
    前記内部電極群の一部又は全部は、前記端部の他に開放端部群を有し、前記開放端部群を構成する各開放端部の一部又は全部が積層方向に屈曲する屈曲部を備えている、
    ことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
  2. 前記内部電極群は、すべての内部電極群のうち少なくとも半数を占めている、
    ことを特徴とする請求項1に記載した積層セラミックコンデンサ。
  3. 前記各内部電極を構成する、材料の種類又は材料の構成比率が、少なくとも隣接する内部電極間で互いに異なっている、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載した積層セラミックコンデンサ。
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