JP3464131B2 - 積層セラミックコンデンサ - Google Patents
積層セラミックコンデンサInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘電体層と、金属
を含有する内部電極層とを交互に積層してなるコンデン
サ本体の両端部に、一対の外部電極を形成した積層セラ
ミックコンデンサに関する。 【0002】 【従来技術】従来、積層セラミックコンデンサとして
は、誘電体層と、金属を含有する1種類の内部電極層と
を交互に積層し、内部電極層の一端部を交互にコンデン
サ本体表面の異なる場所に露出させ、該露出部分に外部
電極を形成した構造となっていた。 【0003】このような積層セラミックコンデンサの一
般的な製造方法は、例えば、誘電体セラミック粉末を有
機バインダーに分散させたセラミックスラリーをシート
状に成形してセラミックグリーンシートを作製し、スク
リーン印刷法などにより、このセラミックグリーンシー
トの上に導電ペーストで内部電極パターンを印刷する。 【0004】この後、内部電極パターンが印刷されたセ
ラミックグリーンシートを複数枚積層し、さらにその上
下両面に内部電極パターンが印刷されていないセラミッ
クグリーンシートを複数枚積み重ねる。こうして得られ
た積層成形体を内部電極が端面に露出するようにチップ
状に切断し、これを焼成する。 【0005】そして、焼結された積層体を研磨すること
で、その端面に内部電極を露出させ、この端面に導電ペ
ーストを塗布し、これを焼き付けて外部電極を形成する
ことにより、積層セラミックコンデンサが作製される。 【0006】また、他の積層セラミックコンデンサの製
造方法として、セラミックの積層体を焼成する前に、そ
の端部に予め導電ペーストを塗布し、外部電極を同時焼
成するという製造方法もある。さらに、積層体を得る方
法も、セラミックグリーンシートを使用する、いわゆる
シート法の他に、セラミックペーストと導電ペーストと
を交互に印刷していく、いわゆる印刷法も採用されてい
る。 【0007】このようなチップ型積層セラミックコンデ
ンサは、近年においては小型化と共に大容量化が要求さ
れている。この要求に応えるため誘電体セラミック層を
薄層化することにより高積層化を図っている。しかしな
がら、誘電体層を薄層、高積層化することにより、内部
電極に含まれる金属と誘電体層のセラミックとの収縮率
や熱膨張係数等の違いにより、内部応力が大きくなり、
歪が大きくなる。よって、表面実装工程で生じる熱衝撃
によりコンデンサにクラックを生じ、その信頼性の低下
を引き起こすことが多々あった。 【0008】熱衝撃により発生する内部応力を緩和して
クラック発生を防止方法として、特開平8−55753
号には、内部電極が多数の微細空孔を均一に有する積層
セラミックコンデンサが開示されている。この積層セラ
ミックコンデンサ及びその製造方法によれば、熱衝撃に
より生じた内部応力を、内部電極の微細空孔の変形によ
って吸収、緩和できるとされている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
8−55753号に開示された積層セラミックコンデン
サでは、コンデンサに生じる熱衝撃を内部電極の微細空
孔の変形によって吸収、緩和できるものの、焼成時にお
いて内部電極に含まれる金属と誘電体層のセラミックス
との焼成収縮率の違いによりコンデンサに発生する内部
応力(圧縮)を緩和することはできない。 【0010】さらに積層セラミックコンデンサで用いら
れる内部電極は、ニッケル、銀、銅、パラジウム等の金
属を含む単一種類であったため、例えば内部電極がパラ
ジウムから構成される場合には高価となり、内部電極が
ニッケルから構成される場合には安価であるものの内部
電極の収縮率が大きいため、誘電体層に発生する内部応
力が大きくなり、歪みが大きくなる。この歪みによっ
て、同じ誘電体厚みであっても積層数の増大により、温
度に対する静電容量の変化が大きくなるとともに、表面
実装工程で生じる熱応力や機械的応力さらには熱衝撃等
によりコンデンサにクラックを生じ、その信頼性の低下
を引き起こすという問題があった。 【0011】本発明は、温度に対する静電容量の変化を
小さくすることができ、さらには表面実装工程でのクラ
ック発生を抑制し、コンデンサとしての信頼性を維持し
得る積層セラミックコンデンサを提供することを目的と
する。 【0012】 【課題を解決する手段】即ち、本発明の積層セラミック
コンデンサは、[請求項1]コンデンサ本体と該コンデ
ンサ本体の両端部に配設された一対の外部電極とからな
る積層セラミックコンデンサであって、前記コンデンサ
本体を、ニッケルを主成分とする内部電極層と、パラジ
ウムを主成分とする内部電極層とで交互に形成し、さら
に、これらの2種類の内部電極層と誘電体層とを交互に
40層以上積層してなる有効積層体と、該有効積層体の
両面にそれぞれ形成された非有効体とから構成するとと
もに、前記非有効体の熱膨張係数を前記有効積層体の誘
電体層の熱膨張係数より4〜10×10-7/℃だけ小さ
くし、かつ前記コンデンサ本体の厚みに対する前記非有
効体の厚みの割合を2.5〜25%としたことを特徴と
するものである。 【0013】 【作用】本発明の積層セラミックコンデンサは、誘電体
層と、異なる金属を主成分とする複数種類の内部電極層
を有することにより、例えば、ニッケルを含有する内部
電極層とパラジウムを含有する内部電極層を用いること
により、ニッケルからなる内部電極層のみで形成された
コンデンサよりも内部電極の焼成時における収縮率が小
さくなり、有効積層体の誘電体層に発生する内部応力
(圧縮応力)が緩和される。 【0014】また、すべての内部電極層をパラジウムで
形成する必要がなく、一部を安価なニッケル等の内部電
極層を用いることができ、パラジウムからなる内部電極
層のみで形成されたコンデンサよりも安価に製造するこ
とができる。 【0015】さらに、非有効体の熱膨張係数を有効積層
体の誘電体層の熱膨張係数よりも4〜10×10-7/℃
だけ小さくすることにより、焼結後の冷却過程で有効積
層体に引張応力が非有効層に圧縮応力が蓄積され残留
し、この応力によって温度に対する静電容量の変化を小
さくできるとともに、表面実装工程でのクラック発生を
抑制し、コンデンサとしての信頼性を維持し得るのであ
る。 【0016】即ち、例えば図4に示すように、本発明の
積層セラミックコンデンサの一対の外部電極3を、銅配
線されたガラスエポキシ等の基板11上に半田13によ
り実装する場合、両側を外部電極3により固定されるた
め、この外部電極3の間のコンデンサ本体1には、実装
工程で生じる熱応力、機械的応力さらには熱衝撃(基板
に加わる曲げ応力や半田付けの際の熱負荷等による)等
による引張応力が作用するが、この引張応力は非有効体
9の圧縮応力により吸収され、その結果非有効体9と有
効積層体7との間にストレスが生じず、クラックの発生
が未然に防止される。 【0017】また、積層セラミックコンデンサの幅及び
厚みが同等の場合、実装方向の峻別が難しいが、応力が
集中するコーナー部は上記熱膨張係数の特定された非有
効体9であるため、どの方向に実装しても引張応力の大
半を吸収することができる。 【0018】 【発明の実施の形態】本発明の積層セラミックコンデン
サは、図1、図2および図3に示すように、コンデンサ
本体1の両端部に外部電極3を配設して構成され、コン
デンサ本体1は、誘電体層4と、異なる金属を主成分と
する複数種類の内部電極層5とを交互に積層してなる有
効積層体7と、該有効積層体7の上下両面にそれぞれ形
成された非有効体9とから構成されている。 【0019】非有効体9は、コンデンサとして機能しな
いセラミックからなるものであり、複数種類の内部電極
層5としては、異なる2種類の内部電極層5を交互に積
層することが、誘電体層4の内部応力緩和という点から
望ましいが、これに限定されるものではない。 【0020】内部電極層5に用いられる金属としては、
ニッケル、銀、銅、パラジウム等があるが、これらのう
ちでも、安価で内部応力緩和に有効であるという理由か
ら、ニッケルを主成分とする内部電極層5aと、パラジ
ウムを主成分とする内部電極層5bの2種類を用いるこ
とが望ましい。内部電極層5は、金属を主成分とするも
のであれば良く、金属の他に金属の酸化物やガラス等を
含有していても良いが、金属のみからなる場合が最も望
ましい。 【0021】そして、セラミックスからなる非有効体9
の熱膨張係数が有効積層体7のセラミックスからなる誘
電体層4の熱膨張係数より4〜10×10-7/℃だけ小
さく、かつ、図2に示すように、コンデンサ本体1の厚
み(T1 +2T2 )に対する非有効体9の厚みT2 の割
合(T2 /(T1 +2T2 )×100)が、2.5〜2
5%とされている。 【0022】このように非有効体9と有効積層体7の誘
電体層4との熱膨張係数差、およびコンデンサ本体1の
厚み(T1 +2T2 )に対する非有効体9の厚みT2 の
割合(T2 /(T1 +2T2 )×100)を上記のよう
に設定した理由は、熱膨張係数差が4×10-7/℃未満
の場合、誘電特性の悪化を防止するための引張応力を有
効積層体7に付与できず、かつ表面実装工程で生じる熱
応力、機械的応力更には熱衝撃を吸収し得るに十分な圧
縮応力を非有効体9に付与できず、表面からクラックが
生じ易くなるからである。 【0023】そして、コンデンサ本体1の厚み(T1 +
2T2 )に対する非有効体9の厚みT2 の割合(T2 /
(T1 +2T2 )×100)が2.5%未満の場合に
は、誘電特性の悪化を防止するための引張応力を有効積
層体7に付与できないからである。 【0024】一方、熱膨張係数差が10×10-7/℃を
越え、あるいは厚み比が25%よりも大きい場合、有効
積層体7の引張応力が大きくなり過ぎて有効積層体7か
らクラックが生じ易くなるからである。 【0025】非有効体9と有効積層体7の誘電体層4と
の熱膨張係数差は、誘電特性の悪化を防止するととも
に、表面実装工程等で生じる圧縮応力を低減するため
に、有効積層体7に最適な引張応力を付与するという理
由から、有効積層体7の誘電体層4が非有効体9よりも
6〜10×10-7/℃大きいことが望ましい。 【0026】また、コンデンサ本体1に対する非有効体
9の厚み比は、有効積層体7に最適な引張応力を付与す
るという理由から6〜20%であることが望ましい。 【0027】誘電体層4は、誘電特性向上という点か
ら、主に、チタン酸バリウム、チタン酸ランタン、チタ
ン酸カルシウム、チタン酸ネオジウム及びチタン酸マグ
ネシウム等のチタン酸塩を主成分とする誘電体セラミッ
クから構成することが望ましい。非有効体9も同様であ
る。 【0028】この場合は、上記非有効体9が有効積層体
7の誘電体層4よりジルコニウム酸塩を5〜15mol
%多く含むよう調整することにより、非有効体9と有効
積層体7との熱膨張係数の差を上記のごとく設定するこ
とができる。非有効体9におけるジルコニウム酸塩の過
剰含有量が5mol%未満の場合、上記熱膨張係数差が
4×10-7/℃を下回り、逆に15mol%を越えると
同熱膨張係数差が10×10-7/℃を上回ることにな
る。 【0029】尚、誘電体層4の原料として、ジルコニウ
ム酸塩を用いてはいないが、原料中に不可避的に含まれ
ている場合があること、誘電体層4の一組成材料として
ジルコニウム酸塩を後添加する場合もあることから、ジ
ルコニウム酸塩について非有効体9が5〜15mol%
多く含むと表現した。このように、誘電体層4、非有効
体9の原料としてジルコニウム酸塩を添加すると、コン
デンサとしての磁器強度も大となるので望ましい。 【0030】本発明の積層セラミックコンデンサは、例
えば、先ず、誘電体層となるグリーンシートを作製する
ことにより得られる。グリーンシートは、例えば、チタ
ン酸バリウムを主成分とし、酸化イットリウム、炭酸マ
ンガン及び酸化マグネシウムを加えた誘電体粉末に、水
及び分散剤を加え、ボールミルにて混合粉砕した後、有
機バインダーを混合し、得られたスラリーを所定厚みの
テープ状に成形することにより得られる。 【0031】有効積層体の誘電体層の材料としては、チ
タン酸バリウムを主成分とし、この主成分100モル部
に対して、酸化マグネシウムを0.5〜8モル部、炭酸
マンガンを0.05〜0.5モル部、酸化イットリウム
を0.3〜4モル部添加含有したものを用いることが誘
電率などの特性を向上するという点から望ましい。 【0032】有効積層体の誘電体層の原料粉末に、ジル
コン酸塩、例えばジルコン酸カルシウム(CaZr
O3 )、ジルコン酸バリウム(BaZrO3 )粉末を5
〜15モル%加え、非有効体9の材料とする。 【0033】導体ペーストは、例えば、ニッケル粉末に
有機可塑剤を加えたペースト、及びパラジウム粉末に有
機可塑剤を加えたペーストを作製する。なお、ニッケル
やパラジウムはペースト中に例えば40〜60重量%程
度含有するものとする。 【0034】そして、上記誘電体層用のグリーンシート
の上面に、例えば、スクリーン印刷法によりニッケルの
導体ペーストまたはパラジウムの導体ペーストを塗布
し、ニッケル内部電極とパラジウム内部電極が交互とな
るように、導体ペーストを塗布したグリーンシートを積
層し、有効積層体用の積層成形体を作製する。 【0035】一方、有効積層体の積層成形体の上下両面
に非有効体用のグリーンシートをそれぞれ複数枚積層す
る。 【0036】そして、得られた積層成形体を所定寸法に
切断したのち、例えば、酸素分圧3×10-8〜3×10
-3Pa、温度1150〜1300℃で0.5〜3時間焼
成し、この後、酸素分圧1×10-2×104 Pa、温度
800〜1150℃で30分〜5時間熱処理を行いコン
デンサ本体を作製する。 【0037】次に、銅粉末に有機可塑剤を加えたペース
トを作製し、このペーストを、前記内部電極層と交互に
電気的に接続するようにコンデンサ本体の両端に焼き付
けて積層セラミックコンデンサを作製する。 【0038】尚、上記例では、ニッケルとパラジウムの
組み合わせからなる内部電極を形成したが、本発明は上
記例に限定されるものではない。さらに、例えばスパッ
タ法等の薄膜形成手法を用いて、外部電極を前記内部電
極層と交互に電気的に接続するように焼結体に形成すれ
ば、外部電極が薄くなる分有効電極面積を更に大きくす
ることができる。 【0039】本発明の積層セラミックコンデンサは、特
に、誘電体セラミック層を40層以上積層したものにお
いて特に有効である。 【0040】 【実施例】先ず、チタン酸バリウムを主成分とし、この
主成分100モル部に対して、酸化イットリウムを1モ
ル部、酸化マグネシウムを2モル部、酸化マンガンを
0.1モル部添加した誘電体粉末に、水及び分散剤を加
え、ZrO2 ボールを用いたボールミルにて混合粉砕し
た後、有機バインダーを混合し、得られたスラリーを厚
み7μmのテープ状に成形し、有効積層体の誘電体層用
のグリーンシートを得た。 【0041】上記誘電体層用の材料粉末にジルコン酸カ
ルシウム(CaZrO3 )及び/またはジルコン酸バリ
ウム(BaZrO3 )粉末を、表1に示す量だけ加え、
上記誘電体層用のスラリーと同様に処理して非有効体用
のグリーンシートを得た。 【0042】一方、内部電極として、ニッケル粉末に有
機可塑剤を加えたペースト、及びパラジウム粉末に有機
可塑剤を加えたペーストを用意し、各々上記有効積層体
用のグリーンシート上にスクリーン印刷法にて形成し、
ニッケル及びパラジウムが各々一層おきに交互に配置さ
れるようにグリーンシートを積層し、積層成形体を作製
した。 【0043】比較のため、内部電極としてニッケルのみ
を使用したグリーンシートを用い、非有効体に有効積層
体と同じ誘電体材料を用い、内部電極としてニッケルの
みを使用した積層成形体も作製した。 【0044】得られた積層成形体を切断したのち、酸素
分圧1×10-6Pa、温度1260℃で2時間焼成し、
次に、酸素分圧1×10Pa、温度1000℃で1時間
熱処理を行った。この焼結体をバレル研磨後、コンデン
サの内部電極が露出した両端面に銅ペーストを塗布し、
900℃で焼き付け、さらにその上にNiメッキ及びS
nメッキを施し、有効積層体の誘電体層厚み4μm、誘
電体層数100層、外形寸法縦2.0mm×横1.25
mm×厚み0.54〜1.16mm、有効電極面積1.
63(1.68×0.97)mm2 の積層コンデンサを
得た。 【0045】非有効体の厚み、CaZrO3 及びBaZ
rO3 の添加量を変えた試料について、図2に示す非有
効体の厚みT2 とコンデンサ本体の厚み(T1 +2×T
2 )との比を測定算出し、また有効積層体の誘電体層の
熱膨張係数から非有効体の熱膨張係数を差し引いた値Δ
αを測定算出し、さらに残留応力(非有効体の圧縮応
力、有効積層体の引張応力)をFEM解析法により求め
た。 【0046】また、試料をLCRメーター4284Aを
用いて、周波数1kHz、入力信号レベル1.0Vrm
sにて−55〜125℃における静電容量を測定し、+
25℃での静電容量に対する各温度での静電容量の変化
率(TCC)を算出した。 【0047】上記コンデンサを銅配線されたガラスエポ
キシ基板上にハンダ付けし、該基板を間隔が90mmの
支持台に載せ、基板の裏面より押圧してコンデンサにク
ラックが入るまでのたわみ変形量を求めた(日本電子機
械工業会規格RC−3402に準拠)。 【0048】焼成後の焼結体の研磨断面を実体顕微鏡
(×40)で観察し、内部のクラックの有無を調べた。
非有効体の厚み、CaZrO3 及びBaZrO3 の添加
量、非有効体と有効積層体の誘電体層との熱膨張係数の
差Δα、残留応力、誘電特性(TCC)、クラックが入
るまでのたわみ変形量及び内部クラックの有無の観察結
果を一括して表1、表2に示す。 【0049】 【表1】 【0050】 【表2】【0051】これらの表1、2において、試料No.3
〜9,11,12, 14,15は、いずれも非有効体の
圧縮応力が大きいため、上記規格RC−3402の試験
法によるクラックが入るまでの変形量が大きく、表面実
装時の引張応力に十分耐えることが理解される。また、
有効積層体の引張応力が小さく従って内部クラックが皆
無である。 【0052】これに対し、試料No.1,17は、非有
効体と有効積層体の誘電体層との熱膨張係数に差がない
ため、非有効体に圧縮応力が蓄積されず、従ってクラッ
クが入るまでの変形量が小さく、表面実装の際の引張応
力によりクラックが発生する可能性がある。試料No.
13は、コンデンサ本体の厚みに対する非有効体の厚み
割合が大きいため有効積層体の引張応力が大となり、焼
結体内部にクラックが発生したものがあった。尚、No.
1はNiのみを内部電極として用いた例である。 【0053】逆に試料No.10は非有効体の割合が小
さいために有効積層体の引張応力が小さく温度特性TC
Cを改善できない。また試料No.2は熱膨張係数の差
が小さいために有効積層体の引張応力が小さくなりTC
Cを改善できない。更に、試料No.16は、熱膨張係
数の差が大きいため有効積層体の引張応力が大となり試
料No.13と同様内部クラックが発生した。 【0054】尚、上記では非有効体の熱膨張係数を小さ
くする手段として、有効積層体の誘電体材料にジルコン
酸塩を添加する方法を採用したが、他の方法の採用を除
外するものではない。 【0055】 【発明の効果】本発明の積層セラミックコンデンサで
は、異なる金属を主成分とする複数種類の内部電極層を
用いることにより、例えば、ニッケルからなる内部電極
層とパラジウムからなる内部電極層を用いたので、ニッ
ケルからなる内部電極層のみで形成されたコンデンサよ
りも内部電極の焼成時における収縮率が小さくなり、誘
電体層に発生する内部応力が緩和される。これにより内
部電極層をパラジウムで形成する必要がないので、安価
に製造できる。 【0056】さらに、コンデンサ本体の厚みに対する非
有効体の厚みの割合を2.5〜25%とし、かつ、非有
効体の熱膨張係数を有効積層体の誘電体層の熱膨張係数
よりも4〜10×10-7/℃だけ小さくすることによ
り、焼結後の冷却過程で有効積層体に引張応力が非有効
体に圧縮応力が蓄積され残留し、この応力によって温度
に対する静電容量の変化を小さくできるとともに、表面
実装工程でのクラック発生を抑制し、コンデンサとして
の信頼性を維持し得るのである。
を含有する内部電極層とを交互に積層してなるコンデン
サ本体の両端部に、一対の外部電極を形成した積層セラ
ミックコンデンサに関する。 【0002】 【従来技術】従来、積層セラミックコンデンサとして
は、誘電体層と、金属を含有する1種類の内部電極層と
を交互に積層し、内部電極層の一端部を交互にコンデン
サ本体表面の異なる場所に露出させ、該露出部分に外部
電極を形成した構造となっていた。 【0003】このような積層セラミックコンデンサの一
般的な製造方法は、例えば、誘電体セラミック粉末を有
機バインダーに分散させたセラミックスラリーをシート
状に成形してセラミックグリーンシートを作製し、スク
リーン印刷法などにより、このセラミックグリーンシー
トの上に導電ペーストで内部電極パターンを印刷する。 【0004】この後、内部電極パターンが印刷されたセ
ラミックグリーンシートを複数枚積層し、さらにその上
下両面に内部電極パターンが印刷されていないセラミッ
クグリーンシートを複数枚積み重ねる。こうして得られ
た積層成形体を内部電極が端面に露出するようにチップ
状に切断し、これを焼成する。 【0005】そして、焼結された積層体を研磨すること
で、その端面に内部電極を露出させ、この端面に導電ペ
ーストを塗布し、これを焼き付けて外部電極を形成する
ことにより、積層セラミックコンデンサが作製される。 【0006】また、他の積層セラミックコンデンサの製
造方法として、セラミックの積層体を焼成する前に、そ
の端部に予め導電ペーストを塗布し、外部電極を同時焼
成するという製造方法もある。さらに、積層体を得る方
法も、セラミックグリーンシートを使用する、いわゆる
シート法の他に、セラミックペーストと導電ペーストと
を交互に印刷していく、いわゆる印刷法も採用されてい
る。 【0007】このようなチップ型積層セラミックコンデ
ンサは、近年においては小型化と共に大容量化が要求さ
れている。この要求に応えるため誘電体セラミック層を
薄層化することにより高積層化を図っている。しかしな
がら、誘電体層を薄層、高積層化することにより、内部
電極に含まれる金属と誘電体層のセラミックとの収縮率
や熱膨張係数等の違いにより、内部応力が大きくなり、
歪が大きくなる。よって、表面実装工程で生じる熱衝撃
によりコンデンサにクラックを生じ、その信頼性の低下
を引き起こすことが多々あった。 【0008】熱衝撃により発生する内部応力を緩和して
クラック発生を防止方法として、特開平8−55753
号には、内部電極が多数の微細空孔を均一に有する積層
セラミックコンデンサが開示されている。この積層セラ
ミックコンデンサ及びその製造方法によれば、熱衝撃に
より生じた内部応力を、内部電極の微細空孔の変形によ
って吸収、緩和できるとされている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
8−55753号に開示された積層セラミックコンデン
サでは、コンデンサに生じる熱衝撃を内部電極の微細空
孔の変形によって吸収、緩和できるものの、焼成時にお
いて内部電極に含まれる金属と誘電体層のセラミックス
との焼成収縮率の違いによりコンデンサに発生する内部
応力(圧縮)を緩和することはできない。 【0010】さらに積層セラミックコンデンサで用いら
れる内部電極は、ニッケル、銀、銅、パラジウム等の金
属を含む単一種類であったため、例えば内部電極がパラ
ジウムから構成される場合には高価となり、内部電極が
ニッケルから構成される場合には安価であるものの内部
電極の収縮率が大きいため、誘電体層に発生する内部応
力が大きくなり、歪みが大きくなる。この歪みによっ
て、同じ誘電体厚みであっても積層数の増大により、温
度に対する静電容量の変化が大きくなるとともに、表面
実装工程で生じる熱応力や機械的応力さらには熱衝撃等
によりコンデンサにクラックを生じ、その信頼性の低下
を引き起こすという問題があった。 【0011】本発明は、温度に対する静電容量の変化を
小さくすることができ、さらには表面実装工程でのクラ
ック発生を抑制し、コンデンサとしての信頼性を維持し
得る積層セラミックコンデンサを提供することを目的と
する。 【0012】 【課題を解決する手段】即ち、本発明の積層セラミック
コンデンサは、[請求項1]コンデンサ本体と該コンデ
ンサ本体の両端部に配設された一対の外部電極とからな
る積層セラミックコンデンサであって、前記コンデンサ
本体を、ニッケルを主成分とする内部電極層と、パラジ
ウムを主成分とする内部電極層とで交互に形成し、さら
に、これらの2種類の内部電極層と誘電体層とを交互に
40層以上積層してなる有効積層体と、該有効積層体の
両面にそれぞれ形成された非有効体とから構成するとと
もに、前記非有効体の熱膨張係数を前記有効積層体の誘
電体層の熱膨張係数より4〜10×10-7/℃だけ小さ
くし、かつ前記コンデンサ本体の厚みに対する前記非有
効体の厚みの割合を2.5〜25%としたことを特徴と
するものである。 【0013】 【作用】本発明の積層セラミックコンデンサは、誘電体
層と、異なる金属を主成分とする複数種類の内部電極層
を有することにより、例えば、ニッケルを含有する内部
電極層とパラジウムを含有する内部電極層を用いること
により、ニッケルからなる内部電極層のみで形成された
コンデンサよりも内部電極の焼成時における収縮率が小
さくなり、有効積層体の誘電体層に発生する内部応力
(圧縮応力)が緩和される。 【0014】また、すべての内部電極層をパラジウムで
形成する必要がなく、一部を安価なニッケル等の内部電
極層を用いることができ、パラジウムからなる内部電極
層のみで形成されたコンデンサよりも安価に製造するこ
とができる。 【0015】さらに、非有効体の熱膨張係数を有効積層
体の誘電体層の熱膨張係数よりも4〜10×10-7/℃
だけ小さくすることにより、焼結後の冷却過程で有効積
層体に引張応力が非有効層に圧縮応力が蓄積され残留
し、この応力によって温度に対する静電容量の変化を小
さくできるとともに、表面実装工程でのクラック発生を
抑制し、コンデンサとしての信頼性を維持し得るのであ
る。 【0016】即ち、例えば図4に示すように、本発明の
積層セラミックコンデンサの一対の外部電極3を、銅配
線されたガラスエポキシ等の基板11上に半田13によ
り実装する場合、両側を外部電極3により固定されるた
め、この外部電極3の間のコンデンサ本体1には、実装
工程で生じる熱応力、機械的応力さらには熱衝撃(基板
に加わる曲げ応力や半田付けの際の熱負荷等による)等
による引張応力が作用するが、この引張応力は非有効体
9の圧縮応力により吸収され、その結果非有効体9と有
効積層体7との間にストレスが生じず、クラックの発生
が未然に防止される。 【0017】また、積層セラミックコンデンサの幅及び
厚みが同等の場合、実装方向の峻別が難しいが、応力が
集中するコーナー部は上記熱膨張係数の特定された非有
効体9であるため、どの方向に実装しても引張応力の大
半を吸収することができる。 【0018】 【発明の実施の形態】本発明の積層セラミックコンデン
サは、図1、図2および図3に示すように、コンデンサ
本体1の両端部に外部電極3を配設して構成され、コン
デンサ本体1は、誘電体層4と、異なる金属を主成分と
する複数種類の内部電極層5とを交互に積層してなる有
効積層体7と、該有効積層体7の上下両面にそれぞれ形
成された非有効体9とから構成されている。 【0019】非有効体9は、コンデンサとして機能しな
いセラミックからなるものであり、複数種類の内部電極
層5としては、異なる2種類の内部電極層5を交互に積
層することが、誘電体層4の内部応力緩和という点から
望ましいが、これに限定されるものではない。 【0020】内部電極層5に用いられる金属としては、
ニッケル、銀、銅、パラジウム等があるが、これらのう
ちでも、安価で内部応力緩和に有効であるという理由か
ら、ニッケルを主成分とする内部電極層5aと、パラジ
ウムを主成分とする内部電極層5bの2種類を用いるこ
とが望ましい。内部電極層5は、金属を主成分とするも
のであれば良く、金属の他に金属の酸化物やガラス等を
含有していても良いが、金属のみからなる場合が最も望
ましい。 【0021】そして、セラミックスからなる非有効体9
の熱膨張係数が有効積層体7のセラミックスからなる誘
電体層4の熱膨張係数より4〜10×10-7/℃だけ小
さく、かつ、図2に示すように、コンデンサ本体1の厚
み(T1 +2T2 )に対する非有効体9の厚みT2 の割
合(T2 /(T1 +2T2 )×100)が、2.5〜2
5%とされている。 【0022】このように非有効体9と有効積層体7の誘
電体層4との熱膨張係数差、およびコンデンサ本体1の
厚み(T1 +2T2 )に対する非有効体9の厚みT2 の
割合(T2 /(T1 +2T2 )×100)を上記のよう
に設定した理由は、熱膨張係数差が4×10-7/℃未満
の場合、誘電特性の悪化を防止するための引張応力を有
効積層体7に付与できず、かつ表面実装工程で生じる熱
応力、機械的応力更には熱衝撃を吸収し得るに十分な圧
縮応力を非有効体9に付与できず、表面からクラックが
生じ易くなるからである。 【0023】そして、コンデンサ本体1の厚み(T1 +
2T2 )に対する非有効体9の厚みT2 の割合(T2 /
(T1 +2T2 )×100)が2.5%未満の場合に
は、誘電特性の悪化を防止するための引張応力を有効積
層体7に付与できないからである。 【0024】一方、熱膨張係数差が10×10-7/℃を
越え、あるいは厚み比が25%よりも大きい場合、有効
積層体7の引張応力が大きくなり過ぎて有効積層体7か
らクラックが生じ易くなるからである。 【0025】非有効体9と有効積層体7の誘電体層4と
の熱膨張係数差は、誘電特性の悪化を防止するととも
に、表面実装工程等で生じる圧縮応力を低減するため
に、有効積層体7に最適な引張応力を付与するという理
由から、有効積層体7の誘電体層4が非有効体9よりも
6〜10×10-7/℃大きいことが望ましい。 【0026】また、コンデンサ本体1に対する非有効体
9の厚み比は、有効積層体7に最適な引張応力を付与す
るという理由から6〜20%であることが望ましい。 【0027】誘電体層4は、誘電特性向上という点か
ら、主に、チタン酸バリウム、チタン酸ランタン、チタ
ン酸カルシウム、チタン酸ネオジウム及びチタン酸マグ
ネシウム等のチタン酸塩を主成分とする誘電体セラミッ
クから構成することが望ましい。非有効体9も同様であ
る。 【0028】この場合は、上記非有効体9が有効積層体
7の誘電体層4よりジルコニウム酸塩を5〜15mol
%多く含むよう調整することにより、非有効体9と有効
積層体7との熱膨張係数の差を上記のごとく設定するこ
とができる。非有効体9におけるジルコニウム酸塩の過
剰含有量が5mol%未満の場合、上記熱膨張係数差が
4×10-7/℃を下回り、逆に15mol%を越えると
同熱膨張係数差が10×10-7/℃を上回ることにな
る。 【0029】尚、誘電体層4の原料として、ジルコニウ
ム酸塩を用いてはいないが、原料中に不可避的に含まれ
ている場合があること、誘電体層4の一組成材料として
ジルコニウム酸塩を後添加する場合もあることから、ジ
ルコニウム酸塩について非有効体9が5〜15mol%
多く含むと表現した。このように、誘電体層4、非有効
体9の原料としてジルコニウム酸塩を添加すると、コン
デンサとしての磁器強度も大となるので望ましい。 【0030】本発明の積層セラミックコンデンサは、例
えば、先ず、誘電体層となるグリーンシートを作製する
ことにより得られる。グリーンシートは、例えば、チタ
ン酸バリウムを主成分とし、酸化イットリウム、炭酸マ
ンガン及び酸化マグネシウムを加えた誘電体粉末に、水
及び分散剤を加え、ボールミルにて混合粉砕した後、有
機バインダーを混合し、得られたスラリーを所定厚みの
テープ状に成形することにより得られる。 【0031】有効積層体の誘電体層の材料としては、チ
タン酸バリウムを主成分とし、この主成分100モル部
に対して、酸化マグネシウムを0.5〜8モル部、炭酸
マンガンを0.05〜0.5モル部、酸化イットリウム
を0.3〜4モル部添加含有したものを用いることが誘
電率などの特性を向上するという点から望ましい。 【0032】有効積層体の誘電体層の原料粉末に、ジル
コン酸塩、例えばジルコン酸カルシウム(CaZr
O3 )、ジルコン酸バリウム(BaZrO3 )粉末を5
〜15モル%加え、非有効体9の材料とする。 【0033】導体ペーストは、例えば、ニッケル粉末に
有機可塑剤を加えたペースト、及びパラジウム粉末に有
機可塑剤を加えたペーストを作製する。なお、ニッケル
やパラジウムはペースト中に例えば40〜60重量%程
度含有するものとする。 【0034】そして、上記誘電体層用のグリーンシート
の上面に、例えば、スクリーン印刷法によりニッケルの
導体ペーストまたはパラジウムの導体ペーストを塗布
し、ニッケル内部電極とパラジウム内部電極が交互とな
るように、導体ペーストを塗布したグリーンシートを積
層し、有効積層体用の積層成形体を作製する。 【0035】一方、有効積層体の積層成形体の上下両面
に非有効体用のグリーンシートをそれぞれ複数枚積層す
る。 【0036】そして、得られた積層成形体を所定寸法に
切断したのち、例えば、酸素分圧3×10-8〜3×10
-3Pa、温度1150〜1300℃で0.5〜3時間焼
成し、この後、酸素分圧1×10-2×104 Pa、温度
800〜1150℃で30分〜5時間熱処理を行いコン
デンサ本体を作製する。 【0037】次に、銅粉末に有機可塑剤を加えたペース
トを作製し、このペーストを、前記内部電極層と交互に
電気的に接続するようにコンデンサ本体の両端に焼き付
けて積層セラミックコンデンサを作製する。 【0038】尚、上記例では、ニッケルとパラジウムの
組み合わせからなる内部電極を形成したが、本発明は上
記例に限定されるものではない。さらに、例えばスパッ
タ法等の薄膜形成手法を用いて、外部電極を前記内部電
極層と交互に電気的に接続するように焼結体に形成すれ
ば、外部電極が薄くなる分有効電極面積を更に大きくす
ることができる。 【0039】本発明の積層セラミックコンデンサは、特
に、誘電体セラミック層を40層以上積層したものにお
いて特に有効である。 【0040】 【実施例】先ず、チタン酸バリウムを主成分とし、この
主成分100モル部に対して、酸化イットリウムを1モ
ル部、酸化マグネシウムを2モル部、酸化マンガンを
0.1モル部添加した誘電体粉末に、水及び分散剤を加
え、ZrO2 ボールを用いたボールミルにて混合粉砕し
た後、有機バインダーを混合し、得られたスラリーを厚
み7μmのテープ状に成形し、有効積層体の誘電体層用
のグリーンシートを得た。 【0041】上記誘電体層用の材料粉末にジルコン酸カ
ルシウム(CaZrO3 )及び/またはジルコン酸バリ
ウム(BaZrO3 )粉末を、表1に示す量だけ加え、
上記誘電体層用のスラリーと同様に処理して非有効体用
のグリーンシートを得た。 【0042】一方、内部電極として、ニッケル粉末に有
機可塑剤を加えたペースト、及びパラジウム粉末に有機
可塑剤を加えたペーストを用意し、各々上記有効積層体
用のグリーンシート上にスクリーン印刷法にて形成し、
ニッケル及びパラジウムが各々一層おきに交互に配置さ
れるようにグリーンシートを積層し、積層成形体を作製
した。 【0043】比較のため、内部電極としてニッケルのみ
を使用したグリーンシートを用い、非有効体に有効積層
体と同じ誘電体材料を用い、内部電極としてニッケルの
みを使用した積層成形体も作製した。 【0044】得られた積層成形体を切断したのち、酸素
分圧1×10-6Pa、温度1260℃で2時間焼成し、
次に、酸素分圧1×10Pa、温度1000℃で1時間
熱処理を行った。この焼結体をバレル研磨後、コンデン
サの内部電極が露出した両端面に銅ペーストを塗布し、
900℃で焼き付け、さらにその上にNiメッキ及びS
nメッキを施し、有効積層体の誘電体層厚み4μm、誘
電体層数100層、外形寸法縦2.0mm×横1.25
mm×厚み0.54〜1.16mm、有効電極面積1.
63(1.68×0.97)mm2 の積層コンデンサを
得た。 【0045】非有効体の厚み、CaZrO3 及びBaZ
rO3 の添加量を変えた試料について、図2に示す非有
効体の厚みT2 とコンデンサ本体の厚み(T1 +2×T
2 )との比を測定算出し、また有効積層体の誘電体層の
熱膨張係数から非有効体の熱膨張係数を差し引いた値Δ
αを測定算出し、さらに残留応力(非有効体の圧縮応
力、有効積層体の引張応力)をFEM解析法により求め
た。 【0046】また、試料をLCRメーター4284Aを
用いて、周波数1kHz、入力信号レベル1.0Vrm
sにて−55〜125℃における静電容量を測定し、+
25℃での静電容量に対する各温度での静電容量の変化
率(TCC)を算出した。 【0047】上記コンデンサを銅配線されたガラスエポ
キシ基板上にハンダ付けし、該基板を間隔が90mmの
支持台に載せ、基板の裏面より押圧してコンデンサにク
ラックが入るまでのたわみ変形量を求めた(日本電子機
械工業会規格RC−3402に準拠)。 【0048】焼成後の焼結体の研磨断面を実体顕微鏡
(×40)で観察し、内部のクラックの有無を調べた。
非有効体の厚み、CaZrO3 及びBaZrO3 の添加
量、非有効体と有効積層体の誘電体層との熱膨張係数の
差Δα、残留応力、誘電特性(TCC)、クラックが入
るまでのたわみ変形量及び内部クラックの有無の観察結
果を一括して表1、表2に示す。 【0049】 【表1】 【0050】 【表2】【0051】これらの表1、2において、試料No.3
〜9,11,12, 14,15は、いずれも非有効体の
圧縮応力が大きいため、上記規格RC−3402の試験
法によるクラックが入るまでの変形量が大きく、表面実
装時の引張応力に十分耐えることが理解される。また、
有効積層体の引張応力が小さく従って内部クラックが皆
無である。 【0052】これに対し、試料No.1,17は、非有
効体と有効積層体の誘電体層との熱膨張係数に差がない
ため、非有効体に圧縮応力が蓄積されず、従ってクラッ
クが入るまでの変形量が小さく、表面実装の際の引張応
力によりクラックが発生する可能性がある。試料No.
13は、コンデンサ本体の厚みに対する非有効体の厚み
割合が大きいため有効積層体の引張応力が大となり、焼
結体内部にクラックが発生したものがあった。尚、No.
1はNiのみを内部電極として用いた例である。 【0053】逆に試料No.10は非有効体の割合が小
さいために有効積層体の引張応力が小さく温度特性TC
Cを改善できない。また試料No.2は熱膨張係数の差
が小さいために有効積層体の引張応力が小さくなりTC
Cを改善できない。更に、試料No.16は、熱膨張係
数の差が大きいため有効積層体の引張応力が大となり試
料No.13と同様内部クラックが発生した。 【0054】尚、上記では非有効体の熱膨張係数を小さ
くする手段として、有効積層体の誘電体材料にジルコン
酸塩を添加する方法を採用したが、他の方法の採用を除
外するものではない。 【0055】 【発明の効果】本発明の積層セラミックコンデンサで
は、異なる金属を主成分とする複数種類の内部電極層を
用いることにより、例えば、ニッケルからなる内部電極
層とパラジウムからなる内部電極層を用いたので、ニッ
ケルからなる内部電極層のみで形成されたコンデンサよ
りも内部電極の焼成時における収縮率が小さくなり、誘
電体層に発生する内部応力が緩和される。これにより内
部電極層をパラジウムで形成する必要がないので、安価
に製造できる。 【0056】さらに、コンデンサ本体の厚みに対する非
有効体の厚みの割合を2.5〜25%とし、かつ、非有
効体の熱膨張係数を有効積層体の誘電体層の熱膨張係数
よりも4〜10×10-7/℃だけ小さくすることによ
り、焼結後の冷却過程で有効積層体に引張応力が非有効
体に圧縮応力が蓄積され残留し、この応力によって温度
に対する静電容量の変化を小さくできるとともに、表面
実装工程でのクラック発生を抑制し、コンデンサとして
の信頼性を維持し得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサを示す斜視
図であり、一部を切り欠いて示した図である。 【図2】図1の縦断面図である。 【図3】図1の横断面図である。 【図4】積層セラミックコンデンサの基板への表面実装
を示す縦断面図である。 【符号の説明】 1・・・コンデンサ本体 3・・・外部電極 4・・・誘電体層 5・・・内部電極層 7・・・有効積層体 9・・・非有効体
図であり、一部を切り欠いて示した図である。 【図2】図1の縦断面図である。 【図3】図1の横断面図である。 【図4】積層セラミックコンデンサの基板への表面実装
を示す縦断面図である。 【符号の説明】 1・・・コンデンサ本体 3・・・外部電極 4・・・誘電体層 5・・・内部電極層 7・・・有効積層体 9・・・非有効体
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】コンデンサ本体と該コンデンサ本体の両端
部に配設された一対の外部電極とからなる積層セラミッ
クコンデンサであって、前記コンデンサ本体を、ニッケ
ルを主成分とする内部電極層と、パラジウムを主成分と
する内部電極層とで交互に形成し、さらに、これらの2
種類の内部電極層と誘電体層とを交互に40層以上積層
してなる有効積層体と、該有効積層体の両面にそれぞれ
形成された非有効体とから構成するとともに、前記非有
効体の熱膨張係数を前記有効積層体の誘電体層の熱膨張
係数より4〜10×10-7/℃だけ小さくし、かつ前記
コンデンサ本体の厚みに対する前記非有効体の厚みの割
合を2.5〜25%としたことを特徴とする積層セラミ
ックコンデンサ。
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---|---|---|---|
JP32844597A JP3464131B2 (ja) | 1997-11-28 | 1997-11-28 | 積層セラミックコンデンサ |
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