JP3680453B2 - 洗浄用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂用成形機内の洗浄に使用する洗浄用熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは熱可塑性樹脂にスチレン−マレイン酸共重合体を配合した洗浄用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチックの成形加工においては、使用樹脂の品種切り替えの際には先行品種の影響を排除するために各種の手段が採られている。特に着色された樹脂の成形では、青色、黒色等の濃色系の品種から白色等の淡色系の品種に切り替える際には、成形機の分解掃除や汎用樹脂または再生樹脂等による成形機内の共洗い等の煩雑な作業と長時間の生産中止を伴う洗浄作業を強いられてきた。これらの問題を解消する方法として、成形機内を洗浄するための洗浄用熱可塑性樹脂組成物が各種開発されている。
【0003】
たとえば特開昭62−195045号公報には、熱可塑性樹脂にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩2〜30重量%、撥水性化合物(高級脂肪酸金属塩、ろう、流動パラフィン、合成ワックス等)0.5〜10重量%を配合した組成物が、特公平05−060768号公報には熱可塑性樹脂に高級脂肪酸モノグリセライドの硼酸エステルカルシウム塩および無機充填剤を配合した組成物が、特公平03−283805号公報には熱可塑性樹脂に、アルキルベンゼンスルホン酸中性塩2〜40重量%、塩基性ステアリン酸マグネシウム1〜10重量%を配合した洗浄剤組成物が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の提案された組成物では、未だ洗浄能力について改善の余地があった。
本発明者らは、洗浄能力の高い洗浄用熱可塑性樹脂組成物を開発すべく鋭意研究した。その結果、熱可塑性樹脂にスチレン−マレイン酸共重合体を配合することにより、優れた洗浄能力を有する洗浄用熱可塑性樹脂組成物が得られることを見いだし、この知見に基づき本発明を完成した。以上の記述から明らかなように、本発明の目的は優れた洗浄能力を有する洗浄用熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂及びスチレン−マレイン酸共重合体を含有する洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
【0006】
(2)スチレン−マレイン酸共重合体の分子量が5,000〜50,000、酸価が400以下である前記1項記載の洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
【0007】
(3)熱可塑性樹脂70〜99重量%及びスチレンーマレイン酸共重合体を1〜30重量%含有した前記1項又は2項の洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
【0008】
(4)熱可塑性樹脂がポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体又はポリメタクリル酸メチルである前記1項〜3項のいずれか1項記載の洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる熱可塑性樹脂とは、樹脂を加熱すると温度上昇とともに樹脂が軟化、流動化し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になるサイクルを繰り返すことができる樹脂であれば特に限定されないが、洗浄能力、特に洗浄用熱可塑性組成物が成形機又は押出機内に残留しにくく、洗浄に要する時間が短縮できる理由によりポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体又はポリメタクリル酸メチルである熱可塑性樹脂が好ましい。
【0010】
本発明で用いるスチレン−マレイン酸共重合体は、スチレンとマレイン酸を共重合させたものであれば特に限定されないが、洗浄能力が優れる理由により酸価は好ましくは400以下、より好ましくは350以下、特に好ましくは300以下、また分子量は好ましくは5,000〜50,000、より好ましくは10,000〜40,000、特に好ましくは20,000〜30,000である。
【0011】
本発明に使用するスチレン−マレイン酸共重合体は懸濁重合又は乳化重合等の公知の製造方法で得ることができる。
懸濁重合法としては、例えば撹拌機付き容器中に純水、スチレン単量体、無水マレイン酸及び分散剤としてポリビニルアルコール、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイドを加えて70〜80℃に加熱混合して共重合させる。共重合した無水マレイン酸は水と反応して部分的に開環して、スチレン−無水マレイン酸共重合体部分を有するスチレン−マレイン酸共重合体となる。得られた共重合体ラテックスを遠心分離機で水分を除去してから気流中で乾燥し、紛状重合体として得ることができる。
【0012】
本発明の洗浄用熱可塑性組成物は、熱可塑性樹脂及びスチレン−マレイン酸共重合体を含有する組成物であり、その含有率は特に限定されないが、洗浄能力が優れる理由により、好ましくは熱可塑性樹脂99〜70重量%及びスチレンーマレイン酸共重合体を1〜30重量%、より好ましくは熱可塑性樹脂97〜80重量%及びスチレンーマレイン酸共重合体3〜20重量%、特に好ましくは熱可塑性樹脂95〜85重量%及びスチレンーマレイン酸共重合体5〜15重量%である。
【0013】
本発明の組成物には必要に応じて、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、シリカ、アルミナ、ガラス繊維等の無機充填剤を添加することができる。さらにステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類やカルバナーワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類を添加することもできる。
【0014】
本発明の組成物は、熱可塑性樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体の所望量を撹拌混合装置を用いて混合することによって得ることが例示でき、また、得られた該混合物を溶融混練温度180〜300℃で溶融混練押出し、ペレット状としても得ることが例示できる。撹拌混合装置としてはヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、タンブラー、リボブレンダー等の通常の撹拌混合装置を使用することが例示できる。また、押出機としては、1軸押出機、2軸押出機、コニーダー等を使用することが例示できる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明することが、これによって限定されるものではない。なお、実施例、比較例において、洗浄能力は下記の洗浄テスト(1)又は(2)の方法で評価した。
【0016】
洗浄テスト(1)
メルトフローレート(JIS K7210:230℃、荷重21.18N;以下MFR▲1▼と略す)6.0g/10分、結晶融点165℃のポリプロピレン84重量%、ビス{[3,5-ジブロモ-4-(2',3'−ジブロモプロポキシ)]フェニル}スルホン10重量%、三酸化アンチモン5重量%及びカーボンブラック1重量%からなる難燃性ポリプロピレン組成物(性状:黒色)、並びに1軸押出機(シリンダー径:35mm、L/D:30)を用いて、スクリュー回転数150rpm、吐出量:5Kg/h、押し出し温度200℃で約60分間押し出した。押出機内に難燃性ポリプロピレン組成物が残留している状態で、難燃性ポリプロピレン組成物を洗浄用熱可塑性樹脂組成物に変えて押し出し、押し出された樹脂から難燃性ポリプロピレン組成物の黒色が消えるまでに要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量を測定し、引き続き、洗浄用熱可塑性樹脂組成物をMFR:6.0g/10分、結晶融点165℃のポリプロピレンに変えて押し出し、押し出された樹脂から洗浄用熱可塑性樹脂組成物の色が消えるまでに要したポリプロピレンの量を測定し、さらに、上記洗浄用熱可塑性樹脂組成物の押し出しの開始から上記洗浄用熱可塑性樹脂組成物の色が消えるまでに要した時間を測定した。
上記の各量及び時間を洗浄能力の指標の1つとした。
【0017】
洗浄テスト(2)
比重:1.05、メルトフローレート(JIS K7210:220℃、荷重98.07N;以下MFR▲2▼と略す)9g/10分のABS樹脂(商品名:日本合成ゴム(株)製ABS45)84重量%、2,2-ビス{[3,5-ジブロモ-4-(2‘,3‘-ジブロモプロポキシ)]フェニル}プロパン10重量%、三酸化アンチモン5重量%及びカーボンブラック1重量%からなる難燃性ABS樹脂組成物(性状:黒色)、並びに1軸押出機(シリンダー径:35mm、L/D:30)を用いて、スクリュー回転数150rpm、吐出量:5Kg/h、押し出し温度220℃で約60分間押し出し、引き続き(押出機内に難燃性ABS樹脂が残留している状態で)、難燃性ABS樹脂組成物を洗浄用熱可塑性樹脂組成物に変えて押し出し、押し出された樹脂から難燃性ABS樹脂組成物の黒色が消えるまでに要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量を測定した。引き続き、洗浄用熱可塑性樹脂組成物を比重:1.05、MFR▲2▼9g/10分のABS樹脂(性状:微黄色)(商品名:日本合成ゴム株式会社製ABS45)に変えて押し出し、押し出された樹脂から洗浄用熱可塑性樹脂組成物の色が消えるまでに要したABS樹脂組成物の量を測定し、さらに、上記洗浄用熱可塑性樹脂組成物の押し出しの開始しから上記洗浄用熱可塑性樹脂組成物の色が消えるまでに要した時間を測定した。
上記の量及び時間を洗浄能力の指標の1つとした。
【0018】
実施例(1)
MFR▲1▼が0.5g/10分、結晶融点が165℃のポリプロピレン4.85Kg(97.0重量%)、酸価が175、分子量が25000であるスチレン−マレイン酸共重合体(商品名:第一工業製薬(株)製ニューフロンティアMI−400P;以下SMCと略す)0.15Kg(3.0重量%)を内容積20リットルのヘンシェルミキサーに入れ、回転数500rpm.で3分間撹拌混合した。得られた混合物を2軸押出機(シリンダー径:30mm、L/D:30)に供給してシリンダー温度190〜200℃、ダイス温度200℃で溶融混練押出し、水槽中で冷却してペレタイザーでカットして洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いて洗浄テスト(1)を実施し、要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量は0.8Kg、ポリプロピレンの量は1.4Kg、時間は27分であった。
【0019】
実施例(2)
MFR▲1▼が0.5g/10分、結晶融点が165℃のポリプロピレン4.985Kg(99.7重量%)、SMC0.015Kg(0.3重量%)を実施例(1)と同様にして洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いて洗浄テスト(1)を実施し、要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量は2.2Kg、ポリプロピレンの量は1.7Kg、時間は48分であった。
【0020】
実施例(3)
メルトフローレートが(JIS K7210:190℃、荷重21.18N;以下MFR▲3▼と略す)0.5g/10分、密度が0.95g/cm3の高密度ポリエチレン4.4Kg(88.0重量%)、SMC0.6Kg(12重量%)を実施例(1)と同様に洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いて洗浄テスト(1)を実施し、要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量は0.5Kg、ポリプロピレンの量は0.9Kg、時間は17分であった。
【0021】
実施例(4)
比重が1.03、MFR▲2▼が0.4g/10分のABS樹脂(奇美実業製PA−709)4.00Kg(80.0重量%)、SMC1.00Kg(20.0重量%)を実施例(1)と同様に洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いて洗浄テスト(2)を実施し、要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量は0.5Kg、ABS樹脂の量は0.8Kg、時間は16分であった。
【0022】
実施例(5)
比重が1.03、MFR▲2▼が0.4g/10分のABS樹脂3.25Kg(65重量%)、SMC1.75Kg(35重量%)を実施例(1)と同様に洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いて洗浄テスト(2)を実施し、要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量は1.7Kg、ABS樹脂の量は2.1Kg、時間は47分であった。
【0023】
実施例(6)
メルトフローレート(JIS K7210:200℃、荷重49.03N;以下MFR▲4▼と略す)が0.5g/10分、密度(比重)が1.05のポリスチレン3.7Kg(74.0重量%)、SMC1.3Kg(26.0重量%)を実施例(1)と同様に洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いて洗浄テスト(2)を実施し、要した洗浄用熱可塑性樹脂組成物の量は0.9Kg、ABS樹脂の量は0.9Kg、時間は20分であった。
【0024】
比較例(1)
比重:1.05、MFR▲2▼9g/10分のABS樹脂(性状:微黄色)(商品名:日本合成ゴム株式会社製ABS45)を洗浄用熱可塑性樹脂組成物として、洗浄テスト(2)を行った。
ABS樹脂(洗浄用熱可塑性樹脂組成物としてのABS樹脂を含む)の量は8.0Kg、時間は98分であった。
【0025】
比較例(2)
MFR▲1▼が9g/10分、結晶融点が165℃のポリプロピレン4.6kg、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム0.3kg、ポリエチレンワックス0.1kgを実施例(1)と同様にして混合溶融し、洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性組成物を用いて洗浄テスト(1)を実施し、要した洗浄用熱可塑性組成物の量は3.5kg、ポリプロピレンの量は2.5kg、時間は75分であった。
【0026】
比較例(3)
比重:1.03、MFR▲2▼0.4g/10分のABS樹脂4.3kg、ステアリン酸モノグリセライドの硼酸エステルカルシウム塩0.2kg、炭酸カルシウム0.5kgを実施例(1)と同様にして混合溶融し、洗浄用熱可塑性樹脂組成物を得た。この洗浄用熱可塑性組成物を用いて洗浄テスト(2)を実施し、要した洗浄用熱可塑性組成物の量は2.8kg、ABS樹脂の量は2.2kg、時間は61分であった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の洗浄用熱可塑性樹脂組成物は、成形又は押し出しに用いた樹脂が熱分解により機内に固着して洗浄が困難である成形機又は押出機内の洗浄に極めて優れた洗浄能力を有する洗浄用熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の洗浄用熱可塑性樹脂組成物は少量使用するだけで、従来の洗浄用熱可塑性樹脂組成物を用いるのに比べて著しく後続樹脂の使用量を減少させることができ、また洗浄時間も短縮することができる。
【表1】
Figure 0003680453

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂及びスチレン−マレイン酸共重合体を含有する洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
  2. スチレン−マレイン酸共重合体の分子量が5,000〜50,000、酸価が400以下である請求項1記載の洗浄用熱可塑性樹脂組成物
  3. 熱可塑性樹脂70〜99重量%及びスチレン−マレイン酸共重合体1〜30重量%含有する請求項1又は請求項2記載の洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
  4. 熱可塑性樹脂がポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体又はポリメタクリル酸メチルである請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の洗浄用熱可塑性樹脂組成物。
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