JP3680293B2 - 高架橋下を利用する吊り免震構造物及びその建築工法 - Google Patents

高架橋下を利用する吊り免震構造物及びその建築工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高架橋下の空間を利用して建築する構造物、及びその建築工法の技術分野に属し、更に言えば、免震性能に優れ、防振、防音性能にも優れた吊り免震構造物、及びその建築工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高架橋下の空間を利用して建築する構造物は、図8のように、▲1▼高架橋1を支持する柱2の下に構築した剛強な基礎梁3と構造物4の下底梁5との間に、ゴムシートと鉄板を交互に積層し接着した積層ゴム(免震ゴム)6を設置して構造物4を支持せしめた積層ゴム方式、又は図9に示したように、▲2▼高架橋下の空間を利用して建築する構造物4の下底梁5と高架橋の基礎梁3との間、及び構造物4の側面と柱2との間にそれぞれ防振ゴム7(又はラバーマットなど)を設置した防振ゴム方式が個別技術として開発されている。
【0003】
その他、構造物と地盤とを絶縁して、地震を構造物へ伝播させない吊り免震の技術として、▲3▼特開昭63−189573号公報には、支点部に防振ゴムを用いた吊り式免震装置と、該装置によりパッケージ型ルームを吊り支持させたパッケージルームの技術が開示されている。
また、▲4▼特開平4−42407号公報には、本体架構に積層ゴムを介して吊り下げた吊り材に被支持構造物を吊り支持させた吊り免震装置が開示されている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼の積層ゴム方式、及び上記▲2▼の防振ゴム方式は、高架橋下の空間を利用して構造物を建築する技術的思想は参照されるとしても、免震性能の点では未だ物足りないものがある。例えば、▲1▼の積層ゴム6は復元力を持っているが、防振性能に劣り、▲2▼の防振ゴム7は防振性能こそ優れているが、復元性がない。
【0005】
また、上記▲3▼及び▲4▼に関しては、吊り免震の技術を参照できるとしても、高架橋下の空間を利用して構造物を建築するのに最適な技術という観点からは見るべきものがない。
従って、本発明の目的は、高架橋下の空間を利用して構造物を建築するのに最適な技術、即ち、免震性能に優れ、防振、防音効果にも優れた構造物の建築工法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る高架橋下を利用する構造物の建築工法は、
高架橋の柱にブラケットを突設してその外端部を間柱で補剛し、前記ブラケットに吊り材を吊り下げ、前記吊り材で構造物下底の梁を地面近傍の高さに吊り支持せしめ、前記の下底梁を基礎としてその上に高架橋下の空間を利用する構造物を建築すること、
前記吊り材の下端と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材の上端とブラケットとの連結部の双方に防振装置を設置すること、
および地盤側の固定点と構造物との間に変位制御ダンパーを設置すると共に変位制御ダンパーと構造物との連結部又は固定点との連結部にも防振装置を設置することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した高架橋下を利用する構造物の建築工法において、
高架橋の柱間に繋ぎ梁を架設し、前記繋ぎ梁にも吊り材を吊り下げ、前記吊り材で構造物の下底梁を吊り支持し、前記吊り材と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材と繋ぎ梁との連結部の双方に防振装置を設置することを特徴とする。
請求項3記載の発明に係る高架橋下を利用する吊り免震構造物は、
高架橋の柱にブラケットが突設され、その外端部が間柱で補剛されており、前記ブラケットに吊り材が吊り下げられ、前記吊り材で構造物下底の梁が地面近傍の高さに吊り支持され、前記の下底梁を基礎としてその上に高架橋下の空間を利用する構造物が建築されていること、
前記吊り材の下端と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材の上端とブラケットとの連結部の双方に防振装置が設置されていること、
及び地盤側の固定点と構造物との間に変位制御ダンパーが設置され、変位制御ダンパーと構造物との連結部又は固定点との連結部にも防振装置が設置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載した高架橋下を利用する吊り免震構造物において、
高架橋の柱間に繋ぎ梁が架設され、前記繋ぎ梁にも吊り材が吊り下げられ、前記吊り材で構造物の下底梁が吊り支持され、前記吊り材の下端と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材と繋ぎ梁との連結部の双方に防振装置が設置されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施形態】
請求項1〜3記載に発明に係る高架橋下を利用する構造物の建築工法は、大略図1と図2に概要図を示した形態で実施される。
すなわち、高架橋1の柱2の上部に突設したブラケット11から吊り下げた吊り材10で構造物下底の梁5を吊り支持せしめ、前記の梁5を基礎として高架橋下の空間を利用する構造物4を吊り免震方式で構築する(図1)。従って、吊り材10の長さに比例した減衰(免震)効果と、変位に対する復元力が奏され、免震性能に優れた構造物となる。但し、積極的に減衰力を作用させる手段として、地盤側の固定点と構造物4との間に変位制御ダンパー13も設置する。前記した吊り材10にはワイヤ、PC鋼棒、丸鋼、鉄骨などを選択的に使用することができる。
【0010】
一方、高架橋1の軌道スラブ1aから下向きに発せられる放射音を直接遮断する(空気伝播音を制御する)遮音天井12を、軌道スラブ1aを支持する左右の梁1b、1bの内側面に略水平に設置し、高架橋下の騒音を大幅に低減する(図2)。前記の遮音天井12は、例えば防振ゴムと遮音板とを組み合せて合成した構成とされる。
【0011】
防振性能を高める手段としては、前記吊り材10と梁5との連結部、及び高架橋の柱に突設したブラケット11とこれに吊り下げた吊り材10との連結部にそれぞれ防振ゴム、防振コイルバネ等の所謂防振装置14を設置する。更に変位制御ダンパー13と構造物4又は地盤の固定点との連結部にも防振装置を設置する。
従って、振動の伝播は、各要所で遮断される。
【0012】
図3〜図8は更に各部の詳細な構造例を示している。
先ず図3は、高架橋を横断面方向に見た実施形態として、吊り点が柱2の内側に2箇所、外側に各1箇所の合計4箇所である場合に、外側部分の吊り点にはブラケット11を柱2から突設して使用するが、内側部分の吊り点については左右の柱2、2間を繋ぐ繋ぎ梁11′を架設して使用している。前記ブラケット11には、その外端部(自由端)に地盤との間に立てた間柱15を設置して補剛した構成を示している。
【0013】
図4は、高架橋を長手方向に見た実施形態である。地表面から約1m位掘削し捨てコンクリートを打設したピット16を設け、このピット16を利用して、建物下底の梁5を出来るだけ地面近傍の高さに吊り、その上に構造物4を建築した構成を示している。
図5は、吊り材10とブラケット11及び繋ぎ梁11′との取り合い構造を示している。
【0014】
高架橋1の既存する柱2に対して、後施工アンカー(ホールインアンカー、ケミカルアンカー)のボルト17を複数本用いて、ガゼットプレート18の取付け板19を位置決め固定する。そして、前記のガゼットプレート18へブラケット11或いは繋ぎ梁11′の鋼材をハイテンションボルトで接合し取付けている。各吊り材10は、前記ブラケット11又は繋ぎ梁11′の上面に厚さの大きい座板20を固定し、その上に防振装置(防振ゴム)14を数段重ね、更にその上に吊り座21を載せナットを締付けて吊っている。前記座板20の下には補強用のスチフナー22が設けられている。
【0015】
図6は、吊り材10と建物下底梁5との取り合い構造を示している。
梁5の下面に数段の防振装置14を取付け、その下側に受け座23を取付け、ナット24を締付けて吊っている。梁5のうち、吊り材10の吊り点には複数のスチフナー30を組入れて補強している。
図7は、変位制御ダンパー13の設置構造の詳細を示している。
【0016】
ピット16の床面16aに反力受け25がアンカーボルト26を用いて強固に固定され、ダンパー13の可動軸13aの先端部が、ヒンジ機構27を用いて前記反力受け25と自在状態に連結されている。一方、同ダンパー13の本体部分の基部は、防振装置28を介装したボルト継手により、構造物の下底梁5と連結されている。従って、ダンパー13を通じて振動が建物へ伝わることもない。
【0017】
【本発明が奏する効果】
本発明に係る高架橋下の空間を利用する構造物の建築工法は、高架橋下の空間を利用するのに最適な技術として実施できる。即ち、免震性能に優れ、防振、防音効果にも優れており、同構造物の広範な用途への利用に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建築工法で建築された高架橋下の空間を利用する構造物の概念図である。
【図2】本発明に係る建築工法で建築された高架橋下の空間を利用する構造物の概念図である。
【図3】高架橋下の空間を利用する構造物のより詳細な断面図である。
【図4】高架橋下の空間を利用する構造物のより詳細な断面図である。
【図5】吊り材とブラケット等の取り合いの詳細な部分図である。
【図6】吊り材と下底梁との取り合いの詳細な部分図である。
【図7】ダンパーと下底梁との取り合いの詳細な部分図である。
【図8】従来の高架橋下の空間を利用する構造物の例を示した概念図である。
【図9】従来の高架橋下の空間を利用する構造物の異なる例を示した概念図である。
【符号の説明】
1 高架橋
2 柱
10 吊り材
5 下底梁
4 構造物
14 防振装置
13 変位制御ダンパー
11 ブラケット
11′ 繋ぎ梁
28 防振ゴム
12 防振遮音板

Claims (4)

  1. 高架橋の柱にブラケットを突設してその外端部を間柱で補剛し、前記ブラケットに吊り材を吊り下げ、前記吊り材で構造物下底の梁を地面近傍の高さに吊り支持せしめ、前記の下底梁を基礎としてその上に高架橋下の空間を利用する構造物を建築すること、
    前記吊り材の下端と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材の上端とブラケットとの連結部の双方に防振装置を設置すること、
    および地盤側の固定点と構造物との間に変位制御ダンパーを設置すると共に変位制御ダンパーと構造物との連結部又は固定点との連結部にも防振装置を設置することを特徴とする、高架橋下を利用する構造物の建築工法。
  2. 高架橋の柱間に繋ぎ梁を架設し、前記繋ぎ梁にも吊り材を吊り下げ、前記吊り材で構造物の下底梁を吊り支持し、前記吊り材と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材と繋ぎ梁との連結部の双方に防振装置を設置することを特徴とする、請求項1に記載した高架橋下を利用する構造物の建築工法。
  3. 高架橋の柱にブラケットが突設され、その外端部が間柱で補剛されており、前記ブラケットに吊り材が吊り下げられ、前記吊り材で構造物下底の梁が地面近傍の高さに吊り支持され、前記の下底梁を基礎としてその上に高架橋下の空間を利用する構造物が建築されていること、
    前記吊り材の下端と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材の上端とブラケットとの連結部の双方に防振装置が設置されていること、
    及び地盤側の固定点と構造物との間に変位制御ダンパーが設置され、変位制御ダンパーと構造物との連結部又は固定点との連結部にも防振装置が設置されていることを特徴とする、高架橋下を利用する吊り免震構造物。
  4. 高架橋の柱間に繋ぎ梁が架設され、前記繋ぎ梁にも吊り材が吊り下げられ、前記吊り材で構造物の下底梁が吊り支持され、前記吊り材の下端と下底梁との連結部、若しくは前記吊り材の下端と下底梁との連結部及び吊り材と繋ぎ梁との連結部の双方に防振装置が設置されていることを特徴とする、請求項3に記載した高架橋下を利用する吊り免震構造物。
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