JP3677372B2 - 紫外線硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物に関する。本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、微細な凹凸を有する材料表面に、気泡を生じることなく塗布され、紫外線の照射により容易に短時間で硬化させることができ、硬化後の樹脂膜が、酸処理に対して耐食性を示し、アルカリ処理に対しては溶解・剥離性を示すという特性を有するために、エッチング保護材、特にシャドウマスクのバックコート剤として有用であり、その他にも各種産業において、注型材料、塗料、成形材料等として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
シャドウマスクは、カラーテレビ用ブラウン管内の電子銃から照射された電子を、決められた発色体に衝突させる機能を有し、エッチングにより微小な孔が多数設けられた金属板である。この微小孔の形成は、金属板の表裏両面の対応する位置に、直径が異なる半球状又は角状の多数の微小凹部をそれぞれ設け、対応する凹部の底部同士を連通させることにより行われる。
シャドウマスクの製造工程の概略を説明すると、まず鉄などからなる薄い金属板の表裏両面に感光性樹脂膜を塗布し、その後所定の露光パターンを有するネガフィルムを金属板に密着させ、露光して感光性樹脂膜の露光部を硬化させ、現像処理により感光性樹脂膜の未露光部分を除去した後、焼き付ける。次いで、塩化第二鉄等の腐食液により一次エッチングを行い、片面又は表裏両面より互いに貫通しない微小凹部を形成後、片面のみにバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、金属板片面上の微小凹部を埋める膜を形成し、加熱及び/又は紫外線等の光を照射する事により樹脂組成物を硬化させる。このようにして片面を保護した後、再び腐食液により他面上の凹部を対象とする二次エッチングを行い、一次エッチングによる片面上の凹部と他面上の凹部とをその底部において連通させてから、パターン形成用感光性樹脂及びバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物の各硬化塗膜をアルカリ処理することにより除去し、シャドウマスクを得る。
シャドウマスクのバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物に要求される性能を満足する組成物として、現在は、アルカリ性溶液に可溶性の膜を形成する紫外線硬化性樹脂を水又は有機溶剤に溶解させた組成物が用いられており、一次エッチングを行った基板にロール法、スプレー法その他の方式により塗布した後、熱風乾燥炉等により溶媒を蒸発させ、その後、紫外線照射により硬化させて樹脂塗膜を形成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、膜を形成する樹脂を溶媒により溶解したバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物は、樹脂膜形成のために多量の溶媒を加熱蒸発させる必要があり、そのための加熱装置や溶剤の回収装置が必要であるとともに、有機溶剤の取り扱いに伴うその毒性及び引火爆発の危険性がある。乾燥工程における引火、爆発及び火災等の危険性を減少させるため、難燃性を有する塩素系溶剤の使用も検討されているが、近年、これらは大気汚染等の問題から規制されている。さらに、有機溶剤の蒸発に伴って塗膜が体積収縮を起こし、微小凹部の肩部(エッジ部)の塗膜が薄くなり易いという問題がある。
これらの問題を解決するため、本質的に無溶剤である紫外線硬化性樹脂を用いる方法が考えられる。しかしながら、現在知られている、硬化塗膜が耐酸性でアルカリ溶解性を有する紫外線硬化性樹脂を、シャドウマスクのバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物として用いた場合、微小な凹部に気泡を生ずることなく均一に充填することが困難であり、また凹底部での硬化不良及びアルカリ溶解・剥離性の不足に起因した塗膜残存等の欠点が見られ、要求特性を全て満足する物は未だ知られていない。
【0004】
従来、前記したような問題は使用する紫外線硬化性樹脂組成物の粘度が高いことに起因していると考えられており、例えば特開昭61−261410号には樹脂組成物の25℃における粘度を100cps以下にすることが提案されている。しかしながら、従来用いられている紫外線硬化性樹脂組成物を微細な凹凸を有する材料表面に、例えばロールを用いて塗布した場合、樹脂組成物の粘度が低くて流れ易いため、微小な凹部にロール表層部の一部が食い込んで圧力が加わったときに、樹脂組成物が微小凹部から流れ出て、微小凹部内へ充分に充填されなくなり、また微小凹部の肩部(エッジ部)の塗膜が薄くなり易いという問題がある。さらに、金属材料表面でのはじき(表面張力により塗膜が被着していない斑点状部分が生ずる現象、クレーターともいう)が発生したりする。また一般に、粘度が低過ぎる場合、硬化塗膜の耐エッチング性や剥離性が悪くなり易いという問題がある。
このような問題は、シャドウマスクへのバックコート剤塗布の場合に限らず、各種分野において微細な凹凸を有する材料表面への紫外線硬化性樹脂組成物の塗布の場合についても同様である。
【0005】
従って、本発明の基本的な目的は、前記したような問題がなく、微細な凹凸を有する材料表面に、微小凹部内部にまで充分に充填されるように、かつ気泡を生じることなく均一に塗布でき、また紫外線の照射により容易に短時間で硬化させることができる紫外線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、塗工性に優れると共に、硬化後の塗膜が高い耐エッチング性を示し、またエッチング後のアルカリ処理による溶解・剥離性を示すという特性を有し、エッチング保護材、特にシャドウマスク製造におけるバックコート剤用として有利に用いることができる、無溶剤型の紫外線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、カルボキシル基を有する光重合性化合物を含み、25℃における表面張力が30〜50mN/mであることを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物が提供され、その基本的な構成は、(a)分子中に1個のカルボキシル基及び1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物、(b)分子中に1個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物、(c)レベリング剤、及び(d)光開始剤を含有し、上記レベリング剤(c)がブタジエン共重合物系レベリング剤であってその配合割合が上記(a)成分と(b)成分の合計量100部に対して0.05〜5部であることを特徴としている。さらに好適な態様においては、上記(b)成分として、(b−1)分子中に1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物、(b−2)分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物を併せ含有する。
上記のような紫外線硬化性樹脂組成物は、塗工性に優れると共に、硬化後の塗膜が高い耐エッチング性を示し、またエッチング後のアルカリ処理による優れた溶解・剥離性を示すという特性を有するため、シャドウマスク製造におけるバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物として特に好適に用いることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
前記したように、従来、シャドウマスクのバックコート剤に用いられている紫外線硬化性樹脂組成物は、粘度が高い場合、微小な凹部に気泡を生ずることなく均一に充填することが困難であり、また凹底部での硬化不良及びアルカリ溶解・剥離性の不足に起因した塗膜残存等の欠点が見られる。
従来、このような問題は使用する紫外線硬化性樹脂組成物の粘度が高いことに起因していると考えられており、前記したように粘度をかなり低くすることが提案されている。しかしながら、樹脂組成物の粘度が低くても、逆に流れ易くなるため、前記したようにロールによる塗工時に微小凹部内から押し出されることによる充填不良や、材料表面でのはじきなどの問題がある。
本発明者らは、このような現象について鋭意研究の結果、上記のような問題は紫外線硬化性樹脂組成物の粘度を規制することによって解決されるものではなく、粘度の高低に拘らず、樹脂組成物の表面張力を規制することによって始めて解決できることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、25℃における表面張力が30〜50mN/mの範囲内にあるため、金属材料表面に対して良好な濡れ性を示し、前記のような問題を生ずることなく、微細な凹凸を有する材料表面に、気泡を生じることなく微小凹部内にも良好に充填されるように均一に塗布できる。
また、前記(a)〜(d)の各成分を含有する本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基を有する光重合性化合物(前記(a)成分)を含み、さらに2種以上の光重合性化合物(前記(a)成分及び(b)又は(b−1)、(b−2)成分)を含む。そのため、紫外線硬化性に優れ、凹底部での硬化不良を生ずることなく、紫外線の照射により容易に短時間で硬化させることができると共に、硬化後の塗膜は、酸処理に対して耐食性を示し、アルカリ処理に対しては溶解・剥離性を示すという特性を有する。従って、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、各種エッチング保護材、特にシャドウマスクのバックコート剤として有利に用いることができる。
【0009】
以下、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
まず、前記(a)成分は、分子中に1個のカルボキシル基及び1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下(メタ)アクリロイル基と総称する)を持つ化合物であり、例えば二塩基酸無水物と分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体とのモノエステル化合物がある。
二塩基酸無水物としては、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、エチルテトラヒドロフタル酸無水物、プロピルテトラヒドロフタル酸無水物、ブチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エチルヘキサヒドロフタル酸無水物、プロピルヘキサヒドロフタル酸無水物、イソプロピルヘキサヒドロフタル酸無水物、ブチルヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物等が挙げられ、また、分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクタムモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、本明細書中において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語として用いられている。
【0010】
上記モノエステル化合物の合成は、酸無水物と単量体との開環付加反応により行われるのが好ましいが、通常のエステル化反応により合成することもできる。これらモノエステル化合物を合成する場合、酸無水物1 モルに対して単量体1モルを使用するのが好ましいが、一方を過剰に使用しても構わない。上記開環付加反応における反応温度は、通常50〜150℃、好ましくは80〜110℃の範囲である。上記開環付加反応を行う場合、促進剤としてトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの第3級アミン類、又はその第4級アンモニウム塩などを使用することができる。また、反応中に重合が生起するのを防ぐために、ヒドロキノン、ブチルヒドロキノン、ブチルカテコール、フェノチアジンなどの重合禁止剤を使用することもできる。上記開環付加反応の反応の進行は酸無水物の赤外吸収スペクトルにより容易に知る事ができ、酸無水物の赤外吸収スペクトルピークの消失により反応が完了したとみなせる。
【0011】
上記モノエステル化合物の具体例としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルモノフタレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルモノフタレート、(メタ)アクリロイルオキシブチルモノフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノテトラヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルモノテトラヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシブチルモノテトラヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルモノヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシブチルモノヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルモノサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシブチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルマレート等が挙げられ、上記化合物の1種又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
【0012】
前記(a)成分の好ましい配合量は、(a)成分及び(b)成分の合計量を100重量部(以下、部とあるものは重量部とする)として、50〜90部、より好ましくは60〜85部である。(a)成分の配合量が50部より少ない場合、硬化塗膜のアルカリ溶解性、剥離性が充分ではなく、一方、配合量が90部より多い場合、樹脂組成物の高粘度化に起因して微小凹部への充填性、表面平滑性が低下し易く、また、硬化塗膜が脆くなり易いという問題がある。
【0013】
前記(b)成分は、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物であって、硬化塗膜の硬化特性を調整するものであり、例えば多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物(ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物を意味する。)、多塩基酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸との反応物、分子中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物、分子中に1個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物等が挙げられる。このような(b)成分の具体例としては、以下に例示するような(b−1)分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物と、(b−2)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物が挙げられ、これらのいずれかを用いることができるが、好ましくは(b−2)の化合物、特に好ましくは、(b−1)の化合物と(b−2)の化合物を併用することが、樹脂組成物の紫外線硬化性や粘度調整のし易さ、硬化塗膜の特性等の点から好ましい。
【0014】
上記(b)成分のうち、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物(b−1)は組成物の粘度や硬化塗膜の特性の調整に有効であり、その具体例としては、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンチルオキシエチル(メタ)アクリレート等の環状(メタ)アクリレート類、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、エトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルフォスフェート、フロロアルキル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリグリシジルイソシアヌレートモノ(メタ)アクリレート、テトラフェニルメタン型エポキシ−モノ(メタ)アクリレート、トリスフェニルメタン型エポキシ−モノ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸モノ(メタ)アクリレート、メラミンモノ(メタ)アクリレート、及び上記化合物のエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物等の単官能化合物が挙げられ、上記化合物の1種又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
【0015】
また、上記分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物(b−2)は硬化塗膜の硬化特性の調整に有効であり、その具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−ジ、−トリ又は−テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−ジ、−トリ、−テトラ、−ペンタ又は−ヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−ジ又は−トリ(メタ)アクリレート、昭和高分子(株)製:リポキシSP−4010等のフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学(株)製:エポキシエステル3000A等のビスフェノールA型エポキシ−ジ(メタ)アクリレート、トリグリシジルイソシアヌレート−ジ又は−トリ(メタ)アクリレート、テトラフェニルメタン型エポキシ−ジ、−トリ又は−テトラ(メタ)アクリレート、トリスフェニルメタン型エポキシ−ジ又は−トリ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸−ジ又は−トリ(メタ)アクリレート、メラミン−ジ又は−トリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、及び上記化合物のエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物等の多官能化合物が挙げられ、上記化合物の1種又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
【0016】
前記(b)成分の好ましい配合量は、前記(a)成分及び(b)成分の合計量を100部として、10〜50部、より好ましくは15〜40部である。(b)成分の配合量が10部より少ない場合、樹脂組成物の高粘度化に起因して微小凹部への充填性、表面平滑性が悪くなり、また硬化塗膜が脆くなり易く、さらにエッチング耐性も低下し易くなる。一方、配合量が50部より多い場合、硬化塗膜のアルカリ溶解性、剥離性が不充分である。
なお、上記(b−1)成分と(b−2)成分を併用する場合、(b−1)成分の配合量は1〜20部、より好ましくは3〜15部であり、一方、(b−2)成分の配合量は5〜45部、より好ましくは15〜35部である。これら(b−1)成分の配合量及び(b−2)成分の配合量が上記範囲よりも低い場合、あるいは高い場合の不利益も上記と同様である。
【0017】
前記(c)成分のレベリング剤は、組成物の微小凹部への充填性、硬化塗膜の表面平滑性、組成物の消泡性及び表面張力を調整する成分であり、一般的な消泡剤、表面平滑剤、湿潤分散剤等を用いることにより、充分に目的を達成できるが、表面張力を下げすぎない化合物が望ましく、そのような化合物としてはブタジエン共重合物系レベリング剤が挙げられる
【0018】
(c)成分の好ましい配合量は、前記(a)成分及び(b)成分の合計量を100部として、0.05〜5部、より好ましくは0.1〜2部である。(c)成分の配合量が0.05部より少ない場合、微小凹部への充填性、表面平滑性、また組成物の消泡性に問題を生じ易くなり、一方、配合量が5部より多い場合、表面張力低下に起因して組成物塗布時のクレーター、フローティング、オレンジピール、フィッシュアイを生じ易くなり、また、組成物の消泡性等の問題も生じ易くなる。
【0019】
前記(d)成分の光開始剤としては、紫外線硬化性樹脂組成物の光硬化性を充分に発揮させるため、一般的な光重合開始剤を使用することができる。本発明に使用される光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用できるが、配合後の組成物の熱安定性、貯蔵安定性に優れた化合物が望ましい。このような光重合開始剤としては、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、ジエチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のプロピオフェノン類、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、及びベンジルジメチルケタール等のケタール類などが挙げられ、上記化合物の1種又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。その好ましい配合量は、前記(a)成分及び(b)成分の合計量を100部として、1 〜10部、より好ましくは2〜8部である。光開始剤の配合量が1部より少ない場合、組成物の硬化不良を招いたり、耐酸性が低下し易くなり、一方、配合量が10部より多い場合、重合度が上がらず、やはり耐酸性が低下し易くなる。(d)成分としては、光重合開始剤に加えて光増感剤を添加してもよい。
【0020】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、前記したように25℃における表面張力が30mN/m以上、50mN/m以下の範囲内にあり、より好ましい表面張力は35mN/m以上、45mN/m以下である。紫外線硬化性樹脂組成物の表面張力は、前記(a)〜(d)の各成分を選択して使用することにより、容易に調整することができる。また、組成物の粘度は、従来、微小凹部への充填性の観点から低い程良いと言われ、より好ましいのは100cps以下であると考えられてきた。しかし、このような従来の考えと異なり、本発明者らの研究によれば、組成物の表面張力を調整することにより、従来塗工が困難とされていた粘度100cpsより高い粘度の紫外線硬化性樹脂組成物でも容易に塗工する事ができ、また、1,000cps以上の組成物であっても塗工が可能であることが分かった。25℃における表面張力が30mN/m以下の場合、表面張力低下に起因する塗膜のクレーター、フローティング、オレンジピール、フィッシュアイなどが生じ、また、組成物の発泡を生じて消泡性等の問題があり、直径が異なる半球状又は角状の多数の微小凹部に気泡を生ずることなく均一に充填して塗膜表面の平滑性を保つことは困難である。また、25℃における表面張力が50mN/m以上の場合、表面張力が高いために、塗布する材料に対する濡れ性が劣り、やはり均一に微小凹部へ充填し、塗膜表面の平滑性を保つことが困難である。同様の理由から、高粘度の紫外線硬化性樹脂組成物を塗工し易くする目的で温度を上げた場合(例えば、50℃)でも、表面張力が30mN/m以上、50mN/m以下の範囲にあることが望ましい。
【0021】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ロールコート法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法等の通常の塗布方法を用いることができる。なお、樹脂組成物を室温以上の温度に加温することは、組成物の粘度低下により微小凹部内への充填性が向上するので、装置等の制限がない場合、好ましい操作である。
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、常法により、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等で紫外線を照射する事により、硬化させることができる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明について更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されるものでないことはもとよりである。
【0023】
実施例1
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5部、(b−2)成分としてジエチレングリコールジメタクリレートを20部、(c)成分としてブタジエン共重合物(ビックケミー・ジャパン社製:BYK−055)を0.2部を60℃に加熱混合した組成物に、(d)成分としてベンジルジメチルケタール5部を溶解混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0024】
実施例2
(a)成分としてアクリロイルオキシプロピルモノテトラヒドロフタレートを100部、(b−1)成分としてイソブチルメタクリレートを5部、(b−2)成分として1,9−ノナンジオールジアクリレートを30部配合した以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0025】
実施例3
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルヘキサヒドロモノフタレートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを5部、(b−2)成分としてトリエチレングリコールジアクリレートを20部配合した以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0026】
実施例4
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノサクシネートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを10部、(b−2)成分としてトリエチレングリコールジアクリレートを20部配合した以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0027】
実施例5
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレートを10部、(b−2)成分としてトリエチレングリコールジアクリレートを20部配合した以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0028】
実施例6
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−1)成分としてイソボニルアクリレートを10部、(b−2)成分としてトリメチロールプロパントリアクリレートEO付加物(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートTMP−3EO−A)を30部配合した以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0029】
実施例7
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを20部、(c)成分としてブタジエン共重合物(ビックケミー・ジャパン社製:BYK−055)を0.2部を60℃に加熱混合した組成物に、(d)成分としてベンジルジメチルケタール5部を溶解混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0030】
実施例8
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルヘキサヒドロモノフタレートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを30部配合した以外は、実施例7と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0031】
実施例9
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−2)成分としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEG#200のアクリレート化物)を20部、(c)成分としてブタジエン共重合物(ビックケミー・ジャパン社製:BYK−055)を0.2部を60℃に加熱混合した組成物に、(d)成分としてベンジルジメチルケタール5部を溶解混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0032】
比較例1
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−1)成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレートを10部、(b−2)成分としてジエチレングリコールジメタクリレートを20部、(c)成分としてフッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックF−177)を0.2部を60℃に加熱混合した組成物に(d)成分としてベンジルジメチルケタール5部を溶解混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0033】
比較例2
(a)成分としてアクリロイルオキシエチルモノフタレートを100部、(b−1)成分としてイソブチルメタクリレートを10部、(b−2)成分としてトリエチレングリコールジアクリレートを20部配合した以外は、比較例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
【0034】
比較例3
比較例1の(c)成分であるフッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックF−177)を除いた以外は、比較例1と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物を得た。
前記実施例1〜9及び比較例1〜3の組成を下記表1にまとめて示す。
【表1】
Figure 0003677372
【0035】
前記実施例1〜9及び比較例1〜3で得た各紫外線硬化性樹脂組成物を、一次エッチングを終了したシャドウマスクに、バーコーターを用いて膜厚15〜20ミクロンになるように塗布した後、80kw/cmの高圧水銀灯を用いて紫外線を照射、塗膜表面のタックがないことから、組成物塗膜が硬化したことを確認した。硬化塗膜の特性を評価したところ、表2に示す結果が得られた。
また、実施例7の紫外線硬化性樹脂組成物を50℃に加温した後、一次エッチングを終了したシャドウマスクにバーコーターにて塗布し、同様に高圧水銀灯を用いて硬化させた。硬化塗膜の特性評価をしたところ、表2に示した充填性の△が○となり、組成物の微小凹部への充填性を向上させることができた。
【0036】
【表2】
Figure 0003677372
なお、前記実施例1〜9及び比較例1〜3の各組成物及びその硬化物における各種特性値の評価は以下の方法により行った。
【0037】
粘度:
25℃及び50℃における各組成物の粘度をE型粘度計を用いて測定した。
表面張力:
25℃及び50℃における各組成物の表面張力をダイノメーター(デュヌイ法)を用いて測定した。
【0038】
充填性:
一次エッチングを終了したシャドウマスクに各紫外線硬化性樹脂組成物を塗布したときの微小凹部への充填性を目視にて判定した。
○:気泡無し。
△:若干の気泡あり。
×:気泡あり。
【0039】
表面平滑性:
シャドウマスク上に塗布した各組成物を、紫外線の照射により硬化させた後、硬化物の表面状態を目視にて判定した。
○:欠陥無し。
×:フィッシュアイ又はクレーター発生。
【0040】
耐エッチング性:
各組成物により硬化塗膜を形成させたシャドウマスクを、50%FeCl3 水溶液(遊離塩酸濃度0.2%、液温75℃)に15分間浸漬させた後、硬化塗膜の表面状態を目視にて判定した。
○:変化無し。
×:剥がれ、変色発生。
【0041】
アルカリ溶解・剥離性:
各組成物により硬化塗膜を形成させたシャドウマスクを、8%NaOH水溶液(液温90℃)に1分間浸漬させた後、硬化塗膜の溶解・剥離性を目視にて判定した。
○:完全に溶解・剥離した。
×:溶解・剥離しない。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、25℃における表面張力が30〜50mN/mの範囲内にあるため、金属材料表面に対して良好な濡れ性を示し、微細な凹凸を有する材料表面に、気泡を生じることなく微小凹部内にも良好に充填されるように均一に塗布できる。また、紫外線の照射によって容易かつ速やかに硬化し、耐酸性、アルカリ溶解性・剥離性を有する硬化塗膜が得られる組成物であり、特にシャドウマスク製造工程のバックコート剤として有用である。また、本発明の組成物においては、紫外線硬化性樹脂組成物として従来困難であると言われていた高粘度での塗工が可能であるので、粘度を下げるために用いられていた低粘度の単官能モノマー等を多量に配合する必要がないため、硬化塗膜のエッチング耐性が向上し、大型のブラウン管に使われる厚板のシャドウマスクの長時間エッチングにも充分対応できる。さらに、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、実質的に無溶剤型の組成物であり、安全性が高いと共に、取り扱う際に皮膚に対する刺激性が低いという利点を有し、また従来からのアルカリ性溶液に可溶性の膜を形成する樹脂を水又は有機溶剤に溶解させた組成物を用いなくてよく、従来法で必要であった水又は有機溶剤を蒸発させるための乾燥炉及び溶剤の回収装置は不要であり、短時間硬化による生産性向上、乾燥工程等のエネルギーコストの低減、大幅な工程省略を図ることができ、また設備の簡略化が期待できるなど、その工業的価値は極めて高い。

Claims (3)

  1. (a)分子中に1個のカルボキシル基及び1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物、(b)分子中に1個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物、(c)レベリング剤、及び(d)光開始剤を含有し、上記レベリング剤(c)がブタジエン共重合物系レベリング剤であってその配合割合が上記(a)成分と(b)成分の合計量100部に対して0.05〜5部であり、25℃における表面張力が30〜50mN/mであることを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物。
  2. 前記(b)成分が、(b−1)分子中に1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物、(b−2)分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を持つ化合物とを含むことを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
  3. 前記請求項1又は2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物からなるシャドウマスク製造におけるバックコート剤用紫外線硬化性樹脂組成物。
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