JP5743179B2 - 着色インキ組成物、それを用いた視認性向上シートの製造方法、および視認性向上シート - Google Patents

着色インキ組成物、それを用いた視認性向上シートの製造方法、および視認性向上シート Download PDF

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Description

本発明は、着色インキ組成物に関し、より詳細には、表示装置の前面に設置し、表示装置の性能、とりわけ、表示装置に外光が当たった時のコントラスト低下や、ぎらつき、像の映り込み等による性能の低下を防止する機能や、表示装置の有効光を好適に拡散ないし集光させて視野角を制御する機能等、を有する視認性向上シートを作製する際に用いられる着色インキ組成物、ならびに、その着色インキ組成物を用いた視認性向上シートの製造方法および視認性向上シートに関する。
液晶表示装置では、通常、観察者がどのような位置から見ても良好な画像が得られるように、視野角が広いことが好まれる。一方、例えば通勤電車の中で仕事をする場合やATM等の公共の場に設置された液晶表示装置では、周りの人から画面を覗かれては困ることがあり、このような場合には液晶表示装置の観察者のみに見え、他人からは見えないようにプライバシーを保護するための覗き見防止機能が求められている。また、カーナビゲーションシステム等の車載型の液晶表示装置においては、夜間などに液晶表示装置の画面が窓ガラスに映り込み、視界を遮る現象がおこるため、映り込み防止機能が求められており、光線出光角度の制御が望まれている。
このような要求に対して、例えば、例えば、特開2006−119365号公報(特許文献1)には、光透過層と遮光層とを交互に並べた構造であるルーバータイプの視認性向上シートが提案されており、遮光層として、光透過層を構成する材料にカーボンブラックやカーボンファイバー等の充填材を混合したものを用いることが開示されている。
一方、上記のようなルーバー型の視認性向上シートは、斜め方向の映像光を単純にカットするものであるため、表示装置の種類によっては、観測者に到達させるべき映像光の拡散光源を減少させてしまうことにもなるため、表示画面の輝度が低下する場合があった。
上記の問題を解消するため、外光を遮光してコントラストを向上させ、かつ二重像の発生も減少させることができる視認性向上シートを液晶表示装置の光源と液晶パネルの間に設置することが提案されている。このような視認性向上シートとして種々の構造のものが提案されており、例えば、断面形状が台形のレンズ部を所定の間隔で配列するとともに、隣り合うレンズ部間の楔形部には、レンズ部よりも屈折率の低い材料とカーボン顔料等とを充填した構造を有するものが提案されている(例えば、特開2006−85050号公報等:特許文献2)。
そして、視認性向上シートの製造において、電離放射線硬化性樹脂等のレンズ材料に着色樹脂ビーズを混合した組成物を楔形部に充填し、電離放射線を照射して硬化させて光吸収部を形成することが行われている(例えば、国際出願公開公報WO2006/090784:特許文献3)。
特開2006−119365号公報 特開2006−85050号公報 国際出願公開公報WO2006/090784
従来の視認性向上シートの光吸収部は、通常、その断面が略三角形であるような、視認性向上シート面の法線方向に対して略三角形の斜辺が一定の角度を有するものであり、略三角形の底辺に相当する楔型の開口部から、上記したような着色樹脂ビーズを混合したインキ組成物を充填して樹脂を硬化させることにより、光吸収部が形成されていた。近年、表示装置の高精細化により、より線幅の狭い、即ち、楔形部の幅の狭い視認性向上シートが希求されており、光吸収部として、その断面が略三角形であるもの以外に、光吸収部の斜辺の角度が視認性向上シート面の法線方向に対して0°に近い、略矩形断面を有するような光吸収部を備えた視認性向上シートが提案されている。
上記のような線幅の狭い略矩形断面を有する光吸収部を形成する場合には、1回のみのインキの充填では、光吸収部となる略矩形断面を有する溝の底までインキを完全に充填するのが困難である。また、インキの充填を複数回行うことにより、インキ充填率は向上するものの、製造工程が増えることになるため、製造コストが増加することも懸念される。
本発明者らは、今般、線幅の狭い略矩形断面を有する光吸収部を形成するにあたり、表面張力が特定範囲内にある着色インキ組成物を、光透過部間に並列して設けられた溝へ充填することにより、1回のみのインキ充填であっても、線幅の狭い略矩形断面を有する光吸収部に効率良くインキを充填でき、その結果、視野角を維持しつつ、コントラストにも優れる視認性向上シートを実現できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
したがって、本発明の目的は、略矩形断面を有するような線幅の狭い光吸収部を備えた視認性向上シートにおいて、視野角を維持しつつコントラストにも優れる視認性向上シートを実現できる着色インキ組成物を提供することである。
また、本発明の別の目的は、上記着色インキ組成物を用いた視認性向上シートの製造方法を提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、上記製造方法により得られた視認性向上シートを提供することである。
本発明による着色インキ組成物は、所定間隔で並列した光透過部と前記光透過部の間に並列して設けられた、略矩形断面を有する光吸収部と、を備えた視認性向上シート、の製造に用いられる着色インキ組成物であって、
透明な電離放射線硬化性樹脂組成物と着色微粒子とを含んでなり、
表面張力が25〜40mN/mである、ことを特徴とするものである。
また、本発明の態様においては、前記インキ組成物の粘度が500〜4,000mPa・sであることが好ましい。
また、本発明の態様においては、前記着色微粒子が、樹脂中にカーボンブラックを練り込んだ樹脂ビーズからなることが好ましい。
また、本発明の態様においては、前記カーボンブラックの平均粒子径が10〜500nmであることが好ましい。
また、本発明の態様においては、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、及び多価アルコールから選択される多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーからなることが好ましい。
さらに、本発明の態様においては、消泡剤および/またはレベリング剤をさらに含んでなることが好ましい。
また、本発明の別の態様においては、所定間隔で並列した光透過部と、前記光透過部の間に並列して設けられた、略矩形断面を有する光吸収部と、を備えた視認性向上シートを製造する方法であって、所定間隔で並列するように光透過部を形成することにより、その光透過部の間に並列して設けられた略矩形断面を有する溝を形成し、前記溝に、上記の着色インキ組成物を充填する、ことを含んでなるものである。
また、本発明の態様においては、前記溝の開口幅が8〜12μmであることが好ましい。
さらに、本発明の態様においては、前記略矩形断面を有する光吸収部の斜辺が、視認性向上シート面の法線方向に対して0〜3°の角度を有することが好ましい。
また、本発明の別の態様においては、上記の方法により得られた視認性向上シートおよび、視認性向上シートを備えた表示装置も提供される。
本発明においては、所定間隔で並列した光透過部の間に並列して設けられた光吸収部を形成する際に用いる着色インキ組成物として、表面張力が25〜40mN/mであるインキ組成物を用いることにより、光吸収部の斜辺の角度が視認性向上シート面の法線方向に対して0°に近い、略矩形断面を有する線幅の狭い光吸収部を形成する場合であっても、1回のみのインキ充填であっても充填率の高い光吸収部を形成することができる。その結果、視野角を維持しつつ、コントラストにも優れる視認性向上シートを実現できる。
本発明の一実施形態における視認性向上シートの製造方法を説明する概略工程図。 本発明による視認性向上シートの製造方法と従来の製造方法とを示した概略図。 本発明の一実施形態における視認性向上シートの製造方法を説明する概略工程図。 得られた視認性向上シートの一方向の断面の拡大図。
<着色インキ組成物>
本発明による着色インキ組成物は、所定間隔で並列した光透過部と前記光透過部の間に並列して設けられた、略矩形断面を有する光吸収部と、を備えた視認性向上シート、の製造に用いられる着色インキ組成物であって、透明な電離放射線硬化性樹脂組成物と着色微粒子とを必須成分として含み、表面張力が25〜40mN/mの範囲である。略矩形断面を有する線幅の狭い光吸収部を形成する場合、即ち、開口幅の狭い溝にインキ組成物を充填して光吸収部を形成する場合に、インキ組成物の表面張力を上記範囲とすることにより、1回のみのインキ充填であっても、充填率の高い光吸収部を形成することができる。なお、本明細書において、表面張力とは、Wilhelmy法(プレート法)により25℃で測定された値を意味し、測定する組成物(液体)中に、釣り下げた測定子(プレート)を浸した際の、測定子が組成物中に引き込まれる力を測定し、下記式により算出される。
P=mg+Lγ・cosθ−shρg
(式中、Pは測定子が組成物中に引き込まれる力を表し、m、L、sおよびhは、それぞれ、測定子の質量、周知長、断面積、および測定子が組成物中に沈んだ深さを表し、gは重力加速度を表し、γは表面張力を表し、θは測定子と組成物との接触角を表し、ρは組成物の密度を表す。)
従来の開口幅の大きい、楔形ないし略三角断面を有する溝にインキ組成物を充填する場合には、インキ組成物の表面張力が25mN/m未満であっても、溝の開口部からインキ組成物が注入されて溝にインキ組成物を充填できるものの、開口幅が狭い(例えば8〜12μm程度)の略矩形断面を有する溝にインキ組成物を充填する場合、インキ組成物の表面張力が25mN/m未満であると、溝の開口部からインキを溝に注入できず、溝の中に空気が残存してしまい、1回のインキ充填ではインキ充填率が高くならない。一方、インキ組成物の表面張力が40mN/mを超える場合、溝の開口部および壁面とインキ組成物との濡れ性が低下してインキが溝の表面で弾かれ、充填したインキ中に気泡が混入するため、インキ充填率を高くすることができない。
また、本発明においては、インキ組成物の粘度が500〜4,000mPa・sであることが好ましい。上記の範囲とすることにより、より一層、溝中へのインキ充填率が向上する。インキ粘度が4,000mPa・s以上であると、粘度が高すぎてインキが溝の底まで充填されない場合がある。また、後記するように、インキの掻き取り性が悪化する。一方、インキ粘度が500mPa・s未満であると、インキの掻き取り性は良好であるものの、略矩形断面を有する溝にインキ組成物を充填することが困難となる。なお、インキ組成物の粘度は、B型粘度計を用いて25℃の環境下にて測定した値を意味するものとする。
また、本発明による着色インキ組成物は、後記するように、透明な電離放射線硬化性樹脂組成物中に着色微粒子を分散させた分散系のインキ組成物であるが、ずり応力を印加した際に粘度が変化しない、チキソトロピー性を有することが好ましい。以下、上記のような物性を有する着色インキ組成物を構成する各成分について説明する。
着色インキ組成物の主成分である透明な電離放射線硬化性樹脂組成物としては、従来公知の視認性向上シートや視野角向上シート等に用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができ、具体的には、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。上記した透明樹脂は、後記するような視認性向上シートの光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい透明樹脂を適宜選択することができる。
また、上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよく、具体的は、リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
本発明において用いられる着色微粒子としては、樹脂ビーズやガラスビーズに、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できる着色微粒子を使用してもよく、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等の着色剤を練り込んだものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用することができる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化型樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する着色微粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(いずれも三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
電離放射線硬化型樹脂組成物への着色微粒子の分散性を向上させるために、着色微粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
着色微粒子の添加量は、インキ組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることにより、よりコントラストに優れる視認性向上シートを実現することができる。着色微粒子の含有量が少なすぎると、溝(光吸収部)の光遮光性が不十分となる場合があり、着色微粒子の含有量が多すぎると、樹脂ビーズどうしが接触し割れや欠けの問題が発生し易くなる。
本発明による着色インキ組成物は、溝へのインキ充填性をより向上させるために、消泡剤および/またはレベリング剤を含んでいてもよい。消泡剤としては、例えばシリコーン系、アクリル系等の各種界面活性剤が使用できる。例えば、ラムテルシリーズ(花王株式会社製)等を好適に使用できる。また、レベリング剤としては、例えばフッ素系、シリコーン系等の各種界面活性剤が使用できる。例えば、メガファックシリーズ(DIC株式会社製)等を好適に使用できる。
上記した各成分を含むインキ組成物は、電離放射線硬化型樹脂組成物に、所定量の着色微粒子を混合し、所望により重合開始剤や、上記した消泡剤、レベリング剤、撥水剤等を添加することにより調製される。本発明においては、上記した各成分の配合量を適宜調整することにより、インキ組成物の表面張力を25〜40mN/mとすることができる。例えば、上記したフッ素系のレベリング剤(パーフルオロアルキル基を有するもの)では、分子構造中の−CF−基は6mN/m、−CF−CF−基は18.5mN/mの表面張力を有している。また、シリコン系のレベリング剤では、−Si(CH)−O−基は24mN/mの表面張力を有していることが知られている。これら表面張力が既知であるレベリング剤、消泡剤または等を適当な量でインキ組成物中に添加することにより、インキ組成物の表面張力を下げることができる。また、インキ組成物の表面張力が低い場合は、撥水剤等の表面張力が高い添加剤をインキ組成物に添加して、インキ組成物の表面張力を調整することができる。レベリング剤や撥水剤の添加量はインキ組成物の組成によって異なるため、インキ組成物が所望の表面張力となるように、添加量を適宜調整することができる。これらレベリング剤や撥水剤の添加量は、インキ組成物の組成にもよるが、概ね0.01〜3.0質量%程度である。
<視認性向上シートの製造方法>
本発明による視認性向上シートの製造方法は、所定間隔で並列した光透過部と、前記光透過部の間に並列して設けられた、略矩形断面を有する光吸収部と、を備えた視認性向上シートを製造する方法であって、所定間隔で並列するように光透過部を形成することにより、前記光透過部の間に並列して設けられた略矩形断面を有する溝を形成し、前記溝に、上記した着色インキ組成物を充填する、ことを含むものである。以下、各工程について順に説明する。
図1は、本発明による視認性向上シートの製造方法の概略工程を示したものである。先ず、基材1上に、層厚方向断面において略矩形の複数の光透過部2を形成する(図1(a))。この光透過部2は、一方のシート面側が上辺、他方のシート面側が下辺となるように配置された略矩形断面を有する要素である。
上記工程において使用される基材は、映像光の入射側に配置されるものであり、上記した光透過部2や光吸収部5を形成するためのベースとなる層である。基材としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
この光透過部2の形成は、使用する樹脂の種類によって異なる。例えば、光透過部を透明な熱可塑性樹脂を用いて形成する場合には、加熱した金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法や射出成型法、金型内に熱可塑性樹脂モノマーを注入して重合・固化させるキャスティング法等によって、所望形状の光透過部を形成することができる。また、電離放射線硬化性樹脂、特に紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、当該樹脂を成形型内に注入して紫外線を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、所望の形状の光透過部を形成することができる。これらの方法の中でも、本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、図1(a)に示すように、ロール状の成形型6を用いて、配列した光透過部単位2を連続的に製造することができる。
上記のようにして基材上に複数の光透過部2を形成することにより光透過部の間には、並列して設けられた略矩形断面の溝3が形成されることになる。次いで、この並列して設けられた略矩形断面の溝3に、透明な電離放射線樹脂組成物と着色微粒子とを含んでなるインキ組成物4を充填する(図1(b))。このインキ充填工程において、図2(b)に示すように、従来のような断面が略三角形の光吸収部を形成する場合には、光吸収部となるべき溝が楔形ないし略三角形の断面を有するため、楔形の斜辺は視認性向上シート面の法線方向に対してある程度の角度を有する。そのため、インキの表面張力が、40mN/m以上であっても、インキ組成物はこの斜辺を流れるように溝に充填される。これに対して、図2(a)に示すように、断面が略矩形の光吸収部を形成する場合、光吸収部となるべき溝が略矩形断面を有するため、視認性向上シート面の法線方向に対する溝側面の角度が0〜3°程度である。また、溝が略矩形断面の場合、楔形断面を有する溝と比べて溝開口部の幅も狭く(8〜12μm程度)なる。このため、表面張力が25〜40mN/mの範囲外にあるインキを溝へ充填しようとしても、溝の中に空気が残存してしまい、1回のインキ充填では、インキ充填率が高くならない。一方、表面張力が25〜40N/mの範囲内にあるインキであれば、図2(a)に示したような断面を有する溝へも、1回のみのインキ充填によって、インキを十分に充填させることができる。
インキ組成物の充填方法としては、ディスペンサーによる滴下、ダイヘッドによる塗布、あるいはフィニッシャーロールによりインキ組成物を略矩形の溝に充填することができる。これらの中でも、インキの流動性が悪くインキ跡が目立つような場合には、図1(b)に示すようなダイヘッド7による塗布が適している。
インキ組成物4を略矩形断面の溝3、すなわち複数の光透過部2の間の窪み3に充填した後、余剰のインキ組成物4を掻き取って、略矩形断面の溝3にインキ組成物4が充満するようにする(図3(a))。インキの掻き取り性を向上させるためには、図3(a)に示すように、ドクターブレード8やワイピングロール等による連続掻き取り装置などにより行う。インキ粘度が500mPa・s未満の場合、インキの掻き取り性は良好であるものの、略矩形断面の溝にインキ組成物が充満させることが困難となり、一方、インキ粘度が4,000mPa・sを超える場合には、インキの流動性が悪くインキ跡が目立ち、所望の光吸収部を形成することが困難となる場合がある。
次に、略矩形断面を有する溝に充填されインキ組成物を、硬化させて光吸収部5を形成する(図3(b))。インキ組成物中の電離放射線硬化型樹脂の硬化方法としては、通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
<視認性向上シート>
上記のようにして得られた視認性向上シートは、シート厚み方向断面において略矩形の光透過部と、その光透過部の間に並列して配置された、略矩形断面を有する光吸収部とを備えている。光透過部は、一方のシート面側が上辺、他方のシート面側が下辺となるように配置された略矩形断面を有する要素である。また、光吸収部は、光透過部の間に形成された略矩形断面を有する要素である。矩形の上辺に相当する面が光透過部の上辺側のシート面に面するように並列に配置される。これにより光吸収部(インキ組成物を充填した溝)の上辺および光透過部の上辺により、視認性向上シートの一方の面が構成されている。光吸収部における略矩形の長辺は、視認性向上シート面の法線方向に対して、0〜3°の範囲の角度を有していることが好ましい。なお、斜辺の角度が0度に近い場合は、実質的に矩形断面となる。
例えば、図4に示すように、高さが105μmで上辺の幅が46μm、下辺の幅が48μmである略矩形断面を有する光透過部と、上辺の幅が12μmで下辺の幅が10μmである略矩形断面を有する光吸収部とを1ピッチとする視認性向上シートとすることができる。光透過部及び光吸収部の厚み(高さ)は、概ね50〜150μmとすることができる。
光吸収部は、光透過部の屈折率と同じかまたは小さい屈折率を有する。光透過部と光吸収部との屈折率が上記のような関係となることにより、所定条件で光透過部に入射した光源からの映像光を光吸収部と光透過部との境界面で適切に反射させ、観測者に明るい映像を提供することができる。また、観測者側からの外光の一部を吸収するため、コントラストも向上する。また、光吸収部と光透過部との境界面で反射せずに、光吸収部の内側に入射した迷光が、光吸収部中の着色微粒子によって吸収される。また、所定角度で入射した観測者側からの外光を適切に吸収することができるため、コントラストを向上させることもできる。
また、視認性向上シートを2層重ね合わせてもよく、その場合、各視認性向上シートで異なった構造となるようにしてもよい。例えば、1層目の視認性向上シートと2層目の視認性向上シートとで、光吸収部の幅やピッチ、深さ(楔形部の深さ)、形状を変えたり、光吸収部の厚み方向の向きを変えたり、映像光に対する光吸収部のバイアス角度(水平方向に対する光吸収部の傾斜角度)を変えたりすることができる。また、光吸収部を形成する材料(樹脂の種類や着色微粒子の濃度)を変えることもできる。例えば、2層目は効率良く外光をカットし、コントラストの向上を重視した設計とし、2層目は反射を利用した正面輝度向上効果を重視した設計とするような、各層で作用効果を変えることが好ましい。
本発明による視認性向上シートは、従来の視認性向上シートや視野角拡大部材に採用されている他の機能層を含んでいてもよい。具体的には、反射防止層、粘着層、電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、ハードコート層などを適宜組み合わせてもよい。これらの各機能層の積層順や積層数は、使用する視認性向上シートの用途に応じて適宜決定することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例に本発明が限定されるものではない。
実施例1
<インキ組成物の調製>
平均粒子径が24nmのカーボンブラック(RCF#45、三菱化学株式会社製)をアクリル樹脂(ハイパール、根本工業株式会社製)に練り込んだ樹脂ビーズを用いた。カーボンブラックの練り込み量は、アクリル樹脂に対して質量基準で35%であった。この樹脂ビーズの平均粒子径を粒子径分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)によって測定したところ、1.0μmであった。
電離放射線硬化性樹脂として、ウレタンアクリレート33.6質量部、エポキシアクリレート14.4質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート28質量部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート4質量部、およびアクリル二官能性モノマー(大阪有機化学工業株式会社製)240質量部と、光重合開始剤としてイルガキュアー184を4質量部とを混合し、さらに、上記の樹脂ビーズを21質量部と、を混合し、インキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を、上記したWilhelmy法を用いて25℃の環境下にて測定したところ、35.4mN/mであった。
<視認性向上シートの作製>
厚みが100μmのPET基材(A4300、東洋紡製)上に、硬化後の屈折率が1.55のウレタン系紫外線硬化性樹脂を用いて、成形金型で連続賦型加工を行い、複数の光透過部と、その光透過部間に並列して設けられた楔形の溝を形成した。次いで、上記で得られたインキ組成物を、楔形の溝に充填し、金属製のドクターブレードで余剰のインキ組成物を掻き取った後、紫外線を照射してインキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したところ、光吸収部(溝)の開口幅が12μmであり、溝の底の幅が10μmであり、深さが105μmであり、溝の底までインキ組成物が充填されていたことが確認できた。また、光吸収部中に気泡による空隙は確認できなかった。
実施例2
インキ組成物中に、消泡剤として、アデカノール(アデカ株式会社製)0.5質量%を添加した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を上記と同様にして測定したところ、34.4mN/mであった。
上記で得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして視認性向上シートを作製した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したところ、光吸収部(溝)の開口幅が12μmであり、溝の底の幅が10μmであり、深さが105μmであり、光吸収部中に気泡による空隙は確認できなかった。
実施例3
インキ組成物中に、レベリング剤として、FS700(日油株式会社製)0.5質量%を添加した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を上記と同様にして測定したところ、33.8mN/mであった。
上記で得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして視認性向上シートを作製した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したところ、光吸収部(溝)の開口幅が12μmであり、溝の底の幅が10μmであり、深さが105μmであり、光吸収部中に気泡による空隙は確認できなかった。
実施例4
インキ組成物中に、消泡剤として、メガファック(DIC株式会社製)0.5質量%を添加した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を上記と同様にして測定したところ、29.7mN/mであった。
上記で得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして視認性向上シートを作製した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したところ、光吸収部(溝)の開口幅が12μmであり、溝の底の幅が10μmであり、深さが105μmであり、光吸収部中に気泡による空隙は確認できなかった。
実施例5
インキ組成物中に、消泡剤として、メガファック(DIC株式会社製)1.5質量%を添加した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を上記と同様にして測定したところ、25.0mN/mであった。
上記で得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして視認性向上シートを作製した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したところ、光吸収部(溝)の開口幅が12μmであり、溝の底の幅が10μmであり、深さが105μmであり、光吸収部中に気泡による空隙は確認できなかった。
比較例1
インキ組成物中に、撥水剤として、POLON−T(信越シリコーン株式会社製)1.0質量%を添加した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を上記と同様にして測定したところ、41.0mN/mであった。
上記で得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして視認性向上シートを作製した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したところ、光吸収部(溝)には、インキ中の気泡に起因すると思われる空隙が多数存在していた。
比較例2
実施例4のインキ組成物の、消泡剤の添加量を3.0質量%に変えた以外は、実施例4と同様にしてインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物の表面張力を上記と同様にして測定したところ、20.6mN/mであった。
上記で得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして視認性向上シートを作製した。得られた視認性向上シートの断面を光学顕微鏡で観察したとこと、光吸収部(溝)には、インキ中の気泡に起因すると思われる空隙が多数存在していた。また、インキ組成物の濡れ性が高いためインキを塗布した際に膜厚が厚くなららなかった。さらに、インキ組成物の充填の際に、インキ組成物が垂れやすく作業性がより低下する傾向にあった。
<充填率評価>
得られた視認性向上シートについて、光吸収部(楔形の溝)への着色インキ組成物の充填率を測定した。充填率は、以下のようにして算出した。先ず、得られた視認性向上シートの光吸収部をガラスナイフを用いて切断し、切断面を研磨した後に、走査型電子顕微鏡(SEM)により、光吸収部の切断面を観察し、楔形の溝の面積に対する光吸収部(着色インク組成物が実際に充填された部分)の面積の割合を充填率として算出した。
インキの充填度合いを下記の評価基準によって評価した。
◎:充填率が98%以上
○:充填率が98%未満〜95%以上
△:充填率が95%未満〜90%以上
×:充填率が90%未満
評価結果は、下記の表1に示される通りであった。
<コントラスト評価>
次に、得られた視認性向上シートについて、下記のような評価方法により、コントラストの評価を行った。先ず、視認性向上シートをディスプレイ画面に貼り付けた状態での黒画面の輝度と、視認性向上シートをディスプレイ画面に貼り付ける前の状態での黒画面の輝度とを、目視により観察した。コントラストの評価基準は以下の通りとした。
◎:明らかに黒い
○:同等以上の黒さ
△:ほぼ同等の黒さ
×:同等以下の黒さ
評価結果は、下記の表1に示される通りであった。
Figure 0005743179
表面張力が25〜40mN/mの範囲にあるインキ組成物を用いて作製した視認性向上シート(実施例1〜5)は、インキ組成物と光透過部を構成する樹脂との濡れ性が良好であるため、上記のような矩形断面を有する光吸収部を形成した場合であっても、溝へのインキ充填率が高く、コントラストに優れるものであった。一方、表面張力が40mN/mを超えるインキ組成物を用いて作製した視認性向上シート(比較例1)は、インキ組成物と光透過部を構成する樹脂との濡れ性が不十分であるため、矩形断面を有する溝の底までインキ組成物が充填されず、コントラストが低下した。また、表面張力が25mN/m未満のインキ組成物を用いて作製した視認性向上シート(比較例2)は、インキ組成物の溝壁面に対する濡れ性が高すぎて、矩形断面を有する溝の底までインキ組成物が充填されず、コントラストが低下した。
1 基材
2 光透過部
3 溝
4 着色インキ組成物
5 光吸収部
6 成形型
7 塗布装置(ダイコーター)
8 インキ掻き取り装置

Claims (7)

  1. 所定間隔で並列した光透過部と、前記光透過部の間に並列して設けられた、略矩形断面を有する光吸収部と、を備えた視認性向上シートを製造する方法であって、
    所定間隔で並列するように光透過部を形成することにより、その光透過部の間に並列して設けられた略矩形断面を有する溝を形成し、前記溝に着色インキ組成物を充填する、ことを含んでなり、
    前記着色インキ組成物が、透明な電離放射線硬化性樹脂組成物と着色微粒子とを含み、表面張力が25〜40mN/mであり、かつ、粘度が500〜4,000mPa・sであり、
    前記着色微粒子が、樹脂中にカーボンブラックを練り込んだ樹脂ビーズからなり、
    前記カーボンブラックの平均粒子径が10〜500nmであることを特徴とする、方法。
  2. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、及び多価アルコールから選択される多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーからなる、請求項1に記載の方法
  3. 前記着色インキ組成物が、消泡剤および/またはレベリング剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法
  4. 前記溝の開口幅が、8〜12μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記略矩形断面を有する光吸収部の斜辺が、視認性向上シート面の法線方向に対して0〜3°の角度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 請求項のいずれか一項に記載の方法により製造された、視認性向上シート。
  7. 請求項に記載の視認性向上シートを備えた表示装置。
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