JP3676554B2 - 活性化陰極 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化アルカリ金属電解に使用して低い過電圧を有する活性化陰極に関するものであり、特にイオン交換膜法クロルアルカリ電解に使用して低い過電圧で電解を行うことができる活性化陰極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イオン交換膜法食塩電解プロセスにおいては、そのエネルギー消費を削減することが最も大きな問題である。その電解を行う際に、その電力消費量の要因となる陰極並びに陽極の過電圧は全くの無駄なものであり、他の要因が電解槽の構造その他から避けがたいものであるのに対して、これは電極の選択で減らすことの出来る要因であり、その削減は可能なものであるとして種々検討されている。
陽極に関して言えば、いわゆるDSEなる白金族金属酸化物系の被覆を有する不溶性金属電極によって、過電圧が50mV以下まで削減することが出来ており、これ以上はほぼ望めないレベルに到達している。
【0003】
一方、陰極に関しては、従来から使われていた軟鋼やニッケル又はステンレススチールが300〜400mV程度の過電圧を有するために、これらの表面を活性化することが行われ、それに関する多くの特許が出願されている。
つまり通常の陰極は、軟鋼やステンレススチール又はニッケルがそのままで使用されるが、この表面を拡大し、又は活性な金属表面で覆うために、ラネーニッケルのような活性金属被覆を電気メッキ法で行ったり、又は大表面積を有するようにプラズマ溶射法で金属を溶射したりしている。
また、金属や活性炭の微粒子を懸濁メッキする事により、金属表面を荒らして大表面積を得ることが行われている。これらの大表面積化によって、有効表面積が元のものの数百倍に出来、水素発生電極(陰極)としての過電圧が200mV以上下げられ、実質的に150〜200mVまで下げることが可能となっており、実用化されている。
【0004】
しかしながら、これらの陰極の表面は、大表面積を与えるために、かなり荒れたものとなっており、表面の状態はヤスリ状となっていると考えて良い。これはイオン交換膜と陰極が直接触れない形式のもの、いわゆるギャップセルとかナロウギャップセルでは問題点は少ないが、イオン交換膜が直接陰極に密着し、又は接触しているいわゆるゼロギャップ型の電解槽では、樹脂製のイオン交換膜がこの陰極と接触することにより、すれて穴があいてしまうという問題点が出てくる。
【0005】
一方、陰極物質を選択することにより、陰極物質の電極触媒作用を利用して過電圧を小さくすることが行われている。この方法では電極表面積を大きくする必要がないので、滑らかな表面を有している。この方法の代表的なものには、触媒物質である酸化ルテニウムの微粒をニッケルメッキ浴に懸濁してニッケル中に酸化ルテニウムを含ませた電極が知られており、やはり100〜250mV程度の過電圧を得ている。白金や白金族金属合金の無電解メッキによる電極も知られている。また錫とニッケルの合金をメッキする方法も行われている。これらの電極ではゼロギャップ型電解セルでも電極表面が平滑であるので、イオン交換膜へのダメージはほとんど起こらない。
【0006】
しかしながら、このような電極を使った電解セルでも、安定して電解を行っているときは問題ないが、事故や停電で電解が急に停止した場合には、通常は整流器を通じて電気的に陰極陽極が接続されているために、電解生成物の逆分解による逆電流が流れる。この状態が起きると、陰極成分である金属の部分溶出が起こるなど、表面状態が変わるせいか、陰極としての活性が劣化することがある。
特に、ゼロギャップ型電解セルの場合には、部分的に溶出したニッケル分が接触しているイオン交換膜の中に析出することにより、陰極ばかりではなくイオン交換膜をも被毒してしまうことが起こる。
そこで、この逆電流を防げないまでもニッケルの溶出を実質的に防いで、ゼロギャップセルの場合にもイオン交換膜のダメージを少なくするために、ニッケル合金被覆を用いることが知られている。例えば、上述したニッケル錫合金はその代表である。これによって、ニッケルでなく錫が選択的に溶出することにより、イオン交換膜のダメージはある程度防げるが、電極の活性の面からは劣化するという問題点がある。
【0007】
また、逆電流の生起自体を防止するか、又は電極物質の腐食を防止して被毒を防止するために、水素吸蔵合金を電極中に分散したものが提案されている。これにより表面粗度が大きくなり、ゼロギャップ電解セル用としては場合により問題が出るが、電源停止の場合にはこの水素吸蔵金属が働いて電位をゼロ近傍に保持するために、電極自身は保護されるという特徴がある。
これの製法としては、例えば、水素吸蔵金属微粉を懸濁メッキすることによって製造することが行われているが、このための条件の設定が困難であるとか、活性化のための触媒物質の担持と別に水素吸蔵金属を形成しなければならないと言うわずらわしさがある。
本発明者等は、予めニッケル基材表面上に金属水素化物懸濁メッキを行い、その表面にさらに酸化ルテニウム懸濁メッキを行うことによって、極めて安定な活性化陰極を得ているが、操作が二重になると言う問題点とともに、条件の設定が比較的複雑な電着を行わなければならないと言うわずらわしさを持っている。さらに、これらの懸濁メッキ電極では、予め酸化物粉体を作成した後、それをメッキで付ける必要があり、作業が煩雑になるという問題点を合わせ持っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、叙上の問題点を解決しようとするものであって、大量生産に向いた熱分解法により、活性化された陰極を製造する方法を開発することにより、安定で高性能、さらに電流切断に強い陰極、及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、その課題を解決するため、前記の目的に沿った活性化陰極を得るように研究した結果、下記の手段によりその課題を解決することができた。
(1)ニッケルを基材とし、その表面にニッケル/希土類金属合金層、その表面に酸化ルテニウムからなる触媒層、さらにその表面に多孔質な保護層を有するハロゲン化アルカリ金属電解に使用する活性化陰極。
(2)前記保護層が20%以下の酸化ルテニウムを含む酸化チタンであることを特徴とする前記(1)記載の活性化陰極。
【0011】
本発明の活性化陰極は、主にイオン交換膜法クロルアルカリ電解に使用する活性化陰極である。また、本発明の活性化陰極の製造方法は、主にイオン交換膜法クロルアルカリ電解に使用する活性化陰極の製造方法である。
本発明の活性化陰極は、特にゼロギャップ型イオン交換膜法クロルアルカリ電解槽に使用して低い過電圧を保持すると同時に電流切断時にも電極、イオン交換膜の劣化を防ぐことが可能となった。またその製造が容易となった。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、その研究の過程で次の実験結果を見いだし、それに対応できる電極を形成するために検討した結果本発明に至ったものである。
(a)酸化ルテニウムが活性化陰極の電極物質として有効であること。
(b)熱分解法で製造することがコスト的に有利であること。
(c)熱分解法の場合酸化ルテニウム中に基材であるニッケルが酸化物その他の形で混入すると、陰極として使用した場合に酸化ルテニウムの消耗が早まるらしいこと。
(d)酸化ルテニウムは陰極としては必ずしも安定でなく、陰極として継続使用している場合は問題ないが、電流遮断や逆電流が繰り返されると消耗が極めて大きくなること。
(e)陰極として使用している場合でもゼロギャップ法の場合のようにイオン交換膜などと触れ、ずれるような状態になると物理的に剥離することがあること。
【0013】
つまりこれらの対策として、▲1▼基材であるニッケルの表面に、予めニッケル酸化物を形成すること、▲2▼酸化ルテニウムは通常の熱分解で形成すること、の手段を取ることが良いことがわかった。そして、▲3▼ニッケル酸化物により酸化ルテニウム中にニッケル成分はほとんど混入しない、▲4▼酸化ルテニウム層の表面に多孔性の種としてルチル型である安定な酸化チタン層を形成することにより物理強度を保持することが出来ることがわかった。
更に、▲5▼この酸化チタンにはルテニウムを複合酸化物化することにより電流遮断時に比較的高い過電圧を有する陽極になる様にする。これにより大きな逆電流が流れなくなり、電極に対するダメージが少なくなる。更にこの保護層並びにニッケル基材表面に酸化物を形成することにより逆電流、又は電流遮断時でもニッケル基材の溶出は最小に押さえられ、特にイオン交換膜に接触していてもニッケルのイオン交換膜への侵入はほとんど起こらない、などを見いだして本発明に至ったものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
これらの条件を達成することができる本願発明の活性化陰極の作成について以下に述べる。
電極基材としてはニッケルであること。ステンレススチールも使えないことはないが、種々の金属の合金であるために部分溶出が起こりやすく条件設定が困難であるので、本発明には含めないこととする。
基材の形状については、特には限定されず、目的によって適切な形状を選択することができる。穴あき板、エクスパンドメッシュ、ニッケル線を編んで作ったいわゆるウブンメッシュなどが好んで用いられる。
【0015】
これらの基材の表面に熱処理により薄い酸化ニッケルの被覆を設けるのが好ましいが、このために基材表面を予め活性処理する。活性処理の目的は、安定で均一な酸化物を形成すると同時に、この後設ける熱分解酸化物層と基材表面の酸化ニッケル層との結合をより強固にすることも目的としている。
そのためにニッケル基材の表面をサンドブラストや酸洗するが、これはフレッシュなニッケル表面を出すと同時に表面積を拡大していわゆるアンカー効果を増大させることを目的とする。これにより表面積が拡大するので、陰極電位がより小さくなる効果も合わせ持つ。表面の荒れの程度は特には指定されないが、イオン交換膜に接触して使われるので荒れの程度が大きすぎないことが必要であり、経験上はJIS表面荒さRa=1〜10μmが望ましい。
このための条件としては、平均粒径100μm以下のアルミナ粉をメディアとして用いてブラスト掛けをしたり、酸洗条件として60〜90℃の10〜20%塩酸中にて10〜20分処理することによって得られる。なおブラストだけではブラスト粉がニッケル基材表面に残ることがあるので、ブラスト後に残ったブラスト粉を除くために更に酸洗をすることがもっとも好ましい。
【0016】
この様にして準備した基材の表面に薄い酸化ニッケルの被覆を形成する。被覆は、ニッケル基材を空気中などの酸化性の雰囲気中で温度300〜600℃で10〜300分程度加熱することによって得られる。酸化ニッケルの形成に当たって、基材の表面にニッケル塗布液を塗布し、熱分解で行うことも考えられるが、この方法ではどうしても多孔性になり易いこと、また酸化ニッケル層は導電性で十分に薄いことが望ましいので、ここでは塗布液無しに、表面の熱処理のみで酸化物層を形成する手段により行うのが良い。
温度条件は上記の通りであり、300℃以下では十分な酸化物の発達が無く、また600℃以上では酸化物層がある程度厚くなるが、温度の変化で酸化物と基材金属との熱膨張の差に由来する酸化物その剥離が起こったり、やはり酸化物が多孔質になる傾向があるので、上記範囲の加熱条件とする。
【0017】
この様にした基材の表面に、必要によりさらにニッケル/希土類金属合金層を形成することが好ましい。
そのためには、基材の表面に、ニッケルと希土類金属塩の混合物溶液を塗布し、熱分解によりニッケルと希土類金属からなる合金層を形成する。
この合金層の形成は、有機ニッケルと希土類金属塩を還元性を有する溶媒である有機溶媒に溶解したものを塗布液として、予め活性化したニッケル金属基材表面に塗布し、200〜600℃の温度で熱分解することによって得られる。
熱分解の雰囲気は、水素気流中や、窒素やアルゴン中などの還元又は不活性雰囲気が望ましいが、わずかに酸化物に生成はみられるものの、空気雰囲気中での熱分解でも良い。
【0018】
溶媒は、特に限定されないが、合金層の形成のために、出来るだけ炭素数の多い、例えばアミルアルコールやブチルアルコール、ヂエチルケトンなどのケトン類、樹脂酸の高級アルコール溶液などの還元性の高いものが望ましい。
この合金層の形成量は特に限定されないが、塗布熱分解の回数を変えることにより、目的量とすることができる。なお、合金層を厚くすると、水素吸蔵量が増加する分だけ、逆電流に対する耐久性が向上するが、物理的強度が弱くなること、また化学的耐食性も必ずしも良いとはいえないので、あまり厚くすることは好ましくない。
塗布、熱分解を1〜3回程度、厚さ1μm以下が適当であるが、条件によって選択すれば良い。
【0019】
この様にして表面酸化した、またさらにニッケル/希土類金属合金層を形成した基材に酸化ルテニウム層を熱分解により形成する。酸化ルテニウム形成のための塗布液は、ルテニウム塩を含む溶液であれば、その塩の種類は特に限定はされない。中でも、塩化ルテニウムをブチルアルコールに溶解したものや、希塩酸に溶解した塗布液が望ましい。また、アルコキシルテニウム、たとえばブチルルテネートのアルコール溶液なども望ましい。塩酸系の液の場合塩酸濃度が高すぎると、ニッケル酸化物を通過してニッケル基材を溶解し、酸化ルテニウム中にニッケルが混入してくることがあるので、注意を必要とする。容易に入手でき安定である液としては、塩化ルテニウム又は塩化ルテニウム酸をブチルアルコールに少量の水と共に溶解した溶液を使うことが望ましい。
【0020】
この塗布液を任意の方法で表面に酸化物を付けた基材に塗布し、乾燥後熱分解する。一回あたりの塗布量は特には指定はされないが、ルテニウムで0.1〜2g/m2 になるようにするのが望ましい。これにより安定でコンパクトな酸化ルテニウム層が形成される。熱分解条件は酸化ルテニウムが結晶としてでてくる温度である300〜550℃が望ましく、特に350〜500℃が望ましい。熱分解時間は、空気雰囲気中で5〜15分である。この塗布、熱分解操作を繰り返すことにより所望量の酸化ルテニウム被覆を形成する。通常は3〜10回である。更に、この上に酸化ルテニウムを含む酸化チタンの被覆を形成する。その形成条件は、酸化ルテニウム被覆形成の場合とほぼ同じであるが、この層はある程度多孔性でなければならず、このためには特には限定はされないが、チタン原料としてブチルチタネートを、またルテニウム原料としては塩化ルテニウム酸や塩化ルテニウムを用い、これらをブチルアルコール液に溶解したものを塗布液とすることが望ましい。塩化チタンを使用することもできるが、この場合も溶媒としてはイソプロピルアルコールやブチルアルコールを加える。この溶液を任意の方法で酸化ルテニウム被覆上に塗布し熱分解を行う。熱分解条件は、酸化ルテニウムの場合と同じである。
【0021】
なお、塩化ルテニウムを加えるのは、これによって熱分解によって生成する酸化チタンがルチル型主体になること、また安定な保護層として働かせるためである。ルテニウムの量比は10〜40%(mol)が望ましく、特に15〜30%(mol)が望ましい。10%以下では酸化チタンの主体がアナターゼ型となり、本目的のような強アルカリ中では安定でなくなる。
この保護層の厚さについても、特には限定されないが、通常は1〜5μmである。この厚さは、塗布熱分解を2〜5回繰り返すことによって得られる。なお、溶媒にアルコールを加えるのは、熱分解時にアルコールの揮散により多孔性を確保するためであり、これにより適度な多孔性が確保できる。但し塗布、熱分解の繰り返し回数があまり大きくなると多孔性が阻害されるので、塗布、熱分解は最大でも5回程度が望ましい。
【0022】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は、これらに制限されないことは言うまでもない。
【0029】
実施例1
ニッケル基材として、厚さ1mmの平滑化したニッケル製のエクスパンドメッシュを用い、その表面を平均粒径50μmのアルミナサンドでブラスト掛けした後に、温度60℃、濃度20%の塩酸中で15分間酸洗して、表面に食い込んでいるアルミナサンドを取り除くと共に活性化した。このニッケル基材を空気を流したマッフル炉中で温度500℃で1時間保持した後炉中放冷した。これによりニッケル表面がわずかに褐色となり、X線回折により表面に酸化ニッケル(NiO)が生成しているのが認められた。
このニッケル基材の表面に、ニッケルブトキシドにこれと同じモル数のミッシュメタルの塩化物をジエチルエーテルとブチルアルコールの混合溶媒中に溶解して、塗布液として刷毛により塗布し、風乾後窒素を流したマッフル炉中で450℃20分間熱分解を行った。この操作を3回繰り返して、表面に厚さ1μmのニッケルミッシュメタルの合金層を形成した。エックス線回折では酸化物層の存在は認められなかった。
この様にして形成した合金を形成した基材表面に、塩化ルテニウム酸(H 2 RuCl 6 )をブチルアルコールに溶解した塗布液(Ru濃度はRuとして50g/リットル)を塗布した。60℃で乾燥後、やはり空気を流通させた温度450℃に調整したマッフル炉中に入れ、10分間熱分解した。この操作を5回繰り返した。これによりニッケル表面に約5g/m 2 酸化ルテニウムの被覆を形成することができた。このものについてX線回折とXMA分析を行ったところ、被覆層は結晶性が悪く、若干回折線にブロードニングが起こっているが、ルチル型結晶相のみからなることがわかった。またこの被覆層にはニッケル成分の存在は認められなかった。
このように出来た被覆層の表面に、ブチルチタネートと塩化ルテニウムを金属モル比で85:15となるようにブチルアルコールに溶解した溶液を作製し、酸化ルテニウムを形成したのと同じ条件で塗布し、熱分解した。この操作を3回繰り返しチタンとして2g/m 2 被覆層を形成させた。X線回折の結果は僅かにアナターゼ相の生成があったが、ほとんどがルチル相からなることがわかった。
これを試料として、食塩電解条件で電解試験を行った。
対比用試料として、酸化チタン保護層を形成しなかった外は、本発明試料と同じであるものを形成した。
【0030】
電解試験は、イオン交換膜としてduPont社製の商品名ナフィオン961を用い、これを隔膜とする2室法のイオン交換膜電解槽に、該イオン交換膜を挟んで陽極と前記試料の陰極とを密着するように押しつけて構成した。陽極液として200g/リットルの食塩水を、また陰極液として32wt%の苛性ソーダ水溶液を入れ、温度85℃、電流密度40A/dm 2 で電解を行った。そして、対比用の試料についても同様に電解を行った。
なお、陽極としては、チタンエクスパンドメッシュ表面に酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタンからなる複合酸化物被覆を有する不溶性金属陽極を用いた。
最初の100時間連続電解を行い、槽電圧のチェックを行った後、1時間通電/閉回路のまま10分電流遮断の電流遮断試験を20回繰り返した。
この結果、100時間の連続電解の間における電解電圧は2者とも3.05Vであり、活性化しなかった同じ形状のニッケルを陰極とした場合に比較して約300mV低く活性化陰極として極めて有効であることがわかった。但し、通電/電流遮断の結果は、本実施例のものはほとんど変化が無くイオン交換膜にも変化がなかったが、表面層を有しない対比用の陰極ではイオン交換膜表面に黒色の析出物がつくと同時に、陰極表面の被覆強度が弱くなっているのが認められた。
【0031】
実施例2
実施例1と同様にして、表面にミッシュメタルとニッケルからなる合金からなる層を有するニッケル基材を準備した。但し合金を形成する前にニッケル基材を空気中550℃で1時間加熱して、表面に酸化ニッケル層を形成したものを用いた。
合金層の表面に酸化ルテニウムの被覆を以下の条件で形成した。酸化ルテニウム用の塗布液として塩化ルテニウム(RuCl 3 )を10%塩酸水溶液に溶解したものを用いた。これを実施例1と同じ条件で塗布/熱分解して酸化ルテニウム層を形成した。対比用として合金層を形成しなかった以外実施例1と同じとした試料を作成した。
これらに実施例1と同じ条件で表面保護層を形成した。これらの電極試料を電解試験に供試した。
【0032】
電解試験条件は、実施例1より大きな逆電流の可能性を想定して、電流遮断に代わりに逆電流を流すようにした。すなわち、以下に示す条件で行った。
イオン交換膜としてduPont社製の商品名ナフィオン961を用い、これを隔膜とする2室法のイオン交換膜電解槽に該イオン交換膜を挟んで陽極と陰極を密着するように押しつけることにより形成した。
陽極液として200g/リットルの食塩水を、また陰極液として32wt%の苛性ソーダ水溶液を入れ、温度85℃、電流密度40A/dm 2 で行った。なお、陽極として、チタンエクスパンドメッシュ表面に酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタンからなる複合酸化物被覆を有する不溶性金属陽極を用いた。
最初の100時間連続電解を行い槽電圧のチェックを行った後、1時間通電/10分間電流値を半分つまり電流密度20A/dm 2 として逆電流を流した。逆電流の通電試験を20回繰り返した。
初期の電解電圧は実施例1とほぼ同じであり3.03〜3.05Vであった。通電/逆電流試験の後、本実施例の試料は、全く変化が起こらずイオン交換膜の変色もなかったが、対比例のものは被覆の物理強度の低下が認められた。またイオン交換膜は陰極が当たっている部分にはわずかではあるが変色が認められた。
これから、逆電解を行っても、合金層による水素吸蔵作用の影響か、電極それ自身極めて安定に保持できることがわかった。
【0033】
実施例3
実施例1と同様にして、表面保護層の組成を変えて電極材料を作製した。作製した電極試料は実施例2と同じ条件で電解試験を行った。ここでは表面保護層の中のルテニウム量について検討を行った。結果は下記表1に示す。
この結果ルテニウムが10mol%以下では保護層がアナターゼ型酸化チタンになりやすく、耐食性が不十分になりやすく、また電解時の電圧がわずかではあるが高いことがわかった。また30mol%より多いと、電流遮断試験において保護層それ自身もその物理強度の劣化が見られた。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、次の効果が得られる。
(1)酸化ルテニウムを電極物質として用いているため、陰極過電圧の低い活性化陰極が得られた。
(2)イオン交換膜に接触させて使用した場合においても、イオン交換膜への影響が最小となった。
(3)酸化ルテニウムを電極物質として用いる際には、陰極としては必ずしも安定でなく、陰極として継続使用している場合は問題ないが、電流遮断や逆電流が繰り返されると消耗が極めて大きくなるという問題があるにもかかわらず、本発明では、電流遮断による電極の劣化はほとんど起こらない。
(4)陰極基材をニッケルとしているが、電解時、電流遮断時ともニッケルの溶出は最小であり、またイオン交換膜へのニッケル分のアタックは認められず、安定した電解が継続してできる。
Claims (2)
- ニッケルを基材とし、その表面にニッケル/希土類金属合金層、その表面に酸化ルテニウムからなる触媒層、さらにその表面に多孔質な保護層を有するハロゲン化アルカリ金属電解に使用する活性化陰極。
- 前記保護層が20%以下の酸化ルテニウムを含む酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の活性化陰極。
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