JP6790414B2 - 表面にニッケルが配された金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、表面にニッケルが配された金属板に関し、特に、大気中で加熱した際に変色が少ない金属板に関する。
ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル板、ニッケルめっきを有する金属板、表層にニッケルからなるクラッド層を有するクラッド板は、表面の主成分がニッケルとされており、本明細書ではこれらの板を、表面にニッケルが配された金属板と称し、更にニッケル含有板と略称する。
ニッケル含有板は、導電性、機械的強度、耐食性などに優れることから、リチウムイオン二次電池の内部配線材料(リード、タブ)や耐アルカリ用プラント材料などに広く使用されている。
この電池の内部配線材料には、薄板状のニッケル含有板が多く用いられており、このニッケル含有板は、通常、工業的な圧延工程でコイル状に製造され、必要幅にスリット切断されて内部配線材料等に用いられている。例えば、リチウムイオン二次電池用のリード材は、厚み約0.2〜0.04mmの純ニッケル板を3〜5mm程度の幅にスリット切断して作製されている。
ところで、電池は集電体、リード、ケース、基板等の数多くの金属部材で構成されており、これらをロウ付け(半田付け)、溶接などによって接合することによって形成されている。例えば、リードを集電体に接合する際には、ニッケル含有板からなるリードを大気中で加熱してから超音波溶接を実施している。
溶接のためにニッケル含有板を大気中で加熱すると、その表面が茶褐色に変色する場合がある。変色が起きると、ニッケル含有板の導電性が低下し、更には濡れ性や溶接性も低下する。特に、集電体に接合したリードは、更に電池ケースや電池端子と溶接する場合があり、溶接性の低下はリードの溶接不良を引き起こし、電池の不良率を高める要因になる。従って、大気中で加熱した場合であっても、変色が起きないニッケル含有板が求められている。
特許文献1には、表面における白色粉末の生成を防止するために、最表面におけるホウ素濃度を1原子%以上としたニッケル材が記載されている。この特許文献1には、ホウ素が表面濃化することで、白色粉末の生成の原因である表面酸化物の形成が抑制され、これにより溶接性が改善することが記載されている。しかし、特許文献1では、大気中加熱による表面の茶褐色への変色については何も言及されていない。
特開2010−132933号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、大気中で加熱した際の表面の茶褐色化を防止することが可能な、表面にニッケルが配された金属板を提供することを課題とする。
本発明者が上記課題を解決するために検討したところ、ニッケルが配された金属板の表面が大気中加熱によって茶褐色に変色する原因は、表面のニッケルが酸化されて酸化ニッケル(NiO)が比較的厚く生成し、この酸化ニッケルの厚膜化によって干渉色が発色するためと判明した。
より詳細には、銀色を呈するニッケルの最表面には、ニッケル酸化物、ニッケル水酸化物、ニッケルに含まれる添加元素の化合物や不純物元素の化合物等がそれぞれ所定の割合で極微量に存在する。このうち、ニッケル水酸化物は、大気中の加熱によってニッケル酸化物に変化する。加熱によって生成したニッケル酸化物は、加熱前から存在していたニッケル酸化物に比べて、比較的多孔質な酸化物になる。すなわち、加熱前から存在していたニッケル酸化物が比較的緻密な性状を有するのに対し、加熱によって生成したニッケル酸化物は、数ナノメートルから数十ナノメートルの空孔を有するメソポーラスな性状を有している。このように、加熱によって生成したニッケル酸化物は、メソポーラスであるため、大気中の酸素を透過しやすくなっている。溶接の際の加熱によって表面にメソポーラスなニッケル酸化物が生成すると、大気中の酸素がこの加熱中にニッケル酸化物を透過して最表面の金属ニッケルに到達し、この金属ニッケルを更に酸化させてニッケル酸化物が多量に生成して厚膜化する。茶褐色の変色の原因は、この厚膜化したニッケル酸化物の干渉色によるものである。
以上のことから、大気中での加熱時に表面の変色を防止するためには、最表面に存在するニッケル水酸化物を少なくすればよいことが判明した。そこで本発明は以下の構成を採用する。
(1) 表面にニッケルが配された金属板であって、X線光電子分光分析法によって前記表面から検出される化学種のうちのニッケル水酸化物の濃度が0原子%超14原子%以下であ二次電池の集電体に溶接されるリード材用である、表面にニッケルが配された金属板。
(2) 前記表面を含む全体が、ニッケル含有率99.0質量%以上の純ニッケルからなる、(1)に記載の表面にニッケルが配された金属板。
(3) 金属からなる基材と、前記基材に形成されて前記表面を構成するニッケルめっき層とを備え、前記ニッケルめっき層が、ニッケル含有率95.0質量%以上の純ニッケルからなる、(1)に記載の表面にニッケルが配された金属板。
(4) 金属からなる母材層と、前記母材層の一面または両面に積層されて前記表面を構成するニッケルクラッド層とを備えたクラッド板からなり、前記ニッケルクラッド層が、ニッケル含有率99.0質量%以上のニッケルからなる、(1)に記載の表面にニッケルが配された金属板。
(5) 前記金属からなる基材または前記金属からなる母材層が、炭素鋼、合金鋼、銅または銅合金のいずれかよりなる、(3)または(4)の何れか一項に記載の表面にニッケルが配された金属板。
(6) 大気中500℃で100秒間加熱後と加熱前での前記表面の彩度差ΔCが10以下である、(1)乃至(5)の何れか一項に記載の表面にニッケルが配された金属板
本発明の表面にニッケルが配された金属板によれば、大気中で加熱した際の表面の茶褐色化を防止できる。これにより、例えば溶接のために大気中で加熱した場合であっても、導電性の低下を抑制し、かつ、濡れ性や溶接性を良好に確保できるようになる。
Ni(OH)の濃度と彩度差ΔCとの関係を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態である表面にニッケルが配された金属板について説明する。以下の説明では、表面にニッケルが配された金属板を、ニッケル含有板と略称する。
本実施形態のニッケル含有板は、例えば、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル板、ニッケルめっきを有する金属板、表層にニッケルクラッド層を有するクラッド板を例示できる。これらの板の最表面をX線光電子分光分析法で分析すると金属酸化物、金属水酸化物、金属、炭素、硫黄などの各種の化学種が検出されるが、本実施形態のニッケル含有板は、表面に検出される化学種のうちニッケル水酸化物が0原子%超14原子%以下の濃度で含まれる金属板である。以下、本実施形態のニッケル含有板について詳細に説明する。
Niを主成分とするニッケル板は、ニッケルの純度が99.0質量%以上のニッケル板を例示できる。このニッケル板には、0.02質量%以下のC(炭素)、0.35質量%以下のSi(珪素)、0.35質量%以下のMn(マンガン)、0.01質量%以下のS(硫黄)、0.40質量%以下のFe(鉄)、0.25質量%以下のCu(銅)の何れか一種以上が含まれていてもよい。残部はNi(ニッケル)及び不純物である。より具体的には、例えば、JIS H 4551に規定される純ニッケル(NW2201)を例示できる。ニッケル板の厚みに特に制限はない。
また、ニッケルめっきを有する金属板は、金属からなる基材と、基材の表面に形成されたニッケルめっき層とを備えている。ニッケルめっき層の表面が、本実施形態のニッケル含有板の表面となる。金属からなる基材は、炭素鋼、合金鋼、銅または銅合金のいずれかであることが好ましい。また、ニッケルめっき層は、電気めっき法で形成されためっき層であることが好ましい。また、ニッケルめっき層は、95.0質量%以上のNiを含有するめっき層が好ましい。Ni以外の構成元素としては、0.15質量%以下のC(炭素)、0.35質量%以下のSi(珪素)、0.35質量%以下のMn(マンガン)、0.01質量%以下のS(硫黄)、0.40質量%以下のFe(鉄)、0.25質量%以下のCu(銅)の何れか一種以上が含まれていてもよい。残部は他の不純物である。ニッケルめっき層の厚みに特に制限はない。
更に、クラッド板は、金属からなる母材層と、母材層の一面または両面に積層されたニッケルクラッド層とを備えている。ニッケルクラッド層の表面が、本実施形態のニッケル含有板の表面となる。ニッケルクラッド層は、99.0質量%以上のNiを含有するものが好ましい。Ni以外の構成元素としては、0.02質量%以下のC(炭素)、0.35質量%以下のSi(珪素)、0.35質量%以下のMn(マンガン)、0.01質量%以下のS(硫黄)、0.40質量%以下のFe(鉄)、0.25質量%以下のCu(銅)の何れか一種以上が含まれていてもよい。残部は他の不純物である。ニッケルクラッド層および母材の厚みに特に制限はない。
次に、ニッケル板、ニッケルめっき層、ニッケルクラッド層の化学成分について説明する。
Cは、Ni精錬時に硬化成分として0.02質量%以下の範囲で添加する。また、基材にニッケルめっき層をめっきする際に不純物として混入する場合があるため、ニッケルめっき層におけるC量の上限は0.15質量%とする。
Si、Cu、Sは何れも原料由来の不純物である。これらの不純物が上記成分範囲以下であれば、ニッケル板、ニッケルめっき層、ニッケルクラッド層の機械的強度、溶接性、外観の美麗性に影響を及ぼすことがない。
Fe及びMnは任意添加元素である。Feは、0.25質量%以下の範囲で含有されることにより、ニッケル板、ニッケルめっき層、ニッケルクラッド層の強度向上に有効である。また、Mnは、0.35質量%以下の範囲で含有することにより、Feと同様に強度向上に有効である。
更に、任意添加元素として、0.06質量%以下のTi(チタン)、0.10質量%以下のAl(アルミニウム)、0.015質量%以下のMg(マグネシウム)の何れか一方または両方が含有されていてもよい。Ti、Al及びMgは脱酸剤、脱硫剤あるいは脱窒剤として機能する。
残部はNi及び上記以外の不純物である。ニッケルめっき層のNi量の上限が95.0質量%と比較的低いのは、めっき法による形成するため不純物の含有量がやや高くなるためである。また、他の不純物としては、Ca(カルシウム)、窒素、酸素を不純物として含み得る。
次に、本実施形態のニッケル含有板の表面性状について説明する。ニッケル含有板の表面とは、ニッケル板の表面、ニッケルめっき層の表面またはニッケルクラッド層の表面である。
本実施形態のニッケル含有板の表面には、X線光電子分光分析法によって検出可能な各種の化学種が存在する。本実施形態のニッケル含有板においては、これら化学種におけるニッケル水酸化物の濃度が0原子%超14原子%以下となっている。本発明においてX線光電子分光分析法によって検出される化学種としては、ニッケル酸化物、ニッケル水酸化物、金属ニッケルに含まれる任意添加元素の酸化物、金属ニッケルに含まれる不純物元素の酸化物、炭素、硫黄である。任意添加元素の酸化物や不純物元素の酸化物とは、Mg、Ca,Tiの酸化物である。これら化学種のうちで主要な酸化物であるニッケル酸化物は、比較的緻密な自然酸化膜である。このため、高いバリア効果を示し、下地材である金属ニッケルの更なる酸化を抑制している。
一方、ニッケル水酸化物は、溶接等によって大気中で加熱されることにより脱水されてニッケル酸化物に変化する。加熱によって生成するニッケル酸化物は、メソポーラスな性状を有しており、加熱中に大気中の酸素を透過させて下地の金属ニッケルを酸化させ、これにより新たなニッケル酸化物を多量に生成させて表面を変色させるおそれがある。そのため、本実施形態のニッケル含有板においては、ニッケル水酸化物の濃度を、0超14原子%以下の範囲に制限する必要がある。ニッケル水酸化物の濃度が14原子%を超えると、溶接する際の大気中の加熱により、ニッケル酸化物を表面に多量に生成させて表面を茶褐色に変色させてしまうので好ましくない。ニッケル水酸化物の濃度の好ましい上限は12原子%であり、より好ましい上限は9原子%であり、更に好ましい上限は8.5原子%である。また、表面におけるニッケル水酸化物を0原子%にするのは困難であるため、下限は0原子%超とする。
ニッケル水酸化物の濃度の測定は、X線光電子分光分析法を利用することにより行う。
ニッケル含有板の表面をX線光電子分光分析法によって分析すると、C 1s、O 1s、Mg 1s、S 2p、Ca 2p、Ti 2p、Ni 2p3/2の光電子ピークが検出される。C 1s及びS 2pは不純物として含まれる炭素及び硫黄に由来し、O 1s、Mg 1s、Ca 2p、Ti 2pは、各種金属酸化物(Mg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物)及びニッケル酸化物に由来し、Ni 2p3/2はニッケル酸化物及びニッケル水酸化物に由来する。
このように、表面に対してX線光電子分光分析を行うと、ニッケル水酸化物に由来するピークとニッケル酸化物に由来するピークとがNi 2p3/2ピークとして重なり、また、各種金属酸化物(Mg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物)に由来するピークとニッケル酸化物に由来するピークとがO 1sピークとして重なる。このため、まず、Mg 1s、Ca 2p、及びTi 2pの各ピークから各種金属酸化物(Mg酸化物(MgOとする)、Ca酸化物(CaOとする)、Ti酸化物(TiOとする))の合計濃度を定量する。次いで、O 1sピークに由来する金属酸化物濃度からMg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物の合計濃度を差し引くことでニッケル酸化物(NiOとする)の濃度を求める。次いで、Ni 2p3/2ピークに由来するニッケル化合物の濃度からニッケル酸化物の濃度を差し引くことでニッケル水酸化物(Ni(OH)として)の濃度を求める。
具体的には、まずshirley法を用いて検出された各光電子ピークからバックグラウンド成分を除去し、各光電子ピークの積分値(面積値)を求める。更に、各光電子ピークの面積値に各元素の感度係数を乗じることで各元素の濃度を求める。これらの合計を100原子%とする。
次に、カーブフィッティング等の手法を用いて周囲の他のピークからO 1sピークを分離し、O 1sピークに基づきMg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物及びニッケル酸化物の合計濃度を求める。
また、Mg 1s、Ca 2p、及びTi 2pのピークに基づき各種金属酸化物(Mg酸化物(MgO)、Ca酸化物(CaO)、Ti酸化物(TiO)の合計濃度を求める。
次に、O 1sピークに由来するMg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物及びニッケル酸化物の合計濃度から、Mg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物の合計濃度を差し引いて、ニッケル酸化物の濃度を求める。
なお、TiやMgは任意添加元素であるため、これら元素が含まれない場合はMg 1s、Ti 2p、の光電子ピークは検出されない。この場合は、Mg酸化物及びTi酸化物の濃度を0として計算すればよい。
次に、カーブフィッティング等の手法を用いて周囲の他のピークからNi 2p3/2ピークを分離し、Ni 2p3/2ピークに基づきニッケル化合物(ニッケル酸化物及びニッケル水酸化物)の合計濃度を求める。そして、この合計濃度から、先に求めたニッケル酸化物の濃度を差し引くことで、ニッケル水酸化物の濃度が求まる。
本実施形態のニッケル含有板は、他の部材に溶接接合される際に大気中で400〜600℃程度に加熱されるが、表面におけるニッケル水酸化物の量が少ないために着色が起きにくくなる。よって、例えば大気中500℃で100秒間加熱後の表面の彩度と、加熱前の表面の彩度の差である彩度差ΔCを求めると、10以下になる。彩度差は、L表色系でのクロマティクネス指数をa及びbとしたとき、下記式で表される。
ΔC=√((Δa+(Δb) … (1)
ただし、上記式においてΔaは加熱後の表面のaと加熱前の表面のaとの差分であり、Δbは加熱後の表面のbと加熱前の表面のbとの差分である。
次に、本実施形態のニッケル含有板の製造方法について説明する。
純度99.0質量%以上のニッケル板を製造するには、例えば電気炉でニッケルを溶解後、製錬及び精錬を行ってNiスラブを製造し、このNiスラブに対して熱間鍛造、熱間圧延、脱スケール、冷間圧延を順次実施することで、所定の板厚のニッケル板とする。
また、ニッケルめっきを有する金属板を製造するには、炭素鋼、合金鋼、純銅または銅合金からなる基材を用意し、この基材に対して例えば電気めっき法によりニッケルめっき層を形成する。基材が炭素鋼または合金鋼からなる場合は、基材とめっき層との密着性を高めるために、めっき層形成後に焼鈍することによってめっき層と基材との間にNiFe合金層を形成させてもよい。また、ニッケルめっき層の形成方法は電気めっき法に限らず、無電解めっき法を用いてもよい。
更に、クラッド板を製造するには、炭素鋼、合金鋼、純銅または銅合金からなる板状の母材を用意し、この母材の一面または両面にニッケルクラッド材を重ね合わせ、これらをクラッド圧延することにより一体化させ、更に冷間圧延することによりクラッド板とする。
次に、ニッケル板、ニッケルめっきを有する金属板またはクラッド板に対して、露点−30℃以下に制御した還元性雰囲気中で、650〜1050℃の加熱温度で5秒以上加熱し、その後、露点−30℃以下に制御した還元性雰囲気中において表面に還元性ガスまたは不活性ガスを吹き付けながら50℃以下になるまで冷却する。このような熱処理と冷却を行うことで、表面におけるニッケル水酸化物の濃度が0超〜14原子%の範囲であるニッケル含有板が製造される。
還元性雰囲気としては、水素を含有する雰囲気が好ましく、AXガス(アンモニア分解ガス)雰囲気がより好ましい。また、雰囲気の露点は−30℃以下が好ましい。露点が−30℃を超えるとニッケル水酸化物の濃度が増大してしまうので好ましくない。また、露点を−70℃未満に下げても効果が飽和するので−70℃を限度としてもよい。また、加熱温度が650℃以上であればニッケル水酸化物の濃度を低減できる。加熱温度は高いほどニッケル水酸化物の濃度の低減に有効だが、1050℃超に加熱しても更なる効果が期待できないため、1050℃を上限とする。加熱時間は5秒以上が好ましい。加熱時間の上限は1000秒でよい。
加熱後の冷却条件は、表面のニッケル水酸化物の濃度を低減させるために重要な条件である。加熱に引き続き、露点−30℃以下に制御した還元性雰囲気中において冷却する。冷却は、露点−30℃以下のAXガス等の還元性ガスまたはAr等の不活性ガスを表面に吹き付けながら温度が50℃以下になるまで継続して行う。温度が50℃以下になる前に冷却を終了して大気中に取り出してしまうと、表面における反応が活発になりニッケル水酸化物の濃度が増大してしまうので好ましくない。冷却速度は特に限定する必要はなく、還元性ガスまたは不活性ガスによる風冷程度の速度で十分である。
熱処理前のニッケル含有板の表面には、ニッケル水酸化物が14原子%を超える濃度で存在することが多い。ニッケル水酸化物が14原子%を超えるニッケル含有板を650℃以上に加熱することによってニッケル水酸化物が脱水してメソポーラスなニッケル酸化物となり、更に650℃以上の還元雰囲気中でニッケル酸化物が金属ニッケルに還元されることで、ニッケル水酸化物の濃度が14原子%以下になるものと推測される。
製造したニッケル含有板は、ニッケル水酸化物の増大を防ぐために、乾燥雰囲気中で保管するとよい。
以上説明したように、本実施形態のニッケル含有板によれば、表面におけるニッケル水酸化物の濃度が14原子%以下なので、大気中で加熱した際の表面の茶褐色化を防止できる。これにより、例えば溶接のために大気中で加熱した場合であっても、導電性の低下を抑制し、かつ、濡れ性や溶接性を良好に確保できるようになる。
本実施形態のニッケル含有板は、導電性、機械的強度、耐食性などに優れることから、電池の内部配線材料(リード、タブ)や耐アルカリ用プラント材料などに好適に用いられる。特に、二次電池の集電体に溶接されるリード材として好適である。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ニッケル板の製造)
電気炉で金属ニッケルを溶解した後、製錬と精練を行い、連続鋳造により純Niスラブを作製した。スラブ中のNi含有率は99.0質量%以上であった。得られた純Niスラブを熱間鍛造、熱間圧延、脱スケール、冷間圧延を行って板厚0.1mmのニッケル板とした。洗浄後、露点−20〜−70℃に制御したAXガス(N:H=1:3)またはArガス雰囲気中で、加熱温度400〜1050℃、加熱時間1〜1000秒の条件で熱処理し、さらに同じ雰囲気中にて表面にAXガスまたはArガスを吹き付けながら50℃以下まで冷却して、ニッケル板を製造した。
(クラッド板の製造)
Cuからなる心材の両面にNiクラッド層が積層されたクラッド材を製造した。具体的にはまず、純度99.0質量%以上のNiクラッド材と、純度99.96質量%以上の純Cuからなる母材を用意した。真空パック組み立てにより母材の両面にNiクラッド材を配置し、650℃で均熱後に、実験用圧延機によって圧下率50%以上で接合圧延し、その後更に冷間圧延することにより、0.1mm厚のクラッド板を製造した。Niクラッド層の厚みは表裏面でそれぞれ0.025mm、母材の厚みは0.050mmであった。次いで、ニッケル板の場合と同様に熱処理及び冷却を行って、クラッド板を製造した。
(Niめっき板の製造)
極低炭素鋼を熱間圧延、酸洗及び冷間圧延することにより、板厚0.5mmの冷延鋼板とした。得られた冷延鋼板に、電気めっき法で2μm/片面の厚みのNiめっき層を形成した。その後、800℃、10秒の条件で焼鈍することによりNiめっき層と鋼板との間にNi−Fe合金層を形成させた。このようにして、Niめっき層と鋼板との接合性を向上させるとともにNiめっき層の歪除去を行なった。焼鈍後に冷間圧延して0.1mm厚のNiめっき鋼箔を製造した。圧延後に洗浄し、ニッケル板の場合と同様に熱処理及び冷却を行って、Niめっき板を作製した。めっき最表面のNi純度は95.0質量%以上であった。
得られたニッケル含有板について、表面のニッケル水酸化物の濃度をX線光電子分光法により測定・算出した。また、得られたニッケル含有板を大気中500℃で100秒間加熱した。そして、加熱前後における表面のL表色系でのクロマティクネス指数a及びbを測定し、彩度差ΔCを求めた。ΔCは、上記(1)式により求めた。なお、事前に行った実験では、製造したニッケル板、クラッド板およびNiめっき板の彩度は同等であり、熱処理条件が与える表面のニッケル水酸化物の濃度も同等であった。また、3種類のニッケル含有板において、大気中500℃で100秒間加熱した後の彩度差ΔCと表面のニッケル水酸化物の関係は同じであった。上記のとおり本発明ではニッケル含有板の種類による実験結果の差は認められなかったので、以下の実施例説明にあたっては、ニッケル板の結果を代表例として示すこととし、クラッド板およびNiめっき板の結果は、ニッケル板の結果と実質的に同じになるものと見なす。なお、表1に示すニッケル板の結果においてNo.1〜48の加熱前の表面の彩度がサンプルによらずほぼ同じ値であったため、No.1〜50の各サンプルの加熱前の表面の彩度はNo.1〜48の平均とした。なお、表1における温度及び露点の単位は℃であり、時間の単位は秒である。
Figure 0006790414
表1に示すように、実施例のNo.1〜32は、熱処理条件及び冷却条件が好ましい条件であったため、ニッケル水酸化物の濃度が14原子%以下となり、ΔCも低くなった。ただし、No.1、2、10、15、20、25、27、29及び31は、加熱温度がやや低めであったので、ニッケル水酸化物の濃度とΔCが増大した。
一方、比較例のNo.33〜50は、熱処理条件及び冷却条件が好ましい条件から外れたため、ニッケル水酸化物の濃度が14原子%超となり、ΔCも高くなった。
No.33〜36はアルゴン雰囲気中で加熱したため、加熱前に存在していたニッケル水酸化物を金属ニッケルまで還元させることができず、このため、加熱によってニッケル水酸化物が一旦ニッケル酸化物に変化したものの、大気中に取り出した際に大気中の水分を吸着して再び多くのニッケル水酸化物を形成してしまい、ニッケル水酸化物の濃度が増大したものと推測される。
また、No.37〜45は、加熱温度が低いか、加熱時間が短かったため、ニッケル水酸化物の還元が十分に進まず、ニッケル水酸化物の濃度が増大したものと推測される。
また、No.46〜50は、露点が高すぎたため、還元雰囲気中の水分が多くなり、加熱によってニッケル水酸化物が一旦ニッケル酸化物に変化したものの、雰囲気中の水分と反応して再びニッケル水酸化物を形成してしまい、ニッケル水酸化物の還元が十分に進まず、これによりニッケル水酸化物の濃度が増大したものと推測される。
また、表1の結果から、ニッケル水酸化物の濃度とΔCとの間には正の相関があることが明らかとなった。
なお、X線光電子分光分析法によるニッケル水酸化物の濃度は、Mg 1s、Ca 2p、及びTi 2pの各ピークから各種金属酸化物(Mg酸化物(MgOとする)、Ca酸化物(CaOとする)、Ti酸化物(TiOとする))の合計濃度を定量し、次いで、O 1sピークに由来する金属酸化物濃度からMg酸化物、Ca酸化物、Ti酸化物の合計濃度を差し引くことでニッケル酸化物(NiOとする)の濃度を求め、次いで、Ni 2p3/2ピークに由来するニッケル化合物の濃度からニッケル酸化物の濃度を差し引くことでニッケル水酸化物(Ni(OH)として)の濃度を求めた。
表2及び3に、X線光電子分光分析法によるニッケル水酸化物の濃度の分析例を示す。表2〜3における化合物等の濃度の単位は全て原子%である。
Figure 0006790414
Figure 0006790414
ここで、算出したNi(OH)の濃度と彩度差ΔCとの関係を表4及び図1に示す。表面におけるNi(OH)濃度の大小がΔCの大小と相関があることがわかる。また肉眼ではNo.7において着色は確認できず、NO.1は極薄い茶褐色に、No.41と34では濃い茶褐色に着色していた。このことより表面のNi(OH)が14原子%以下なら大気加熱時に着色し難いことがわかる。加えて、NiO濃度や、XPSやGDS等で測定した表面の各種元素の濃度はいずれもΔCとの相関が無かった。
Figure 0006790414

Claims (6)

  1. 表面にニッケルが配された金属板であって、X線光電子分光分析法によって前記表面から検出される化学種のうちのニッケル水酸化物の濃度が0原子%超14原子%以下であ二次電池の集電体に溶接されるリード材用である、表面にニッケルが配された金属板。
  2. 前記表面を含む全体が、ニッケル含有率99.0質量%以上の純ニッケルからなる、請求項1に記載の表面にニッケルが配された金属板。
  3. 金属からなる基材と、前記基材に形成されて前記表面を構成するニッケルめっき層とを備え、前記ニッケルめっき層が、ニッケル含有率95.0質量%以上の純ニッケルからなる、請求項1に記載の表面にニッケルが配された金属板。
  4. 金属からなる母材層と、前記母材層の一面または両面に積層されて前記表面を構成するニッケルクラッド層とを備えたクラッド板からなり、前記ニッケルクラッド層が、ニッケル含有率99.0質量%以上のニッケルからなる、請求項1に記載の表面にニッケルが配された金属板。
  5. 前記金属からなる基材または前記金属からなる母材層が、炭素鋼、合金鋼、銅または銅合金のいずれかよりなる、請求項3または請求項4の何れか一項に記載の表面にニッケルが配された金属板。
  6. 大気中500℃で100秒間加熱後と加熱前での前記表面の彩度差ΔCが10以下である、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の表面にニッケルが配された金属板
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