JP3675445B2 - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることがわかっている。
そこで、先に本出願人により、各種共振形コンバータによるスイッチング電源回路が各種提案されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
【0003】
図15の回路図は、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできる、先行技術としてのスイッチング電源回路の一例を示している。この図に示す電源回路の基本構成としては、一次側スイッチングコンバータとして自励式の電流共振形コンバータを備えている。
【0004】
この図に示す電源回路において、商用交流電源から直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路系としては、図示するようにして、2本の低速リカバリ型の整流ダイオードD1,D2と、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を接続することで、倍電圧整流回路を形成している。これにより、直列接続された2本の平滑コンデンサCi1−Ci2の両端には、交流入力電圧VACの2倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータに対して直流入力電圧として供給される。
【0005】
この図に示す電源回路のスイッチングコンバータは電流共振形とされ、図のように2つのスイッチング素子Q1,Q2をハーフブリッジ結合により接続している。この場合、スイッチング素子Q1,Q2については、バイポーラトランジスタが選定されている。
スイッチング素子Q1のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB1−共振用コンデンサCB1−駆動巻線NB1を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。スイッチング素子Q1のベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD1が図示する方向によって接続される。また、スイッチング素子Q1のコレクタ−ベース間には、起動時の電流をベースに流すための起動抵抗Rs1が接続される。
同様にして、スイッチング素子Q2のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB2−共振用コンデンサCB2−駆動巻線NB2を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD2が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗Rs2が接続される。
【0006】
ここで、スイッチング素子Q1側の自励発振駆動回路を形成する共振用コンデンサCB1のキャパシタンスと駆動巻線NB1のインダクタンスによっては直列共振回路が形成される。同様にして、スイッチング素子Q2側の自励発振駆動回路を形成する共振用コンデンサCB2のキャパシタンスと駆動巻線NB2のインダクタンスによっても直列共振回路が形成される。そして、これら直列共振回路の共振周波数によって決定されるスイッチング周波数によって、スイッチング素子Q1,Q2が自励式でスイッチング駆動されることになる。また、後述するように、ドライブトランスPRTにおいては、駆動巻線NB1,NB2が互いに逆極性となる交番電圧が励起されるようになっていることから、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフするようにして、スイッチング動作を行う。
【0007】
また、スイッチング素子Q2 のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列に部分共振コンデンサCpが接続されている。
この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス成分L1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0008】
ドライブトランスPRT (Power Regulating Transformer)はスイッチング素子Q1,Q2をスイッチング駆動すると共に、定電圧制御のためにスイッチング周波数を可変制御するために備えられる。
そして、このドライブトランスPRTは、駆動巻線NB1,NB2及び共振電流検出巻線NAを巻回するとともに、更にこれらの各巻線に対して制御巻線Ncが直交する方向に巻回された可飽和リアクトルとされている。なお、駆動巻線NB1と、駆動巻線NB2は、互いに逆極性の電圧が励起されるようになっている。
【0009】
絶縁コンバータトランスPIT (Power Isolation Transformer)はスイッチング素子Q1 、Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する。この絶縁トランスPITの一次巻線N1の一端は、共振電流検出巻線NAを介して、スイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタとの接点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が得られるようにされる。
【0010】
また、この場合には、一次巻線N1の他端は直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続されている。そして、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのインダクタンス成分により、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成している。
このようにして、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振動作とが複合的に得られていることになる。
【0011】
また、この場合の絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2と、この二次巻線N2よりも巻き数(ターン数)の少ない二次巻線N3が巻装されている。
二次巻線N2に対しては、図示するようにしてブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCO1が接続されることで、全波整流動作によって、平滑コンデンサCO1の両端に二次側直流出力電圧EO1が得られるようになっている。
また、二次巻線N3は、センタータップを施した上で、図示するようにして整流ダイオードDO3,DO4、及び平滑コンデンサCO2を接続することによって全波整流回路が形成され、平滑コンデンサCO2の両端に二次側直流出力電圧EO2を生成するようにされる。これら二次側直流出力電圧EO1,EO2は、それぞれ図示しない負荷に対して供給される。また、二次側直流出力電圧EO1は、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0012】
絶縁コンバータトランスPITは、例えば図17に示す構造を有している。
絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアが備えられる。そして、一次側と二次側の巻装領域が互いに独立するようにして分割された上で一体化されたボビンBに対して、一次巻線N1と、二次巻線N2をそれぞれの巻装領域に対スして巻装している。なお、一次巻線N1及び二次巻線N2は、それぞれ60μmmφのリッツ線をガラ巻きにより巻装している。また、図15においては、二次側に二次巻線N3も巻装されているが、ここでの図示は省略している。そして、中央磁脚に対しては図のようにギャップGを形成するようにしている。これによって、結合係数kとしては、例えばk≒0.8程度による疎結合の状態を得るようにしている。
なお、ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することが出来る。
【0013】
制御回路1では、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じて、制御巻線NCに流す制御電流(直流電流)レベルを可変することで、直交形制御トランスPRTに巻装された駆動巻線NBのインダクタンスLBを可変制御する。これにより、駆動巻線NBのインダクタンスLBを含んで形成されるメインスイッチング素子Q1のための自励発振駆動回路内における直列共振回路の共振条件が変化する。これは、メインスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を可変する動作となり、この動作によって二次側の直流出力電圧を安定化する。
【0014】
また、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできるスイッチング電源回路の他の例を、図16の回路図に示す。この図に示す電源回路は、他励式による電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされた共振形コンバータとしての構成を採っている。
なお、この図において図15と同一部分については同一符号を付し、共通となる構成部分については説明を省略する。
【0015】
この図に示す電源回路においては、先ず、商用交流電源ACに対して、ブリッジ整流回路Di及び1本の平滑コンデンサCiから成る全波整流平滑回路が備えられる。従ってこの場合には、全波整流動作によって、平滑コンデンサCiの両端に整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)が得られることになる。この整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。
【0016】
この場合、上記直流入力電圧を入力してスイッチングする電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q11,Q12をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q11,Q12の各ソース−ドレイン間に対しては、図示する方向により、それぞれクランプダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
また、スイッチング素子Q12のソース−ドレイン間に対しては、部分共振コンデンサCpを並列に接続することで、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と共に並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成している。これにより、図16に示す電源回路としても部分電圧共振動作が得られることになる。
【0017】
この他励式である電源回路においては、スイッチング素子Q11,Q12をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振ドライブ回路11が設けられる。この発振ドライブ回路11は、スイッチング素子Q11,Q12の各ゲートに対してドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q11,Q12は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行うようにされる。
【0018】
なお、発振ドライブ回路11は、絶縁コンバータトランスPITの一次側に追加的に巻装された低圧巻線N4と、コンデンサC4から成る整流回路によって得られた低圧直流電圧を入力して動作電源としている。また、起動時においては、起動抵抗Rsを介して整流平滑電圧Eiを入力することで起動するようになっている。
【0019】
この図に示す電源回路の絶縁コンバータトランスPITは、図17による説明と同様の構造を有する。つまり、例えばEE型コアの中央磁脚に対してギャップを形成することで、一次側と二次側の結合係数kとしては、k=0.8程度の疎結合の状態が得られるようにしているものである。
【0020】
この場合の制御回路1は、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じて可変の直流電流を生成し、フォトカプラPCを介して発振ドライブ回路11に供給する。発振ドライブ回路11では、フォトカプラPCを介して入力された制御回路1の出力に応じて、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されるようにしてスイッチング駆動する。このようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されることで、二次側直流出力電圧のレベルが安定化されることになる。
【0021】
図18は、図15に示した電源回路における要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
スイッチング素子Q2のスイッチング動作は、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2(図18(a))及びコレクタ電流IQ2(図18(b))により示される。つまり、スイッチング素子Q2がオフとなる期間TOFFにおいては、コレクタ電流IQ2は0レベルになると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ2としては、整流平滑電圧Eiによりクランプされたレベルが得られることになる。
これに対して、スイッチング素子Q2がオンとなる期間TONにおいては、図示する波形によりコレクタ電流IQ2が流れると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ2は0レベルとなる。このコレクタ電流IQ2は、期間TONにおいて一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1(図18(d))が流れるものとなる。
なお、ここでは図示していないが、スイッチング素子Q1は、スイッチング素子Q2と交互となるタイミングでオン/オフ動作していることから、スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧、及びコレクタ電流は、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2及びコレクタ電流IQ2をほぼ180°移相した波形となるものである。したがって、スイッチング素子Q1側がオンとなる期間TOFFにおける一次巻線電流I1の波形部分が、スイッチング素子Q1のコレクタ電流として流れるものとなる。
【0022】
また、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間に対して並列に接続される部分共振コンデンサCpには、図18(d)に示されるようにして、スイッチング素子Q2のターンオフ時に正極性の部分共振電流IC2が流れ、スイッチング素子Q1のターンオフ直後(スイッチング素子Q2のターンオン直後)に負極性の部分共振電流IC2が流れるようになっており、部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
そして、このような動作波形からも分かるように、スイッチング素子Q1,Q2は、ZVS(Zero Voltage Switching:零電圧スイッチング)及びZCS(Zero Current Switching:零電流スイッチング)動作が得られることになって、スイッチング損失の低減が図られている。
【0023】
また、二次巻線N2に対して接続されたブリッジ整流回路DBRの正極入力端子と負極入力端子との間の整流電圧V2は、図18(e)に示すようにブリッジ整流回路DBRの正/負の各整流電流経路のダイオードが導通するのに応じて、絶対値レベルが二次側直流出力電圧EO1のレベルでクランプされた波形が得られる。
なお、ここでの詳しい説明は省略するが、図16に示した電源回路についても、ほぼ同様の動作波形が得られる。
【0024】
また、図15に示した構成による電源回路の特性として、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、及びスイッチング素子Q2(又はQ1)のオン期間TONを図19に示す。
この図19に示すように、負荷電力Poが重くなって二次側直流出力電圧が低下するのに応じて、スイッチング周波数fsは低下するように制御され、これに応じて期間TONが長くなっていることが分かる。
また、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、例えば負荷電力Po=200W時には91.8%、負荷電力Po=150Wでは92.4%となり、この負荷電力Po=150W時において最も高効率な状態が得られている。
【0025】
なお、図15に示す電源回路として、上記図18に示す動作及び図19に示す特性を得るのにあたっては、次のように各部を選定している。
一次巻線N1=二次巻線N2=45T
一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF
部分共振コンデンサCp=330pF
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電源回路としては、電力変換効率はできるだけ高いことが好ましい。
ここで、絶縁コンバータトランスについては、上記のように、そのコアにギャップを形成し、一次巻線N1と二次巻線N2を疎結合の状態としている。これは、フェライトコアが磁気飽和状態となりにくいようにするためである。
【0027】
しかしながら、一次側巻線と二次側巻線とを疎結合の状態にしていることから、自ずとAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)の向上には限界がある。
交流入力電圧VAVが100V系で負荷電力Poが125W程度の場合は、図16のような全波整流回路Diを用いた電源回路を採用することが考えられるが、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、90%程度が限界である。
また、交流入力電圧VAVが100V系で負荷電力Poが150W以上の場合は、図15のような倍電圧整流回路を用いた電源回路を採用することが考えられるが、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、92%程度が限界である。
そして図15、図16の回路では、これ以上の高効率化は不可能とされる。
【0028】
また、絶縁コンバータトランスPITが疎結合の状態とされていることで、絶縁コンバータトランスPITからの漏洩磁束の発生レベルは高くなってしまう。このため、回路の実際としては、絶縁コンバータトランスPITに銅板のショートリングを設けるなどして対策することが必要になり、それだけ、絶縁コンバータトランスPITのコストアップ及び大型化を招くことになる。
さらに、絶縁コンバータトランスPITが疎結合の状態にある場合、ギャップG近傍の一次側巻線と二次側巻線とは、いわゆるフリンジ磁束による渦電流損失によって温度上昇しているために、信頼性の点で不利となる。
【0029】
さらに、絶縁コンバータトランスPITの中央磁脚にギャップGを形成するのにあたっては、例えばフェライト材のE型コアの中央磁脚を研磨するようにされる。この場合、絶縁コンバータトランスPITを製造するのに、研磨工程が追加されることとなってしまうので、その分コストアップになってしまうという問題も生じる。
【0030】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、スイッチング電源回路として以下のように構成することとした。
すなわち、先ず、交流入力に対して整流を行い、平滑コンデンサにより直流入力電圧を得る整流平滑手段と、上記直流入力電圧を断続する第1のスイッチング素子を備えて成るスイッチング手段と、発振回路を有し、この発振回路の発振出力により上記第1のスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備えるようにする。
そして、磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線及び二次巻線を巻装し、上記一次巻線と二次巻線とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成され、上記一次巻線に得られる上記スイッチング手段の出力を上記二次巻線に対して伝送する絶縁コンバータトランスを備える。
さらに、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線と一次側並列共振コンデンサとにより形成され、上記スイッチング手段の動作を電圧共振形とするように設けられる一次側並列共振回路と、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧に基づき半波整流動作を行うことで直流出力電圧を得るように構成される直流出力電圧生成手段を備える。
その上で、上記絶縁コンバータトランスの上記一次巻線と上記二次巻線は、上記一次巻線と上記二次巻線とに流れる電流により生じる磁束が互いに打ち消し合うように巻装されているものである。
【0031】
上記構成によれば、一次側の一石構成の電圧共振形コンバータに対し、二次側に半波整流回路が組み合わされたスイッチング電源回路が形成される。
二次側が半波整流回路とされることにより、絶縁コンバータトランスのコアのギャップをゼロとして一次巻線と二次巻線の結合係数を0.95程度の密結合とすることができる。さらに直流入力電圧は、全波整流回路から得るようにしている。これにより、電力変換効率を向上させることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明における、第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。
この図1に示す電源回路は、一次側に電圧共振形コンバータを備えると共に二次側にも共振回路を備えた複合共振形スイッチングコンバータとしての構成を採る。
【0033】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)を入力して直流入力電圧を得るための整流平滑回路として、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiからなる全波整流平滑回路が備えられ、交流入力電圧VACの等倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiを生成するようにされる。
【0034】
この電源回路に備えられる電圧共振形のスイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備えた自励式の構成を採っている。この場合、スイッチング素子Q1には、高耐圧のバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用されている。
【0035】
スイッチング素子Q1のベースと一次側アース間には、駆動巻線NB、共振コンデンサCB、ベース電流制限抵抗RBの直列接続回路よりなる自励発振駆動用の直列共振回路が接続される。
また、スイッチング素子Q1のベースは、ベース電流制限抵抗RB−起動抵抗RSを介して平滑コンデンサCi(整流平滑電圧Ei)の正極側にも接続されており、起動時のベース電流を整流平滑ラインから得るようにしている。
【0036】
また、スイッチング素子Q1のベースと平滑コンデンサCiの負極(1次側アース)間に挿入されるクランプダイオードDDにより、スイッチング素子Q1のオフ時に流れるクランプ電流の経路を形成するようにされており、また、スイッチング素子Q1のコレクタは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻終わり端と接続され、エミッタは一次側アースに対して接地される。
【0037】
また、上記スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続されている。この並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1側のリーケージインダクタンスL1とにより電圧共振形コンバータの一次側並列共振回路を形成する。そして、ここでは詳しい説明を省略するが、スイッチング素子Q1のオフ時には、この並列共振回路の作用によって並列共振コンデンサCrの両端電圧VQ1は、実際には正弦波状のパルス波形となって電圧共振形の動作が得られるようになっている。
【0038】
この図に示す直交形制御トランスPRTは、共振電流検出巻線NA、駆動巻線NB、及び制御巻線NCが巻装された可飽和リアクトルである。この直交形制御トランスPRTは、スイッチング素子Q1を駆動すると共に、定電圧制御のために設けられる。
この直交形制御トランスPRTの構造としては、図示は省略するが、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字形コアの互いの磁脚の端部を接合するようにして立体型コアを形成する。そして、この立体型コアの所定の2本の磁脚に対して、同じ巻装方向に共振電流検出巻線NA、駆動巻線NBを巻装し、更に制御巻線NCを、上記共振電流検出巻線NA及び駆動巻線NBに対して直交する方向に巻装して構成される。
【0039】
この場合、直交形制御トランスPRTの共振電流検出巻線NAは、平滑コンデンサCiの正極と絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1との間に直列に挿入される。これにより、スイッチング素子Q1のスイッチング出力は、一次巻線N1を介して共振電流検出巻線NAに伝達される。直交形制御トランスPRTにおいては、共振電流検出巻線NAに得られたスイッチング出力がトランス結合を介して駆動巻線NBに誘起されることで、駆動巻線NBにはドライブ電圧としての交番電圧が発生する。このドライブ電圧は、自励発振駆動回路を形成する直列共振回路(NB,CB)からベース電流制限抵抗RBを介して、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1のベースに出力される。これにより、スイッチング素子Q1は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。
【0040】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1のスイッチング出力を二次側に伝送する。
この絶縁コンバータトランスPITは、磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装し、一次巻線N1と二次巻線N2とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成されるものであるが、その構造例は後述する。
【0041】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻終わり端は、スイッチング素子Q1のコレクタと接続され、巻始め端は共振電流検出巻線NAの直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極(整流平滑電圧Ei)と接続されている。
【0042】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この場合、二次巻線N2に対しては、二次側並列共振コンデンサC2が並列に接続されることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって並列共振回路が形成される。この並列共振回路により、二次巻線N2に誘起される交番電圧は共振電圧となる。つまり二次側において電圧共振動作が得られる。
即ち、この電源回路では、一次側にはスイッチング動作を電圧共振形とするための並列共振回路が備えられ、二次側には電圧共振動作を得るための並列共振回路が備えられた、「複合共振形スイッチングコンバータ」としての構成を有する。
【0043】
二次巻線N2の巻終わり端には整流ダイオードDOのアノードが接続され、巻始め端は、二次側アースに接続される。また整流ダイオードDOのカソードに対して平滑コンデンサCOの正極端子が接続される。平滑コンデンサCOの負極端子は二次側アースに接続される。
このようにして、並列共振回路を形成する二次巻線N2に対しては、整流ダイオードDO及び平滑コンデンサCOから成る半波整流回路が形成されることで、平滑コンデンサCOの両端電圧として、二次側直流出力電圧EOが生成される。なお、この直流出力電圧EOは制御回路1に対して、検出電圧として分岐して入力される。
【0044】
制御回路1では、入力された二次側直流出力電圧EOのレベルを検出して、このレベル変化に応じて、制御巻線NCに流すべき直流電流である制御電流のレベルを可変する。
このようにして可変された制御電流のレベルに応じて、直交形制御トランスPRTでは、駆動巻線NBのインダクタンスLBが可変されることになる。これにより、駆動巻線NBのインダクタンスLBを含んで形成されるスイッチング素子Q1のための自励発振駆動回路内の直列共振回路の共振条件が変化するが、これは、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を可変する動作となる。
そして、上記のようにしてスイッチング周波数が可変制御されると、これに応じて、一次側並列共振回路(N1//Cr)と二次側並列共振回路(N2//C2)の共振インピーダンスが変化して、絶縁コンバータトランスPITの一次側から二次側に伝送される交番電圧レベルも変化することになる。この結果、二次巻線N2に得られた交番電圧レベルを元として生成される二次側直流出力電圧EO1のレベルも可変されることとなる。このような動作によって二次側の直流出力電圧を安定化する。
【0045】
上記絶縁コンバータトランスPITとしては、例えば図2又は図3に断面図として示した構造を有している。
図2は一対のE型コアを用いた構造例である。
絶縁コンバータトランスPITのコアとしては、図示するようにして、2つのE型コアCR1,CR2の互いの磁脚の端部を対向させるようにして組み合わせることで、EE形コアを形成する。またこの場合、E形コアCR1,CR2の各中央磁脚が対向する面にギャップは形成されない。
なお、E形コアCR1,CR2には、例えばフェライト材を用いるようにされる。
そして本実施の形態では、上記のようにして形成されるEE形コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装するために、一次/二次分割ボビンBを用いるようにされる。
【0046】
図3は一対のU型コアを用いた構造例である。
この場合、絶縁コンバータトランスPITでは、そのコアとして、図3に示すように、それぞれ2本の磁脚を有するU型コアCR11、CR12が組み合わされ、U−U型コアを形成するようにされる。
さらに、上記のようにして形成されるU−U型コアの一方の磁脚に対しては、図示するようにして一次巻線N1と二次巻線N2とを互いに分割された巻装領域に巻装したボビンBが取り付けられる。
また、上記のように形成されるU−U型コアの中央磁脚に対し、ギャップを形成しないようにしている。
【0047】
図2、図3のいずれの場合も、ギャップをゼロとすることで、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
また、先行技術のように絶縁コンバータトランスに1mmのギャップを設ける場合、例えば直流出力電圧Eo=135Vを得るためには、二次巻線N2=45T(ターン)であり、二次巻線N2の1Tあたりの誘起電圧は3V/Tであったが、本例のギャップゼロとした場合、フェライト磁心の磁束密度が向上するため、二次巻線N2=55Tとして、二次巻線N2の1Tあたりの誘起電圧を2.45V/Tに低下させ、フェライト磁心の磁束密度を先行技術の場合と同様としている。
【0048】
ところで、例えば先行技術の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITについて疎結合の状態とすることで磁気飽和を抑制していた。
一方、本例においては、絶縁コンバータトランスPITについてギャップゼロとし、密結合としている。これは、二次側整流回路が半波整流方式とされ、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と二次巻線N2の巻方向が上述のようにされていることによる。
即ちギャップゼロとしても絶縁コンバータトランスPITのフェライト磁心が磁気飽和しないのは、一次巻線N1と二次巻線N2に流れる電流I1,I2によって生じる磁束については、電流I1,I2の位相が180度で絶対値がほぼ同等であるため、N1、I1による磁束と、N2,I2による磁束は互いにうち消しあっているからである。
【0049】
ここで、この図1の回路において、絶縁コンバータトランスPITにギャップ=1mmを設ける場合と、本例、即ちギャップゼロの場合について比較した動作波形及び特性を示す。
ギャップ=1mmの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=45T
二次巻線N2=45T
一次側並列共振コンデンサCr=6800pF
二次側並列共振コンデンサC2=0.01μF
【0050】
一方、本例、即ちギャップゼロの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=50T
二次巻線N2=55T
一次側並列共振コンデンサCr=5600pF
二次側並列共振コンデンサC2=6800pF
【0051】
図4は、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示している。実線は本例の場合の波形であり、破線はギャップ=1mmの場合である。
スイッチング素子Q1のスイッチング動作は、スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧VQ1及びコレクタ電流IQ1により示される。つまり、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFFにおいては、コレクタ電流IQ1は0レベルになると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ1としては、一次側電圧共振回路による電圧共振パルス電圧が得られる。
これに対して、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいては、図示する波形によりコレクタ電流IQ1が流れると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ1は0レベルとなる。
このようなスイッチング動作により、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1には図示するように電流I1が流れ、またそれに応じて二次巻線N2に電流I2が流れる。二次側共振電圧V2は図示するようになる。
【0052】
図5は、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
また図6は、負荷電力Po=200W時において交流入力電圧VAC=90V〜140Vの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
【0053】
これらの図からわかるように、ギャップ=1mmの場合、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時に91.0%、負荷電力Po=50W時に90%である。
一方、ギャップゼロの本例の場合、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時に91.5%、負荷電力Po=50W時に91.3%である。
つまり、ギャップゼロとした本例の場合、ギャップ=1mmの絶縁コンバータトランスPITを用いた場合に比べて、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時には0.5%向上し、入力電力は1.2W低減する。
また負荷電力Po=50W時にはAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、1.3%向上し、入力電力は0.8W低減する。
即ちギャップゼロとすることで高効率化が図られ、入力電力の低減が可能となる。
また交流入力電圧の変動に対しても安定して、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、ギャップゼロの本例の方が高効率となっている。
【0054】
ギャップゼロとすることによりAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)が向上するのは、次のような理由によると考えられる。
・一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数が0.8から0.95に向上したことによって漏洩磁束が低減し、一次巻線N1と二次巻線N2の渦電流損失が低下するため。
・ギャップ周辺のフリンジ磁束によって一次巻線N1と二次巻線N2の局部的な電力損失が解消されて絶縁コンバータトランスPITの銅損が低減するため。
・一次巻線N1と二次巻線N2の増加によって、一次電流I1と二次電流I2が低減したことによって、絶縁コンバータトランスPITの銅損とスイッチング素子Q1のスイッチング損失が低減するため。
【0055】
このように図1に示した本例では、一次側が一石構成の電圧共振形コンバータ、二次側が半波整流方式電圧共振回路を組み合わせた複合共振形コンバータとしてのスイッチング電源回路において、二次側が半波整流回路とされることにより、絶縁コンバータトランスのコアのギャップをゼロとして一次巻線と二次巻線の結合係数を0.95程度の密結合とする。さらに直流入力電圧は、全波整流回路から得るようにしている。これにより、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)を向上させるものである。
【0056】
そして、負荷電力が200W以上の重負荷時であっても電力変換効率を向上させることができるが、ここで負荷電力が200W以上の重負荷時に使用される、上述した図15の回路、即ち倍電圧整流回路を用いた電流共振形コンバータで絶縁コンバータトランスPITのギャップ1.4mm、結合係数を0.77とした場合と比較すると、次のようになる。
本例の回路では、負荷電力Po=200W時には、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、図15の回路に比べて0.3%低下し、交流入力電力は0.6W増加するものとなるが、負荷電力Po=50W時には、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、0.7%向上し、交流入力電力は1.0W低減する。
つまり平均入力電力はほぼ同等とみなすことができる。
そして、図15の回路と平均入力電力をほぼ同等とできる本例の回路としては、一石のスイッチング素子Q1による構成であり、また平滑コンデンサCiは1つでよく、回路構成部品を少なくすることができる。
【0057】
続いては、図7に、第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す。
この図7に示す電源回路としても、先の図1に示した回路と同様に、一次側に電圧共振形コンバータを備えると共に二次側には並列共振回路を備えた複合共振形スイッチングコンバータとしての構成を採る。
また、この場合も図示する絶縁コンバータトランスPITのコアの磁脚に対してはギャップを形成しないようにして、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
なお、この図7において、既に図1において説明した部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
先ず、この場合、スイッチング素子Q1のベースに対しては、図示するように[共振コンデンサCB−駆動巻線NB−インダクタLB−ベース電流制限抵抗RB]の直列接続回路が接続されるものとなる。この直列接続回路は、スイッチング素子Q1を自励式により駆動するための自励発振駆動回路とされる。
この自励発振駆動回路内の駆動巻線NBは、絶縁コンバータトランスPITの一次側に巻装されることで、一次巻線N1により励起される。そして、自励発振駆動回路としては、共振コンデンサCB−駆動巻線NB−インダクタLBとによって、直列共振回路を形成する。この直列共振回路の共振周波数は、インダクタLBと駆動巻線NBのインダクタンスと、共振コンデンサCBのキャパシタンスとによって決定される。
【0059】
またこの場合、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1により励起される駆動巻線NBには、ドライブ電圧としての交番電圧が発生する。そして、このドライブ電圧は、上記したようにしてベース電流制限抵抗RBと直列共振回路(CB−NB−LB)とが設けられていることにより、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1のベースに出力されるようになる。
これにより、スイッチング素子Q1は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。そして、そのコレクタに得られるスイッチング出力を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に伝達する。
なお、この図7に示す電源回路において、上記直列共振回路により決定されるスイッチング周波数はおよそfs=66kHzとされ、これがほぼ一定に維持されている。
【0060】
また、この場合においても、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては、二次側並列共振コンデンサC2が並列に接続されることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンス(L2)と二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって並列共振回路が形成される。
つまり、この図7に示す電源回路としても、一次側に並列共振回路を備え、二次側にも電圧共振動作を得るための並列共振回路を備える「複合共振形スイッチングコンバータ」としての構成を有するものである。
また、上記二次巻線N2の巻終わり端に対しては、この場合も図のように整流ダイオードDOと平滑コンデンサCOとによる半波整流回路が備えられて、このような半波整流回路により二次側直流出力電圧EOが生成されている。
【0061】
ここで、この図7に示す電源回路の二次側においは、アクティブクランプ回路2が備えられる。
即ちこの場合、アクティブクランプ回路2として、MOS−FETの第2スイッチング素子Q2,クランプコンデンサC3,ボディダイオードのクランプダイオードDD2を備える。また、第2スイッチング素子Q2を駆動するための駆動回路系として、ドライブ巻線Ng,コンデンサCg,抵抗R1を備えて成る。
【0062】
第2スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、クランプダイオードDD2が並列に接続される。その接続形態としては、クランプダイオードDD2のアノードがソースに対して接続され、カソードがドレインに対して接続されるようになっている。
また、第2スイッチング素子Q2のドレインはクランプコンデンサC3を介して、二次巻線N2の巻終わり端部と整流ダイオードDOのアノードとの接続点に対して接続される。また、第2スイッチング素子Q2のソースは二次側アースに対して接続される。
従って、このアクティブクランプ回路2としては、上記第2スイッチング素子Q2、クランプダイオードDD2の並列接続回路に対して、クランプコンデンサC3を直列に接続して成るものとされる。そして、このようにして形成される回路を二次側並列共振回路(二次側並列共振コンデンサC2)に対して更に並列に接続して構成されるものである。
【0063】
また、第2スイッチング素子Q2の駆動回路系としては、図示するように、第2スイッチング素子Q2のゲートに対して、コンデンサCg−ドライブ巻線Ngの直列接続回路が接続される。そして、この直列接続回路の接続点と二次側アース間には、図示するように抵抗R1が挿入される。
これらコンデンサCg、ドライブ巻線Ng、抵抗R1は、第2スイッチング素子Q2のための自励式駆動回路を形成する。即ちこの自励式駆動回路からの信号電圧が第2スイッチング素子Q2のゲートに印加されスイッチング動作が行われる。
この場合のドライブ巻線Ngは、二次巻線N2の巻始め端部側に形成されており、この場合の巻数としては例えば1T(ターン)としている。
これにより、ドライブ巻線Ngには、一次巻線N1に得られる交番電圧により励起された電圧が発生する。なお、上記ドライブ巻線Ngとしては、そのターン数は1Tであればその動作は保証されるが、これに限定されるものではない。
【0064】
また、この電源回路においては、二次側に備えられる制御回路1によって第2スイッチング素子Q2のスイッチング動作がPWM制御されるようになっている。
即ち二次側直流出力電圧EOは制御回路1に供給され、制御回路1がそれに応じた直流制御電圧を第2スイッチング素子Q2のゲートに印加することで、第2スイッチング素子Q2の導通角が制御される。これによって交流入力電圧VACや負荷電力Poの変動に対する直流出力電圧EOの定電圧制御が行われる。
これは負荷電力の急激な変動に対して非常に高速に応答可能なシステムとなる。
【0065】
このような図7の構成の場合、一次側のスイッチング周波数は上述のように一定とされた上で、負荷変動等による二次側直流出力電圧EOのレベル変化に応じて、第2スイッチング素子Q2のオフ期間は一定としてオン期間を可変制御するという動作が得られる。つまり、第2スイッチング素子Q2のスイッチング動作について、その導通角を可変制御する動作が得られる。
このように第2スイッチング素子Q2の導通角が可変制御されることによっては、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に誘起される電圧は、そのパルス幅が可変されるようになる。
そして、整流ダイオードDOでは、この二次側並列共振電圧を入力して整流を行うことから、整流ダイオードDOのオン/オフタイミングも可変されることになる。
このようにして、結果的には整流ダイオードDOの導通角が制御されることで、二次側直流出力電圧EOについての安定化が図られることになる。
【0066】
図8は、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示している。実線は本例の場合の波形であり、破線はギャップ=1mmの場合である。
なお、この図8と、後述する図9、図10に示される実験結果を得るにあたっては、各部の定数を次のように設定している。
一次巻線N1=50T
二次巻線N2=55T
一次側並列共振コンデンサCr=5600pF
二次側並列共振コンデンサC2=5600pF
クランプコンデンサC3=0.47μF
図8において、スイッチング素子Q1のスイッチング動作は、スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧(一次側共振電圧)V1及びコレクタ電流IQ1により示される(図8(a)、図8(b))。つまり、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFF1においては、コレクタ電流IQ1は0レベルになると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ1としては、一次側電圧共振回路による電圧共振パルス電圧が得られる。
これに対して、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TON1においては、図示する波形によりコレクタ電流IQ1が流れると共に、コレクタ−エミッタ間電圧V1は0レベルとなる。
このようなスイッチング動作により、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1には、図8(c)に示す電流I1が流れるようになる。
【0067】
一次巻線N1に電流I1流れるようになることで、二次側においては、二次巻線N2に図8(f)に示すような電流I2が流れる。
また、この図8(e)には、アクティブクランプ回路2を形成する第2スイッチング素子Q2に流れる電流IQ2が示され、この図からもわかるように第2スイッチング素子Q2は図中のTONのタイミングでオンとなるように駆動されている。また、二次側共振電圧V2は図8(d)に示すようになり、この波形より、そのピークレベルが二次側直流出力電圧EOのレベルでクランプされていることがわかる。
【0068】
図9は、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子Q2のオン期間TONの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)について、実線は図7に示した回路の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
また図10は、負荷電力Po=200W時において交流入力電圧VAC=90V〜140Vの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子Q2のオン期間TONの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
【0069】
これらの図より、ギャップゼロとした場合は、ギャップ=1mmの絶縁コンバータトランスPITを用いた場合に比べて、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)は、負荷電力Po=200W時には1.0%向上し、入力電力は2.5W低減する。
また負荷電力Po=50W時には、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)は5.0%向上し、入力電力は4.5W低減する。
即ち、この場合もギャップゼロとすることで高効率化が図られ、入力電力の低減が可能となる。
また交流入力電圧の変動に対しても安定して、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)は、この場合もギャップゼロとした方が高効率となる。
【0070】
また、これら図9、図10に示すように、第2スイッチング素子Q2のオン期間TONは、重負荷の条件になるに従い短くなるように制御される。また、このオン期間TONは、交流入力電圧VACが上昇するのに応じて長くなるように制御される。
すなわち、第2の実施の形態の電源回路においては、二次側に設けられる第2のスイッチング素子Q2のオン期間(導通角)が上記のように制御されることによって、直流出力電圧EOについての定電圧化が図られているものである。
このように、二次側に備えられた第2スイッチング素子Q2の導通角制御により直流出力電圧EOについての定電圧制御が行われることから、この場合の定電圧制御動作は二次側で完結するものとなる。従ってこの図7に示した回路としては、一次側と二次側とを絶縁するために必要とされるフォトカプラPC(図16参照)を省略できるものとなる。
【0071】
続いて、図11には、第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す。
この図11に示す電源回路としても、一次側に電圧共振形コンバータを備えると共に二次側にも共振回路を備えた複合共振形スイッチングコンバータとしての構成を採る。そして、この場合も先の図1、図7の回路と同様に、入力段に備えられたブリッジ整流回路Diによる全波整流動作によって直流入力電圧Eiを得るように構成され、二次側においては半波整流回路を構成して二次側直流出力電圧EOを得るようにされている。
また、この場合も図示する絶縁コンバータトランスPITのコアの磁脚に対してはギャップを形成しないようにして、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
なお、この図11においても、既に図1において説明した部部については同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
先ず、この図11に示す回路の一次側に対しては、並列共振コンデンサCrの両端電圧VQ1として得られる電圧共振パルス電圧に対するアクティブクランプ回路が設けられる。
このアクティブクランプ回路は、クランプコンデンサC3−補助スイッチング素子Q3の直列接続回路を、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に対して並列に接続して形成されるものである。ここでは、補助スイッチング素子Q3にはMOS−FETが採用される。
補助スイッチング素子Q3のドレイン−ソース間には、クランプダイオードDD2が、例えばMOS−FETのボディダイオードにより形成される。
【0073】
この補助スイッチング素子Q3の駆動回路系としては、図示するように、補助スイッチング素子Q3のゲートに対して、コンデンサCg−駆動巻線Ngを直列接続した自励発振駆動回路が接続される。また、補助スイッチング素子Q3のゲート−ソース間には、抵抗R1が挿入される。
この場合の駆動巻線Ngは、絶縁コンバータトランスPITにおいて、一次巻線N1の巻終わり端側を巻き上げるようにして形成されており、その巻数としては例えば1T(ターン)としている。
そして補助スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q1のスイッチング周期に同期したオン/オフタイミングで以て、所定期間において導通するようにスイッチング動作を行うことになるが、これにより、スイッチング素子Q1がオフとなる期間において並列共振コンデンサCrの両端に発生する並列共振パルス波形をクランプして、そのピークレベルを抑制するようにされる。
【0074】
図12は、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示している。実線は本例の場合の波形であり、破線はギャップ=1mmの場合である。
なお、以下この第3の実施の形態において、ギャップ=1mmの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=45T
二次巻線N2=45T
一次側並列共振コンデンサCr=2200pF
二次側並列共振コンデンサC2=0.01μF
クランプコンデンサC3=0.047μF
一方、ギャップゼロの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=50T
二次巻線N2=55T
一次側並列共振コンデンサCr=1800pF
二次側並列共振コンデンサC2=6800pF
クランプコンデンサC3=0.047μF
【0075】
図12において、負荷電力Po=200W時には、スイッチング素子Q1//一次側並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端に得られる一次側並列共振電圧VQ1は、図示するように、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいては0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて並列共振パルス波形が得られており、これにより、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が電圧共振形となっていることが示される。
このようなスイッチング素子Q1のオン/オフタイミングに応じて、スイッチング素子Q1のコレクタに流れるコレクタ電流IQ1は図示する波形となる。
【0076】
また、上述したアクティブクランプ回路を形成する補助スイッチング素子Q3のゲートには、駆動巻線Ngに励起された交番電圧がコンデンサCgを介して印加されることで、補助スイッチング素子Q3のゲート−ソース間電圧として期間TOFFにて台形形状のパルスとなる波形が得られる。
このような駆動回路系の動作により、アクティブクランプ回路を形成する補助スイッチング素子Q3//クランプダイオードDD2の並列回路は、期間TON’において導通し、期間TOFF’においてオフとなるようにスイッチング動作を行うことになる。
【0077】
そして、期間TON’においては、本来、並列共振コンデンサCrへ流れる電流が、クランプコンデンサC3に対して、クランプ電流IQ2となって流れるようにされる。この結果、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFFにおいて並列共振コンデンサCrへ流れる電流は、期間TOFFにおける開始区間と終了区間のみとなるが、これによって、並列共振コンデンサCrにおける充電電流量は減少し、図示するように共振電圧VQ1としては、そのピークレベルが1/2程度にまでクランプされるようにして抑制されることになる。
【0078】
このようにして、アクティブクランプ回路を備えた電源回路では、スイッチング動作により発生する電圧共振パルス電圧のピークレベルを大幅に抑制することが可能であり、これによって、スイッチング素子や共振コンデンサ等について低耐圧品を選定することができる。また、スイッチング素子Q1のスイッチング制御範囲も拡大されるという特性が得られている。
また、このようにスイッチング素子Q1のスイッチング制御範囲も拡大されることから、交流入力電圧VACについて100V系と230V系に対応するワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として好適である。
また、アクティブクランプ回路の補助スイッチング素子Q3のための駆動回路としては、図11に示したように自励発振駆動回路としていることで、例えば他励式による場合よりも回路構成を簡略なものとしている。
【0079】
このようなスイッチング動作により、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1には図12に示すように電流I1が流れ、またそれに応じて二次巻線N2に電流I2が流れる。二次側共振電圧V2は図示するようになる。
そして図12に実線と破線で示すように絶縁コンバータトランスPITのギャップの有無により波形が異なるものとなる。
【0080】
図13は、交流入力電圧VAC=100V、及び230Vの各場合において、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び補助スイッチング素子Q3の導通時間TON’の変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
また図14は、負荷電力Po=200W時において交流入力電圧VAC=90V〜288Vの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び導通時間TON’の変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
【0081】
これらの図からわかるように、交流入力電圧VAC=100V、及び230Vの各場合において、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、ギャップ=1mmの場合に比べてギャップを無しとすることで向上している。
例えば負荷電力Po=200W時には0.5%向上し、これによって入力電力は1.1W低減できる。
また負荷電力Po=50W時には2.2%向上し、これによって入力電力は1.4W低減できる。
つまりこの場合もギャップゼロとすることで高効率化が図られ、入力電力の低減が可能となる。また交流入力電圧の変動に対しても安定して、この場合もAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、ギャップゼロとした方が高効率となっている。
【0082】
また、これら図13,図14から、図11の回路では交流入力電圧VACの変動に対しても良好な特性が得られていることがわかる。
例えば、先の図15,図16に示したような、ハーフブリッジ構成であって電流共振回路及び部分電圧共振回路を組み合わせ、二次側直流出力電圧EOに基づくスイッチング周波数制御のみを行うコンバータの構成では、90V〜288Vのワイドレンジ対応とすることができなかった。
これに対して、図11の回路によれば、図13、図14からもわかるように、交流入力電圧VACのレベルに応じてアクティブクランプ回路における補助スイッチング素子の導通時間TON’が可変される。
つまり、これにより図11に示した回路としては、二次側直流出力電圧EOに基づくスイッチング周波数制御に加えて、このような交流入力電圧レベルに応じた補助スイッチング素子によるスイッチング周波数制御も行われるものとなり、この結果、ワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として実現できるものである。
【0083】
なお、本発明としてのスイッチング電源回路としては、上記各実施の形態としての構成(図1、図7、図11)に限定されるものではなく、例えば、要部の部品素子の定数などは適宜、各種条件に応じて適切な値に変更されればよい。
また、例えば一次側スイッチングコンバータに用いられるスイッチング素子としては、各回路図に示したバイポーラトランジスタのほか、MOS−FETやIGBTなどが採用されて構わない。
また、各実施の形態では、スイッチング素子Q1に対して自励発振回路を設けたが、例えばスイッチング素子Q1をMOS−FETやIGBTで形成する場合は、これに対して他励発振回路によってスイッチング動作させる構成としてもよい。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、一次側が一石構成の電圧共振形コンバータ、二次側が半波整流方式電圧共振回路を組み合わせた複合共振形コンバータとしてのスイッチング電源回路において、二次側が半波整流回路とされることにより、絶縁コンバータトランスのコアのギャップをゼロとして一次巻線と二次巻線の結合係数を0.95程度の密結合とし、さらに直流入力電圧は、全波整流回路から得るようにしている。これにより、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)を向上させることができる。
即ち一次側が電圧共振形コンバータで二次側にも電圧共振回路を組み合わせた複合共振形コンバータにおいて、絶縁コンバータトランスPITにギャップ設ける場合の構成に比べて、AC/DC電力変換効率を向上できる。これによって入力電力を低減し、省電力化を図ることができる。
【0085】
また、このように絶縁コンバータトランスにおいてギャップを形成しないことで、ギャップ形成のためのコアの研磨工程は省略されることになる。これにより、例えば製造工程が簡略化され、また、絶縁コンバータトランスを製造するコストも低減することができる。
【0086】
さらに、上記のように絶縁コンバータトランスに巻装された一次巻線と二次巻線とが密結合となることによっては、絶縁コンバータトランスからの漏洩磁束は低減されるので、例えば絶縁コンバータトランスにショートリングを施す必要もないこととなる。そして、この点でもコストダウンが図られ、また、回路の小型軽量化が促進されるものである。
また、絶縁コンバータトランスのギャップ近傍における局部的温度上昇は発生しないことになるために、それだけ電源回路としても信頼性が向上することになる。
また絶縁コンバータトランスのギャップがゼロであることで、一対のE型フェライト磁心や、一対のU型フェライト磁心による構成が可能であり、フェライト磁心の選定の自由度が増すため設計に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施の形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態のE型コアによる絶縁コンバータトランスの構造例の説明図である。
【図3】実施の形態のU型コアによる絶縁コンバータトランスの構造例の説明図である。
【図4】第1の実施の形態の電源回路の動作を示す波形図である。
【図5】第1の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性の説明図である。
【図6】第1の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性の説明図である。
【図7】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図8】第2の実施の形態の電源回路の動作を示す波形図である。
【図9】第2の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子のオン期間TONの変化特性の説明図である。
【図10】第2の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子のオン期間TONの変化特性の説明図である。
【図11】第3の実施の形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図12】第3の実施の形態の電源回路の動作を示す波形図である。
【図13】第3の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び補助スイッチング素子の導通時間TON’の変化特性の説明図である。
【図14】第3の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び補助スイッチング素子の導通時間TON’の変化特性の説明図である。
【図15】先行技術としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図16】先行技術としてのスイッチング電源回路の他の構成例を示す回路図である。
【図17】図15又は図16に示す電源回路に採用される絶縁コンバータトランスの構造例を示す断面図である。
【図18】図15又は図16に示す電源回路の動作を示す波形図である。
【図19】図15又は図16に示す電源回路についての負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数及びスイッチング素子のオン期間の変化特性を示す図である。
【符号の説明】
1 制御回路、2 アクティブクランプ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、Q2 第2スイッチング素子、Q3補助スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N1 一次巻線、N2 二次巻線、Cr 一次側並列共振コンデンサ、C2 二次側並列共振コンデンサ、C3 クランプコンデンサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることがわかっている。
そこで、先に本出願人により、各種共振形コンバータによるスイッチング電源回路が各種提案されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
【0003】
図15の回路図は、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできる、先行技術としてのスイッチング電源回路の一例を示している。この図に示す電源回路の基本構成としては、一次側スイッチングコンバータとして自励式の電流共振形コンバータを備えている。
【0004】
この図に示す電源回路において、商用交流電源から直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路系としては、図示するようにして、2本の低速リカバリ型の整流ダイオードD1,D2と、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を接続することで、倍電圧整流回路を形成している。これにより、直列接続された2本の平滑コンデンサCi1−Ci2の両端には、交流入力電圧VACの2倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータに対して直流入力電圧として供給される。
【0005】
この図に示す電源回路のスイッチングコンバータは電流共振形とされ、図のように2つのスイッチング素子Q1,Q2をハーフブリッジ結合により接続している。この場合、スイッチング素子Q1,Q2については、バイポーラトランジスタが選定されている。
スイッチング素子Q1のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB1−共振用コンデンサCB1−駆動巻線NB1を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。スイッチング素子Q1のベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD1が図示する方向によって接続される。また、スイッチング素子Q1のコレクタ−ベース間には、起動時の電流をベースに流すための起動抵抗Rs1が接続される。
同様にして、スイッチング素子Q2のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB2−共振用コンデンサCB2−駆動巻線NB2を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD2が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗Rs2が接続される。
【0006】
ここで、スイッチング素子Q1側の自励発振駆動回路を形成する共振用コンデンサCB1のキャパシタンスと駆動巻線NB1のインダクタンスによっては直列共振回路が形成される。同様にして、スイッチング素子Q2側の自励発振駆動回路を形成する共振用コンデンサCB2のキャパシタンスと駆動巻線NB2のインダクタンスによっても直列共振回路が形成される。そして、これら直列共振回路の共振周波数によって決定されるスイッチング周波数によって、スイッチング素子Q1,Q2が自励式でスイッチング駆動されることになる。また、後述するように、ドライブトランスPRTにおいては、駆動巻線NB1,NB2が互いに逆極性となる交番電圧が励起されるようになっていることから、スイッチング素子Q1,Q2は、交互にオン/オフするようにして、スイッチング動作を行う。
【0007】
また、スイッチング素子Q2 のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列に部分共振コンデンサCpが接続されている。
この部分共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンス成分L1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0008】
ドライブトランスPRT (Power Regulating Transformer)はスイッチング素子Q1,Q2をスイッチング駆動すると共に、定電圧制御のためにスイッチング周波数を可変制御するために備えられる。
そして、このドライブトランスPRTは、駆動巻線NB1,NB2及び共振電流検出巻線NAを巻回するとともに、更にこれらの各巻線に対して制御巻線Ncが直交する方向に巻回された可飽和リアクトルとされている。なお、駆動巻線NB1と、駆動巻線NB2は、互いに逆極性の電圧が励起されるようになっている。
【0009】
絶縁コンバータトランスPIT (Power Isolation Transformer)はスイッチング素子Q1 、Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する。この絶縁トランスPITの一次巻線N1の一端は、共振電流検出巻線NAを介して、スイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタとの接点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が得られるようにされる。
【0010】
また、この場合には、一次巻線N1の他端は直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続されている。そして、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのインダクタンス成分により、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成している。
このようにして、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振動作とが複合的に得られていることになる。
【0011】
また、この場合の絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2と、この二次巻線N2よりも巻き数(ターン数)の少ない二次巻線N3が巻装されている。
二次巻線N2に対しては、図示するようにしてブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCO1が接続されることで、全波整流動作によって、平滑コンデンサCO1の両端に二次側直流出力電圧EO1が得られるようになっている。
また、二次巻線N3は、センタータップを施した上で、図示するようにして整流ダイオードDO3,DO4、及び平滑コンデンサCO2を接続することによって全波整流回路が形成され、平滑コンデンサCO2の両端に二次側直流出力電圧EO2を生成するようにされる。これら二次側直流出力電圧EO1,EO2は、それぞれ図示しない負荷に対して供給される。また、二次側直流出力電圧EO1は、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0012】
絶縁コンバータトランスPITは、例えば図17に示す構造を有している。
絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアが備えられる。そして、一次側と二次側の巻装領域が互いに独立するようにして分割された上で一体化されたボビンBに対して、一次巻線N1と、二次巻線N2をそれぞれの巻装領域に対スして巻装している。なお、一次巻線N1及び二次巻線N2は、それぞれ60μmmφのリッツ線をガラ巻きにより巻装している。また、図15においては、二次側に二次巻線N3も巻装されているが、ここでの図示は省略している。そして、中央磁脚に対しては図のようにギャップGを形成するようにしている。これによって、結合係数kとしては、例えばk≒0.8程度による疎結合の状態を得るようにしている。
なお、ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することが出来る。
【0013】
制御回路1では、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じて、制御巻線NCに流す制御電流(直流電流)レベルを可変することで、直交形制御トランスPRTに巻装された駆動巻線NBのインダクタンスLBを可変制御する。これにより、駆動巻線NBのインダクタンスLBを含んで形成されるメインスイッチング素子Q1のための自励発振駆動回路内における直列共振回路の共振条件が変化する。これは、メインスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を可変する動作となり、この動作によって二次側の直流出力電圧を安定化する。
【0014】
また、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできるスイッチング電源回路の他の例を、図16の回路図に示す。この図に示す電源回路は、他励式による電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされた共振形コンバータとしての構成を採っている。
なお、この図において図15と同一部分については同一符号を付し、共通となる構成部分については説明を省略する。
【0015】
この図に示す電源回路においては、先ず、商用交流電源ACに対して、ブリッジ整流回路Di及び1本の平滑コンデンサCiから成る全波整流平滑回路が備えられる。従ってこの場合には、全波整流動作によって、平滑コンデンサCiの両端に整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)が得られることになる。この整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。
【0016】
この場合、上記直流入力電圧を入力してスイッチングする電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q11,Q12をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q11,Q12の各ソース−ドレイン間に対しては、図示する方向により、それぞれクランプダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
また、スイッチング素子Q12のソース−ドレイン間に対しては、部分共振コンデンサCpを並列に接続することで、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と共に並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成している。これにより、図16に示す電源回路としても部分電圧共振動作が得られることになる。
【0017】
この他励式である電源回路においては、スイッチング素子Q11,Q12をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振ドライブ回路11が設けられる。この発振ドライブ回路11は、スイッチング素子Q11,Q12の各ゲートに対してドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q11,Q12は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行うようにされる。
【0018】
なお、発振ドライブ回路11は、絶縁コンバータトランスPITの一次側に追加的に巻装された低圧巻線N4と、コンデンサC4から成る整流回路によって得られた低圧直流電圧を入力して動作電源としている。また、起動時においては、起動抵抗Rsを介して整流平滑電圧Eiを入力することで起動するようになっている。
【0019】
この図に示す電源回路の絶縁コンバータトランスPITは、図17による説明と同様の構造を有する。つまり、例えばEE型コアの中央磁脚に対してギャップを形成することで、一次側と二次側の結合係数kとしては、k=0.8程度の疎結合の状態が得られるようにしているものである。
【0020】
この場合の制御回路1は、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じて可変の直流電流を生成し、フォトカプラPCを介して発振ドライブ回路11に供給する。発振ドライブ回路11では、フォトカプラPCを介して入力された制御回路1の出力に応じて、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されるようにしてスイッチング駆動する。このようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されることで、二次側直流出力電圧のレベルが安定化されることになる。
【0021】
図18は、図15に示した電源回路における要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
スイッチング素子Q2のスイッチング動作は、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2(図18(a))及びコレクタ電流IQ2(図18(b))により示される。つまり、スイッチング素子Q2がオフとなる期間TOFFにおいては、コレクタ電流IQ2は0レベルになると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ2としては、整流平滑電圧Eiによりクランプされたレベルが得られることになる。
これに対して、スイッチング素子Q2がオンとなる期間TONにおいては、図示する波形によりコレクタ電流IQ2が流れると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ2は0レベルとなる。このコレクタ電流IQ2は、期間TONにおいて一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1(図18(d))が流れるものとなる。
なお、ここでは図示していないが、スイッチング素子Q1は、スイッチング素子Q2と交互となるタイミングでオン/オフ動作していることから、スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧、及びコレクタ電流は、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2及びコレクタ電流IQ2をほぼ180°移相した波形となるものである。したがって、スイッチング素子Q1側がオンとなる期間TOFFにおける一次巻線電流I1の波形部分が、スイッチング素子Q1のコレクタ電流として流れるものとなる。
【0022】
また、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間に対して並列に接続される部分共振コンデンサCpには、図18(d)に示されるようにして、スイッチング素子Q2のターンオフ時に正極性の部分共振電流IC2が流れ、スイッチング素子Q1のターンオフ直後(スイッチング素子Q2のターンオン直後)に負極性の部分共振電流IC2が流れるようになっており、部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
そして、このような動作波形からも分かるように、スイッチング素子Q1,Q2は、ZVS(Zero Voltage Switching:零電圧スイッチング)及びZCS(Zero Current Switching:零電流スイッチング)動作が得られることになって、スイッチング損失の低減が図られている。
【0023】
また、二次巻線N2に対して接続されたブリッジ整流回路DBRの正極入力端子と負極入力端子との間の整流電圧V2は、図18(e)に示すようにブリッジ整流回路DBRの正/負の各整流電流経路のダイオードが導通するのに応じて、絶対値レベルが二次側直流出力電圧EO1のレベルでクランプされた波形が得られる。
なお、ここでの詳しい説明は省略するが、図16に示した電源回路についても、ほぼ同様の動作波形が得られる。
【0024】
また、図15に示した構成による電源回路の特性として、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、及びスイッチング素子Q2(又はQ1)のオン期間TONを図19に示す。
この図19に示すように、負荷電力Poが重くなって二次側直流出力電圧が低下するのに応じて、スイッチング周波数fsは低下するように制御され、これに応じて期間TONが長くなっていることが分かる。
また、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、例えば負荷電力Po=200W時には91.8%、負荷電力Po=150Wでは92.4%となり、この負荷電力Po=150W時において最も高効率な状態が得られている。
【0025】
なお、図15に示す電源回路として、上記図18に示す動作及び図19に示す特性を得るのにあたっては、次のように各部を選定している。
一次巻線N1=二次巻線N2=45T
一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF
部分共振コンデンサCp=330pF
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電源回路としては、電力変換効率はできるだけ高いことが好ましい。
ここで、絶縁コンバータトランスについては、上記のように、そのコアにギャップを形成し、一次巻線N1と二次巻線N2を疎結合の状態としている。これは、フェライトコアが磁気飽和状態となりにくいようにするためである。
【0027】
しかしながら、一次側巻線と二次側巻線とを疎結合の状態にしていることから、自ずとAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)の向上には限界がある。
交流入力電圧VAVが100V系で負荷電力Poが125W程度の場合は、図16のような全波整流回路Diを用いた電源回路を採用することが考えられるが、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、90%程度が限界である。
また、交流入力電圧VAVが100V系で負荷電力Poが150W以上の場合は、図15のような倍電圧整流回路を用いた電源回路を採用することが考えられるが、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、92%程度が限界である。
そして図15、図16の回路では、これ以上の高効率化は不可能とされる。
【0028】
また、絶縁コンバータトランスPITが疎結合の状態とされていることで、絶縁コンバータトランスPITからの漏洩磁束の発生レベルは高くなってしまう。このため、回路の実際としては、絶縁コンバータトランスPITに銅板のショートリングを設けるなどして対策することが必要になり、それだけ、絶縁コンバータトランスPITのコストアップ及び大型化を招くことになる。
さらに、絶縁コンバータトランスPITが疎結合の状態にある場合、ギャップG近傍の一次側巻線と二次側巻線とは、いわゆるフリンジ磁束による渦電流損失によって温度上昇しているために、信頼性の点で不利となる。
【0029】
さらに、絶縁コンバータトランスPITの中央磁脚にギャップGを形成するのにあたっては、例えばフェライト材のE型コアの中央磁脚を研磨するようにされる。この場合、絶縁コンバータトランスPITを製造するのに、研磨工程が追加されることとなってしまうので、その分コストアップになってしまうという問題も生じる。
【0030】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、スイッチング電源回路として以下のように構成することとした。
すなわち、先ず、交流入力に対して整流を行い、平滑コンデンサにより直流入力電圧を得る整流平滑手段と、上記直流入力電圧を断続する第1のスイッチング素子を備えて成るスイッチング手段と、発振回路を有し、この発振回路の発振出力により上記第1のスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備えるようにする。
そして、磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線及び二次巻線を巻装し、上記一次巻線と二次巻線とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成され、上記一次巻線に得られる上記スイッチング手段の出力を上記二次巻線に対して伝送する絶縁コンバータトランスを備える。
さらに、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線と一次側並列共振コンデンサとにより形成され、上記スイッチング手段の動作を電圧共振形とするように設けられる一次側並列共振回路と、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧に基づき半波整流動作を行うことで直流出力電圧を得るように構成される直流出力電圧生成手段を備える。
その上で、上記絶縁コンバータトランスの上記一次巻線と上記二次巻線は、上記一次巻線と上記二次巻線とに流れる電流により生じる磁束が互いに打ち消し合うように巻装されているものである。
【0031】
上記構成によれば、一次側の一石構成の電圧共振形コンバータに対し、二次側に半波整流回路が組み合わされたスイッチング電源回路が形成される。
二次側が半波整流回路とされることにより、絶縁コンバータトランスのコアのギャップをゼロとして一次巻線と二次巻線の結合係数を0.95程度の密結合とすることができる。さらに直流入力電圧は、全波整流回路から得るようにしている。これにより、電力変換効率を向上させることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明における、第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。
この図1に示す電源回路は、一次側に電圧共振形コンバータを備えると共に二次側にも共振回路を備えた複合共振形スイッチングコンバータとしての構成を採る。
【0033】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)を入力して直流入力電圧を得るための整流平滑回路として、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiからなる全波整流平滑回路が備えられ、交流入力電圧VACの等倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiを生成するようにされる。
【0034】
この電源回路に備えられる電圧共振形のスイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備えた自励式の構成を採っている。この場合、スイッチング素子Q1には、高耐圧のバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用されている。
【0035】
スイッチング素子Q1のベースと一次側アース間には、駆動巻線NB、共振コンデンサCB、ベース電流制限抵抗RBの直列接続回路よりなる自励発振駆動用の直列共振回路が接続される。
また、スイッチング素子Q1のベースは、ベース電流制限抵抗RB−起動抵抗RSを介して平滑コンデンサCi(整流平滑電圧Ei)の正極側にも接続されており、起動時のベース電流を整流平滑ラインから得るようにしている。
【0036】
また、スイッチング素子Q1のベースと平滑コンデンサCiの負極(1次側アース)間に挿入されるクランプダイオードDDにより、スイッチング素子Q1のオフ時に流れるクランプ電流の経路を形成するようにされており、また、スイッチング素子Q1のコレクタは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻終わり端と接続され、エミッタは一次側アースに対して接地される。
【0037】
また、上記スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続されている。この並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1側のリーケージインダクタンスL1とにより電圧共振形コンバータの一次側並列共振回路を形成する。そして、ここでは詳しい説明を省略するが、スイッチング素子Q1のオフ時には、この並列共振回路の作用によって並列共振コンデンサCrの両端電圧VQ1は、実際には正弦波状のパルス波形となって電圧共振形の動作が得られるようになっている。
【0038】
この図に示す直交形制御トランスPRTは、共振電流検出巻線NA、駆動巻線NB、及び制御巻線NCが巻装された可飽和リアクトルである。この直交形制御トランスPRTは、スイッチング素子Q1を駆動すると共に、定電圧制御のために設けられる。
この直交形制御トランスPRTの構造としては、図示は省略するが、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字形コアの互いの磁脚の端部を接合するようにして立体型コアを形成する。そして、この立体型コアの所定の2本の磁脚に対して、同じ巻装方向に共振電流検出巻線NA、駆動巻線NBを巻装し、更に制御巻線NCを、上記共振電流検出巻線NA及び駆動巻線NBに対して直交する方向に巻装して構成される。
【0039】
この場合、直交形制御トランスPRTの共振電流検出巻線NAは、平滑コンデンサCiの正極と絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1との間に直列に挿入される。これにより、スイッチング素子Q1のスイッチング出力は、一次巻線N1を介して共振電流検出巻線NAに伝達される。直交形制御トランスPRTにおいては、共振電流検出巻線NAに得られたスイッチング出力がトランス結合を介して駆動巻線NBに誘起されることで、駆動巻線NBにはドライブ電圧としての交番電圧が発生する。このドライブ電圧は、自励発振駆動回路を形成する直列共振回路(NB,CB)からベース電流制限抵抗RBを介して、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1のベースに出力される。これにより、スイッチング素子Q1は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。
【0040】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1のスイッチング出力を二次側に伝送する。
この絶縁コンバータトランスPITは、磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装し、一次巻線N1と二次巻線N2とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成されるものであるが、その構造例は後述する。
【0041】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻終わり端は、スイッチング素子Q1のコレクタと接続され、巻始め端は共振電流検出巻線NAの直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極(整流平滑電圧Ei)と接続されている。
【0042】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この場合、二次巻線N2に対しては、二次側並列共振コンデンサC2が並列に接続されることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって並列共振回路が形成される。この並列共振回路により、二次巻線N2に誘起される交番電圧は共振電圧となる。つまり二次側において電圧共振動作が得られる。
即ち、この電源回路では、一次側にはスイッチング動作を電圧共振形とするための並列共振回路が備えられ、二次側には電圧共振動作を得るための並列共振回路が備えられた、「複合共振形スイッチングコンバータ」としての構成を有する。
【0043】
二次巻線N2の巻終わり端には整流ダイオードDOのアノードが接続され、巻始め端は、二次側アースに接続される。また整流ダイオードDOのカソードに対して平滑コンデンサCOの正極端子が接続される。平滑コンデンサCOの負極端子は二次側アースに接続される。
このようにして、並列共振回路を形成する二次巻線N2に対しては、整流ダイオードDO及び平滑コンデンサCOから成る半波整流回路が形成されることで、平滑コンデンサCOの両端電圧として、二次側直流出力電圧EOが生成される。なお、この直流出力電圧EOは制御回路1に対して、検出電圧として分岐して入力される。
【0044】
制御回路1では、入力された二次側直流出力電圧EOのレベルを検出して、このレベル変化に応じて、制御巻線NCに流すべき直流電流である制御電流のレベルを可変する。
このようにして可変された制御電流のレベルに応じて、直交形制御トランスPRTでは、駆動巻線NBのインダクタンスLBが可変されることになる。これにより、駆動巻線NBのインダクタンスLBを含んで形成されるスイッチング素子Q1のための自励発振駆動回路内の直列共振回路の共振条件が変化するが、これは、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を可変する動作となる。
そして、上記のようにしてスイッチング周波数が可変制御されると、これに応じて、一次側並列共振回路(N1//Cr)と二次側並列共振回路(N2//C2)の共振インピーダンスが変化して、絶縁コンバータトランスPITの一次側から二次側に伝送される交番電圧レベルも変化することになる。この結果、二次巻線N2に得られた交番電圧レベルを元として生成される二次側直流出力電圧EO1のレベルも可変されることとなる。このような動作によって二次側の直流出力電圧を安定化する。
【0045】
上記絶縁コンバータトランスPITとしては、例えば図2又は図3に断面図として示した構造を有している。
図2は一対のE型コアを用いた構造例である。
絶縁コンバータトランスPITのコアとしては、図示するようにして、2つのE型コアCR1,CR2の互いの磁脚の端部を対向させるようにして組み合わせることで、EE形コアを形成する。またこの場合、E形コアCR1,CR2の各中央磁脚が対向する面にギャップは形成されない。
なお、E形コアCR1,CR2には、例えばフェライト材を用いるようにされる。
そして本実施の形態では、上記のようにして形成されるEE形コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装するために、一次/二次分割ボビンBを用いるようにされる。
【0046】
図3は一対のU型コアを用いた構造例である。
この場合、絶縁コンバータトランスPITでは、そのコアとして、図3に示すように、それぞれ2本の磁脚を有するU型コアCR11、CR12が組み合わされ、U−U型コアを形成するようにされる。
さらに、上記のようにして形成されるU−U型コアの一方の磁脚に対しては、図示するようにして一次巻線N1と二次巻線N2とを互いに分割された巻装領域に巻装したボビンBが取り付けられる。
また、上記のように形成されるU−U型コアの中央磁脚に対し、ギャップを形成しないようにしている。
【0047】
図2、図3のいずれの場合も、ギャップをゼロとすることで、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
また、先行技術のように絶縁コンバータトランスに1mmのギャップを設ける場合、例えば直流出力電圧Eo=135Vを得るためには、二次巻線N2=45T(ターン)であり、二次巻線N2の1Tあたりの誘起電圧は3V/Tであったが、本例のギャップゼロとした場合、フェライト磁心の磁束密度が向上するため、二次巻線N2=55Tとして、二次巻線N2の1Tあたりの誘起電圧を2.45V/Tに低下させ、フェライト磁心の磁束密度を先行技術の場合と同様としている。
【0048】
ところで、例えば先行技術の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITについて疎結合の状態とすることで磁気飽和を抑制していた。
一方、本例においては、絶縁コンバータトランスPITについてギャップゼロとし、密結合としている。これは、二次側整流回路が半波整流方式とされ、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と二次巻線N2の巻方向が上述のようにされていることによる。
即ちギャップゼロとしても絶縁コンバータトランスPITのフェライト磁心が磁気飽和しないのは、一次巻線N1と二次巻線N2に流れる電流I1,I2によって生じる磁束については、電流I1,I2の位相が180度で絶対値がほぼ同等であるため、N1、I1による磁束と、N2,I2による磁束は互いにうち消しあっているからである。
【0049】
ここで、この図1の回路において、絶縁コンバータトランスPITにギャップ=1mmを設ける場合と、本例、即ちギャップゼロの場合について比較した動作波形及び特性を示す。
ギャップ=1mmの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=45T
二次巻線N2=45T
一次側並列共振コンデンサCr=6800pF
二次側並列共振コンデンサC2=0.01μF
【0050】
一方、本例、即ちギャップゼロの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=50T
二次巻線N2=55T
一次側並列共振コンデンサCr=5600pF
二次側並列共振コンデンサC2=6800pF
【0051】
図4は、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示している。実線は本例の場合の波形であり、破線はギャップ=1mmの場合である。
スイッチング素子Q1のスイッチング動作は、スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧VQ1及びコレクタ電流IQ1により示される。つまり、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFFにおいては、コレクタ電流IQ1は0レベルになると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ1としては、一次側電圧共振回路による電圧共振パルス電圧が得られる。
これに対して、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいては、図示する波形によりコレクタ電流IQ1が流れると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ1は0レベルとなる。
このようなスイッチング動作により、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1には図示するように電流I1が流れ、またそれに応じて二次巻線N2に電流I2が流れる。二次側共振電圧V2は図示するようになる。
【0052】
図5は、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
また図6は、負荷電力Po=200W時において交流入力電圧VAC=90V〜140Vの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
【0053】
これらの図からわかるように、ギャップ=1mmの場合、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時に91.0%、負荷電力Po=50W時に90%である。
一方、ギャップゼロの本例の場合、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時に91.5%、負荷電力Po=50W時に91.3%である。
つまり、ギャップゼロとした本例の場合、ギャップ=1mmの絶縁コンバータトランスPITを用いた場合に比べて、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時には0.5%向上し、入力電力は1.2W低減する。
また負荷電力Po=50W時にはAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、1.3%向上し、入力電力は0.8W低減する。
即ちギャップゼロとすることで高効率化が図られ、入力電力の低減が可能となる。
また交流入力電圧の変動に対しても安定して、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、ギャップゼロの本例の方が高効率となっている。
【0054】
ギャップゼロとすることによりAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)が向上するのは、次のような理由によると考えられる。
・一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数が0.8から0.95に向上したことによって漏洩磁束が低減し、一次巻線N1と二次巻線N2の渦電流損失が低下するため。
・ギャップ周辺のフリンジ磁束によって一次巻線N1と二次巻線N2の局部的な電力損失が解消されて絶縁コンバータトランスPITの銅損が低減するため。
・一次巻線N1と二次巻線N2の増加によって、一次電流I1と二次電流I2が低減したことによって、絶縁コンバータトランスPITの銅損とスイッチング素子Q1のスイッチング損失が低減するため。
【0055】
このように図1に示した本例では、一次側が一石構成の電圧共振形コンバータ、二次側が半波整流方式電圧共振回路を組み合わせた複合共振形コンバータとしてのスイッチング電源回路において、二次側が半波整流回路とされることにより、絶縁コンバータトランスのコアのギャップをゼロとして一次巻線と二次巻線の結合係数を0.95程度の密結合とする。さらに直流入力電圧は、全波整流回路から得るようにしている。これにより、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)を向上させるものである。
【0056】
そして、負荷電力が200W以上の重負荷時であっても電力変換効率を向上させることができるが、ここで負荷電力が200W以上の重負荷時に使用される、上述した図15の回路、即ち倍電圧整流回路を用いた電流共振形コンバータで絶縁コンバータトランスPITのギャップ1.4mm、結合係数を0.77とした場合と比較すると、次のようになる。
本例の回路では、負荷電力Po=200W時には、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、図15の回路に比べて0.3%低下し、交流入力電力は0.6W増加するものとなるが、負荷電力Po=50W時には、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、0.7%向上し、交流入力電力は1.0W低減する。
つまり平均入力電力はほぼ同等とみなすことができる。
そして、図15の回路と平均入力電力をほぼ同等とできる本例の回路としては、一石のスイッチング素子Q1による構成であり、また平滑コンデンサCiは1つでよく、回路構成部品を少なくすることができる。
【0057】
続いては、図7に、第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す。
この図7に示す電源回路としても、先の図1に示した回路と同様に、一次側に電圧共振形コンバータを備えると共に二次側には並列共振回路を備えた複合共振形スイッチングコンバータとしての構成を採る。
また、この場合も図示する絶縁コンバータトランスPITのコアの磁脚に対してはギャップを形成しないようにして、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
なお、この図7において、既に図1において説明した部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
先ず、この場合、スイッチング素子Q1のベースに対しては、図示するように[共振コンデンサCB−駆動巻線NB−インダクタLB−ベース電流制限抵抗RB]の直列接続回路が接続されるものとなる。この直列接続回路は、スイッチング素子Q1を自励式により駆動するための自励発振駆動回路とされる。
この自励発振駆動回路内の駆動巻線NBは、絶縁コンバータトランスPITの一次側に巻装されることで、一次巻線N1により励起される。そして、自励発振駆動回路としては、共振コンデンサCB−駆動巻線NB−インダクタLBとによって、直列共振回路を形成する。この直列共振回路の共振周波数は、インダクタLBと駆動巻線NBのインダクタンスと、共振コンデンサCBのキャパシタンスとによって決定される。
【0059】
またこの場合、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1により励起される駆動巻線NBには、ドライブ電圧としての交番電圧が発生する。そして、このドライブ電圧は、上記したようにしてベース電流制限抵抗RBと直列共振回路(CB−NB−LB)とが設けられていることにより、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1のベースに出力されるようになる。
これにより、スイッチング素子Q1は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。そして、そのコレクタに得られるスイッチング出力を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に伝達する。
なお、この図7に示す電源回路において、上記直列共振回路により決定されるスイッチング周波数はおよそfs=66kHzとされ、これがほぼ一定に維持されている。
【0060】
また、この場合においても、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては、二次側並列共振コンデンサC2が並列に接続されることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンス(L2)と二次側並列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって並列共振回路が形成される。
つまり、この図7に示す電源回路としても、一次側に並列共振回路を備え、二次側にも電圧共振動作を得るための並列共振回路を備える「複合共振形スイッチングコンバータ」としての構成を有するものである。
また、上記二次巻線N2の巻終わり端に対しては、この場合も図のように整流ダイオードDOと平滑コンデンサCOとによる半波整流回路が備えられて、このような半波整流回路により二次側直流出力電圧EOが生成されている。
【0061】
ここで、この図7に示す電源回路の二次側においは、アクティブクランプ回路2が備えられる。
即ちこの場合、アクティブクランプ回路2として、MOS−FETの第2スイッチング素子Q2,クランプコンデンサC3,ボディダイオードのクランプダイオードDD2を備える。また、第2スイッチング素子Q2を駆動するための駆動回路系として、ドライブ巻線Ng,コンデンサCg,抵抗R1を備えて成る。
【0062】
第2スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、クランプダイオードDD2が並列に接続される。その接続形態としては、クランプダイオードDD2のアノードがソースに対して接続され、カソードがドレインに対して接続されるようになっている。
また、第2スイッチング素子Q2のドレインはクランプコンデンサC3を介して、二次巻線N2の巻終わり端部と整流ダイオードDOのアノードとの接続点に対して接続される。また、第2スイッチング素子Q2のソースは二次側アースに対して接続される。
従って、このアクティブクランプ回路2としては、上記第2スイッチング素子Q2、クランプダイオードDD2の並列接続回路に対して、クランプコンデンサC3を直列に接続して成るものとされる。そして、このようにして形成される回路を二次側並列共振回路(二次側並列共振コンデンサC2)に対して更に並列に接続して構成されるものである。
【0063】
また、第2スイッチング素子Q2の駆動回路系としては、図示するように、第2スイッチング素子Q2のゲートに対して、コンデンサCg−ドライブ巻線Ngの直列接続回路が接続される。そして、この直列接続回路の接続点と二次側アース間には、図示するように抵抗R1が挿入される。
これらコンデンサCg、ドライブ巻線Ng、抵抗R1は、第2スイッチング素子Q2のための自励式駆動回路を形成する。即ちこの自励式駆動回路からの信号電圧が第2スイッチング素子Q2のゲートに印加されスイッチング動作が行われる。
この場合のドライブ巻線Ngは、二次巻線N2の巻始め端部側に形成されており、この場合の巻数としては例えば1T(ターン)としている。
これにより、ドライブ巻線Ngには、一次巻線N1に得られる交番電圧により励起された電圧が発生する。なお、上記ドライブ巻線Ngとしては、そのターン数は1Tであればその動作は保証されるが、これに限定されるものではない。
【0064】
また、この電源回路においては、二次側に備えられる制御回路1によって第2スイッチング素子Q2のスイッチング動作がPWM制御されるようになっている。
即ち二次側直流出力電圧EOは制御回路1に供給され、制御回路1がそれに応じた直流制御電圧を第2スイッチング素子Q2のゲートに印加することで、第2スイッチング素子Q2の導通角が制御される。これによって交流入力電圧VACや負荷電力Poの変動に対する直流出力電圧EOの定電圧制御が行われる。
これは負荷電力の急激な変動に対して非常に高速に応答可能なシステムとなる。
【0065】
このような図7の構成の場合、一次側のスイッチング周波数は上述のように一定とされた上で、負荷変動等による二次側直流出力電圧EOのレベル変化に応じて、第2スイッチング素子Q2のオフ期間は一定としてオン期間を可変制御するという動作が得られる。つまり、第2スイッチング素子Q2のスイッチング動作について、その導通角を可変制御する動作が得られる。
このように第2スイッチング素子Q2の導通角が可変制御されることによっては、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に誘起される電圧は、そのパルス幅が可変されるようになる。
そして、整流ダイオードDOでは、この二次側並列共振電圧を入力して整流を行うことから、整流ダイオードDOのオン/オフタイミングも可変されることになる。
このようにして、結果的には整流ダイオードDOの導通角が制御されることで、二次側直流出力電圧EOについての安定化が図られることになる。
【0066】
図8は、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示している。実線は本例の場合の波形であり、破線はギャップ=1mmの場合である。
なお、この図8と、後述する図9、図10に示される実験結果を得るにあたっては、各部の定数を次のように設定している。
一次巻線N1=50T
二次巻線N2=55T
一次側並列共振コンデンサCr=5600pF
二次側並列共振コンデンサC2=5600pF
クランプコンデンサC3=0.47μF
図8において、スイッチング素子Q1のスイッチング動作は、スイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧(一次側共振電圧)V1及びコレクタ電流IQ1により示される(図8(a)、図8(b))。つまり、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFF1においては、コレクタ電流IQ1は0レベルになると共に、コレクタ−エミッタ間電圧VQ1としては、一次側電圧共振回路による電圧共振パルス電圧が得られる。
これに対して、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TON1においては、図示する波形によりコレクタ電流IQ1が流れると共に、コレクタ−エミッタ間電圧V1は0レベルとなる。
このようなスイッチング動作により、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1には、図8(c)に示す電流I1が流れるようになる。
【0067】
一次巻線N1に電流I1流れるようになることで、二次側においては、二次巻線N2に図8(f)に示すような電流I2が流れる。
また、この図8(e)には、アクティブクランプ回路2を形成する第2スイッチング素子Q2に流れる電流IQ2が示され、この図からもわかるように第2スイッチング素子Q2は図中のTONのタイミングでオンとなるように駆動されている。また、二次側共振電圧V2は図8(d)に示すようになり、この波形より、そのピークレベルが二次側直流出力電圧EOのレベルでクランプされていることがわかる。
【0068】
図9は、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子Q2のオン期間TONの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)について、実線は図7に示した回路の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
また図10は、負荷電力Po=200W時において交流入力電圧VAC=90V〜140Vの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子Q2のオン期間TONの変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
【0069】
これらの図より、ギャップゼロとした場合は、ギャップ=1mmの絶縁コンバータトランスPITを用いた場合に比べて、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)は、負荷電力Po=200W時には1.0%向上し、入力電力は2.5W低減する。
また負荷電力Po=50W時には、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)は5.0%向上し、入力電力は4.5W低減する。
即ち、この場合もギャップゼロとすることで高効率化が図られ、入力電力の低減が可能となる。
また交流入力電圧の変動に対しても安定して、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)は、この場合もギャップゼロとした方が高効率となる。
【0070】
また、これら図9、図10に示すように、第2スイッチング素子Q2のオン期間TONは、重負荷の条件になるに従い短くなるように制御される。また、このオン期間TONは、交流入力電圧VACが上昇するのに応じて長くなるように制御される。
すなわち、第2の実施の形態の電源回路においては、二次側に設けられる第2のスイッチング素子Q2のオン期間(導通角)が上記のように制御されることによって、直流出力電圧EOについての定電圧化が図られているものである。
このように、二次側に備えられた第2スイッチング素子Q2の導通角制御により直流出力電圧EOについての定電圧制御が行われることから、この場合の定電圧制御動作は二次側で完結するものとなる。従ってこの図7に示した回路としては、一次側と二次側とを絶縁するために必要とされるフォトカプラPC(図16参照)を省略できるものとなる。
【0071】
続いて、図11には、第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す。
この図11に示す電源回路としても、一次側に電圧共振形コンバータを備えると共に二次側にも共振回路を備えた複合共振形スイッチングコンバータとしての構成を採る。そして、この場合も先の図1、図7の回路と同様に、入力段に備えられたブリッジ整流回路Diによる全波整流動作によって直流入力電圧Eiを得るように構成され、二次側においては半波整流回路を構成して二次側直流出力電圧EOを得るようにされている。
また、この場合も図示する絶縁コンバータトランスPITのコアの磁脚に対してはギャップを形成しないようにして、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
なお、この図11においても、既に図1において説明した部部については同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
先ず、この図11に示す回路の一次側に対しては、並列共振コンデンサCrの両端電圧VQ1として得られる電圧共振パルス電圧に対するアクティブクランプ回路が設けられる。
このアクティブクランプ回路は、クランプコンデンサC3−補助スイッチング素子Q3の直列接続回路を、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に対して並列に接続して形成されるものである。ここでは、補助スイッチング素子Q3にはMOS−FETが採用される。
補助スイッチング素子Q3のドレイン−ソース間には、クランプダイオードDD2が、例えばMOS−FETのボディダイオードにより形成される。
【0073】
この補助スイッチング素子Q3の駆動回路系としては、図示するように、補助スイッチング素子Q3のゲートに対して、コンデンサCg−駆動巻線Ngを直列接続した自励発振駆動回路が接続される。また、補助スイッチング素子Q3のゲート−ソース間には、抵抗R1が挿入される。
この場合の駆動巻線Ngは、絶縁コンバータトランスPITにおいて、一次巻線N1の巻終わり端側を巻き上げるようにして形成されており、その巻数としては例えば1T(ターン)としている。
そして補助スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q1のスイッチング周期に同期したオン/オフタイミングで以て、所定期間において導通するようにスイッチング動作を行うことになるが、これにより、スイッチング素子Q1がオフとなる期間において並列共振コンデンサCrの両端に発生する並列共振パルス波形をクランプして、そのピークレベルを抑制するようにされる。
【0074】
図12は、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示している。実線は本例の場合の波形であり、破線はギャップ=1mmの場合である。
なお、以下この第3の実施の形態において、ギャップ=1mmの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=45T
二次巻線N2=45T
一次側並列共振コンデンサCr=2200pF
二次側並列共振コンデンサC2=0.01μF
クランプコンデンサC3=0.047μF
一方、ギャップゼロの場合、各定数は次のようになる。
一次巻線N1=50T
二次巻線N2=55T
一次側並列共振コンデンサCr=1800pF
二次側並列共振コンデンサC2=6800pF
クランプコンデンサC3=0.047μF
【0075】
図12において、負荷電力Po=200W時には、スイッチング素子Q1//一次側並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端に得られる一次側並列共振電圧VQ1は、図示するように、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいては0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて並列共振パルス波形が得られており、これにより、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が電圧共振形となっていることが示される。
このようなスイッチング素子Q1のオン/オフタイミングに応じて、スイッチング素子Q1のコレクタに流れるコレクタ電流IQ1は図示する波形となる。
【0076】
また、上述したアクティブクランプ回路を形成する補助スイッチング素子Q3のゲートには、駆動巻線Ngに励起された交番電圧がコンデンサCgを介して印加されることで、補助スイッチング素子Q3のゲート−ソース間電圧として期間TOFFにて台形形状のパルスとなる波形が得られる。
このような駆動回路系の動作により、アクティブクランプ回路を形成する補助スイッチング素子Q3//クランプダイオードDD2の並列回路は、期間TON’において導通し、期間TOFF’においてオフとなるようにスイッチング動作を行うことになる。
【0077】
そして、期間TON’においては、本来、並列共振コンデンサCrへ流れる電流が、クランプコンデンサC3に対して、クランプ電流IQ2となって流れるようにされる。この結果、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFFにおいて並列共振コンデンサCrへ流れる電流は、期間TOFFにおける開始区間と終了区間のみとなるが、これによって、並列共振コンデンサCrにおける充電電流量は減少し、図示するように共振電圧VQ1としては、そのピークレベルが1/2程度にまでクランプされるようにして抑制されることになる。
【0078】
このようにして、アクティブクランプ回路を備えた電源回路では、スイッチング動作により発生する電圧共振パルス電圧のピークレベルを大幅に抑制することが可能であり、これによって、スイッチング素子や共振コンデンサ等について低耐圧品を選定することができる。また、スイッチング素子Q1のスイッチング制御範囲も拡大されるという特性が得られている。
また、このようにスイッチング素子Q1のスイッチング制御範囲も拡大されることから、交流入力電圧VACについて100V系と230V系に対応するワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として好適である。
また、アクティブクランプ回路の補助スイッチング素子Q3のための駆動回路としては、図11に示したように自励発振駆動回路としていることで、例えば他励式による場合よりも回路構成を簡略なものとしている。
【0079】
このようなスイッチング動作により、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1には図12に示すように電流I1が流れ、またそれに応じて二次巻線N2に電流I2が流れる。二次側共振電圧V2は図示するようになる。
そして図12に実線と破線で示すように絶縁コンバータトランスPITのギャップの有無により波形が異なるものとなる。
【0080】
図13は、交流入力電圧VAC=100V、及び230Vの各場合において、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び補助スイッチング素子Q3の導通時間TON’の変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
また図14は、負荷電力Po=200W時において交流入力電圧VAC=90V〜288Vの変動に対する、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び導通時間TON’の変化特性を示している。AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)について、実線は本例の場合の特性であり、破線はギャップ=1mmの場合の特性である。
【0081】
これらの図からわかるように、交流入力電圧VAC=100V、及び230Vの各場合において、AC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、ギャップ=1mmの場合に比べてギャップを無しとすることで向上している。
例えば負荷電力Po=200W時には0.5%向上し、これによって入力電力は1.1W低減できる。
また負荷電力Po=50W時には2.2%向上し、これによって入力電力は1.4W低減できる。
つまりこの場合もギャップゼロとすることで高効率化が図られ、入力電力の低減が可能となる。また交流入力電圧の変動に対しても安定して、この場合もAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、ギャップゼロとした方が高効率となっている。
【0082】
また、これら図13,図14から、図11の回路では交流入力電圧VACの変動に対しても良好な特性が得られていることがわかる。
例えば、先の図15,図16に示したような、ハーフブリッジ構成であって電流共振回路及び部分電圧共振回路を組み合わせ、二次側直流出力電圧EOに基づくスイッチング周波数制御のみを行うコンバータの構成では、90V〜288Vのワイドレンジ対応とすることができなかった。
これに対して、図11の回路によれば、図13、図14からもわかるように、交流入力電圧VACのレベルに応じてアクティブクランプ回路における補助スイッチング素子の導通時間TON’が可変される。
つまり、これにより図11に示した回路としては、二次側直流出力電圧EOに基づくスイッチング周波数制御に加えて、このような交流入力電圧レベルに応じた補助スイッチング素子によるスイッチング周波数制御も行われるものとなり、この結果、ワイドレンジ対応のスイッチング電源回路として実現できるものである。
【0083】
なお、本発明としてのスイッチング電源回路としては、上記各実施の形態としての構成(図1、図7、図11)に限定されるものではなく、例えば、要部の部品素子の定数などは適宜、各種条件に応じて適切な値に変更されればよい。
また、例えば一次側スイッチングコンバータに用いられるスイッチング素子としては、各回路図に示したバイポーラトランジスタのほか、MOS−FETやIGBTなどが採用されて構わない。
また、各実施の形態では、スイッチング素子Q1に対して自励発振回路を設けたが、例えばスイッチング素子Q1をMOS−FETやIGBTで形成する場合は、これに対して他励発振回路によってスイッチング動作させる構成としてもよい。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、一次側が一石構成の電圧共振形コンバータ、二次側が半波整流方式電圧共振回路を組み合わせた複合共振形コンバータとしてのスイッチング電源回路において、二次側が半波整流回路とされることにより、絶縁コンバータトランスのコアのギャップをゼロとして一次巻線と二次巻線の結合係数を0.95程度の密結合とし、さらに直流入力電圧は、全波整流回路から得るようにしている。これにより、AC/DC電力変換効率(ηAC→DC)を向上させることができる。
即ち一次側が電圧共振形コンバータで二次側にも電圧共振回路を組み合わせた複合共振形コンバータにおいて、絶縁コンバータトランスPITにギャップ設ける場合の構成に比べて、AC/DC電力変換効率を向上できる。これによって入力電力を低減し、省電力化を図ることができる。
【0085】
また、このように絶縁コンバータトランスにおいてギャップを形成しないことで、ギャップ形成のためのコアの研磨工程は省略されることになる。これにより、例えば製造工程が簡略化され、また、絶縁コンバータトランスを製造するコストも低減することができる。
【0086】
さらに、上記のように絶縁コンバータトランスに巻装された一次巻線と二次巻線とが密結合となることによっては、絶縁コンバータトランスからの漏洩磁束は低減されるので、例えば絶縁コンバータトランスにショートリングを施す必要もないこととなる。そして、この点でもコストダウンが図られ、また、回路の小型軽量化が促進されるものである。
また、絶縁コンバータトランスのギャップ近傍における局部的温度上昇は発生しないことになるために、それだけ電源回路としても信頼性が向上することになる。
また絶縁コンバータトランスのギャップがゼロであることで、一対のE型フェライト磁心や、一対のU型フェライト磁心による構成が可能であり、フェライト磁心の選定の自由度が増すため設計に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施の形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態のE型コアによる絶縁コンバータトランスの構造例の説明図である。
【図3】実施の形態のU型コアによる絶縁コンバータトランスの構造例の説明図である。
【図4】第1の実施の形態の電源回路の動作を示す波形図である。
【図5】第1の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性の説明図である。
【図6】第1の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性の説明図である。
【図7】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図8】第2の実施の形態の電源回路の動作を示す波形図である。
【図9】第2の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子のオン期間TONの変化特性の説明図である。
【図10】第2の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC→DC)及び第2スイッチング素子のオン期間TONの変化特性の説明図である。
【図11】第3の実施の形態のスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図12】第3の実施の形態の電源回路の動作を示す波形図である。
【図13】第3の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び補助スイッチング素子の導通時間TON’の変化特性の説明図である。
【図14】第3の実施の形態の電源回路のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及び補助スイッチング素子の導通時間TON’の変化特性の説明図である。
【図15】先行技術としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図16】先行技術としてのスイッチング電源回路の他の構成例を示す回路図である。
【図17】図15又は図16に示す電源回路に採用される絶縁コンバータトランスの構造例を示す断面図である。
【図18】図15又は図16に示す電源回路の動作を示す波形図である。
【図19】図15又は図16に示す電源回路についての負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数及びスイッチング素子のオン期間の変化特性を示す図である。
【符号の説明】
1 制御回路、2 アクティブクランプ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、Q2 第2スイッチング素子、Q3補助スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N1 一次巻線、N2 二次巻線、Cr 一次側並列共振コンデンサ、C2 二次側並列共振コンデンサ、C3 クランプコンデンサ
Claims (5)
- 交流入力に対して整流を行い、平滑コンデンサにより直流入力電圧を得る整流平滑手段と、
上記直流入力電圧を断続する第1のスイッチング素子を備えて成るスイッチング手段と、
発振回路を有し、この発振回路の発振出力により上記第1のスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線及び二次巻線を巻装し、上記一次巻線と二次巻線とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成され、上記一次巻線に得られる上記スイッチング手段の出力を上記二次巻線に対して伝送する絶縁コンバータトランスと、
上記絶縁コンバータトランスの一次巻線と一次側並列共振コンデンサとにより形成され、上記スイッチング手段の動作を電圧共振形とするように設けられる一次側並列共振回路と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧に基づき半波整流動作を行うことで直流出力電圧を得るように構成される直流出力電圧生成手段と、を備えると共に、
上記絶縁コンバータトランスの上記一次巻線と上記二次巻線は、上記一次巻線と上記二次巻線とに流れる電流により生じる磁束が互いに打ち消し合うように巻装されている、
ことを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記直流出力電圧のレベルに応じて上記発振回路による発振周波数を制御し、上記第1のスイッチング素子のスイッチング周波数を可変制御することで、上記直流出力電圧についての定電圧制御を行うようにされる定電圧制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - さらに、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側共振コンデンサを接続することで形成される二次側共振回路と、
上記二次側共振コンデンサに対して並列に、クランプコンデンサと第2のスイッチング素子とによる直列接続回路を備えて形成されるアクティブクランプ回路とを備えると共に、
上記直流出力電圧に基づく直流制御信号を上記第2のスイッチング素子に印加して上記第2のスイッチング素子の導通角制御を行うことで、上記直流出力電圧についての定電圧制御を行う定電圧制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - さらに、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線を巻き上げて形成された駆動巻線とコンデンサとにより形成される駆動用共振回路と、
クランプコンデンサと補助スイッチング素子とによる直列接続回路を備え、上記駆動用共振回路によりスイッチング駆動されることで、上記スイッチング手段がオフとなる期間に上記一次側並列共振回路に発生する電圧をクランプするように構成されたアクティブクランプ手段とを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記絶縁コンバータトランスのコアは、一対のE型コアまたは一対のU型コアで形成されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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