JP2004064889A - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】負荷電力が50W以下の軽負荷時における複合共振形コンバータの電力変換効率の向上を図る。
【解決手段】一次側に4つのスイッチング素子Q1〜Q4により構成したフルブリッジ結合の電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路、複合共振コンバータにおいて、一次側直流入力整流回路を全波整流回路によって構成したうえで、絶縁コンバータトランスPITのコアのギャップをゼロとして、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合にする。さらに二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧を2V以下となるように二次巻線N2の巻線数を選定すると共に、二次巻線N2に対して二次側部分電圧共振回路を並列に接続するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】一次側に4つのスイッチング素子Q1〜Q4により構成したフルブリッジ結合の電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振回路、複合共振コンバータにおいて、一次側直流入力整流回路を全波整流回路によって構成したうえで、絶縁コンバータトランスPITのコアのギャップをゼロとして、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合にする。さらに二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧を2V以下となるように二次巻線N2の巻線数を選定すると共に、二次巻線N2に対して二次側部分電圧共振回路を並列に接続するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることがわかっている。
そこで、先に本出願人により、各種共振形コンバータによるスイッチング電源回路が各種提案されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
【0003】
図12は、先に本出願人により提案された発明に基づいて構成することのできる電源回路の構成例を示す回路図である。この電源回路には自励式の電流共振形コンバータが採用されている。
【0004】
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)から直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路系として、図示するように、2本の低速リカバリ型の整流ダイオードD1,D2と、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を接続してなる倍電圧整流回路が設けられる。この倍電圧整流回路では、直列接続された平滑コンデンサCi1−Ci2の両端に、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。
この電源回路のスイッチングコンバータは、図示するように、2つのスイッチング素子Q1,Q2をハーフブリッジ結合したうえで、平滑コンデンサCi1の正極側の接続点とアース間に対して挿入するようにして接続されている。この場合、スイッチング素子Q1,Q2には、耐圧400Vのバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用される。
【0005】
このスイッチング素子Q1,Q2の各コレクタ−ベース間には、それぞれ起動抵抗RS1,RS2が挿入される。
また、スイッチング素子Q1,Q2のベース−エミッタ間にはクランプダイオードDD1,DD2がそれぞれ挿入されている。この場合、クランプダイオードDD1のカソードはスイッチング素子Q1のベースと接続され、アノードはスイッチング素子Q1のエミッタと接続される。また、同様にクランプダイオードDD2のカソードはスイッチング素子Q2のベースと接続され、アノードはスイッチング素子Q2のエミッタと接続される。
【0006】
スイッチング素子Q1のベースとスイッチング素子Q2のコレクタ間に対しては、ベース電流制限抵抗RB1、共振用コンデンサCB1、駆動巻線NB1からなる直列接続回路が挿入される。共振用コンデンサCB1は自身のキャパシタンスと、駆動巻線NB1のインダクタンスLB1と共に直列共振回路を形成する。
同様に、スイッチング素子Q2のベースと一次側アース間に対しては、ベース電流制限抵抗RB2、共振用コンデンサCB2、駆動巻線NB2からなる直列接続回路が挿入されており、共振用コンデンサCB2と駆動巻線NB2のインダクタンスLB2と共に自励発振用の直列共振回路を形成する。
【0007】
直交形制御トランスPRT(Power Regulating Transformer)は、スイッチング素子Q1,Q2を駆動すると共に、後述するようにして定電圧制御を行う。
この直交形制御トランスPRTは、駆動巻線NB1,NB2及び共振電流を検出する共振電流検出巻線NAが巻回され、更にこれらの各巻線に対して制御巻線NCが直交する方向に巻回された直交型の可飽和リアクトルである。
この直交形制御トランスPRTの構造としては、図示は省略するが、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字型コアの互いの磁脚の端部を接合するようにして立体型コアを形成する。そして、この立体型コアの所定の2本の磁脚に対して、同じ巻装方向に共振電流検出巻線NA、駆動巻線NBを巻装し、更に制御巻線NCを、上記共振電流検出巻線NA、及び駆動巻線NBに対して直交する方向に巻装して構成される。
【0008】
この場合、駆動巻線NB1の一端は、共振用コンデンサCB1−抵抗RB1の直列接続を介してスイッチング素子Q1のベースに接続され、他端はスイッチング素子Q2のコレクタに接続される。駆動巻線NB2の一端はアースに接地されると共に、他端は共振用コンデンサCB2−抵抗RB2の直列接続を介してスイッチング素子Q2のベースと接続されている。駆動巻線NB1と駆動巻線NB2は互いに逆極性の電圧が発生するように巻装されている。
また、共振電流検出巻線NAの一端はスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタとの接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他端は後述する絶縁コンバータトランス(Power Isolation Transformer)PIT1の一次巻線N1の一端に対して接続される。なお、共振電流検出巻線NAの巻数(ターン数)は例えば1T(ターン)程度とされている。
【0009】
絶縁コンバータトランスPIT1は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPIT1の構造としては、図20に示すように、例えばフェライト材によるE字型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたE−E字型コアが備えられ、このE−E字型コアの中央磁脚に対して、分割ボビンBを利用して一次巻線N1と二次巻線N2(N3)とが分割された状態で巻装されている。この場合、分割ボビンBには、約60mmφのリッツ線を、がら捲きにより巻回して一次巻線N1と二次巻線N2(N3)とをそれぞれ巻装して構成するようにしている。
またこの場合、E−E字型コアの中央磁脚に対しては0.5mm〜1.0mmのギャップGを形成するようにしている、これによって、一次巻線N1と二次巻線N2(N3)の結合係数kとしては、例えばk≒0.85の疎結合の状態を得るようにしている。
【0010】
絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1の一端は、共振電流検出巻線NAを介してスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が得られるようにされる。また、一次巻線N1の他端は、例えばフィルムコンデンサからなる一次側直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接地されている。
この場合、上記一次側直列共振コンデンサC1、及び一次巻線N1は直列に接続され、この一次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンス及び一次巻線N1(直列共振巻線)を含む絶縁コンバータトランスPIT1の漏洩インダクタンス(リーケージインダクタンスL1)成分とにより、スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための直列共振回路を形成するようにしている。
【0011】
また、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間に対しては、一次側部分電圧共振用の一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列に接続されており、この一次側部分電圧共振コンデンサCpと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とにより部分電圧共振回路を形成する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2を零電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)動作、及び零電流スイッチング(ZCS:Zero Current Switching)動作させるようにしている。
【0012】
この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた形式を採っていることになる。本明細書では、このようなスイッチングコンバータについて、複合共振形コンバータということにする。
【0013】
また、この図における絶縁コンバータトランスPIT1の二次側には、二次巻線N2,N3がそれぞれ独立して巻装されている。そして、二次巻線N2に対してはブリッジ整流ダイオードDBR及び平滑コンデンサCO1を接続することで、二次側直流出力電圧EO1を生成するようにしている。また、二次巻線N3に対してはセンタータップを設けた上で、二次巻線N3に、それぞれ整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO2を図のように接続することで[整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO2]から成る両波整流回路を形成して二次側直流出力電圧EO2を生成するようにしている。
この場合、二次側直流出力電圧EO1は制御回路1に対しても分岐して入力される。
【0014】
制御回路1は、例えば二次側の直流出力電圧EO1のレベルに応じてそのレベルが可変される直流電流を、制御電流として直交形制御トランスPRTの制御巻線NCに供給することにより後述するようにして定電圧制御を行う。
【0015】
上記構成による電源回路のスイッチング動作としては、先ず商用交流電源が投入されると、例えば起動抵抗RS1,RS2を介してスイッチング素子Q1,Q2のベースに起動電流が供給され、例えばスイッチング素子Q1が先にオンになったとすれば、スイッチング素子Q2はオフとなるように制御される。そしてスイッチング素子Q1の出力として、共振電流検出巻線NA→一次巻線N1→一次側直列共振コンデンサC1に共振電流が流れ、この共振電流が零となる近傍でスイッチング素子Q2がオン、スイッチング素子Q1がオフとなるように制御される。そして、スイッチング素子Q2を介して先とは逆方向の共振電流が流れる。以降、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオンとなる自励式のスイッチング動作が開始される。
このように、平滑コンデンサCiの端子電圧を動作電源としてスイッチング素子Q1,Q2が交互に開閉を繰り返すことによって、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1に共振電流波形に近いドライブ電流を供給し、二次巻線N2,N3に交番出力を得る。
【0016】
また、直交形制御トランスPRTによる定電圧制御は次のようにして行われる。
例えば、交流入力電圧や負荷電力の変動によって二次側直流出力電圧EO1が変動したとすると、制御回路1では二次側直流出力電圧EO1の変動に応じて制御巻線NCに流れる制御電流のレベルを可変制御する。
この制御電流により直交形制御トランスPRTに発生する磁束の影響で、直交形制御トランスPRTにおいては飽和傾向の状態が変化し、駆動巻線NB1,NB2のインダクタンスを変化させるように作用する。これにより自励発振回路の条件が変化してスイッチング周波数fsが変化するように制御される。
この図に示す電源回路では、一次側直列共振コンデンサC1、及び一次巻線N1の直列共振回路の共振周波数よりも高い周波数領域でスイッチング周波数fsを設定しており、例えばスイッチング周波数fsが高くなると、直列共振回路の共振周波数に対してスイッチング周波数fsが離れていくようにされる。これにより、スイッチング出力に対する一次側直列共振回路の共振インピーダンスは高くなる。
このようにして共振インピーダンスが高くなることで、一次側直列共振回路の一次巻線N1に供給されるドライブ電流が抑制される結果、二次側直流出力電圧が抑制されることになって、定電圧制御が図られることになる。
【0017】
また、図13は、先に本出願人により提案された発明に基づいて構成することのできる、他の電源回路の構成例を示す回路図である。なお、上記図12に示した電源回路と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
この図13に示す電源回路も、2つのスイッチング素子Q11,Q12スイッチング素子をハーフブリッジ結合した電流共振形コンバータが備えられているが、その駆動方式は他励式とされている。この場合、スイッチング素子Q11,Q12にはMOS−FETもしくはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が採用される。
【0018】
またこの場合は、ブリッジ整流回路Di、及び平滑コンデンサCiからなる整流平滑回路により、商用交流電源ACの交流入力電圧VACを整流平滑化して、例えば交流入力電圧VACのピーク値の1倍に対応する直流入力電圧を生成するようにされる。
【0019】
スイッチング素子Q11,Q12の各ゲートは、発振・ドライブ回路11に接続されている。また、スイッチング素子Q11のドレインは、平滑コンデンサCiの正極と接続され、ソースは一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続される。また、スイッチング素子Q12のドレインは、上記スイッチング素子Q11のソースと接続され、そのソースは一次側アースに接続されている。
また、ここでも、一次側部分電圧共振用の一次側部分電圧共振コンデンサCpがスイッチング素子Q12のドレイン−ソース間に対して並列に接続される。
更に、各スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間に対しては、クランプダイオードDD1,DD2が並列に接続されている。
【0020】
上記スイッチング素子Q11,Q12は、発振・ドライブ回路11によって、先に図12において説明したのと同様のスイッチング動作が得られるようにスイッチング駆動される。
つまり、この場合の制御回路1は直流出力電圧EO1の変動に応じて変動したレベルの電流又は電圧を、フォトカプラPCを介して一次側の発振・ドライブ回路11に対して供給する。発振・ドライブ回路11では、直流出力電圧EO1の安定化が図られるように制御回路1からの出力レベルに応じて、その周期が可変されたスイッチング駆動信号(電圧)をスイッチング素子Q11,Q12のゲートに対して交互に出力する。これによって、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数fsが可変されることになる。
【0021】
この場合、発振・ドライブ回路11は、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1に対してタップ出力を設けることで形成した三次巻線N4に対して、整流ダイオードD3及びコンデンサC3から成る整流回路によって得られた低圧の直流電圧E3を入力して動作電源としている。また、起動時においては、起動抵抗RSを介して整流平滑電圧Eiを入力することで起動するようになっている。
【0022】
図14は、上記図12に示した電源回路の要部の動作波形を示した図である。
なお、図13に示した電源回路の動作波形もほぼ同様とされる。
この場合、先ず、商用交流電源が投入されると、例えば起動抵抗RS1を介してスイッチング素子Q1のベースに起動電流が供給され、スイッチング素子Q1がオンになると、スイッチング素子Q2はオフとなるように制御される。そしてスイッチング素子Q1の出力として、一次巻線N1→一次側直列共振コンデンサC1に共振電流が流れ、この共振電流が零となる近傍でスイッチング素子Q2がオン、スイッチング素子Q1がオフとなるように制御される。以降はスイッチング素子Q1,Q2が交互にオンとなるように制御される。
これにより、スイッチング素子Q2がオンとなる期間TON、及びオフとなる期間TOFFにおけるスイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2は、図14(a)に示すような波形となり、スイッチング素子Q2のコレクタには、図14(b)に示すような波形のコレクタ電流IQ2が流れることになる。
【0023】
この場合、一次側直列共振コンデンサC1に流れる一次側直流共振電流I1は、図14(c)に示されているような正弦波となり、スイッチング素子Q1に負方向の一次側直流共振電流I1が流れ、スイッチング素子Q2には正方向の一次側直流共振電流I1が流れることになる。換言すれば、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオン/オフを行うことによって、上記一次側直列共振コンデンサC1と直列接続された一次巻線N1には、共振電流波形に近いドライブ電流が供給されるということがいえる。この一次巻線N1に流れる電流に応じて発生する交番電圧によって、二次巻線N2にも交番電圧が励起されることになる。
そして、上記のようにして二次巻線N2に発生する交番電圧に応じて、二次巻線N2に接続されるブリッジ整流回路DBRの正極側の入力端子と負極側の入力端子との間の端子間電圧V2としては、図14(e)に示す波形が得られることになる。つまり、ブリッジ整流回路DBRに整流電流が流れる期間において整流平滑電圧E0の絶対値レベルでクランプされた波形が得られる。(また、このような端子間電圧V2によっては、二次巻線N2に流れる電流が不連続モードであることも示されている。)
【0024】
また、スイッチング素子Q2に対して並列に接続されている一次側部分電圧共振コンデンサCpには、図14(d)に示されているように、スイッチング素子Q1,Q2が、それぞれターンオンまたはターンオフ時の短期間のみ共振電流ICPが流れることになる。つまり、部分電圧共振動作を行うようにされる。
これにより、スイッチング素子Q1,Q2をZVS動作及びZCS動作としてスイッチング素子Q1,Q2におけるスイッチング損失の低減を図るようにしている。
【0025】
図15は、上記図12に示した電源回路の特性例として、VAC=100V時において、二次側直流出力電圧EO1の負荷電力Poが0W〜200Wまで変動した時のAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、スイッチング素子Q2の期間TONの変化特性を示した図である。
【0026】
この図に示すように、図12に示した電源回路では負荷電力Poが重くなるにしたがって、スイッチング周波数fsが低くなるように制御されている。またこれと同時にスイッチング素子Q2がオンとなる期間TONが長くなるように制御されている。
また、この場合のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時に約91.8%、負荷電力Po=150W時に約92.4%となり、負荷電力Po=150W時において最も高効率な状態が得られている。
【0027】
なお、上記図14に示す動作及び図15に示す特性を得るにあたっては、図12に示す電源回路の部品素子の定数を次のように選定している。
絶縁コンバータトランスPIT1については、一次巻線N1=二次巻線N2=45Tを巻装している。また、一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF
一次側部分電圧共振コンデンサCp=330pFを選定している。
【0028】
また、図16は、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできる、先行技術としてのスイッチング電源回路のさらに他の回路例を示した回路図である。なお、上記図12、図13に示した電源回路と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
この図に示す電源回路は、他励式による電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされている。また、商用交流電源AC=100V系の条件に対応した構成が採られている。
【0029】
この図に示す電源回路においても、上記図13に示した電源回路と同様、入力整流回路として全波整流平滑回路が備えられる。
また、この電源回路においては、スイッチング素子Q11,Q12をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振・ドライブ・保護回路2が設けられる。この発振・ドライブ・保護回路2は、発振回路、駆動回路、及び保護回路を有している。そして、発振回路及び駆動回路によって、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート電圧)をスイッチング素子Q11,Q12の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q11,Q12は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
また、発振・ドライブ・保護回路2の保護回路は、例えば当該電源回路における過電流、過電圧の状態を検出して、回路が保護されるようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。
【0030】
絶縁コンバータトランスPIT1の二次側には、二次巻線N2と、この二次巻線N2よりも少ない巻数による二次巻線N2Aが巻装されている。これらの二次側巻線には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
【0031】
二次巻線N2は、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0032】
また、二次巻線N2Aも、センタータップを二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO3,DO4、及び平滑コンデンサCO2から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO2の両端電圧として二次側直流出力電圧EO2が得られる。また、二次側直流出力電圧EO2は、制御回路1のための動作電源としても供給される。
【0033】
制御回路1は、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ・保護回路2に供給する。発振・ドライブ・保護回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q11,Q12を駆動する。このようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されることで、二次側直流出力電圧のレベルが安定化されることになる。
【0034】
ここで、上記構成による電源回路において、発振・ドライブ・保護回路2の動作電源として供給される低圧の直流電圧E3は、約1.7Vが得られるようにされている。
また、上記構成では、両波整流方式により二次側直流電圧EO1を得ているが、例えばセンタータップを設ける代わりに、ブリッジ整流回路を接続するなどして、全波整流方式により得るようにしてもよい。
また、二次側直流電圧EO1としては、約135Vが得られるようにされている。そして、この条件の下で、二次巻線N2のターン数Tについて、3V/T以下となるようにすれば、整流ダイオードDO1,DO2に流れる二次巻線電流は連続モードとなる。また、5V/Tとなるようにすれば不連続モードとなる。
【0035】
図17は、上記図16に示した電源回路の動作をスイッチング周期により示す波形図である。ここでは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=125W時の条件での動作が示されている。
この場合、スイッチング素子Q12がオンとなる期間TON、及びオフとなる期間TOFFにおけるスイッチング素子Q12のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2は、図17(a)に示すような波形となり、スイッチング素子Q12のコレクタには、図17(b)に示すような波形のコレクタ電流IQ2が流れることになる。
【0036】
そして、一次巻線N1の励磁インダクタンスL1により負極性の鋸歯状波電流がコレクタ電流IQ2として流れている期間Aは、負荷側に電力伝送を行わない非電力伝送期間となる。
これに対して、一次巻線N1のリーケージインダクタンス成分L1lと直列共振コンデンサC1の静電容量とによる正極性の共振電流がコレクタ電流IQ2として流れる期間Bは、負荷側に電力伝送を行う電力伝送期間となる。
【0037】
この場合、一次側直列共振コンデンサC1には、図17(d)に示すような一次巻線電流I1が流れることで、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1の両端には、図17(c)に示すように、期間TONと期間TOFFとで極性が反転する波形の電圧V1が得られる。
また、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には図17(f)に示すような二次側電流IDが流れることで、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間の両端電圧V2は、図17(e)に示すような波形の出力が得られることになる。
【0038】
図18には、上記図17に示したスイッチング周期による波形図の比較として、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=25W時の条件における動作をスイッチング周期により示した波形図である。
この場合、スイッチング素子Q12がオンとなる期間TON、及びオフとなる期間TOFFにおけるスイッチング素子Q12のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2は、図18(a)に示すような波形となり、スイッチング素子Q12のコレクタには、図18(b)に示すような波形のコレクタ電流IQ2が流れることになる。そして、この場合は、上記図17(b)に示した波形と比較すれば分かるように、非電力伝送期間Aが拡大している。このことから負荷電力Po=25W時(軽負荷時)には、負荷側への電力伝送が減少して電力変換効率が低下していることが分かる。
【0039】
この場合の一次側直列共振コンデンサC1には、図18(d)に示すような正弦波状の一次巻線電流I1が流れることで、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1の両端には、図18(c)に示すように波形の電圧V1が得られる。また、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には図18(f)に示すような二次側電流IDが流れることで、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間の両端電圧V2は、図18(e)に示すような波形の出力が得られることになる。
【0040】
また、図19は、上記図16に示した電源回路についての、負荷電力変動に対する、電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、及びスイッチング出力電流IQ1,IQ2の変化特性を示している。ここでは、交流入力電圧VAC=100Vで、負荷電力Po=0W〜125Wの条件での特性が示されている。
この場合、電力変換効率(ηAC/DC)については重負荷となるのに従って高くなっていく傾向を有していることがわかる。そして、負荷電力Po=125W時においては電力変換効率(ηAC/DC)は約92%となっているが、負荷電力Po=50W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約89%、負荷電力Po=25W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約82.5%まで低下している。そして、この場合は、無負荷時の交流入力電力は4.2Wになっている。
また、スイッチング周波数fsは、軽負荷となるのに従って比例的に上昇していく傾向を有している。
また、負荷電力Po=125W時におけるスイッチング出力電流IQ1,IQ2のピーク電流値は3.5Ap、負荷電力Po=25W時におけるスイッチング出力電流IQ1,IQ2のピーク電流値は3.0Apとなる。
【0041】
上記図16に示した電源回路の構成によると、負荷電力Po=25W時においては、一次巻線N1のリーケージインダクタンス成分L1l(L1l=42μH)と直列共振コンデンサC1の静電容量とにより、正極性の共振電流が流れ、負荷側に電力伝送を行う電力伝送期間Bが短くなる。そして、一次巻線N1の励磁インダクタンスL1=(L1=165μH)による負極性の鋸歯状波電流が流れる非電力伝送期間Aが長くなる。このため、軽負荷時の電力変換効率(ηAC/DC)が低下している。
【0042】
なお、上記図17〜図19の各図に示す測定結果を得るにあたっては、図16に示した電源回路について、下記のようにして部品素子を選定している。
先ず、絶縁コンバータトランスPIT1については、ギャップ長G=1.0mmで、一次巻線N1=24T、二次巻線N2=23T+23T、三次巻線N4=2Tを巻装している。また、この場合においては二次側電流は不連続モードとなる。
また、一次側直列共振コンデンサC1=0.068μF、一次側部分電圧共振コンデンサCp=470μFを選定している。
【0043】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したような先行技術としての電源回路は、負荷電力Poが減少するにしたがって、負荷側に電力伝送を行わない非電力伝送期間Aが拡大するため、これに伴って、電力変換効率(ηAC/DC)が低下する。例えば負荷電力Po=50W時には電力変換効率(ηAC/DC)が89%となり、負荷電力Po=25W時には電力変換効率(ηAC/DC)が82.5%まで低下する。また、負荷電力Po=0W時である無負荷時においても交流入力電力として4.2Wが必要とされていた。つまり、先行技術としての電源回路においては、例えば50W以下の軽負荷時における電力変換効率(ηAC/DC)が低下するという欠点があった。
【0044】
また、絶縁コンバータトランスPIT1のコアCR1,CR2の中央磁脚にはギャップGを設ける必要がある。このため、絶縁コンバータトランスPIT1の外周に銅板のショートリングを設けるなどのシールド対策が必要になり、それだけ、絶縁コンバータトランスのコストアップ及び大型化を招くことになる。
【0045】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑動作を行うことで、整流平滑電圧を生成する整流平滑手段と、入力された直流入力電圧を断続するスイッチング素子を備えて形成されるスイッチング手段と、スイッチング素子をスイッチング駆動する駆動手段とを備える。
そして、磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線及び二次巻線を巻装することで、上記一次巻線と二次巻線とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるようにされると共に、上記二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように上記二次巻線の巻線数を設定して構成され、上記一次巻線に得られる上記スイッチング手段の出力を二次巻線に対して伝送する絶縁コンバータトランスを備える。
さらに、少なくとも、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、スイッチング手段を形成するスイッチング素子のうち、所定のスイッチング素子に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、スイッチング手段を形成するスイッチング素子のターンオフ期間においてのみ部分電圧共振動作を行う一次側部分電圧共振回路とを備える。
さらにまた、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して整流動作を行って二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、二次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、直流出力電圧生成手段を形成する整流ダイオード素子がオフとなるタイミングで部分共振動作を行う二次側部分電圧共振回路と、二次側直流出力電圧のレベルに応じて、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された定電圧制御手段とを備えるようにした。
【0046】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路としては、複合共振形コンバータとして、一次側は、電流共振形スイッチングコンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた基本構成を採る。また、この場合には、二次側に対しても二次側部分電圧共振回路を設けるようにしている。そのうえで、絶縁コンバータトランスのコアにギャップを形成しないようにして、一次巻線と二次巻線との結合係数を所要の結合係数以上の密結合にすると共に、二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように選定する。
つまり、上記構成においては、一次側電流共振形コンバータ、一次側部分電圧共振回路、及び二次側部分電圧共振回路による複合共振形コンバータとして、密結合の絶縁コンバータトランスによる一次側から二次側への電力伝送を行うようにされている。そしてこの構成の下で、絶縁コンバータトランスの二次巻線の巻線数を上記した条件の下で設定するようにしている。これによっては、二次巻線の巻線数がその分増加されることになるが、これに伴って、二次巻線のリーケージインダクタンスも増加されることとなる。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明していく。
図1は、本発明の第1実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。
この図1に示す電源回路は、一次側に4石構成の自励式による電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振コンデンサによる一次側部分電圧共振回路を備え、二次側に二次側部分電圧共振コンデンサによる二次側部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータとしてのスイッチング電源回路である。
この電源回路においては、交流電源ACに対してコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタとしてコモンモードチョークコイルCMCとアクロスコンデンサCL が設けられ、いわゆるラインフィルタを構成する。
そして商用交流電源から直流入力電圧を生成するための整流回路系としては、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiからなる全波整流平滑回路が備えられ、交流入力電圧VACの等倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiを生成するようにされる。
【0048】
この図に示す電流共振形コンバータは、図のように4つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4をフルブリッジ結合方式によって接続されている。この場合、スイッチング素子Q1〜Q4は、200V耐圧のバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用されている。
この場合、スイッチング素子Q1,Q3のコレクタは、整流平滑電圧Eiのライン(平滑コンデンサCiの正極端子)と接続される。
そして、スイッチング素子Q1のエミッタは、スイッチング素子Q2のコレクタと接続され、スイッチング素子Q2のエミッタは一次側アースに対して接続される。
また、スイッチング素子Q3のエミッタは、スイッチング素子Q4のコレクタと接続され、スイッチング素子Q4のエミッタは一次側アースに対して接続される。
【0049】
スイッチング素子Q1のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB1−共振用コンデンサCB1−駆動巻線NB1を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。ここで、共振用コンデンサCB1−駆動巻線NB1の直列接続は、共振用コンデンサCB1のキャパシタンスと、駆動巻線NB1のインダクタンスによって直列共振回路を形成しており、この直列共振回路の共振周波数によってスイッチング周波数が決定される。また、ベース電流制限抵抗RB1は、自励発振駆動回路からスイッチング素子Q1のベースに流すべき駆動信号としてのベース電流レベルを調整する。
また、スイッチング素子Q1のベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD1が図示する方向によって接続される。また、スイッチング素子Q1のコレクタ−ベース間には、起動時の電流をベースに流すための起動抵抗RS1が接続される。
【0050】
同様に、スイッチング素子Q2のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB2−共振用コンデンサCB2−駆動巻線NB2を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB2−駆動巻線NB2によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD2が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗RS2が接続される。
【0051】
また同じくスイッチング素子Q3のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB3−共振用コンデンサCB3−駆動巻線NB3を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB3−駆動巻線NB3によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD3が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗RS3が接続される。
【0052】
また同じくスイッチング素子Q4のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB4−共振用コンデンサCB4−駆動巻線NB4を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB4−駆動巻線NB4によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD4が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗RS4が接続される。
【0053】
スイッチング素子Q2,Q4のコレクタ−エミッタ間に対しては、それぞれ並列に一次側部分電圧共振コンデンサCp1,Cp2が接続されている。
この一次側部分電圧共振コンデンサCp1のキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のインダクタンス成分によって、それぞれ並列共振回路(一次側部分電圧共振回路)を形成する。
そして、一次側部分電圧共振コンデンサCp1は、スイッチング素子Q2,Q3がターンオフする短期間にのみ電圧共振する部分電圧共振動作が得られる。また、一次側部分電圧共振コンデンサCp2はスイッチング素子Q1,Q4がターンオフする短期間にのみ電圧共振する部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0054】
直交形制御トランス(ドライブトランス)PRTは、スイッチング素子Q1〜Q4をスイッチング駆動すると共に、定電圧制御のためにスイッチング周波数を可変制御するために設けられる。
このドライブトランスPRTは、駆動巻線NB1〜NB4が巻回されていると共に、駆動巻線NB1を利用して共振電流検出巻線NAが巻回されている。さらにこれらの各巻線に対して制御巻線Ncが直交する方向に巻回された可飽和リアクトルとされている。なお、この場合は駆動巻線NB1と駆動巻線NB4、及び駆動巻線NB2と駆動巻線NB3には、互いに同極性の電圧が励起され、且つ、駆動巻線NB1と駆動巻線NB2、及び駆動巻線NB3と駆動巻線NB4には互いに逆極性の電圧が励起される巻方向によって巻装されている。また共振電流検出巻線NAの巻数(ターン数)は例えば1T(ターン)程度とされている。
【0055】
この場合、直交形制御トランスPRTの共振電流検出巻線NAに得られたスイッチング出力がトランス結合を介して各駆動巻線NB1〜NB4に誘起されることで、各駆動巻線NB1〜NB4にはドライブ電圧としての交番電圧が発生する。このドライブ電圧は、自励発振駆動回路を形成する各直列共振回路から各ベース電流制限抵抗RB1〜RB4を介して、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1〜Q4のベースに出力される。これにより、各スイッチング素子Q1〜Q4は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。
【0056】
絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング出力を二次側に伝送する。
この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、直列共振コンデンサC1、共振電流検出巻線NAを介してスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接点に接続される。また一次巻線N1の他端は、スイッチング素子Q3のエミッタとスイッチング素子Q4のコレクタの接点に接続される。これにより、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,Q3の組が交互にスイッチング動作することで一次巻線N1にスイッチング出力が得られるようにされる。
【0057】
そして、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1のインダクタンス成分を含む絶縁コンバータトランスPITの漏洩インダクタンス成分により一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成している。
このようにして、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振動作とが複合的に得られていることになる。
【0058】
この電源回路のスイッチング動作としては、例えば次のようになる。
先ず、商用交流電源ACが投入されると、例えば起動抵抗RS1〜RS4を介してスイッチング素子Q1〜Q4のベースに起動のためのベース電流が供給されることになる。ここで、例えばドライブトランスPRTの駆動巻線NB1,NB4と、駆動巻線NB2,NB3は、互いに逆極性の電圧が励起されることになるので、スイッチング素子Q1,Q4が先にオンとなったとすれば、スイッチング素子Q2,Q3はオフとなるように制御される。そして、これら駆動巻線NB1〜NB4に励起された交番電圧を源として、スイッチング素子Q1〜Q4の各自励発振駆動回路が、共振動作による自励発振動作を行う。これにより、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,Q3の組が交互にオン/オフするように制御される。つまりスイッチング動作を行うことになる。
【0059】
そして例えばスイッチング素子Q1,Q4がオンとなったときには、そのスイッチング出力として、共振電流検出巻線NAを介して一次巻線N1及び直列共振コンデンサC1に共振電流が流れる。そして、この共振電流が「0」となる近傍で、スイッチング素子Q1,Q4がオフとなるとともに、スイッチング素子Q2,Q3がオンとなる。これにより、スイッチング素子Q2,Q3を介して先とは逆方向の共振電流が流れる。以降、ZVS及びZCSにより、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,Q3の組が交互にオンとなる自励式のスイッチング動作が継続される。また、スイッチング素子Q1〜Q4がオン/オフ動作に伴い、スイッチング素子Q1〜Q4のターンオン、ターンオフ時の短期間においては、一次側部分電圧共振コンデンサCp1,Cp2に電流が流れる。つまり、部分電圧共振動作が得られる。
【0060】
絶縁コンバータトランスPITは、磁脚にギャップGを形成していないコアに対して一次巻線N1及び二次巻線N2,N3を巻装し、一次巻線N1と二次巻線N2、N3とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成される。なお、この絶縁コンバータトランスPITの構造例については後述する。
【0061】
絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては二次側部分電圧共振コンデンサC2が並列に接続される。この二次側部分電圧共振コンデンサC2には、例えばフィルムコンデンサが採用される。そして、この二次側部分電圧共振コンデンサC2のキャパシタンスと、二次巻線N2のリーケージインダクタンスとにより、二次側部分電圧共振回路が形成される。
このため、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に交番電圧が励起されることにより、二次側にて部分共振(電圧共振)動作が得られることになる。つまり、図1に示す電源回路は、一次側では電流共振動作及び部分電圧共振動作が得られると共に、二次側においても部分電圧共振動作が得られる複合共振形コンバータとして構成されていることになる。
【0062】
上記二次巻線N2に対しては、図示するようにしてブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCO1が接続されることで全波整流回路が形成される。この全波整流回路の全波整流動作によって、平滑コンデンサCO1の両端に二次側直流出力電圧EO1が得られるようになっている。二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷に対して供給される。さらに、この二次側直流出力電圧EO1は、図示するように制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0063】
また二次側においては、さらに二次巻線N3が巻装される。この二次巻線N3はセンタータップ点が二次側アースに接続されると共に、一端はダイオードD01のアノードに接続され、他端はダイオードD02のアノードに接続される。
そしてダイオードD01、D02のカソードは平滑コンデンサC02の正極側に接続され、これによって両波整流平滑回路が形成されて、例えば低電圧の直流出力電圧E02を得るようにしている。
【0064】
制御回路1は二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じ、制御巻線NCに流す制御電流(直流電流)レベルを可変することで、直交形制御トランスPRTに巻装された駆動巻線NB1〜NB4のインダクタンスLB1〜LB4を可変制御する。これにより、各駆動巻線NB1〜NB4のインダクタンスLB1〜LB4を含んで形成されるスイッチング素子Q1〜Q4のための各自励発振駆動回路内の直列共振回路の共振条件が変化し、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング周波数が可変されて二次側直流出力電圧の安定化を図るようにしている。
【0065】
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば図10又は図11に断面図として示した構造、即ち一対のE字型コア又は一対のU字型コアを有した構造とされる。
図10は一対のE字型コアを用いた構造例である。
絶縁コンバータトランスPITのコアとしては、図示するようにして、2つのE字型コアCR1,CR2の互いの磁脚の端部を対向させるようにして組み合わせることで、EE字型コアを形成する。またこの場合、E字型コアCR1,CR2の各中央磁脚が対向する面にギャップは形成されない。
なお、E字型コアCR1,CR2には、例えばフェライト材を用いるようにされる。
そして、本実施の形態では、上記のようにして形成されるEE字型コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2,N3を巻装するために、一次/二次分割ボビンBを用いるようにされる。
【0066】
図11は一対のU字型コアを用いた構造例である。
この場合の絶縁コンバータトランスPITは、そのコアとして、図11に示すように、それぞれ2本の磁脚を有するU字型コアCR11、CR12が組み合わされ、U−U字型コアを形成するようにされる。
さらに、上記のようにして形成されるU−U字型コアの一方の磁脚に対しては、図示するようにして一次巻線N1と二次巻線N2,N3とを互いに分割された巻装領域に巻装したボビンBが取り付けられる。
また、この場合も、上記のように形成されるU−U字型コアの中央磁脚に対し、ギャップを形成しないようにしている。
【0067】
このように本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの図10、図11のいずれにより構成した場合でも、ギャップGをゼロにすることで、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
【0068】
ところで、例えば上記した図12、図13、図16のような先行技術の電源回路では、絶縁コンバータトランスPIT1について疎結合の状態とすることで磁気飽和を抑制していた。これに対して、図1に示した電源回路では、二次側に備えられる部分電圧共振回路の共振動作によって磁気飽和を抑制するようにしている。
【0069】
また、図1に示した電源回路では、二次側に備えられる部分電圧共振回路の共振動作によって、絶縁コンバータトランスPITを密結合トランスとしたときに、負荷電力が100W以下の時に異常発振が生じないようにもしている。
これにより、絶縁コンバータトランスPITを密結合の状態となるように構成しても、電源回路の動作上での問題は生じないことになる。
【0070】
さらに図1に示した電源回路では、二次側直流出力電圧EO1として、約135Vが得られるようにされている。そして、この条件の下で、二次巻線N2のターン数Tについて2V/T以下となるように二次巻線N2の巻数を選定して、二次巻線N2の巻線数の増加を図ることで、後述するように例えば50W以下の軽負荷時における電力変換効率を向上させるようにしている。
【0071】
図2に交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示す。
また図3に交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対するAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性を示している。
なお、図2、図3に示す測定結果を得るにあたっては、上記図1に示した電源回路では、下記のようにして部品素子を選定している。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、ギャップG=0mmで、一次巻線N1=44T、二次巻線N2=80Tを巻装している。
また、一次側直列共振コンデンサC1=0.047μF、一次側部分電圧共振コンデンサCp1,Cp2=680pF、二次側部分電圧共振コンデンサC2=4700pFを選定している。
【0072】
図2に示すように、電源回路のスイッチング素子Q1〜Q4の動作は、同図(a)に示すスイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧VQ1と、同図(c)(d)に示す各スイッチング電流IQ1〜IQ4により示され、スイッチング素子Q1,Q4は、期間TONにおいてオンとなり、期間TOFFにおいてオフとなるようにスイッチング動作を行う。
【0073】
ここで、スイッチング素子Q1,Q4がオンになると、スイッチング素子Q1→一次側直列共振コンデンサC1→一次巻線N1→スイッチング素子Q4の経路で共振電流が流れる。そして、この共振電流が零となる近傍でスイッチング素子Q2,Q3がオン、スイッチング素子Q1,Q4がオフとなるように制御されることで、スイッチング素子Q3→一次巻線N1→一次側直列共振コンデンサC1→スイッチング素子Q2の経路で共振電流が流れる。以降はスイッチング素子Q1,Q4とスイッチング素子Q2,Q3が交互にオンとなるように制御される。
【0074】
また、スイッチング素子Q2に並列に接続されている一次側部分電圧共振コンデンサCp1には、スイッチング素子Q2がターンオンまたはターンオフする短期間において、図2(b)に示すような部分共振電流ICPが流れることになる。また、図示していないがスイッチング素子Q4に接続されている一次側部分電圧共振コンデンサCp2にもスイッチング素子Q4がターンオンまたはターンオフする短期間において、部分共振電流が流れることになる。
【0075】
これにより、スイッチング素子Q1,Q4のコレクタ−エミッタ間を流れる電流IQ1,IQ4は、図2(b)に示すような波形となる。また、スイッチング素子Q2,Q3に流れる電流IQ2,IQ3は、上記電流IQ1,IQ4とは180度位相のずれる波形となり、図2(d)に示すような波形となる。
【0076】
この場合、一次側直列共振コンデンサC1に流れる一次側直流共振電流I1は、図2(e)に示されているような正弦波となり、スイッチング素子Q1に負方向の一次側直流共振電流I1が流れ、スイッチング素子Q2には正方向の一次側直流共振電流I1が流れることになる。換言すれば、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,q3の組が交互にオン/オフを行うことによって、上記一次側直列共振コンデンサC1と直列接続された一次巻線N1には、共振電流波形に近いドライブ電流が供給されるということがいえる。この一次巻線N1に流れる電流に応じて発生する交番電圧によって、二次巻線N2にも交番電圧が励起されることになる。
【0077】
そして、上記のようにして二次巻線N2に発生する交番電圧に応じて、二次巻線N2に接続されるブリッジ整流回路DBRの正極側の入力端子と負極側の入力端子との間の端子間電圧V2としては、図2(g)に示す波形が得られることになる。つまり、ブリッジ整流回路DBRに整流電流が流れる期間において整流平滑電圧E0の絶対値レベルでクランプされた波形が得られる。
また、ブリッジ整流回路DBRからは、図2(h)に示すような波形の電流IDが出力されることになる。また、ブリッジ整流回路DBRに発生する電圧V2がゼロレベルとなるゼロクロス付近では、図2(f)に示すような共振電流IC2が二次側部分電圧共振コンデンサC2に流れていることから、二次側で部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
【0078】
また、図1に示す電源回路は、図3に示されるように、負荷電力Poが重くなるに従い、スイッチング周波数fsが低くなるように制御されている。つまり、スイッチング周波数制御によって二次側直流出力電圧EO1の定電圧制御を行っていることが分かる。
【0079】
また、図1に示す電源回路は、入力整流回路が全波整流回路によって構成されているにもかかわらず、負荷電力Po=200W(重負荷時)の電力変換効率(ηAC/DC)が、上記図12に示した先行技術例とほぼ同等の92%とほぼ同等レベルになっていることが分かる。即ち、図1に示す電源回路によれば、負荷電力Po=200Wの場合も、図12に示した入力倍電圧整流回路による電源回路と同等以上の電力変換効率(ηAC/DC)、つまり92%以上の電力変換効率を実現することができる。
【0080】
このように図1に示す電源回路において重負荷時の電力変換効率(ηAC/DC)が向上するのは、一次側をフルブリッジ結合の電流共振形コンバータにより構成したこと、及び、絶縁コンバータトランスPITのギャップをゼロとしたことにより、以下のような理由により実現されるものである。
【0081】
即ち、一次側を入力全波整流回路により構成したことで、上記図12の電源回路では、耐圧400Vのスイッチング素子Q1〜Q2を用いていた。これに対して、図1に示す電源回路では耐圧200Vのスイッチング素子Q1〜Q4を選定することが可能になる。これにより、スイッチング特性の向上を図ることができ、発熱によるスイッチング損失が低減すること。
また、図12に示したスイッチング素子Q1,Q2がハーフブリッジ構成とされる電源回路では、スイッチング素子Q1,Q2に流れる電流IQ1,IQ2が3.3Apであり、一次側共振電流I1が6.6Ap−pであった。
これに対して、図1に示した電源回路は、スイッチング素子Q1〜Q4がフルブリッジ構成とされることから、スイッチング素子Q1〜Q4に流れる電流IQ1〜IQ4はいずれも2.3Apであり、一次側共振電流I1が4.6Ap−pとなり、一次側を流れる電流が約30%程度低減すること。
さらに一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数が0.8から0.95に向上したことによって漏洩磁束が低減し、一次巻線N1と二次巻線N2の渦電流損失が低下すること。
さらにまた、ギャップ周辺のフリンジ磁束によって一次巻線N1と二次巻線N2に発生する局部的な電力損失の問題が解消されて、絶縁コンバータトランスPITの銅損が低減することである。
【0082】
また、ここで、例えば図1に示した電源回路の構成のもとで、絶縁コンバータトランスPITについて、一次巻線N1=44T、二次巻線N2=55Tを選定し、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧V2を約2.45V/T程度に設定したとする。するとその場合は、負荷電力=50W時(軽負荷時)の電力変換効率が低下するという測定結果が得られている。
そこで、本実施の形態としては、図1に示す電源回路として、一次巻線N1=44T、二次巻線N2=80Tを選定して、二次巻線N2の誘起電圧V2を2V/T以下の約1.69V/T程度に設定するようにした。
このように構成することで、二次巻線N2の巻線数を、これまでの巻線数より所定数だけ増加されることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスを増加されることになる。これにより、負荷電力Poが減少するにしたがって、一次側直列共振コンデンサC1の一次側直流共振電流I1を減少させることが可能になるため、スイッチング素子Q1〜Q4の電流IQ1〜IQ4のピーク値を低下させることができ、軽負荷時の電力変換効率の向上が図られることになる。
【0083】
例えば先行技術としての電源回路では、負荷電力Po=200W〜100W時の電力変換効率(ηAC/DC)は約92%、負荷電力Po=50W時の電力変換効率(ηAC/DC)は約89%、負荷電力Po=25W時の電力変換効率(ηAC/DC)は約82.5%程度とされていた。
【0084】
これに対して、図1に示す電源回路では、負荷電力Po=200W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約92.5%、負荷電力Po=150W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約93.5%、負荷電力Po=100W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約94.0%、負荷電力Po=50W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約90%となり、重負荷時から軽負荷時にわたって電力変換効率(ηAC/DC)を向上させることができる。
【0085】
即ち、図1に示す電源回路は、上記図12,図13に示したハーフブリッジ結合により構成される電源回路と比較して、負荷電力Po=200W〜0Wにおいて電力変換効率(ηAC/DC)の向上を図ることができる。
この結果、図1に示す電源回路では、先行技術の電源回路と比較して、例えば負荷電力Po=200W時において1.2W、負荷電力Po=100W時において2.3W、負荷電力Po=50W時において2.0Wの交流入力電力を低減することが可能になるものである。
【0086】
また、図1に示した電源回路の場合、絶縁コンバータトランスPITにおいてギャップを形成しないため、絶縁コンバータトランスPITの製造にあたりギャップを形成するための工程は不要となるので、それだけ製造工程が簡略化され、コストダウンを図ることが可能になる。また、密結合とされることで、絶縁コンバータトランスPITからの漏洩磁束も低減されるので、例えば銅板によるショートリングを巻回して施す必要もなくなる。この点でも、絶縁コンバータトランスPITの製造工程が簡略化され、また、コストダウンが促進されることになる。
さらに、ギャップが無くなったことで、絶縁コンバータトランスPITの巻線の局部的な温度上昇の問題も解消され、それだけ信頼性が向上することにもなる。
【0087】
図4は、上記図1に示した電源回路に適用可能な他の二次側回路の構成を示した図である。
この図4に示す二次側回路においては、二次巻線(N2+N3)にセンタータップが設けられ、このセンタータップが二次側アースに接地される。そして二次巻線N2の一端及び他端は、それぞれ整流ダイオードDO11,DO12のアノードに接続される。そして、これら整流ダイオードDO11,DO12のカソードが、それぞれ平滑コンデンサCO1の正極端子に接続されており、これにより両波整流回路が形成され、平滑コンデンサCO1の両端に直流出力電圧EO1が得られるようにしている。
また、同様に二次巻線N3の一端及び他端はそれぞれ整流ダイオードDO13,DO14のアノードに接続され、これら整流ダイオードDO13,DO14のカソードを、それぞれ平滑コンデンサCO2の正極端子に接続するされる。これにより、平滑コンデンサCO2の両端に直流出力電圧EO2が得られるようにしている。
そして、この場合も絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては、二次側部分電圧共振コンデンサC2が並列に接続して構成することも可能である。
【0088】
図5は、本発明の第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図に示す電源回路は、他励式による電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされている。また、商用交流電源AC=100V系の条件に対応した構成が採られている。
【0089】
この図に示す電源回路においては、先ず、商用交流電源ACに対して、ブリッジ整流回路Di及び1本の平滑コンデンサCiから成る全波整流平滑回路が備えられる。そして、これらブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiの全波整流動作によって、平滑コンデンサCiの両端には整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)が得られることになる。この整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。
【0090】
上記直流入力電圧を入力してスイッチングする電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FET若しくはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)による2本のスイッチング素子Q11,Q12をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q11,Q12の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0091】
また、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間に対しては、一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列に接続される。この一次側部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q11,Q12のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0092】
この電源回路においては、スイッチング素子Q11,Q12をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振・ドライブ・保護回路2が設けられる。この発振・ドライブ・保護回路2は、発振回路、駆動回路、及び保護回路を有している。そして、発振回路及び駆動回路によって、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート電圧)をスイッチング素子Q11,Q12の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q11,Q12は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
また、発振・ドライブ・保護回路2の保護回路は、例えば当該電源回路における過電流、過電圧の状態を検出して、回路が保護されるようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。
【0093】
また、この発振・ドライブ・保護回路2は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に対してタップ出力を設けることで形成した三次巻線N4に対して、整流ダイオードD3及びコンデンサC3から成る整流回路によって得られた低圧の直流電圧E3を入力して動作電源としている。また、起動時においては、起動抵抗RSを介して整流平滑電圧Eiを入力することで起動するようになっている。
【0094】
絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q11 、Q12のスイッチング出力を二次側に伝送する。この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻始め端部は、一次側直列共振コンデンサC1の直列接続を介して、スイッチング素子Q11のソースとスイッチング素子Q12のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が伝達されるようになっている。
また、一次巻線N1の巻終わり端部は、一次側アースに接続される。
ここで、上記一次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1によっては、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成する。
【0095】
即ち、この電源回路もまた、一次側にはスイッチング動作を電流共振形とするための直列共振回路に対して、他の共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採るものとされる。
【0096】
この場合の絶縁コンバータトランスPITの構造としては、上記図10、図11に断面図として示した構造、即ち一対のE字型コア又は一対のU字型コアを有した構造とされる。
【0097】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2と、この二次巻線N2よりも少ない巻数による二次巻線N2Aが巻装されている。これらの二次側巻線には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
【0098】
二次巻線N2は、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0099】
また、二次巻線N2Aも、センタータップを二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO3,DO4、及び平滑コンデンサCO2から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO2の両端電圧として二次側直流出力電圧EO2が得られる。また、二次側直流出力電圧EO2は、制御回路1のための動作電源としても供給される。
【0100】
制御回路1は、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ・保護回路2に供給する。発振・ドライブ・保護回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q11,Q12を駆動する。このようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されることで、二次側直流出力電圧のレベルが安定化されることになる。
【0101】
ここで、上記構成による電源回路において、発振・ドライブ・保護回路2の動作電源として供給される低圧の直流電圧E3は、約1.7Vが得られるようにされている。
【0102】
そして、この図に示す電源回路においても、絶縁コンバータトランスPITのギャップGをゼロにすることで、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。そして、この場合も二次側に備えられる二次側部分電圧共振回路の共振動作によって、磁気飽和を抑制すると共に、負荷電力が100W以下の時に異常発振が生じないようにもしている。このようにすることで、絶縁コンバータトランスPITを密結合の状態となるように構成しても、電源回路の動作上での問題は生じないことになる。
【0103】
そして、この場合も二次側直流出力電圧EO1としては、約135Vが得られるようにされている。そして、この条件の下で、二次巻線N2のターン数Tについて2V/T以下となるように二次巻線N2の巻数を選定するようにしている。これにより、二次巻線N2の巻線数の増加を図ることで、軽負荷時の電力変換効率の向上させるようにしている。
【0104】
図6は、上記図5に示した電源回路の動作をスイッチング周期により示す波形図である。ここでは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=125W時の条件での動作が示されている。
また、図7にはた電源回路の特性として、負荷電力Po=0W〜125Wの変動に対する電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、及びスイッチング出力電流IQ1,IQ2の変化特性を示している。
【0105】
なお、図6、図7に示す測定結果を得るにあたっては、上記図5に示した電源回路では、下記のようにして部品素子を選定している。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、EER−35のフェライトコアを採用する。またギャップG=0mmで、一次巻線N1=40T、二次巻線N2=80T+80Tを巻装している。この場合は、絶縁コンバータトランスPITの二次側整流電流は連続モードとなる。また、一次巻線N1の励磁インダクタンスL1=5.6mH、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1l=157μH、二次巻線N2の励磁インダクタンスL2=23.0mH、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2l=685μH、コンバータトランスPITの結合係数k=0.95となる。
また、一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF、二次側部分電圧共振コンデンサC2=1000pFを選定している。
【0106】
先ず、スイッチング素子Q12に流れるスイッチング出力電流(ドレイン電流)IQ2は、図6(b)に示すようにして、スイッチング素子Q12がオンとなる期間TONにおいて流れ、オフとなる期間TOFFにおいて0レベルとなっている。
また、一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列接続されたスイッチング素子Q12の両端電圧VQ2は、図6(a)に示すようにして、スイッチング素子Q12がオフとなる期間TOFFにおいては、直流入力電圧Eiのレベルでクランプされ、オフとなる期間TONにおいては0レベルとなる波形が得られる。
【0107】
また、上記したスイッチング動作が得られることで、一次巻線N1には、図6(d)に示す波形による一次巻線電流I1が流れる。この一次巻線電流I1は、図示するようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして、スイッチング周期に応じて極性が反転する波形となっている。
またこのときの一次側直列共振コンデンサC1の両端電圧VC1は、図6(c)のように示される。また一次巻線N1の両端電圧V1は、図6(e)に示すようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして極性が反転している。
【0108】
また、スイッチング素子Q12のコレクタ−エミッタ間に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサCpには、図6(f)に示すように、スイッチング素子Q12のターンオン及びターンオフ時に部分共振電流ICPが流れており、一次側部分電圧共振コンデンサCpにおいて部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
【0109】
また、この電源回路の二次側においては、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には、図6(h)に示すような二次側電流IDが流れ、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間には、図6(g)に示すような波形の電圧V2は出力が得られることになる。また、二次巻線N2を流れる二次側電流I2は図6(i)のように示される。さらに二次巻線N2に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサC2には、図6(j)に示すような波形の部分共振電流IC2が流れることになる。なお、この場合は二次巻線N2には高周波のリンギング成分が重畳されていることから、図6(g)〜図6(j)に示す二次側出力波形は高周波のリンギング成分が重畳された波形となる。
【0110】
また、図7に示すように、上記図5に示した電源回路の特性としては、負荷電力Po=125W〜25Wに対するスイッチング周波数fsの制御範囲は、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2=55Tである場合は、76kHz〜195kHzであったのに対して、図5に示した電源回路では、70kHz〜130kHzとなっている。つまり、図5に示した電源回路のほうが、スイッチング周波数fsの制御範囲が狭くなっている。これは即ち、二次側直流出力電圧EO1についての一定変動幅に対するスイッチング周波数の可変制御範囲としても、図5に示す回路のほうが狭くなるということを意味する。従って、図5に示した電源回路では、スイッチング動作の高速過渡応答特性の向上が図られることになる。
【0111】
また、図5に示すような回路構成の電源回路は、これまで絶縁コンバータトランスPITについて、一次巻線N1=27T、二次巻線N2=55T+55Tを選定して、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧V2を約2.45V/T程度に設定していた。この場合、負荷電力Po=125W〜50Wにおいては、先行技術としての電源回路に比べて電力変換効率(ηAC/DC)を向上させることができるが、負荷電力Po=50W〜0Wにおいては、逆に電力変換効率(ηAC/DC)が低下するという結果を招いていた。
【0112】
このため、本発明の第2の実施の形態としての電源回路では、一次巻線N1=40T、二次巻線N2=80T+80Tを選定して、二次巻線N2の誘起電圧V2を約1.69V/T程度に設定するようにした。これにより、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2の巻線数の増加を図ることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2lの増加させるようにしている。
このように構成すれば、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2lと二次側部分電圧共振コンデンサC2の並列共振作用によって、軽負荷時における一次側直列共振コンデンサC1の一次側直流共振電流I1を減少させることができる。よって、スイッチング素子Q11,Q12の電流IQ1〜IQ2のピーク値の低減することが可能になり、軽負荷時における電力変換効率の向上を図ることができる。
【0113】
例えば図16に示した先行技術としての電源回路では、負荷電力Po=125W〜0Wの変動に対して、負荷電力Po=125W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約92%、負荷電力Po=50W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約89%、負荷電力Po=25W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約82.5%程度とされていた。また、負荷電力Po=0Wの無負荷時の入力電力は4.2Wとされていた。
【0114】
これに対して、図5に示す電源回路では、負荷電力Po=125W時の電力変換効率(ηAC/DC)が92%であり、図16に示した先行技術例とほぼ同等レベルであるにも関わらずが、負荷電力Po=50W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約94%、負荷電力Po=25W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約93.5%、無負荷時の入力電力は1.8Wとなり、負荷電力Poが50W以下の軽負荷時における電力変換効率(ηAC/DC)が向上していることが分かる。
【0115】
この結果、例えば、負荷電力Po=50W時は、電力変換効率(ηAC/DC)が5%向上して入力電力を約3W低減することができる。また、負荷電力Po=25W時は、電力変換効率(ηAC/DC)が1%向上して、入力電力を約3.6W低減する。さらに無負荷時の入力電力も4.2Wから1.8Wとなり約2.4W低減することができる。
【0116】
また、このようにして負荷電力Po=50W以下における電力変換効率(ηAC/DC)の向上を図ることで、負荷電力Po=125W〜50W時のスイッチング負荷時の直流出力電圧のリップル電圧を、現状の8.3Vから3.3Vまで低減することができるという効果もある。
【0117】
またこの場合も、絶縁コンバータトランスPITにおいてギャップを形成しないため、図1に示した電源回路と同様、製造にあたりギャップを形成するための工程は不要となるので、それだけコストダウンを図ることが可能になる。また、例えば銅板によるショートリングを絶縁コンバータトランスPITに巻回して施す必要もなくコストダウンを図ることができる。さらに、絶縁コンバータトランスPITの巻線の局部的な温度上昇の問題も解消され、それだけ信頼性が向上することにもなる。
【0118】
図8は、本発明の第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。なお、この図において、図1及び図5と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0119】
先ず、この図に示す電源回路においては、2石のスイッチング素子をハーフブリッジ結合した電流共振形コンバータとして、自励式の構成を採っている。
また、この図に示す電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)から直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路系として、図示するように、2本の低速リカバリ型の整流ダイオードD1,D2と、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を接続してなる倍電圧整流回路が設けられる。この倍電圧整流回路では、直列接続された平滑コンデンサCi1−Ci2の両端に、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。
【0120】
またこの場合の、2石のスイッチング素子Q1,Q2については、BJT(バイポーラトランジスタ)が選定されている。
この場合のスイッチング素子Q1のコレクタは、平滑コンデンサCi1の正極端子)と接続される。スイッチング素子Q1のエミッタは、スイッチング素子Q2のコレクタと接続され、スイッチング素子Q2のエミッタは一次側アースに対して接続される。つまり、スイッチング素子Q1,Q2は、ハーフブリッジ結合方式によって接続されている。
【0121】
また、スイッチング素子Q1のベースに対しては、共振用コンデンサCB1−ベース電流制限抵抗RB1−駆動巻線NB1を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。この自励発振駆動回路においては、共振用コンデンサCB1のキャパシタンスと、駆動巻線NB1のインダクタンスによって直列共振回路を形成しており、この直列共振回路の共振周波数によってスイッチング周波数が決定される。また、ベース電流制限抵抗RB1は、自励発振駆動回路からスイッチング素子Q1のベースに流すべき駆動信号としてのベース電流レベルを調整する。
【0122】
また、スイッチング素子Q1のベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD1が図示する方向によって接続されることで、オン期間における逆方向電流経路を形成する。また、平滑コンデンサCiの正極端子とスイッチング素子Q1のベース間には、起動時の電流をベースに流すための起動抵抗Rs1が接続される。
【0123】
同様にして、スイッチング素子Q2のベースに対しては、共振用コンデンサCB2−ベース電流制限抵抗RB2−駆動巻線NB2を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB2及び駆動巻線NB2によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD2が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗Rs2が接続される。
【0124】
また、スイッチング素子Q2 のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列に一次側部分電圧共振コンデンサCpが接続されている。
この場合にも、一次側部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0125】
ドライブトランスPRTは、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング駆動すると共に、スイッチング周波数を可変制御して定電圧化を図るために設けられる。
このドライブトランスPRTは、駆動巻線NB1,NB2及び共振電流検出巻線NDを巻回するとともに、更にこれらの各巻線に対して制御巻線Ncが直交する方向に巻回された可飽和リアクトルとされている。なお、駆動巻線NB1と、駆動巻線NB2は、互いに逆極性の電圧が励起される巻方向によって巻装されている。
【0126】
この場合にも、絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 、Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する。
この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻始め端部は、スイッチング素子Q1のコレクタと接続され、巻終わり端部は、直列共振コンデンサC1−共振電流検出巻線NDを介して、スイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接続点に(スイッチング出力点)に接続される。これにより、一次巻線N1には、スイッチング出力が得られるようにされる。
【0127】
また、この場合にも、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1とにより、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成している。
このようにして、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしても、電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振動作とが複合的に得られる、複合共振形コンバータとしての構成を採っている。
【0128】
この電源回路のスイッチング動作としては、例えば次のようになる。
先ず商用交流電源ACが投入されると、例えば起動抵抗Rs1,Rs2を介してスイッチング素子Q1、Q2のベースに起動のためのベース電流が供給されることになる。ここで、例えばドライブトランスPRTの駆動巻線NB1,NB2には、互いに逆極性の電圧が励起されることになるので、スイッチング素子Q1が先にオンとなったとすれば、スイッチング素子Q2はオフとなるように制御される。そして、これら駆動巻線NB1,NB2に励起された交番電圧を源として、スイッチング素子Q1,Q2の各自励発振駆動回路が、共振動作による自励発振動作を行う。これにより、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオン/オフするように制御される。つまりスイッチング動作を行うことになる。
そして例えばスイッチング素子Q1がオンとなったときには、そのスイッチング出力として、共振電流検出巻線NDを介して一次巻線N1及び直列共振コンデンサC1に共振電流が流れるが、この共振電流が0となる近傍で、スイッチング素子Q1がオフとなるとともに、スイッチング素子Q2がオンとなる。これにより、スイッチング素子Q2を介して先とは逆方向の共振電流が流れる。以降、ZVS及びZCSにより、スイッチング素子Q1、Q2が交互にオンとなる自励式のスイッチング動作が継続される。また、スイッチング素子Q1,Q2のオン/オフ動作に伴い、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時の短期間においては、一次側部分電圧共振コンデンサCpに電流が流れる。つまり、部分共振電圧動作が得られる。
【0129】
なお、絶縁コンバータトランスPITの二次側回路構成は、上記図1と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0130】
図9は、上記図8に示した電源回路の動作をスイッチング周期により示す波形図である。ここでは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時の条件での動作が示されている。
先ず、スイッチング素子Q2に流れるスイッチング出力電流(ドレイン電流)IQ2は、図9(b)に示すようにして、スイッチング素子Q2がオンとなる期間TONにおいて流れ、オフとなる期間TOFFにおいて0レベルとなっている。
また、一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列接続されたスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2は、図9(a)に示すようにして、スイッチング素子Q2がオフとなる期間TOFFにおいては、直流入力電圧Eiのレベルでクランプされ、オフとなる期間TONにおいては0レベルとなる波形が得られる。
【0131】
また、上記したスイッチング動作が得られることで、一次巻線N1には、図9(d)に示す波形による一次巻線電流I1が流れる。この一次巻線電流I1は、図示するようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして、スイッチング周期に応じて極性が反転する波形となっている。
またこのときの一次側直列共振コンデンサC1の両端電圧VC1は、図9(c)のように示される。また一次巻線N1の両端電圧V1は、図9(e)に示すようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして極性が反転している。
【0132】
また、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサCpには、図9(f)に示すように、スイッチング素子Q2のターンオン及びターンオフ時に部分共振電流ICPが流れており、一次側部分電圧共振コンデンサCpにおいて部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
【0133】
また、この電源回路の二次側においては、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には、図9(h)に示すような二次側電流IDが流れ、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間には、図9(g)に示すような波形の電圧V2が得られることになる。また、二次巻線N2を流れる二次側電流I2は図9(i)のように示される。さらに二次巻線N2に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサC2には、図9(j)に示すような波形の部分共振電流IC2が流れることになる。
【0134】
そして、このような構成を採る第3の実施の形態としての電源回路においても、上記図7と同様の特性を有することから、上記図5に示した電源回路と同様の効果である軽負荷時における電力変換効率の向上を図ることができる。
また、絶縁コンバータトランスPITにおいてギャップを形成しないため、製造コストの削減、及びショートリングが不要になることに伴うコストダウン、さらには絶縁コンバータトランスPITの巻線の局部的な温度上昇の問題も解消することができる。
【0135】
以上、各種実施の形態を説明してきたが、本発明としてのスイッチング電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2の巻線数としては、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧が約1.69V/T程度となるように二次巻線N2の巻線数を選定した場合を例に挙げて説明したが、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧としては、約2.0V/T程度となるように二次巻線N2の巻線数を選定すれば、これで説明した効果が得られる。
【0136】
また、本発明としてのスイッチング電源回路としては、上記各実施の形態としての構成に限定されるものではなく、例えば、要部の部品素子の定数などは適宜、各種条件に応じて適切な値に変更されればよい。
また、第1の実施の形態ではスイッチング素子Q1〜Q4に対して自励発振回路を設けたが、例えばスイッチング素子Q1〜Q4をMOS−FETやIGBTで形成する場合、これに対応して他励発振回路によってスイッチング動作させる構成としてもよい。
【0137】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のスイッチング電源回路は、複合共振形コンバータとして、一次側は、電流共振形スイッチングコンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた基本構成を採る。そして、この場合には、二次側に対しても二次側部分電圧共振回路を設けるようにしている。そのうえで、絶縁コンバータトランスのコアにギャップを形成しないようにして、一次巻線と二次巻線との結合係数を所要の結合係数以上の密結合にすると共に、二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように選定して構成するようにしている。即ち、本発明のスイッチング電源回路は、一次側電流共振形コンバータ、一次側部分電圧共振回路、及び二次側部分電圧共振回路による複合共振形コンバータとして、密結合の絶縁コンバータトランスによる一次側から二次側への電力伝送を行うように構成されている。そしてこのような構成の下で、絶縁コンバータトランスの二次巻線の巻線数を上記した条件の下で設定するようにしている。
このように構成すると、二次巻線の巻線数が増加されることになるが、これに伴って、二次巻線のリーケージインダクタンスも増加されることとなる。これにより、軽負荷時における一次側電流の減少させることが可能になる。
このようにして、軽負荷時の一次側電流を減少させるようにすると、軽負荷時の電力変換効率を向上させることができるため、入力電力を低減させて省電力化が可能になる。
【0138】
また本発明では、絶縁コンバータトランスにおいてギャップを形成しないことで、ギャップ形成のためのコアの研磨工程は省略されることになる。これにより、例えば製造工程が簡略化され、また、絶縁コンバータトランスを製造するコストも低減することができる。
さらに、上記のように絶縁コンバータトランスに巻装された一次巻線と二次巻線とが密結合となることにより、絶縁コンバータトランスからの漏洩磁束は低減されるので、例えば絶縁コンバータトランスにショートリングを施す必要もないこととなる。そして、この点でも、コストダウンが図られ、また、回路の小型軽量化が促進されるものである。
また、絶縁コンバータトランスのギャップ近傍における局部的温度上昇は発生しないことになるために、それだけ電源回路としても信頼性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のスイッチング電源回路の回路図である。
【図2】第1の実施の形態のスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図3】第1の実施の形態のスイッチング電源回路の特性を示す特性図である。
【図4】第1の実施の形態のスイッチング電源回路の二次側回路の他の構成例を示した図である。
【図5】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の回路図である。
【図6】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図7】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の特性を示す特性図である。
【図8】第3の実施の形態のスイッチング電源回路の回路図である。
【図9】第3の実施の形態のスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図10】本実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す断面図である。
【図11】本実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す断面図である。
【図12】先行技術としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図13】先行技術としてのスイッチング電源回路の他の構成例を示す回路図である。
【図14】図12に示したスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図15】図12に示したスイッチング電源回路のAC/DC電力変換効率の特性の説明図である。
【図16】先行技術としてのスイッチング電源回路のさらに他の構成例を示す回路図である。
【図17】図16に示したスイッチング電源回路における要部の動作を示す波形図である。
【図18】図16に示したスイッチング電源回路における要部の動作を示す波形図である。
【図19】図16に示したスイッチング電源回路の特性を示す特性図である。
【図20】先行技術としての電源回路に採用される絶縁コンバータトランスの構造例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 制御回路、発振・ドライブ・保護回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 Q2 Q3 Q4 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N1 一次巻線、N2 二次巻線、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp Cp1 Cp2 一次側部分電圧共振コンデンサ、C2 二次側部分電圧共振コンデンサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることがわかっている。
そこで、先に本出願人により、各種共振形コンバータによるスイッチング電源回路が各種提案されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
【0003】
図12は、先に本出願人により提案された発明に基づいて構成することのできる電源回路の構成例を示す回路図である。この電源回路には自励式の電流共振形コンバータが採用されている。
【0004】
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)から直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路系として、図示するように、2本の低速リカバリ型の整流ダイオードD1,D2と、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を接続してなる倍電圧整流回路が設けられる。この倍電圧整流回路では、直列接続された平滑コンデンサCi1−Ci2の両端に、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。
この電源回路のスイッチングコンバータは、図示するように、2つのスイッチング素子Q1,Q2をハーフブリッジ結合したうえで、平滑コンデンサCi1の正極側の接続点とアース間に対して挿入するようにして接続されている。この場合、スイッチング素子Q1,Q2には、耐圧400Vのバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用される。
【0005】
このスイッチング素子Q1,Q2の各コレクタ−ベース間には、それぞれ起動抵抗RS1,RS2が挿入される。
また、スイッチング素子Q1,Q2のベース−エミッタ間にはクランプダイオードDD1,DD2がそれぞれ挿入されている。この場合、クランプダイオードDD1のカソードはスイッチング素子Q1のベースと接続され、アノードはスイッチング素子Q1のエミッタと接続される。また、同様にクランプダイオードDD2のカソードはスイッチング素子Q2のベースと接続され、アノードはスイッチング素子Q2のエミッタと接続される。
【0006】
スイッチング素子Q1のベースとスイッチング素子Q2のコレクタ間に対しては、ベース電流制限抵抗RB1、共振用コンデンサCB1、駆動巻線NB1からなる直列接続回路が挿入される。共振用コンデンサCB1は自身のキャパシタンスと、駆動巻線NB1のインダクタンスLB1と共に直列共振回路を形成する。
同様に、スイッチング素子Q2のベースと一次側アース間に対しては、ベース電流制限抵抗RB2、共振用コンデンサCB2、駆動巻線NB2からなる直列接続回路が挿入されており、共振用コンデンサCB2と駆動巻線NB2のインダクタンスLB2と共に自励発振用の直列共振回路を形成する。
【0007】
直交形制御トランスPRT(Power Regulating Transformer)は、スイッチング素子Q1,Q2を駆動すると共に、後述するようにして定電圧制御を行う。
この直交形制御トランスPRTは、駆動巻線NB1,NB2及び共振電流を検出する共振電流検出巻線NAが巻回され、更にこれらの各巻線に対して制御巻線NCが直交する方向に巻回された直交型の可飽和リアクトルである。
この直交形制御トランスPRTの構造としては、図示は省略するが、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字型コアの互いの磁脚の端部を接合するようにして立体型コアを形成する。そして、この立体型コアの所定の2本の磁脚に対して、同じ巻装方向に共振電流検出巻線NA、駆動巻線NBを巻装し、更に制御巻線NCを、上記共振電流検出巻線NA、及び駆動巻線NBに対して直交する方向に巻装して構成される。
【0008】
この場合、駆動巻線NB1の一端は、共振用コンデンサCB1−抵抗RB1の直列接続を介してスイッチング素子Q1のベースに接続され、他端はスイッチング素子Q2のコレクタに接続される。駆動巻線NB2の一端はアースに接地されると共に、他端は共振用コンデンサCB2−抵抗RB2の直列接続を介してスイッチング素子Q2のベースと接続されている。駆動巻線NB1と駆動巻線NB2は互いに逆極性の電圧が発生するように巻装されている。
また、共振電流検出巻線NAの一端はスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタとの接続点(スイッチング出力点)に対して接続され、他端は後述する絶縁コンバータトランス(Power Isolation Transformer)PIT1の一次巻線N1の一端に対して接続される。なお、共振電流検出巻線NAの巻数(ターン数)は例えば1T(ターン)程度とされている。
【0009】
絶縁コンバータトランスPIT1は、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPIT1の構造としては、図20に示すように、例えばフェライト材によるE字型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたE−E字型コアが備えられ、このE−E字型コアの中央磁脚に対して、分割ボビンBを利用して一次巻線N1と二次巻線N2(N3)とが分割された状態で巻装されている。この場合、分割ボビンBには、約60mmφのリッツ線を、がら捲きにより巻回して一次巻線N1と二次巻線N2(N3)とをそれぞれ巻装して構成するようにしている。
またこの場合、E−E字型コアの中央磁脚に対しては0.5mm〜1.0mmのギャップGを形成するようにしている、これによって、一次巻線N1と二次巻線N2(N3)の結合係数kとしては、例えばk≒0.85の疎結合の状態を得るようにしている。
【0010】
絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1の一端は、共振電流検出巻線NAを介してスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が得られるようにされる。また、一次巻線N1の他端は、例えばフィルムコンデンサからなる一次側直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接地されている。
この場合、上記一次側直列共振コンデンサC1、及び一次巻線N1は直列に接続され、この一次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンス及び一次巻線N1(直列共振巻線)を含む絶縁コンバータトランスPIT1の漏洩インダクタンス(リーケージインダクタンスL1)成分とにより、スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための直列共振回路を形成するようにしている。
【0011】
また、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間に対しては、一次側部分電圧共振用の一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列に接続されており、この一次側部分電圧共振コンデンサCpと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とにより部分電圧共振回路を形成する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2を零電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)動作、及び零電流スイッチング(ZCS:Zero Current Switching)動作させるようにしている。
【0012】
この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、一次側直列共振回路(L1−C1)による電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振回路(Cp//L1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。
つまり、この図に示す電源回路は、一次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路とが組み合わされた形式を採っていることになる。本明細書では、このようなスイッチングコンバータについて、複合共振形コンバータということにする。
【0013】
また、この図における絶縁コンバータトランスPIT1の二次側には、二次巻線N2,N3がそれぞれ独立して巻装されている。そして、二次巻線N2に対してはブリッジ整流ダイオードDBR及び平滑コンデンサCO1を接続することで、二次側直流出力電圧EO1を生成するようにしている。また、二次巻線N3に対してはセンタータップを設けた上で、二次巻線N3に、それぞれ整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO2を図のように接続することで[整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO2]から成る両波整流回路を形成して二次側直流出力電圧EO2を生成するようにしている。
この場合、二次側直流出力電圧EO1は制御回路1に対しても分岐して入力される。
【0014】
制御回路1は、例えば二次側の直流出力電圧EO1のレベルに応じてそのレベルが可変される直流電流を、制御電流として直交形制御トランスPRTの制御巻線NCに供給することにより後述するようにして定電圧制御を行う。
【0015】
上記構成による電源回路のスイッチング動作としては、先ず商用交流電源が投入されると、例えば起動抵抗RS1,RS2を介してスイッチング素子Q1,Q2のベースに起動電流が供給され、例えばスイッチング素子Q1が先にオンになったとすれば、スイッチング素子Q2はオフとなるように制御される。そしてスイッチング素子Q1の出力として、共振電流検出巻線NA→一次巻線N1→一次側直列共振コンデンサC1に共振電流が流れ、この共振電流が零となる近傍でスイッチング素子Q2がオン、スイッチング素子Q1がオフとなるように制御される。そして、スイッチング素子Q2を介して先とは逆方向の共振電流が流れる。以降、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオンとなる自励式のスイッチング動作が開始される。
このように、平滑コンデンサCiの端子電圧を動作電源としてスイッチング素子Q1,Q2が交互に開閉を繰り返すことによって、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1に共振電流波形に近いドライブ電流を供給し、二次巻線N2,N3に交番出力を得る。
【0016】
また、直交形制御トランスPRTによる定電圧制御は次のようにして行われる。
例えば、交流入力電圧や負荷電力の変動によって二次側直流出力電圧EO1が変動したとすると、制御回路1では二次側直流出力電圧EO1の変動に応じて制御巻線NCに流れる制御電流のレベルを可変制御する。
この制御電流により直交形制御トランスPRTに発生する磁束の影響で、直交形制御トランスPRTにおいては飽和傾向の状態が変化し、駆動巻線NB1,NB2のインダクタンスを変化させるように作用する。これにより自励発振回路の条件が変化してスイッチング周波数fsが変化するように制御される。
この図に示す電源回路では、一次側直列共振コンデンサC1、及び一次巻線N1の直列共振回路の共振周波数よりも高い周波数領域でスイッチング周波数fsを設定しており、例えばスイッチング周波数fsが高くなると、直列共振回路の共振周波数に対してスイッチング周波数fsが離れていくようにされる。これにより、スイッチング出力に対する一次側直列共振回路の共振インピーダンスは高くなる。
このようにして共振インピーダンスが高くなることで、一次側直列共振回路の一次巻線N1に供給されるドライブ電流が抑制される結果、二次側直流出力電圧が抑制されることになって、定電圧制御が図られることになる。
【0017】
また、図13は、先に本出願人により提案された発明に基づいて構成することのできる、他の電源回路の構成例を示す回路図である。なお、上記図12に示した電源回路と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
この図13に示す電源回路も、2つのスイッチング素子Q11,Q12スイッチング素子をハーフブリッジ結合した電流共振形コンバータが備えられているが、その駆動方式は他励式とされている。この場合、スイッチング素子Q11,Q12にはMOS−FETもしくはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が採用される。
【0018】
またこの場合は、ブリッジ整流回路Di、及び平滑コンデンサCiからなる整流平滑回路により、商用交流電源ACの交流入力電圧VACを整流平滑化して、例えば交流入力電圧VACのピーク値の1倍に対応する直流入力電圧を生成するようにされる。
【0019】
スイッチング素子Q11,Q12の各ゲートは、発振・ドライブ回路11に接続されている。また、スイッチング素子Q11のドレインは、平滑コンデンサCiの正極と接続され、ソースは一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC1を介して一次側アースに接続される。また、スイッチング素子Q12のドレインは、上記スイッチング素子Q11のソースと接続され、そのソースは一次側アースに接続されている。
また、ここでも、一次側部分電圧共振用の一次側部分電圧共振コンデンサCpがスイッチング素子Q12のドレイン−ソース間に対して並列に接続される。
更に、各スイッチング素子Q11,Q12のドレイン−ソース間に対しては、クランプダイオードDD1,DD2が並列に接続されている。
【0020】
上記スイッチング素子Q11,Q12は、発振・ドライブ回路11によって、先に図12において説明したのと同様のスイッチング動作が得られるようにスイッチング駆動される。
つまり、この場合の制御回路1は直流出力電圧EO1の変動に応じて変動したレベルの電流又は電圧を、フォトカプラPCを介して一次側の発振・ドライブ回路11に対して供給する。発振・ドライブ回路11では、直流出力電圧EO1の安定化が図られるように制御回路1からの出力レベルに応じて、その周期が可変されたスイッチング駆動信号(電圧)をスイッチング素子Q11,Q12のゲートに対して交互に出力する。これによって、スイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数fsが可変されることになる。
【0021】
この場合、発振・ドライブ回路11は、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1に対してタップ出力を設けることで形成した三次巻線N4に対して、整流ダイオードD3及びコンデンサC3から成る整流回路によって得られた低圧の直流電圧E3を入力して動作電源としている。また、起動時においては、起動抵抗RSを介して整流平滑電圧Eiを入力することで起動するようになっている。
【0022】
図14は、上記図12に示した電源回路の要部の動作波形を示した図である。
なお、図13に示した電源回路の動作波形もほぼ同様とされる。
この場合、先ず、商用交流電源が投入されると、例えば起動抵抗RS1を介してスイッチング素子Q1のベースに起動電流が供給され、スイッチング素子Q1がオンになると、スイッチング素子Q2はオフとなるように制御される。そしてスイッチング素子Q1の出力として、一次巻線N1→一次側直列共振コンデンサC1に共振電流が流れ、この共振電流が零となる近傍でスイッチング素子Q2がオン、スイッチング素子Q1がオフとなるように制御される。以降はスイッチング素子Q1,Q2が交互にオンとなるように制御される。
これにより、スイッチング素子Q2がオンとなる期間TON、及びオフとなる期間TOFFにおけるスイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2は、図14(a)に示すような波形となり、スイッチング素子Q2のコレクタには、図14(b)に示すような波形のコレクタ電流IQ2が流れることになる。
【0023】
この場合、一次側直列共振コンデンサC1に流れる一次側直流共振電流I1は、図14(c)に示されているような正弦波となり、スイッチング素子Q1に負方向の一次側直流共振電流I1が流れ、スイッチング素子Q2には正方向の一次側直流共振電流I1が流れることになる。換言すれば、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオン/オフを行うことによって、上記一次側直列共振コンデンサC1と直列接続された一次巻線N1には、共振電流波形に近いドライブ電流が供給されるということがいえる。この一次巻線N1に流れる電流に応じて発生する交番電圧によって、二次巻線N2にも交番電圧が励起されることになる。
そして、上記のようにして二次巻線N2に発生する交番電圧に応じて、二次巻線N2に接続されるブリッジ整流回路DBRの正極側の入力端子と負極側の入力端子との間の端子間電圧V2としては、図14(e)に示す波形が得られることになる。つまり、ブリッジ整流回路DBRに整流電流が流れる期間において整流平滑電圧E0の絶対値レベルでクランプされた波形が得られる。(また、このような端子間電圧V2によっては、二次巻線N2に流れる電流が不連続モードであることも示されている。)
【0024】
また、スイッチング素子Q2に対して並列に接続されている一次側部分電圧共振コンデンサCpには、図14(d)に示されているように、スイッチング素子Q1,Q2が、それぞれターンオンまたはターンオフ時の短期間のみ共振電流ICPが流れることになる。つまり、部分電圧共振動作を行うようにされる。
これにより、スイッチング素子Q1,Q2をZVS動作及びZCS動作としてスイッチング素子Q1,Q2におけるスイッチング損失の低減を図るようにしている。
【0025】
図15は、上記図12に示した電源回路の特性例として、VAC=100V時において、二次側直流出力電圧EO1の負荷電力Poが0W〜200Wまで変動した時のAC−DC電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、スイッチング素子Q2の期間TONの変化特性を示した図である。
【0026】
この図に示すように、図12に示した電源回路では負荷電力Poが重くなるにしたがって、スイッチング周波数fsが低くなるように制御されている。またこれと同時にスイッチング素子Q2がオンとなる期間TONが長くなるように制御されている。
また、この場合のAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)は、負荷電力Po=200W時に約91.8%、負荷電力Po=150W時に約92.4%となり、負荷電力Po=150W時において最も高効率な状態が得られている。
【0027】
なお、上記図14に示す動作及び図15に示す特性を得るにあたっては、図12に示す電源回路の部品素子の定数を次のように選定している。
絶縁コンバータトランスPIT1については、一次巻線N1=二次巻線N2=45Tを巻装している。また、一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF
一次側部分電圧共振コンデンサCp=330pFを選定している。
【0028】
また、図16は、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできる、先行技術としてのスイッチング電源回路のさらに他の回路例を示した回路図である。なお、上記図12、図13に示した電源回路と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
この図に示す電源回路は、他励式による電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされている。また、商用交流電源AC=100V系の条件に対応した構成が採られている。
【0029】
この図に示す電源回路においても、上記図13に示した電源回路と同様、入力整流回路として全波整流平滑回路が備えられる。
また、この電源回路においては、スイッチング素子Q11,Q12をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振・ドライブ・保護回路2が設けられる。この発振・ドライブ・保護回路2は、発振回路、駆動回路、及び保護回路を有している。そして、発振回路及び駆動回路によって、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート電圧)をスイッチング素子Q11,Q12の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q11,Q12は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
また、発振・ドライブ・保護回路2の保護回路は、例えば当該電源回路における過電流、過電圧の状態を検出して、回路が保護されるようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。
【0030】
絶縁コンバータトランスPIT1の二次側には、二次巻線N2と、この二次巻線N2よりも少ない巻数による二次巻線N2Aが巻装されている。これらの二次側巻線には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
【0031】
二次巻線N2は、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0032】
また、二次巻線N2Aも、センタータップを二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO3,DO4、及び平滑コンデンサCO2から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO2の両端電圧として二次側直流出力電圧EO2が得られる。また、二次側直流出力電圧EO2は、制御回路1のための動作電源としても供給される。
【0033】
制御回路1は、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ・保護回路2に供給する。発振・ドライブ・保護回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q11,Q12を駆動する。このようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されることで、二次側直流出力電圧のレベルが安定化されることになる。
【0034】
ここで、上記構成による電源回路において、発振・ドライブ・保護回路2の動作電源として供給される低圧の直流電圧E3は、約1.7Vが得られるようにされている。
また、上記構成では、両波整流方式により二次側直流電圧EO1を得ているが、例えばセンタータップを設ける代わりに、ブリッジ整流回路を接続するなどして、全波整流方式により得るようにしてもよい。
また、二次側直流電圧EO1としては、約135Vが得られるようにされている。そして、この条件の下で、二次巻線N2のターン数Tについて、3V/T以下となるようにすれば、整流ダイオードDO1,DO2に流れる二次巻線電流は連続モードとなる。また、5V/Tとなるようにすれば不連続モードとなる。
【0035】
図17は、上記図16に示した電源回路の動作をスイッチング周期により示す波形図である。ここでは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=125W時の条件での動作が示されている。
この場合、スイッチング素子Q12がオンとなる期間TON、及びオフとなる期間TOFFにおけるスイッチング素子Q12のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2は、図17(a)に示すような波形となり、スイッチング素子Q12のコレクタには、図17(b)に示すような波形のコレクタ電流IQ2が流れることになる。
【0036】
そして、一次巻線N1の励磁インダクタンスL1により負極性の鋸歯状波電流がコレクタ電流IQ2として流れている期間Aは、負荷側に電力伝送を行わない非電力伝送期間となる。
これに対して、一次巻線N1のリーケージインダクタンス成分L1lと直列共振コンデンサC1の静電容量とによる正極性の共振電流がコレクタ電流IQ2として流れる期間Bは、負荷側に電力伝送を行う電力伝送期間となる。
【0037】
この場合、一次側直列共振コンデンサC1には、図17(d)に示すような一次巻線電流I1が流れることで、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1の両端には、図17(c)に示すように、期間TONと期間TOFFとで極性が反転する波形の電圧V1が得られる。
また、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には図17(f)に示すような二次側電流IDが流れることで、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間の両端電圧V2は、図17(e)に示すような波形の出力が得られることになる。
【0038】
図18には、上記図17に示したスイッチング周期による波形図の比較として、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=25W時の条件における動作をスイッチング周期により示した波形図である。
この場合、スイッチング素子Q12がオンとなる期間TON、及びオフとなる期間TOFFにおけるスイッチング素子Q12のコレクタ−エミッタ間電圧VQ2は、図18(a)に示すような波形となり、スイッチング素子Q12のコレクタには、図18(b)に示すような波形のコレクタ電流IQ2が流れることになる。そして、この場合は、上記図17(b)に示した波形と比較すれば分かるように、非電力伝送期間Aが拡大している。このことから負荷電力Po=25W時(軽負荷時)には、負荷側への電力伝送が減少して電力変換効率が低下していることが分かる。
【0039】
この場合の一次側直列共振コンデンサC1には、図18(d)に示すような正弦波状の一次巻線電流I1が流れることで、絶縁コンバータトランスPIT1の一次巻線N1の両端には、図18(c)に示すように波形の電圧V1が得られる。また、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には図18(f)に示すような二次側電流IDが流れることで、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間の両端電圧V2は、図18(e)に示すような波形の出力が得られることになる。
【0040】
また、図19は、上記図16に示した電源回路についての、負荷電力変動に対する、電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、及びスイッチング出力電流IQ1,IQ2の変化特性を示している。ここでは、交流入力電圧VAC=100Vで、負荷電力Po=0W〜125Wの条件での特性が示されている。
この場合、電力変換効率(ηAC/DC)については重負荷となるのに従って高くなっていく傾向を有していることがわかる。そして、負荷電力Po=125W時においては電力変換効率(ηAC/DC)は約92%となっているが、負荷電力Po=50W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約89%、負荷電力Po=25W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約82.5%まで低下している。そして、この場合は、無負荷時の交流入力電力は4.2Wになっている。
また、スイッチング周波数fsは、軽負荷となるのに従って比例的に上昇していく傾向を有している。
また、負荷電力Po=125W時におけるスイッチング出力電流IQ1,IQ2のピーク電流値は3.5Ap、負荷電力Po=25W時におけるスイッチング出力電流IQ1,IQ2のピーク電流値は3.0Apとなる。
【0041】
上記図16に示した電源回路の構成によると、負荷電力Po=25W時においては、一次巻線N1のリーケージインダクタンス成分L1l(L1l=42μH)と直列共振コンデンサC1の静電容量とにより、正極性の共振電流が流れ、負荷側に電力伝送を行う電力伝送期間Bが短くなる。そして、一次巻線N1の励磁インダクタンスL1=(L1=165μH)による負極性の鋸歯状波電流が流れる非電力伝送期間Aが長くなる。このため、軽負荷時の電力変換効率(ηAC/DC)が低下している。
【0042】
なお、上記図17〜図19の各図に示す測定結果を得るにあたっては、図16に示した電源回路について、下記のようにして部品素子を選定している。
先ず、絶縁コンバータトランスPIT1については、ギャップ長G=1.0mmで、一次巻線N1=24T、二次巻線N2=23T+23T、三次巻線N4=2Tを巻装している。また、この場合においては二次側電流は不連続モードとなる。
また、一次側直列共振コンデンサC1=0.068μF、一次側部分電圧共振コンデンサCp=470μFを選定している。
【0043】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したような先行技術としての電源回路は、負荷電力Poが減少するにしたがって、負荷側に電力伝送を行わない非電力伝送期間Aが拡大するため、これに伴って、電力変換効率(ηAC/DC)が低下する。例えば負荷電力Po=50W時には電力変換効率(ηAC/DC)が89%となり、負荷電力Po=25W時には電力変換効率(ηAC/DC)が82.5%まで低下する。また、負荷電力Po=0W時である無負荷時においても交流入力電力として4.2Wが必要とされていた。つまり、先行技術としての電源回路においては、例えば50W以下の軽負荷時における電力変換効率(ηAC/DC)が低下するという欠点があった。
【0044】
また、絶縁コンバータトランスPIT1のコアCR1,CR2の中央磁脚にはギャップGを設ける必要がある。このため、絶縁コンバータトランスPIT1の外周に銅板のショートリングを設けるなどのシールド対策が必要になり、それだけ、絶縁コンバータトランスのコストアップ及び大型化を招くことになる。
【0045】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、商用交流電源を入力して整流平滑動作を行うことで、整流平滑電圧を生成する整流平滑手段と、入力された直流入力電圧を断続するスイッチング素子を備えて形成されるスイッチング手段と、スイッチング素子をスイッチング駆動する駆動手段とを備える。
そして、磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線及び二次巻線を巻装することで、上記一次巻線と二次巻線とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるようにされると共に、上記二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように上記二次巻線の巻線数を設定して構成され、上記一次巻線に得られる上記スイッチング手段の出力を二次巻線に対して伝送する絶縁コンバータトランスを備える。
さらに、少なくとも、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、スイッチング手段を形成するスイッチング素子のうち、所定のスイッチング素子に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、スイッチング手段を形成するスイッチング素子のターンオフ期間においてのみ部分電圧共振動作を行う一次側部分電圧共振回路とを備える。
さらにまた、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して整流動作を行って二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、二次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、直流出力電圧生成手段を形成する整流ダイオード素子がオフとなるタイミングで部分共振動作を行う二次側部分電圧共振回路と、二次側直流出力電圧のレベルに応じて、スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された定電圧制御手段とを備えるようにした。
【0046】
上記構成によると、本発明のスイッチング電源回路としては、複合共振形コンバータとして、一次側は、電流共振形スイッチングコンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた基本構成を採る。また、この場合には、二次側に対しても二次側部分電圧共振回路を設けるようにしている。そのうえで、絶縁コンバータトランスのコアにギャップを形成しないようにして、一次巻線と二次巻線との結合係数を所要の結合係数以上の密結合にすると共に、二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように選定する。
つまり、上記構成においては、一次側電流共振形コンバータ、一次側部分電圧共振回路、及び二次側部分電圧共振回路による複合共振形コンバータとして、密結合の絶縁コンバータトランスによる一次側から二次側への電力伝送を行うようにされている。そしてこの構成の下で、絶縁コンバータトランスの二次巻線の巻線数を上記した条件の下で設定するようにしている。これによっては、二次巻線の巻線数がその分増加されることになるが、これに伴って、二次巻線のリーケージインダクタンスも増加されることとなる。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明していく。
図1は、本発明の第1実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。
この図1に示す電源回路は、一次側に4石構成の自励式による電流共振形コンバータと一次側部分電圧共振コンデンサによる一次側部分電圧共振回路を備え、二次側に二次側部分電圧共振コンデンサによる二次側部分電圧共振回路を備えた複合共振形コンバータとしてのスイッチング電源回路である。
この電源回路においては、交流電源ACに対してコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタとしてコモンモードチョークコイルCMCとアクロスコンデンサCL が設けられ、いわゆるラインフィルタを構成する。
そして商用交流電源から直流入力電圧を生成するための整流回路系としては、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiからなる全波整流平滑回路が備えられ、交流入力電圧VACの等倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiを生成するようにされる。
【0048】
この図に示す電流共振形コンバータは、図のように4つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4をフルブリッジ結合方式によって接続されている。この場合、スイッチング素子Q1〜Q4は、200V耐圧のバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用されている。
この場合、スイッチング素子Q1,Q3のコレクタは、整流平滑電圧Eiのライン(平滑コンデンサCiの正極端子)と接続される。
そして、スイッチング素子Q1のエミッタは、スイッチング素子Q2のコレクタと接続され、スイッチング素子Q2のエミッタは一次側アースに対して接続される。
また、スイッチング素子Q3のエミッタは、スイッチング素子Q4のコレクタと接続され、スイッチング素子Q4のエミッタは一次側アースに対して接続される。
【0049】
スイッチング素子Q1のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB1−共振用コンデンサCB1−駆動巻線NB1を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。ここで、共振用コンデンサCB1−駆動巻線NB1の直列接続は、共振用コンデンサCB1のキャパシタンスと、駆動巻線NB1のインダクタンスによって直列共振回路を形成しており、この直列共振回路の共振周波数によってスイッチング周波数が決定される。また、ベース電流制限抵抗RB1は、自励発振駆動回路からスイッチング素子Q1のベースに流すべき駆動信号としてのベース電流レベルを調整する。
また、スイッチング素子Q1のベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD1が図示する方向によって接続される。また、スイッチング素子Q1のコレクタ−ベース間には、起動時の電流をベースに流すための起動抵抗RS1が接続される。
【0050】
同様に、スイッチング素子Q2のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB2−共振用コンデンサCB2−駆動巻線NB2を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB2−駆動巻線NB2によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD2が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗RS2が接続される。
【0051】
また同じくスイッチング素子Q3のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB3−共振用コンデンサCB3−駆動巻線NB3を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB3−駆動巻線NB3によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD3が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗RS3が接続される。
【0052】
また同じくスイッチング素子Q4のベースに対しては、ベース電流制限抵抗RB4−共振用コンデンサCB4−駆動巻線NB4を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB4−駆動巻線NB4によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD4が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗RS4が接続される。
【0053】
スイッチング素子Q2,Q4のコレクタ−エミッタ間に対しては、それぞれ並列に一次側部分電圧共振コンデンサCp1,Cp2が接続されている。
この一次側部分電圧共振コンデンサCp1のキャパシタンスと、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のインダクタンス成分によって、それぞれ並列共振回路(一次側部分電圧共振回路)を形成する。
そして、一次側部分電圧共振コンデンサCp1は、スイッチング素子Q2,Q3がターンオフする短期間にのみ電圧共振する部分電圧共振動作が得られる。また、一次側部分電圧共振コンデンサCp2はスイッチング素子Q1,Q4がターンオフする短期間にのみ電圧共振する部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0054】
直交形制御トランス(ドライブトランス)PRTは、スイッチング素子Q1〜Q4をスイッチング駆動すると共に、定電圧制御のためにスイッチング周波数を可変制御するために設けられる。
このドライブトランスPRTは、駆動巻線NB1〜NB4が巻回されていると共に、駆動巻線NB1を利用して共振電流検出巻線NAが巻回されている。さらにこれらの各巻線に対して制御巻線Ncが直交する方向に巻回された可飽和リアクトルとされている。なお、この場合は駆動巻線NB1と駆動巻線NB4、及び駆動巻線NB2と駆動巻線NB3には、互いに同極性の電圧が励起され、且つ、駆動巻線NB1と駆動巻線NB2、及び駆動巻線NB3と駆動巻線NB4には互いに逆極性の電圧が励起される巻方向によって巻装されている。また共振電流検出巻線NAの巻数(ターン数)は例えば1T(ターン)程度とされている。
【0055】
この場合、直交形制御トランスPRTの共振電流検出巻線NAに得られたスイッチング出力がトランス結合を介して各駆動巻線NB1〜NB4に誘起されることで、各駆動巻線NB1〜NB4にはドライブ電圧としての交番電圧が発生する。このドライブ電圧は、自励発振駆動回路を形成する各直列共振回路から各ベース電流制限抵抗RB1〜RB4を介して、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1〜Q4のベースに出力される。これにより、各スイッチング素子Q1〜Q4は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。
【0056】
絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング出力を二次側に伝送する。
この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、直列共振コンデンサC1、共振電流検出巻線NAを介してスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接点に接続される。また一次巻線N1の他端は、スイッチング素子Q3のエミッタとスイッチング素子Q4のコレクタの接点に接続される。これにより、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,Q3の組が交互にスイッチング動作することで一次巻線N1にスイッチング出力が得られるようにされる。
【0057】
そして、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1のインダクタンス成分を含む絶縁コンバータトランスPITの漏洩インダクタンス成分により一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成している。
このようにして、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしては、電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振動作とが複合的に得られていることになる。
【0058】
この電源回路のスイッチング動作としては、例えば次のようになる。
先ず、商用交流電源ACが投入されると、例えば起動抵抗RS1〜RS4を介してスイッチング素子Q1〜Q4のベースに起動のためのベース電流が供給されることになる。ここで、例えばドライブトランスPRTの駆動巻線NB1,NB4と、駆動巻線NB2,NB3は、互いに逆極性の電圧が励起されることになるので、スイッチング素子Q1,Q4が先にオンとなったとすれば、スイッチング素子Q2,Q3はオフとなるように制御される。そして、これら駆動巻線NB1〜NB4に励起された交番電圧を源として、スイッチング素子Q1〜Q4の各自励発振駆動回路が、共振動作による自励発振動作を行う。これにより、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,Q3の組が交互にオン/オフするように制御される。つまりスイッチング動作を行うことになる。
【0059】
そして例えばスイッチング素子Q1,Q4がオンとなったときには、そのスイッチング出力として、共振電流検出巻線NAを介して一次巻線N1及び直列共振コンデンサC1に共振電流が流れる。そして、この共振電流が「0」となる近傍で、スイッチング素子Q1,Q4がオフとなるとともに、スイッチング素子Q2,Q3がオンとなる。これにより、スイッチング素子Q2,Q3を介して先とは逆方向の共振電流が流れる。以降、ZVS及びZCSにより、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,Q3の組が交互にオンとなる自励式のスイッチング動作が継続される。また、スイッチング素子Q1〜Q4がオン/オフ動作に伴い、スイッチング素子Q1〜Q4のターンオン、ターンオフ時の短期間においては、一次側部分電圧共振コンデンサCp1,Cp2に電流が流れる。つまり、部分電圧共振動作が得られる。
【0060】
絶縁コンバータトランスPITは、磁脚にギャップGを形成していないコアに対して一次巻線N1及び二次巻線N2,N3を巻装し、一次巻線N1と二次巻線N2、N3とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるように形成される。なお、この絶縁コンバータトランスPITの構造例については後述する。
【0061】
絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては二次側部分電圧共振コンデンサC2が並列に接続される。この二次側部分電圧共振コンデンサC2には、例えばフィルムコンデンサが採用される。そして、この二次側部分電圧共振コンデンサC2のキャパシタンスと、二次巻線N2のリーケージインダクタンスとにより、二次側部分電圧共振回路が形成される。
このため、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に交番電圧が励起されることにより、二次側にて部分共振(電圧共振)動作が得られることになる。つまり、図1に示す電源回路は、一次側では電流共振動作及び部分電圧共振動作が得られると共に、二次側においても部分電圧共振動作が得られる複合共振形コンバータとして構成されていることになる。
【0062】
上記二次巻線N2に対しては、図示するようにしてブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCO1が接続されることで全波整流回路が形成される。この全波整流回路の全波整流動作によって、平滑コンデンサCO1の両端に二次側直流出力電圧EO1が得られるようになっている。二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷に対して供給される。さらに、この二次側直流出力電圧EO1は、図示するように制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0063】
また二次側においては、さらに二次巻線N3が巻装される。この二次巻線N3はセンタータップ点が二次側アースに接続されると共に、一端はダイオードD01のアノードに接続され、他端はダイオードD02のアノードに接続される。
そしてダイオードD01、D02のカソードは平滑コンデンサC02の正極側に接続され、これによって両波整流平滑回路が形成されて、例えば低電圧の直流出力電圧E02を得るようにしている。
【0064】
制御回路1は二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じ、制御巻線NCに流す制御電流(直流電流)レベルを可変することで、直交形制御トランスPRTに巻装された駆動巻線NB1〜NB4のインダクタンスLB1〜LB4を可変制御する。これにより、各駆動巻線NB1〜NB4のインダクタンスLB1〜LB4を含んで形成されるスイッチング素子Q1〜Q4のための各自励発振駆動回路内の直列共振回路の共振条件が変化し、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング周波数が可変されて二次側直流出力電圧の安定化を図るようにしている。
【0065】
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば図10又は図11に断面図として示した構造、即ち一対のE字型コア又は一対のU字型コアを有した構造とされる。
図10は一対のE字型コアを用いた構造例である。
絶縁コンバータトランスPITのコアとしては、図示するようにして、2つのE字型コアCR1,CR2の互いの磁脚の端部を対向させるようにして組み合わせることで、EE字型コアを形成する。またこの場合、E字型コアCR1,CR2の各中央磁脚が対向する面にギャップは形成されない。
なお、E字型コアCR1,CR2には、例えばフェライト材を用いるようにされる。
そして、本実施の形態では、上記のようにして形成されるEE字型コア(CR1,CR2)に対して一次巻線N1及び二次巻線N2,N3を巻装するために、一次/二次分割ボビンBを用いるようにされる。
【0066】
図11は一対のU字型コアを用いた構造例である。
この場合の絶縁コンバータトランスPITは、そのコアとして、図11に示すように、それぞれ2本の磁脚を有するU字型コアCR11、CR12が組み合わされ、U−U字型コアを形成するようにされる。
さらに、上記のようにして形成されるU−U字型コアの一方の磁脚に対しては、図示するようにして一次巻線N1と二次巻線N2,N3とを互いに分割された巻装領域に巻装したボビンBが取り付けられる。
また、この場合も、上記のように形成されるU−U字型コアの中央磁脚に対し、ギャップを形成しないようにしている。
【0067】
このように本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの図10、図11のいずれにより構成した場合でも、ギャップGをゼロにすることで、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。
【0068】
ところで、例えば上記した図12、図13、図16のような先行技術の電源回路では、絶縁コンバータトランスPIT1について疎結合の状態とすることで磁気飽和を抑制していた。これに対して、図1に示した電源回路では、二次側に備えられる部分電圧共振回路の共振動作によって磁気飽和を抑制するようにしている。
【0069】
また、図1に示した電源回路では、二次側に備えられる部分電圧共振回路の共振動作によって、絶縁コンバータトランスPITを密結合トランスとしたときに、負荷電力が100W以下の時に異常発振が生じないようにもしている。
これにより、絶縁コンバータトランスPITを密結合の状態となるように構成しても、電源回路の動作上での問題は生じないことになる。
【0070】
さらに図1に示した電源回路では、二次側直流出力電圧EO1として、約135Vが得られるようにされている。そして、この条件の下で、二次巻線N2のターン数Tについて2V/T以下となるように二次巻線N2の巻数を選定して、二次巻線N2の巻線数の増加を図ることで、後述するように例えば50W以下の軽負荷時における電力変換効率を向上させるようにしている。
【0071】
図2に交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時の各部の動作波形を示す。
また図3に交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=0W〜200Wの変動に対するAC/DC電力変換効率(ηAC/DC)及びスイッチング周波数fsの変化特性を示している。
なお、図2、図3に示す測定結果を得るにあたっては、上記図1に示した電源回路では、下記のようにして部品素子を選定している。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、ギャップG=0mmで、一次巻線N1=44T、二次巻線N2=80Tを巻装している。
また、一次側直列共振コンデンサC1=0.047μF、一次側部分電圧共振コンデンサCp1,Cp2=680pF、二次側部分電圧共振コンデンサC2=4700pFを選定している。
【0072】
図2に示すように、電源回路のスイッチング素子Q1〜Q4の動作は、同図(a)に示すスイッチング素子Q1のコレクタ−エミッタ間電圧VQ1と、同図(c)(d)に示す各スイッチング電流IQ1〜IQ4により示され、スイッチング素子Q1,Q4は、期間TONにおいてオンとなり、期間TOFFにおいてオフとなるようにスイッチング動作を行う。
【0073】
ここで、スイッチング素子Q1,Q4がオンになると、スイッチング素子Q1→一次側直列共振コンデンサC1→一次巻線N1→スイッチング素子Q4の経路で共振電流が流れる。そして、この共振電流が零となる近傍でスイッチング素子Q2,Q3がオン、スイッチング素子Q1,Q4がオフとなるように制御されることで、スイッチング素子Q3→一次巻線N1→一次側直列共振コンデンサC1→スイッチング素子Q2の経路で共振電流が流れる。以降はスイッチング素子Q1,Q4とスイッチング素子Q2,Q3が交互にオンとなるように制御される。
【0074】
また、スイッチング素子Q2に並列に接続されている一次側部分電圧共振コンデンサCp1には、スイッチング素子Q2がターンオンまたはターンオフする短期間において、図2(b)に示すような部分共振電流ICPが流れることになる。また、図示していないがスイッチング素子Q4に接続されている一次側部分電圧共振コンデンサCp2にもスイッチング素子Q4がターンオンまたはターンオフする短期間において、部分共振電流が流れることになる。
【0075】
これにより、スイッチング素子Q1,Q4のコレクタ−エミッタ間を流れる電流IQ1,IQ4は、図2(b)に示すような波形となる。また、スイッチング素子Q2,Q3に流れる電流IQ2,IQ3は、上記電流IQ1,IQ4とは180度位相のずれる波形となり、図2(d)に示すような波形となる。
【0076】
この場合、一次側直列共振コンデンサC1に流れる一次側直流共振電流I1は、図2(e)に示されているような正弦波となり、スイッチング素子Q1に負方向の一次側直流共振電流I1が流れ、スイッチング素子Q2には正方向の一次側直流共振電流I1が流れることになる。換言すれば、スイッチング素子Q1,Q4の組と、スイッチング素子Q2,q3の組が交互にオン/オフを行うことによって、上記一次側直列共振コンデンサC1と直列接続された一次巻線N1には、共振電流波形に近いドライブ電流が供給されるということがいえる。この一次巻線N1に流れる電流に応じて発生する交番電圧によって、二次巻線N2にも交番電圧が励起されることになる。
【0077】
そして、上記のようにして二次巻線N2に発生する交番電圧に応じて、二次巻線N2に接続されるブリッジ整流回路DBRの正極側の入力端子と負極側の入力端子との間の端子間電圧V2としては、図2(g)に示す波形が得られることになる。つまり、ブリッジ整流回路DBRに整流電流が流れる期間において整流平滑電圧E0の絶対値レベルでクランプされた波形が得られる。
また、ブリッジ整流回路DBRからは、図2(h)に示すような波形の電流IDが出力されることになる。また、ブリッジ整流回路DBRに発生する電圧V2がゼロレベルとなるゼロクロス付近では、図2(f)に示すような共振電流IC2が二次側部分電圧共振コンデンサC2に流れていることから、二次側で部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
【0078】
また、図1に示す電源回路は、図3に示されるように、負荷電力Poが重くなるに従い、スイッチング周波数fsが低くなるように制御されている。つまり、スイッチング周波数制御によって二次側直流出力電圧EO1の定電圧制御を行っていることが分かる。
【0079】
また、図1に示す電源回路は、入力整流回路が全波整流回路によって構成されているにもかかわらず、負荷電力Po=200W(重負荷時)の電力変換効率(ηAC/DC)が、上記図12に示した先行技術例とほぼ同等の92%とほぼ同等レベルになっていることが分かる。即ち、図1に示す電源回路によれば、負荷電力Po=200Wの場合も、図12に示した入力倍電圧整流回路による電源回路と同等以上の電力変換効率(ηAC/DC)、つまり92%以上の電力変換効率を実現することができる。
【0080】
このように図1に示す電源回路において重負荷時の電力変換効率(ηAC/DC)が向上するのは、一次側をフルブリッジ結合の電流共振形コンバータにより構成したこと、及び、絶縁コンバータトランスPITのギャップをゼロとしたことにより、以下のような理由により実現されるものである。
【0081】
即ち、一次側を入力全波整流回路により構成したことで、上記図12の電源回路では、耐圧400Vのスイッチング素子Q1〜Q2を用いていた。これに対して、図1に示す電源回路では耐圧200Vのスイッチング素子Q1〜Q4を選定することが可能になる。これにより、スイッチング特性の向上を図ることができ、発熱によるスイッチング損失が低減すること。
また、図12に示したスイッチング素子Q1,Q2がハーフブリッジ構成とされる電源回路では、スイッチング素子Q1,Q2に流れる電流IQ1,IQ2が3.3Apであり、一次側共振電流I1が6.6Ap−pであった。
これに対して、図1に示した電源回路は、スイッチング素子Q1〜Q4がフルブリッジ構成とされることから、スイッチング素子Q1〜Q4に流れる電流IQ1〜IQ4はいずれも2.3Apであり、一次側共振電流I1が4.6Ap−pとなり、一次側を流れる電流が約30%程度低減すること。
さらに一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数が0.8から0.95に向上したことによって漏洩磁束が低減し、一次巻線N1と二次巻線N2の渦電流損失が低下すること。
さらにまた、ギャップ周辺のフリンジ磁束によって一次巻線N1と二次巻線N2に発生する局部的な電力損失の問題が解消されて、絶縁コンバータトランスPITの銅損が低減することである。
【0082】
また、ここで、例えば図1に示した電源回路の構成のもとで、絶縁コンバータトランスPITについて、一次巻線N1=44T、二次巻線N2=55Tを選定し、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧V2を約2.45V/T程度に設定したとする。するとその場合は、負荷電力=50W時(軽負荷時)の電力変換効率が低下するという測定結果が得られている。
そこで、本実施の形態としては、図1に示す電源回路として、一次巻線N1=44T、二次巻線N2=80Tを選定して、二次巻線N2の誘起電圧V2を2V/T以下の約1.69V/T程度に設定するようにした。
このように構成することで、二次巻線N2の巻線数を、これまでの巻線数より所定数だけ増加されることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスを増加されることになる。これにより、負荷電力Poが減少するにしたがって、一次側直列共振コンデンサC1の一次側直流共振電流I1を減少させることが可能になるため、スイッチング素子Q1〜Q4の電流IQ1〜IQ4のピーク値を低下させることができ、軽負荷時の電力変換効率の向上が図られることになる。
【0083】
例えば先行技術としての電源回路では、負荷電力Po=200W〜100W時の電力変換効率(ηAC/DC)は約92%、負荷電力Po=50W時の電力変換効率(ηAC/DC)は約89%、負荷電力Po=25W時の電力変換効率(ηAC/DC)は約82.5%程度とされていた。
【0084】
これに対して、図1に示す電源回路では、負荷電力Po=200W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約92.5%、負荷電力Po=150W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約93.5%、負荷電力Po=100W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約94.0%、負荷電力Po=50W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約90%となり、重負荷時から軽負荷時にわたって電力変換効率(ηAC/DC)を向上させることができる。
【0085】
即ち、図1に示す電源回路は、上記図12,図13に示したハーフブリッジ結合により構成される電源回路と比較して、負荷電力Po=200W〜0Wにおいて電力変換効率(ηAC/DC)の向上を図ることができる。
この結果、図1に示す電源回路では、先行技術の電源回路と比較して、例えば負荷電力Po=200W時において1.2W、負荷電力Po=100W時において2.3W、負荷電力Po=50W時において2.0Wの交流入力電力を低減することが可能になるものである。
【0086】
また、図1に示した電源回路の場合、絶縁コンバータトランスPITにおいてギャップを形成しないため、絶縁コンバータトランスPITの製造にあたりギャップを形成するための工程は不要となるので、それだけ製造工程が簡略化され、コストダウンを図ることが可能になる。また、密結合とされることで、絶縁コンバータトランスPITからの漏洩磁束も低減されるので、例えば銅板によるショートリングを巻回して施す必要もなくなる。この点でも、絶縁コンバータトランスPITの製造工程が簡略化され、また、コストダウンが促進されることになる。
さらに、ギャップが無くなったことで、絶縁コンバータトランスPITの巻線の局部的な温度上昇の問題も解消され、それだけ信頼性が向上することにもなる。
【0087】
図4は、上記図1に示した電源回路に適用可能な他の二次側回路の構成を示した図である。
この図4に示す二次側回路においては、二次巻線(N2+N3)にセンタータップが設けられ、このセンタータップが二次側アースに接地される。そして二次巻線N2の一端及び他端は、それぞれ整流ダイオードDO11,DO12のアノードに接続される。そして、これら整流ダイオードDO11,DO12のカソードが、それぞれ平滑コンデンサCO1の正極端子に接続されており、これにより両波整流回路が形成され、平滑コンデンサCO1の両端に直流出力電圧EO1が得られるようにしている。
また、同様に二次巻線N3の一端及び他端はそれぞれ整流ダイオードDO13,DO14のアノードに接続され、これら整流ダイオードDO13,DO14のカソードを、それぞれ平滑コンデンサCO2の正極端子に接続するされる。これにより、平滑コンデンサCO2の両端に直流出力電圧EO2が得られるようにしている。
そして、この場合も絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2に対しては、二次側部分電圧共振コンデンサC2が並列に接続して構成することも可能である。
【0088】
図5は、本発明の第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図に示す電源回路は、他励式による電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされている。また、商用交流電源AC=100V系の条件に対応した構成が採られている。
【0089】
この図に示す電源回路においては、先ず、商用交流電源ACに対して、ブリッジ整流回路Di及び1本の平滑コンデンサCiから成る全波整流平滑回路が備えられる。そして、これらブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiの全波整流動作によって、平滑コンデンサCiの両端には整流平滑電圧Ei(直流入力電圧)が得られることになる。この整流平滑電圧Eiは、交流入力電圧VACの等倍に対応したレベルとなる。
【0090】
上記直流入力電圧を入力してスイッチングする電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FET若しくはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)による2本のスイッチング素子Q11,Q12をハーフブリッジ結合により接続している。スイッチング素子Q11,Q12の各ドレイン−ソース間に対しては、図示する方向により、それぞれダンパーダイオードDD1,DD2を並列に接続している。
【0091】
また、スイッチング素子Q12のドレイン−ソース間に対しては、一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列に接続される。この一次側部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q11,Q12のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0092】
この電源回路においては、スイッチング素子Q11,Q12をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振・ドライブ・保護回路2が設けられる。この発振・ドライブ・保護回路2は、発振回路、駆動回路、及び保護回路を有している。そして、発振回路及び駆動回路によって、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート電圧)をスイッチング素子Q11,Q12の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q11,Q12は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
また、発振・ドライブ・保護回路2の保護回路は、例えば当該電源回路における過電流、過電圧の状態を検出して、回路が保護されるようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング動作を制御する。
【0093】
また、この発振・ドライブ・保護回路2は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に対してタップ出力を設けることで形成した三次巻線N4に対して、整流ダイオードD3及びコンデンサC3から成る整流回路によって得られた低圧の直流電圧E3を入力して動作電源としている。また、起動時においては、起動抵抗RSを介して整流平滑電圧Eiを入力することで起動するようになっている。
【0094】
絶縁コンバータトランスPITはスイッチング素子Q11 、Q12のスイッチング出力を二次側に伝送する。この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻始め端部は、一次側直列共振コンデンサC1の直列接続を介して、スイッチング素子Q11のソースとスイッチング素子Q12のドレインとの接続点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が伝達されるようになっている。
また、一次巻線N1の巻終わり端部は、一次側アースに接続される。
ここで、上記一次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1によっては、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成する。
【0095】
即ち、この電源回路もまた、一次側にはスイッチング動作を電流共振形とするための直列共振回路に対して、他の共振回路が組み合わされた複合共振形コンバータとしての構成を採るものとされる。
【0096】
この場合の絶縁コンバータトランスPITの構造としては、上記図10、図11に断面図として示した構造、即ち一対のE字型コア又は一対のU字型コアを有した構造とされる。
【0097】
絶縁コンバータトランスPITの二次側には、二次巻線N2と、この二次巻線N2よりも少ない巻数による二次巻線N2Aが巻装されている。これらの二次側巻線には、一次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起される。
【0098】
二次巻線N2は、図示するようにしてセンタータップを設けて二次側アースに接続した上で、図示するようにして整流ダイオードDO1,DO2、及び平滑コンデンサCO1から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO1の両端電圧として二次側直流出力電圧EO1が得られる。この二次側直流出力電圧EO1は、図示しない負荷側に供給されるとともに、次に説明する制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
【0099】
また、二次巻線N2Aも、センタータップを二次側アースに接続した上で、整流ダイオードDO3,DO4、及び平滑コンデンサCO2から成る両波整流回路を接続している。これにより、平滑コンデンサCO2の両端電圧として二次側直流出力電圧EO2が得られる。また、二次側直流出力電圧EO2は、制御回路1のための動作電源としても供給される。
【0100】
制御回路1は、二次側直流出力電圧EO1のレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ・保護回路2に供給する。発振・ドライブ・保護回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q11,Q12を駆動する。このようにしてスイッチング素子Q11,Q12のスイッチング周波数が可変されることで、二次側直流出力電圧のレベルが安定化されることになる。
【0101】
ここで、上記構成による電源回路において、発振・ドライブ・保護回路2の動作電源として供給される低圧の直流電圧E3は、約1.7Vが得られるようにされている。
【0102】
そして、この図に示す電源回路においても、絶縁コンバータトランスPITのギャップGをゼロにすることで、一次巻線N1と二次巻線N2の結合係数を0.95程度の密結合の状態としている。そして、この場合も二次側に備えられる二次側部分電圧共振回路の共振動作によって、磁気飽和を抑制すると共に、負荷電力が100W以下の時に異常発振が生じないようにもしている。このようにすることで、絶縁コンバータトランスPITを密結合の状態となるように構成しても、電源回路の動作上での問題は生じないことになる。
【0103】
そして、この場合も二次側直流出力電圧EO1としては、約135Vが得られるようにされている。そして、この条件の下で、二次巻線N2のターン数Tについて2V/T以下となるように二次巻線N2の巻数を選定するようにしている。これにより、二次巻線N2の巻線数の増加を図ることで、軽負荷時の電力変換効率の向上させるようにしている。
【0104】
図6は、上記図5に示した電源回路の動作をスイッチング周期により示す波形図である。ここでは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=125W時の条件での動作が示されている。
また、図7にはた電源回路の特性として、負荷電力Po=0W〜125Wの変動に対する電力変換効率(ηAC/DC)、スイッチング周波数fs、及びスイッチング出力電流IQ1,IQ2の変化特性を示している。
【0105】
なお、図6、図7に示す測定結果を得るにあたっては、上記図5に示した電源回路では、下記のようにして部品素子を選定している。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、EER−35のフェライトコアを採用する。またギャップG=0mmで、一次巻線N1=40T、二次巻線N2=80T+80Tを巻装している。この場合は、絶縁コンバータトランスPITの二次側整流電流は連続モードとなる。また、一次巻線N1の励磁インダクタンスL1=5.6mH、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1l=157μH、二次巻線N2の励磁インダクタンスL2=23.0mH、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2l=685μH、コンバータトランスPITの結合係数k=0.95となる。
また、一次側直列共振コンデンサC1=0.056μF、二次側部分電圧共振コンデンサC2=1000pFを選定している。
【0106】
先ず、スイッチング素子Q12に流れるスイッチング出力電流(ドレイン電流)IQ2は、図6(b)に示すようにして、スイッチング素子Q12がオンとなる期間TONにおいて流れ、オフとなる期間TOFFにおいて0レベルとなっている。
また、一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列接続されたスイッチング素子Q12の両端電圧VQ2は、図6(a)に示すようにして、スイッチング素子Q12がオフとなる期間TOFFにおいては、直流入力電圧Eiのレベルでクランプされ、オフとなる期間TONにおいては0レベルとなる波形が得られる。
【0107】
また、上記したスイッチング動作が得られることで、一次巻線N1には、図6(d)に示す波形による一次巻線電流I1が流れる。この一次巻線電流I1は、図示するようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして、スイッチング周期に応じて極性が反転する波形となっている。
またこのときの一次側直列共振コンデンサC1の両端電圧VC1は、図6(c)のように示される。また一次巻線N1の両端電圧V1は、図6(e)に示すようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして極性が反転している。
【0108】
また、スイッチング素子Q12のコレクタ−エミッタ間に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサCpには、図6(f)に示すように、スイッチング素子Q12のターンオン及びターンオフ時に部分共振電流ICPが流れており、一次側部分電圧共振コンデンサCpにおいて部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
【0109】
また、この電源回路の二次側においては、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には、図6(h)に示すような二次側電流IDが流れ、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間には、図6(g)に示すような波形の電圧V2は出力が得られることになる。また、二次巻線N2を流れる二次側電流I2は図6(i)のように示される。さらに二次巻線N2に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサC2には、図6(j)に示すような波形の部分共振電流IC2が流れることになる。なお、この場合は二次巻線N2には高周波のリンギング成分が重畳されていることから、図6(g)〜図6(j)に示す二次側出力波形は高周波のリンギング成分が重畳された波形となる。
【0110】
また、図7に示すように、上記図5に示した電源回路の特性としては、負荷電力Po=125W〜25Wに対するスイッチング周波数fsの制御範囲は、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2=55Tである場合は、76kHz〜195kHzであったのに対して、図5に示した電源回路では、70kHz〜130kHzとなっている。つまり、図5に示した電源回路のほうが、スイッチング周波数fsの制御範囲が狭くなっている。これは即ち、二次側直流出力電圧EO1についての一定変動幅に対するスイッチング周波数の可変制御範囲としても、図5に示す回路のほうが狭くなるということを意味する。従って、図5に示した電源回路では、スイッチング動作の高速過渡応答特性の向上が図られることになる。
【0111】
また、図5に示すような回路構成の電源回路は、これまで絶縁コンバータトランスPITについて、一次巻線N1=27T、二次巻線N2=55T+55Tを選定して、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧V2を約2.45V/T程度に設定していた。この場合、負荷電力Po=125W〜50Wにおいては、先行技術としての電源回路に比べて電力変換効率(ηAC/DC)を向上させることができるが、負荷電力Po=50W〜0Wにおいては、逆に電力変換効率(ηAC/DC)が低下するという結果を招いていた。
【0112】
このため、本発明の第2の実施の形態としての電源回路では、一次巻線N1=40T、二次巻線N2=80T+80Tを選定して、二次巻線N2の誘起電圧V2を約1.69V/T程度に設定するようにした。これにより、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2の巻線数の増加を図ることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2lの増加させるようにしている。
このように構成すれば、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2lと二次側部分電圧共振コンデンサC2の並列共振作用によって、軽負荷時における一次側直列共振コンデンサC1の一次側直流共振電流I1を減少させることができる。よって、スイッチング素子Q11,Q12の電流IQ1〜IQ2のピーク値の低減することが可能になり、軽負荷時における電力変換効率の向上を図ることができる。
【0113】
例えば図16に示した先行技術としての電源回路では、負荷電力Po=125W〜0Wの変動に対して、負荷電力Po=125W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約92%、負荷電力Po=50W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約89%、負荷電力Po=25W時には電力変換効率(ηAC/DC)が約82.5%程度とされていた。また、負荷電力Po=0Wの無負荷時の入力電力は4.2Wとされていた。
【0114】
これに対して、図5に示す電源回路では、負荷電力Po=125W時の電力変換効率(ηAC/DC)が92%であり、図16に示した先行技術例とほぼ同等レベルであるにも関わらずが、負荷電力Po=50W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約94%、負荷電力Po=25W時の電力変換効率(ηAC/DC)が約93.5%、無負荷時の入力電力は1.8Wとなり、負荷電力Poが50W以下の軽負荷時における電力変換効率(ηAC/DC)が向上していることが分かる。
【0115】
この結果、例えば、負荷電力Po=50W時は、電力変換効率(ηAC/DC)が5%向上して入力電力を約3W低減することができる。また、負荷電力Po=25W時は、電力変換効率(ηAC/DC)が1%向上して、入力電力を約3.6W低減する。さらに無負荷時の入力電力も4.2Wから1.8Wとなり約2.4W低減することができる。
【0116】
また、このようにして負荷電力Po=50W以下における電力変換効率(ηAC/DC)の向上を図ることで、負荷電力Po=125W〜50W時のスイッチング負荷時の直流出力電圧のリップル電圧を、現状の8.3Vから3.3Vまで低減することができるという効果もある。
【0117】
またこの場合も、絶縁コンバータトランスPITにおいてギャップを形成しないため、図1に示した電源回路と同様、製造にあたりギャップを形成するための工程は不要となるので、それだけコストダウンを図ることが可能になる。また、例えば銅板によるショートリングを絶縁コンバータトランスPITに巻回して施す必要もなくコストダウンを図ることができる。さらに、絶縁コンバータトランスPITの巻線の局部的な温度上昇の問題も解消され、それだけ信頼性が向上することにもなる。
【0118】
図8は、本発明の第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示している。なお、この図において、図1及び図5と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0119】
先ず、この図に示す電源回路においては、2石のスイッチング素子をハーフブリッジ結合した電流共振形コンバータとして、自励式の構成を採っている。
また、この図に示す電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)から直流入力電圧(整流平滑電圧Ei)を生成するための整流回路系として、図示するように、2本の低速リカバリ型の整流ダイオードD1,D2と、2本の平滑コンデンサCi1,Ci2を接続してなる倍電圧整流回路が設けられる。この倍電圧整流回路では、直列接続された平滑コンデンサCi1−Ci2の両端に、交流入力電圧VACの2倍に対応する整流平滑電圧Eiを生成する。
【0120】
またこの場合の、2石のスイッチング素子Q1,Q2については、BJT(バイポーラトランジスタ)が選定されている。
この場合のスイッチング素子Q1のコレクタは、平滑コンデンサCi1の正極端子)と接続される。スイッチング素子Q1のエミッタは、スイッチング素子Q2のコレクタと接続され、スイッチング素子Q2のエミッタは一次側アースに対して接続される。つまり、スイッチング素子Q1,Q2は、ハーフブリッジ結合方式によって接続されている。
【0121】
また、スイッチング素子Q1のベースに対しては、共振用コンデンサCB1−ベース電流制限抵抗RB1−駆動巻線NB1を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。この自励発振駆動回路においては、共振用コンデンサCB1のキャパシタンスと、駆動巻線NB1のインダクタンスによって直列共振回路を形成しており、この直列共振回路の共振周波数によってスイッチング周波数が決定される。また、ベース電流制限抵抗RB1は、自励発振駆動回路からスイッチング素子Q1のベースに流すべき駆動信号としてのベース電流レベルを調整する。
【0122】
また、スイッチング素子Q1のベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD1が図示する方向によって接続されることで、オン期間における逆方向電流経路を形成する。また、平滑コンデンサCiの正極端子とスイッチング素子Q1のベース間には、起動時の電流をベースに流すための起動抵抗Rs1が接続される。
【0123】
同様にして、スイッチング素子Q2のベースに対しては、共振用コンデンサCB2−ベース電流制限抵抗RB2−駆動巻線NB2を直列接続して成る自励発振駆動回路が接続される。そして、共振用コンデンサCB2及び駆動巻線NB2によって、直列共振回路が形成される。また、ベース−エミッタ間には、ダンパーダイオードDD2が接続され、コレクタ−ベース間には起動抵抗Rs2が接続される。
【0124】
また、スイッチング素子Q2 のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列に一次側部分電圧共振コンデンサCpが接続されている。
この場合にも、一次側部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスと一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1によっては並列共振回路(部分電圧共振回路)を形成する。そして、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。
【0125】
ドライブトランスPRTは、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング駆動すると共に、スイッチング周波数を可変制御して定電圧化を図るために設けられる。
このドライブトランスPRTは、駆動巻線NB1,NB2及び共振電流検出巻線NDを巻回するとともに、更にこれらの各巻線に対して制御巻線Ncが直交する方向に巻回された可飽和リアクトルとされている。なお、駆動巻線NB1と、駆動巻線NB2は、互いに逆極性の電圧が励起される巻方向によって巻装されている。
【0126】
この場合にも、絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 、Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する。
この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の巻始め端部は、スイッチング素子Q1のコレクタと接続され、巻終わり端部は、直列共振コンデンサC1−共振電流検出巻線NDを介して、スイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接続点に(スイッチング出力点)に接続される。これにより、一次巻線N1には、スイッチング出力が得られるようにされる。
【0127】
また、この場合にも、上記直列共振コンデンサC1のキャパシタンスと、一次巻線N1を含む絶縁コンバータトランスPITのリーケージインダクタンスL1とにより、一次側スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための一次側直列共振回路を形成している。
このようにして、この図に示す一次側スイッチングコンバータとしても、電流共振形としての動作と、前述した部分電圧共振動作とが複合的に得られる、複合共振形コンバータとしての構成を採っている。
【0128】
この電源回路のスイッチング動作としては、例えば次のようになる。
先ず商用交流電源ACが投入されると、例えば起動抵抗Rs1,Rs2を介してスイッチング素子Q1、Q2のベースに起動のためのベース電流が供給されることになる。ここで、例えばドライブトランスPRTの駆動巻線NB1,NB2には、互いに逆極性の電圧が励起されることになるので、スイッチング素子Q1が先にオンとなったとすれば、スイッチング素子Q2はオフとなるように制御される。そして、これら駆動巻線NB1,NB2に励起された交番電圧を源として、スイッチング素子Q1,Q2の各自励発振駆動回路が、共振動作による自励発振動作を行う。これにより、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオン/オフするように制御される。つまりスイッチング動作を行うことになる。
そして例えばスイッチング素子Q1がオンとなったときには、そのスイッチング出力として、共振電流検出巻線NDを介して一次巻線N1及び直列共振コンデンサC1に共振電流が流れるが、この共振電流が0となる近傍で、スイッチング素子Q1がオフとなるとともに、スイッチング素子Q2がオンとなる。これにより、スイッチング素子Q2を介して先とは逆方向の共振電流が流れる。以降、ZVS及びZCSにより、スイッチング素子Q1、Q2が交互にオンとなる自励式のスイッチング動作が継続される。また、スイッチング素子Q1,Q2のオン/オフ動作に伴い、スイッチング素子Q1,Q2のターンオフ時の短期間においては、一次側部分電圧共振コンデンサCpに電流が流れる。つまり、部分共振電圧動作が得られる。
【0129】
なお、絶縁コンバータトランスPITの二次側回路構成は、上記図1と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0130】
図9は、上記図8に示した電源回路の動作をスイッチング周期により示す波形図である。ここでは、交流入力電圧VAC=100V、負荷電力Po=200W時の条件での動作が示されている。
先ず、スイッチング素子Q2に流れるスイッチング出力電流(ドレイン電流)IQ2は、図9(b)に示すようにして、スイッチング素子Q2がオンとなる期間TONにおいて流れ、オフとなる期間TOFFにおいて0レベルとなっている。
また、一次側部分電圧共振コンデンサCpが並列接続されたスイッチング素子Q2の両端電圧VQ2は、図9(a)に示すようにして、スイッチング素子Q2がオフとなる期間TOFFにおいては、直流入力電圧Eiのレベルでクランプされ、オフとなる期間TONにおいては0レベルとなる波形が得られる。
【0131】
また、上記したスイッチング動作が得られることで、一次巻線N1には、図9(d)に示す波形による一次巻線電流I1が流れる。この一次巻線電流I1は、図示するようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして、スイッチング周期に応じて極性が反転する波形となっている。
またこのときの一次側直列共振コンデンサC1の両端電圧VC1は、図9(c)のように示される。また一次巻線N1の両端電圧V1は、図9(e)に示すようにして、期間TONでは正極性で、期間TOFFでは負極性となるようにして極性が反転している。
【0132】
また、スイッチング素子Q2のコレクタ−エミッタ間に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサCpには、図9(f)に示すように、スイッチング素子Q2のターンオン及びターンオフ時に部分共振電流ICPが流れており、一次側部分電圧共振コンデンサCpにおいて部分電圧共振動作が得られていることが分かる。
【0133】
また、この電源回路の二次側においては、二次巻線N2のセンタータップと二次側アースとの間には、図9(h)に示すような二次側電流IDが流れ、二次巻線N2の巻始め端部側と二次側アース間には、図9(g)に示すような波形の電圧V2が得られることになる。また、二次巻線N2を流れる二次側電流I2は図9(i)のように示される。さらに二次巻線N2に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサC2には、図9(j)に示すような波形の部分共振電流IC2が流れることになる。
【0134】
そして、このような構成を採る第3の実施の形態としての電源回路においても、上記図7と同様の特性を有することから、上記図5に示した電源回路と同様の効果である軽負荷時における電力変換効率の向上を図ることができる。
また、絶縁コンバータトランスPITにおいてギャップを形成しないため、製造コストの削減、及びショートリングが不要になることに伴うコストダウン、さらには絶縁コンバータトランスPITの巻線の局部的な温度上昇の問題も解消することができる。
【0135】
以上、各種実施の形態を説明してきたが、本発明としてのスイッチング電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2の巻線数としては、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧が約1.69V/T程度となるように二次巻線N2の巻線数を選定した場合を例に挙げて説明したが、二次巻線N2の1ターンあたりの誘起電圧としては、約2.0V/T程度となるように二次巻線N2の巻線数を選定すれば、これで説明した効果が得られる。
【0136】
また、本発明としてのスイッチング電源回路としては、上記各実施の形態としての構成に限定されるものではなく、例えば、要部の部品素子の定数などは適宜、各種条件に応じて適切な値に変更されればよい。
また、第1の実施の形態ではスイッチング素子Q1〜Q4に対して自励発振回路を設けたが、例えばスイッチング素子Q1〜Q4をMOS−FETやIGBTで形成する場合、これに対応して他励発振回路によってスイッチング動作させる構成としてもよい。
【0137】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のスイッチング電源回路は、複合共振形コンバータとして、一次側は、電流共振形スイッチングコンバータと一次側部分電圧共振回路が組み合わされた基本構成を採る。そして、この場合には、二次側に対しても二次側部分電圧共振回路を設けるようにしている。そのうえで、絶縁コンバータトランスのコアにギャップを形成しないようにして、一次巻線と二次巻線との結合係数を所要の結合係数以上の密結合にすると共に、二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように選定して構成するようにしている。即ち、本発明のスイッチング電源回路は、一次側電流共振形コンバータ、一次側部分電圧共振回路、及び二次側部分電圧共振回路による複合共振形コンバータとして、密結合の絶縁コンバータトランスによる一次側から二次側への電力伝送を行うように構成されている。そしてこのような構成の下で、絶縁コンバータトランスの二次巻線の巻線数を上記した条件の下で設定するようにしている。
このように構成すると、二次巻線の巻線数が増加されることになるが、これに伴って、二次巻線のリーケージインダクタンスも増加されることとなる。これにより、軽負荷時における一次側電流の減少させることが可能になる。
このようにして、軽負荷時の一次側電流を減少させるようにすると、軽負荷時の電力変換効率を向上させることができるため、入力電力を低減させて省電力化が可能になる。
【0138】
また本発明では、絶縁コンバータトランスにおいてギャップを形成しないことで、ギャップ形成のためのコアの研磨工程は省略されることになる。これにより、例えば製造工程が簡略化され、また、絶縁コンバータトランスを製造するコストも低減することができる。
さらに、上記のように絶縁コンバータトランスに巻装された一次巻線と二次巻線とが密結合となることにより、絶縁コンバータトランスからの漏洩磁束は低減されるので、例えば絶縁コンバータトランスにショートリングを施す必要もないこととなる。そして、この点でも、コストダウンが図られ、また、回路の小型軽量化が促進されるものである。
また、絶縁コンバータトランスのギャップ近傍における局部的温度上昇は発生しないことになるために、それだけ電源回路としても信頼性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のスイッチング電源回路の回路図である。
【図2】第1の実施の形態のスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図3】第1の実施の形態のスイッチング電源回路の特性を示す特性図である。
【図4】第1の実施の形態のスイッチング電源回路の二次側回路の他の構成例を示した図である。
【図5】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の回路図である。
【図6】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図7】第2の実施の形態のスイッチング電源回路の特性を示す特性図である。
【図8】第3の実施の形態のスイッチング電源回路の回路図である。
【図9】第3の実施の形態のスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図10】本実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す断面図である。
【図11】本実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す断面図である。
【図12】先行技術としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図13】先行技術としてのスイッチング電源回路の他の構成例を示す回路図である。
【図14】図12に示したスイッチング電源回路の動作を示す波形図である。
【図15】図12に示したスイッチング電源回路のAC/DC電力変換効率の特性の説明図である。
【図16】先行技術としてのスイッチング電源回路のさらに他の構成例を示す回路図である。
【図17】図16に示したスイッチング電源回路における要部の動作を示す波形図である。
【図18】図16に示したスイッチング電源回路における要部の動作を示す波形図である。
【図19】図16に示したスイッチング電源回路の特性を示す特性図である。
【図20】先行技術としての電源回路に採用される絶縁コンバータトランスの構造例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 制御回路、発振・ドライブ・保護回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 Q2 Q3 Q4 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、N1 一次巻線、N2 二次巻線、C1 一次側直列共振コンデンサ、Cp Cp1 Cp2 一次側部分電圧共振コンデンサ、C2 二次側部分電圧共振コンデンサ
Claims (1)
- 商用交流電源を入力して整流平滑動作を行うことで、整流平滑電圧を生成する整流平滑手段と、
入力された直流入力電圧を断続するスイッチング素子を備えて形成されるスイッチング手段と、
上記スイッチング素子をスイッチング駆動する駆動手段と、
磁脚にギャップを形成していないコアに対して一次巻線及び二次巻線を巻装することで、上記一次巻線と二次巻線とが所要以上の結合係数による密結合の状態となるようにされると共に、上記二次巻線の1ターンあたりの誘起電圧が所定レベル以下となるように上記二次巻線の巻線数を設定して構成され、上記一次巻線に得られる上記スイッチング手段の出力を二次巻線に対して伝送する絶縁コンバータトランスと、
少なくとも、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記一次巻線に直列接続された一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする一次側直列共振回路と、
上記スイッチング手段を形成するスイッチング素子のうち、所定のスイッチング素子に対して並列に接続される一次側部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記絶縁コンバータトランスの一次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記スイッチング手段を形成するスイッチング素子のターンオフ期間においてのみ部分電圧共振動作を行う一次側部分電圧共振回路と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して整流動作を行って二次側直流出力電圧を生成するように構成された直流出力電圧生成手段と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して並列に接続される二次側部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスと、上記二次巻線の漏洩インダクタンス成分によって形成され、上記直流出力電圧生成手段を形成する整流ダイオード素子がオフとなるタイミングで部分共振動作を行う二次側部分電圧共振回路と、
上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、二次側直流出力電圧に対する定電圧制御を行うように構成された定電圧制御手段と、
を備えていることを特徴とするスイッチング電源回路。
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CN116404862A (zh) * | 2023-06-08 | 2023-07-07 | 广东东菱电源科技有限公司 | 一种交错正激拓朴过流保护电路 |
-
2002
- 2002-07-29 JP JP2002219997A patent/JP2004064889A/ja active Pending
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