JP3672481B2 - メカロス補償量算出装置およびメカロス補償制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、単一駆動系および連続製造ライン駆動系において、例えば、速度制御精度、張力制御精度、および揃速精度の向上を図るメカロス補償量算出装置およびメカロス補償制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単一駆動系および連続製造ライン駆動系の代表的な制御ブロックの例を下記に述べる。図6は、速度制御系の制御ブロック図である。図において、1は速度設定器、5は可変速装置内の速度制御装置、6は可変速装置内の電流制御装置、7は可変速装置内サイリスタ主回路、8は駆動モータ、9は速度検出装置である。
【0003】
次に、図6の動作を説明する。速度設定器1からの速度指示値が、可変速装置内速度制御装置5に出力される。この速度制御装置5の出力は電流制御装置6、可変速装置内サイリスタ主回路7によりモータ主回路電流に変換され、最終的に駆動モータ8に出力される。駆動モータ8の回転速度は、速度検出装置9により検出され、その速度実績Nが速度制御装置5に帰還され、速度設定器1の設定値と同一になるように制御される。
【0004】
図7は、連続製造ラインにおける速度制御と張力制御の制御ブロック図である。図において、2は製造ライン材料の張力実績値、3は測定された張力実績値、4は比例積分器である。なお、図6と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0005】
次に、図7の動作を説明する。張力実績値3が張力設定値2と同一となるように比例積分器4の出力が、補正値として速度設定器1の設定値に加算され、可変速装置内速度制御装置5に出力される。この速度制御装置5の出力は電流制御装置6、可変速装置内サイリスタ主回路7によりモータ主回路電流に変換され、最終的に駆動モータ8に出力される。モータ8の回転速度は、速度検出装置9により検出され、その速度実績Nが速度制御装置5に帰還され、速度設定器1の設定値と同一になるように制御される。
【0006】
図8は、連続製造ラインにおける巻き戻しまたは巻き取り張力制御の制御ブロック図である。図において、15は張力−トルク変換演算装置、16は巻き戻しまたは巻き取りロールの半径演算装置、17は材料速度検出器、18は巻き戻しまたは巻き取りロールの直径(ダイヤ)演算装置、19は慣性補償量演算装置、20は可変速装置内可変リミッタ制御装置、21は速度制限設定器、22はメカロス補償制御用テーブルである。
【0007】
次に、図8の動作を説明する。材料速度17すなわち巻き戻しまたは巻き取りロール周速と、速度検出器9からのロール回転数実績速度とから、直径演算装置18でロール直径を演算し、ロール半径演算装置16により巻き戻しまたは巻き取りロールの半径を得る。比例積分器4により、張力実績値3が張力設定値2と同一となるように補正値を張力設定値2に加算し、張力−トルク変換演算15によりトルク指令値を得る。
【0008】
材料速度17とロール直径演算装置18の出力結果から、慣性補償量演算装置19で加減速時の慣性補償量を演算して、加減速時に一定の張力制御を実現する目的でトルク指令値に加算する。また、張力制御の精度を上げる目的で、予めメカロスを実測して、速度検出装置9からのロール回転数を関数としたメカロステーブル22を作成しておき、ロール回転数に応じたメカロス補正量を一定の張力制御を実現する目的でトルク指令値に加算する。
【0009】
このトルク指令値は、可変リミッタ制御装置20にリミッタ値として設定され、その出力は可変速装置内サイリスタ主回路7によりモータ主回路電流に変換され、最終的に駆動モータ8に出力される。ここで使用されているメカロス補償制御用テーブル22は、無負荷運転において測定した負荷トルクを速度の関数でテーブル化したものである。なお、21は材料破断時に暴走を防止するための速度制限設定器である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の制御ブロックでは、製品品質に係わる速度制御精度および張力制御精度の向上要求には十分対応できないという問題があった。
【0011】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、メカロス量を正確に把握し、それを用いて補償制御することにより、速度制御装置および張力制御装置の負担を減じ(偏差値を減少させる)、速度制御装置および張力制御装置のゲインを上げる(応答速度を速くする)ことを可能にして、高い速度制御精度および張力制御精度を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るメカロス補償量算出装置は、単一駆動系または連続製造ライン駆動系において、無負荷時の駆動モータ主回路電圧 Va、主回路電流 I、実績回転数 N 、駆動モータの主回路抵抗を Ra としたとき、式 974(VaI-I 2 Ra-2I)/N の演算によって無負荷損を算出し、また、上記駆動モータの負荷損を 974(I 2 Ra+2I)/N の演算によって時々刻々算出し、これら無負荷損と負荷損とからメカロス補償量を求めるようにしたものである。
【0013】
また、この発明に係るメカロス補償制御装置は、上記メカロス補償量算出装置の出力を、単一駆動系または連続製造ライン駆動系の駆動モータの可変速装置内電流制御装置に入力するようにしたものである。
【0014】
また、この発明に係るメカロス補償制御装置は、連続製造ライン駆動系が速度制御と張力制御を行うものである。
【0015】
また、この発明に係るメカロス補償制御装置は、連続製造ライン駆動系が巻戻しロールまたは巻取りロールの張力制御を行うものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
先ず、この発明におけるメカロスの測定および演算の原理を説明する。メカロスと呼ばれているものは、主に駆動モータの銅損、漂遊負荷損に代表される負荷損と、機械損、鉄損に代表される無負荷損に大別される。メカロスはこの2つを合わせて総称されている。モータ側の負荷損に関しては、すでに実験式も確立されており、これを使用して無負荷損を正確に把握することが出来る。
【0017】
図1は無負荷損を演算により求めこれを無負荷損テーブルに納める際の説明図で、ここに示すように、駆動モータの無負荷運転時の主回路電流、主回路電圧、実績回転数を実測し、無負荷損を算出して、回転速度を関数として無負荷損テーブルを得る。
【0018】
図1において、可変速装置内サイリスタ主回路7、駆動モータ8、および速度検出装置9は前記の図6と同様である。10は主回路電圧検出器、11は主回路電流検出器、12は無負荷損演算装置、13は無負荷損テーブルである。
【0019】
次に、図1の動作を説明する。駆動モータ8の無負荷運転モードで主回路電圧検出装置10から検出された主回路電圧Vと、主回路電流検出器11から検出された主回路電流Iと、速度検出装置9から検出された実績回転速度Nとから無負荷損演算装置12で無負荷損を算出して、回転速度を関数とした無負荷損テーブル13に格納する。この方法により正確な無負荷損失を得ることができる。
【0020】
無負荷損を数式で求めると次のようになる。
Figure 0003672481
Va:主回路電圧 N :実績回転数
I :主回路電流 2I :モータブラシ損
Ra:モータ主回路抵抗 I2 Ra :電機子抵抗損
【0021】
負荷損は時々刻々の電流指令値および駆動モータ実績回転数から次の式で求められる。
負荷損=974(I2 Ra+2I)/N
N :実績回転数 I2 Ra :電機子抵抗損
I :主回路電流指令値 Ra :モータ主回路抵抗
2I:モータブラシ損
【0022】
図2に負荷損、無負荷損の測定および演算のブロック図を示す。このようにして得たメカロス補償制御量を高速応答である電流制御装置6に指令値として入力するものである。
【0023】
上記は、主に直流可変速ドライブについて述べたが、ベクトル制御を行う交流可変速ドライブにおいても下記モータ負荷損の演算式を中心に同様のことが実現できる。
Figure 0003672481
N :実績回転数 α:各抵抗温度補正係数でモータ実温度tの関数
Id:磁束分電流値 K1 、K2 :各定数
Iq:トルク分電流値
1 ・α・ r1 ・(Id2 +Iq2 ):一次銅損
2 ・α・ r2 ・Iq2 :二次銅損
【0024】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2を示すブロック図で、実施の形態1で得たメカロス補償量を用いた連続製造ライン駆動系のメカロス補償制御装置を示す。速度設定器1乃至速度検出装置9までは前記の図6と同様である。10は駆動モータ8の主回路電圧検出器、11は主回路電流検出器、12は無負荷損演算装置、13は無負荷損テーブル、14は負荷損演算装置である。
【0025】
次に動作を説明する。駆動モータ8の無負荷運転モードで主回路電圧検出装置10から検出された主回路電圧Vと、主回路電流検出装置11から検出された主回路電流Iと、速度検出装置9から検出されたされた実績回転速度Nとから、無負荷損演算装置12で無負荷損を算出して、回転速度を関数とした無負荷損テーブル13に格納する。
【0026】
実際の運転時に、負荷損演算装置14において、主回路電流指令値と実績回転速度から時々刻々の負荷損を算出し、これに、実績回転速度対応にて上記の無負荷損テーブル13から得られる無負荷損を加算し、メカロス補償量として可変速装置内電流制御装置6に入力する。こうすることにより高速応答の電流制御ループでメカロス補償が行われ、速度制御装置5の負担が減じられる(入力される偏差量が減少する)。
【0027】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3を示すもので、連続製造ライン駆動系の速度制御および張力制御にメカロス補償制御を適用したものである。12、13、14以外は前記の図7と同様であり、また12、13、14は前記の実施の形態2と同様である。
【0028】
次に動作であるが、無負荷損演算装置12、無負荷損テーブル13、および負荷損演算装置14によるメカロス補償制御の動作は前記の実施の形態1と同様である。こうすることにより高速応答の電流制御ループでメカロス補償が行われ、速度制御装置5および比例積分器(張力制御装置)4の負担が減じられる(入力される偏差量が減少する)。
【0029】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4を示すもので、連続製造ラインにおける巻き戻しまたは巻き取りの張力制御にメカロス補償制御回路を適用したものである。12、13、14以外は前記の図8と同様であり、また12、13、14は前記の実施の形態2と同様である。
【0030】
次に動作であるが、無負荷損演算装置12、無負荷損テーブル13、および負荷損演算装置14によるメカロス補償制御回路の動作は前記の実施の形態1と同様である。こうすることによりメカロス補償量の最適化が実現され、比例積分器(張力制御装置)4の負担が減じられる(入力される偏差量が減少する)。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、駆動系実測データから無負荷損および負荷損を演算で求め、正確なメカロス補償量を算出できる。
【0032】
また、このメカロス補償量を用いて、高速応答の電流制御ループで補償制御を行うように構成したもので、速度制御装置および張力制御装置の負担が減じられた結果(入力される偏差量が減少する)、速度制御装置および張力制御装置のゲインを高く設定(応答を速くする)でき、高い速度制御精度および張力制御精度を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係るメカロス補償量算出装置の無負荷損算出の説明図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係るメカロス補償量算出装置を示すブロック図である。
【図3】 この発明の実施の形態2に係るメカロス補償制御装置を示すブロック図である。
【図4】 この発明の実施の形態3に係るメカロス補償制御装置を示すブロック図である。
【図5】 この発明の実施の形態4に係るメカロス補償量算出装置を示すブロック図である。
【図6】 従来の単一駆動系および連続製造ライン駆動系における速度制御ループを示すブロック図である。
【図7】 従来の連続製造ライン駆動系における速度制御および張力制御のループを示すブロック図である。
【図8】 従来の連続製造ラインの巻き戻しまたは巻き取りロールにおける張力制御のループを示すブロック図である。
【符号の説明】
1 速度設定器、 2 張力実績値、
3 張力実績値、 4 比例積分器(張力制御装置)、
5 可変速装置内速度制御装置、 6 可変速装置内電流制御装置、
7 可変速装置内サイリスタ主回路、 8 駆動モータ、
9 速度検出装置、 10 主回路電圧検出器、
11 主回路電流検出器、 12 無負荷損演算装置、
13 無負荷損テーブル、 14 負荷損演算装置、
15 張力−トルク変換演算装置、 16 ロール半径演算装置、
17 材料速度検出器、 18 ロール直径(ダイヤ)演算装置、
19 慣性補償量演算装置、
20 可変速装置内可変リミッタ制御装置、
21 速度制限設定器。

Claims (4)

  1. 単一駆動系または連続製造ライン駆動系において、無負荷時の駆動モータ主回路電圧 Va、主回路電流 I、実績回転数 N 、駆動モータの主回路抵抗を Ra としたとき、式 974(VaI-I 2 Ra-2I)/N の演算によって無負荷損を算出し、また、上記駆動モータの負荷損を 974(I 2 Ra+2I)/N の演算によって時々刻々算出し、これら無負荷損と負荷損とからメカロス補償量を求めるようにしたことを特徴とするメカロス補償量算出装置。
  2. 請求項1のメカロス補償量算出装置の出力を、単一駆動系または連続製造ライン駆動系の駆動モータの可変速装置内電流制御装置に入力するようにしたことを特徴とするメカロス補償制御装置。
  3. 連続製造ライン駆動系が速度制御と張力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のメカロス補償制御装置。
  4. 連続製造ライン駆動系が巻戻しロールまたは巻取りロールの張力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のメカロス補償制御装置。
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