JP3671648B2 - 時計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁誘導、その他の用途に用いられるコイルを使用した時計に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、電磁誘導によって電力が供給されるコードレス電話機を示し、このような電磁誘導による電力供給形態は、電動歯ブラシ、電動シェーバなどの各種の電子機器に使用されている。
【0003】
図9の構造では、コードレス電話機100が充電器110にセットされることによって、コードレス電話機100に充電が行われる。充電器100の内部には、電源に接続された一次側コイル120が設けられており、この一次側コイル120に対応する二次側コイル130がコードレス電話機100の内部に設けられている。そして、一次側コイル120に給電することにより、電磁誘導作用で二次側コイル130に起電力が発生し、この電力がコードレス電話機100内部の二次電池(図示省略)に充電される。
【0004】
このようなコイル120、130は、線径0.1〜0.2mm程度の銅等からなる導線を渦巻き状に巻回することによって全体がドーナツ状となるように成形されるものである。そして、それぞれのコイル120,130の先端の引き出し線(図示省略)を回路基板に半田付けすることによって回路と接続される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の構造では、コードレス電話機や充電器などのそれぞれの機器のケースに対し、回路基板の組み込みとは別個にコイルの組み込みを行う必要があり、組立工程が多くなっている。しかも、これらの組み込みに加えて、コイルと回路基板とを接続する作業が必要であり、組立が面倒となっている。
【0006】
また、コイルを設置するための突起やフック、その他の構造物をケースに専用に形成する必要があるばかりでなく、コイルを収容するためのスペースが必要となっている。このようなことから機器のケース内のかなりの部分がコイルを収容するために費やされ、ケース内のスペースの有効利用ができないと共に、ケースを小型化することができない問題を有している。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、時計ケースへの組み込みを簡単に行うことができるコイルを用いた時計を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明の時計は、刳り抜き孔が厚さ方向に形成された電気回路基板と、この電気回路基板の刳り抜き孔の周囲にドーナツ状に形成された渦巻き状の配線パターンと、前記電気回路基板の厚さ方向で隣り合う前記配線パターンを電気的に接続する接続手段とを有するコイルと、表示部材及びモジュールを収容するプラスチックによって成形された時計ケースと、を備え、前記時計ケースと前記コイルとが一体成形され、前記配線パターンが接続部材によって前記モジュールと接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明では、プラスチックからなる時計ケースとコイルとが一体成形され、時計ケースの成形と同時にコイルを時計ケースに組み込むことができるため、時計ケースへのコイルの組み込みを簡素化できる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の時計であって、前記電気回路基板が多層からなり、前記配線パターンがそれぞれの電気回路基板に形成されていることを特徴とする。
【0012】
この請求項2発明では、配線パターンを多層の電気回路基板に形成することにより、コイルの必要巻き数を確保することができ、巻き数が多いコイルであっても、多層の電気回路基板の設置スペース内に納めることができ、時計が大型化することがなくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態のコイル1を示し、2は電気回路基板である。電気回路基板2は2枚のプリント配線基板3,4が積層された4層の多層基板によって構成されている。これらのプリント配線基板3,4の上下面には、配線パターン5,6,7,8がそれぞれ形成されている。5は上層のプリント配線基板3の上面3aに形成された配線パターン、6は上層のプリント配線基板3の下面3bに形成された配線パターンであり、7は下層のプリント配線基板4の上面4aに形成された配線パターン、8は下層のプリント配線基板4の下面4bに形成された配線パターンである。
【0024】
これらの配線パターン5,6,7,8は、いずれも渦巻き状となるように形成されている。図示例において、いずれの配線パターン5,6,7,8も中央部分に形成されることなく、中央部分を除いた周辺部分にドーナツ状となって形成されている。この場合、内側に位置する渦巻き線と一つ外側に位置する渦巻き線との間のピッチは、0.2mm程度となっている。このような渦巻き状とすることによって、それぞれの配線パターン5,6,7,8がコイルの一要素を構成する。
【0025】
プリント配線基板3,4に形成されている渦巻き状の配線パターン5,6,7,8はプリント配線基板3,4を厚さ方向に貫通するスルーホール9,10,11,12によって順次、電気的に接続される。
【0026】
すなわち図2において、上層のプリント配線基板3の上下面に形成された配線パターン5,6は、上層のプリント配線基板3を厚さ方向に貫通する右側のスルーホール9によって接続され、これにより、同図の矢印Bで示すように、配線パターン4から配線パターン5へ電流が流れる。この接続を行うため、スルーホール9の内部には、導通メッキ13が施されると共に、導通メッキ13と基板3の両面のそれぞれの配線パターン5,6との間に接続パターン14が形成されている。
【0027】
次に、上層のプリント配線基板3の下面の配線パターン6及び下層のプリント配線基板4の上面の配線パターン7は、プリント配線基板3,4の左側に形成したスルーホール10,11を介して接続され、この接続によってこれらの間には矢印Cで示す方向に電流が流れる。この場合、スルーホール10,11は同軸上で貫通する連通位置に形成されると共に、これらの内部には導通メッキ15が掛け渡し状に形成されている。そして、導通メッキ15と上層のプリント配線基板3の配線パターン6とが接続パターン16によって接続される一方、導通メッキ15を下層のプリント配線基板4の配線パターン7とが接続パターン17によって接続されている。
【0028】
下層のプリント配線基板4の上下面における配線パターン7,8は同基板4の右側に貫通したスルーホール12を介して接続されている。この接続を行うため、スルーホール12の内部には、導通メッキ18が施されると共に、基板4両面の接続パターン19と導通メッキ18とが接続されている。この接続によって矢印Dで示すように電流が流れる。
【0029】
以上のような接続によってプリント配線基板3,4の4層に形成された渦巻き状の配線パターン5,6,7,8がスルーホール9,10,11,12を介して電気的に接続され、この接続によってコイル1が構成される。これにより、電気回路基板2と一体となった状態でコイル1が電気回路基板2に形成される。このようにコイル1と電気回路基板2とが一体化した状態では、電気回路基板2を機器に組み込むことによりコイル1を同時に組み込むことができ、コイル1を別個に組み込む必要がなくなり、機器の組立を簡素することができる。これに加えて、コイル組み込みのための専用のスペースが不要となり、機器を小型化することができる。さらには、独立したコイルがなくなるため、部品点数を削減することができる。
【0030】
本実施形態において、それぞれの配線パターン5,6,7,8の形成は、通常のプリント配線基板の製造に沿って行われる。すなわち、銅箔が積層された絶縁基板にスルーホールを打ち抜いた後、レジストを印刷して感光させ、その後、エッチングする処理によって作製することができる。このような形成では、コイル1が電気回路基板2に形成されるため、コイル1の成形と同時にコイル1と電気回路基板2とを接続することができる。このため、コイル1及び電気回路基板2を接続するための工程が不要となる。
【0031】
また、この実施形態では、配線パターン5,6,7,8が多層の電気回路基板2の各面に形成されると共に、各面の配線パターン5,6,7,8がスルーホール9,10,11,12によって接続されることによってコイル1が構成されている。このため、コイルの必要巻き数を確保することができ、しかも巻き数の多いコイルであっても多層の電気回路基板2の設置スペース内に収めることができ、機器が大型化することがない。
【0032】
なお、図1において、20はコイル1の入出力端となる電極パターンである。21はLSIチップ、抵抗チップ、コンデンサチップなどの電子部品(図示省略)を実装するためのランドパターン、22は回路パターンである。この実施形態では、4層の電気回路基板2への適用を示したが、4層以外の多層であっても良く、単層のプリント配線基板からなる電気回路基板であっても良い。
【0033】
図3は、本発明の第2の実施形態を示す。この実施形態は、電気回路基板としてチップオンボード(以下、COB)23を用いるものである。COB23はパッケージに入っていない裸のチップをプリント配線基板に直接に実装する基板であり、24は直接実装されたチップ状電子部品である。また、55はCOB23の表面にパターン形成された電極部である。このCOB23においても、プリント配線基板を多数積層することによって形成されている。
【0034】
このようなCOB23に対し、コイルとなるための渦巻き状の配線パターン25は内層側にのみ形成されるものである。すなわち、配線パターン25は積層されて対向するプリント配線基板の対向面にのみ形成され、COB23の外側に露出することがない。このように配線パターン25が内層部分にだけ形成される場合には、COB23表面に設けられるチップ状電子部品24の実装の障害となることがなく、電子部品24の実装に対し、設計変更を要することがなく、効率的な実装を確保することができる。
【0035】
図4は、本発明の第3の実施形態である時計26を示し、図5はこの時計26に組み込まれるコイル27を示す。コイル27は第1の実施形態と同様に、電気回路基板に渦巻き状の配線パターン28を形成することによって作製される。この場合、電気回路基板は多層であっても良く、単層であっても良い。
【0036】
この実施形態におけるコイル27の配線パターン28は、図5に示すように電気回路基板に形成した刳り抜き孔29の周囲にドーナツ状に形成されている。図5において、30は各層の配線パターン28を接続するためのスルーホール、31はスルーホール30と接続された状態で電気回路基板の上面に形成された電極パターンである。
【0037】
時計26は図4に示すように、時計ケース32と、時計ケース32の内部に配置されたモジュール33と、時計ケース32の上面に取り付けられた時計ガラス34と、時計ケース32の下面に取り付けられた裏蓋35とを備えている。モジュール33は時計全体の作動を制御する制御回路基板36及び液晶等によって時刻その他の表示を行う表示部材37が組み付けられることによって構成されている。また、時計ケース32の側面には、釦スイッチ38が取り付けられ、このボタンスイッチ38と制御回路基板36とがフレキシブル接続基板39によって接続されている。
【0038】
上述したコイル27は、裏蓋35上に接着剤40によって固定されている。これにより、コイル27は裏蓋35とモジュール33との間に配置されている。そして、電極パターン31とモジュール33の下面の電極端子41との間に導電性のスプリングコイルからなる接続部材42が介挿されることによって、コイル27とモジュール33とが接続され、これらの間で信号の入出力が行われる。
【0039】
さらに、裏蓋35上には、ピエゾ素子43が接着されている。ピエゾ素子43はモジュール33から信号が入力されることによって振動し、この振動によって時刻を音によって告知するものである。このピエゾ素子43はコイル27に設けらた刳り抜き孔29の内部に位置するように裏蓋35に固定されている。
【0040】
このような実施形態では、配線パターン28が形成されることのないコイル27の中央部分に刳り抜き孔29を形成し、この刳り抜き孔29にピエゾ素子43を配置するため、ピエゾ素子43の厚さをコイル27が吸収する。このため、ピエゾ素子43の配置を効率的に行うことができると共に、時計ケース32を薄くすることができる。
【0041】
図6及び図7は、本発明の第4の実施形態である時計44を示し、図4及び図5と同一の要素は同一の符号によって対応させてある。図6において、45は文字板である。この文字板45は図7に示すように、中央部分に刳り抜き孔29が形成されたドーナツ状となっていると共に、その内部には渦巻き状の配線パターン28が形成されている。この渦巻き状の配線パターン28は多層であっても良く、単層であっても良い。さらに、文字板45の下面には、スルーホール30を介して配線パターン28と接続された電極パターン31が形成されている。これらの配線パターン28,スルーホール30,電極パターン31によってコイルが構成される。
【0042】
このように、文字板45に渦巻き状の配線パターン28を形成することにより、コイルと文字板45と一体的に成形される。このため、コイル及び文字板を別個に作製する必要がなくなると共に、部品点数を削減することができる。なお、裏蓋35の上面には、ピエゾ素子43が接着されているが、このピエゾ素子43とモジュール33とは別のコイルスプリング46によって接続がなされるものである。
【0043】
以上のようにしてコイルと一体化した文字板45は、モジュール33の上方に位置するように、時計ケース32の内部に配置される。そして、文字板45下面の電極パターン31と制御回路基板36上面の電極端子41とをコイルスプリングなどの接続部材42によって接続することにより、文字板45のコイルとモジュール33との間で信号の入出力が行われる。
【0044】
このような実施形態では、文字板45を時計ケース32内に組み込むことによってコイルが同時に組み込まれるため、組立を簡素化することができる。また、文字板45の中央部分には刳り抜き孔29が形成されており、この刳り抜き孔29を通してモジュール33の表示部材37を見ることができ、表示部材37が表示している表示内容を確実に読み取ることができる。
【0045】
図8は、本発明の第5の実施形態である時計50を示す。この実施形態の時計50では、時計ケース32がプラスチックによって成形されている。また、時計ケース32の内部にコイル51が埋め込まれている。コイル51は図5,図7で示す構造と同様のドーナツ状であり、内部には渦巻き状の配線パターンが形成されている。この場合、電極パターン31はコイル51の下面に形成され、この電極パターン31と制御回路基板36とが接続部材42によって接続されている。
【0046】
この実施形態では、時計ケース32を成形する成形型内にコイル51をインサートしておき、成形型によって成形するインサート成形によってコイル51が一体化した時計ケース32を作製することができる。この成形によってコイル51と時計ケース32とが一体となるため、コイル51を時計ケース32に組み込む必要がなく、簡単に組み立てることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、時計ケースとコイルとが一体成形されるため、時計ケースへのコイルの組み込みを簡素化できる。
【0048】
請求項2発明によれば、コイルの必要巻き数を確保することができ、巻き数が多いコイルであっても、多層の電気回路基板の設置スペース内に納めることができ、時計が大型化することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のコイルの斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示し、(A)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における時計の断面図である。
【図5】第3の実施形態に使用するコイルの平面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態における時計の断面図である。
【図7】第4の実施形態におけるコイルと一体化した文字板の平面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態における時計の断面図である。
【図9】従来のコイルを用いたコードレス電話機の斜視図である。
【符号の説明】
1 コイル
2 電気回路基板
3 4 プリント配線基板
5 6 7 8 配線パターン
9 10 11 12 スルーホール
Claims (2)
- 刳り抜き孔が厚さ方向に形成された電気回路基板と、この電気回路基板の刳り抜き孔の周囲にドーナツ状に形成された渦巻き状の配線パターンと、前記電気回路基板の厚さ方向で隣り合う前記配線パターンを電気的に接続する接続手段とを有するコイルと、
表示部材及びモジュールを収容するプラスチックによって成形された時計ケースと、
を備え、
前記時計ケースと前記コイルとが一体成形され、前記配線パターンが接続部材によって前記モジュールと接続されていることを特徴とする時計。 - 前記コイルの前記電気回路基板が多層からなり、前記配線パターンがそれぞれの電気回路基板に形成されていることを特徴とする請求項1記載の時計。
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