JP3671556B2 - ベーカリー生地用センター材及びベーカリー製品 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ベーカリー生地用センター材及びそれを使用したベーカリー製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チョコレートをセンター材として使用した菓子やパンが製造されているが、これらの菓子やパンはほとんどが焼成後にチョコレートをセンター材として充填させたものである。これは、焼成前の生地中にチョコレートを内包させて焼成すると、焼成中にチョコレートが融解して満足する製品が得られないからであるが、焼成後の製品への充填は手間がかかったり、製品の表面を汚したり、また焼成後速やかに包装できないため、衛生面あるいは保存面等の品質面において、不利益を招いたりする。
【0003】
近年、焼成耐性のあるチョコレートとして、パンやクッキーに使用するチップチョコレートや固形チョコレートが開発され市販されるようになってきたが、これらのチョコレートは、粒子が細かく滑らかな食感を呈するものの、風味は画一的であって風味食感に変化がない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、チョコレート生地を成形した焼成耐性を有するベーカリー生地用センター材であって、当該センター材をパンなどの焼成前生地に内包させ易く、かつ焼成後の製品の風味食感に変化を付与させ得るようなベーカリー生地用センター材の開発を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、如上の点に鑑み鋭意研究した結果、砂糖漬けフルーツ類、砂糖漬け果皮類のような含水食品類をフィラー(filler)としてチョコレート中に混在させることにより、更に耐熱性を向上させ得るとともにチョコレート自体の食感を改善し得ると言う知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、小塊状の含水フィラー(filler)を分散させたチョコレート生地を成形して成るベーカリー生地用センター材、及び当該センター材を内包するベーカリー製品、である。
【0006】
本発明において、チョコレート生地に使用し得る油脂は、テンパリング型油脂及び、非テンパリング型油脂の何れでも良いが、離型性の良好な油脂を使用するのが好ましい。
【0007】
チョコレート生地を成形加工するに際して、成形作業が容易なチョコレート生地の粘性というのは、東京計器BM型粘度形、4号ローター、12回転で測定したときの値が、約50ポイズ〜250ポイズの範囲内にあるのが好ましいようである。300ポイズ以上の粘性になると、耐熱保形性は良好となるが、テンパリング作業中に粘性が上がってテンパリング操作が困難となり、またモールド充填時に空気の泡が抜け難くなる。特に、含水食品類のフィラーをチョコレート中に混在させると、水分移行によりチョコレートの粘性が高くなる。
【0008】
本発明においては、チョコレート生地中に、HLB値が3以下で、主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20〜26の蔗糖脂肪酸エステルを含有させると、成形作業が安定的に容易になる。HLB値が3より高い場合、または主要な結合脂肪酸の炭素原子数が上記範囲を逸脱する場合には効果を得難い。なお、既存の蔗糖脂肪酸エステルでHLB値の最も低いものは0.9程度のものが市販されているが、本発明においてはHLB値が限りなく0に近いものを使用することができる。
【0009】
本発明における含水フィラー(filler)は、砂糖漬けフルーツ類、砂糖漬け果皮類、ジャム類、ゼリー類等が例示でき、砂糖漬けフルーツ類としては、レーズン、カレンヅ、アンズ、プルーン、パイナップル、オレンジ、レモン、チェリー、リンゴ、マンゴー、パパイヤ等が例示でき、砂糖漬け果皮類としては、オレンジピール、レモンピール等が例示できる。
【0010】
砂糖漬けフルーツ類の水分含有率は約8〜35重量%の流通商品が多く、各々風味食感により所望のタイプを使用すればよい。例えば、砂糖漬けオレンジピールは含水率30重量%程度の物の方が含水率の少ない物より風味食感が良い。
【0011】
これらの含水フィラーの大きさ及び形状は、その立体構造を形成する一面の最も長い一辺の大きさが2mm〜50mm、好ましくは3mm〜12mmであって、それらの面の形状は三角、四角、五角、六角、台形、星形等の多角形、もしくは円形、楕円形、ハート型等各種の形状を呈した面から成る立体形状の何れであってもよく、また場合によってはマーマレードの様な薄いスライス状、あるいは不定形の角柱状であっても良い。
【0012】
本発明においては、これらの小塊状含水フィラーをチョコレート生地中に混合し分散させるのであるが、テンパリング型のチョコレート生地であればテンパリング処理後の融解状態にあるチョコレート生地中に所望量のフィラーを加えて均一に分散するように混合する。なお、小塊状の含水フィラーを加えた後にテンパリング処理しても良いことは言うまでもない。
【0013】
チョコレート生地に含水食品を添加すると粘度が高くなり成形作業が困難になる。手作業で短時間に成形加工する時は増粘しても成形できることもあるが、連続的に機械生産する場合は、HLB値が3以下で、主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20〜26の蔗糖脂肪酸エステルを含有させる方が安定的な生産が可能である。添加の方法は、チョレート製造時でも良いし、含水食品を添加する前でも良い。添加量は多すぎると耐熱保形性を失うため、使用する含水食品の種類、形状、及び量で適宜決定する。
【0014】
以下はミルクチョコレート90部(重量部、以下同じ)に含水フィラーであるオレンジピールのカット品(水分約30重量%)を10部添加した時に、乳化剤としてHLB値が2で主要構成脂肪酸がエルカ酸である蔗糖脂肪酸エステルを添加しない時、1.0部添加した時、1.5部添加した時の粘度変化である。
【0015】
【0016】
次に、ミルクチョコレート95部に含水フィラーであるカレンヅ(水分約17重量%)を5部添加した時に、乳化剤としてHLB値が2で主要構成脂肪酸がエルカ酸である蔗糖脂肪酸エステルを添加しない時、1.0部添加した時の粘度変化である。カレンヅは、カット品でなくホール品を使用した。ホール品の方がチョコレートへ水分が移行しにくいので、粘性の変化は少ない。
【0017】
【0018】
チョコレートの増粘は、含水フィラーを添加する量が多い程、又その含水フィラーの水分が高い程激しくなる。HLB値が1〜3で、主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20〜26の蔗糖脂肪酸エステルを添加すると固形分の凝集によるザラツキや粘度上昇がなく、作業性が良好で、かつ風味の良好な含水チョコレートが製造できる。油脂分の比率を上げると低粘度チョコレートはできるが、含水フィラーを添加すると固形分の凝集や油分離が起こる。又高油分のチョコレートは、耐熱保形性が弱い。
【0019】
小塊状の含水フィラーを分散させたチョコレート生地の成形は、モールド成形でも良いし、適宜押し出し機にて所望の形状及び太さの押し出し口から押し出し、要すれば適当な長さにカットする成形でも良い。また、シート状に延ばし縦切り、横切りにカットしても良い。このように、含水フィラーを分散させたチョコレート生地を成形して得られるベーカリー生地用センター材の形状は、所望する如何なる形状であっても良い。
【0020】
ベーカリー生地としては、デニッシュ、クロワッサン、ブリオッシュ、マフィン、バターロール等のパン類が例示できる。このような生地中に、成型品を内包させたり表面に乗せた後焼成して得られるベーカリー製品は、パン等の生地の呈味と、チョコレートの芳醇な香りの旨さに加えて、含水系食品の口溶けの良さや噛んで食べる粒の食感が得られる。
【0021】
本発明における成型チョコレートには、スイートタイプ、ミルクタイプ、ホワイトタイプ等様々なバラエティー品を包含するものである。
【0022】
【製造例】
以下に実施例を示す。なお、例中部及び%はいずれも重量基準を意味する。
実施例1
○チョコレートの調製
カカオマス33部、砂糖48部、乳糖4部、ココアバター5部、テンパリング型ハードバター(商品名:NEW-SS7 ,不二製油(株)製)10部、レシチン0.4部、バニリン0.03部を使用し、常法に従ってロール掛け、コンチング処理をしてチョコレート生地を調製した。この生地の物性は、粒度が22μ(マイクロメーターで測定)、粘度が230ポイズ/品温45℃(東京計器BM型粘度計4号ローター12回転で測定)であった。
【0023】
○成型品の調製
上で調製したチョコレート生地90部を融解して、テンパリング処理を行った後、水分約17%を含有するカレンヅ10部を加え、全体が均一になるように混合した後、直径14mmの丸口金を付けた絞り袋に入れ、棒状に押し出して成型し、約130mmの長さにカットしてカマボコ状の成型チョコレートを調製した。
【0024】
○焼成パンの調製
以下の配合及び工程条件により、デニッシュ生地を調製した。
配合
強力粉 400 部
薄力粉 100 〃
砂糖 40 〃
食塩 8 〃
全卵 50 〃
牛乳 250 〃
ドライイースト 10 〃
イースト溶き用牛乳 80 〃
<折り込み油脂>
バター 250 〃
───────────────────────────────────
【0025】
工程条件
・強力粉,薄力粉は一緒にして2回篩に掛ける。
・バターは、室温で柔らかくしておく。
・ドライイーストは、36℃に温めた牛乳80部の中にふり入れ、少量の砂糖を加え約1分後、一度かき混ぜ、静置しておく。
・卵は、割りほぐしておく。
・牛乳は火に掛け、沸騰直前に火から下ろし、冷ましておく。
・砂糖,塩,牛乳,卵,をボールに入れ、軽く捏ね上げる。
・イースト溶液を少しずつ加え、よく混ぜる。
・混ざったら、台の上に取り出し、よくこね、たたき、台につかなくなったら、きれいに丸めて、ボールにねかす。(仕上がり温度は約27℃)
・約1時間32℃のホイロに入れる。
・ガス抜きをして、長方形にのし、−3〜0℃で1時間ねかす。
・冷えた生地をもう1度のしてバターを折り込み三つ折り込み作業を2回行い、冷蔵庫で1時間ねかす。
・もう1度取り出し、三つ折り込み作業をし、冷蔵庫で2時間ねかす。
・成型する。(厚さ2.5mmに延ばして、130mm×130mmの正方形にカットする)
【0026】
以上のようにして調製した130mm×130mmの生地のセンターに、上で調製したカレンヅ入りチョコレートを乗せ生地を折り畳んで内包させた後、ホイロ(温度/湿度:33℃/80%)に約70分入れる。焼成は、温度200℃のオーブンで約20分行う。このカレンヅ入り成型品を内包したデニッシュは、焼成後も成型品の形がしっかり残り、保型性が良好であった。またカレンヅの風味が、デニッシュパンに負けず、酸味が豊かで非常に美味しい食品であった。
【0027】
実施例2
○チョコレートの調製
カカオマス15部、全脂粉乳15部、砂糖45部、乳糖4部、、テンパリング型ハードバター(商品名:NEW-SS7 ,不二製油(株)製)21部、レシチン0.3部、バニリン0.04部を使用し、常法に従ってロール掛け、コンチング処理をしてチョコレート生地を調製した。この生地の物性は、粒度が22μ(マイクロメーターで測定)、粘度が230ポイズ/品温45℃(東京計器BM型粘度計4号ローター12回転で測定)であった。
【0028】
○成型品の調製
上で調製したチョコレート生地90部を融解して、HLB値が2で主要構成脂肪酸がエルカ酸である蔗糖脂肪酸エステル1.5部を添加し良く攪拌した。この粘度を測定すると100ポイズ/品温45℃であった。更に水分約30%を含有するオレンジピールの約3mmカット品10部を加え、全体が均一になるように60分以上混合した後、この混合生地をテンパリング処理し、5mmの厚さにシート状に流して、25mm×100mmの大きさにカットした。
【0029】
○焼成パンの調製
以下の配合及び工程条件により、デニッシュ生地を調製した。
配合
強力粉 70 部
フランス粉 30 〃
砂糖 12 〃
食塩 1.6 〃
全卵 20 〃
マーガリン* 10 〃
練込用クリーム** 12 〃
生イースト 5 〃
冷菓用フードA 0.1 〃
冷菓用フードB 0.1 〃
水 約30 〃
<折り込み油脂>
シート状マーガリン*** 対粉60 〃
───────────────────────────────────
*パン専用マーガリン、商品名:パンフレンド、不二製油(株)製。
**練込用クリーム、商品名:ベーカリークリーム、不二製油(株)製。
***デニッシュ専用のシート状マーガリン、商品名:アートピアソフト880、不二製油(株)製。
【0030】
工程条件
・ミキシングタイム :低速5分,中速6分
・捏上温度 :20〜23℃
・捏ね上げ後、生地を十分に冷し三つ折り込み作業を2回行う。
・再び約30分冷却し、第3回目の三つ折り込みを行う。
・これを一晩0〜5℃でリタードし、厚さ2.5mmに延ばして、100mm×100mmの正方形にカットする。
───────────────────────────────────
【0031】
以上のようにして調製した100mm×100mmのデニッシュ生地の上に、成型したオレンジピール入りミルクチョコレートを内包させた後、ホイロ(温度/湿度:33℃/80%)に約70分入れる。焼成は、温度200℃のオーブンで約15分行う。このオレンジピール入り成型品を内包したデニッシュは、焼成後も成型品の形がしっかり残り、保型性が良好であった。また、オレンジピールの風味がチョコレートと良く合い、デニッシュの味に広がりが出て非常に美味しい食品であった。
【0032】
実施例3
○チョコレートの調製
カカオマス15部、全脂粉乳15部、砂糖45部、乳糖4部、テンパリング型ハードバター(商品名:NEW-SS7 ,不二製油(株)製)21部、レシチン0.3部、HLB値が2で主要構成脂肪酸がエルカ酸である蔗糖脂肪酸エステル1.0部、バニリン0.04部を使用し、常法に従ってロール掛け、コンチング処理をしてチョコレート生地を調製した。この生地の物性は、粒度が22μ(マイクロメーターで測定)、粘度が100ポイズ/品温45℃(東京計器BM型粘度計4号ローター12回転で測定)であった。
【0033】
○成型品の調製
上で調製したチョコレート生地90部を融解して、水分約30%を含有するカットプルーン5部を加え、全体が均一になるように60分以上混合した後、粘度を測定すると200ポイズ/品温45℃であった。この混合生地をテンパリング処理し、縦12mm,横95mm,高さ9mmの板状のモールドに流して、成形品を調製した。
【0034】
○焼成パンの調製
以下の配合及び工程条件により、デニッシュ生地を調製した。
配合
強力粉 70 部
フランス粉 30 〃
砂糖 12 〃
食塩 1.6 〃
全卵 20 〃
マーガリン* 10 〃
練込用クリーム** 12 〃
生イースト 5 〃
冷菓用フードA 0.1 〃
冷菓用フードB 0.1 〃
水 約30 〃
<折り込み油脂>
シート状マーガリン*** 対粉60 〃
───────────────────────────────────
*パン専用マーガリン、商品名:パンフレンド、不二製油(株)製。
**練込用クリーム、商品名:ベーカリークリーム、不二製油(株)製。
***デニッシュ専用のシート状マーガリン、商品名:アートピアソフト880、不二製油(株)製。
【0035】
工程条件
・ミキシングタイム :低速5分,中速6分
・捏上温度 :20〜23℃
・捏ね上げ後、生地を十分に冷し三つ折り込み作業を2回行う。
・再び約30分冷却し、第3回目の三つ折り込みを行う。
・これを一晩0〜5℃でリタードし、厚さ2.5mmに延ばして、100mm×100mmの正方形にカットする。
───────────────────────────────────
【0036】
以上のようにして調製した100mm×100mmのデニッシュ生地の上に、成形したカットプルーン(最長:6mm)入りミルクチョコレートを内包させた後、ホイロ(温度/湿度:33℃/80%)に約70分入れる。焼成は、温度200℃のオーブンで約15分行う。このカットプルーン入り成形品を内包したデニッシュは、焼成後も成形品の形がしっかり残り、保型性が良好であった。また、カットプルーンの風味がチョコレートと良く合い、デニッシュの味に広がりが出て非常に美味しい食品であった。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、従来よりベーカリー生地用のセンター材としては、存在しなかった、含水食品の小塊状のフィラーを含んだ成型チョコレートを提供することができ、また当該センター材は、成型作業が容易で、パン等の焼成前生地に内包させやすく、焼成耐性を有するもので、フィラーによる変化のある食感を併せ持ったベーカリー製品を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で製造したオレンジピール入りミルクチョコレートタイプのベーカリー生地用センター材の斜視図。
【図2】実施例2で製造したオレンジピール入りミルクチョコレートタイプのベーカリー生地用センター材を内包して焼成したベーカリー製品の断面図。
【符号の説明】
1・・・・オレンジピールカット品(約3mmの角型)
2・・・・ミルクチョレートタイプの生地
3・・・・パン生地
Claims (7)
- 小塊状の含水フィラー(filler)を分散させたチョコレート生地を成形してなるベーカリー生地用センター材。
- フィラーが砂糖漬けフルーツ類、砂糖漬け果皮類、ジャム類、ゼリー類から選ばれた一種または二種以上である、センター材。
- 最長の一辺の大きさが2mm〜50mmであるフィラーを主とする、請求項1または2に記載のセンター材。
- チョコレート生地中に、HLB値が0.9〜3で、主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20〜26の蔗糖脂肪酸エステルを含有させた、請求項1ないし3の何れかに記載のセンター材。
- 棒状ないしカマボコ状に成形されて成る、請求項1ないし4の何れかに記載のセンター材。
- ベーカリー生地がパン生地である、請求項1ないし5の何れかに記載のセンター材。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載のセンター材を内包するベーカリー製品。
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JP29899396A JP3671556B2 (ja) | 1996-11-11 | 1996-11-11 | ベーカリー生地用センター材及びベーカリー製品 |
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- 1996-11-11 JP JP29899396A patent/JP3671556B2/ja not_active Expired - Fee Related
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