JP3670986B2 - ルウの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、澱粉系原料として、特定量の小麦粉及びコーンスターチを配合して製造されてなる食感及び風味の改質された新規なルウを製造する方法に関するものである。
また、本発明は、小麦粉ルウ、及び粉体原料等を配合し、これを加熱混合してなるルウであって、吸湿性粉体原料が均質に配合されてなる均質で高品質のカレールウ等のルウを製造する方法に関するものであり、更に詳しくは、吸湿性粉体原料を澱粉系原料と共に粉砕した均一な粒度で加工適性が高い原料を用いることによって、粉体原料の沈降分離を回避して、製品中の粉体原料を均質化させることにより、従来製品と比べて、滑らかな粘度で優れた食感と風味を有するように改質された新しいタイプの高品質のルウを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カレー等のルウは、その原料配合、製造プロセス等の差異に起因するデリケートな風味上の質的、量的差異が製品の性格を大きく決定付ける重要な要素となっている。したがって、従来より、カレー等のルウを製造する場合は、原料配合、製造プロセス等において様々な工夫を施すことが実施されており、例えば、従来、一般に、カレー等のルウを製造する場合は、油脂と小麦粉とを加熱攪拌混合して小麦粉ルウを作った後に、風味が逸散、分解しやすいカレーパウダー、及びその他の粉体原料等を加え、加熱攪拌混合後、充填機にて容器に入れ冷却固化して製造する方法が採用されている。
また、従来、一般に、小麦粉と油脂とを焙煎してルウ(並びに本発明で対象とするルウを煮込んで調理されたもの)に特有の風味を付するために、あるいは適切な粘度を得るために澱粉系原料として小麦粉が用いられており、通常、ルウ原料中の当該小麦粉の添加量はおおよそ20%程度となっている。
しかしながら、一方では、澱粉系原料として小麦粉を使用することにより、調理したルウの風味に生臭さや粉っぽさが出たり、あるいは小麦粉特有の風味によりルウに特有の本来のデリケートな香辛味や旨味がかなり抑えられて、そのために、不可避的に全体の風味が低下する等の問題があった。
更に、澱粉系原料についていえば、従来、小麦粉の一部を澱粉質に代替することも行われているが、従来のものは、澱粉質を単に補助的に用いるだけであって、その添加量は僅少であり、上記小麦粉による風味上の問題は依然として未解決な状況にあった。このように、従来、ルウを製造するに際して、小麦粉の一部を澱粉質に代替することが行われていたとしても、あくまでも補助的原料としての位置付けを出るものではなく、また、ルウの食感乃至風味上の問題と当該澱粉質との関係についての基本的な知見は未知な状況となっていた。
一方、ルウの流動性を向上させるため、粉体原料等は微粉砕して用いられるが、製品(固形ルウ)をミクロに見ると食塩、砂糖等の粉体原料が沈降分離しており、またルウの製造時にも各ストック工程(充填用タンク内等)で沈降分離が生じている。そこで、ルウ製品における、このような粉体原料の沈降分離を極少にして、均質な製品を得るために食塩、砂糖等の粉体原料を均質に微粉砕する必要がある。
【0003】
しかし、上記粉体原料を均一に、しかも品質を損なうことなく、粉砕することは必ずしも容易ではなく、従来、そのような粉砕プロセスについて改善すべき種々の問題点があった。粉体原料を粉砕する場合、粉砕機としては、ロール式(発熱なし/粉砕量少)、高速粉砕機(回転式=発熱あり/粉砕量大)等がある。このうち、前者は、粉砕時に発熱がない利点をもつ反面、粉砕量が少ないので生産効率が悪く、また食塩、砂糖等の粉体原料は熱による風味品質への影響を受けにくい原料であるため、敢えてロール式粉砕機等で粉砕する必要はなく、他の粉砕量の大きい粉砕機等を採用して多量に連続粉砕することがルウの製造工程上望ましい。
しかし、高速粉砕機を用いる場合は粉砕時に発熱しやすく、熱で粉砕適性が悪くなる恐れがあり、食塩を単独で粉砕すると、粉砕時あるいは粉砕後に結着しやすく、また移送配管やストックタンクに付着しやすいという問題がある。また、砂糖についても同様であり、単独で粉砕すると、発熱溶融して粉砕物がベタつき、上記と同様の問題がある。
【0004】
このように、粉体原料をそのまま粉砕した場合は、いずれの粉砕機を用いた場合であっても、上記粉体原料の粉砕工程には上記のような種々の問題点があり、したがって、従来、粉体原料の沈降分離を極少にして、均質な製品を得ることは技術的に難しい面があり、そのため、上記のような問題を確実に解消することができる新しい技術を確立することが強く要請されている状況にあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記小麦粉ルウにみられる問題点を根本的に改善すると共に、従来製品と比べて、食感が滑らかとなり、風味立ちが良好となるような新しいタイプのルウ製品を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、澱粉系原料として、少なくとも特定量の小麦粉及びコーンスターチを使用し、しかも香辛料等の微粒子状に含まれる水不溶性原料の粒子径を特定のものに調整することにより、所期の目的を達成し得ることを見出した。
更に、本発明者らは、ルウの製造工程において、製品における粉体原料の沈降分離を極少にして、高品質の製品を作製することを可能とするための新しい方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、ルウの原料配合において、粉体原料をコーンスターチ等の澱粉系原料と共に粉砕することにより、加工適性の高い粉砕原料が得られること、そして、この原料を使用して製品化することにより、原料の沈降分離が回避された均質で高品質の製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、従来製品と比べて、食感が滑らかとなり、風味立ちがよい食感及び風味が改質された新しいタイプのルウを製造する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、先行技術の小麦粉を用いるルウと同等の粘度等の物性を有し、かつ食感及び風味の優れた新しいタイプのルウを製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、ルウの原料配合において、加工適性の高い特定の粉砕粉体原料を使用することにより、粉体原料を均質に含む高品質のルウを製造する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、ルウの製造において、吸湿性粉体原料を澱粉系粉体原料と共に粉砕した原料を用いてなる高品質のルウを製造する方法を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、滑らかな粘度で優れた食感、風味を有する高品質のルウを製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、小麦粉ルウからなるルウ製品を製造する方法において、少なくとも油脂、風味原料及び澱粉系原料を用い、原料中の澱粉系原料以外の高速粉砕機等で粉砕した場合に、熱をもつことで相互に結着してダマになったり、次工程へ移送する配管に付着したりする性質を有する吸湿性粉体原料を澱粉系原料と共に湿熱処理することなく粉砕することにより粉砕時の原料の発熱を回避して均一な粒度で加工適性の高い粉砕原料とし、これらの原料を65℃以上の温度で仕上げのために加熱処理することを特徴とするルウの製造方法、である。本発明は、吸湿性粉体原料として食塩及び/又は砂糖を用い、澱粉系原料としてコーンスターチのみを用いる上記のルウの製造方法、吸湿性粉体原料1部に対して0.01〜2部の澱粉系原料の比率でこれらを混合して粉砕する前記のルウの製造方法、吸湿性粉体原料の粉砕前の中心粒径が、食塩で212〜425μm、砂糖で425〜550μmであり、澱粉系原料の粉砕前の中心粒径が、63〜106μmである前記のルウの製造方法、粉砕処理により得られる吸湿性粉体原料の中心粒径が125〜355μmである前記のルウの製造方法、を望ましい態様としている。本発明において、吸湿性粉体原料とは、ルウの原料の内、澱粉系原料以外の吸湿性粉体で、高速粉砕機等で粉砕した場合に、熱をもつことで相互に結着してダマになったり、次工程へ移送する配管に付着したりする性質を有するものを意味するものとして定義される。本発明において、吸湿性粉体原料は、澱粉系原料と明確に区別されるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳述する。
本発明においては、小麦粉の添加量を従来一般的であったものより抑えた一定量のレベルとし、かつ特定の澱粉としてコーンスターチを小麦粉に対して同等レベルの一定量用いてルウとすることにより、上記課題を達成するようにするものである。つまり、小麦粉を一定量に抑えて使用することにより、小麦粉による風味低下の問題を回避しつつ、しかも小麦粉特有のコク味や粘度を得るようにすると共に、かつ一定量のコーンスターチを使用することにより、コーンスターチの作用等によって、より滑らかで適切な粘度となるようにして、ルウに特有の本来のデリケートな香辛味や旨味を十分に引き出し得るルウとすることを可能とするものである。
また、本発明は、上記にように、ルウの製造時の原料配合において、吸湿性粉体原料を澱粉系粉体原料と共に粉砕した原料を用いることを特徴としている。上記のように、従来、ルウの製造において、食塩、砂糖等の粉体原料を粉砕機で粉砕することも行われていたが、用いる粉砕機によって、作業効率や品質の面で改善すべき問題点が多々みられた。
【0008】
これに対して、本発明においては、これらの原料をコーンスターチ等の澱粉系粉体原料と共に粉砕するものであり、このことにより、澱粉系原料が粉砕時の熱を奪い、上記の問題が極力回避され、均一な粒度で加工適性の高い粉砕食塩(砂糖等)が得られ、結果としてこれを原料に含んだ製品は、原料の沈降分離が極力回避された均質で高品質なものとなることがわかった。
【0009】
本発明の対象とするルウは、カレー、シチュー等のルウであって、必要により、水、各種の具材を加えて煮込んで調理される、固形状、粉末状、ペースト状、液状等の形態のものである。
このようなルウは、一般的に油脂と小麦粉とを100〜170℃程度に加熱混合して小麦粉ルウを作った後に風味原料等を加えるか、あるいはこれらの原料を一括して上記の温度で加熱混合して製造される。
【0010】
このようなルウの基本原料として、澱粉系原料が必要であり、従来、これに小麦粉が用いられたが、本発明では、澱粉質原料として小麦粉及びコーンスターチを各々特定の配合量で併用することが重要である。また、本発明では、澱粉系原料として小麦粉及びコーンスターチ等任意の澱粉系原料を使用する。
本発明者らの知見によると、澱粉系原料中、特に、コーンスターチは、ルウを調理した際に次のような特性と機能を示すことが分かった。したがって、例えば、小麦粉とコーンスターチの添加量を調整して用いることにより、両者の特性を十分に活かすことが可能であり、これにより、風味及び物性の面で優れたルウが得られるという作用効果が得られる。
【0011】
(ルウの原料としての小麦粉の特性及び機能)
(1) 油脂と焙煎して独特のコク味のある風味が得られる。
(2) 反面、添加量が増えると生臭さや粉っぽさが出たり、特有の風味により風味原料由来の香りや旨味を抑える。
(3) ルウに適切な食感を与える粘度、舌触り、口どけを付与し得る。
(ルウの原料としてのコーンスターチの特性及び機能)
(4) それ自体の風味は弱く、他の風味原料由来の香りや旨味をストレートに引き立たせる。
(5) ルウに適切な食感を与える粘度を付与し得、かつ物性は小麦粉に比べてより滑らかで、舌触り、口どけが滑らかである。
【0012】
以上の理由により、本発明においては、小麦粉4〜18重量%(以下、%と略称する)及びコーンスターチ8〜18%を用いる。
小麦粉の添加量が4%に満たないと、前記(1) の小麦粉の効果が十分に得られず、一方18%を超えると前記(2)
の問題が顕在化する。したがって、上記添加量の範囲とすることにより、このような問題を回避して、コーンスターチの作用と相乗して良好な風味と粘度・舌触り・口どけを達成し得るルウを得ることが可能となる。同様の根拠から、小麦粉を7〜12%用いることが更に好ましい。
次に、コーンスターチの添加量が8%に満たないと、添加量を抑えられた小麦粉の作用を補填してルウに適切な食感を与える粘度を十分に付与し難く、一方18%を超えるとルウの食感が糊っぽくなりやすい。したがって、上記添加量の範囲とすることにより、小麦粉の作用を補填してルウに適切な粘度・舌触り・口どけを達成し(前記(5) のコーンスターチの効果)、かつコーンスターチの風味特性を活かし、他の風味原料由来のルウに特有の本来のデリケートな香辛味や旨味を引き立たせて優れた風味を得ることが可能となる(前記(4)のコーンスターチの効果)。同様の根拠から、コーンスターチを10〜16%用いることが更に好ましい。
前記コーンスターチの代わりに、あるいはこれと併せて、他の澱粉系原料を用いることもできることはいうまでもない。
【0013】
本発明においてルウは、前記澱粉系原料と他の基本原料である油脂及び風味原料等を用いて、常法により製造することができる。
油脂は、食用油脂であれば如何なるものでもよく、ルウ中に26〜44%用いるのが良好な風味・粘度を達成する上で好ましい。
風味原料としては、乳製品、肉類・魚介類・野菜・果実等の汁液、エキス、ブイヨン、香辛料、カレーパウダー等の他の原料と共に加熱した場合に風味が引き立ついわゆる融合型の風味原料や、食塩、砂糖、オニオンパウダー等のパウダー品、調味料(アミノ酸等)等の単体で比較的高温の加熱で風味立ちする粉体原料を用いることができる。風味原料は、ルウ中に1〜18%用いるのがこれらに由来する良好な風味を達成する上で好ましい。
【0014】
以上の原料の内、香辛料等の水不溶性原料は、粒子径が106μ以下、好ましくは53μ以下とするのが望ましい。
本発明においては、小麦粉及びコーンスターチを特定量含む構成とすることにより、ルウに滑らかな物性を付与することが可能となり、他の原料についてもこれを上記範囲で微粒子状に含むようにすることによって、ルウの舌触りと口どけを更に滑らかなものにすることが可能となる。
本発明においては、必須原料である澱粉系原料を、食塩、砂糖(グラニュー糖)等の吸湿性粉体原料を粉砕する場合のバインダーとして用いることが重要である。食塩、砂糖等は高速粉砕機等で粉砕した場合に、熱をもつことで相互に結着してダマになったり、次工程へ移送する配管に付着したりする問題がある。したがって、これらの原料を澱粉系原料と一緒に粉砕することで、上記の問題を回避し、均質で高品質の粉砕原料とすることができる。
この場合に、例えば、食塩については、食塩1重量部(以下、部と略称する)に対して澱粉系原料0.01〜1部、砂糖については、砂糖1部に対して澱粉系原料0.1〜2部の比率で各々両者を粉砕にかけることにより、粉砕による結着等の問題を回避して粉砕を好適に行うことができる。
【0015】
粉体原料の添加量、粉砕条件等について、更に具体的に説明すると、吸湿性粉体原料としては、食塩、砂糖、ぶどう糖等が例示される。尚、本発明で均質に微粉化される原料として、砂糖のうち、特にグラニュー糖が本発明の粉砕効果を好適に得る上から好ましい。澱粉系原料としては、コーンスターチ、小麦粉、加工澱粉等が例示されるが、これらに限らず他の澱粉系原料を使用することも可能である。これらのうち、特に、コーンスターチを用いて本発明を実施すれば、吸湿性粉体原料の粉砕適性の向上効果と共に、食感が滑らかとなり、風味立ちがよいルウを製造できるので、これを用いるのが最も望ましい。つまり、コーンスターチは、ルウを調製した際に所望の粘度を出すための原料として好適なものであり、小麦粉と同様の粘度が達成でき、しかも、物性的には小麦粉ルウに比べて滑らかであり、かつ風味にくせがないため、ルウ製品において、他の風味原料の風味をシャープに引き出す効果を有するからである。また、加工澱粉も、粉砕、加熱混合時の影響を受けにくいことから、好適なものとして挙げられる。
【0016】
上記吸湿性粉体原料の粉砕前の中心粒径(原料の粒度分布において累積として50重量%に相当する粒径)としては、食塩で約212〜425μm、砂糖で約425〜550μmが好適なものとして例示される。これらにより、澱粉系原料と共に粉砕した場合に後記の好適粒径に円滑に粉砕することができる。尚、前記中心粒径の規定において、食塩の場合、300μmを越える大きさの原料が15%未満となり、150μmに満たない大きさの原料が40%未満となり、砂糖の場合、355μmを越える大きさの原料が40%未満となり、150μmに満たない大きさの原料が30%未満となることが望ましい。
澱粉系原料の粉砕前の中心粒径としては、約63〜106μm、好ましくは約53〜80μmである。これにより、粉砕時に原料の発熱を極力回避することができると共に、粉砕を円滑にして、好適な粉砕適性が得られる。澱粉系原料の粒径が上記の範囲を外れると、何れの場合もこれらの効果が十分に得られない場合がある。
【0017】
次に、粉砕処理については、本発明では、吸湿性粉体原料を澱粉系原料と共に粉砕した原料を用いるが、吸湿性粉体原料1部に対して0.01〜2部の澱粉系原料の比率でこれらを混合して粉砕するのが望ましい。特に食塩の場合は、この1部に対して0.01〜1部の澱粉系原料を、砂糖では、この1部に対して0.1〜2部の澱粉系原料を共に粉砕することが望ましい。以上の比率により、何れの場合も粉砕時に原料の発熱を極力回避することができると共に、粉砕を円滑にして、好適な粉砕適性が得られる。澱粉系原料が以上の比率を越えて用いられる場合は、粉砕に時間を要し、100μm以下の微粉が多くなり所定の粒径の粉砕原料を得難いことがある。反対に比率に満たない場合は、上記の粉砕効果を十分に達成できない場合がある。
粉砕処理は高速粉砕機等を用いて行う。本発明によれば、剪断力により高速で粉砕する何れの手段を用いても前記の好適な粉砕効果が得られるので、吸湿性粉体原料を極めて効率的に粉砕することができる。尚、粉砕処理を原料に冷風を送りながら行えば、粉砕時に原料の発熱を回避する効果が更に向上するので望ましく、上記手段は粉砕時に発熱しやすい砂糖の場合に特に有効である。
以上の粉砕処理により得られる吸湿性粉体原料の中心粒径としては、約125〜355μm、好ましくは約160〜310μmがよく、食塩では約125〜200μm、好ましくは約160〜180μmがよく、砂糖では約200〜330μm、好ましくは約270〜310μmがよい。これらを含むことにより、製造時及び製品における粉体原料の沈降分離を極力回避し、均質で高品質のルウを得ることができる。
【0018】
次に、ルウの製造については、常法により、油脂と小麦粉等の原料とを加熱攪拌混合して小麦粉ルウを作った後に、粉体原料等を加え、攪拌混合後、充填機にて型に流し、冷却固化して製造すればよい。この際、粉体原料として前記のように粉砕された吸湿性粉体原料を用いて製造されたルウによって本発明は達成される。
吸湿性粉体原料はルウ中に3〜30%、食塩では3〜12%、砂糖では4〜15%用いるのがよい。これらによって、粉体原料の沈降分離を極少にして、風味がよく、粉体原料を均質に含む高品質のルウが得られる。尚、第1の態様で、澱粉系原料として、小麦粉4〜18%及びコーンスターチ8〜18%を用いることにより、滑らかな粘度で優れた食感を有し、風味立ちのよい高品質のルウが得られる。したがって、吸湿性粉体原料と共に粉砕する澱粉系原料として、小麦粉及び/又はコーンスターチを上記の範囲で用いれば、粉砕適性及び食感、風味の何においても優れたルウとなる。また、ルウに含まれる香辛料等の水不溶性原料の中心粒径を通常約53〜90μmとするのが、滑らかな食感のルウを得る上で好ましい。
【0019】
以上の原料を用いて高品質のルウを製造する場合は、例えば、油脂と小麦粉とを加熱混合(通常100〜170℃)して小麦粉ルウを作った後、これに風味原料を混合し仕上げ加熱処理するか、これらの原料を一括して混合し仕上げ加熱処理すればよい。仕上げ加熱処理は、小麦粉ルウ及び風味原料を加熱処理して、各原料の風味を引き立たせ、かつ相互に馴染ませるために行う。この効果を得る上で、仕上げ加熱処理は65℃以上、好ましくは65〜131℃、更に好ましくは70〜120℃で行うのがよい。上記範囲より高温であると、原料に焦げ風味がでやすい等の問題があり、反対に低温であると風味の引き立ちが不十分となりやすい。各原料の風味を引き立たせ、かつ相互に馴染ませる効果を十分かつ適切に得る上で、必要により、小麦粉ルウを一旦50〜70℃程度に冷却し、20〜70分間程度で65〜131℃まで昇温して仕上げ加熱処理を行うのが望ましい。しかして、上記の処理により、ルウの風味改善効果がより好適に達成される。
【0020】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
1.原料の仕込み
(1)小麦粉ルウ原料
油脂(ヘット及びラード)、小麦粉及びコーンスターチを使用した。
(2)水系原料
融合型風味原料(乳製品(チーズ、ヨーグルト等)、肉、野菜、果実のエキス、ブイヨン、ジュース、各種香辛料、その他の配合物であるカレーパウダー)を使用する。
(3)粉体原料
単独型風味原料(食塩、砂糖、スターチ、各種香辛料、その配合物であるカレーパウダー、オニオンパウダー、ビーフエキスパウダー、アミノ酸(調味料)、粉末醤油、乳化剤等)を粉体原料として使用した。香辛料等の水不溶性原料の粒子径は約106μ以下であった。
【0021】
2.粉体原料の調製
食塩、砂糖等の粉体原料のうち、食塩は、予め食塩10部にコーンスターチ1部を混合して高速粉砕機(HS−5型、西村機械社製)で1700rpmで粉砕し、中心粒径170±10μm、150μmパス=30〜50%程度のものとし、砂糖は、グラニュー糖9部にコーンスターチ10部を混合して高速粉砕機で700rpmで粉砕し、中心粒径240〜300μm、150μmパス=10〜30%程度のものとして、均一な粒度で加工適性の高い粉砕粉体原料を調製した。
【0022】
3.小麦粉ルウの製造
油脂12部、小麦粉12部を加熱釜で約50分間かけて約120℃まで加熱攪拌した後、約70℃まで冷却して小麦粉ルウを製造した。
【0023】
4.カレールウの製造
この小麦粉ルウに、前記のように粉砕した食塩8部、砂糖8.5部、コーンスターチ11部の粉体原料と、カレーパウダー6部及びアミノ酸1.5部を混合した粉体原料と、果実ペースト5.7部を加えて再び加熱攪拌し、約60分間かけて約114℃まで加熱後、充填機にて容器に入れ、冷却固化してカレールウを製造した。
【0024】
5 製品の特性
上記により、原料の沈降分離が回避された均質な高品質のルウ製品が得られた。このルウに含まれる香辛料等の水不溶性原料の中心粒径53〜90μm、106μmパス=60〜85%程度であった。
上記のカレールウ(固形ルウ)を用いて、常法により、水、具材と煮込んで調理したカレーは適度の粘度(60℃で約2000cp)を有し、非常に滑らかな舌触りと口どけを有し、更に、生臭さや粉っぽい風味が全くなく、香辛料、調味料等に基づくルウに特有の本来のデリケートな香辛味や旨味がシャープに引き出され、優れた食感及び風味を有するものであった。
【0025】
実施例2〜4及び比較例1〜2
本発明の範囲内で小麦粉及びコーンスターチの使用割合を変えた以外は、実施例1と同様にして製造した次の実施例3及び4のカレールウ製品、及び粉体原料と澱粉系原料として通常の原料(各々単独で粉砕したもの)を使用した製品(次の実施例2及び比較例1)、の性能について官能テストにより評価した。実施例2及び実施例3は、小麦粉4部、コーンスターチ18部、実施例4は、小麦粉14部、コーンスターチ11部、比較例1は、小麦粉22部、コーンスターチ5部としたものである。
実施例2は、以下の粒度の原料を用いた
比較例1は、以下の粒度の原料を用いた
【0026】
(1)評価方法
沈降分離は、ルウを65℃で30分間放置後急冷固化し、上層部(A)と下層部(B)の塩分又は糖分を測定し、B−A/A+Bの値を求め、値が0に近いものを沈降分離がないものと判定した。沈降分離の程度は、非常に有る(++)、有る(+)、ほとんど無い(−)の3段階で評価した。
粘度は、実施例1を含めB型粘度計(R100型粘度計、東機産業社製)により60℃の粘度を測定したものである。また、粘度計で測定した粘度以外に、カレー製品としての適切なとろみを有する(++)、カレー製品としての適切なとろみをほぼ有する(+)、カレー製品としての適切なとろみに欠ける(−)、の3段階で評価した。
食感は、舌触りと口どけを、非常に滑らか(++)、滑らか(+)、滑らかさに欠ける(−)、の3段階で評価した。
風味は、小麦粉による確かなコク味を有し、ルウに特有の本来のデリケートな香辛味や旨味が十分に引き出されている(++)、上記のコク味をほぼ有し、上記の香辛味や旨味が引き出されている(+)、上記のコク味と上記の香辛味や旨味が欠ける、あるいは生臭さや粉っぽい風味がする(−)、の3段階で評価した。
【0027】
(2)結果
上記方法によって評価した結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
以上の結果より、粉体原料を澱粉系原料と共に粉砕した原料を用いることにより、原料の沈降分離を極少にして、均質な高品質のルウが得られることが分かる。
また、澱粉系原料として、コーンスターチを特定割合で用いる場合、粘度、食感、風味の優れた高品質の新しいタイプのルウが得られることが分かった。尚、本発明で規定する他の使用割合等で同様に試験した結果、ほぼ同様の結果が得られた。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、吸湿性粉体原料を澱粉系原料と共に粉砕した原料を用いて、原料を65℃以上の温度で加熱することを特徴とするルウの製造方法に係るものであり、これによれば、吸湿性粉体原料をコーンスターチ等の澱粉系原料と共に粉砕した原料を用いて、原料の沈降分離を回避して、ルウ中の原料を極微粒子状に含むようにすることで、従来製品と比べて食感が滑らかとなり、風味立ちがよい食感及び風味の改質された新しいタイプのルウを得ることができる。
また、以上の本発明によれば、粘度、食感、風味の何れにおいても従来製品と差別化された新しいタイプのルウを得ることが可能となる。
Claims (5)
- 小麦粉ルウからなるルウ製品を製造する方法において、少なくとも油脂、風味原料及び澱粉系原料を用い、原料中の澱粉系原料以外の高速粉砕機等で粉砕した場合に、熱をもつことで相互に結着してダマになったり、次工程へ移送する配管に付着したりする性質を有する吸湿性粉体原料を澱粉系原料と共に湿熱処理することなく粉砕することにより粉砕時の原料の発熱を回避して均一な粒度で加工適性の高い粉砕原料とし、これらの原料を65℃以上の温度で仕上げのために加熱処理することを特徴とするルウの製造方法。
- 吸湿性粉体原料として食塩及び/又は砂糖を用い、澱粉系原料としてコーンスターチのみを用いる請求項1記載のルウの製造方法。
- 吸湿性粉体原料1部に対して0.01〜2部の澱粉系原料の比率でこれらを混合して粉砕する請求項1記載のルウの製造方法。
- 吸湿性粉体原料の粉砕前の中心粒径が、食塩で212〜425μm、砂糖で425〜550μmであり、澱粉系原料の粉砕前の中心粒径が、63〜106μmである請求項2記載のルウの製造方法。
- 粉砕処理により得られる吸湿性粉体原料の中心粒径が125〜355μmである請求項1記載のルウの製造方法。
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