JP3670974B2 - ハイマルチポリエステルフィラメントとその製造方法、及びハイマルチポリエステルフィラメントよりなる水着 - Google Patents

ハイマルチポリエステルフィラメントとその製造方法、及びハイマルチポリエステルフィラメントよりなる水着 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリアーを用いなくても、常圧100℃で塩基性染料によって濃染可能で、かつ鮮明に染まり、かつ単糸繊度が1.4dtex以下であるハイマルチポリエステルフィラメント及びその製造方法、更には、かかるハイマルチポリエステルフィラメントからなる水着を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表される芳香族ポリエステル類は、機械的性能、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れており、繊維、フィルム、その他の成形品として広く用いられている。しかしながら、芳香族ポリエステルは染色されにくく、高温、高圧下で染めるとか、キャリアー染色しなければならない等、経済的、操業的に欠点を有するうえに、濃染でかつ鮮明な色彩を出しにくいという欠点を有する。
【0003】
これらの欠点を解決するため、特公昭34−10497号公報には、芳香族ポリエステルに5−ナトリウムスルホイソフタル酸(以下SIPと記す。)のごとき酸性基を有する化合物を共重合する方法が開示されている。このポリエステルを塩基性染料或いは分散染料で染色する場合、常圧、100℃でかつキャリアーなしで充分染色するためには、SIPをポリエステルの酸成分に対して5mol%より多く配合しなければならない。しかしながら、酸性基を持った共重合成分が多いポリエステルは、紡糸工程での操業性が著しく悪化し、実用には供しがたい。
【0004】
又、ポリエステルに分子量が200以上の高分子量ポリオキシアルキレングリコールないしはその同族体を共重合すると、易染効果があり、かつ得られたポリエステルの融点を大幅に低下させないことは公知である。しかし、このものの欠点は耐光性、耐熱性が極めて劣ることである。
【0005】
耐光性の低下を少なくして易染効果を上げる方法としてアジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸のような直鎖炭化水素系のジカルボン酸又はイソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸或いはこれらのアルキルエステルを共重合成分として用いることが知られている。又ジエチレングリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス−エトキシル化2,2−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールなどをSIP等と共重合して用いることも知られている。
【0006】
しかしながら、これらの場合には易染効果が充分でないか、或いは充分な易染化にした場合には得られたポリエステルの融点を著しく低下させるという品質上の問題がある。更に、ネオペンチルグリコールやジエチレングリコールのように、沸点がエチレングリコールに近い化合物の場合には、重縮合反応中に系外に溜出する量が多いので、改質剤グリコールの仕込み量に対するポリエステル中の含有量比が低くなり、かつ含有量を制御し難いという問題と、溜出グリコールの精製、再使用が困難となる等の問題が生じる。
【0007】
又、易染効果を上げるため、SIPのような金属塩スルホネート基を有する化合物とポリオキシアルキレングリコール又はその機能的誘導体とを共重合させる方法も知られている。例えば、特開昭51−84926号公報には、少なくとも一つの金属スルホネート基を含むコモノマーを0.5〜10mol%、ポリオキシアルキレングリコール又はその機能的誘導体を1〜10重量%共重合させたエチレンテレフタレート単位主体の共重合ポリエステルが開示されている。
【0008】
しかし、我々が目的とする1.4dtex以下のハイマルチ(以下単にハイマルチと記す。)に到達するには、ある一定の技術的制限が加えられ、特開昭51−84926号公報の中の一部分の範囲においてのみ実現するものである。又、特開昭51−84926号公報にはハイマルチに関する記載がなく、未だ解決できていない課題である。又、特公昭62−54340号公報にも同様な記載が見られるが、当該公報にもやはりハイマルチに関する記載がなく、ハイマルチについての具体的開示は未だかつてなされていない。
【0009】
特開昭61−126131号公報には、SIP又はその誘導体を1.3〜2.5mol%、平均分子量300〜4000のポリエチレングリコール(以下単にPEGと記す。)を0.5〜3重量%配合した共重合ポリエステルが開示されている。しかし、当該公報に開示されたPEGの含有量は少なく、常圧100℃における染色性が充分でない。
【0010】
特開昭60−163920号公報にも、SIPの金属塩成分0.1〜10mol%、平均分子量200〜20000のポリアルキレングリコール成分とからなるバインダーファイバー用共重合ポリエステルに関する記載がなされている。このものの用途は融着繊維に関するものであり、我々が目的とする常圧100℃における染色性の改善を目的とするものではない。
【0011】
又、特開昭59−26521号公報には、1.0〜2.0mol%の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分、0.5〜1.9重量%の分子量400〜6000のグリコール成分を共重合してなる改質ポリエステルが開示されている。このものは、染着座席である金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分、及び分子量400〜6000のグリコール成分の含有量が少ないので、常圧100℃における染色性が充分に発揮できないものである。
【0012】
特開昭63−120111号公報には、1.0〜2.0mol%の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と0.5〜1.9重量%の分子量400〜6000のグリコール成分とからなる改質ポリエステル繊維の製造方法が記載されている。しかしながら、この公報においても金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と分子量400〜6000のグリコール成分の含有量が少ないため、常圧100℃における染色性が充分に発揮できないものである。
【0013】
特開平3−813号公報には、1.1〜1.9mol%の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と分子量400〜6000のポリアルキレングリコールを0.5〜1.9重量%共重合したポリエステル繊維について開示がなされている。これも金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と分子量400〜6000のポリアルキレングリコールの含有量が少ないため、常圧100℃における染色性が充分に発揮できないものである。
【0014】
特開平5−311515号公報には、スルホネート基含有酸成分を0.01〜10mol%、平均分子量1000以上のポリアルキレングリコール0.1〜10重量%及び下記一般式
2SO32
(式中、R2は炭素数3〜30のアルキル基又は炭素数7〜40のアリール基或いはアルキルアリール基、X2はアルカリ金属又はホスホニウム基を表す。)で表される有機スルホン酸塩を0〜2重量%含有するポリエステル組成物が開示されている。
【0015】
しかし、本発明は下記一般式
2SO32
(式中、R2は炭素数3〜30のアルキル基又は炭素数7〜40のアリール基或いはアルキルアリール基、X2はアルカリ金属又はホスホニウム基を表す。)で表される化合物を構成要件とせず、又、当該発明は制電性を発現させることを目的とし、本願発明とは目的が相違する。一方、ハイマルチの紡糸操業性の観点から言及すると、ポリアルキレングリコールの平均分子量は400〜800が好ましく、当該公報のように平均分子量が1000以上の場合は、ハイマルチの紡糸操業性が劣る結果となる。
【0016】
一方、従来の水着は主としてナイロンと弾性糸の素材からなるが、これらの素材では、プール等で用いられる消毒液の塩素によりナイロン自体がへたってしまう、或いは色彩が変化するという欠点を有する。又、これらを素材とした水着は、ナイロン自体の耐光堅牢度が悪く、長時間直射日光にあたると変色が著しいという欠点をも有する。このような欠点を解消するために、本発明者らは、ナイロンに変えて、塩素によるへたり及び色彩の変化がなく、又、耐光堅牢度のよいポリエステルを水着に使用することを考えた。
【0017】
しかし、上述のように通常のポリエステルは一般に染色されにくく、濃染でかつ鮮明な色彩を出しにくいという欠点を有する。水着のポリエステル部分を濃染でかつ鮮明に染色しようとすると、通常のポリエステルでは高温、高圧下で染色しなければならず、かかる染色を行うと、耐熱性の弱い弾性糸部分がいためられるので、より低温での染色、即ち、常圧100℃での染色が望まれている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、常圧100℃において充分な染色性を付与すると共に、従来技術では全く解決できなかったハイマルチ糸の提供及びスピンドロー(以下SPDと記す。)にてハイマルチ糸を容易に紡糸することにあり、更には、かかるハイマルチポリエステルフィラメントからなり、塩素によるヘタリ及び色彩の変化がなく、やわらかさ、しなやかさによる良好な着心地感、肌触りを有し、かつ耐光堅牢度に優れた水着を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、SIPとPEGを共重合成分とし、共重合する化合物の含有量を一定範囲に限定することによって解決でき、従来では解決できなかった常圧100℃における染色性が良好であり、かつ、ハイマルチが紡糸可能なポリエステルフィラメントが得られた。更には、このハイマルチポリエステルフィラメントを水着に使用することにより、従来の課題であった塩素でのヘタリ及び色彩の劣化、或いは耐光堅牢度を同時に解決でき、しかも、ハイマルチによるやわらかさ、しなやかさによる良好な着心地感、肌触りを付与することができる。
【0020】
即ち、本発明の第一は、SIPを2.0〜3.0mol%、平均分子量400〜800のPEGを4〜6重量%含有するポリエステルからなり、かつフィラメントの単糸繊度が1.4dtex以下であるハイマルチポリエステルフィラメントである。
【0021】
又、本発明の第二は、製造方法がSPDである上記ハイマルチポリエステルフィラメントの製造方法である。
【0022】
又、本発明の第三は、上記ハイマルチポリエステルフィラメントからなる水着である。
【0023】
【発明の実施形態】
本発明に用いるポリエステルとして、従来公知のポリエステルが用いられる。即ち、以下に述べるジカルボン酸及びその誘導体とグリコールとの共重合により得られる。例えば、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ビス−(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス−(4−カルボキシフェニル)スルホン、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、ジフェニルーp,p´−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、trans−ヘキサヒドロテレフタル酸、及びそれらのアルキルエステル、アリールエステル、エチレングリコールエステル等のエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0024】
中でも特に有用なものとしては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分とし、これらの芳香族ジカルボン酸及びアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその他のエステル形成性誘導体の1種以上を10mol%を限度として少量混合したものが挙げられる。
【0025】
一方、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
中でも有用なものとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールを主成分とし、その他のグリコール成分及びエステル形成性誘導体の1種以上をジオール成分の10mol%を限度として少量混合したものが挙げられる。
【0027】
又、1分子中にカルボキシル基とアルコール基を有するオキシカルボン酸成分、例えば4−オキシ安息香酸、4−ヒドロキシエトキシ安息香酸、オキシピバリン酸等も必要に応じて使用することができる。
【0028】
必要に応じて、少量の一官能性化合物、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、酢酸等、或いは三官能性以上の化合物、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、リン酸化合物及びこれらのエステル形成性誘導体を添加することもできる。
【0029】
ポリエステルの固有粘度としては、通常の繊維に使用される程度の物であれば良いが、好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.55〜1.5、特に好ましくは0.60〜1.0である。
【0030】
本発明で常圧での染色性を発現させるための一つの成分としてSIPが挙げられる。このものは染着座席としてのスルホン酸ナトリウム基を含有し、しかも、重合時に反応する2個のカルボキシル基がスルホン酸ナトリウム基に対して、それぞれメタ位に存在し左右対称の位置にあるので、立体障害がなくスムーズに重合反応を進めることができる。
【0031】
SIPの含有量は、ポリエステル中の酸成分に対し2.0〜3.0mol%含有する必要がある。SIPが2.0mol%より少ないと常圧100℃での染色性が不充分であり、又、3.0mol%を超えると、ハイマルチでの紡糸操業性が著しく悪くなる。
【0032】
又、常圧での染色性を発現させるためのもう一つの成分として平均分子量が400〜800のPEGが挙げられる。平均分子量が400未満の場合、耐熱性が悪く、800を超えるとハイマルチでの紡糸操業性が悪化する。
【0033】
PEGの含有量は、ポリマー重量に対して4〜6重量%含有する必要がある。PEGの含有量が4重量%より少ないと、常圧での染色性が悪く、又、6重量%よりも多くなると耐光堅牢度が悪くなり、かつ紡糸操業性が著しく悪くなる。
【0034】
SIPとPEGのポリエステルへの配合は繊維形成性ポリエステルの重合開始時点で行う。好ましくはテレフタル酸ジメチル等のジカルボン酸エステルの末端がエチレングリコールで置換されたエステル交換反応終了後に行う。
【0035】
重合段階或いは紡糸段階においては、通常の方法のように必要があれば、顔料、艶消し剤、蛍光増白剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制電剤、及び有機アミン、有機カルボン酸アミド等のエーテル結合抑制剤等を添加することができる。
【0036】
紡糸は通常の紡糸方式にて紡糸可能であるが、SPD、高速紡糸いずれも可能である。中でも延伸工程の省略によるコストダウンの観点からSPDが好ましい。
【0037】
単糸繊度は1.4dtex以下であるが、必要に応じて更に細い単糸を得ることができる。単糸繊度が1.4よりも大きいと、特に風合い面、やわらかさ、しなやかさによる良好な着心地感、肌触りを発現できない。繊維断面は丸断面だけでなく、三角断面、偏平断面、四角断面、多角形断面、中空断面、等の異形断面繊維も可能である。
【0038】
本発明では、毛羽発生を抑制するため等、操業性改善を図るために、オイリング付与後適当な位置においてマイグレーションノズルを設置してもよい。マイグレーションノズルの空気圧は49kPa以上、好ましくは98kPa以上がよい。又、GR2の工程を経た後巻取る以前にエンタングルノズルを設置してもよい。エンタングルノズルの空気圧は通常98〜294kPaである。
【0039】
本発明のハイマルチポリエステルフィラメントは、水着に好適に用いられる。素材がポリエステルなので、塩素によるへたり及び色彩の劣化がなく、かつ耐光堅牢度に優れており、長時間直射日光にあたっても変色が少ない。又、高温、高圧下で染めるとか、キャリアー染色しなくても、常圧100℃において濃染かつ鮮明に染色することができるので、耐熱性の弱い弾性糸部分がいためられるということも少ない。又、ハイマルチポリエステルフィラメントを水着に用いることにより、ポリエステルの粗硬さがなくなり、やわらかさ、しなやかさによる良好な着心地感、肌触りが得られる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、常圧100℃における染色性(濃染性、鮮明性)がよく、かつ耐光堅牢度等の諸堅牢度が良好であり、特にハイマルチでのSPD紡糸性が良好な常圧可染性ポリエステルを得ることができた。常圧可染性ポリエステルの分野では、ハイマルチでの操業性は未だかつて成功した例はなく、特に共重合成分の含有量を適正量とすることにより、安定してハイマルチのポリエステルフィラメントを生産することができた。
【0041】
又、本発明により得られたハイマルチポリエステルフィラメントを水着に使用することにより、従来の課題であった塩素によるへたり及び色彩の劣化がなく、かつ耐光堅牢度に優れた水着が得られた。又、常圧100℃において濃染かつ鮮明に染色できるので、耐熱性の弱い弾性糸部分がいためられるということも少ない。又、ポリエステルの粗硬さがなくなり、やわらかさ、しなやかさによる良好な着心地感、肌触りが得られる。これらのハイマルチ糸は、他にもインナー用途に好適に用いられる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例中「部」とあるのは全て「重量部」を意味する。固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン=6/4の混合溶剤中20℃で常法により求めた。染色はSPDにより得られた糸を筒編みにして、その筒編み布を10gに切り取り、カヤクリル Navy A―ED(日本化薬社製)4%owf、分散剤としてニッカサンソルトRM340を1ml/l、ペーハー調整剤として酢酸0.2ml/lの混合溶液中、筒編み布とその混合溶液の浴比が1対40になるような条件で100℃、60分染色をした。その後、苛性ソーダ(48ボーメ)2ml/l、ハイドロサルファイト2g/l、サンモールRC700 1ml/lの混合溶媒により還元洗浄した。
【0043】
各種堅牢度は以下に述べる方法で評価した。耐光は、JIS L−0842に準じて、湿摩擦はJIS L−0849(II形)に準じて、昇華はJIS L―0879(B法)に準じて、洗濯はJIS L−0844(A―2法)に準じて、汗はJIS L−0848に準じて、塩素はJIS L−0884(A法 10ppm、B法 20ppm)に準じて測定した。但し、耐光試験は照射時間20時間の数値を表す。
【0044】
染色性は目視により色の濃さ或いは鮮明さの優劣を判断し、色の濃さ或いは鮮明さがよいものを○、劣るものを×とした。又、操業性は、糸切れがなく、毛羽、タルミがないものを○、糸切れが多く、毛羽、タルミのあるものを×とした。
【0045】
又、水着については、得られたハイマルチポリエステルフィラメント或いは既製のナイロン6の糸と弾性糸を交編し、トリコットを作成して、染色性、耐光堅牢度及び塩素堅牢度を評価した。
【0046】
実施例1
(重縮合段階)
ジメチルテレフタレート596部、エチレングリコール(以下単にEGと記す。)353部及びエステル交換触媒として酢酸カルシウム1水和物の6.6%EG溶液9.03部をオートクレーブに入れ、攪拌下170〜235℃にてエステル交換反応を行った。理論量のメタノールが留出した後、SIPのEGエステル化体の35%EG溶液79.8部(SIPの含有量はジメチルテレフタレートに対し2.5mol%)、平均分子量600のPEG32.5部(PEGの含有量はポリマーに対し5重量%)、イルガノックス2452.38部及び重合触媒として三酸化アンチモンの2%EG溶液12.9部を添加し、しばらく攪拌した。その後、徐々に昇温しつつ系内の内圧を減じて、最終的に275℃、25Paで2時間重縮合を行った。重縮合の終点は、溶融粘度の上がりを攪拌機の回転トルクにてモニターしながら、目標とする終点トルクにて重縮合を完了した。次いでこのポリマーを索状に押出し切断してペレットとし、目的とするポリマーが得られた。固有粘度は0.60であった。
【0047】
(紡糸段階)
重縮合段階にて得られたポリマーを水分率50ppmまで乾燥し、口金の穴径0.17mm、口金のホール数36ホール×2、フィルターはLFX10μm(渡辺義一製作所製)を用い、ヘッド温度298℃において、GR1の速度1000m/分、GR2の速度3400m/分、延伸倍率3.4倍、GR1の温度80℃、GR2の温度150℃にてSPD紡糸を行った。この際、毛羽抑制のため、空気圧98kPaのマイグレーションノズル、及び空気圧196kPaのエンタングルノズルを設置した。得られた糸は44dtex/36フィラメント(以下fと記す。)であり、強度は3.5センチニュートン(以下cNと記す。)/dtex、伸度は34%であった。
【0048】
(性能評価)
紡糸段階で得られたSPD糸を筒編機により筒編みし、表1に示すような評価を行った。この結果、染色性、堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0049】
実施例2
SIPの含有量をジメチルテレフタレートに対し2.0mol%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3400m/分であり、延伸倍率は3.4倍であった。又、強度は3.49cN/dtex、伸度は33%であった。この結果、染色性、諸堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0050】
比較例1
SIPの含有量をジメチルテレフタレートに対し1.5mol%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3350m/分であり、延伸倍率は3.35倍であった。又、強度は3.45cN/dtex、伸度は35%であった。この場合、常圧100℃における染色性が劣る結果となった。
【0051】
比較例2
SIPの含有量をジメチルテレフタレートに対し4.0mol%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合ハイマルチでの紡糸操業性が悪く、糸切れにより糸が巻き取れなかった。
【0052】
実施例3
PEGの平均分子量を400に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3300m/分であり、延伸倍率は3.3倍であった。又、強度は3.41cN/dtex、伸度は30%であった。この結果、染色性、諸堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0053】
実施例4
PEGの平均分子量を800に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3400m/分であり、延伸倍率は3.4倍であった。又、強度は3.42cN/dtex、伸度は32%であった。この結果、染色性、諸堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0054】
実施例5
平均分子量600のPEGの含有量を4重量%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3400m/分であり、延伸倍率は3.4倍であった。又、強度は3.51cN/dtex、伸度は31%であった。この結果、染色性、諸堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0055】
実施例6
平均分子量600のPEGの含有量を6重量%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3400m/分であり、延伸倍率は3.4倍であった。又、強度は3.49cN/dtex、伸度は33%であった。この結果、染色性、諸堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0056】
比較例3
平均分子量600のPEGの含有量を3重量%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3300m/分であり、延伸倍率は3.3倍であった。又、強度は3.43cN/dtex、伸度は35%であった。この場合、常圧100℃における染色性が劣る結果となった。
【0057】
比較例4
平均分子量600のPEGの含有量を7重量%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3300m/分であり、延伸倍率は3.3倍であった。又、強度は3.42cN/dtex、伸度は34%であった。この場合、耐光堅牢度が著しく悪くなり、又、ハイマルチでの紡糸操業性が悪く糸切れも多かった。
【0058】
比較例5
平均分子量200のPEGの含有量を5重量%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3400m/分であり、延伸倍率は3.4倍であった。又、強度は3.40cN/dtex、伸度は31%であった。この場合、得られる樹脂の耐熱性が悪くなり、紡糸操業性の悪化が見られるばかりか、常圧100℃における染色性の悪化が見られた。
【0059】
比較例6
平均分子量1000のPEGの含有量を5重量%に変更する以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合、ハイマルチでの紡糸操業性が著しく悪くなった。
【0060】
実施例7
口金のホール数を48ホール×2に変更し、製造した糸の銘柄を56dtex/48fとした事以外は実施例1と同一の工程で実施した。この場合、GR1の速度は1000m/分、GR2の速度は3400m/分であり、延伸倍率は3.4倍であった。又、強度は3.37cN/dtex、伸度は33%であった。この結果、染色性、諸堅牢度並びにハイマルチでの紡糸操業性はいずれも良好であった。
【0061】
比較例7
既製のナイロン6を用いて、実施例1記載の性能評価を行った。その結果、耐光堅牢度が悪く、塩素による変色が著しかった。以上の結果を表1に記す。
【0062】
【表1】
Figure 0003670974
【0063】
実施例8
実施例1により得られたハイマルチポリエステルフィラメントとポリウレタンを用いて水着を作成し、染色性、耐光堅牢度及び塩素堅牢度を評価した。その結果、染色性は良好であり、かつ、耐光堅牢度は照射時間20時間で4級以上、塩素堅牢度は4級と良好であった。又、着用試験の結果、やわらかさ、しなやかさに富むものであった。
【0064】
比較例8
実施例1により得られたハイマルチポリエステルフィラメントを既製のナイロン6の糸に変更する以外、実施例8記載と同一の工程で実施した。その結果、染色性はハイマルチポリエステルフィラメントよりもやや劣り、かつ、耐光堅牢度は照射時間20時間で2級、塩素堅牢度は2級と悪かった。又、着用試験の結果、ハイマルチポリエステルフィラメントよりもやや粗硬な感じであった。
【0065】
実施例9
実施例1により得られたハイマルチポリエステルフィラメントを平織りにし、熟練者の手触りにより風合い評価を行った。この結果、手触りの感触として風合いはしなやかでやわらかいものであった。
【0066】
比較例9
SPD糸の銘柄を84dtex/36f(単糸繊度は1.4dtexよりも大)に変更する以外は実施例1と同一の工程により得られたSPD糸を平織りにし、熟練者の手触りにより風合い評価を行った。この結果、手触りの感触として風合いはやや粗硬なものであった。

Claims (3)

  1. 5−スルホイソフタル酸ナトリウムを2.0〜3.0mol%、平均分子量400〜800のポリエチレングリコールを4〜6重量%含有するポリエステルからなり、かつ単糸繊度が1.4dtex以下であることを特徴とするハイマルチポリエステルフィラメント。
  2. スピンドロー方式により製造することを特徴とする請求項1記載のハイマルチポリエステルフィラメントの製造方法。
  3. 請求項1記載のハイマルチポリエステルフィラメントよりなる水着。
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