JP3665188B2 - 研磨装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は両面研磨装置に関し、さらに詳細には、ワークを支持する下定盤と、該下定盤への押圧力を加減調整可能な上定盤支持機構に支持された上定盤との間でワークを挟圧し、上定盤、下定盤及びワークを相対的に運動させてワークを研磨する研磨装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンウェーハ等の薄板状の被加工物を研磨する研磨装置としてはラッピング装置があり、被加工物の研磨面を鏡面に研磨する研磨装置としてはポリシング装置がある。
例えば、ラッピング装置では、太陽ギヤである外歯車(以下、「エクスターナルギヤ」)と内歯車(以下、「インターナルギヤ」という)を異なる角速度で回転することによって、被加工物(以下、「ワーク」という)を透孔中に保持したキャリアを自転させると共に公転させる。キャリアは遊星歯車に相当する。そして、そのキャリアの上下に設けられた上下の研磨定盤(以下、上の研磨定盤を「上定盤」と、下の研磨定盤を「下定盤」という)によりワークを上下から挟むと共に、上定盤と下定盤とワークの間にスラリー(研磨液)を供給し、ワークに対して各定盤が相対的に移動(回転及び/又は揺動運動)してワークの両面を同時に研磨するものがある。
このラッピング装置は、いわゆる4ウェイ駆動方式の両面研磨装置として知られており、ワークを精度高く平坦化及び研磨できると共に、ワークの両面を同時に加工できるため加工時間が短くて済み、半導体チップの素材となるシリコンウェーハ等の薄物研磨加工に適している。
【0003】
また、ポリシング装置は、一般的に、上面に研磨クロスが接着されて研磨面が形成され、回転する定盤と、その定盤の上方に回転可能かつ上下動可能に設けられ、下面にワークを密着・保持する保持プレートを有する保持装置とを備える。なお、定盤は下定盤に相当し、保持プレートは上定盤に相当する。このポリシング装置によれば、研磨液を供給しつつ、定盤とワークとを相対的に運動させることで、鏡面研磨加工が行われる。
【0004】
従来のラッピング装置の具体例について、図4に基づいて説明する。
20は上定盤であり、下面にワーク10であるシリコンウェーハをラッピングする研磨面が形成され、上面にキー21が装着されている。22は空圧等のシリンダ装置であり、門型ガイド14の上部に設けられている。上定盤20は、回転板23及び連結ロッド27を介し、シリンダ装置22のピストンロッド22aの先端に吊り下げられ、回転自在に支持されている。すなわち、回転板23に固定された連結部22bによって、ロッド22は回転しない状態で、そのロッド22に対し、連結ロッド27を介して連繋された回転板23及び上定盤20が、回転可能且つ脱落しないように設けられている。そして、上定盤20は、その自重に基づく下定盤30への押圧力を、シリンダ装置22による吊り上げ力の調整で加減圧可能に設けられている。
【0005】
また、上定盤20は、キー21が駆動モータ70の動力で回転される回し金54のキー溝に挿入・係合しており、駆動モータ70によって回転駆動される。回し金54の下部には回し金シャフト54aが垂設されており、その下端部に設けられたシャフトギヤ54bは、アイドルギヤ63を介してスピンドル60に設けられたスピンドルギヤ64に噛合している。この動力伝達機構により、駆動モータ70の動力が回し金54を介して上定盤20に伝達される。なお、上定盤20と回し金54とをキー21で連繋するのは、ワーク10の給排或いは保守管理の際に、上定盤20を下定盤30との間隔が広くあくように吊り上げる必要のためである。
【0006】
50はエクスターナルギアであり、キャリア40に噛合して回転駆動させる。このエクスターナルギヤ50には、回し金シャフト54aの周囲に同心に設けられた第1中空シャフト50aが連結しており、その第1中空シャフト50aに設けられたシャフトギヤ50bは、スピンドル60に設けられたスピンドルギヤ65に噛合している。
また、下定盤30には、第1中空シャフト50aの周囲に同心に設けられた第2中空シャフト30aが連結されており、その第2中空シャフト30aの中途部に設けられたシャフトギヤ30bがスピンドル60に設けられたスピンドルギヤ61に噛合している。
【0007】
また、52はインターナルギアであり、キャリア40に噛合して回転駆動させる。このインターナルギヤ52には、第2中空シャフト30aの周囲に同心状に設けられた第3中空シャフト52aが連結されており、その第3中空シャフト52aに設けられたシャフトギヤ52bがスピンドル60に設けられたスピンドルギヤ62に噛合している。
なお、スピンドル60は、可変減速機69に連結されており、その可変減速機69はベルトを介して電動モータ、油圧モータ等の駆動モータ70に連結されている。
これにより、上定盤20、下定盤30、エクスターナルギヤ50、インターナルギヤ52は、同一の駆動モータ70よって、可変減速機69、ギヤ列、各シャフトを介してそれぞれ動力が伝達されて、回転駆動されていた。
【0008】
このような構成から成るラッピング装置によれば、前述したように、上定盤20は、その自重に基づく下定盤30への押圧力を、シリンダ装置22による吊り上げ力の調整で加減圧可能に設けられている。すなわち、ピストンロッド22aをシリンダ本体へ収縮させる方向へ作動するよう、下側の圧力室へ供給する圧力流体を高くすればするほど、上定盤20の下定盤30への押圧力をより軽減できる。従って、上定盤20の下定盤30への押圧力としては、最大で上定盤20の自重を加えることが可能である。
シリコンウェーハの研磨加工においては、その表面に凹凸があるときには、シリンダ装置22に高圧の圧力流体を供給し、上定盤20による押圧力を減圧をしてラッピングする。徐々にシリンダ装置22に供給している圧力流体の圧力を下げて、上定盤20による押圧力を増大させる。そして、シリコンウェーハの表面が滑らかになると共に厚みが均一になって、そのシリコンウェーハが全面的に均一な荷重を受ける状態となった後に、上定盤20の全自重がかかるように調整がなされてラッピング加工が行われている。このとき、上定盤20による押圧力の加減圧調整は精度良く滑らかに行われることが望ましい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ラッピング装置においては、上定盤20による押圧力の加減がシリンダ装置22の加減圧の調整によって直接的に行われるため、そのシリンダ装置22の内部抵抗の影響を直接的に反映してしまい、その微調整をリニアにすることが困難であった。
すなわち、ピストンロッド22aの引張応力に対応して上定盤20による押圧力が直接的に変化するということであり、上定盤20の下面である研磨面がワーク10に当接した状態で上定盤20による押圧力が変化するのである。従って、シリンダ装置22内のピストンロッド22a上端に固定されたピストンの研磨工程中の作動ストロークは、基本的にワーク10の研磨量(削り厚さ量)とピストンロッド22aの微小な弾性伸び量との合計の長さになり、非常に短いものになる。そして、ピストンとシリンダ内壁との摩擦抵抗によって、ピストンは完全に滑らかに移動することは困難であって間欠的に作動するが、その動作が微小であってもピストンの前記作動ストローク自体が小さいため上定盤20による押圧力に直接的に反映してしまう。従って、上定盤20による下定盤30への押圧力を滑らかに調整できないという課題があった。なお、上記のようにピストンがつっかえながら間欠的に作動する現象をノッキング或いはスリップステックと呼んでいる。また、通常、ピストンはシール部材を介してシリンダ内壁で摺動可能に設けられており、そのシール部材の圧力による変形等が、摩擦抵抗の要因になっている。
【0010】
また、各連結ロッド27の長さを完全に同一に加工することは困難であり、連結ロッド27の長さの微小な差による微小な傾斜によっても、部分的に荷重が集中してしまい、ワークを均一に研磨できない。特に、シリコンウェーハの研磨においては、サブミクロンオーダーの極めて高い精度の研磨が要求され、シリコンウェーハの大型化に伴い装置全体も大型化する等、その非常に厳しい研磨条件に対応できない。
【0011】
これに対し、連結ロッド27の数をいくら増やしてみても、上記のように各連結ロッド27の長さを同一に加工しない限り、部分的に荷重が集中してしまうことは同じであり、厳しい研磨条件に対応できない。すなわち、シリコンウェーハの研磨をする技術分野では、サブミクロンの加工精度で各連結ロッド27の長さを同一に加工しない限り、連結ロッド27の数を増やすことは意味がない。また、もしもそのような加工精度があったとしても、熱変形量を考えれば、部分的に荷重が集中する現象を解消できない。
【0012】
また、上記のように部分的に荷重が集中することを解消するには、弾性部材(例えば、コイルスプリング)を介在させることが考えられる。すなわち、図5(背景技術)に示すように、上定盤支持機構12として、基体14の上部にピストンロッド22aが上下方向に伸縮可能に配設されたシリンダ装置22と、シリンダ装置22のピストンロッド22aの下端に、ピストンロッド22aの軸心を中心に回転可能に装着された回転板24と、回転板24に上下動可能に挿通され、上定盤20及び回転板24が前記軸心を中心に一体に回転するよう、下端が上定盤20に連結されると共に、上端側に回転板24からの脱落を防止する抜け止め部26aが設けられ、前記軸心を中心とする円周方向に所定の間隔をおいて配された複数の連結ロッド26と、連結ロッド26の各抜け止め部26aと回転板24との間に装着されたコイルスプリング28とを備え、上定盤20を吊り下げ支持すると共に、上定盤20の自重に基づく下定盤30へ押圧力を、シリンダ装置22による吊り上げ力の調整で加減圧する構成が考えられる。
【0013】
これによれば、シリンダ装置22の内部抵抗の影響を受けにくく、上定盤20による押圧力を安定的且つ滑らかに変化でき、高精度の研磨を好適に行うことが可能である。
しかしながら、複数の連結ロッド26が、ピストンロッド22aの軸心を中心とする円周方向に所定の間隔をおいて配されても、上定盤20の全面を均一に吊り下げ支持することは困難であり、上定盤20が、その自重によって反るように変形してしまう。その変形量は僅かなものであっても、サブミクロン単位の超高精度の研磨が要求されるシリコンウェーハを研磨する技術分野では重要な課題となっている。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上定盤の下定盤への押圧力を滑らかに調整可能であると共に、上定盤の全面を均一に吊り下げ支持して上定盤の自重による変形を防止可能であることで、ワークを高い精度で好適に研磨できる研磨装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するに次の構成を備える。
すなわち、本発明は、ワークを支持する下定盤と、上定盤支持機構に支持された上定盤との間でワークを挟圧し、上定盤、下定盤及びワークを相対的に運動させてワークを研磨する研磨装置において、前記上定盤支持機構は、基体の上部に配設され、ピストンロッドが上下方向に伸縮可能に設けられたシリンダ装置と、該シリンダ装置のピストンロッドの下端に、該ピストンロッドの軸心を中心に回転可能に装着された回転板と、該回転板に、回転板の軸心を中心とする複数円からなる同心円の各円周上に一定間隔で設けられると共に、径方向に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔の各貫通孔を貫通して上下動可能に設けられ、前記上定盤及び回転板が前記軸心を中心に一体に回転するよう、各下端が前記上定盤に連結されると共に、各上端側に回転板からの脱落を防止する抜け止め部が設けられた複数の連結ロッドと、前記連結ロッドの各抜け止め部と前記回転板との間に装着され、前記上定盤を水平バランスよく吊る弾性部材とを備え、前記上定盤支持機構により、前記上定盤を吊り下げ支持してワークに当接させ、該ワークに、前記上定盤の自重と前記弾性部材にかかる荷重との差分の荷重もしくは上定盤の全自重をかけてワークの研磨を行うことを特徴とする。
【0016】
また、前記貫通孔にリニアブッシュが設けられ、前記連結ロッドが該リニアブッシュを挿通していることを特徴とする。
また、前記弾性部材は、コイルスプリングであることで、その収縮ストロークによって、上定盤による押圧力の加減にかかるシリンダ装置のロッドの上下動の有効ストロークを飛躍的に長くでき、上定盤による押圧力を滑らかに調整すると共に、上定盤を吊り下げ支持する力を各連結ロッドに好適に分散して上定盤の変形を防止し、ワークを非常に高い精度で研磨できる。
【0017】
また、前記連結ロッド毎の上定盤を吊り下げ支持する力が平均化するよう、前記複数の連結ロッドが前記軸心を中心とする円周方向及び径方向に略等間隔に配されたことで、同一部材を多数用いる簡単な構成で、より均一にワークを研磨できる。
【0018】
また、前記複数の連結ロッドは、配列が密に配された部位と粗に配された部位とがあり、該連結ロッドの密に配された部位の前記コイルスプリングは、前記連結ロッドの粗に配された部位のコイルスプリングに比べ、ばね定数が小さいコイルスプリングが用いられていることを特徴とする。これにより、複数のコイルスプリングの配設位置が等間隔でなくとも、上定盤の全面を好適に均一に吊り下げ支持できる。
【0019】
また、前記下定盤の上面及び前記上定盤の下面には、それぞれにワークを研磨するための研磨面が形成され、ワークの両面を同時に研磨することで、両面研磨装置に好適に適用できる。
また、前記ワークは薄板状であり、該薄板状のワークの両面を同時にラッピングすることで、シリコンウェーハ等の薄物のラッピング装置に好適に適用できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる好適な実施例を添付図面と共に詳細に説明する。
(第1実施例)
図1は本発明にかかる第1実施例(主に上定盤支持機構)を示す正面断面図である。また、図2は第1実施例の上定盤支持機構を説明する平面図である。
本実施例は、シリコンウェーハの両面を同時に研磨する研磨装置の一例のラッピング装置である。このラッピング装置は、シリコンウェーハ(ワーク10)を支持する下定盤30と、その下定盤30への押圧力を加減調整可能な上定盤支持機構12に支持された上定盤20との間でワーク10を挟圧し、上定盤20、下定盤30及びワーク10を相対的に運動させてワーク10の両面を研磨する。なお、上定盤20、下定盤30、キャリア40を駆動させるエクスターナルギア50及びインターナルギア52の駆動機構は、図4の従来技術と同様であり、説明を省略する。
【0021】
前記上定盤支持機構12は、次のような構成を備える。
22はシリンダ装置であり、基体の上部である門型フレーム14の梁中央部に、ピストンロッド22aが上下方向に伸縮可能に配設されている。本実施例のシリンダ装置22は図示しない圧縮空気源から供給される空気圧で作動するが、他の流体圧(例えば、水圧、油圧)で作動するようにしてもよい。
25は回転板であり、シリンダ装置22のピストンロッド22aの下端に、ピストンロッド22aの軸心を中心に回転可能に装着されている。図1及び図2に示すように、円形の平板に形成されている。なお、重量を軽減するには適宜くり抜き部を設け、剛性を高めるには適宜リブ等を形成すればよい。
【0022】
26は連結ロッドであり、回転板25に上下動可能に挿通され、上定盤20及び回転板25がピストンロッド22aの軸心を中心に一体に回転するよう、下端が上定盤20に連結されている。そして、上端部に回転板25からの脱落を防止する抜け止め部26aが設けられている。本実施例では、回転板25に穿設された貫通孔25aに、連結ロッド26が挿通されており、回転板25と上定盤20とを連繋している。
【0023】
そして、図1及び図2に示すように、複数の連結ロッド26が、ピストンロッド22aの軸心を中心とする円周方向及び径方向に間隔をおいて配されている。また、本実施例では、前記連結ロッド26毎の上定盤20を吊り下げ支持する力が平均化するよう、複数の連結ロッド26がピストンロッド22aの軸心を中心とする円周方向及び径方向に略等間隔に配されている。すなわち、径方向に3列(3つの同心円上)に配され、ピストンロッド22aの軸心を中心にして、最小の同心円上には円周等分角度位置に8個の連結ロッド26が配され、真ん中の同心円上には円周等分角度位置に12個の連結ロッド26が配されると共に、最大の同心円上には円周等分角度位置に16個の連結ロッド26が配されている。
従って、各連結ロッド26によって支持されるべき加重は、上定盤20の加重を略均一に分割したものになる。そして、特に後述する弾性部材の性質を利用することで、上定盤20の全面を好適に均一に吊り下げ支持できるため、上定盤20自体の重量による変形を好適に最少限に抑制できる。
【0024】
28はコイルスプリングであり、連結ロッド26の各抜け止め部26aと回転板25の上面との間に装着された弾性部材の一例である。
以上の構成によって設けられた上定盤支持機構12によれば、上定盤20を吊り下げ支持すると共に、上定盤20の自重に基づく下定盤30へ押圧力を、上定盤20へのシリンダ装置22による吊り上げ力の調整で好適に加減圧することができる。
なお、連結ロッド26及びコイルスプリング28の数は、合計で36個の場合を示したが、これに限定されることはなく、複数であれば、これより増減してもよいのは勿論である。
【0025】
また、本実施例はラッピング装置であるため、下定盤30の上面及び上定盤20の下面には、それぞれにワーク10を研磨するための研磨面が形成され、ワーク10の両面を同時に研磨することができる。これにより、本実施例によれば、薄板状の脆性材料から形成されたシリコンウェーハ(ワーク10)の両面を、高精度に効率良くラッピングすることができる。
【0026】
次に、本実施例の使用状態と作用効果について説明する。
先ず、ワーク10をキャリア40の透孔に内で下定盤30の研磨面上にセットする際は、シリンダ装置22のピストンロッド22aを収縮することによって、下定盤30との間に充分な間隔があくように上定盤20を引き上げておく。このときには、複数のコイルスプリング28によって、上定盤20の重量の全部を受けている。従って、各コイルスプリング28は最も収縮した状態にある。なお、一枚当たりのキャリア40の透孔の数は、通常5個以上であり、ワーク10はそれぞれの透孔に保持されることになる。また、キャリア40は、一装置当たりについて通常4〜5個であるから、同時に20枚以上のワーク10が研磨できる。
【0027】
そして、シリンダ装置22のエアを減圧して上定盤20を降下させ、上定盤20の研磨面をワーク10の上面に当接させる。ワーク10(シリコンウェーハ)の被研磨面は、ラッピングされる前には凹凸があり、上定盤20による高い加重をかけると、加重がワーク10の凸部に集中し、ワーク10を破壊してしまう。従って、ワーク10のラッピング開始時には、シリンダ装置22に供給される空気圧は高い状態(例えば、5kgf/cm2 )にあり、ワーク10に加えられる加重は低い状態にある。また、このときの複数のコイルスプリング28にかかる加重は、上定盤20の重量からワーク10にかかる加重を差し引いたものになる。各コイルスプリング28は最も収縮した状態から若干伸びた状態になる。
【0028】
次に、徐々にシリンダ装置22に供給している空気圧の圧力を下げて、上定盤20によるワーク10側への押圧力を増大させつつ、ワーク10をラッピングする。なお、ワーク10をラッピングする際の上定盤20、下定盤30及びキャリア40を駆動させるエクスターナルギア50及びインターナルギア52の駆動方法等は、図4に示した従来技術と同様であり、説明を省略する。
そして、ワーク10の両被研磨面がある程度滑らかになると共に厚みが均一になって、そのワーク10が全面的に均一な荷重を受ける状態となった後に、上定盤20の全自重或いは一連の研磨工程において最大の加重になるようにシリンダ装置22に供給している空気圧の圧力を調整する。上定盤20による最大加重である全自重をワーク10にかける場合には、空気圧の圧力をゼロにすればよい。
【0029】
以上のように、シリンダ装置22に供給している空気圧の圧力を、徐々に下げている間に、コイルスプリング28にかかる加重が、ワーク10にかかる加重に変換され、徐々に軽減される。従って、コイルスプリング28は徐々に伸びることになる。このコイルスプリング28が伸びる長さは、シリンダ装置22のピストンロッド22aが突出(伸長)するストロークに対応する。すなわち、ピストンロッド22aの有効ストロークが、コイルスプリング28の伸縮のストロークの長さと基本的に同じことになる。図4の従来技術に比べ、その有効ストロークを非常に長くすることができる。
このため、長い有効ストロークの中で所定の圧力変化を行うことが可能であり、シリンダ装置22のピストンとシリンダ本体内壁との間に発生する内部抵抗の影響を受けにくく、上定盤を20による押圧力を滑らかに変化できる。従って、高精度の研磨を好適に行うことが可能である。
【0030】
また、複数の連結ロッド26の長さにばらつき(誤差)があっても、複数のコイルスプリング28を介しているため、加重が各コイルスプリング28に好適に分散され、均一にワーク10を押圧できる。これは、そのコイルスプリング28の伸縮のストロークの長さがその誤差の長さに比べて格段に長いことになり、連結ロッド26の長さの多少のばらつきは、容易に吸収されることによる。すなわち、単純に複数のロッド26が連結された際には、上定盤20の研磨面をワーク10の被研磨面に当接させるときなど、最も長い連結ロッド26から集中的に加重を受けることが考えられるが、本実施例のように複数のコイルスプリング28を介した場合は、その加重を好適に分散できる。
【0031】
また、複数のコイルスプリング28で、水平バランスよく上定盤20を吊ることが可能であり、シリンダ装置20内のピストンに偏った力を与えることがない。このため、上述したシリンダ装置22の内部抵抗の影響を受けにくく、上定盤を20による押圧力を安定的且つ滑らかに変化できる。従って、高精度の研磨を好適に行うことが可能である。
また、円周方向及び径方向に等間隔に配された複数のコイルスプリング28の伸縮のストロークによれば、上定盤20の加重を略均一に分割した状態に、その加重を好適に分散して受けることができる。すなわち、コイルスプリング28を介在させることで、荷重(加重)が、ある連結ロッド26に集中することを防止でき、上定盤20全面について均一に分散化できる。このため、上定盤20の全面を好適に均一に吊り下げ支持でき、上定盤20自体の重量による変形を最少限に抑制できる。従って、高精度の研磨を好適に行うことができる。
【0032】
(第2実施例)
次に図3に基づいて第2実施例について説明する。
図3は本発明にかかる両面に研磨装置の平面図であり、第1実施例の構成と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施例では、連結ロッド26が、密に配された部位と、粗に配された部位がある。そして、連結ロッド26が密に配された部位には、連結ロッド26が粗に配された部位のコイルスプリング28cに比べ、ばね定数が小さいコイルスプリング28aが配されている。
さらに詳細には、複数の連結ロッド26が径方向に3列(3つの同心円上)に配され、ピストンロッド22aの軸心を中心にする3つの同心円上には、それぞれの円周等分角度位置に、6個ずつの連結ロッド26が配されている。最小の同心円上の連結ロッド26に対応して配されたコイルスプリング28aは、弱いものであり、弾性係数(ばね定数)の最も小さいものになっている。真ん中の同心円上の連結ロッド26に対応して配されたコイルスプリング28bは、中程度のものであり、また、最大の同心円上の連結ロッド26に対応して配されたコイルスプリング28cは、強いものであり、弾性係数(ばね定数)の最も大きいものになっている。このように、連結ロッド26が密に配された部位には弱いスプリング28aが配され、連結ロッド26が粗に配された部位には強いスプリング28cが配されている。
これにより、複数のコイルスプリングの配設位置が等間隔でなくとも、上定盤の単位面積当たりの加重を支持する力は略均一化され、上定盤全面を好適に均一に吊り下げ支持できる。従って、上定盤20自体の重量による変形を最少限に抑制でき、高精度の研磨を好適に行うことができる。
【0033】
なお、上記実施例では、複数の連結ロッド26が径方向に3列(3つの同心円上)に配されたものについて説明したが、本発明はこれに限らず、径方向への配列は、2列或いは4列以上であってもよいのは勿論である。すなわち、複数の連結ロッド26の径方向への配列は、上定盤全面を均一に吊り下げるという意味で所定の規則性を備え、実質的に複数列となれば、本発明の効果を得ることができる。
【0034】
ところで、上記実施例の連結ロッド26は、単純に貫通孔25aに挿通されているが、リニアブッシュ、球面軸受、又は両者を一体化した軸受等を介して回転板25に挿通してもよい。リニアブッシュを用いれば、スラスト方向の移動をより滑らかに受けることができ、球面軸受によれば、連結ロッド26の傾倒にも好適に対応可能になる。また、連結ロッド26のスラスト方向(上下方向)の移動を所定の範囲に規制するストッパ手段を設けてもよいのは勿論である。
【0035】
また、上記実施例では、弾性部材としてコイルスプリング28を用いたが、これに限らず、エアバッグ等の圧力流体を利用した弾性手段、或いはゴム材を用いることも可能である。なお、エアバッグ等の場合は、回転する回転板25上に搭載するため、圧空等の圧力流体を供給するためにディストリビュータを必要とするなど、構造が複雑になる。また、ゴム材の場合は、コイルスプリング28のような長い伸縮ストロークはとりにくい。
【0036】
また、上記実施例では、上定盤20を吊り下げる基体として門型フレーム14を用いたが、基体(フレーム)の形態はこれに限定されるものではなく、逆L字型等の形態でもよい。但し、門型フレーム14は、高荷重に耐えることができる等の利点がある。
また、上記実施例では、上定盤20、下定盤30及びキャリア40の駆動源を一つの駆動モータ70(図3参照)と想定した場合を説明したが、本発明はこれに限らず、それぞれを別々に駆動させるようにしてよいのは勿論である。
また、上記実施例では、研磨装置として両面ラッピング装置について説明してきたが、これに限定されるものではなく、例えばポリシング装置において同等の構成でワークを好適に鏡面研磨できる。
以上、本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、回転板及び上定盤を連繋する連結ロッドの各抜け止め部と、シリンダ装置のロッドの下端に回転可能に装着された回転板との間に、弾性部材を装着したことにより、上定盤の自重に基づく下定盤への押圧力を、シリンダ装置による吊り上げ力の調整で好適に加減圧することができる。すなわち、弾性部材を好適に介在させることでシリンダ装置のロッドの有効伸縮ストロークを長くとることができ、上定盤による下定盤への押圧力を安定的且つ滑らかに変化させることができる。
また、弾性部材が介在すると共に、複数の連結ロッドが、ピストンロッドの軸心を中心とする同心円の各円周上に一定間隔をおいて配されているため、上定盤全面を好適に均一に吊り下げ支持でき、上定盤自体の重量による変形を最少限に抑制できる。
従って、本発明によれば、上定盤の下定盤への押圧力を滑らかに調整すると共に、上定盤の全面を均一に吊り下げ支持して上定盤の自重による変形を防止することで、ワークを高い精度で好適に研磨できるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるラッピング装置の第1実施例を示す正面断面図である。
【図2】第1実施例の上定盤支持機構を説明する平面図である。
【図3】第2実施例の上定盤支持機構を説明する平面図である。
【図4】従来のラッピング装置の正面断面図である。
【図5】背景技術のラッピング装置の正面断面図である。
【符号の説明】
10 ワーク
12 上定盤支持機構
14 門型フレーム
20 上定盤
22 シリンダ装置
22a ピストンロッド
25 回転板
26 連結ロッド
26a 抜け止め部
28 コイルスプリング
30 下定盤
Claims (7)
- ワークを支持する下定盤と、上定盤支持機構に支持された上定盤との間でワークを挟圧し、上定盤、下定盤及びワークを相対的に運動させてワークを研磨する研磨装置において、
前記上定盤支持機構は、
基体の上部に配設され、ピストンロッドが上下方向に伸縮可能に設けられたシリンダ装置と、
該シリンダ装置のピストンロッドの下端に、該ピストンロッドの軸心を中心に回転可能に装着された回転板と、
該回転板に、回転板の軸心を中心とする複数円からなる同心円の各円周上に一定間隔で設けられると共に、径方向に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔の各貫通孔を貫通して上下動可能に設けられ、前記上定盤及び回転板が前記軸心を中心に一体に回転するよう、各下端が前記上定盤に連結されると共に、各上端側に回転板からの脱落を防止する抜け止め部が設けられた複数の連結ロッドと、
前記連結ロッドの各抜け止め部と前記回転板との間に装着され、前記上定盤を水平バランスよく吊る弾性部材とを備え、
前記上定盤支持機構により、前記上定盤を吊り下げ支持してワークに当接させ、該ワークに、前記上定盤の自重と前記弾性部材にかかる荷重との差分の荷重もしくは上定盤の全自重をかけてワークの研磨を行うことを特徴とする研磨装置。 - 前記貫通孔にリニアブッシュが設けられ、前記連結ロッドが該リニアブッシュを挿通していることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
- 前記弾性部材は、コイルスプリングであることを特徴とする請求項1または2記載の研磨装置。
- 前記連結ロッド毎の上定盤を吊り下げ支持する力が平均化するよう、前記複数の連結ロッドが前記軸心を中心とする円周方向及び径方向に略等間隔に配されたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の研磨装置。
- 前記複数の連結ロッドは、配列が密に配された部位と粗に配された部位とがあり、該連結ロッドの密に配された部位の前記コイルスプリングは、前記連結ロッドの粗に配された部位のコイルスプリングに比べ、ばね定数が小さいコイルスプリングが用いられていることを特徴とする請求項3記載の研磨装置。
- 前記下定盤の上面及び前記上定盤の下面には、それぞれにワークを研磨するための研磨面が形成され、ワークの両面を同時に研磨することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の研磨装置。
- 前記ワークは薄板状であり、該薄板状のワークの両面を同時にラッピングすることを特徴とする請求項6記載の研磨装置。
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