JP3662765B2 - アルミニウム基複合材の管の製造方法 - Google Patents

アルミニウム基複合材の管の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム基複合材の管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム基複合材を引抜いて成形で形状を造る製造方法には、例えば、特開昭59−206154号公報「シリンダーの製造法」に示されたものがある。このシリンダーの製造法は、同公報の第2頁左下欄第8行〜第17行に示される通りである。これらを要約したものを次に示す。
(a)アルミニウムの溶湯中にSiCのチップを攪拌分散させ、凝固させる。
(b)凝固したものを約250℃に加熱した状態で引抜き加工してパイプを作成する。
(c)パイプを切断してスリーブ状にしたものをダイキャスト用の金型に嵌合した後、アルミニウム合金(JIS−ADC12)で鋳ぐるんでシリンダーを製造する。
また、パイプの作成は、引抜き加工だけではなく、同公報の第2頁右上欄第8行〜第10行に示される通り、押出し加工で行ってもよい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のパイプ(管)は、アルミニウムの溶湯中にSiCのチップを複合した複合材であり、塑性変形の抵抗が大きい。また、複合材は、アルミニウムとSiCの界面が機械的な結合状態にあるだけであり、そのため、伸びが小さく、一般的な複合材と同様、成形の加工性が悪い。その結果、引抜きや押出しなどの成形で形状を造る製造方法では、成形し難く、生産の効率化は難しい。
特に、引抜きでは、つかみ部を成形する必要があり、管の一端をダイスに通る直径まで細くしなければならない。複合材は加工性が悪いため、管の一端を細く成形(縮径)すると、割れが発生しやすく、つかみ部の成形が難しい。
【0004】
そこで、本発明の目的は、引抜きの縮径が容易なアルミニウム基複合材の管の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、窒化マグネシウムの存在下、還元作用で酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体にアルミニウム合金溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する工程と、アルミニウム基複合材ビレットを押出しプレスで複合材管に成形する押出し工程と、複合材管に、この複合材管の内径より僅かに小さい外径のアルミニウム管を挿入し、プレスマシンのダイスでアルミニウム管とともに、複合材管の所定の範囲を縮径させてつかみ部を造る縮管工程と、つかみ部を引抜き装置のダイスに通した後、つかみ部につかみ具を取付け、このつかみ具を引いて複合材管の内外径に精度を付与する引抜き工程と、からなることを特徴とする。
【0006】
酸化物系セラミックスを還元することにより、多孔質の表面を金属化して酸化物系セラミックスとアルミニウム合金溶湯との濡れ性をよくする。こうして得られたアルミニウム基複合材はアルミニウムと強化材の界面がケミカルコンタクトによって強固に結合され、成形性に優れたアルミニウム基複合材であり、後工程での、押出しが容易となり、押出比を高めることができ、高押出比による変形を加えることができる。この結果、内部欠陥の除去、緻密化を図ることができ、品質を高めることができる。
【0007】
縮管工程では、複合材管にアルミニウム管を挿入し、複合材管を縮径する。縮径した複合材管の内周面にアルミニウム管が密着して複合材管を支えるから、複合材管にかかる応力が緩和され、縮径する際の複合材管の割れを防止することができる。
【0008】
請求項2は、縮管工程の所定の範囲が複合材管の一端部もしくは中間部であることを特徴とする。
一端部であれば複合材管にアルミニウム管を挿入するのが容易である。また、複合材管の長さを一般的な長さと同様にすることで、複合材管の運搬や段取りなど取り扱いが容易になる。
中間部であれば長尺の複合材管を2等分に切断し、2本の複合材管を得る。アルミニウム管の挿入を1回にすることで、挿入作業の時間を低減する。また、複合材管のダイスへのセットを1回にすることで、セットする時間を低減する。
さらに、所定の範囲を切断するので、つかみ部が短くなり、材料の歩留りが向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る管の製造方法のフローチャートであり、STはステップを示す。
ST01:酸化物系セラミックス成形体にアルミニウム合金を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する。
ST02:アルミニウム基複合材ビレットを押出し、複合材管を造る。
ST03:複合材管にアルミニウム管を挿入する。
ST04:アルミニウム管とともに、複合材管を縮径し、つかみ部を造る。
ST05:つかみ部につかみ具を取付ける。
ST06:つかみ具を引き、複合材管に精度を付与する。
次に、ST01〜ST06を具体的に説明する。
【0010】
図2は本発明に係るアルミニウム基複合材の製造装置の概要構造図であり、アルミニウム基複合材製造装置10は、雰囲気炉11と、この雰囲気炉11に付属した加熱装置12と、雰囲気炉11に不活性ガスを供給するガス供給装置13と、雰囲気炉11内を減圧する真空ポンプ14とからなる。15及び16は坩堝(るつぼ)である。
詳しくは、加熱装置12は、例えば、制御装置21と、温度センサ22と、加熱コイル23とからなり、ガス供給装置13は、アルゴンガス(Ar)24のボンベ25と、窒素ガス(N2)26のボンベ27と、これらのボンベ25,27のガスを雰囲気炉11へ供給する管28と、この管28に設けた圧力ゲージ29とからなる。
【0011】
坩堝15は酸化物系セラミックスであるところの多孔質アルミナ(Al23)31及びアルミニウム合金41を入れる容器であり、坩堝16はマグネシウム(Mg)42を入れる容器である。アルミニウム合金41は、例えばA6061である。マグネシウム(Mg)42はマグネシウム合金でもよい。
【0012】
図3(a)〜(d)は本発明に係るアルミニウム基複合材ビレットの製造要領図であり、(a)〜(c)は浸透までの過程を模式的に示す。
(a):まず、酸化物系セラミックスであるアルミナ(Al23)31とともに、アルミニウム合金41及びマグネシウム(Mg)42を炉内に納める。具体的には、坩堝15にアルミナ31を入れ、アルミナ31にアルミニウム合金41を載せ、坩堝16にマグネシウム42を入れる。
【0013】
次に、雰囲気炉11内の酸素を除去するために雰囲気炉11内を真空引きし、一定の真空度に達したら、真空ポンプ14を止め、雰囲気炉11にアルゴンガス(Ar)24を矢印▲1▼の如く供給し、加熱コイル23で矢印▲2▼の如く多孔質アルミナ31、アルミニウム合金41及びマグネシウム42の加熱を開始する。
【0014】
雰囲気炉11内の温度を温度センサ22で検出しつつ昇温(自動)する。所定温度(例えば、約750℃〜約900℃)に達する過程で、アルミニウム合金41は溶解する。同時に、マグネシウム(Mg)42は矢印▲3▼の如く蒸発する。その際、雰囲気炉11内はアルゴンガス(Ar)24の雰囲気下にあるので、アルミニウム合金41及びマグネシウム(Mg)42が酸化することはない。
【0015】
(b):次に、雰囲気炉11内を加圧し、窒化マグネシウム44の作用でアルミナ(Al23)31を還元し、アルミナ31の多孔質にアルミニウム合金41の溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレット45を製造する。具体的には、雰囲気炉11に窒素ガス(N2)26を矢印▲4▼の如く供給しつつ加圧(例えば、大気圧+約0.5kg/cm2)し、雰囲気炉11内の雰囲気を窒素ガス(N2)26に置換する。
【0016】
雰囲気炉11内が窒素ガス(N2)26の雰囲気になると、窒素ガス26は、マグネシウム(Mg)42と反応して窒化マグネシウム(Mg32)44を生成する。この窒化マグネシウム44はアルミナ(Al23)31を還元するので、アルミナ31は濡れ性がよくなる。その結果、アルミナ31の多孔質にアルミニウム合金41の溶湯が浸透する。アルミニウム合金41が凝固してアルミニウム基複合材ビレット45が完成する。浸透過程において、雰囲気炉11内を加圧雰囲気下にすると、浸透が速くなり、短時間でアルミニウム基複合材ビレット45を製造することができる。なお、雰囲気炉11内を真空ポンプ14で減圧し、減圧窒素雰囲気下でも短時間で浸透させることができる。
【0017】
(c):アルミニウム基複合材ビレット45(以下「ビレット45」と略記する。)は、酸化物系セラミックスであるアルミナ31にアルミニウム合金41が浸透したもので、成形性に優れ、塑性変形がしやすい複合材料である。
(d):最後に、ビレット45をNC(数値制御)旋盤46で所定寸法に切削加工する。寸法は次工程の押出しプレスに合せる。
【0018】
図4は本発明に係る押出し工程の説明図であり、アルミニウム基複合材ビレット45を押出しプレス50のコンテナ51に挿入し、ラム52で押出すことにより、ダイス53とマンドレル54の間を通して、複合材管55に成形する。
ビレット45は、アルミニウムと強化材の界面がケミカルコンタクトによって強固に結合された複合材なので、成形性がよく、その結果、複合材管55の押出しは容易になる。
【0019】
図5(a),(b)は本発明に係る縮管工程(第1実施例)の第1説明図である。
(a):まず、複合材管55にアルミニウム管56を矢印の如く挿入する。
複合材管55は、所定長さ(例えば、5.5m)に切断した管であり、長さを一般的な管と同様にしたものである。D1は内径、D2は外径を示す。
アルミニウム管56は、複合材管55の内径D1より僅かに小さい外径d1のアルミニウム管である。
(b):複合材管55の端面57にアルミニウム管56の端面58が合う位置まで挿入する。
【0020】
図6(a)〜(d)は本発明に係る縮管工程(第1実施例)の第2説明図であり、(b)は(a)のb矢視図であり、(d)は(c)のd−d線断面図である。
(a):プレスマシン60に複合材管55をセットし、端面57から所定の範囲L1(例えば、端面から200〜300mm)を縮径する。所定の範囲L1は複合材管55の一端部である。
(b):ダイス61を矢印の如く作動(回転鍛造:ロータリースエージング)させ、アルミニウム管56とともに、複合材管55の所定の範囲をダイス61で押付け、細いつかみ部を造る。
【0021】
(c):つかみ部62は、外径D2から外径D3に縮径(先付け)することで、引抜きダイスの孔に通せるようにした部位である。
複合材管55並びにアルミニウム管56には、ダイスの押付け力により大きな応力がかかり、塑性変形する。アルミニウム管56は成形性がよいので、複合材管55の変形に追従しながら、なおかつ、弾性によりダイスの押付け力に抗しつつ、複合材管55の内周面を矢印のごとく押付ける。
【0022】
(d):つかみ部62では、複合材管55の内周面にアルミニウム管56が密着して複合材管55を矢印の如く押付けるから、複合材管55の内面の表層部には圧縮応力が発生し、塑性変形する際の複合材管55の割れを防止することができる。
従って、縮径の成形が容易である。
【0023】
複合材管55の一端部を縮径するので、複合材管55の端部にアルミニウム管56を配置するだけでよく、アルミニウム管56の挿入が容易である。
また、複合材管55の長さを一般的な長さと同様にすることで、複合材管55の運搬や段取りなど取り扱いが容易になる。
【0024】
図7(a),(b)は本発明に係る引抜き工程の説明図である。
(a):つかみ部62を引抜き装置70のダイス71に通した後(白抜き矢印の方向)、つかみ部62につかみ具72を取付ける。続けて、複合材管55内にプラグ73を矢印の如く入れる。
(b):つかみ具72を白抜き矢印の如く引くことで、ダイス71とプラグ73の間を通じて、複合材管55の内外径に精度を付与する。
つかみ部62はアルミニウム管56によって厚くなるので、引張り応力が小さくなり、引きにおいてもより割れが発生し難くなる。
つまり、引抜きをするためには造らなければならない、つかみ部62の造りが容易になるから、複合材管55の引抜きが容易になる。
【0025】
図8(a)〜(d)は本発明に係る縮管工程(第2実施例)の説明図である。上記図5に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
(a):まず、複合材管55Bにアルミニウム管56Bを矢印の如く挿入する。複合材管55Bは所定の長さL2(例えば、10m)に切断した管であり、アルミニウム管56Bは所定の長さL3に切断した管である。
(b):複合材管55Bの中央(L2/2)にアルミニウム管56Bの中央(L3/2)を合せる。
【0026】
(c):次に、プレスマシン81のダイス82で所定の範囲L1を縮径する。
所定の範囲L1は、複合材管55Bの中間部であるところの長手方向を2分する位置である。詳細には、所定の範囲L1は、複合材管55Bの中央(L2/2)に所定の範囲L1の中央(L1/2)を合せた範囲である。
(d):最後に、複合材管55Bの中央(L2/2)をカッタ85で切断し、つかみ部62を成形した複合材管55B,55Bを得る。
【0027】
複合材管55Bの長手方向を2分する位置で縮径すると、アルミニウム管56Bの挿入が1回で済むから、挿入の時間を低減できる。ダイスにセットするのも1回で済むから、セットする時間を低減できる。
また、所定の範囲L1(例えば、200〜300mm)を切断するので、つかみ部62が短くなり、材料の歩留りを向上させることができる。
【0028】
尚、本発明の実施の形態に示した図6のダイスはこれに限定するものではなくダイスの分割数は任意である。また、装置(プレス及びハンマ)も任意である。
また、アルミニウム管をアルミニウム以外の管(例えば、鋼管、銅管)に替えることも可能である。
【0029】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、窒化マグネシウムの作用で酸化物系セラミックスを還元する。酸化物系セラミックスであるアルミナ(Al23)を還元して金属化すると、濡れがよくなり、アルミニウム合金と結合することができる。
酸化物系セラミックスの多孔質にアルミニウム合金の溶湯を浸透させる。アルミニウム合金は還元された酸化物系セラミックスの多孔質に容易に浸透するとともに、酸化物系セラミックスと化学的に強固に結合する。その結果、塑性変形がしやすく、成形性に優れたアルミニウム基複合材を得ることができ、後工程での、押出しや引抜きが容易となる。
【0030】
アルミニウム基複合材ビレットを押出しプレスで複合材管に成形する。アルミニウム基複合材ビレットは成形性がよいから、押出しが容易である。また、高押出比による変形を加えることで、内部欠陥の除去、緻密化を図ることができ、品質を高めることができる。
複合材管にアルミニウム管を挿入し、アルミニウム管とともに、複合材管を縮径する。複合材管の内周面にアルミニウム管が密着し、アルミニウム管の弾性で複合材管を外方に押付けるので、複合材管の内面の表層部には圧縮応力が発生し、複合材管は割れ難くなる。その結果、割れの心配がなく、縮径の成形が容易である。
引抜きでは、つかみ部をダイスに通し、つかみ部につかみ具を取付ける。引抜きに必要なつかみ部の成形が容易なったので、引抜きを容易に実施することができる。
【0031】
請求項2では、複合材管の一端部もしくは中間部を縮径する。
一端部であれば複合材管の端部にアルミニウム管を配置するだけでよく、アルミニウム管の挿入が容易である。
また、複合材管の長さを一般的な長さと同様にすることで、複合材管の運搬や段取りなど取り扱いが容易になる。
中間部であれば縮径後、複合材管の長手方向をほぼ2等分に切断し、2本の複合材管を得る。アルミニウム管の挿入を1回にすることで、挿入作業の時間を低減することができる。また、複合材管のダイスへのセットを1回にすることで、セットする時間を低減することができる。
さらに、所定の範囲を切断するので、つかみ部が短くなり、材料の歩留り向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る管の製造方法のフローチャート
【図2】本発明に係るアルミニウム基複合材の製造装置の概要構造図
【図3】本発明に係るアルミニウム基複合材ビレットの製造要領図
【図4】本発明に係る押出し工程の説明図
【図5】本発明に係る縮管工程(第1実施例)の第1説明図
【図6】本発明に係る縮管工程(第1実施例)の第2説明図
【図7】本発明に係る引抜き工程の説明図
【図8】本発明に係る縮管工程(第2実施例)の説明図
【符号の説明】
10…アルミニウム基複合材製造装置、31…酸化物系セラミックス(アルミナ)、41…アルミニウム合金、42…マグネシウム、44…窒化マグネシウム、45…アルミニウム基複合材ビレット、50…押出しプレス、55,55B…複合材管、56,56B…アルミニウム管、60…プレスマシン、61,71…ダイス、62…つかみ部、70…引抜き装置、72…つかみ具、L1…所定の範囲。

Claims (2)

  1. 窒化マグネシウムの存在下、還元作用で酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体にアルミニウム合金溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する工程と、
    前記アルミニウム基複合材ビレットを押出しプレスで複合材管に成形する押出し工程と、
    前記複合材管に、この複合材管の内径より僅かに小さい外径のアルミニウム管を挿入し、プレスマシンのダイスでアルミニウム管とともに、複合材管の所定の範囲を縮径させてつかみ部を造る縮管工程と、
    前記つかみ部を引抜き装置のダイスに通した後、つかみ部につかみ具を取付け、このつかみ具を引いて複合材管の内外径に精度を付与する引抜き工程と、からなることを特徴とするアルミニウム基複合材の管の製造方法。
  2. 前記縮管工程の所定の範囲は複合材管の一端部もしくは中間部であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム基複合材の管の製造方法。
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