JP4580121B2 - シリンダライナの鋳包み成形方法 - Google Patents

シリンダライナの鋳包み成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリンダライナの鋳包み成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンにおいてシリンダライナを鋳包んだものとしては、例えば、次図のようなシリンダブロックがある。次図でシリンダライナの鋳包み成形方法について説明する。
図20は従来のシリンダライナの鋳包み成形方法の説明図である。
まず、シリンダライナ101を形成し、その次にシリンダライナ101・・・(・・・は複数を示す。以下同様。)を各々シリンダピッチPだけ離して図に示していない鋳型内にセットし、そして鋳型にダイカスト機で溶融金属を充填することで、シリンダライナ101・・・をシリンダ部102に鋳包んだシリンダブロック103を得ることができる。
このようにシリンダライナ101を鋳包むことで、シリンダの耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シリンダブロック103のシリンダピッチをPに設定してシリンダライナ101を鋳包むと、シリンダライナ101と隣のシリンダライナ101との間の鋳物肉厚はT2となり、薄く、シリンダライナ101間の強度を確保し難かった。
この場合、シリンダライナの外面の凸部を踏襲しながら、アンカ効果を向上させるとともに、鋳物肉厚を確保し、且つシリンダブロックを小型化できるものが求められていた。
【0004】
そこで、本発明の目的は、シリンダライナの外周部のアンカ効果を向上させることができ、シリンダブロックの小型化を図ることができるシリンダライナの鋳包み成形方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体とともに、アルミニウム合金及び、マグネシウム又はマグネシウム発生源を炉内に納め、窒化マグネシウムの作用で酸化物系セラミックスを還元し、酸化物系セラミックスの多孔質にアルミニウム合金の溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する工程と、アルミニウム基複合材ビレットを押出しプレスで筒に成形すると同時に、この筒の外面にリブを、厚さを一定に、且つ高さを厚さに比べ高く成形する押出し工程と、押出し後の押出し材を引抜き装置で仕上げるとともに、リブを先端側から筒の半径の中心へ向かって圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形する引抜き工程と、引抜き後の引抜き材を所定長さに切断加工してアルミニウム基複合材のシリンダライナを形成する切断工程と、シリンダライナをシリンダブロックの鋳型内にセットして注湯する鋳造工程と、からなることを特徴とする。
【0006】
押出し工程でビレットを筒に成形すると同時に、筒の外面にリブを成形することで、リブを第1段階の形状に成形する。
引抜き工程では、押出し材のリブを先端側から圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形すので、根元の略90°の隅に応力が集中せず、根元から亀裂が入る虞れがない。
また、押出し材のリブを先端側から圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形すので、シリンダライナのアンカ効果は向上する。さらに、リブは低くなり、その分だけシリンダライナ同士を接近させることができ、シリンダブロックは小型になる。
【0007】
請求項2は、押出し工程後のリブの断面積をS1、引抜き工程後のリブの断面積をS2としたときに、(S1−S2)/S1を百分率表示で5〜12%に設定することを特徴とする。
5%未満では、引抜き後の内径が大きくなり過ぎる場合もあれば、逆に小さくなり過ぎる傾向もあり、引抜き後の内径のばらつきは大きい。
12%を超えると、引抜き工程後のリブの根元に割れが発生しやすくなる。
その結果、引抜き後の内径精度の観点から下限を5%とし、引抜き工程後のリブの根元の割れ対策の観点から上限を12%とする。
【0008】
請求項3は、引抜き工程後のリブの高さをLh、リブの先端部の幅をLwとしたときに、Lh<Lwに設定することを特徴とする。
リブの高さLhを、Lh<Lwに設定するので、リブの高さは小さく、その分だけシリンダライナ同士をより接近させることができ、シリンダブロックはより小型化になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るシリンダライナの鋳包み成形方法のフローチャートであり、STはステップを示す。
ST01:酸化物系セラミックス成形体にアルミニウム合金を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する。
ST02:ビレットを押出し、筒の外面にリブを成形した押出し材を造る。
ST03:押出し材を引抜きつつ、リブを圧縮してアンダカット形状を成形した引抜き材を造る。
ST04:引抜き材を切断してシリンダライナを形成する。
ST05:シリンダライナをシリンダブロックの鋳型内にセットして注湯する。
次に、ST01〜ST05を具体的に説明する。
【0010】
図2は本発明に係るアルミニウム基複合材の製造装置の概要構造図であり、アルミニウム基複合材製造装置10は、雰囲気炉11と、この雰囲気炉11に付属した加熱装置12と、雰囲気炉11に不活性ガスを供給するガス供給装置13と、雰囲気炉11内を減圧する真空ポンプ14とからなる。15及び16は坩堝(るつぼ)である。
詳しくは、加熱装置12は、例えば、制御装置21と、温度センサ22と、加熱コイル23とからなり、ガス供給装置13は、アルゴンガス(Ar)24のボンベ25と、窒素ガス(N2)26のボンベ27と、これらのボンベ25,27のガスを雰囲気炉11へ供給する管28と、この管28に設けた圧力ゲージ29とからなる。
【0011】
坩堝15は酸化物系セラミックスであるところの多孔質アルミナ(Al23)31及びアルミニウム合金41を入れる容器であり、坩堝16はマグネシウム(Mg)42を入れる容器である。アルミニウム合金41は、例えばA6061である。マグネシウム(Mg)42はマグネシウム合金でもよい。
【0012】
図3(a)〜(d)は本発明に係るアルミニウム基複合材ビレットの製造要領図であり、(a)〜(c)は浸透までの過程を模式的に示す。
(a):まず、酸化物系セラミックスであるアルミナ(Al23)31とともに、アルミニウム合金41及びマグネシウム(Mg)42を炉内に納める。具体的には、坩堝15にアルミナ31を入れ、アルミナ31にアルミニウム合金41を載せ、坩堝16にマグネシウム42を入れる。
【0013】
次に、雰囲気炉11内の酸素を除去するために雰囲気炉11内を真空引きし、一定の真空度に達したら、真空ポンプ14を止め、雰囲気炉11にアルゴンガス(Ar)24を矢印▲1▼の如く供給し、加熱コイル23で矢印▲2▼の如く多孔質アルミナ31、アルミニウム合金41及びマグネシウム42の加熱を開始する。
【0014】
雰囲気炉11内の温度を温度センサ22で検出しつつ昇温(自動)する。所定温度(例えば、約750℃〜約900℃)に達する過程で、アルミニウム合金41は溶解する。同時に、マグネシウム(Mg)42は矢印▲3▼の如く蒸発する。その際、雰囲気炉11内はアルゴンガス(Ar)24の雰囲気下にあるので、アルミニウム合金41及びマグネシウム(Mg)42が酸化することはない。
【0015】
(b):次に、雰囲気炉11内を加圧し、窒化マグネシウム44の作用でアルミナ(Al23)31を還元し、アルミナ31の多孔質にアルミニウム合金41の溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレット45を製造する。具体的には、雰囲気炉11に窒素ガス(N2)26を矢印▲4▼の如く供給しつつ加圧(例えば、大気圧+約0.5kg/cm2)し、雰囲気炉11内の雰囲気を窒素ガス(N2)26に置換する。
【0016】
雰囲気炉11内が窒素ガス(N2)26の雰囲気になると、窒素ガス26は、マグネシウム(Mg)42と反応して窒化マグネシウム(Mg32)44を生成する。この窒化マグネシウム44はアルミナ(Al23)31を還元するので、アルミナ31は濡れ性がよくなる。その結果、アルミナ31の多孔質にアルミニウム合金41の溶湯が浸透する。アルミニウム合金41が凝固してアルミニウム基複合材ビレット45が完成する。浸透過程において、雰囲気炉11内を加圧雰囲気下にすると、浸透が速くなり、短時間でアルミニウム基複合材ビレット45を製造することができる。なお、雰囲気炉11内を真空ポンプ14で減圧し、減圧窒素雰囲気下でも短時間で浸透させることができる。
【0017】
(c):アルミニウム基複合材ビレット45(以下「ビレット45」と略記する。)は、酸化物系セラミックスであるアルミナ31にアルミニウム合金41が浸透したもので、成形性に優れ、塑性変形がしやすい複合材料である。
(d):最後に、ビレット45をNC(数値制御)旋盤46で所定寸法に切削加工する。寸法は下流工程の押出しプレスに合せる。
【0018】
図4は本発明に係るビレットの均質化処理の説明図である。
その次に、ビレット45を均質化処理する。この均質化処理は、ビレット45を第1加熱炉51に入れ、第1熱源52によって高温で長時間の加熱を行なうもので、例えば、加熱温度は510℃〜530℃、保持時間は7〜9時間に設定する。
この工程により、アルミニウム基複合材中に生じた粗大な金属間化合物など成分的に不均一な部分を均質化して、加工性や機械的性質を改良することができる。
【0019】
図5は本発明に係る押出し工程の第1説明図である。
続いて、ビレット45を焼鈍処理する。この焼鈍は、ビレット45を第2加熱炉53に入れ、第2熱源54で所望の温度、時間だけ加熱を行なう。その際の目安は、加熱温度を300℃以上、保持時間を1時間以上に設定する。
この工程により、予めビレット45の加熱を効率的に行なうことができるとともに、押出しの加工性の向上を図ることができる。
【0020】
図6は本発明に係る押出し工程の第2説明図である。
次いで、加熱したビレット45を押出す。ビレット45を予め加熱した押出しプレス55のコンテナ56に挿入し、ラム57で押出すことにより、ダイス58とマンドレル59の間を通して、押出し材61に成形する。
【0021】
図7は本発明に係る押出し材の斜視図である。
押出しプレス55で押出した押出し材61は、筒62と、この筒62の外面に成形した複数のリブ63・・・とからなり、長尺なものである。
【0022】
図8は図7の8−8線矢視図である。
リブ63は、筒62の外面からピッチ角度θで放射状に一体成形したもので、リブ63の高さをH、厚さをtに設定し、リブ63の断面積をS1とした。64はリブ63の根元部、65はリブ63の先端部である。D1は押出し後の筒62の内径を示す。
【0023】
図9は本発明に係る押出し材の溶体化処理の説明図であり、一例を示す。
引き続いて、押出し材61を溶体化処理する。この溶体化処理は、押出してから連続的に押出し材61を横型加熱炉66に入れ、所望の温度、時間だけ加熱し、その後急冷する処理であり、例えば、加熱温度は510℃〜530℃で、保持時間は2時間程度で溶体化処理し、その直後に、水槽67の水に入れて急冷する。なお、横型加熱炉66や水槽67などの設備は一例であり、設備は縦型でもよく、また、水を一定温度に設定しもよく、水以外の冷媒でもよい。
【0024】
図10(a),(b)は本発明に係る引抜き工程の第1説明図である。
(a):まず、つかみ部を造る。具体的には、押出し材61にアルミニウム管71を矢印の如く挿入する。アルミニウム管71は、押出し材61の内径D1より僅かに小さい外径d1の管である。Duは外径を示す。
(b)は押出し材61の端面までアルミニウム管71を挿入したことを示す。
【0025】
図11(a)〜(d)は本発明に係る引抜き工程の第2説明図であり、(b)は(a)のb矢視図であり、(d)は(c)のd−d線断面図である。
(a):プレスマシン72に押出し材61をセットし、所定の範囲L1(例えば、端面から200〜300mm)を縮径する。
【0026】
(b):ダイス73を矢印の如く作動(回転鍛造:ロータリースエージング)させ、アルミニウム管71とともに、押出し材61の所定の範囲をダイス73で押付け、細いつかみ部を造る。
【0027】
(c):つかみ部74は、縮径(先付け)することで、引抜きダイスの孔に通せるようにした部位である。
押出し材61並びにアルミニウム管71には、ダイスの押付け力により大きな応力がかかり、塑性変形する。アルミニウム管71は成形性がよいので、押出し材61の変形に追従しながら、なおかつ、弾性によりダイスの押付け力に抗しつつ、押出し材61の内周面を矢印の如く押付ける。
【0028】
(d):つかみ部74では、押出し材61の内周面にアルミニウム管71が密着して押出し材61を矢印の如く押付けるから、押出し材61の内面の表層部には圧縮応力が発生し、塑性変形する際の押出し材61の割れを防止することができる。
【0029】
図12(a),(b)は本発明に係る引抜き工程の第3説明図である。
(a):つかみ部74を引抜き装置75のダイス76に通した後(白抜き矢印の方向)、つかみ部74につかみ具77を取付ける。続けて、押出し材61内にプラグ78を矢印の如く入れる。
つかみ部74はアルミニウム管71によって厚くなるので、引張り応力が小さくなり、引きにおいてもより割れが発生し難くなる。
【0030】
(b):つかみ具77を引き、押出し材61を引抜き材81に成形する。具体的には、つかみ具77を白抜き矢印の如く引くことで、ダイス76とプラグ78の間を通して、押出し材61の内外径に精度を付与し、仕上げるとともに、リブ63をアンダカット形状に成形する。次図で成形を詳細に説明する。
【0031】
図13(a),(b)は図12(b)の13−13線断面図である。
(a)は引抜き材81の断面を示し、内径をD2に仕上げるとともに、16個のリブ63を先端側から矢印▲5▼の如く圧縮し、引抜き工程後のリブである逆台形リブ82・・・を成形したことを示す。
【0032】
(b)は(a)のb部詳細図であり、逆台形リブ82を示す。逆台形リブ82は、二点鎖線のリブ63を先端側から矢印▲5▼の如く圧縮してリブ63の根元部64,64にアンダカット形状を成形したものであり、逆台形リブ82の高さをLh、逆台形リブ82の先端部83の幅をLwとしたときに、Lh<Lwに設定した。
その際には、根元部64,64に根元部64の幅を減少させるような拘束力をかけずに、矢印▲5▼の如く筒62の中心方向に圧縮させる力で塑性変形させる。
【0033】
また、逆台形リブ82の断面減少率は5〜12%の範囲に設定した。ここで、断面減少率をRa、リブ63の断面積をS1、引抜き工程後のリブの断面積、つまり、逆台形リブ82の断面積をS2としたときに、断面減少率Raは次式で定めることができる。
Ra(%)=〔(S1−S2)/S1〕×100
【0034】
図14は本発明に係る断面減少率と内径の関係を示したグラフであり、横軸を断面減少率Raとし、縦軸を△D=Db−D3としたものである。ただし、Dbを内径の規格値、D3を内径の実測値、△Dを内径の規格値と実測値との差とした。+αは許容上限値、−αは許容下限値である。
【0035】
断面減少率Raが5%未満では、内径は許容上限値+αを超えるほど大きくなる場合や許容下限値−α近くまで小さくなる場合がり、内径のばらつきは大きく、精度は安定しない。
断面減少率Raが12%を超えると、逆台形リブ82の根元部64に割れが発生しやすくなる。
その結果、引抜き材81の内径精度の観点から下限を5%とし、逆台形リブ82の根元部64の割れ対策の観点から上限を12%とする。
【0036】
このように引抜き工程では、押出しで成形したリブ63を矢印▲5▼の如く圧縮しながら、根元部64の隅を拘束せずに塑性変形させるので、略90°の隅に応力集中は起きず、根元部64の割れを防止することができる。
また、押出しで成形したリブ63を矢印▲5▼の如く圧縮しながら、根元部64の隅を拘束せずに塑性変形させるので、略90°の隅に応力集中は起きず、内径の精度を向上させることができる。
【0037】
図15は本発明に係る引抜き材の人工時効硬化処理の説明図であり、一例を示す。
この人工時効硬化処理は、引抜き材81を第3加熱炉84に入れ、所望の温度、時間だけ加熱し、空冷する。例えば、加熱温度は170℃〜180℃で、保持時間は約8時間に設定する。
【0038】
図16は本発明に係る切断工程の説明図である。
引抜き後の引抜き材81をカッタ85で所定長さLsに切断加工してアルミニウム基複合材のシリンダライナ86を形成する。その際、シリンダライナ86の端面87,87を切断すると同時に仕上げる。
【0039】
図17は本発明に係る鋳造工程の説明図である。
最後に、シリンダライナ86・・・をシリンダブロックの鋳型88内にセットして注湯する。具体的には、まず、シリンダライナ86・・・をライナ支持部材91・・・に取付けるとともに、ライナ支持部材91・・・を鋳型88内の鋳包み材取付け部92・・・に嵌め込むことで、シリンダライナ86・・・のセットは完了する。
【0040】
続いて、鋳型88に注湯する。この場合、鋳型88を取付けたダイカスト機93のスリーブ94内の溶融アルミニウム合金を所定の圧力で鋳型88のキャビティ95に充填する。アルミニウム合金は、例えば、Al−Si−Cu系合金の一種であるJIS−ADC12を用いる。溶融アルミニウム合金が凝固した後、シリンダブロックを取り出す。
【0041】
図18は本発明に係るシリンダブロックの斜視図である。
シリンダブロック96は、水冷直列4気筒のエンジンの一部で、シリンダライナ86・・・をシリンダ部96aに鋳包み、シリンダ部96aの外方にウォータジャケット部96bを有するものである。96c〜96fは第1〜第4シリンダを示す。
【0042】
図19は図18の19−19線矢視図である。
シリンダブロック96では、シリンダピッチは、従来と同じくPに設定し、且つ一定とした。
このように、本発明のシリンダライナの鋳包み成形方法で、逆台形リブ82の高さをLh、先端部83の幅をLwとし、Lh<Lwに設定したので、シリンダピッチがPであっても、シリンダライナ86・・・間の鋳物肉厚はTとなり、従来のシリンダライナ間の鋳物肉厚T2よりも鋳物肉厚を増加させることができ、強度を確保することができる。従って、シリンダブロック96の小型化を図ることができる。
【0043】
また、本発明のシリンダライナの鋳包み成形方法で、シリンダライナ86・・・に逆台形リブ82を成形し、シリンダライナ86・・・を鋳包んだので、アンダカット形状の根元部64・・・で溶融アルミニウム合金が凝固してアンカ効果を向上させることができる。
【0044】
尚、本発明の実施の形態に示した図8のリブ63の数量は16個としたが、数量は16個に限定するものではない。
引抜き工程後のリブの高さをLh、リブの先端部の幅をLwとしたときに、Lh<Lwに設定したが、Lh<Lwに限定するものでない。
シリンダライナを水冷直列4気筒に用いたが、エンジンは直列4気筒に限定するものではない。
【0045】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体とともに、アルミニウム合金及び、マグネシウム又はマグネシウム発生源を炉内に納め、窒化マグネシウムの作用で酸化物系セラミックスを還元し、酸化物系セラミックスの多孔質にアルミニウム合金の溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する工程と、アルミニウム基複合材ビレットを押出しプレスで筒に成形すると同時に、この筒の外面にリブを、厚さを一定に、且つ高さを厚さに比べ高く成形する押出し工程と、押出し後の押出し材を引抜き装置で仕上げるとともに、リブを先端側から筒の半径の中心へ向かって圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形する引抜き工程と、引抜き後の引抜き材を所定長さに切断加工してアルミニウム基複合材のシリンダライナを形成する切断工程と、シリンダライナをシリンダブロックの鋳型内にセットして注湯する鋳造工程と、からなり、押出し工程でビレットを筒に成形すると同時に、筒の外面にリブを、厚さを一定に、且つ高さを厚さに比べ高く成形することで、リブを第1段階の形状に成形する。
【0046】
引抜き工程では、押出し材のリブを先端側から筒の半径の中心へ向かって圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形すので、根元の略90°の隅に応力が集中せず、根元から亀裂が入る虞れがない。
このように、リブの根元部に根元部の幅を減少させるような拘束力をかけないという利点がある。
また、押出し材のリブを先端側から筒の半径の中心へ向かって圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形すので、シリンダライナのアンカ効果を向上させることができる。
さらに、リブは低くなり、その分だけシリンダライナ同士を接近させることができ、シリンダブロックの小型化を図ることができる。
【0047】
請求項2では、押出し工程後のリブの断面積をS1、引抜き工程後のリブの断面積をS2としたときに、(S1−S2)/S1を百分率表示で5〜12%に設定する。
5%未満では、引抜き後の内径が大きくなり過ぎる場合もあれば、逆に小さくなり過ぎる傾向もあり、引抜き後の内径のばらつきは大きい。
12%を超えると、引抜き工程後のリブの根元に割れが発生しやすくなる。
その結果、引抜き後の内径精度の観点から下限を5%とし、引抜き工程後のリブの根元の割れ対策の観点から上限を12%とする。
従って、リブの根元にアンダカット形状を成形することができるとともに、内径精度を確保することができる。
【0048】
請求項3では、引抜き工程後のリブの高さをLh、リブの先端部の幅をLwとしたときに、Lh<Lwに設定するので、リブの高さは小さく、その分だけシリンダライナ同士をより接近させることができ、よりシリンダブロックの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシリンダライナの鋳包み成形方法のフローチャート
【図2】本発明に係るアルミニウム基複合材の製造装置の概要構造図
【図3】本発明に係るアルミニウム基複合材ビレットの製造要領図
【図4】本発明に係るビレットの均質化処理の説明図
【図5】本発明に係る押出し工程の第1説明図
【図6】本発明に係る押出し工程の第2説明図
【図7】本発明に係る押出し材の斜視図
【図8】図7の8−8線矢視図
【図9】本発明に係る押出し材の溶体化処理の説明図
【図10】本発明に係る引抜き工程の第1説明図
【図11】本発明に係る引抜き工程の第2説明図
【図12】本発明に係る引抜き工程の第3説明図
【図13】図12(b)の13−13線断面図
【図14】本発明に係る断面減少率と内径の関係を示したグラフ
【図15】本発明に係る引抜き材の人工時効硬化処理の説明図
【図16】本発明に係る切断工程の説明図
【図17】本発明に係る鋳造工程の説明図
【図18】本発明に係るシリンダブロックの斜視図
【図19】図18の19−19線矢視図
【図20】従来のシリンダライナの鋳包み成形方法の説明図
【符号の説明】
11…炉(雰囲気炉)、31…酸化物系セラミックス(多孔質アルミナ)、41…アルミニウム合金、42…マグネシウム、44…窒化マグネシウム、45…アルミニウム基複合材ビレット、55…押出しプレス、61…押出し材、62…筒、63…リブ、64…根元部、65…先端部、75…引抜き装置、81…引抜き材、82…引抜き工程後のリブ(逆台形リブ)、86…シリンダライナ、88…シリンダブロックの鋳型、96…シリンダブロック、Ls…所定長さ。

Claims (3)

  1. 酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体とともに、アルミニウム合金及び、マグネシウム又はマグネシウム発生源を炉内に納め、窒化マグネシウムの作用で酸化物系セラミックスを還元し、酸化物系セラミックスの多孔質にアルミニウム合金の溶湯を浸透させてアルミニウム基複合材ビレットを製造する工程と、
    前記アルミニウム基複合材ビレットを押出しプレスで筒に成形すると同時に、この筒の外面にリブを、厚さを一定に、且つ高さを厚さに比べ高く成形する押出し工程と、
    前記押出し後の押出し材を引抜き装置で仕上げるとともに、前記リブを先端側から前記筒の半径の中心へ向かって圧縮してリブの根元にアンダカット形状を成形する引抜き工程と、
    前記引抜き後の引抜き材を所定長さに切断加工してアルミニウム基複合材のシリンダライナを形成する切断工程と、
    前記シリンダライナをシリンダブロックの鋳型内にセットして注湯する鋳造工程と、からなることを特徴とするシリンダライナの鋳包み成形方法。
  2. 前記押出し工程後のリブの断面積をS1、前記引抜き工程後のリブの断面積をS2としたときに、(S1−S2)/S1を百分率表示で5〜12%に設定することを特徴とする請求項1記載のシリンダライナの鋳包み成形方法。
  3. 前記引抜き工程後のリブの高さをLh、リブの先端部の幅をLwとしたときに、Lh<Lwに設定することを特徴とする請求項1記載のシリンダライナの鋳包み成形方法。
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