JP3661949B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は磁性層上もしくは磁性層上に形成した無機保護層上に潤滑層を有する磁気記録媒体に関し、とくに走行性、耐久性および保存性に優れた金属薄膜型磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気テープ、フロッピーディスク等の磁気記録媒体の潤滑剤を磁性層表面に塗布することによって、磁気記録媒体とヘッドとの間の潤滑性および走行耐久性を改善することが行われている。
磁気記録媒体では記録の高密度化により磁性層表面はより平滑になり、また磁気記録媒体は様々な環境で使用され、かつ記録された情報は数年から数十年にわたって保存される。そのため多様な環境下での走行耐久性および保存安定性が要求されており、従来の潤滑剤では十分な効果を発揮し得なくなっている。
更に、カムコーダすなわちカメラ一体型ビデオテープレコーダや8ミリビデオのような小型のビデオテープレコーダは戸外で使用されることが多く、磁気記録媒体には幅広い環境条件での使用に耐える性能が必要とされている。
【0003】
また、高密度記録に有利であり、今後の高精細度化、デジタル化等の磁気記録密度向上のために強磁性金属薄膜を磁性層とする金属薄膜型磁気記録媒体が期待されているが、磁性層が金属の極く薄い酸化層でのみ保護されているだけであるので、金属薄膜型磁気記録媒体にあっては、走行性や耐久性を保証するだけではなく、保存性をも大幅に向上できる潤滑層用素材の提供が求められている。
【0004】
金属薄膜型磁気記録媒体にあっては、より高密度記録化を可能にするために、表面を平滑化し、磁性層の組成をCoNi−O系からCo−O系やCo−Oを含むCo−Fe等の高抗磁力(Bm)化の方向に改良が行われているが、これらのコバルトの含有割合の多いものでは安定な走行性、耐久性、耐食性を得ることが困難であった。
【0005】
また、磁性層上に、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、グラファイト、無定形炭素、酸化コバルト、窒化チタン及び炭化クロム等の保護層を形成して耐久性を向上させる方法も検討されているが、充分な保護作用を得るためには厚さを厚くせねばならずそのためスペーシングロスを生じるので、出力が低下して高密度化の妨げになり好ましくなかった。
【0006】
そこで、金属薄膜型磁気記録媒体用の潤滑剤として、さまざまな構造の潤滑性能に優れた炭化水素系、フッ素系の潤滑剤が検討されており、とくに分子内に親水性官能基を有する有機フッ素化合物は、走行耐久性を大幅に改善することができることが知られている。
ところが、特性の優れた潤滑剤を使用しても電磁変換特性を改善した平滑な金属薄膜型の磁気記録媒体においては、繰り返し摺動により磁性層上に付着した潤滑剤が徐々に失われ、特性が劣化するという問題があった。
【0007】
そこで、潤滑剤に各種の極性基を導入することによって、特性を改善することが行われている。たとえば、カルボキシル基、エステル基、リン酸エステルを導入することが、特開昭59−119537号公報や特公平4−50644号公報等に記載されているが、低温での繰り返し走行耐久性に乏しいという問題があった。そこで2種類以上の潤滑剤を併用して、特性を向上させようとする検討も数多くなされてきた。
【0008】
また、カルボン酸とフッ素含有エステルを併用することが特開昭62−141625号公報には記載されており、それぞれの潤滑剤を単独で使用した場合に比べ、低温での繰り返し走行耐久性を著しく向上させることができるが、耐食性、特に高温高湿環境での保存性が乏しいという問題があった。
【0009】
リン酸トリエステルやリン酸ジエステルとフッ素系エステル潤滑剤を併用することが、特開昭62−236120号公報や特開昭62−103824号公報等に記載されているが、トリエステルやジエステルは磁性膜に対する吸着性が弱く、耐摩耗性が向上しないため必ずしも満足な特性は得られていない。
【0010】
特開平4−205712号公報には2種類の潤滑剤からなる層を形成して、磁性層側及びバックコート層側の潤滑剤の量を規定する方法が提案されているがこの方法によっても充分な潤滑性は得られていない。
また、潤滑剤を磁気記録媒体の磁性層を形成した面とは反対側の面に設けたバックコート層に潤滑剤を付与し、摺動によって失われる磁性層面の潤滑剤を随時バックコート層から供給する方法が、特公昭57−29767号公報、特開昭58−188326号公報、特開昭60−63711号公報、特開昭60−63712号公報、特開昭62−209718号公報、特開平1−211215号公報などに記載されている。このような塗布方法によって繰り返し走行耐久性が改善されるものの、バックコート層にのみ潤滑剤を塗布した場合には、耐久性の確保が困難であり、バックコート層と磁性層の両者に塗布した場合には、磁性層上に潤滑剤が過剰に存在することとなり静止摩擦係数が上昇して貼り付きを生じる等の問題があった。
【0011】
強磁性金属薄膜を磁性層とする磁気記録媒体の実用上の問題点である耐食性の面でも、分子内に極性基を有するフッ素系潤滑剤のみでは耐食性の確保は不充分であり、防錆剤の併用などが提案されているが、一般に知られている潤滑剤と防錆剤の併用では耐食性の確保が困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、摩擦係数が低く安定しており、繰り返し走行耐久性、耐食性に優れるとともに、特に高密度の磁気記録が可能な磁気記録媒体を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に磁性層上もしくは無機保護層を介してリン酸モノエステル化合物とフッ素含有カルボン酸エステルを含有する潤滑層を設け、さらにリン酸モノエステル化合物上にフッ素含有カルボン酸エステルが存在する層を形成することによって、高度に平滑な表面性を有し、磁性層の材料をより高抗磁力(Bm)化した高い電磁変換特性を有する磁性層において、高い走行耐久性および保存性が得られることを見い出した。そして、さらにその後の研究によって使用する潤滑剤のうち特にフッ素含有カルボン酸エステルは常温で液体であるものが様々な環境下でのスチル耐久性等に有効であり、かつバックコート層に添加する量を多少増加して保存しても潤滑剤の析出を生じず、良好な特性を示すことが判明した。今までに知られていた常温で液体であるフッ素含有のカルボン酸エステルは分子内に不飽和結合を含有したり、分岐構造を持たせ、分子間の相互作用を減少させたものである。しかしこのような潤滑剤では、前記のような優れた特性を示す一方、弱い分子間相互作用が原因となって塗布後の磁性層や保護層上に密に配向することが難しく、その結果μ値が比較的高くなる欠点を有していた。また不飽和結合を有するカルボン酸エステルにおいては不飽和結合が空気中で酸化されやすく、長期間の保存性に懸念があった。
【0014】
そこで上記の欠点を改善する潤滑剤を検討した結果、フッ素含有カルボン酸エステルの分子内にアルキンオキシド結合を有する潤滑剤が常温で液体であり、液体潤滑剤の良好な特性を維持しつつ、μ値および保存性にも優れることを見いだし本発明に到った。
【0015】
本発明は、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、この磁性層上もしくは無機保護層を介して下記の一般式(1)のリン酸エステル化合物、一般式(2)あるいは(3)のアルキレンオキシド基を有するフッ素基含有カルボン酸エステル化合物を含有する潤滑層を設けたことを特徴とする磁気記録媒体である。
一般式(1) R1 −OPO(OH)2
1 は、炭素数8〜26の直鎖飽和炭化水素基
一般式(2) Rf1−R2−COO−(R3O)n −R4
ただし、Rf1:(CF3a CF3-a (CF2b
a:1〜3、a+b:1〜11、n=1〜8
2 :炭素数2〜10のアルキレン基
3 :炭素数1〜4のアルキレン基
4 :炭素数2〜18のアルキル基
一般式(3) Rf2−R2−COO−(R3O)n −R5−Rf3
ただし、Rf2、Rf3:(CF3a CF3-a (CF2b
a:1〜3、a+b:1〜11、n=1〜8
2 :炭素数2〜10のアルキレン基
3 :炭素数1〜4のアルキレン基
5 :炭素数2〜18のアルキレン基
また、強磁性金属薄膜と潤滑層の間に無機保護層を形成した前記の磁気記録媒体である。
さらに、非磁性支持体の強磁性金属薄膜を有する面とは反対側の面上にバックコート層があり、バックコート層中には前記のアルキレンオキシド基含有フッ素化カルボン酸エステル化合物を含有する磁気記録媒体である。
また、強磁性金属薄膜を構成する強磁性金属の90原子%以上がコバルトである前記の磁気記録媒体である。
すなわち、本発明は、リン酸モノエステル化合物からなる潤滑剤と、アルキレンオキシド基を有するフッ素含有カルボン酸エステルからなる潤滑剤とを有する潤滑層を設けた磁気記録媒体であり、リン酸モノエステル化合物は磁性層に強く吸着し、耐食性も大幅に改善することができる。このようなリン酸モノエステル化合物としては、モノラウリルホスフェート、モノヘキサデシルホスフェート等が挙げられる。
【0016】
リン酸モノエステル化合物の疎水鎖としては、直鎖飽和炭化水素基が好ましいが、不飽和炭化水素基や側鎖が導入された分岐構造の炭化水素基であっても良い。また、飽和炭化水素基の長さは、主鎖の炭素数が8〜26の範囲のものが好ましく、8より少ないと良好な保護効果が得られず、26よりも長いと結晶性が高まり、塗布適正が低下し潤滑効果が低下する。
【0017】
一方、本発明の磁気記録媒体のフッ素系化合物の一般式(2)ないし(3)において、さらに好ましくはRf1、Rf2、Rf3 において、aは1〜2、a+bは1〜10、nは1〜3である。また、R2、R3、R4、R5、Rf1、Rf2、Rf3は分岐していても良く、R2 は炭素数2〜10のアルキレン基、R3は炭素数1〜4のアルキレン基、R5 は炭素数3〜14のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0018】
2 が11以上となると吸着しづらくなり、摩擦係数が上昇しR2、R3がこれよりも大きいと、耐久性、とくに出力低下が大きくなり好ましくない。また、R2、R3がこれよりも小さいと溶剤への溶解性が不足したりあるいは揮発性が高く充分な特性を発揮できない。
【0019】
本発明のアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物のアルキレンオキシド基はエステルの融点を下げることができ、これにより塗膜の均一性や様々な使用環境下での走行耐久性を得ることができる。またアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物は従来から知られていた不飽和結合を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物より大幅に安定性に優れているため、長期間にわたる保存に関しても当初の特性を維持することができると考えられる。
【0020】
また、アルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物は分子中央にエステル基に隣接して特定の長さのアルキレンオキシド基を導入することにより、分子の媒体表面に対する吸着性を高め、さらにエステル基同様アルキレンオキシド基もオキソ酸ほど腐食性が大きくないので耐食性に優れている。したがって、過剰に塗布され磁気記録媒体表面に吸着しない分子が存在してもその分子が磁性層表面や磁気ヘッドを腐食したりするおそれが少ないのである。さらに、アルキレンオキシド基に隣接してアルキル基を結合させることによりアルキレンオキシド基の親水性による腐食性を弱めて、耐錆性を向上させている。
【0021】
そして、エステル基もアルキレンオキシド基もともに分子間相互作用が小さいので分子が独立に挙動し易く液体潤滑性を高めることができ磁気記録媒体の摩擦係数を低下させるのに効果がある。
【0022】
本発明の磁気記録媒体のフッ素系化合物は、具体的には、
613816COO(CH2CH2O)62449
81724COO(CH2CH2O)31225
81724COO(CH2CH2O)21429
81724COO(CH2CH2O)5817
81724COO(CH2CH2O)749
81724COO(CH2CH2CH2O)3817
8171020COO(CH2CH2O)31225
(CF32CF(CF2424COO(CH2CH2O)31225
81724COO(CH2CH2O)324817が挙げられる。
【0023】
これらのアルキレンオキシド含有フルオロアルキルカルボン酸エステルは、相当するカルボン酸クロライドとフッ素含有あるいは含有しないアルコキシアルコールとをトリエチルアミンのような塩基の存在下で合成し、減圧蒸留あるいは再結晶等の手段で精製することによって得ることができる。
【0024】
本発明の磁気記録媒体において、磁気記録媒体表面に潤滑層を形成するには、潤滑剤として使用するリン酸モノエステル化合物およびアルキレンオキシド基を有するフッ素含有カルボン酸化合物を有機溶剤に溶解し、磁気記録媒体表面に塗布する混合塗布法、リン酸モノエステル化合物を塗布した後、アルキレンオキシド基を有するフッ素含有カルボン酸エステルを塗布する逐次塗布法を用いることができるが、リン酸モノエステル化合物の吸着特性が良好であるので、リン酸モノエステル化合物からなる潤滑層を形成した後に、アルキレンオキシド基を有するフッ素含有カルボン酸エステルからなる潤滑剤層を形成することが好ましい。
【0025】
さらに、磁気記録媒体表面に有機溶剤に溶解したリン酸モノエステル化合物を塗布乾燥した後、アルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物からなる潤滑剤を含有したバックコート層を形成し、巻き取ることによってバックコート層のアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物からなる潤滑剤を磁気記録媒体表面に転写させる方法が特に好ましい。バックコート層にアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物を含有させる方法としては、あらかじめ作製したバックコート層にアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物を塗布しても良いし、バックコート層を作製する際に、バックコート層の塗布液中にアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物を混合しても良い。このように潤滑層を形成した場合には、磁性層上に直接リン酸エステル化合物およびアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物からなる潤滑剤を塗布する場合に比べ、リン酸モノエステル化合物が密に配向した吸着膜を作製することができる。そしてアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物は主にリン酸エステル化合物の吸着膜上もしくは吸着膜間に存在する膜構造となり、このような膜構造を形成することにより良好な潤滑特性が達成される。またアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物はアルキレンオキシド基を持たない同様な構造のフッ素系カルボン酸エステル化合物と比較すると吸着性が若干高いため、磁気記録媒体表面に吸着しやすく、過剰な潤滑剤も存在しにくくなるため、他の常温で液体のフッ素系カルボン酸エステル化合物よりもμ値が低く、スティックスリップ等が生じにくい。
【0026】
また、以上のような構成の潤滑膜の場合には、磁気記録媒体をVTRにおいて走行させるとフッ素系カルボン酸エステル化合物はヘッドやガイドポールなどとの摺動により減少するが、バックコート層に含有されるフッ素系カルボン酸エステル化合物が巻き取り時に転写するため、磁気記録媒体表面に存在するフッ素系カルボン酸エステル化合物量はほとんど変化せず、良好な走行耐久性を得ることができる。
また、従来、フッ素系の潤滑剤を有機溶剤を用いて磁気記録媒体表面に直接塗布するとそのフッ素系潤滑剤が有機溶剤に可溶であっても塗布乾燥時に微細な塗布むら、乾燥むらを生じることがあったが、フッ素系カルボン酸エステル化合物をバックコート層面に添加する方法ではこのような塗布むらが発生しにくく、使用できる潤滑剤、有機溶剤の種類が多くなるという利点も有する。
【0027】
磁気記録媒体にリン酸モノエステル化合物およびアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物を付与する方法は一般的に知られている様々な方法が使用でき、例えば溶液にして磁気記録媒体表面に塗布する場合には、ワイヤーバー法、グラビア法等で塗布すればよい。本発明の化合物はメチルエチルケトン、エタノール等の通常の有機溶剤に可溶であるので、高価でありオゾン層破壊係数の高いフッ素系の有機溶剤を使用することなく、磁気記録媒体を作製することができる。
【0028】
磁性層上のリン酸エステル化合物の塗布量は、1〜20mg/m2 が好ましく、特に好ましくは1〜10mg/m2 である。塗布量が少なすぎると耐磨耗性が不足し、塗布量が多すぎると走行性、耐久性に支障をきたす。
【0029】
またリン酸エステル化合物は、磁性層上に塗布することが好ましいが、バックコート層中に含有させても良いが、バックコート層中のリン酸エステル化合物の存在割合が大きくなるとフッ素系カルボン酸エステル化合物が転写しにくくなり走行耐久性の劣化を招く。
【0030】
また、アルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物の磁気記録媒体表面上の存在量は1〜20mg/m2 が好ましく、特に好ましくは3〜10mg/m2 である。磁気記録媒体表面のアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物の量が少なくなると繰り返し走行耐久性が悪化し、多すぎると摩擦係数の上昇を招く。アルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物をバックコート層中に混合またはその表面に塗布する場合、その存在量は5〜40mg/m2 が好ましい。バックコート層中のアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物の供給が不十分となり繰り返し走行耐久性が悪化する。バックコート層中のアルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物の量が多くなると磁性層表面、バックコート層面ともに摩擦係数が上昇してしまう。
【0031】
本発明の潤滑剤を他の潤滑剤を組み合わせて使用することも可能である。併用する潤滑剤は、磁性層上に直接塗布しても良いが、アルキレンオキシド基を有するフッ素系カルボン酸エステル化合物と同様にバックコート層に付与すると効果が高い。また、これらの複数の潤滑剤を組み合わせて使用しても良い。
【0032】
例えば、下記に示す構造の化合物に代表されるフッ素系カルボン酸エステルは、繰り返し走行耐久性の向上に効果がある。
817COOC1837
817(CH22COOC817
1735COO(CH22817
1733COO(CH22817
817(CH210COO(CH22817
また、一般に良く知られているパーフルオロポリエーテル類を併用するとスチル耐久性等に効果が高い。本発明で使用できるパーフルオロポリエーテルとしては、パーフルオロメチレンオキシド、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2 CF2 CF2O)n 、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3 )CF2O)n等が挙げられ、アルコール、メチルエステル基などの極性基を含んでもよい。具体的にはデュポン社製KRYTOX143AZ、157SL、モンテフルオス社製FOMBLINZ−DOL、Z−DEAL等が使用できる。これらのパーフルオロポリエーテル類を塗布する場合にはフッ素系溶剤を使用することが必要となる。
【0033】
パーフルオロポリエーテルを使用する場合には脂肪酸エステル化合物と同様にバックコート層用の液中に混合してもよいし、あらかじめ作成したバックコート層上に脂肪酸エステル化合物を塗布する際に混合して塗布すればよい。
また、官能基の導入されていない炭化水素の一部をフッ素で置換したフルオロアルカン類を併用すると、潤滑膜を通常の有機溶剤で作製でき、しかもスチル耐久性を向上させることができる。
【0034】
本発明の磁気記録媒体は耐食性に優れるが、複素環類の防錆剤を併用するとさらに耐食性を高めることができる。本発明で使用できる防錆剤を例示するとベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体等が挙げられる。
このような目的で使用可能なテトラザインデン環化合物には、下記に示すものが挙げられる。
【0035】
【化1】
Figure 0003661949
【0036】
ここで、Rには、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミド基から選ばれる炭化水素基である。
とくに好ましくは、炭素数3以上26以下であり、アルコキシの場合にはROCOCH2 −のRは、C3 7 −、C6 13−、フェニル、またアルキル基の場合には、C6 13−、C9 19−、C1735−が挙げられ、アルキルアミドの場合にはRNHCOCH2 −のRはフェニル、C3 7 −が挙げられる。
また、チオウラシル環化合物には、下記に示すものが挙げられる。
【0037】
【化2】
Figure 0003661949
【0038】
ただし、Rは炭素、水素以外の置換基を含んでも良い炭素数が3以上である炭化水素基である。
防錆剤を使用する方法は磁性層上に付与する方法と、バックコート層中に付与する方法のどちらも使用可能であるが、走行耐久性との両立や繰り返し摺動後の耐食性を考慮すると、バックコート層への添加がとくに有効である。
【0039】
防錆剤の塗布量は0.1〜5.0mg/m2 が好ましい。特に好ましくは防錆剤0.3〜3mg/m2 である。
【0040】
本発明で使用できる磁性層はコバルトを主体とした従来より公知の金属または合金を微量の酸素雰囲気で真空斜め蒸着法で作成されたものである。特に電磁変換特性を改善するため磁性層を構成する金属原子の90%以上はコバルトであるCo−O、Co−Oを含有するCo−Fe等が好ましい。また、金属原子の95%以上はコバルトであることが好ましく、97%以上であることがより好ましい。 磁性層の厚みは、100〜3000nmとするのが望ましく、さらに望ましくは120〜2000nmである。
磁性層を構成する金属原子のほとんどがコバルトである強磁性金属薄膜は磁気特性に優れているが耐候性が悪く、さらに走行性、耐久性の面でも実用上問題であった。ところが、本願発明のような潤滑層を使用することにより上記のようにその90%以上がコバルトである組成であっても耐食性、走行性、耐久性の面で優れた実用に充分耐え得る磁気記録媒体とすることができる。
【0041】
本発明で使用する非磁性支持体としては、厚さ3〜10μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドポリイミド等のフイルムが好ましく、走行性を改善するためその表面に粒径50〜200μmの無機フィラーを付与したものが好ましい。また、ベースの内部にフィラーを含有し、ベース表面に凹凸を形成したものでも良い。
【0042】
また、電磁変換特性を改善するため重層構成としたり、非磁性下地層や中間層を有していても良い。
さらに、本発明でも走行耐久性が不足する場合には磁性層上に炭素膜、酸化物膜、窒化物膜等の公知の無機保護層を形成し、この無機保護層を介して潤滑層を作製すると特性を著しく改善できる。このような無機保護層としてはアモルファス、グラファイト、ダイヤモンド構造もしくはこれらの混合物からなる炭素膜が好ましく、とくに好ましくは一般にダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質炭素膜である。ダイヤモンドライクカーボンはメタン等の低分子量の炭化水素を原料としたプラズマCVD法、グラファイトをターゲットしたスパッタリング法により作製することができる。ダイヤモンドライクカーボン膜はグラファイトライクカーボン膜と比較すると膜自体の潤滑性は低いものの、膜硬度が高いため膜上に適切な潤滑層を形成することにより非常に優れた耐磨耗性を示す。
【0043】
また本発明の潤滑層は吸着性に優れるため上記の無機保護層上に塗布しても効果が高いが、炭素膜へのリン酸モノエステル化合物の吸着性が不足するような場合には、あらかじめ保護膜表面をアルゴンプラズマ、酸素プラズマ、高湿雰囲気暴露、湿式酸化処理等の方法で表面処理を行えば吸着特性を高めることができる。
【0044】
【作用】
本発明の磁気記録媒体は、リン酸モノエステル化合物と、フッ素含有潤滑剤としてエステルにアルキレンオキシド基を導入した常温で液体であるフッ素系エステルを用いたので、液体潤滑剤としての優れた特性とともに、μ値および保存性に優れ、さらにアルキレンオキシドは親水性であるため磁性層に対し吸着性をもち、低速走行でも膜切れせず摩擦係数を低減させ防錆性を発揮する。また、アルキレンオキシド基は酸性を示さないのでヘッド腐食等についても問題なく好ましい結果を発揮とする。
【0045】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例を示し、本発明をさらに説明する。
表面に粒径18nmの球状シリカフィラーを有する厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属コバルトを酸素含有雰囲気中で入射角45°で斜め蒸着し、強磁性金属の柱状結晶からなり1層の厚みが70nmのいずれの層の柱状結晶の方向が同じである磁性層が2層積層された強磁性金属薄膜を得た。熱処理により磁性層のカールを修正した後、磁性層上に表1および表2記載の化合物Aのメチルエチルケトン溶液を18μmol/m2 となるように塗布し乾燥した。続いてカーボンブラックと樹脂結合剤からなる樹脂組成物を磁性層を形成した面とは反対の面に塗布し、乾燥してバックコート層を作製した。次いで、バックコート層上に表1および表2に記載の化合物Bのイソプロパノール溶液を化合物Bの塗布量が12μmol/m2 となるように塗布、乾燥した後に、8mm幅に裁断して試料番号1〜20の磁気記録媒体を作製した。
【0046】
次に、各試料番号の試料と同様に磁性層を作製した後に、磁性層上に厚さ10nmのダイヤモンド状炭素膜を形成し、表2の試料番号21の化合物Aおよび化合物Bを塗布した。また、ダイヤモンド状炭素膜およびバックコート層の両方に潤滑剤を付与しない試料を試料番号22とした。
各試料について下記の評価方法によって評価をし、評価結果を表1および表2に記載した。試料番号に記載の比は比較例である。
【0047】
〔評価方法〕
▲1▼摩擦係数(μ値)の測定
23℃70%RHの環境において磁気記録媒体とステンレス棒(材質SUS420J)とを20gの張力(T1 )で巻き付け角180°で接触させた、磁気テープを3.3cm/秒の速度で走行させるのに必要な張力(T2 )を測定し、下記計算式により磁気テープの、摩擦係数μを求めた。
μ=1/π・ln(T2 /T1
▲2▼スチル耐久性の測定
スチルA:23℃10%RHの環境において、8mmVTR(富士写真フイルム(株)製 FUJIX−M6)を使用して走行テンション20gでカラーバー画像を記憶した後、スチル制限機構を動作させないでスチル状態で画像を再生し、出力が初期の−6dBとなるまでの時間を測定して評価した。
スチルB:−10℃において、8mmVTR(富士写真フイルム(株)製 FUJIX−V88)を使用してカラーバー画像を記憶した後、スチル制限機構を動作させないでスチル状態で画像を再生し、出力が初期の−6dBとなるまでの時間を測定して評価した。
スチルC:60℃50%RHの環境において1週間保存した後、スチルAの条件で測定した。
▲3▼繰り返し走行耐久性の評価
23℃10%および70%RHの環境において、8mmVTR(SONY CV10)を使用し、60分長の磁気記録媒体を100パス連続して再生させた。100パス走行後出力を測定し、初期出力に対する相対値を出力低下とした。また走行後のヘッドを顕微鏡観察し、ヘッドの摺動面および非摺動面ともに汚れがみられなかった場合を◎、摺動面に汚れはないが非摺動面にわずかに汚れがみられた場合を○、摺動面には汚れはないが非摺動面にかなりの汚れがみられた場合を△、摺動面に若干の汚れが観察され非摺動面に汚れが観察されたものを△×、摺動面および非摺動面ともに汚れが観察されたものを×とした。
【0048】
▲4▼亜硫酸ガス耐食性
27℃、80%RH、亜硫酸ガス1ppmの環境に磁気記録媒体を72時間保存し、保存後のテープ表面を目視観察し、試験前とほとんど変化が見られないものを○、テープ全面の金属光沢は残っているものの腐食が観察されるものを△、磁性層の一部もしくは全部が腐食により溶解したものを×とした。
【0049】
【表1】
Figure 0003661949
【0050】
【表2】
Figure 0003661949
【0051】
【発明の効果】
本発明は、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、この磁性層上にリン酸モノエステル化合物とフッ素含有潤滑剤としてエステルにアルキレンオキシド基を導入した常温で液体であるフッ素系エステルを用いたので、液体潤滑剤としての優れた特性とともに、μ値および保存性に優れ、さらにアルキレンオキシドは親水性であるため磁性層に対し吸着性をもち、低速走行でも膜切れせず摩擦係数を低減させ防錆性を発揮する。また、アルキレンオキシド基は酸性を示さないのでヘッド腐食等についても問題なく好ましい結果を発揮し、耐久性あるいは耐食性の確保しがたいコバルトのみからなる磁気記録媒体においても充分な耐久性および耐食性を得ることができる。

Claims (5)

  1. 非磁性支持体上に強磁性金属薄膜を有する磁気記録媒体において、強磁性金属薄膜上には下記一般式(1)で表されるリン酸モノエステル化合物および下記一般式(2)もしくは一般式(3)で表されるアルキレンオキシド基含有フッ素化カルボン酸エステル化合物を含む潤滑層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
    一般式(1) R1 −OPO(OH)2
    1 は、炭素数8〜26の直鎖飽和炭化水素基
    一般式(2) Rf1−R2−COO−(R3O)n −R4
    ただし、Rf1:(CF3a CF3-a (CF2b
    a:1〜3、a+b:1〜11、n=1〜8
    2 :炭素数2〜10のアルキレン基
    3 :炭素数1〜4のアルキレン基
    4 :炭素数2〜18のアルキル基
    一般式(3) Rf2−R2−COO−(R3O)n −R5−Rf3
    ただし、Rf2、Rf3:(CF3a CF3-a (CF2b
    a:1〜3、a+b:1〜11、n=1〜8
    2 :炭素数2〜10のアルキレン基
    3 :炭素数1〜4のアルキレン基
    5 :炭素数2〜18のアルキレン基
  2. アルキレンオキシド基含有フッ素化カルボン酸エステル化合物が、C613816COO(CH2CH2O)62449、C81724COO(CH2CH2O)31225、C81724COO(CH2CH2O)21429、C81724COO(CH2CH2O)5817、C81724COO(CH2CH2O)749、C81724COO(CH2CH2CH2O)3817、C8171020COO(CH2CH2O)31225、(CF32CF(CF2424COO(CH2CH2O)31225、C81724COO(CH2CH2O)324817からなる群から選ばれる少なくともいずれか一種であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 強磁性金属薄膜と潤滑層の間に無機保護層を有することを特徴とする請求項1もしくは請求項2のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  4. 非磁性支持体の強磁性金属薄膜を有する面とは反対側の面上にバックコート層があり、バックコート層中には請求項1または請求項2記載のアルキレンオキシド基含有フッ素化カルボン酸エステル化合物を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  5. 強磁性金属薄膜を構成する強磁性金属の90原子%以上がコバルトであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
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