JP3661583B2 - アクリル樹脂組成物、これを用いた塗装フィルム成形樹脂板及び太陽電池パネル用表面被覆材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル樹脂組成物、これを用いた塗装フィルム成形樹脂板及び太陽電池パネル用表面被覆材に係り、更に詳細には、有機シリコーン系化合物配合のアクリル樹脂組成物、塗装フィルム成形樹脂板及び太陽電池パネル用表面被覆材に関する。
かかるアクリル樹脂組成物は、自動車外板用の塗装フィルム用クリアーや、ウインカー、テールランプ、フィニッシャー等の外装部品、クラスターフィニッシャー、メーターフード等の内装部品、またガラス部品全般の表面被覆等に利用されることが期待される。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車の外形の大部分を占める外板は、外観上重要な部品であり、成形性良好な樹脂製にすると鋼板よりも形状自由度が大きくなることや、近年の省エネルギー、軽量化と安全性向上等の社会的要請に応えるため、樹脂製外板を採用する例が増加している。
【0003】
また、太陽電池の表面被覆材は、透明性、耐候性、防湿性、剛性等、多くの機能が要求される。このような要求に応えるため、従来はガラスやフッ素樹脂に代表される透明樹脂材が多く用いられてきた。特に透明樹脂材は、ガラスに比べ、可撓性、耐衝撃性に優れ、また大幅な軽量化が可能であり、近年ますます利用される傾向にある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、自動車用外板は外観品質の要求が極めて高いため、塗装は、鋼板と同時に高温焼き付けを行うのが主流であり、このため塗装工場が必要となり、多額の投資が必要となるという課題があった。また、樹脂製外板をリサイクルする場合に、加熱硬化した塗装膜を剥離する工程が必要となり、この工程にも多額の投資が必要となる。
【0005】
最近になり、上記の課題を解決するために、焼き付け塗装に代わる、塗装代替え用の着色フィルム、即ち塗装フィルムが使用されるようになり、一部の自動車のサイドモール等にも採用されている。
【0006】
しかし、このような従来の塗装フィルムでは、ガソリンスタンドなどに設置されている自動洗車装置を使用すると、塗装フィルムの表面に洗車時のブラシや車体外板上のダスト等による傷が付き、洗車装置の使用頻度の増加によって目視による傷の判別が可能となり、外観に不満が生じる場合が起こりうるという課題があった。
【0007】
また、従来の塗装フィルムの材料構成は、着色層の上層にクリアー層があり、このクリアー層は、熱可塑性アクリル樹脂が一般に用いられており、このアクリル樹脂の耐傷付き性の改良のため、アクリル樹脂のガラス転移温度を上げる改良、あるいは、フッ素樹脂を混合する方法などが試みられてきた。
例えば、特開昭63−123469号公報及び特開昭63−120640号公報には、ポリフッ化ビニリデン/アクリルのアロイが開示され、また特表平02−503077号公報では、フッ素化ポリマー(ポリフッ化ビニリデン)70%以下とアクリル樹脂約50%以下のアロイでできているクリアー層が開示されている。
これらはいずれも、洗車時の耐傷付き性の不足により、上述のように、洗車装置の使用頻度の増加によって目視による傷の判別が可能となり、外観に不満が生じる場合が起こりうるという問題があり、フェンダーなどの外板に採用される性能を満足するところには到達していないという課題があった。
【0008】
また、透明無機化合物の微粒子をアクリル樹脂に混合して、塗装フィルムの摩擦性、硬度、耐擦傷性を向上させる試みがなされているが、単純に分散混合させるだけでは、これらの十分な向上を図ることができないという課題があった。
【0009】
更に、従来の太陽電池の表面被覆材に使用されていた透明樹脂材は、耐傷つき性が不十分なため、長期間の使用や清掃による傷付きの問題、つまり、表面の傷の増加に伴い光の透過率が減少し、更に傷によって汚れの付着頻度も増加するため、変換効率が著しく低下してしまうという課題があった。また、外観上も美観に劣るという課題があった。更に、上記透明樹脂材に傷が付くことにより、空気中の粉塵や油分といった汚れが付着しやすくなり、また付着した汚れを除去しにくいという課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗装フィルムのクリアー層や太陽電池パネル用表面被覆材の耐傷付き性を向上させ、かつ、長期間の使用による傷や汚れによって光線透過率を低減することなく、摩擦性、擦傷性、表面硬度、防汚性や外観の美観を向上することができるアクリル樹脂組成物、これを用いた塗装フィルム成形樹脂板及び太陽電池パネル用表面被覆材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、特定の有機シリコーン系化合物を添加して、更には末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加してアクリル樹脂を合成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明のアクリル樹脂組成物は、アクリル樹脂に、有機シリコーン系化合物を含有させて成るアクリル樹脂組成物であって、
上記有機シリコーン系化合物は、次の一般式(1)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中のRはアルキル基、Meはメチル基を示す)で表され、片方の末端に二重結合を有してアクリルモノマー又はメタクリルモノマーと共重合又は混合可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他のアクリル樹脂組成物は、アクリル樹脂に、有機シリコーン系化合物を含有させて成るアクリル樹脂組成物であって、
上記有機シリコーン系化合物は、次の一般式(2)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中のRはアルキル基、R’はアルキレン基、Meはメチル基を示す)で表され、両末端に二重結合を有してアクリルモノマー又はメタクリルモノマーと共重合又は混合可能であることを特徴とする。
【0019】
更にまた、本発明の他のアクリル樹脂組成物は、アクリル樹脂に、有機シリコーン系化合物を含有させて成るアクリル樹脂組成物であって、
上記有機シリコーン系化合物は、次の一般式(3)
【0020】
【化6】
【0021】
(式中のRはアルキル基、R’はアルキレン基、Meはメチル基を示す)で表され、片方の末端に水酸基を有してアクリルモノマー又はメタクリルモノマーと共重合又は混合可能であることを特徴とする。
【0023】
次に、本発明のアクリル樹脂組成物を用いた塗装フィルム成形樹脂板は、アクリル樹脂組成物をクリアー層として有する塗装フィルムと樹脂基材とをインサート成形により一体成形して成ることを特徴とする。
【0024】
更に、本発明のアクリル樹脂組成物を用いた太陽電池パネル用表面被覆材は、太陽電池の受光面側に被覆して用いられる太陽電池パネル用表面被覆材であって、アクリル樹脂組成物を用いて成るクリアー層であることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアクリル樹脂組成物について詳細に説明する。
なお、「%」は特記しない限り、質量百分率を示す。
上述の如く、本発明のアクリル樹脂組成物は、アクリル樹脂に有機シリコーン系化合物を含有して成る。
【0026】
この有機シリコーン系化合物は、アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合又は混合可能であり、アクリル樹脂合成時にアクリルに含有させることにより、アクリル樹脂の摩擦特性を改良できる。
【0027】
アクリルモノマー又はメタクリルモノマーと共重合可能な上記有機シリコーン系化合物としては、次の一般式(1)
【0028】
【化7】
【0029】
(式中のRはアルキル基、Meはメチル基を示す)で表され、片方の末端に二重結合を有するものが好ましい。
【0030】
上記一般式(1)で表される上記有機シリコーン系化合物は、反応性を有する片末端二重結合タイプであって、具体的には、例えば上記アルキル基がメチル基の場合には、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランとなる。
【0031】
また、他の片末端二重結合タイプの具体例としては、次の一般式(4)
【0032】
【化8】
【0033】
(式中のRはアルキル基、Meはメチル基を示す)で表されるものであってもよく、例えばアルキル基がn−ブチルの場合には、α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンとなる。
【0034】
また、他のアクリルモノマー又はメタクリルモノマーと共重合可能な上記有機シリコーン系化合物としては、次の一般式(2)
【0035】
【化9】
【0036】
(式中のRはアルキル基、R’はアルキレン基、Meはメチル基を示す)で表され、両末端に二重結合を有するものでもよい。
【0037】
上記一般式(2)で表される上記有機シリコーン系化合物は、反応性を有する両末端二重結合タイプであって、例えば上記アルキル基がメチル基の場合には、α,ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンとなる。この分子構造は、次式(5)
【0038】
【化10】
【0039】
(式中のMeはメチル基を示す)で表される。
これらをアクリル樹脂の重合過程中に混合すれば、アクリル樹脂と共重合をして、アクリル樹脂の摩擦特性が改良でき、擦傷性を向上させることができる。
【0040】
更に、上記一般式(2)で表される有機シリコーン系化合物は、n=8〜130であって、数平均分子量が1000〜10000である。
nが8未満であると、フィルムが硬くなり、脆くなる。130を超えると、フィルムが軟らかくなり、傷付いてしまう。また、数平均分子数が1000未満になると、上記同様、フィルムが硬くなり脆くなる。10000を超えてもフィルムが軟らかくなり、傷付いてしまう。
【0041】
また、アクリルモノマー又はメタクリルモノマーと混合可能な上記有機シリコーン系化合物としては、次の一般式(3)
【0042】
【化11】
【0043】
(式中のRはアルキル基、R’はアルキレン基、Meはメチル基を示す)で表され、片方の末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0044】
上記一般式(3)で表される上記有機シリコーン系化合物は、反応性を有する片末端水酸基タイプであって、例えば上記アルキル基がメチル基の場合には、α−(3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサンとなる。 この分子構造は、次式(6)
【0045】
【化12】
【0046】
(式中のRはアルキル基、Meはメチル基を示す)で表される。
これをアクリル合成時に混合すれば、アクリル樹脂の摩擦特性を改良し、擦傷性を向上することができる。
【0047】
また、上記一般式(3)で表される有機シリコーン系化合物は、n=10〜130であって、数平均分子量が1000〜10000である。
nが10未満であると、フィルムの表面から溶出してしまう。130を超えると、フィルムが軟らかくなり、傷付いてしまう。また、数平均分子数が1000未満になると、上記同様、フィルムの表面から溶出してしまう。10000を超えてもフィルムが軟らかくなり、傷付いてしまう。
【0048】
更に、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される有機シリコーン系化合物の共重合又は混合比率は、アクリルモノマーに対して1〜30%であることが好ましいが、1〜10%であることが更に好ましい。
1%未満では効果が小さく、30%を超えるとフィルムが軟らかくなりすぎ、傷付きやすくなり、好ましくない。また10%を超えないことがより一層好ましいのは、フィルムの硬度が良好で耐傷付き性もよいからである。
【0049】
また、アクリル樹脂組成物の表面硬度を更に改良するには、透明性を確保することも考慮し、直径が可視光線波長380nm以下の微粒子を、アクリル樹脂の重合過程中に分散混合することが有効であり、具体的には、透明無機混合物であるチタニアやジルコニアが挙げられる。これらのシリカ微粒子は可視光線波長以下とし、形状は球形、板状、針状のいずれでもよいが、特に5nm〜20nmが分散性良好で、ナノオーダーでの複合が可能であるが、これら微粒子をアクリル樹脂合成中に単に分散混合しただけでは、十分に満足できる表面硬度を得ることは困難である。
【0050】
本発明のアクリル樹脂組成物の摩擦性、硬度及び耐擦傷性をより一層向上させるためには、上記シリカ微粒子とアクリル樹脂との界面の結合力を更に増加することが好ましい。
アクリル樹脂との界面の結合力を増加させたシリカ微粒子としては、例えば、シリカ表面に水酸基又はメチル基が結合したシリカ微粒子が挙げられ、他のものと比べてアクリルとの相互作用があり、表面硬度を向上させるのに有効である。
【0051】
上記アクリル樹脂との界面の結合力を増加させたシリカ微粒子の具体例としては、シリカの表面に水酸基のついた、シラノール基(=Si−OH)のタイプ(AEROSIL 300、粒径7nm:日本アエロジル)が挙げられる。
このシリカ微粒子と、次式(7)
【0052】
【化13】
【0053】
で表される、末端アクリレートのチタン系カップリング剤(チタントリアクリレートイソプロポキサイド:ATK877チッソ(株))とを加水分解を伴わずに一段階で反応させると、上記シリカ微粒子の表面にアクリレート基が化学結合する。
この反応は、次式(8)
【0054】
【化14】
【0055】
で表される。
また、このシリカ微粒子の表面に末端アクリレート基をつけた化合物は、次式(9)
【0056】
【化15】
【0057】
で表される。
【0058】
上記シリカ微粒子の表面についた上記アクリレート基は、アクリルモノマー又はメタクリルモノマーと反応するので、シリカの表面にアクリル重合体を結合させることができる。
この反応は、次式(10)
【0059】
【化16】
【0060】
で表すことができる。
なお、該反応については、室井、石村共著の入門エポキシ樹脂(高分子刊行会)p129及びKenrich Co.,Bulletin No.KR−0975−2に記載されている。
上記式(10)の反応で得られた重合物を、アクリル樹脂合成時に溶融混合又は溶液混合すれば、表面硬度が向上したアクリル樹脂組成物が得られる。
【0061】
更に、上記表面に末端アクリレート基を付けたシリカ微粒子に、反応性を有する上記有機シリコーン系化合物を結合させて、アクリル樹脂に混合すれば、該アクリル樹脂の破壊強度、強靱性を向上することができる。
【0062】
即ち、アクリル樹脂の重合過程において、反応性の上記有機シリコーン系化合物の具体例として上述した、上記片末端二重結合タイプである3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、または、α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンを、上記表面に末端アクリレート基を付けたシリカ微粒子と反応させると、それぞれ次式(11)又は(12)
【0063】
【化17】
【0064】
(式中のRはアルキル基、Meはメチル基を示す)、
【0065】
【化18】
【0066】
(式中のMeはメチル基を示す)で表される化合物が得られる。
上記式(11)又は(12)で得られたこれらの化合物をアクリルと共重合させれば、アクリル樹脂の破壊強度、強靱性がより一層向上し、摩擦特性の改良によって、擦傷性を向上させることができる。
【0067】
更にまた、アクリル樹脂の重合過程において、上記有機シリコーン系化合物の具体例として挙げた、次式(13)
【0068】
【化19】
【0069】
(式中のRはアルキル基、Meはメチル基を示す)で表される、片末端水酸基タイプ(α−(3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン)と、上記表面に末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子とを混合し、アクリルと更に混合することによっても、同様にアクリル樹脂の破壊強度、強靱性が向上し、摩擦特性の改良により、擦傷性を向上させることができる。
図1に、本発明のアクリル樹脂組成物の一実施例である上記有機シリコーン系化合物と上記シリカ微粒子とを重合したアクリル樹脂の模式図を示した。
【0070】
なお、上記アクリル樹脂と有機シリコーン系化合物の重合反応は、懸濁重合、溶液融合、乳化重合、塊状重合のいずれでもよい。
【0071】
次に、本発明のアクリル樹脂組成物を用いた塗装フィルム成形樹脂板を詳細に説明する。
上述の如く、本発明のアクリル樹脂組成物を用いた塗装フィルム成形樹脂板は、上記アクリル樹脂組成物をクリアー層として有する塗装フィルムと樹脂基材とを積層して成り、これらをインサート成形により一体成形して成る。
上記アクリル樹脂組成物は透明であるので、例えば自動車外板用の塗装フィルム用クリアーとして利用でき、着色層に被覆しても透明樹脂の光線透過率を低減することがなく、これを被覆した樹脂外板の光沢、摩擦性、擦傷性や表面硬度を向上することができる。
【0072】
また、上記塗装フィルムは、上記クリアー層と着色層とバッキング材層とから成り、一体成形されていることが好ましい。
図2に、本発明の塗装フィルム成形樹脂板の一実施例である樹脂外板の断面図を示す。
また、上記塗装フィルムは、上記クリアー層、アクリル着色層、バッキング材の順に積層し、溶融多層押出フィルム成形又は熱ラミネート成形してもよいし、また上記クリアー層、着色フィルム、バッキング材の順に積層して熱ラミネート成形によって製膜してもよい。
【0073】
次に、本発明のアクリル樹脂組成物を用いた太陽電池パネル用表面被覆材について詳細に説明する。
本発明の太陽電池パネル用表面被覆材は、上記アクリル樹脂組成物をクリアー層として、太陽電池の受光面側に被覆して用いられる。これにより、表面の耐傷つき性を向上させ、また上記アクリル樹脂組成物は撥水性、撥油性にも優れるので、長期間の使用による傷付きや汚れの付着が減少し、光線透過率の低下を防止でき、初期の発電効率を維持することができる。
【0074】
また、上記太陽電池パネル用表面被覆材は、上記太陽電池の受光面のみを被覆して用いれば十分に上記の効果を得ることができるが、該太陽電池の裏面にも用いてもかまわない。つまり、該太陽電池が上記アクリル樹脂組成物中に埋設されていても、上記の効果を発揮することができる。
なお、上記太陽電池は、素子がむき出しの、いわゆるセルの形態でもよいし、PETフィルムやEVAシート等に代表される樹脂材に被覆された、いわゆるモジュールの形態でもよく、太陽電池の形態については特に限定されることはない。
【0075】
また、上記太陽電池の受光面に、接着層及び/又は軟質層を積層し、上記アクリル樹脂組成物を更に積層してもよい。上記アクリル樹脂組成物単独では太陽電池の表面の材質との接着性が低い場合に、上記接着層を介することにより、十分な剥離強度を確保することができる。また、上記軟質層を介することにより、上記アクリル樹脂組成物と太陽電池の線膨張係数の差異に起因する熱変形応力による太陽電池素子の破壊を防止することができる。
【0076】
上記接着層としては、例えばポリウレタン系、エポキシ系、シリコーン系やアクリル系などの接着剤が挙げられ、被接着面の材質に合わせて適宜選択できる。
上記軟質層としては、例えばアクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンビニルアセテート、ポリビニルブチラールや各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、上記アクリル樹脂組成物よりも弾力性の低い材料の中から適宜選択できる。
更に、接着層と軟質層とを、例えばアクリル樹脂組成物/接着層/軟質層/接着層/太陽電池受光面の順のように、複数かつ重複して積層することも可能である。
【0077】
上記太陽電池の受光面に上記アクリル樹脂組成物をクリアー層として被覆するには、該アクリル樹脂組成物をフィルム状又はシート状に成形しておき、これを上記太陽電池の受光面に直接被覆するか、又は上記接着層及び/若しくは軟質層を介して積層することが好ましい。
具体的な方法としては、上記アクリル樹脂組成物のフィルム又はシートを、上記太陽電池の受光面に直接に被覆し、又は上記接着層及び/若しくは軟質層を介して被覆した後、熱をかけながらプレスやロールで圧着するいわゆる熱ラミネート方式が挙げられる。
上記太陽電池の受光面側にのみ上記フィルム又はシートを被覆してもよいし、2枚の上記フィルム又はシートに上記太陽電池を挟み込んでもよい。
【0078】
また、他の被覆方法としては、上記太陽電池を型内に配置した後、上記アクリル樹脂組成物を型内に充填することにより、上記太陽電池の受光面側を被覆してもよい。更に、上記太陽電池の受光面側に上記接着層及び/若しくは軟質層を積層してから型内に配置し、上記アクリル樹脂組成物を充填してもよい。
具体的な方法としては、成形型のコア面に太陽電池の裏面が接触するように配置し、型締めした後、型内に溶融させた上記アクリル樹脂組成物を射出充填するいわゆるインサート成形方式が挙げられる。溶融させた上記アクリル樹脂組成物の代わりに、略球状で平均粒径1〜100μmのアクリル樹脂組成物の粉末を充填して型全体を溶融温度まで加熱した後、冷却してもよい。この場合、該太陽電池を型に接触しないように宙吊り状態で固定すれば、上記アクリル樹脂組成物中に該太陽電池を埋設することができる。
【0079】
上述のように、本発明のアクリル樹脂組成物を、塗装フィルム成形樹脂板のクリアー層として、又は太陽電池パネル用表面被覆材として用いれば、光沢、摩擦性、擦傷性や表面硬度が向上するのみならず、耐傷付き性も向上し、傷への汚れの付着頻度が低下し、汚れが付着しても除去しやすく、特に、上記有機シリコーン系化合物配合のアクリル樹脂組成物が有する撥水性、撥油性によって、傷の有無に関わらず、防汚性を向上させることができる。
【0080】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
[アクリル樹脂組成物の評価方法]
摩擦性、即ち滑り易さの優劣は、表面性測定機(新東科学(株)製HEIDON 14DR)を使用し、試験片の上に、底面積の綿布にダスト(JIS8号)23%水溶液を1cc付け、定荷重をのせ、水平移動開始力を測定し、移動開始力の大小で、現用アクリル樹脂と相対比較し、相対値により評価した。
【0082】
擦傷性、即ち摩擦による傷付き難さの優劣は、表面性測定機(新東科学(株HEIDON 14DR)を使用し、試験片の上に、定面積にダスト(JIS8号)23%水溶液を1cc付け、これに定加重をのせ、定速度で、一定回数繰り返し反復し、摩擦後の試験片をヘイズ計(HM−65 村上色彩研究所製)でヘイズを測定し、ヘイズ値の大小で、現用アクリル樹脂と相対比較し、相対値により評価した。
【0083】
硬度は、ロックウエル硬度計(Mスケール)を使用して、現用アクリル樹脂と相対比較し、相対値により評価した。
【0084】
透明性はヘイズ計(HM−65 村上色彩研究所製)を使用して、全光線透過率を求め、現用アクリル樹脂と相対比較し、相対値により評価した。
【0085】
(実施例1)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端2重結合有機シリコーン(サイラプレーンTM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端二重結合有機シリコーンの組成比率99/1を得た。次に95/5を得て、つづいて90/10の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
(実施例2)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に両末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーンFM−7711(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合有機シリコーンの組成比率99/1を得た。次に95/5を得て、つづいて90/10の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
(実施例3)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端水酸基の有機シリコーン(サイラプレーンFM−0411(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機シリコーンの組成比率99/1を得た。次に95/5を得て、つづいて90/10の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
(実施例4)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーンTM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径10〜20nmのシリカ微粒子(スノーテックス MEK−ST(日産化学))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端二重結合有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率90/5/5を得た。次に85/5/10を得て、つづいて80/5/15の組成物を得た。
更に、アクリル樹脂/片末端二重結合有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率85/10/5を得た。次に、80/10/10を得て、つづいて75/10/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる6種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
(実施例5)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に両末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーンFM−7711(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径10〜20nmのシリカ微粒子(スノーテックス MEK−ST(日産化学))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率90/5/5を得た。次に85/5/10を得て、80/5/15の組成物を得た。
更に、アクリル樹脂/両末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率85/10/5を得た。次に80/10/10を得て、75/10/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる6種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
(実施例6)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端水酸基の有機シリコーン(サイラプレーンFM−0411(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径10〜20nmのシリカ微粒子(スノーテックス MEK−ST(日産化学))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機雪シリコーン/シリカ微粒子の組成比率90/5/5を得た。次に85/5/10を得て、つづいて80/5/15の組成物を得た。
つづいて、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率85/10/5を得た。次に80/10/10を得て、つづいて75/10/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる6種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表6に示す。
【0096】
【表6】
【0101】
(実施例7)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーンTM−0701(チッソ(株)製))を滴下しながら重合反応させ、同時に徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの上記末端アクリレート基のついたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端二重結合有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率90/5/5を得た。次に85/5/10を得て、つづいて80/5/15の組成物を得た。
更に、アクリル樹脂/片末端二重結合有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率85/10/5を得た。次に80/10/10を得て、つづいて75/10/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比異なる6種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表9に示す。
【0102】
【表9】
【0103】
(実施例8)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に両末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーンFM−7711(チッソ(株)製))を滴下しながら重合反応させ、同時に徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの上記末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率90/5/5を得た。次に85/5/10を得て、80/5/15の組成物を得た。
続いて、アクリル樹脂/両末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率85/10/5を得た。次に80/10/10を得て、75/10/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる6種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表10に示す。
【0104】
【表10】
【0105】
(実施例9)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端水酸基の有機シリコーン(サイラプレーンFM−0411(チッソ(株)製))を滴下しながら重合反応させ、同時に徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの上記末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率90/5/5を得た。次に85/5/10を得て、80/5/15の組成物を得た。
続いて、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率85/10/5を得た。次に80/10/10を得て、75/10/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる6種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表11に示す。
【0106】
【表11】
【0107】
以上、いずれの実施例についても、透明性良好で、アクリル樹脂単独のものに比べ、摩擦性及び擦傷性の向上が見られた。
【0108】
(参考例1)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン TM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端二重結合の有機シリコーンの組成比率70/30を得た。次に60/40の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成の異なる2種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表1に示す。
【0109】
(参考例2)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に両末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン FM−7711(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合の有機シリコーンの組成比率70/30を得た。次に60/40の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成の異なる2種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表2に示す。
【0110】
(参考例3)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端水酸基の有機シリコーン(サイラプレーン FM−0411(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機シリコーンの組成比率70/30を得た。次に60/40の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成の異なる2種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表3に示す。
【0111】
(参考例4)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン TM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径10〜20nmのシリカ微粒子(スノーテックスMEK−ST(日産化学))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率65/30/5を得た。次に60/30/10を得て、55/30/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表4に示す。
【0112】
(参考例5)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン FM−7711(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径10〜20nmのシリカ微粒子(スノーテックス MEK−ST(日産化学))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率65/30/5を得た。次に60/30/10を得て、つづいて55/30/15の組成物を得た。
これらの得られた樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表5に示す。
【0113】
(参考例6)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン FM−0411(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径10〜20nmのシリカ微粒子(スノーテックス MEK−ST(日産化学))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率65/30/5を得た。次に60/30/10を得て、つづいて55/30/15の組成物を得た。
これらの得られた樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表6に示す。
【0114】
(参考例7)
シリカの表面に水酸基のついた、シラノール基(=Si−OH)のタイプ(AEROSIL 300、粒径7nm:日本アエロジル)に末端アクリレートのチタン系カップリング剤(チタントリアクリレートイソプロポキサイド(上記分子式(7))AKT877(チッソ(株)製)を通常方法で化学反応(上記反応式(8))させ、シリカ表面にアクリレート基をつけた。
次に、メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの上記末端アクリレート基のついたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/シリカ微粒子の組成比率70/30と60/40の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる2種類の試験片を得た。
これらの試験片について、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表7に示す。
【0115】
(参考例8)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々にエチルケトン溶剤分散の粒径7nmのメチル基をつけたシリカ微粒子(AEROSIL R812)添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/シリカ微粒子の組成比率70/30と60/40の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる2種類の試験片を得た。
これらの試験片について、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表8に示す。
【0116】
(参考例9)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン TM−0701(チッソ(株)製))を滴下しながら重合反応させ、同時に徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率65/30/5を得た。次に60/30/10を得て、55/30/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表9に示す。
【0117】
(参考例10)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に両末端二重結合の有機シリコーン(サイラプレーン FM−7711(チッソ(株)製))を滴下しながら重合反応させ、同時に徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/両末端二重結合の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率65/30/5を得た。次に60/30/10を得て、55/30/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表10に示す。
【0118】
(参考例11)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端水酸基の有機シリコーン(サイラプレーン FM−0411(チッソ))を滴下しながら重合反応させ、同時に徐々にメチルエチルケトン溶剤分散の粒径7nmの末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端水酸基の有機シリコーン/シリカ微粒子の組成比率65/30/5を得た。次に60/30/10を得て、55/30/15の組成物を得た。
得られたこれらの樹脂組成物を乾燥して、加熱プレス成形して組成比の異なる3種類の試験片を得た。
これらの試験片について、摩擦性、硬度、擦傷性、透明性の現用アクリル樹脂との比較結果を表11に示す。
【0119】
以上、参考例1〜11については、いずれもアクリル樹脂単独のものに比べ、硬度及び透明性が不十分であり、擦傷性の向上は見られなかった。
また、参考例7については、透明性は良好で擦傷性についても向上が見られたが、アクリル樹脂単独のものに比べ、硬度向上の効果は小さかった。
【0120】
[太陽電池パネル用表面被覆材の評価方法]
耐傷付き性/防汚性の評価を以下の手順で行った。
まず、ソーラーシュミレーターにより光強度AM1.5相当の光を太陽電池パネル試験片に照射して短絡電流を測定し、各試験片の初期値とした。
次に、JIS試験用粉体12種50%、JIS試験用粉体8種50%を十分混合した粉体と、水を1:1の割合で混合した汚染溶液を一定面積の綿布に1cc付け、これを表面性測定機(新東科学(株)製HEIDON 14DR)に取り付け、試験片上で一定荷重、一定速度で摺動させた。一定回数繰り返し反復させた後、汚染溶液を付けた綿布を替え、同様に摺動させ、これを合計3サイクル行った。
評価後、短絡電流を測定し、初期値との比較から変換効率の低減率を算出した。
【0121】
(実施例10)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端2重結合有機シリコーン(サイラプレーンTM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端2重結合有機シリコーンの組成比率95/5の組成物を得た。これを乾燥し、加熱プレス成形して厚み約100μmのアクリル樹脂組成物のフィルム状成形品を得た。
次に、このフィルム状成形品をポリイミド上に製造されたアモルファスシリコン太陽電池モジュールの受光面に重ね、この積層体を加熱プレス成形して太陽電池パネル試験片を得た。
得られた太陽電池パネル試験片について耐傷付き性/防汚性の評価を行った結果を表12に示す。
【0122】
【表12】
【0123】
(実施例11)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端2重結合有機シリコーン(サイラプレーンTM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端2重結合有機シリコーンの組成比率95/5の組成物を得た。これを乾燥し、加熱プレス成形して厚み約100μmのアクリル樹脂組成物のフィルム状成形品を得た。
未架橋状態のアクリルゴム(Nipol AR32(日本ゼオン))をメチルエチルケトンに溶解した溶液を、ポリイミド上に製造されたアモルファスシリコン太陽電池モジュールの受光面にバーコーターを用いて塗布した後乾燥し、太陽電池受光面に軟質層を形成した。
次に、この軟質層面にアクリル樹脂組成物のフィルム状成形品を重ね、この積層体を加熱プレス成形して、本例の太陽電池パネル試験片を得た。
得られた太陽電池パネル試験片について耐傷付き性/防汚性の評価を行った結果を表12に示す。
【0124】
(実施例12)
メタクリル酸メチル100部に過酸化ベンゾイル0.5部を混合、90℃に加熱し、徐々に片末端2重結合有機シリコーン(サイラプレーンTM−0701(チッソ))を滴下しながら重合反応させて、約1時間後に凝固用溶剤エタノールで沈降させ、アクリル樹脂/片末端2重結合有機シリコーンの組成比率95/5の組成物を得た。これを粉砕、乾燥した後、押出し機とペレタイザーを用いて造粒した。
次に、ポリイミド上に製造されたアモルファスシリコン太陽電池モジュールを射出成形型のコア面にポリイミド側が接触するように固定し、型締めした後、型内に上述のアクリル樹脂組成物を射出し、太陽電池パネル試験片を得た。
得られた太陽電池パネル試験片について耐傷付き性/防汚性の評価を行った結果を表12に示す。
【0125】
(比較例1)
現用アクリル樹脂を加熱プレス成形して厚み約100μmのフィルム状成形品を得た。
次に、このフィルム状成形品をポリイミド上に製造されたアモルファスシリコン太陽電池モジュールの受光面に重ね、この積層体を加熱プレス成形して太陽電池パネル試験片を得た。
得られた太陽電池パネル試験片について耐傷付き性/防汚性の評価を行った結果を表12に示す。
【0126】
表12から明らかなように、実施例10〜12は、現用アクリル樹脂を用いた比較例1に比べ、変換効率の低減率が改善され、本発明のアクリル樹脂組成物を用いた被覆材の効果が認めれられた。
【0127】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特定の有機シリコーン系化合物を添加し、更には末端アクリレート基をつけたシリカ微粒子を添加してアクリル樹脂を合成することとしたため、塗装フィルムのクリアー層や太陽電池パネル用表面被覆材の耐傷付き性を向上させ、かつ、長期間の使用による傷や汚れによって光線透過率を低減することなく、摩擦性、擦傷性、表面硬度、防汚性や外観の美観を向上することができるアクリル樹脂組成物、これを用いた塗装フィルム成形樹脂板及び太陽電池パネル用表面被覆材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアクリル樹脂組成物の一実施例であるアクリル樹脂の模式図である。
【図2】本発明の塗装フィルム成形樹脂板の一実施例である樹脂外板の断面図である。
Claims (9)
- 請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のアクリル樹脂組成物をクリアー層として有する塗装フィルムと樹脂基材とをインサート成形により一体成形して成ることを特徴とする塗装フィルム成形樹脂板。
- 上記塗装フィルムは、上記クリアー層と着色層とバッキング材層とが積層し、一体成形して成ることを特徴とする請求項4記載の塗装フィルム成形樹脂板。
- 上記塗装フィルムが、溶融押出フィルム成形又は熱ラミネート成形により製膜されて成ることを特徴とする請求項5記載の塗装フィルム成形樹脂板。
- 太陽電池の受光面側に被覆して用いられる太陽電池パネル用表面被覆材であって、請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のアクリル樹脂組成物を用いて成るクリアー層であることを特徴とする太陽電池パネル用表面被覆材。
- 上記クリアー層が、フィルム状又はシート状であって、直接に又は接着層及び/若しくは軟質層を介して上記太陽電池に被覆されることを特徴とする請求項7記載の太陽電池パネル用表面被覆材。
- 太陽電池又は接着層及び/若しくは軟質層を積層した太陽電池を型内に配置し、請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のアクリル樹脂組成物を充填して該太陽電池を被覆したことを特徴とする太陽電池パネル。
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