JP3659772B2 - バッテリの劣化判定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車のバッテリの劣化度合いの判定に用いて好適の、バッテリの劣化判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車ではバッテリの充電,放電を繰り返しながら走行を行なうが、バッテリは充電,放電の繰り返しにより劣化して最大蓄電容量が減少していき、充電一回当たりの走行距離も最大蓄電容量の減少とともに低下していくので、バッテリの劣化は電気自動車の走行性能に大きく影響することになる。
【0003】
従って、劣化が進み最大蓄電容量が減少したバッテリを適切な時期に交換することは、電気自動車の走行性能を保つ上で極めて重要であるが、このためにはバッテリの劣化の度合いをどのようにして判定するかが問題となる。
そこで、従来より、バッテリの劣化判定を行なうための様々な判定装置が提案され利用されているが、その代表的な例として以下のようなものがある。
【0004】
最も簡単な判定装置としては、電気自動車の走行距離の減少に着目したものである。つまり、通常、バッテリを満充電してからバッテリの残存容量が所定値に低下するまで電気自動車の走行を行なうことができるが、この間の走行距離が減少したら、バッテリが劣化したと判定するのである。つまり、バッテリが劣化すると、バッテリの最大蓄電容量が低下するため、走行距離も減少するので、この点に着目してバッテリの劣化を判定するのである。
【0005】
また、例えば3か月点検等の際にバッテリを電気自動車の車体より下ろして、組電池としてのバッテリを構成する各単電池毎に電圧,内部抵抗を測定して、各電池間の測定結果のバラツキが大きければ劣化と判定する装置もある。さらに、特開平7−72225号公報には、内部抵抗値を算出してこの算出値からバッテリの劣化を判定する装置が開示されている。なお、この内部抵抗の測定には、直流電流により内部抵抗を測定する方法(直流法)と、交流電流により内部抵抗を測定する方法(交流法)とが存在する。
【0006】
さらには、バッテリの温度上昇を検出して温度上昇の度合いによりバッテリの劣化の度合いを判定する判定法もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のバッテリの劣化判定装置では、それぞれ以下に示すような課題があった。
まず、走行距離の減少具合によりバッテリの劣化を判定する判定装置では、走行距離は走行パターンにより大きく変化するため客観的なバッテリの劣化判断をすることは難しい。
【0008】
また、電池毎に電圧,内部抵抗を測定して、各電池間の測定結果のバラツキにより劣化判定をする判定法の場合は、各電池毎に測定をする必要があるため判定に非常に時間がかかる。さらに、直流法で内部抵抗を測定する場合には、得られる測定結果は単なる目安でしかなく正確な内部抵抗を測定又は算出することはできない。また、交流法で内部抵抗を測定する場合には、電池の種類毎の適正周波数の交流電流を加える必要があるが、このような適正周波数を見つけることは簡単ではない。また、交流法による検出抵抗値は小さいため、高精度で高価な測定器が必要となり実用的ではない。
【0009】
そして、バッテリの温度上昇により劣化判定をする判定装置では、バッテリの温度は外気温度,バッテリ冷却のアンバランス等の影響も受けているため、必ずしも温度上昇が劣化に関与しているとは判断することはできず、正確な劣化判定をすることができない。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、バッテリの劣化の度合いを客観的にかつ正確に判定可能にした、バッテリの劣化判定装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明のバッテリの劣化判定装置では、充電電流を一定電流として充電を行なった時のバッテリの端子電圧を電圧検出手段により検出し、この端子電圧が第1の電圧から第2の電圧に達するまでの充電時間をタイマで検出して、劣化判定手段によりこのタイマが検出した充電時間からバッテリの劣化度合いを判定する。
【0011】
請求項2記載の本発明のバッテリの劣化判定装置では、充電電流を一定電流として充電を行なった時のバッテリの端子電圧を電圧検出手段により検出し、同時に充電時のバッテリの温度を温度検出手段により検出して、端子電圧が所定の端子電圧に達してからバッテリの温度上昇速度が所定の速度に達するまでの充電時間をタイマで検出して、劣化判定手段によりこのタイマが検出した充電時間からバッテリの劣化度合いを判定する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、図1〜図8は本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置を示すものであり、図9〜図11は本発明の第2実施形態としてのバッテリの劣化判定装置を示すものである。
【0013】
まず、本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置の構成について説明すると、図2は本バッテリの劣化判定装置を電気自動車のバッテリ充電に適用した場合のシステム構成図である。図2に示すように、本バッテリの劣化判定装置は、充電装置1にそなえられた電圧検出手段2,電流検出手段3,劣化判定手段4,記憶手段5,タイマ6,制御手段7と、電気自動車11にそなえられた温度センサ13とにより構成されている。
【0014】
充電装置1と電気自動車11とは、互いのコネクタ18,19を接続することにより接続されるようになっており、充電装置1にそなえられたプラグ17を図示しないACコンセント(一般の商用電源)に接続して得られた電流がサイリスタ8により電圧・電流調整され、バッテリ12に充電されるようになっている。この電圧・電流の調整量は操作パネル10により設定できるようになっており、制御手段7を介してサイリスタ8を調整するようになっている。なお、電気自動車11の走行時にはバッテリ12からモータ制御装置14へ電源が供給され、モータ制御装置14はインバータ15を介してモータ16の駆動制御をするようになっている。
【0015】
電圧検出手段2,電流検出手段3は、このサイリスタ8からバッテリ12への充電回路上に設けられ、電圧検出手段2は充電時のバッテリ12の端子電圧を検出し、電流検出手段3は充電時のバッテリ12の充電電流を検出して制御手段7に入力するようになっている。また、バッテリ12にはバッテリの12の外表面温度を検出する温度センサ13がそなえらえており、この温度センサ13により得られた温度情報も制御手段7に入力されるようになっている。
【0016】
制御手段7に入力されたこれらの端子電圧,充電電流,温度の各情報は劣化判定手段4に入力されるようになっている。そして、劣化判定手段4ではこれらの各情報とタイマ6より入力された計測時間情報とから得られるバッテリ12の充電特性を、記憶手段5に記憶されている劣化測定用の充電特性と比較することによりバッテリ12の劣化の度合いを判定するようになっている。
【0017】
ここで、劣化判定に利用されるバッテリの充電特性について詳細に説明する。まず、一般的なバッテリの充電特性について説明すると、図3は、充電開始時の残存容量が零の場合における充電時間に対する電圧,電流,及び容量の変化を示すグラフである。
図3に示すように、バッテリの充電時には、まずは、充電電流Aが一定値AC で推移するように制御しながら定電流充電を行なう。この定電流充電は、充電に伴って上昇するバッテリの端子電圧が所定レベルに達するまで行なわれる。つまり、この定電流充電では、端子電圧Vは充電開始から時間とともに上昇していき、それに伴い電気量Qも増加して行く。そして、端子電圧Vはバッテリの設定電圧VC に達したら、充電時の電圧Vを一定値VC に制御しながら定電圧充電を行なう。この例では、定電流充電により電気量Qが定格容量QF の80%程に達している。
【0018】
この定電圧充電では、充電電流Aは時間とともに減少していき、電気量Qは時間とともに緩やかに増加して行く。そして、やがて充電電流Aがある一定レベルAF 以下の値に低下したところで、電気量Qがほぼ定格QF になったとみなして充電を停止する。
このように、バッテリの充電時には、まず、定電流充電を行ない、次に、定電圧充電を行なっているが、ここで定電流充電を行なう時間に着目してみると、この定電流充電はバッテリ端子電圧Vが設定値VC に達するまで行なわれるが、この端子電圧Vが設定値VC に達するまでの時間はバッテリの容量に応じたものになり、例えば、バッテリの定格容量が小さければ、同電流で充電した場合、端子電圧Vが設定値VC に達するまでの時間(即ち、定電流充電時の電圧上昇速度)は速くなる。
【0019】
これはバッテリの劣化により最大容量が低下したときも同様であり、図4に示すように、バッテリの劣化にともない定電流充電時の電圧上昇速度も速くなる。本装置では、このようにバッテリの充電特性がバッテリの劣化にともない変化していくことを利用してバッテリ劣化を判定する。つまり、このバッテリの劣化に対するバッテリの充電特性の変化は図4に示すように一対一対応する。そこで、あらかじめ劣化したバッテリの充電特性を記憶しておき、実際のバッテリの充電特性と比較することにより、バッテリの劣化の判定が可能になる。
【0020】
ところで、図3に示すバッテリの充電特性は充電開始時に残存容量が零の場合について示しているが、常にバッテリが最後まで使い切られているとは限らず、むしろ、通常はバッテリにある程度容量が残存している状態で充電を行なうものである。この場合、図5に示すように、充電開始時の残存容量が大きいほど(Q1 <Q2 )端子電圧も高くなり(V1 <V2 )見かけの定電流充電時間は短くなる(t1 >t2 )。しかし、同じバッテリなら定電流充電時の端子電圧の上昇速度、即ち、図5の電圧上昇線の傾きは等しくなる。
【0021】
そこで、本装置では、図1に示すように、バッテリの端子電圧が、予め設定された第1の電圧値V1 から第2の電圧値V2 まで達するのに要する充電時間ttをタイマ6で検出して、この充電時間ttに基づいてバッテリの劣化を判定している。
なお、一般にバッテリの充電を行なうのは、バッテリの残存容量がある程度まで減少した場合であるが、バッテリの残存容量が0に近い状態まで減少した状態でバッテリの充電を行なうのは稀であり、通常は、残存容量が満充電時の数十パーセント(例えば30パーセント)程度まで減少した場合と考えられる。そこで、バッテリの充電開始に定電流充電を開始すると、バッテリ端子電圧は、このようなバッテリの残存容量状態(例えば満充電容量の30パーセント)に応じた電圧値Vsから上昇していくことになる。
【0022】
そこで、第1の電圧値V1 は、このようにバッテリの充電開始時に想定される残存容量に応じた電圧値Vsよりもやや高い電圧値に設定することが好ましい。これにより、通常の充電時に常にバッテリの劣化を判定することができるのである。
また、第2の電圧値V2 は、定電流充電の完了基準となる電圧値(即ち、定電圧充電の電圧値)Vc又はこの電圧値Vcよりもやや低い電圧値に設定することが好ましい。これにより、第1の電圧値V1 と第2の電圧値V2 との差を十分に確保することができ、バッテリの劣化判定の精度を高めることができる。
【0023】
ところで、定電流充電時の端子電圧の上昇速度は、バッテリの劣化によるもの以外に、様々な変動パラメータによる影響が含まれている。そこで、本装置では、端子電圧VがV1 からV2 に達するまでの時間ttについて、以下に示すような各パラメータに応じた補正を行ない、劣化判定に用いるようにしている。
まず、バッテリには温度が高いほどバッテリ12の設定電圧Vcに達する充電時間が短くなり、温度が低いほど充電時間が長くなる充電特性があるため、図6に示すように、温度の変化にともないバッテリの充電特性が変化する。したがって、予め温度と充電特性との関係についての補正データを入力しておき、充電時のバッテリの温度を検出して充電特性に補正を掛ける必要がある。
【0024】
さらに、図7に示すように、充電電流の増大(Ia >Ib >Ic )にともない定電流域充電時間に達する時間は短くなる(ta <tb <tc )。したがって、予め充電電流と充電特性との関係についての補正データを入力しておき、定電流時の充電電流を検出して充電特性に補正を掛ける必要がある。
そこで、本装置では、第1の電圧値V1 から第2の電圧値V2 までに要する充電時間ttを、このようなバッテリ温度TB 及び定電流充電時の電流値AC に応じて補正し、補正した充電時間ttC を、予め記憶されている充電時間特性値と比較することで、劣化を判定している。
【0025】
なお、バッテリ温度TB に対応した補正は、例えば図8(A)に示すように、バッテリ温度TB の上昇に伴って増加する補正係数(温度対応補正係数)CT を充電時間ttに乗算することで、定電流充電時の電流値AC に対応した補正は、例えば図8(B)に示すように、充電電流値AC の上昇に伴って増加する補正係数(電流対応補正係数)CA を充電時間ttに乗算することで、それぞれ行なうことができる。
【0026】
本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置は上述のごとく構成されているので、バッテリ12の充電が開始されると、制御手段7は電流検出手段3,電圧検出手段2,温度センサ13によりそれぞれ充電電流A,バッテリ12の端子電圧V,バッテリ温度TB を検出する。そして、サイリスタ8を介して充電電流Aが一定値AC で推移するように調整して定電流充電を行ない、端子電圧Vが第1の電圧値V1 に達するとタイマ6を作動して第2の電圧値V2 に達するまでの充電時間ttを検出する。
【0027】
制御手段7により検出されたこれらの充電時間tt,定充電電流値AC ,バッテリ温度TB の情報は劣化判定手段4に入力され、劣化判定手段4では、充電時間ttをバッテリ温度TB 及び定充電電流値AC に応じて補正し、補正した充電時間ttC を、記憶手段5に予め記憶されている充電時間特性値と比較することでバッテリ12の劣化を判定する。なお、得られた劣化判定結果は、制御手段7により劣化度合表示パネル9に表示され、警告灯等により運転者にバッテリ12の交換時期を知らせる。
【0028】
このように、本バッテリの劣化判定装置によれば、バッテリ12の充電にともないバッテリ12の劣化判定も行なわれるので、何ら特別な操作を必要とせず容易にバッテリの劣化を判定することができる。また、バッテリ12を充電する度にバッテリ12の劣化度合いを把握することができるので、劣化したバッテリを適切な時期に交換することができ、電気自動車11の走行性能を維持することができる。
【0029】
また、本バッテリの劣化判定装置は、定充電電流値AC において端子電圧Vが第1の電圧値V1 から第2の電圧値V2 に達するのに要する充電時間ttを基に劣化判定を行なうが、この充電時間ttとバッテリ12の劣化度合いとは一対一対応しており、また充電時間ttは再現性が良好であって、特に劣化が進んだバッテリでは変化が明確であるため、予め記憶手段5に記憶されている充電時間特性値と比較することにより、正確にバッテリ12の劣化度合いを判定することができる。
【0030】
そして、バッテリ12の充電時間ttは、バッテリ温度TB ,定充電電流値AC をパラメータとして変化するが、これらのパラメータはそれぞれ温度センサ13,電流検出手段2により検出することができる。従って、予めこれらのパラメータが充電時間ttに与える影響を補正データとして劣化判定手段4に記憶しておくことにより、これらのパラメータ量に応じて充電時間ttを補正し、補正した充電時間ttC と記憶手段5に予め記憶されている充電時間特性値とを比較することにより、正確にバッテリ12の劣化度合いを判定することができる。
【0031】
なお、本バッテリの劣化判定装置では、端子電圧Vが第1の電圧値V1 から第2の電圧値V2 に達するのに要する充電時間ttを劣化の判定基準としているが、端子電圧Vの上昇速度を基に劣化判定することも可能である。つまり、端子電圧Vの上昇速度は図1に示す充電特性グラフにおけるグラフの傾きに対応しており、充電時間ttと同様にバッテリの劣化の度合いと一対一対応しているからである。
【0032】
この場合、例えば、定電流充電開始時のバッテリの端子電圧(初期電圧)V0 を検出し、さらに、充電開始後、この端子電圧Vが所定値VC に達するまでの時間ta を測定して、電圧上昇量(VC −V0 )を時間ta で割ること〔(VC −V0 )/ta 〕により端子電圧Vの上昇速度を算出できる。
次に、本発明の第2実施形態としてのバッテリの劣化判定装置について説明する。
【0033】
まず、本実施形態のバッテリの劣化判定装置の構成について説明すると、本バッテリの劣化判定装置の構成は、第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置と同様に図2に示すように構成される。つまり、充電装置1にそなえられた電圧検出手段2,電流検出手段3,劣化判定手段4,記憶手段5,タイマ6,制御手段7と、電気自動車11にそなえられた温度センサ13とにより構成されている。
【0034】
そして、第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置と同様に、電圧検出手段2は充電時のバッテリ12の端子電圧を検出し、電流検出手段3は充電時のバッテリ12の充電電流を検出して、これらの検出信号が制御手段7に入力されるようになっており、また、バッテリの12の外表面温度を検出する温度センサ13により得られた温度情報も制御手段7に入力されるようになっている。
【0035】
制御手段7に入力されたこれらの端子電圧,充電電流,温度の各情報は劣化判定手段4に入力され、そして、劣化判定手段4ではこれらの各情報とタイマ6より入力された計測時間情報とから得られるバッテリ12の充電特性を、記憶手段5に記憶されている劣化測定用の充電特性と比較することによりバッテリ12の劣化の度合いを判定するようになっている。
【0036】
ここで、本実施形態のバッテリの劣化判定装置における劣化判定に利用されるバッテリの充電特性について詳細に説明すると、図9は、本実施形態のバッテリの劣化判定装置が適用されるシール式鉛電池やニッケル水素電池等の充電特性を示すグラフである。
図9に示すように、バッテリの充電時には、まずは、充電電流Aが一定値AC2で推移するように制御しながら定電流充電を行なう(第1定電流域)。すると、端子電圧Vは充電開始から時間とともに上昇していき、それに伴い電気量Qも増加して行く。また、バッテリ温度Tはほぼ一定に推移する。
【0037】
電気量Qが定格容量QF2の90%程度に達すると、端子電圧Vの上昇速度が急激に増加しはじめるとともに、バッテリ温度Tも急激に増加しはじめる。このバッテリ温度Tの急激な増加が検出されると、充電電流Aを減少させその後は一定値AD2(AD2<AC2)で充電する(第2定電流域)。
この第2定電流域では端子電圧Vはほぼ一定又はわずかに上昇し、電気量Qも徐々に増加する。また、急激に上昇したバッテリ温度Tは一端低下してその後はほぼ一定又は緩やかに上昇する。そして、やがて端子電圧Vがある一定レベルVC2に達したところで、電気量Qがほぼ定格QF2になったとみなして充電を停止する。
【0038】
このように、本装置が適用されるシール式鉛電池やニッケル水素電池等の充電特性は、第1実施形態のバッテリの劣化判定装置が適用される一般的なリチウムイオン電池とは異なり、定電流充電時の温度特性に特徴があり、電気量Qが定格QF2の90%程度に達するとバッテリ温度Tが急激に増加するようになっている。そして、図10に示すように、充電開始からバッテリ温度Tが急激に上昇するまでの時間は、バッテリ12の残存容量や充電電流A等の充電条件が同じならば、tt1 →tt2 →tt3 と、バッテリの劣化にともない短くなる。
【0039】
よって、本装置では、この充電開始からバッテリ温度Tが急激に上昇するまでの時間とバッテリの劣化との関係に着目して、あらかじめ劣化したバッテリの充電特性(温度特性)を記憶しておき、実際のバッテリの充電特性と比較することにより、バッテリの劣化の判定を行なうようになっている。
ところで、図9に示すバッテリの充電特性は充電開始時のバッテリの残存容量によって変化し、常に一定の電気量が残存しているとは限らない。そこで、本装置では、図11に示すように、バッテリの端子電圧Vが予め設定された電圧値V12に達してから(時間t12)、バッテリ温度Tの上昇速度が所定値に達するまで(時間t22)の充電時間tt′(t22−t12)をタイマ6で検出して、この充電時間tt′に基づいてバッテリの劣化を判定している。
【0040】
なお、所定の電圧値V12は、第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置と同様に、バッテリの充電開始時に想定される残存容量に応じた電圧値よりもやや高い電圧値に設定することが好ましい。
ところで、充電時間tt′は、バッテリの劣化によるもの以外に、バッテリの残存容量,バッテリの温度,充電電流によっても変化するので、本装置では、第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置と同様に、これらの各パラメータに応じた補正を行ない、補正された充電時間tt′c によって正確な劣化判定を行なうようにしている。
【0041】
本発明の第2実施形態としてのバッテリの劣化判定装置は上述のごとく構成されているので、バッテリ12の充電が開始されると、制御手段7は電流検出手段3,電圧検出手段2,温度センサ13によりそれぞれ充電電流A,バッテリ12の端子電圧V,バッテリ温度Tを検出する。そして、サイリスタ8を介して充電電流Aが一定値AC2で推移するように調整して定電流充電を行ない、端子電圧Vが所定の電圧値V12に達するとタイマ6を作動し、バッテリ温度Tの上昇速度が所定値に達するまでの充電時間tt′を検出する。
【0042】
制御手段7により検出されたこれらの充電時間tt′,定充電電流値AC2,バッテリ温度Tの情報は劣化判定手段4に入力され、劣化判定手段4では、充電時間tt′をバッテリ温度T及び定充電電流値AC2に応じて補正し、補正した充電時間tt′C を、記憶手段5に予め記憶されている充電時間特性値と比較することでバッテリ12の劣化を判定する。
【0043】
このように、本バッテリの劣化判定装置によれば、定充電電流値AC2において端子電圧Vが所定の電圧値V12に達してからバッテリ温度Tの上昇速度が所定値に達するのに要する充電時間tt′を基に劣化判定を行なうが、この充電時間tt′とバッテリ12の劣化度合いとは一対一対応しており、また充電時間tt′は再現性が良好であって、特に劣化が進んだバッテリでは変化が明確であるため、予め記憶手段5に記憶されている充電時間特性値と比較することにより、シール式鉛電池やニッケル式水素電池のように、定電圧充電を行なわないバッテリにおいても正確に劣化度合いを判定することができる。
【0044】
そして、バッテリ12の充電時間tt′は、バッテリ温度T,定充電電流値AC2をパラメータとして変化するが、予めこれらのパラメータが充電時間tt′に与える影響を補正データとして劣化判定手段4に記憶しておくことにより、これらのパラメータ量に応じて充電時間tt′を補正し、補正した充電時間tt′C と記憶手段5に予め記憶されている充電時間特性値とを比較することにより、正確にバッテリ12の劣化度合いを判定することができる。
【0045】
また、本バッテリの劣化判定装置の用途は、電気自動車に限定されることなく、他の分野におけるバッテリの劣化判定にも有効である。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のバッテリの劣化判定装置によれば、バッテリの充電を行なうとともにバッテリの劣化判定も行うので、何ら特別な操作を必要とせず容易にバッテリの劣化を判定することができる。また、バッテリを充電する度に劣化度合いも把握することができるので、劣化したバッテリの適切な交換が可能となる。
【0047】
また、請求項1記載の本発明のバッテリの劣化判定装置によれば、定充電電流時における端子電圧の第1の電圧から第2の電圧に達するまでの充電時間からバッテリの劣化判定を行なうが、この充電時間とバッテリの劣化度合いとは一対一対応しており、また充電時間は再現性が良好であって、特に劣化が進んだバッテリでは変化が明確であるため、正確にバッテリの劣化度合いを判定することができる。
【0049】
請求項2記載の本発明のバッテリの劣化判定装置によれば、定充電電流時において端子電圧が所定の電圧に達してからバッテリ温度の上昇速度が所定値に達するまでの充電時間からバッテリの劣化判定を行なうが、この充電時間とバッテリの劣化度合いとは一対一対応しており、また充電時間は再現性が良好であって、特に劣化が進んだバッテリでは変化が明確であるため、定電圧充電を行なわないバッテリにおいても正確にバッテリの劣化度合いを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置の劣化判定に用いるバッテリの充電特性を示すグラフである。
【図2】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置を電気自動車のバッテリ充電に適用した場合のシステム構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電特性を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電特性とバッテリの劣化の度合いとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電開始時における端子電圧と定電流充電時間との関係を残存容量とともに示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電特性の充電電流による変化を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電特性のバッテリの温度による変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態としてのバッテリの劣化判定装置で用いる補正係数の特性を示す図であり、(A)はバッテリ温度と温度対応補正係数との関係を示すグラフ、(B)は充電電流と電流対応補正係数との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電特性を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態としてのバッテリの劣化判定装置が適用されるバッテリの充電特性とバッテリの劣化の度合いとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態としてのバッテリの劣化判定装置の劣化判定に用いるバッテリの充電特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 充電装置
2 電流検出手段
3 電圧検出手段
4 劣化判定手段
5 記憶手段
6 タイマ
7 制御手段
8 サイリスタ
9 劣化度合表示パネル
10 操作パネル
11 電気自動車
12,12´ バッテリ
13 温度センサ
14 モータ制御装置
15 インバータ
16 モータ
17 プラグ
18,19 コネクタ
Claims (2)
- 充電時のバッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
一定電流で充電を行なった時に該電圧検出手段で検出された該端子電圧が第1の電圧から第2の電圧に達するまでの充電時間を検出するタイマと、
該タイマが検出した充電時間から該バッテリの劣化度合いを判定する劣化判定手段と
をそなえたことを特徴とする、バッテリの劣化判定装置。 - 充電時のバッテリの端子電圧を検出する電圧検出手段と、
充電時のバッテリの温度を検出する温度検出手段と、
一定電流で充電を行なった時に該電圧検出手段で検出された該端子電圧が所定の端子電圧に達した時点から該バッテリの温度上昇速度が所定の速度に達した時点までの充電時間を検出するタイマと、
該タイマが検出した充電時間から該バッテリの劣化度合いを判定する劣化判定手段と
をそなえたことを特徴とする、バッテリの劣化判定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21370797A JP3659772B2 (ja) | 1997-08-07 | 1997-08-07 | バッテリの劣化判定装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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