JP3654766B2 - 電子写真用トナー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する利用分野】
本発明は電子写真用トナー組成物に関し、より詳しくはウレタン変性ポリエステル樹脂を主成分とする電子写真用トナー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスオートメーションの発展に伴い、電子写真法を応用した複写機やレーザープリンターの需要は急速に増加しており、それらの性能に対する要求に高度化してきた。特に、地球温暖化が問題となってきており、その原因となる二酸化炭素の排出量を制限する動きが活発化してきた。複写機や、プリンターも例外ではなく省エネルギー化の要請が高まってきた。あるいは安全性の向上の見地から、より低い温度での定着処理を可能とすることが強く要請されており、また、トナーも低温定着性の優れたものが求められている。
【0003】
一般に、トナーの定着性を改善するためには、溶融時のトナーの粘度を低下させて定着基材との接着面積を大きくする必要があり、そのため従来は使用するトナーバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)を低下させ、あるいは分子量を小さくしていた。しかしながらこのような方法では次のような不都合を生じる。即ち、トナーは使用時あるいは貯蔵時に粉体として安定して存在すること、即ち耐ブロッキング性に優れていることが必要である。しかしながら一般的にはガラス転移点の低い樹脂はこの耐ブロッキング性が不良である。
また熱ロール定着方式においては、定着時に熱ロールと溶融状態のトナーとが直接触れるため、熱ロール上に移行したトナーが次に送られてくる転写紙等を汚す、いわゆるオフセット現象が生じやすい。一般的に樹脂の分子量が小さい場合にはこの傾向が顕著である。
【0004】
このような問題を解決するための手段として、特開平4−211272号には、特定の数平均分子量,ガラス転移点,水酸基価を有する高分子化用ポリエステルと、特定の数平均分子量,ガラス転移点,水酸基価を有する低分子量ポリエステルを特定量混合したものとジイソシアネートとの反応生成物を主成分とするトナー組成物が提案されている。一般的に、ポリエステル樹脂は、トナー用によく用いられているスチレンアクリル系樹脂に比べ、一般的に吸湿性が高いため温度や湿度により帯電量の変化を受けやすいことが知られており、酸価や水酸基価が高い場合はより顕著である。しかしながら、低温定着性を改善する目的で低分子量ポリエステル樹脂の分子量を小さくすると酸価が大きくなり、吸湿の影響を受けやすくなり帯電量が不安定になる問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性のいずれも良好でかつ、帯電の耐環境安定性が良好な電子写真用トナー組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、それぞれ特定の成分からなる特定範囲内のガラス転移点及び水酸基価を有する高分子化用ポリエステル樹脂と、それぞれ特定の成分からなる特定範囲のガラス転移点及び水酸基価を有する線状低分子量ポリエステル樹脂からなる混合物とジイソシアネート化合物との反応物であるウレタン変性ポリエステルを主成分とする電子写真用トナー組成物を用いることにより、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性のいずれも優れかつ、帯電の耐環境安定性が良好な電子写真用トナー組成物が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、ガラス転移点が10〜60℃であり、水酸基価が30〜80KOHmg/gであり、且つ少なくとも1種のジオールと少なくとも1種のジカルボン酸と、全原料モノマーを基準にして0.5〜20モル%の量の少なくとも1種の三価以上の多価アルコール成分を用いて重縮合した高分子化用ポリエステル樹脂(A)を10〜60重量%、及び、ガラス転移点が40〜70℃であり、水酸基価5KOHmg以下で、かつ少なくとも1種のジオールと少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のモノカルボン酸を用いて重縮合した重量平均分子量が2500〜7000である線状低分子量ポリエステル樹脂(B)を90〜40重量%からなる混合物と、高分子化用ポリエステル樹脂(A)と線状低分子量ポリエステル樹脂(B)の合計の水酸基1当量あたり0.1〜0.6モルのジイソシアネート化合物との反応組成物であるウレタン変成ポリエステル樹脂(C)を主成分とし電子写真用トナー組成物を見出した。ウレタン変性ポリエステル樹脂(C)には0.1〜25%のゲル分を含有しても良く、電子写真用トナー組成物にはポリオレフィンワックスを0.1〜10wt%を含有しても良い。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に言う高分子化用ポリエステル樹脂(A)とは、少なくとも一種のジオールと少なくとも一種のジカルボン酸と少なくとも一種の三価以上の高価アルコールとの重縮合によって得られた樹脂である。ここで言うジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物などを例示することができる。
【0009】
また、ここで言うジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂肪族二塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、などの脂肪族飽和二塩基酸、及び無水フタル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、などの芳香族二塩基酸及びこれらの低級アルキルエステルなどを例示することができる。
【0010】
また、ここで言う三価以上の多価アルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどを例示することができる。三価以上の多価アルコール成分の使用割合は、全原料モノマーを基準にして0.5〜20モル%となる量である。三価以上の多価アルコール成分の使用量が0.5モル%未満では、高分子化が困難となるため耐オフセット性が不十分となり、逆に20モル%を超えるとゲル化する傾向が強くなるため好ましくない。
【0011】
当該高分子化用ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は、30〜80KOHmg/gが好ましい。30KOHmg/g以下ではジイソシアネートとの反応量が少なくなり、高分子化出来にくく、耐オフセット性が低下するので好ましくない。80KOHmg/gより大きい場合では分子量が低すぎるため高分子化出来にくく、耐オフセット性が低下するので好ましくない。
【0012】
当該線状低分子ポリエステル樹脂(B)のガラス転移点は40〜70℃であり、45〜60℃であればさらに好ましい。ガラス転移点が40℃未満ではトナーの耐ブロッキング性が悪化するので好ましくなく、70℃を超えるとトナーの定着性が悪化するので好ましくない。特にガラス転移点を上げるために、ジオールとしてビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物またはビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物を主体として用いることが好ましい。
【0013】
当該線状低分子ポリエステル樹脂(B)は、少なくとも1種のジオールと少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも一種ののモノカルボン酸を用いて調整された線状ポリエステル樹脂であり、ジオールとジカルボン酸は上記のポリエステル樹脂(A)に示したものを使用することができる。
【0014】
ここでいうモノカルボン酸とは、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸といった芳香族モノカルボン酸や、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪族モノカルボン酸のことである。しかしながら脂肪族モノカルボン酸を用いることが出来るが、脂肪族モノカルボン酸を用いるとガラス転移転が低くなる傾向があるため、芳香族モノカルボン酸を用いる方が好ましい。モノカルボン酸の使用量は、全モノマーに対して2〜30モルが好ましい。2モル以下では帯電の環境依存を抑制する効果が少なく、30モル以上ではモノカルボン酸は高分子化を阻害する作用があるため分子量が小さくなりすぎ好ましくない。
【0015】
当該線状低分子ポリエステル樹脂(B)は、水酸基価が5KOHmg/g以下であることが好ましい。水酸基価が5KOHmg/gを超えると、ポリエステル樹脂(A)の高分子化を妨げ、高温オフセット性を悪化させるので好ましくない。
【0016】
本発明のウレタン変性ポリエステル樹脂の高分子化用ポリエステル樹脂(A)と線状低分子ポリエステル樹脂(B)の含有比率は、重量比で(A):(B)が10:60〜90:40でありることが好ましい。高分子化用ポリエステル樹脂(A)の含有比率が全体の10重量%未満では、得られるトナーの耐オフセット性が低下するので好ましくなく、また線状低分子ポリエステル樹脂(B)の含有比率が全体の40重量%未満では定着が悪化するので好ましくない。
【0017】
重縮合の方法としては、通常、公知の高温重縮合、溶液重縮合が用いられ、ジカルボン酸と多価アルコール(ジオール及び三官能アルコール)との使用の割合は通常、前者のカルボキシル基に対する後者の水酸基の割合で0.7〜1.4であることが一般的である。
【0018】
又、本発明で言うジイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を例示することができる。
【0019】
ジイソシアネートの使用量は、高分子化用ポリエステル樹脂(A)と線状低分子ポリエステル樹脂(B)の合計の水酸基1当量あたり0.1〜0.6モル(イソシアネート基として0.2〜1.2当量)であり、特に0.2〜0.5モル(イソシアネート基として0.4〜1.0当量)が好ましい。ジイソシアネートの使用量が0.1モル未満の場合にはトナーの耐オフセット性が低下するので好ましくない。又、0.6モルを超えると反応すべき水酸基が不足して未反応のイソシアネート基が残り、逆に高分子化しずらくなるので好ましくない。
【0020】
高分子化用ポリエステル樹脂(A)と線状低分子ポリエステル樹脂(B)の混合物とジイソシアネートとを反応させた、ウレタン変成ポリエステル樹脂(C)は溶液法やバルク法等で製造でき、例えば以下のような方法で製造できる。即ち、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との混合物を二軸押出機に一定スピードで投入し、同時にジイソシアネートも一定速度で注入し、分散混合しながら100〜200℃で反応させる。
【0021】
本発明の電子写真用トナー組成物を得る最も一般的な方法としては、例えば上記ウレタン変性ポリエステル樹脂を約0.5〜5mmの粒径に粉砕したものと、カーボンブラック、着色剤、ポリオレフィンワックス及び荷電調整剤、さらに必要であれば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、マレイン化ロジン、石油樹脂を加えて、ヘンシルミキサー等で混合した後、ニーダー等で温度100〜150℃で溶融混練し、得られる塊を粉砕、分級して粒径5〜15μmの粒子として得る方法が挙げられる。
このようにして得られた電子写真用トナー組成物は低熱量かつ高速複写に対し極めて優れたものである。
【0022】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。尚、ここで用いられている「部」は、特に断わらない限り重量部である。
製造例A1〜A4及び製造例B1〜B5
製造例A1〜A4は高分子化用ポリエステル樹脂(A)、及びB1〜B5は線状低分子ポリエステル樹脂(B)の製造例である。
5リットルの4口フラスコに、還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を取り付け、それぞれ表1及び表2に示した種類及び量(モル比)のジカルボン酸、ジオール、三官能アルコール、及びモノカルボン酸を仕込み、フラスコ内に窒素を導入しながら、180〜240℃で脱水縮合を行った。
反応生成物の酸価及び水酸基価が所定の値に達したところで反応生成物をフラスコより抜きだし、冷却・粉砕して、高分子化用ポリエステル樹脂(A)A1〜A4及び線状低分子ポリエステル樹脂(B)B1〜B5を得た。
高分子化用ポリエステル樹脂(A)の製造例及び物性値を、それぞれ表1に、線状低分子ポリエステル樹脂(B)については、表2に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
製造例C1〜C5
ウレタン変性ポリエステル(C)の製造例C1〜C5を表5に示した。まず、高分子化用ポリエステル樹脂(A)及び線上低分子ポリエステル樹脂(B)を表5に示した比率で混合した。これを二軸混練器(栗本鉄工所製, KEX-40)に10kg/hrで供給し、同時にジイソシアネートを表3に示した流量で供給して混練押出反応を行った。得られたものを冷却し、表3に示した性質を有するウレタン変性ポリエステル樹脂C1〜C5を得た。
【0026】
【表3】
【0027】
実施例1
ウレタン変成ポリエステル樹脂製造例C1を粗粉砕機を用いて粒径0.5〜20mmに粗粉砕した後、ウレタン変成ポリエステル樹脂粗粒子100部とカーボンブラック(CABOT社製Regal 330R)6部、帯電調整剤(オリエント化学製 S34)1部、ポリプロピレンワックス(三井化学製 NP505)1.5部を配合し、ヘンシルミキサーにて分散混合し、二軸混練機で混練し、塊状のトナー組成物を得た。
【0028】
この組成物を粗粉砕した後、微粉砕機(日本ニューマチック社製、1式ミル)にて微粉砕し、次いで分級して平均粒径約8μm(5μm以下約3重量%, 15μm以上約2重量%)のトナー粒子を得た。ここに流動化剤(日本アエロジル R972)を0.5wt%を添加しトナーとした。このトナーを4部を、フェライトキャリア(日本鉄粉製 F150)96部と混合し、現像剤とした。
【0029】
市販の複写機(三田工業製 DC1257)を用いて紙上にトナー像を転写し、転写された紙上のトナーを市販の複写機(シャープ(株)製 SF8400A)の定着部を改造して、定着試験を行った。熱ロールのスピードは190mm/secに設定して実験を行った。低温オフセットが発生せず定着している下限の温度を、定着下限温度とした。また、高温オフセットの発生した温度を、オフセット発生温度とした。
帯電量環境依存性は、高温高湿条件(40℃,80RH%)での帯電量と、低温低湿条件(10℃,10RH%)での帯電量を比較し、それらの差の大きいものを×、小さいものを○とした。これらの評価結果を表4に示した。
【0030】
実施例2,3及び比較例1,2
実施例1と同様にトナーを製造、評価し、その結果を表4に示した。
【0031】
【表4】
【0032】
【発明の効果】
本発明の電子写真用トナー組成物は、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性のいずれも良好でかつ、帯電の耐環境安定性が良好である。
Claims (3)
- ガラス転移点が10〜60℃であり、水酸基価が30〜80KOHmg/gであり、且つ少なくとも1種のジオールと少なくとも1種のジカルボン酸と、全原料モノマーを基準にして0.5〜20モル%の量の少なくとも1種の三価以上の多価アルコール成分を用いて重縮合した高分子化用ポリエステル樹脂(A)を10〜60重量%、及び、ガラス転移点が40〜70℃であり、水酸基価5KOHmg以下で、かつ少なくとも1種のジオールと少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種の芳香族モノカルボン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸よりなる群から選択されるモノカルボン酸を用いて重縮合した重量平均分子量が2500〜7000である線状低分子量ポリエステル樹脂(B)を90〜40重量%からなる混合物と、高分子化用ポリエステル樹脂(A)と線状低分子量ポリエステル樹脂(B)の合計の水酸基1当量あたり0.1〜0.6モルのジイソシアネート化合物との反応組成物であるウレタン変性ポリエステル樹脂(C)を主成分とする電子写真用トナー組成物。
- ウレタン変性ポリエステル樹脂に0.1〜25%のゲル分を含有することを特徴とする、請求項1記載の電子写真用トナー組成物。
- ポリオレフィンワックスを0.1〜10wt%を含むことを特徴とする請求項1または2記載の電子写真用トナー組成物。
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