JP3653513B2 - ビニルエステル樹脂およびビニルエステル樹脂組成物ならびにその硬化物 - Google Patents
ビニルエステル樹脂およびビニルエステル樹脂組成物ならびにその硬化物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルエステル樹脂およびビニルエステル樹脂組成物ならびにその硬化物に関する。詳しくは、硬化性に優れ、耐熱性、靭性、耐溶剤性、耐食性、耐水性、耐煮沸性、光沢、透明性、強度、硬度等の物理性状に優れたビニルエステル樹脂およびビニルエステル樹脂組成物ならびにその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルエステル樹脂は、一般にスチレンモノマーや(メタ)アクリレート類の反応性希釈剤で希釈された状態で用いられ、その硬化物は優れた耐食性、耐薬品性、耐水性、耐熱性を有することから、幅広い産業に用いられている。ガラス繊維や炭素繊維を配合した繊維強化プラスチック、無機フィラーを配合したライニング用途、水酸化アルミニウムを配合した人工大理石、あるいは感光性を生かしたソルダーレジストなどその用途は多岐にわたっている。
ビニルエステル樹脂は、分子中に少なくとも一つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と分子中に少なくとも一つの重合性の不飽和基を有する不飽和カルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)とを触媒の存在下で付加反応させることにより得られる。得られるビニルエステル樹脂の性状は、出発原料のエポキシ化合物の種類によっても大きく異なり、要求性能に応じて使い分けているのが実情である。出発原料として使用されるエポキシ化合物の種類にも限界があるため、用途に適した物性を付与するために各種の工夫がなされてきている。
例えば、グリシジルエーテルから誘導されるビニルエステル樹脂に靭性を付与しようとする場合、予めジグリシジルエーテルと二価のフェノールとを反応せしめて分子量の大きなジグリシジルエーテルを合成し、その後ビニルエステル化を行なうようなことも行われている。この様にして得られるビニルエステル樹脂の硬化物では架橋点間距離が長くなり靭性が向上するが、反面架橋密度が低下することになり、熱変形温度が低下することが知られている。この他にも、ビニルエステル樹脂の有するヒドロキシル基を利用したウレタン変性、酸無水物変性等が行われている。
一般に、熱硬化性樹脂の物性を向上させるためには、オリゴマー状の樹脂の分子量を高くすることが有利であると考えられているが、ビニルエステル樹脂の場合、分子量の向上を図ろうとすると、分子量向上のために官能基を消費することが多く、結果として硬化に関与する不飽和基密度の低下を来たすことになり、耐熱性や硬化性、光感度等が低下する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、高い架橋密度を与え、得られる硬化物が耐熱性、靭性、耐溶剤性、耐食性、耐水性、耐煮沸性、光沢、透明性、強度、硬度等の物理性状に優れるビニルエステル樹脂を提供することにある。また、高強度で、耐食性の良好な、耐食材料、成形材料、コーティング材料、塗料、接着剤等に有用なビニルエステル樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ビニルエステル樹脂の分子量を高くすることによって、ともすると起こりやすい耐熱性の低下を防ぐビニルエステル樹脂を鋭意検討した。
本発明は、2個以上のグリシジル基を1分子内にもつエポキシ樹脂(a)と、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)および多塩基酸(c)とを、(b)と(c)とのモル比が20:1〜1:5、かつ(a)のエポキシ基1当量に対する(b)および(c)のカルボキシル基当量の和が0.9〜1.1当量となる割合で反応させて反応物(A)を得、前記反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基の一部または全てをエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)でエステル化反応させて得られるビニルエステル樹脂を提供するものである。
また、本発明は、エポキシ樹脂(a)が、グリシジル基を1分子内に2個もつ前記のビニルエステル樹脂を提供するものである。
また、本発明は、エポキシ樹脂(a)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂である前記のビニルエステル樹脂を提供するものである。
また、本発明は、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)が、(メタ)アクリル酸である前記のビニルエステル樹脂を提供するものである。
また、本発明は、エチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)が、(メタ)アクリル酸の塩化物である前記のビニルエステル樹脂を提供するものである。
また、本発明は、前記のビニルエステル樹脂および反応性希釈剤(g)を含むビニルエステル樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、さらに、硬化剤(h)を含む前記のビニルエステル樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、さらに、光重合開始剤(i)を含む前記のビニルエステル樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記のビニルエステル樹脂組成物を硬化させた硬化物を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のビニルエステル樹脂は、2個以上のグリシジル基を1分子内にもつエポキシ樹脂(a)と、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)および多塩基酸(c)とを反応させて反応物(A)を得、前記反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基の一部または全てをエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)でエステル化反応させて得ることができる。
前記反応物(A)は、分子内に1級および/または2級のヒドロキシル基を2個以上有し、このヒドロキシル基が、前記エチレン性不飽和カルボン酸の塩化物(d)でエステル化された構造をもつことで分子量当たりのエチレン性不飽和結合数、すなわち架橋可能な反応基を従来のビニルエステル樹脂より多くもたせることが可能となる。
【0006】
本発明に用いられる2個以上のグリシジル基を1分子内にもつエポキシ樹脂(a)の具体的な例は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびテトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、あるいはビスフェノールAのグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等)、ビフェニル型エポキシ樹脂(例えば、ビフェノールとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等で、具体例として、ジャパンエポキシエジン製 エピコート YX−4000)、ナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、ジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等で、具体例として、大日本インキ化学工業製 EPICLON HP−4032)、アルキルジフェノール型エポキシ樹脂(例えば、アルキルジフェノールとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等で、具体例として、大日本インキ化学工業製 EPICLON EXA−7120)、ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えば、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等)、脂環式型エポキシ樹脂(例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート等)、さらに、前記エポキシ樹脂とジイソシアネートとを反応させて得られるオキサゾリドン環を有する(具体例として、旭化成エポキシ製 アラルダイト AER4152)等、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとフェノールノボラックまたはクレゾールノボラックとの反応で得られるエポキシ化合物等)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等)を挙げることができるが、これらに限られるものではない。また、これらのエポキシ樹脂(a)は、1種または2種以上混合して用いてもよい。特に好ましいのは、耐熱性、耐薬品性に優れ、且つ反応においてはゲル化せず直鎖状に分子量が増加するビスフェノール型エポキシ樹脂であり、さらに好ましくはゲル化せず直鎖状に分子量が増加する分子内に2個のグリシジル基をもつビスフェノール型エポキシ樹脂である。
【0007】
次に前記2個以上のグリシジル基を1分子内にもつエポキシ樹脂(a)と反応するエチレン性不飽和モノカルボン酸(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等を挙げることができる。また、1個のヒドロキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと多塩基酸無水物との反応物等も用いることができるが、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0008】
本発明に用いられる多塩基酸(c)としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリエチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、プロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリプロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物等が挙げられる。
【0009】
また、多塩基酸(c)としては、ヒドロキシル基を有するカルボン酸であってもよく、グリシジル基とカルボキシル基との反応で生じるヒドロキシル基以上に、反応物(A)のもつヒドロキシル基を増加させる目的として有用であり、例えば、リンゴ酸、酒石酸、ムチン酸等を挙げることができる。
【0010】
反応物(A)を得るにあたって、本発明の効果を充分に得るためには、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)と多塩基酸(c)とのモル比は、前者:後者として20:1〜1:5の範囲であり、好ましくは5:1〜1:1の範囲である。エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)の割合が、1:5を下回ると分子量が増大し過ぎてしまい、本発明のビニルエステル樹脂は熱硬化性樹脂材料として適さず、20:1を上回ると充分な分子量増大の効果が得られない。
さらに、反応物(A)を生成する場合のエポキシ樹脂(a)と、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)と、多塩基酸(c)との割合は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対し、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)と多塩基酸(c)とのカルボキシル基当量の和は、0.9〜1.1当量であり、好ましくは0.95〜1.05当量の範囲である。カルボキシル基当量が0.9未満では、反応時にゲル化しやすく、1.1を超えると未反応の酸が多くなりすぎ、臭気、安全性の点で好ましくない。
【0011】
次に、前記反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基の一部または全てを、エチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)でエステル化反応させて、さらにエチレン性不飽和基を導入した本発明のビニルエステル樹脂を得ることができる。このとき反応に用いられるエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の塩化物も挙げることができる。また、1個のヒドロキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと多塩基酸無水物との反応物等の塩化物も用いることができるが、好ましくは(メタ)アクリル酸の塩化物である。
【0012】
前記反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基に対して、エチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)により導入されたエステル構造の割合は、該反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基の1%以上であり、好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。該反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基の1%以上であるとビニルエステル樹脂の硬化性の改善が発現され、さらに10%以上であるとその硬化性の改善が明瞭となる。
【0013】
本発明のビニルエステル樹脂の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量で500〜12000の範囲であり、好ましくは700〜10000の範囲である。分子量が500未満であると架橋密度が高くなり、硬化物の靭性が低下し、分子量が12000を超えると粘度が高くなりすぎ作業性に支障をきたすため好ましくない。
【0014】
本発明によるビニルエステル樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、通常のビニルエステル樹脂の合成方法と同様に、2個以上のグリシジル基を1分子内にもつエポキシ樹脂(a)にエチレン性不飽和モノカルボン酸(b)および多塩基酸(c)の各所定量を、触媒を用いてエステル化反応させ、反応により生成した反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基にエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)を、触媒を用いて脱塩酸反応させて得られる。
【0015】
また、ビニルエステル樹脂は、分子内のヒドロキシル基をエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)でエステル化された構造であるが、一部のヒドロキシル基を酸無水物と反応させてエステル化することも可能で、これにより得られるビニルエステル樹脂は、硬化性が良好で、且つアルカリ土類金属酸化物等による増粘が可能なものである。この時使用できる酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げることができ、これらを単独あるいは2種以上併用することもできる。
例えば、反応物(A)のヒドロキシル基1モルに対して、0.05〜0.4モルの酸無水物を反応させるのが、ビニルエステル樹脂の良好な増粘性の点で好ましい。
【0016】
本発明の別の見地によれば、前記ビニルエステル樹脂および反応性希釈剤(g)を含むビニルエステル樹脂組成物が提供される。また、前記ビニルエステル樹脂組成物は、硬化剤(h)を含むことができ、硬化性ビニルエステル樹脂組成物を提供することができる。また、前記ビニルエステル樹脂組成物は、光重合開始剤(i)を含むことができ、光硬化性ビニルエステル樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明は、前記ビニルエステル樹脂組成物、前記硬化性ビニルエステル樹脂組成物および前記光硬化性ビニルエステル樹脂組成物を硬化させた硬化物を提供するものである。
【0017】
本発明のビニルエステル樹脂組成物において、反応性希釈剤(g)を添加することができる。利用できる反応性希釈剤(g)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(ジ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
反応性希釈剤(g)の配合量は、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、25〜150重量部が好ましく、より好ましくは60〜100重量部である。
【0018】
本発明のビニルエステル樹脂組成物は、通常の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂の硬化の際に用いる硬化剤(h)および必要に応じて硬化促進剤を添加することで容易に硬化することができる。本発明に使用される硬化剤(h)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサオド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロキシパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
硬化剤(h)の配合量は、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0重量部である。
熱重合では硬化促進剤を混合して用いてもよく、硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト、アセチルアセトン、あるいはジメチルアニリン、ジエチルアニリン等の3級アミン等が挙げられる。
硬化促進剤の配合量は、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、0.005〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜3.0重量部である。
【0019】
また、本発明のビニルエステル樹脂組成物は、紫外線照射などにより光硬化させるために光重合開始剤(i)を添加することができる。利用できる光重合開始剤(i)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
光重合開始剤(i)の配合量は、ビニルエステル樹脂100重量部に対して、0.5〜30重量部で配合することが好ましい。
【0020】
さらには、本発明のビニルエステル樹脂組成物は、通常用いられる離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、重合抑制剤、充填材、増粘剤、低収縮化剤、顔料、等の公知の添加剤を用途に応じて使用してもよい。さらに、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることも可能である。
【0021】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して、本発明を具体的に説明する。なお、「部」および「%」とあるのは、特に断らない限り、全て重量基準である。
【0022】
[合成例1]
四つ口フラスコに攪拌器、温度計、空気封入管、還流冷却管をセットした反応装置に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔エピクロンN−740、大日本インキ化学工業(株)製、エポキシ当量180〕180部、メチルイソブチルケトン62.0部、フマル酸17.4部、アクリル酸50.4部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン240部を仕込み、アクリル酸クロリド54.4部とトリエチルアミン60.6部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−1を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、1500であった。
【0023】
[合成例2]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔アラルダイトAER2603、旭化成エポキシ(株)製、エポキシ当量188〕188部、メチルイソブチルケトン63.3部、フマル酸29.0部、アクリル酸36部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン253部を仕込み、アクリル酸クロリド63.5部とトリエチルアミン70.7部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−2を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、4600であった。
【0024】
[合成例3]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エポトートYD−128、東都化成(株)製、エポキシ当量190〕190部、メチルイソブチルケトン67.4部、アジピン酸36.5部、メタクリル酸43.0部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン275部を仕込み、メタクリル酸クロリド73.3部とトリエチルアミン70.7部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−3を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、5200であった。
【0025】
[合成例4]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔アラルダイトAER2603、旭化成エポキシ(株)製、エポキシ当量188〕188部、メチルイソブチルケトン69.3部、シクロヘキサンジカルボン酸43.0部、メタクリル酸43.0部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン291部を仕込み、メタクリル酸クロリド83.7部とトリエチルアミン80.8部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−4を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、6800であった。
【0026】
[合成例5]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エポトートYD−128、東都化成(株)製、エポキシ当量190〕190部、メチルイソブチルケトン66.4部、イタコン酸32.5部、メタクリル酸43.0部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン283部を仕込み、メタクリル酸クロリド83.7部とトリエチルアミン80.8部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−5を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、6200であった。
【0027】
[合成例6]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔アラルダイトAER2603、旭化成エポキシ(株)製、エポキシ当量188〕188部、メチルイソブチルケトン64.4部、リンゴ酸33.5部、アクリル酸36部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン257部を仕込み、アクリル酸クロリド63.5部とトリエチルアミン70.7部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−6を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、5400であった。
【0028】
[合成例7]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エポトートYD−128、東都化成(株)製、エポキシ当量190〕190部、メチルイソブチルケトン65.9部、酒石酸37.5部、アクリル酸36部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン261部を仕込み、アクリル酸クロリド63.5部とトリエチルアミン70.7部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−7を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、5600であった。
【0029】
[合成例8]
合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂〔エポミックR110、三井化学(株)製、エポキシ当量170〕170部、メチルイソブチルケトン60.5部、フマル酸40.6部、メタクリル酸25.8部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価0.5KOHmg/gの反応物を得た。
次に温度を10℃まで下げ、メチルイソブチルケトン265部を仕込み、メタクリル酸クロリド83.7部とトリエチルアミン80.8部を10℃を保ちながら滴下して攪拌し続けた。これを水洗してトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧乾燥後、固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(A)−8を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、7800であった。
【0030】
[比較合成例1]
四つ口フラスコに攪拌器、温度計、空気封入管、還流冷却管をセットした反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔アラルダイトAER2603、旭化成エポキシ(株)製、エポキシ当量188〕188部、メタクリル酸86.0部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価1.0KOHmg/gの反応物を得た。固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(B)−1を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、320であった。
【0031】
[比較合成例2]
比較合成例1と同一実験装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔アラルダイトAER2603、旭化成エポキシ(株)製、エポキシ当量188〕188部、ビスフェノールA34.2部、トリエチルアミン0.7部を仕込み140℃で2時間反応させた。次いでメタクリル酸60.2部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価1.0KOHmg/gの反応物を得た。固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(B)−2を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、1800であった。
【0032】
[比較合成例3]
比較合成例1と同一実験装置に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔エピクロンN−740、大日本インキ化学工業(株)製、エポキシ当量180〕180部、アクリル酸72.0部、トリフェニルフォスフィン0.8部、メチルハイドロキノン0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、酸価1.5KOHmg/gの反応物を得た。固形分濃度55%となるようにスチレンに溶解、ビニルエステル樹脂(B)−3を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は、3000であった。
【0033】
[実施例1〜8および比較例1〜3]
合成例1〜8で得た(A)−1〜(A)−8および比較合成例1〜3得た(B)−1〜(B)−3のビニルエステル樹脂100部に対し、それぞれメチルエチルケトンパーオキサイド1.5部、ナフテン酸コバルト0.5部添加し、充分混合して各々のビニルエステル樹脂組成物を得た。次いで、該ビニルエステル樹脂組成物を用いて、注型板を作製した。得られた注型板を用い、引張り強度、引張り伸び率、熱変形温度、耐煮沸性、耐薬品性(耐アルカリ性、耐酸性、耐溶剤性)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0034】
<引張り強度および引張り伸び率>
JIS K 7113に準拠し、注型板の引張り強度(MPa)および引張り伸び率(%)を測定した。
<熱変形温度>
JIS K 6911に準拠し、注型板の熱変形温度(℃)を測定した。
<耐煮沸性>
JIS K 7209に準拠し、注型板の耐煮沸性を重量変化(%)により測定した。
<耐薬品性試験>
JIS K 7114に準拠し、以下の薬品における注型板の外観変化を目視により確認した。
耐アルカリ性;23℃、10%水酸化ナトリウム
耐酸性;23℃、35%塩酸
耐溶剤性;23℃、酢酸エチル
評価基準は、外観変化項目の光沢損失、変色、クラック、膨潤、溶解の内、○は全て異常無し、△は1または2項目該当、×は3〜5項目該当とした。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1〜8で得られたビニルエステル樹脂組成物は、さらに、ガラス繊維や炭素繊維を配合し、繊維強化プラスチックとして、化学工業プラント関連のパイプ、タンク等の成形品や、ライニング材料として、また、無機フィラーを配合し、人工大理石調のバスタブ、キッチンカウンターの用途で用いられる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、高い架橋密度を与え、得られる硬化物が耐熱性、靭性、耐溶剤性、耐食性、耐水性、耐煮沸性、光沢、透明性、強度、硬度等の物理性状に優れるビニルエステル樹脂が提供される。また、高強度で、耐食性の良好な、耐食材料、成形材料、コーティング材料、塗料、接着剤等に有用なビニルエステル樹脂組成物が提供される。
Claims (9)
- 2個以上のグリシジル基を1分子内にもつエポキシ樹脂(a)と、エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)および多塩基酸(c)とを、(b)と(c)とのモル比が20:1〜1:5、かつ(a)のエポキシ基1当量に対する(b)および(c)のカルボキシル基当量の和が0.9〜1.1当量となる割合で反応させて反応物(A)を得、前記反応物(A)の1級および/または2級のヒドロキシル基の一部または全てをエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)でエステル化反応させて得られるビニルエステル樹脂。
- エポキシ樹脂(a)が、グリシジル基を1分子内に2個もつ請求項1に記載のビニルエステル樹脂。
- エポキシ樹脂(a)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1または2に記載のビニルエステル樹脂。
- エチレン性不飽和モノカルボン酸(b)が、(メタ)アクリル酸である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のビニルエステル樹脂。
- エチレン性不飽和モノカルボン酸の塩化物(d)が、(メタ)アクリル酸の塩化物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のビニルエステル樹脂。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のビニルエステル樹脂および反応性希釈剤(g)を含むビニルエステル樹脂組成物。
- さらに、硬化剤(h)を含む請求項6に記載のビニルエステル樹脂組成物。
- さらに、光重合開始剤(i)を含む請求項6に記載のビニルエステル樹脂組成物。
- 請求項7または8に記載のビニルエステル樹脂組成物を硬化させた硬化物。
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