JP4768162B2 - ラジカル重合性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジカル重合して硬化する特性を有し、成形材料等として有用なビニルエステル系のラジカル重合性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるビニルエステルはエポキシアクリレートとも呼ばれ、通常、ラジカル重合性単量体と共にラジカル重合性樹脂組成物として用いられる。このビニルエステル樹脂は常温で液状を示すので、取扱い作業性に優れるというメリットを有している。しかも得られる成形品は、耐薬品性、強度、耐熱性、靭性等の特性が比較的良好であり、更には金属に比べて軽量で耐食性にも優れているので、有用な成形材料として各種分野に用いられ、更には、ライニングや塗料等の分野にも使用されている。
【0003】
しかし、これら各分野で求められる特性は次第に厳しくなってきており、特に、強度・耐熱性等の特性と、耐衝撃性・靭性といった特性を兼ね備えたものの要求が高まっている。強度や耐熱性は、硬化物の3次元構造を緻密にすることで高められるが、過度に緻密になると硬化物が脆化して耐衝撃性が悪くなるので、強度・耐熱性と耐衝撃性・靱性といった相反する二つの特性を兼備させることはなかなか難しい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年、ビニルエステルを含むラジカル重合性樹脂組成物を用いた成形品の用途が拡大してくるにつれて、適用分野によっては難燃性が要求される場合も多くなっている。従って本発明の目的は、優れた強度・耐熱性と耐衝撃性・靭性を兼ね備えた樹脂材料を提供することにあり、より好ましくは、上記両特性に加えて、難燃性にも優れた成形品を与えるラジカル重合性樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物は、GPCによって求められる分子量4000以上の成分が20〜50質量%、同分子量1000以上、4000未満の成分が0〜60質量%、同分子量1000未満の成分が20〜50質量%の分子量分布を有するビスフェノール型ビニルエステル(A)と、ラジカル重合性単量体(B)とを含有するところに要旨が存在する。
【0006】
上記ラジカル重合性樹脂組成物において、ビスフェノール型ビニルエステル(A)のブロム含有率を10〜45質量%の範囲とすれば、強度・耐熱性と耐衝撃性・靭性の両特性に加えて、優れた難燃性を示す成形材料となるので好ましい。また、本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物の中でも特に好ましいのは、前記ビスフェノール型ビニルエステル(A)が、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールと、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシと、(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートとから合成されたものである。
【0007】
上記ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールとして特に好ましいのは、ビスフェノールAおよび/またはブロム化ビスフェノールA、上記ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシとして特に好ましいのは、ビスフェノールA型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノールA型エポキシであり、また上記ラジカル重合性単量体として特に好ましいのはスチレンである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物の必須成分であるビニルエステル(A)は、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシと、必要によりビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールと、(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートとから合成される。あるいは、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシと、(メタ)アクリル酸とから合成される。更には、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールとグリシジル(メタ)アクリレートとから合成される。
【0009】
更には、ビスフェノール型のビニルエステル(A)は、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールと、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシとを反応させて得られるジャンプ化エポキシ化合物と、エポキシ当量500以下のビスフェノール型エポキシ化合物および/またはブロム化ビスフェノール型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とから合成される。
【0010】
本発明にかかる上記ビスフェノール型ビニルエステル(A)のブロム含有量は、10質量%以上、45質量%以下が望ましく、このブロム基は、ブロム化ビスフェノールまたはブロム化ビスフェノール型エポキシによってビニルエステル中に導入される。従って、後述するビニルエステル合成反応の際に、得られるビニルエステルのブロム含有量が10質量%以上、45質量%以下となるように、原料中のブロム化ビスフェノールとブロム化ビスフェノール型エポキシの量を調整すればよい。
【0011】
ちなみに、ブロム含量が10質量%未満では、満足のいく難燃性が得られ難くなる。またブロム含量が多くなり過ぎると、ラジカル重合性単量体(B)との相溶性が低下してくるので、45%以下に抑えることが望ましい。ブロム含量のより好ましい範囲は18質量%以上、35質量%以下、更に好ましくは22質量%以上、30質量%以下である。
【0012】
上記ビニルエステル(A)は、エポキシ基含有成分であるビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシ(以下、エポキシ成分という)と、ラジカル重合性を有する(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートの他に、ビスフェノールAおよび/またはブロム化ビスフェノール(以下、ビスフェノール成分という)を原料とすることが好ましい。
【0013】
ビスフェノール成分を併用するのは、これらを鎖延長剤として用いることによってビニルエステルの高分子量化を図るためである。エポキシ成分が有するエポキシ基は、ビスフェノール成分のヒドロキシル基と反応するので、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールが有する2個のヒドロキシル基を、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシが有するエポキシ基と反応させることにより、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールを介して、2分子以上のビスフェノール型エポキシ、あるいは、1分子以上のビスフェノール型エポキシと1分子以上のブロム化ビスフェノール型エポキシ、あるいは2分子以上のブロム化ビスフェノール型エポキシが連結した反応生成物が得られる。この反応生成物は末端にエポキシ基を有しているので、いずれもエポキシ樹脂である。そして、このエポキシ樹脂の末端エポキシ基と(メタ)アクリル酸を反応させると、末端に(メタ)アクリロイル基が導入されたラジカル重合性のビニルエステルが得られる。
【0014】
また、上記の如くエポキシ成分が有するエポキシ基は、ビスフェノール成分のヒドロキシル基と反応するので、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシが有する2個のエポキシ基を、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールが有するヒドロキシル基と反応させると、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシを介して、2分子以上のビスフェノール、あるいは、1分子以上のビスフェノールと1分子以上のブロム化ビスフェノール、あるいは2分子以上のブロム化ビスフェノールが連結した反応生成物が得られる。この反応生成物は末端に水酸基を有しているので、この末端水酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させると、末端に(メタ)アクリロイル基が導入されたラジカル重合性のビニルエステルが得られる。更に、1分子以上のビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールと1分子以上のビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシを反応させ、末端水酸基にはグリシジル(メタ)アクリレートを、またエポキシ末端には(メタ)アクリル酸反応させることによって、末端に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。このように長く鎖延長されたビニルエステルは、大きな分子量を持つ。
【0015】
本発明に係るビニルエステル(A)は、上述したようにビスフェノール成分とエポキシ成分と(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートとから合成された反応生成物であるビニルエステル成分を必須とするもので、この「ビニルエステル」は、様々な分子量の鎖延長されたビニルエステルや、鎖延長されていないビスフェノール型エポキシやブロム化ビスフェノール型エポキシと(メタ)アクリル酸、もしくは鎖延長されていないビスフェノールやブロム化ビスフェノールとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物(低分子量ビニルエステル)等の混合物となる。低分子量ビニルエステルは、上記方法で得られる他に、エポキシ当量500程度以下のビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸、あるいは水酸基当量が400程度以下のビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノール化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとから合成し、別途追加混合してもよい。
【0016】
更には、上記鎖延長されたエポキシ樹脂と鎖延長されていないエポキシ当量500以下のエポキシ樹脂を系内で混合した後、(メタ)アクリル酸と反応して導入してもよい。
【0017】
本発明における上記ビニルエステル(A)は、本発明最大の目的である高レベルの強度・耐熱性と耐衝撃性・靭性の両特性を兼備させることの必要上、GPCによって求められる分子量4000以上の成分が20〜50質量%、同分子量1000以上、4000未満の成分が0〜60質量%、同分子量1000未満の成分が20〜50質量%の分子量分布を有するものでなければならず、より好ましい分子量分布は、分子量4000以上の成分が25質量%以上、40質量%以下、同分子量1000以上、4000未満の成分が20質量%以上、50質量%以下、同分子量1000未満の成分が25質量%以上、40質量%以下の分子量分布を有するものである。
【0018】
分子量4000以上の成分が20質量%未満では、得られる硬化物が脆弱となり、一方50質量%を超えると、粘度が高くなって取扱い性が悪くなるので好ましくない。分子量1000未満のビニルエステルが20質量%未満では、硬化物の強度・耐熱性が乏しくなり、50質量%を超えると、得られる硬化物が脆くなり、いずれも本発明の意図にそぐわなくなる。
【0019】
本発明に係る上記ビニルエステル(A)は、その末端の(メタ)アクリロイル基同士の距離が比較的長い高分子量ビニルエステル成分と、同距離が比較的短い低分子量成分の適度な混在によって、強度・耐熱性を低下させることなく耐衝撃性・靭性が向上するものと考えられる。
【0020】
ビニルエステル全体の数平均分子量(Mn)の測定、およびビニルエステル中に占める各分子量範囲の含有量は、ゲルパーミエーション クロマトグラフィー(GPC)装置を用いることによって求めることができる。本発明では、以下の条件で測定した。
【0021】
なお数平均分子量(Mn)と分子量の各ポイントは、標準サンプルとしてポリスチレンオリゴマー(「TSKスタンダードポリスチレン」;東ソー社製)を使用し、この標準サンプルを用いて上記GPC条件における分子量検量線を作成して求めた。
【0022】
例えば、分子量4000以上の高分子量ビニルエステルの含有量は、この検量線を用い次の方法で求めた。まず、上記GPC条件で測定対象のビニルエステルのクロマトグラムを得る。図1に、検量線とクロマトグラムの例を示す。横軸がリテンションタイム(分)、検量線の縦軸が分子量Mの常用対数(LogM)であり、クロマトグラムの縦軸は検出強度(mV)である。検量線上の分子量4000の点から垂線を下ろしたとき、この垂線とベースラインとピーク波形で囲まれた高分子量領域側の面積S1についての、クロマトグラム曲線とベースラインで囲まれた全ピーク波形面積S0に対する率(S1/S0)を、全ビニルエステル中に占める分子量4000以上の高分子量の含有量(質量%)とした。分子量1000未満のものについても、4000以上のものと同様にして求めた。
【0023】
本発明に係るビニルエステルの原料であるビスフェノール成分は、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールであり、ビスフェノールは、下記一般式(1)で表される。中でも特に好ましいのはビスフェノールA、即ち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0024】
【化1】
【0025】
また、ブロム化ビスフェノールの具体例は下記一般式(2)で表すことができ、好ましい具体例としては、2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。特に、2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、いわゆるテトラブロムビスフェノールAは、入手が容易で1分子当たりのブロム数が多いので好ましい。ブロム化ビスフェノールAは、例えば、東ソー社製の商品名「フレームカットシリーズ」として市販されている。
【0026】
【化2】
【0027】
ビスフェノールとブロム化ビスフェノールの使用割合は特に限定されないが、ビスフェノール成分中のブロム化ビスフェノールのモル%を15モル%以上とすることが好ましい。15モル%未満では、成形品が難燃性不足になることがあるが、エポキシ成分中のブロム化ビスフェノール型エポキシの使用量を多くし、ビニルエステル中のブロム含有量を10質量%以上にすれば、十分な難燃性を得ることができる。ブロム化ビスフェノールは30モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。
【0028】
本発明に係るビニルエステルの第2の原料となるエポキシ成分は、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシである。前述したビスフェノールあるいはブロム化ビスフェノールにエピクロロヒドリンを公知の条件で反応させれば、下記一般式(3)で代表されるビスフェノール型エポキシや、下記一般式(4)で代表されるブロム化ビスフェノール型エポキシを得ることができ、また、種々のクレードのものが市販されている。これらの中でも特に好ましいのは、一般式(3)、(4)においてY1、Y2がいずれも−C(CH3)2−でc〜fがいずれも2であるビスフェノールA型エポキシ樹脂およびブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、これらは、例えば東都化成株式会社製の「エポトートYDシリーズ」や「エポトートYDBシリーズ」等として入手できる。
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
上記ビスフェノール型エポキシとブロム化ビスフェノール型エポキシとのモル比率(ブロム化ビスフェノール型エポキシ/ビスフェノール型エポキシ)は、20〜0.1が好ましい。このモル比率が20を超えると、ビニルエステルとラジカル重合性単量体(例えば、スチレンなど)との相溶性が低下することがあり、0.1未満では成形品が難燃性不足になることがある。上記モル比率のより好ましい範囲は5〜0.1、更に好ましくは1.0〜0.1である。
【0032】
ビニルエステルの合成反応は、ビスフェノール成分、エポキシ成分、(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートを一気に仕込んで一括して行う方法(方法1)、ビスフェノール成分とエポキシ成分による鎖延長反応を先に行い、次いで、(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる方法(方法2)、ビスフェノール成分とエポキシ成分による鎖延長反応を行い、新たに鎖延長されていないエポキシ成分を追加した後、(メタ)アクリル酸を反応させる方法(方法3)、エポキシ当量500以下のビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させる方法(方法4)、ビスフェノール成分とエピクロルヒドリン反応させ、次いで、(メタ)アクリル酸を反応させる方法(方法5)のいずれも採用可能である。
【0033】
上記方法1を採用してビニルエステルを合成するに当たり、ビスフェノール成分、エポキシ成分[グリシジル(メタ)アクリレートを含む]、および(メタ)アクリル酸の原料中における各々の比率は特に限定されないが、エポキシ成分[グリシジル(メタ)アクリレートを含む]のエポキシ基1当量に対し、ビスフェノール成分に含まれるフェノール性ヒドロキシル基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の合計量が0.9〜1.1当量となる様に仕込んで反応させることが好ましい。
【0034】
ビスフェノール成分と(メタ)アクリル酸とのモル比は、ビスフェノール成分に含まれるフェノール性ヒドロキシル基の合計1当量に対し、(メタ)アクリル酸の有するカルボキシル基が0.3〜1.3当量、より好ましくは0.1〜1.3当量となるように仕込んで反応させることが望ましい。ビスフェノール成分が少ないと、高分子量ビニルエステル、特に、分子量4000以上のものが少なくなるため好ましくなく、(メタ)アクリル酸が少ないと、ラジカル重合性樹脂組成物の硬化性が低くなる恐れがある。
【0035】
前記方法2の(メタ)アクリル酸単独使用を採用する場合には、最初の鎖延長反応では、エポキシ成分のエポキシ基1当量に対し、ビスフェノール成分のフェノール性ヒドロキシル基が0.5〜0.9当量となるように仕込むことが好ましい。ビスフェノール成分が0.5当量未満では、高分子量ビニルエステル、特に、分子量4000以上のものが少なくなるため好ましくなく、ビスフェノール成分が0.9当量を超えると、最終的に得られるビニルエステルの分子量が大きくなり過ぎてラジカル重合性樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が低下するため好ましくない。エポキシ成分のエポキシ基1当量に対し、ビスフェノール成分のフェノール性ヒドロキシル基は0.6〜0.8当量が特に好ましい。
【0036】
続いて行われる(メタ)アクリロイル基の導入反応では、鎖延長反応で得られた反応生成物、すなわち鎖延長化エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対し、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基が0.9〜1.1当量となるように仕込むことが好ましい。
【0037】
前記方法3を採用する場合、ビスフェノール成分とエポキシ成分による鎖延長反応は前記方法2と同様であり、新たに鎖延長されていないエポキシ当量500以下のエポキシ成分を追加した後、(メタ)アクリル酸を反応させればよい。
【0038】
前記方法4のエポキシ当量500以下のビスフェノールA型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノールA型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、従来のビニルエステルの製法と同様にして行なうことができ、得られた反応生成物は前記方法1または2で製造された鎖延長されたビニルエステルとブレンドして使用する。
【0039】
前記方法5のビスフェノール成分とエピクロルヒドリンを反応させてから(メタ)アクリル酸を反応させる方法は、ビスフェノール成分のヒドロキシル基に対して2〜10倍当量程度の過剰量のエピクロルヒドリンをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させ、反応後、未反応エピクロルヒドリンおよびアルカリ金属水酸化物除去してから、これに(メタ)アクリル酸を反応させればよい。
【0040】
前記方法5を除くビニルエステル合成反応条件は特に限定されないが、好ましい温度は80〜130℃であり、この温度で反応が完了するように反応時間を適宜設定して行なえばよい。この際、反応促進のために反応触媒を添加することも有効であり、また、重合反応や重合進行によるゲル化等を起こすことのないよう、重合禁止剤や分子状酸素を添加しておくことが好ましい。
【0041】
反応触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;2−エチル−4−イミダゾール等のイミダゾール類;アミド類;ピリジン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフエニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフエニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩;スルホニウム塩;スルホン酸類;オクチル酸亜鉛などの有機金属塩等が挙げられる。
【0042】
これらの反応触媒は、ビニルエステル合成原料の合計に対し、0.005〜3.0質量%の範囲が好ましく、0.005質量%未満では、反応が十分に進行し難くなる恐れがあり、また反応促進効果は3.0質量%程度で飽和しそれ以上の添加は経済的に無駄である。反応触媒のより好ましい添加量は、0.05〜1.0質量%である。
【0043】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルベンゾキノン、ナフトキノン、フェノチアジン、N−オキシル化合物等が挙げられる。また、分子状酸素を反応容器内に存在させても重合禁止効果があり、例えば空気、あるいは空気と窒素等の不活性ガスとの混合ガス等を、反応容器に吹き込む所謂バブリングを行えばよい。重合禁止効果を高めるには、重合禁止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。
【0044】
本発明では、ビニルエステルの分子量を高めることを1つの目的としており、それに伴って、生成するビニルエステルは高粘度になるので、合成反応を希釈剤の存在下で行なうことも勿論有効である。希釈剤として不活性有機溶剤を使用した場合は、ビニルエステル合成反応の後に脱溶剤処理を行なえばよい。また、合成されたビニルエステルは、スチレン等のラジカル重合性単量体と共にラジカル重合性樹脂組成物として使用されるものであり、上記合成反応をラジカル重合性単量体の存在下で行う方法を採用すれば、反応生成物がそのままラジカル重合性樹脂組成物となり、各種成形材料等の原料として使用することができるので、脱溶剤工程が不要になるというメリットがある。
【0045】
上記方法5によれば、上記の様にして、本発明で用いられるビニルエステルが生成する。本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、上記ビニルエステルとラジカル重合性単量体とを必須的に含む。ラジカル重合性樹脂組成物中の上記ビニルエステルの量は特に限定されないが、20〜80質量%の範囲が好ましい。80質量%を超えると樹脂粘度が高くなって作業性が低下し、20質量%未満では、成形品の強度・耐熱性や難燃性が不充分になる恐れがあるからである。
【0046】
なお、(メタ)アクリル酸に代えて又はこれと併用されるグリシジル(メタ)アクリレートは、ビスフェノールまたはブロム化ビスフェノールのヒドロキシル基と反応するので、上記各方法を実施する際に、原料もしくは反応物中に未反応の水酸基が存在する場合は、これにグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、或は、原料もしくは反応物中に未反応の水酸基を積極的に残存させてこれにグリシジル(メタ)アクリレートを反応させれば、前述したエポキシ末端に(メタ)アクリル酸を反応させる場合と同様に、分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。そして該グリシジル(メタ)アクリレートを使用する場合の反応も、前述した(メタ)アクリル酸を使用する場合と実質的に同様にして行なえばよい。
【0047】
本発明にかかる上記ラジカル重合性樹脂組成物には、本発明の目的を妨げない範囲で、上記ビニルエステル以外のビニルエステル、不飽和ポリエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性オリゴマーが含まれていても構わない。
【0048】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性単量体は、スチレンを主成分とすることが最も好ましい。スチレンは、本発明におけるブロム含有量の多いビニルエステルとの重合反応性が良好で且つ相溶性にも優れており、強度・耐熱性と耐衝撃性・靱性とのバランスに優れた成形品が得られ易いからである。
【0049】
ラジカル重合性単量体としてスチレンを使用する際におけるラジカル重合性樹脂組成物中のスチレンの量は、10〜80質量%が好ましい。スチレンが80質量%を超えると、ビニルエステルの量が相対的に少なくなって成形品の強度・耐熱性や難燃性が不充分になる恐れがある。より好ましいスチレンの上限は60質量%、さらに好ましくは50質量%である。一方、スチレンが10質量%未満では、希釈効果が十分に発揮されず作業性が低下するか、スチレン以外のモノマー量を多くしなければならなくなって、ビニルエステルとの相溶性が低下したり、硬化に時間がかかることがある。より好ましいスチレン量の下限は20質量%、さらに好ましくは30質量%である。
【0050】
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物を成形材料として使用するに当たっては、該樹脂組成物を無機充填材や繊維強化材などの無機材と併用することがある。よって、この際の前記無機材との濡れ性を向上させるため、カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体を少量配合することが好ましく、この様なラジカル重合性単量体としては、入手が容易で共重合性にも優れた(メタ)アクリル酸が好ましいものとして挙げられる。
【0051】
カルボキシル基含有単量体の配合量は、ラジカル重合性樹脂組成物中に占める比率で1〜10質量%が好ましく、1質量%未満では濡れ性改善効果が不十分となる。より好ましい下限は2質量%、さらに好ましい下限は3質量%である。一方、カルボキシル基含有単量体が10質量%を超えると、成形品の耐水性や耐湿性が低下することがある。このような観点から、より好ましい上限は8質量%、さらに好ましい上限は7質量%である。
【0052】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には、上記スチレンやカルボキシル基含有単量体以外にも、公知のラジカル重合性単量体を使用できる。具体的には、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族系単量体類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;トリアリルシアヌレート等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0053】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、成形材料の樹脂成分として使用され、最終的には重合硬化させられる。このラジカル重合性樹脂組成物は、そのままで成形材料や塗膜形成材などとして使用できるが、特に成形材料として使用する際には、該樹脂組成物と共に無機充填材や繊維強化材を複合して使用するのがよく、これらを含む複合成形材料は成形性や成形品の物性に優れているので、本発明の好ましい実施態様の1つとして推奨される。
【0054】
無機充填材としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、金属粉末、カオリン、タルク、ミルドファイバー、珪砂、珪藻土、結晶性シリカ、溶融シリカ、ガラス粉、クレー等が挙げられる。これらの中でも成形性に優れ、難燃性の向上に効果的な水酸化アルミニウムが好ましい。無機充填材は、ラジカル重合性樹脂組成物100質量部に対し、30〜400質量部配合することが好ましい。
【0055】
一方、繊維強化材の素材は特に限定されないが、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、ポリアミド系(全芳香族系も含む)、フッ素樹脂系、フェノール系の各種有機繊維が使用可能である。繊維強化材の形状も、クロス;チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、サーフェーシングマット等のマット状;チョップ状;ロービング状;不織布状;ペーパー状等いかなる形状であってもよい。
【0056】
繊維強化材は、目的とする成形品の形状に応じて予めその形状を決めておき、成形前のラジカル重合性樹脂組成物に含浸させて使用する方法や、ラジカル重合性樹脂組成物中にチョップ状の強化繊維を混合して成形材料とした後、所望形状に成形する等の方法で使用することができる。繊維強化材は、ラジカル重合性樹脂組成物100質量部に対し、10〜300質量部の範囲で使用することが好ましい。10質量部未満では、成形品が強度不足になる可能性があり、300質量部を超えると、成形品の耐水性や耐薬品性等が低下することがあるため、好ましくない。より好ましい繊維強化材の範囲は、20〜100質量部である。
【0057】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物を実際に硬化させて使用する際には、加熱するか、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線を照射すればよいが、熱あるいは光重合開始剤を配合しておくことが好ましい。
【0058】
熱重合開始剤としては公知のものを使用でき、具体的には、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオジケネート、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1、1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジエチルバレロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0059】
また、熱重合時には硬化促進剤を混合して使用してもよく、硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等あるいは三級アミンが代表例として挙げられる。
【0060】
熱重合開始剤は、ラジカル重合性樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜5.0質量部の使用が好ましい。
【0061】
光重合開始剤としては、公知のものが特に限定されず使用できる。光重合開始剤は、ラジカル重合性樹脂組成物100質量部に対し0.1〜5.0質量部含まれていることが好ましい。また、公知の光増感剤を併用してもよい。
【0062】
光重合開始剤を配合したラジカル重合性樹脂組成物や成形材料を硬化させるには、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線を公知の装置を用いて成形材料に照射すればよい。紫外線照射装置としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を備えたものが使用できる。また電子線照射装置としては、例えば、走査型エレクトロカーテン型、カーテン型、ラミナー型、エリアビーム型、ブロードビーム型、ハルスビーム型等が挙げられる。
【0063】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等の不活性溶剤を希釈剤として、また、含リン化合物、含窒素化合物、赤燐、酸化アンチモン、ほう素化合物などを難燃剤や難燃助剤として配合されていてもよく、さらに、必要に応じて、顔料、着色剤、耐炎剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、防錆剤、静電防止剤、熱可塑性樹脂、エラストマー等を配合することができる。
【0064】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、フィルム、接着剤、電気絶縁塗料等の様々な分野において有効に利用できる他、前述した無機充填材や繊維強化材と複合することによって、建材、ハウジング類、注型材や、機械部品、電子・電気部品、車両、船舶、航空機等の各部材等に幅広く使用できる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の範疇に含まれる。なお、実施例中の部、%は、特に限定されない限り、質量基準である。また、下記実施例で採用した性能評価法は下記の通りである。
【0066】
[破壊靱性値]
図2に示すサイズの硬化物のサンプルを作成し、中央の切り欠き部先端に剃刀でスタータークラックを入れる。切欠き部の長さは2mm、幅は1mm、スタータークラックの長さは2mmであり、よってaは4mmである。このサンプルに対し、10mm/minの速度でサンプル中央部に下向きに荷重をかけたときの加重−時間カーブ(図3)を求め、破壊時の荷重(Pc)、クラックの長さ(a)等から下記式により破壊靱性値(MPa・m1/2)を算出する。
【0067】
【数1】
【0068】
[荷重たわみ温度]
JIS K6911に準拠し、東洋精機社製のH.D.T.&V.S.P.T.TESTERを用いて測定する。
【0069】
[難燃性]
硬化物について、「UL−94」に準拠して燃焼試験を行なう。V−0は、難燃性が優れたものであることを表わし、HBレベルは難燃性が低いことを表わす。
【0070】
合成例1
攪拌機、還流冷却器、ガス導入管、温度計を備えたフラスコを反応容器とし、テトラブロムビスフェノールA[TBBA;2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン](東ソー社製、商品名「フレームカット120G」)1088部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(非ブロムタイプ;東都化成社製、商品名「エポトートYD−127」、エポキシ当量184)894部と、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「エポトートYDB−400」、エポキシ当量402)459部、メタクリル酸176部、トリエチルアミン(反応触媒)5.2部、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.52部を仕込み、空気を導入しながら110℃で8時間反応させることにより、酸価5.0mgKOH/gのビニルエステル(1)を得た。このビニルエステル(1)のブロム含有量は約33%、また数平均分子量(Mn)は1600であり、このビニルエステル中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は34/50/16%であった。このビニルエステル(1)にスチレン1249部を加え、ラジカル重合性樹脂組成物(1)を得た。
【0071】
合成例2
上記合成例1と同様の反応容器に、「フレームカット120G」1088部と、「エポトートYD−127」994部と、スチレン1050部、トリエチルアミン(反応触媒)4.4部、ハイドロキノン0.2部、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル0.2部を仕込み、空気を導入しながら120℃で5時間反応させた。酸価1.0mgKOH/g以下であることを確認した後、メタクリル酸123部、トリエチルアミン(反応触媒)4.4部、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.2部を仕込み、空気を導入しながら115℃で5時間反応させ、酸価3.0mgKOH/gのラジカル重合性樹脂組成物(2)を得た。この組成物中に含まれるビニルエステル(2)のブロム含有量は約29%、また数平均分子量(Mn)は1940であり、ビニルエステル中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は47/42/11%であった。
【0072】
合成例3
上記合成例1と同様の反応容器に、「フレームカット120G」1088部と、「エポトートYD−127」920部と、「エポトートYDB−400」804部、メタクリル酸263部、トリエチルアミン(反応触媒)6.2部、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.62部を仕込み、空気を導入しながら110℃で8時間反応させ、酸価5.0mgKOH/gのビニルエステル(3)を得た。このビニルエステル(3)のブロム含有量は約34%、また数平均分子量(Mn)は1200であり、ビニルエステル(3)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は18/50/32%であった。上記ビニルエステル(3)にスチレン1467部を加え、ラジカル重合性樹脂組成物(3)を得た。
【0073】
合成例4
前記合成例1と同様の反応容器にビスフェノールA(BPA;三井化学社製の「ビスフェノールA」)285部、「フレームカット120G」408部、「エポトートYD−127」920部、「エポトートYDB−400」804部、トリエチルアミン5.2部、ハイドロキノン0.52部を仕込み、空気を導入しながら110℃で4時間反応させた。酸価が1.0mgKOH/gになったのを確認した後、メタクリル酸263部を加え、さらに110℃で5時間反応させることにより、酸価4.0mgKOH/gのビニルエステル(4)を得た。このビニルエステル(4)のブロム含有量は約24%、また数平均分子量(Mn)は1120であり、ビニルエステル(4)中、分子量4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は15/49/36%であった。このビニルエステル(4)にスチレン1143部を加えてラジカル重合性樹脂組成物(4)を得た。
【0074】
合成例5
前記合成例1と同様の反応容器に「ビスフェノールA」228部、「エポトートYD−127」736部、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド(反応触媒)2.1部、ハイドロキノン0.21部を仕込み、空気を導入しながら110℃で5時間反応させた。酸価が1.0mgKOH/gになったのを確認した後、メタクリル酸181部を加え、さらに110℃で5時間反応させることにより、酸価4.0mgKOH/gのビニルエステル(5)を得た。このビニルエステル(5)のブロム含有量は0%、また数平均分子量(Mn)は901であり、ビニルエステル(5)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は9/46/45であった。このビニルエステル(5)にスチレン530部を加え、ラジカル重合性樹脂組成物(5)を得た。
【0075】
合成例6
上記合成例1と同様の反応容器に、ビスフェノールA(同前)456部、「エポトートYD−127」994部、スチレン750部、トリエチルアミン3.2部、ハイドロキノン0.16部、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル0.16部を仕込み、空気を導入しながら120℃で5時間反応させる。酸価が1.0mgKOH/g以下となっていることを確認した後、これにメタクリル酸123部、トリエチルアミン3.2部、ハイドロキノン0.16部を加え、空気を導入しながら115℃で5時間反応させ、酸価3.0mgKOH/gのラジカル重合性樹脂組成物(6)を得た。この組成物中に含まれるビニルエステル(6)のブロム含量は約0%、数平均分子量(Mn)は1780であり、ビニルエステル中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は42/43/15であった。
【0076】
合成例7
前記合成例1と同様の反応容器に、「エポトートYDB−400」1608部、メタクリル酸351部、トリエチルアミン3.9部、ハイドロキノン0.39部を仕込み、空気を導入しながら110℃で6時間反応させ、酸価4.0mgKOH/gのビニルエステル(7)を得た。このビニルエステル(7)のブロム含有量は約40%で、数平均分子量(Mn)は480であり、該ビニルエステル(7)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は0/8/92であった。このビニルエステル(7)にスチレン840部を加え、ラジカル重合性樹脂(7)を得た。
【0077】
合成例8
前記合成例1と同様の反応容器に、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「エポトートYDB−500」、エポキシ当量517)2068部、メタクリル酸351部、トリエチルアミン4.8部、ハイドロキノン0.48部を仕込み、空気を導入しながら110℃で6時間反応させ、酸価4.0mgKOH/gのビニルエステル(8)を得た。このビニルエステル(8)のブロム含有量は約19%で、数平均分子量(Mn)は1030であり、ビニルエステル(8)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は12/55/33であった。このビニルエステル(8)にスチレン1037部を加え、ラジカル重合性樹脂(8)を得た。
【0078】
合成例9
前記合成例1と同様の反応容器に、「エポトートYD−127」710部、メタクリル酸338部、トリエチルアミン3.5部、ハイドロキノン0.35部を仕込み、空気を導入しながら110℃で6時間反応させ、酸価4.0mgKOH/gのビニルエステル(9)を得た。このビニルエステル(9)のブロム含有量は約0%で、数平均分子量(Mn)は390であり、ビニルエステル(9)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は0/1/99であった。このビニルエステル(9)にスチレン450部を加え、ラジカル重合性樹脂組成物(9)を得た。
【0079】
合成例10
前記合成例1と同様の反応容器に、「エポトートYD−127」552部、テトラブロムビスフェノールA1360部、グリシジルメタクリレート284部、トリエチルアミン9.2部、ハイドロキノン0.8部、反応希釈剤としてスチレン400部を仕込み、空気を導入しながら110℃で9時間反応させ、酸価2.5mgKOH/gのビニルエステル(10)のスチレン混合物を得た。このビニルエステル(10)のブロム含有量は約36%で、数平均分子量(Mn)は1750であり、ビニルエステル(10)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は33/50/17であった。このビニルエステル(10)にスチレン450部を加え、ラジカル重合性樹脂組成物(10)を得た。
【0080】
合成例11
前記合成例1と同様の反応容器に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(非ブロムタイプ;東都化成社製、商品名「エポトートYDF−170」、エポキシ当量170)680部、テトラブロムビスフェノールA1088部、メタクリル酸86部、トリエチルアミン8.0部、ハイドロキノン0.7部、反応希釈剤としてのスチレン300部を仕込み、空気を導入しながら110℃で5時間反応させる。次いでグリシジルメタクリレート142部を投入して更に110℃で10時間反応させ、酸価3.0mgKOH/gのビニルエステル(11)のスチレン混合物を得た。このビニルエステル(11)のブロム含有量は約32%で、数平均分子量(Mn)は1630であり、ビニルエステル(11)中、分子量が4000以上/1000〜4000/1000以下のものの比は36/48/16であった。このビニルエステル(11)にスチレン652部を加え、ラジカル重合性樹脂組成物(11)を得た。
【0081】
上記合成例1〜11で用いた原料配合(モル)と、得られた樹脂組成物のブロム量(質量%)、エポキシ/フェノール比、数平均分子量および分子量分布を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例および比較例
上記で得た各ラジカル重合性樹脂組成物を、表2に示す比率(質量比)で配合し、熱重合開始剤(日本油脂社製、商品名「パーブチルZ」)1.0部を加えて均一に混合した後、熱風循環式乾燥炉中、110℃で30分間、さらに150℃で30分間加熱して硬化させた。得られた樹脂硬化物について、前述した方法で破壊靱性値および荷重たわみ温度を測定した。
【0084】
一方、上記各ラジカル重合性樹脂組成物100部に対し、無機充填材として水酸化アルミニウム(昭和電工社製、商品名「ハイジライトH−320」)150部を加えて均一に混合し、さらに、熱重合開始剤(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)1.0部を配合して攪拌し、成形材料を調製し、30cm×30cm×2mmのガラスケース内に注型した。この注型板を熱風循環式乾燃炉中で、110℃で30分間、さらに150℃で30分間加熱して硬化させた。硬化後、室温まで冷却して脱型した。この成形品について難燃性を測定し、結果を表2,3に示した。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表2,3からも明らかなように、本発明実施例は、破壊靱性値、荷重たわみ温度の何れにおいても優れた結果が得られている。また、ブロム量がゼロの実施例6を除いて、いずれも優れた難燃性を示している。これらに対し比較例は、破壊靭性値と荷重たわみ温度の何れかが低く、本発明の所期の目的を達成できないことが分かる。
【0088】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されており、強度・耐熱性に優れると共に、耐衝撃性・靭性に優れた硬化物を与え、あるいは更に難燃性にも優れた硬化物を与えるビニルエステル系のラジカル重合性樹脂組成物を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビニルエステル成分の分子量分布量の特定方法を説明するためのGPCのクロマトグラムと検量線である。
【図2】破壊靭性値を測定するための硬化試験片を示す断面図である。
【図3】破壊靱性値を測定した時の荷重−時間カーブである。
Claims (7)
- GPCによって求められる分子量4000以上の成分が20〜40質量%、同分子量1000以上、4000未満の成分が20〜60質量%、同分子量1000未満の成分が20〜40質量%の分子量分布を有するビスフェノール型ビニルエステル(A)と、
スチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレート類から選択される1種または2種以上のラジカル重合性単量体(B)を含有するラジカル重合性樹脂組成物であって、
前記ラジカル重合性樹脂組成物中、前記ビスフェノール型ビニルエステル(A)の含有量が20質量%以上、80質量%以下であり、スチレンの含有量が10質量%以上、80質量%以下であることを特徴とするラジカル重合性樹脂組成物。 - 前記ビスフェノール型ビニルエステル(A)が、10〜45質量%のブロムを含むものである請求項1に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
- 前記ビスフェノール型ビニルエステル(A)が、ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールと、ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシと、(メタ)アクリル酸および/またはグリシジル(メタ)アクリレートとから合成されたものである請求項1または2に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
- 前記ビスフェノールおよび/またはブロム化ビスフェノールが、ビスフェノールAおよび/またはブロム化ビスフェノールAである請求項1〜3のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
- 前記ビスフェノール型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノール型エポキシが、ビスフェノールA型エポキシおよび/またはブロム化ビスフェノールA型エポキシである請求項1〜4のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
- 前記ラジカル重合性樹脂組成物中、(メタ)アクリル酸の含有量が1質量%以上、10質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
- 前記ビスフェノール型ビニルエステル(A)が混合物である請求項1〜6のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物。
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