JP3652803B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像により画像を形成する熱現像感光材料(以下「感材」ともいう)に関するもので、さらに詳しくは水溶液の塗布量を用いて塗設された感光層を有し、かつ高湿雰囲気下で保存してもカブリの低い熱現像感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料は、数多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易化できるシステムとして、熱現像により、画像を形成する技術が挙げられる。
【0003】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3152904号、同3457075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1969年)に記載されている。このような感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0004】
このような熱現像により画像を形成する感光材料(熱現像感光材料)は、近年ますます高まっている処理の簡易化、環境保全といった要求に合致するものである。
【0005】
従来からこのタイプの熱現像感材は知られているが、これらの感材の多くはトルエン、メチルエチルケトン、(HEK)、メタノールなどの有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布することにより感光層を形成している。有機溶剤を溶媒として用いることは、製造工程での人体への悪影響だけでなく溶剤の回収その他のためコスト上も不利である。
【0006】
そこでこのような心配のない水溶媒の塗布液を用いて感光層(以降「水系感光層」ともいう。)を形成する方法が考えられている。例えば特開昭49−52626号、特開昭53−116144号などにはゼラチンをバインダーとする例が記載されている。また特開昭50−151138号にはポリビニルアルコールをバインダーとする例が記載されている。
【0007】
さらに特開昭60−61747号にはゼラチンとポリビニルアルコールを併用した例が記載されている。これ以外の例として特開昭58−28737号には水溶性ポリビニルアセタールをバインダーとする感光層の例が記載されている。
【0008】
確かにこのようなバインダーを用いると水溶媒の塗布液を用いて感光層を形成することができて環境面、コスト面のメリットは大きい。
【0009】
しかしながら、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアセタールなどのポリマーをバインダーとして用いると、高湿下で長期間保存した場合に感光材料のカブリが大きくなるという欠点を有していた。
【0010】
そこで、環境面、コスト面で有利な水系感光層を用いて高湿雰囲気下で保存した時のカブリを小さく抑える技術が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、環境保全やコスト面で有利な水溶媒の塗布液を塗布して感光層を形成することができて、かつ高湿雰囲気下で使用や保存してもカブリの低い熱現像感光材料を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の本発明によって達成される。
(1)支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有し、長鎖脂肪族カルボン酸銀塩およびこの長鎖脂肪族カルボン酸銀塩の還元剤を含有する熱現像感光材料において、前記還元剤がヒンダードフェノール還元剤であり、前記感光層の主バインダーが25℃60%RH での平衡含水率が2wt% 以下のポリマーであり、前記感光層が、溶媒の30重量%以上が水である塗布液を用いて塗布し乾燥して形成されたことを特徴とする熱現像感光材料。
(2)前記ヒンダードフェノール還元剤がビスフェノールである上記(1)の熱現像感光材料。
(3)前記感光層の主バインダーが水系溶媒に分散したポリマーである上記(1)または(2)の熱現像感光材料。
(4)前記感光層が、溶媒の70重量%以上が水である塗布液を用いて形成された上記(1)〜(3)のいずれかの熱現像感光材料。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の熱現像感光材料は、支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有するものであり、本発明の感光層のバインダー(以降「本発明のポリマー」という。)は、水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能で、25℃60%RH における平衡含水率が2wt% 以下のポリマーである。
【0014】
このようなポリマーを用いることによって、30重量%以上の水を含有する水溶媒を塗布溶媒に用いた感光層の塗設が可能となり、環境面、コスト面で有利となり、また特に高湿雰囲気下での保存によるカブリの発生が抑制される。これに対し、上記の平衡含水率が2wt% をこえると高湿雰囲気下での保存によるカブリが上昇してしまう。また有機溶剤を用いた塗布は上記の水溶媒に比べ、環境面、コスト面で不利となる。
【0015】
ここでいう本発明のポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70wt% 以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0016】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0017】
本発明でいう「25℃60%RH における平衡含水率」とは、25℃60%RH の雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1 と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0 を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RH における平衡含水率={(W1 −W0 )/W0 }×100(wt% )
実際の測定は後記実施例に示すようにして行うことができる。
【0018】
本発明のポリマーは、前述の水系溶媒に可溶または分散可能で25℃60%RH における平衡含水率が2wt% 以下であれば特に制限はない。これらのポリマーのうち、水系溶媒に分散可能なポリマーは特に好ましい。分散状態の例としては、ポリマー固体の微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。
【0019】
本発明のポリマーの25℃60%RH における平衡含水率は2wt% 以下であることが必要であるが、好ましくは0.01wt% 以上1.5wt% 以下、さらに好ましくは0.02wt% 以上1wt% 以下が望ましい。
【0020】
本発明のポリマーとしては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ゴム系樹脂(例えばSBR樹脂やNBR樹脂)、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などがある。
【0021】
ポリマーとしては単一のモノマーが重合したホモポリマーでもよいし、2種以上のポリマーが重合したコポリマーでもよい。ポリマーとしては直鎖状のものでも枝分かれしたものでもよい。さらにポリマー同士が架橋されているものでもよい。
【0022】
ポリマーの分子量としては重量平均分子量Mwが1000〜1000000、好ましくは3000〜500000のものが望ましい。分子量が1000未満のものは一般に塗布後の皮膜強度が小さく、感光層のヒビ割れなどの不都合が生ずる場合がある。
【0023】
本発明の感光層の主バインダーのポリマーの具体例としては、以下のようなものがある。
P−1 −(MMA)50−(EA)45−(AA)5 −のラテックス(Mw=3万)
P−2 −(2EHA)30−(MMA)50−(St)15−(MAA)5 −のラテックス(Mw=5万)
P−3 −(BR)50−(St)47−(AA)3 −のラテックス(Mw=1万)
P−4 −(BR)40−(DVB)10−(St)45−(MAA)5 −のラテックス(Mw=5万)
P−5 −(VC)70−(MMA)25−(AA)5 −のラテックス(Mw=1.5万)
P−6 −(VDC)60−(MMA)30−(EA)5 −(MAA)5 −のラテックス(Mw=8万)
【0024】
上記において、略号は以下に示すモノマーから誘導される構成単位を表し、数値はwt% である。
【0025】
MMA:メチルメタクリレート、EA:エチルアクリレート、AA:アクリル酸、2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、St:スチレン、MAA:メタクリル酸、BR:ブタジエン、DVB:ジビニルベンゼン、VC:塩化ビニル、VDC:塩化ビニリデン
【0026】
またこのようなポリマーは市販もされていて以下のようなものが利用できる。
【0027】
例えばアクリル樹脂としては、セビアンA−4635、46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、820、821、857(以上日本ゼオン(株)製)など、
ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、679、675、525、801、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WDsize WHS(イーストマンケミカル製)など、
ポリウレタン樹脂としては、HYDRAN AP10、20、30、40、101H、HYDRAN HW301、310、350(以上大日本インキ化学(株)製)など、
塩化ビニリデン樹脂としては、L502、L513、L123c、L106c、L111、L114(以上旭化成工業(株)製)など、
塩化ビニル樹脂としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、
ポリオレフィン樹脂としては、ケミパールS−120、S−300、SA−100、A−100、V−100、V−200、V−300(以上三井石油化学(株)製)などがある。
【0028】
本発明のバインダーはこれらのポリマーを単独で用いてもよいし、2種類以上ブレンドして用いてもよい。
【0029】
本発明の感光層には上記ポリマーを主バインダーとして用いる。ここでいう主バインダーとは「感光層の全バインダーの70wt% 以上を上記のポリマーがしめている状態」をいう。さらに好ましくは80wt% 以上であり、本発明のポリマーのみを用いることも好ましい。2種類以上を用いるときは合計量である。
【0030】
したがって本発明の感光層には25℃60%RH における平衡含水率が2wt% をこえるポリマーを、全バインダーの30wt% 以下、特には30wt% 未満、より好ましくは20wt% 以下含有させてもよい。これらのポリマーの好ましい例としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、などがある。
【0031】
本発明の感光層において、上記の割合で本発明のポリマーを用いることによって、ポリマー混合物の25℃60%RH における平衡含水率は2wt% 以下となる。
【0032】
本発明の感光層のバインダーの量は、バインダーと感光性ハロゲン化銀の割合では、重量比で5:1〜1500:1が好ましく、10:1〜800:1がより好ましい。また、バインダーと非感光性銀塩の割合では15:1〜1:2が好ましく、8:1〜1:1の範囲がより好ましい。
【0033】
本発明において感光層は塗布液を用いて形成されたものであるが、塗布液用の溶媒は水を30wt% 以上含む水溶媒であり、水のほか前記したような水混和性の有機溶媒を含有していてもよく、好ましい水溶媒の例としては、水(100)、水/メタノール系、例えば水(90)/メタノール(10)、水(70)/メタノール(30)、水(60)/メタノール(40)、水(40)/メタノール(60)、
水/メタノール/イソプロピルアルコール系、例えば水(80)/メタノール(10)/イソプロピルアルコール(10)、
水/ジメチルホルムアミド系、例えば水(95)/ジメチルホルムアミド(5)、
水/酢酸エチル系、例えば水(96)/酢酸エチル(4)、
水/エタノール/ブチルセロソルブ系、例えば水(80)/メタノール(10)/ブチルセロソルブ(10)などが挙げられる(ただし、数値はwt% を示す)。なかでも、水を70wt% 以上含む溶媒であることが好ましい。
【0034】
本発明の感材の感光層は、感光性ハロゲン化銀の粒子を含有する層である。
【0035】
この層には、必要に応じて、非感光性銀塩や銀塩の還元剤を含有させてもよく、非感光性銀塩は感光層に含有させることが好ましい。
【0036】
さらにエポキシ化合物やメラミン化合物のような架橋剤、染料、コロイダルシリカなどのフィラー、アニオン系、ノニオン系、カチオン系またはベタイン系の界面活性剤などを含有させてもよい。
【0037】
本発明の感材の感光層は1層でもよいし、2層以上でもよい。また感光層は支持体の一方の面にあっても両方の面にあってもよい。感光層が2層以上存在するとき、少なくとも1層が本発明のポリマーを用い、かつ水溶媒を塗布溶媒に用いいて塗設した本発明による感光層であればよいが、すべてが本発明による感光層であることが好ましい。
【0038】
本発明の感材の感光層の厚みは、1層当たり0.2〜30μm 、より好ましくは1〜20μm の範囲が望ましい。
【0039】
このような感光層は、感光層の組成に応じた成分と塗布溶媒の水溶媒とを含有する塗布液を用いて形成されるが、塗布液中の成分(固形分)と水溶媒との比率は、通常、成分/水溶媒の重量比が1/99〜20/80程度である。塗布後の乾燥は30〜200℃で30秒〜10分程度行えばよい。感光層は表面保護層等の他の層と別々に塗布することもできるし、同時重層塗布することもできる。
【0040】
本発明における感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えばリサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3700458号に記載されている方法を用いることができる。本発明で用いることのできる具体的な方法としては、調製された有機銀塩中にハロゲン含有化合物を添加することにより有機銀塩の銀の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する方法、ゼラチンあるいは他のポリマー溶液の中に銀供給化合物およびハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀粒子を調製し有機銀塩と混合する方法を用いることができる。本発明において、好ましくは後者の方法を用いることができる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく、具体的には0.20μm 以下、より好ましくは0.01μm 以上0.15μm 以下、更に好ましくは0.02μm 以上0.12μm 以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0041】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、本発明において特に立方体状粒子、平板状粒子が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは100:1〜2:1、より好ましくは50:1〜3:1がよい。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100}面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数{100}面の比率は増感色素の吸着における{111}面と{100}面との吸着依存性を利用したT.Tani:J.Imaging Sci.,29,165(1985年)に記載の方法により求めることができる。感光性ハロゲン化銀のハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀のいずれであってもよいが、本発明においては臭化銀、あるいはヨウ臭化銀を好ましく用いることができる。特に好ましくはヨウ臭化銀あり、ヨウ化銀含有率は0.1モル%以上40モル%以下が好ましく、0.1モル%以上20モル%以下がより好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよいが、好ましい例として粒子内部のヨウ化銀含有率の高いヨウ臭化銀粒子を使用することができる。また、好ましくはコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。
【0042】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、コバルトまたは鉄から選ばれる金属の錯体を少なくとも一種含有することが好ましい。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を二種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-2モルの範囲が好ましく、1×10-8モルから1×10-4の範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。コバルト、鉄の化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。以下に具体例を示す。
【0043】
[Fe(CN)6 ]4-
[Fe(CN)6 ]3-
[Co(CN)6 ]3-
【0044】
ハロゲン化銀中の金属錯体の含有相は均一でも、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
【0045】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0046】
本発明に用いることのできる長鎖脂肪族カルボン酸銀塩(以下において単に「有機銀塩」または「非感光性銀塩」ということがある。)は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩は、炭素数が10以上であり、好ましくは炭素数が10〜30であり、より好ましくは炭素数が15〜28である。長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、リノール酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0047】
本発明の感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩と混合方法および混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現われる限りにおいては特に制限はない。
【0048】
本発明に用いることのできる非感光性銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。非感光性銀塩は有機銀塩であることが好ましい。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10以上、さらには10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。好ましい有機銀塩はカルボキシ基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を含むがこれらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0050】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はないが、短軸と長軸を有する針状結晶が好ましい。感光性ハロゲン化銀感光材料でよく知られているように銀塩結晶粒子のサイズとその被覆力の間の反比例の関係は本発明における熱現像感光材料においても成立するため、すなわち熱現像感光材料の画像形成部である有機銀塩粒子が大きいと被覆力が小さく画像濃度が低くなることを意味することから有機銀塩のサイズを小さくすることが必要である。本発明においては短軸0.01μm 以上0.20μm 以下、長軸0.10μm 以上5.0μm 以下が好ましく、短軸0.01μm 以上0.15μm 以下、長軸0.10μm 以上4.0μm 以下がより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の百分率が好ましくは100%以下、より好ましくは、80%以下、さらに好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積荷重平均直径で割った値の百分率変動係数が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関係数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積荷重平均直径)から求めることができる。
【0051】
本発明の非感光性銀塩の添加量としては、感材1m2当たりの非感光性銀塩の塗布量で表示して0.1〜20g/m2、より好ましくは1〜15g/m2が望ましい。また、本発明の感材における銀塗布量はトータルで感材1m2当たり0.05〜15gであることが好ましい。
【0052】
非感光性銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元するヒンダードフェノール還元剤が用いられる。還元剤は、画像形成層の1〜10重量%として存在すべきである。多層構成において、還元剤を感光層以外の層に加える場合は、わずかに高い割合である約2〜15重量%がより望ましい傾向がある。
【0053】
ヒンダードフェノール還元剤としては、ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが用いられる。
【0054】
本発明では、前述の成分に加えて、画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含むと有利になることがある。色調剤は、米国特許第3080254号、同第3847612号および同第4123282号に示されるように、写真技術において周知の材料である。
【0055】
色調剤の例は、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド[例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−トリブロモメチルスルホニル)−(ベンゾチアゾール)];ならびに3−エチル−5[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体;フタラジンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III) 酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III) 酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などがある。色調剤の添加量はAg1g当たり0.05〜3g、より好ましくは、0.5〜1.5gが望ましい。
【0056】
本発明における増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるものであればいかなるものでもよい。
【0057】
増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。
【0058】
本発明に使用される有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item 17643IV-A項 (1978年12月p.23) 、同Item 1831X項 (1979年 8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
【0059】
特に各種レーザーイメージャー、スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。
【0060】
赤色光への分光増感の例としては、He−Neレーザー光源に対しては、特開昭54−18726号に記載のI−1からI−38の化合物、特開平6−75322号に記載のI−1からI−35の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34の化合物、LED光源に対しては特公昭55−39818号に記載の色素1から20、特開昭62−284343号に記載のI−1からI−37号の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34の化合物などが有利に選択される。
【0061】
750〜1400nmの範囲のいずれかの波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感する。具体的には、感光性ハロゲン化銀を、シアニン、メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノールおよびキサンテン色素を含む種々の既知の色素により、スペクトル的に有利に増感させることができる。有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核およびイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核およびピラゾロン核などの酸性核も含む。上記のシアニンおよびメロシアン色素において、イミノ基またはカルボキシル基を有するものが特に効果的である。例えば、米国特許第3761279号、同第3719495号、同第3877943号、英国特許第1466201号、同第1469117号、同第1422057号、特公平3−10391号、特公平6−52387号、特開平5−341432号、特開平6−194781号、特開平6−301141号に記載されたような既知の色素から適当に選択してよい。特に好ましい色素の構造としてはチオエーテル結合を有するシアニン色素であり、その例としては特開昭62−58239号、同3−138638号、同3−138642号、同4−255840号、同5−72659号、同5−72661号、同6−222491号、同2−230506号、同6−258757号、同6−317868号、同6−324425号、特表平7−500926号に記載されたシアニン色素が挙げられる。
【0062】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0063】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せおよび強色増感を示す物質はリサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure) 176巻 17643 (1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは前述の特公昭49−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号等に記載されている。
【0064】
本発明に用いられる増感色素は2種以上を併用してもよい。増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0065】
また、米国特許第3469987号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、この溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、この溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液として乳剤中へ添加する方法、米国特許第3822135号、同第4006025号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53−102733号、同58−105141号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法、特開昭51−74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。また、溶液に超音波を用いることもできる。
【0066】
本発明に用いる増感色素を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば米国特許第2735766号、同第3628960号、同第4183756号、同第4225666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程および/または脱塩前の時期、脱銀工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならばいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4225666号、特開昭58−7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組合せの種類を変えて添加してもよい。
【0067】
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
【0068】
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−ベンゾチアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0069】
これらのメルカプト化合物の添加量としては乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1モル当たり0.01〜0.3モルの量である。
【0070】
本発明における感光性ハロゲン化銀乳剤および/または非感光性銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組み合わせて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2131038号および同第2694716号に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2886437号および同第2444605号に記載のアザインデン、米国特許第2728663号に記載の水銀塩、米国特許第3287135号に記載のウラゾール、米国特許第3235652号に記載のスルホカテコール、英国特許第623448号に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2839405号に記載の多価金属塩、米国特許第3220839号に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2566263号および同第2597915号に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4108665号および同第4442202号に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4128557号および同第4137079号、同第4138365号および同第4459350号に記載のトリアジンならびに米国特許第4411985号に記載のリン化合物などがある。
【0071】
本発明に用いることのできるヒドラジン誘導体について説明する。本発明には、特願平6−47961号に記載の一般式(I)の化合物が用いられる。具体的には、同明細書に記載のI−1〜I−53で表される化合物が用いられる。
【0072】
また下記のヒドラジン誘導体も好ましく用いられる。
【0073】
特公平6−77138号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載の化合物。特公平6−93082号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物。特開平6−230497号に記載の一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4−1〜化合物4−10、28頁〜36頁に記載の化合物5−1〜5−42、および39頁、40頁に記載の化合物6−1〜化合物6−7。特開平6−289520号に記載の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜7頁に記載の化合物1−1)〜1−17)および2−1)。特開平6−313936号に記載の(化2)および(化3)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜19頁に記載の化合物。特開平6−313951号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁〜5頁に記載の化合物。特開平7−5610号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜10頁に記載の化合物I−1〜I−38。特開平7−77783号に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II−1〜II−102。特開平7−104429号に記載の一般式(H)および一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜15頁に記載の化合物H−1〜H−44。特願平7−191007号に記載のヒドラジン基の近傍にアニオン性基またはヒドラジンの水素原子と分子内水素結合を形成するノニオン性基を有することを特徴とする化合物で、特に一般式(A)、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物N−1〜N−30。特願平7−191007号に記載の一般式(1)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物D−1〜D−55。
【0074】
本発明のヒドラジン系造核剤は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどに溶解して用いることができる。
【0075】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0076】
本発明のヒドラジン造核剤は、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層側のハロゲン化銀乳剤層あるいは他の親水性コロイド層のどの層に添加してもよいが、ハロゲン化銀乳剤層あるいはそれに隣接する親水性コロイド層に添加することが好ましい。
【0077】
本発明の造核剤添加量はハロゲン化銀1モルに対し1μモル〜10m モルが好ましく、10μモル〜5m モルがより好ましく、20μモル〜5m モルが最も好ましい。
【0078】
本発明の感材には、感材のくっつき防止や画像保護のために表面保護層を設けてもよい。
【0079】
表面保護層のバインダーとしては、公知の天然または合成ポリマーを用いることができる。バインダーの例としてゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、さらには感光層のバインダーのところで述べた種々のポリマーを挙げることができる。
【0080】
表面保護層は水系または有機溶剤系の溶媒の塗布液を塗布して形成できるが、コストを考えると水系溶媒の塗布液を用いる方が有利である。
【0081】
表面保護層の好ましい厚みは、1層当たり0.2〜10μm 、より好ましくは1〜5μm である。
【0082】
本発明の感材には、必要に応じて、感光層、表面保護層以外にバック層、中間層、アンチハレーション層、導電層などを設けてもよい。これらの層のバインダーは、感光層、表面層、表面保護層のところで述べたポリマーを使用してよい。もちろんこれらの層の塗布液の溶媒は水系溶媒でも有機溶剤系溶媒でもよい。
【0083】
本発明の感材には、必要に応じて、イソシアネート系、エポキシ系などの架橋剤、アニオン系、ノニオン系、カチオオン系の界面活性剤、SiO2 、ポリメチルメタクリレート等のマット剤、シリコーンや、パラフィンなどのすべり剤、アンチハレーション染料やその他の染料、コロイダルシリカなどのフィラーなどを添加してもよい。
【0084】
本発明の感材の各層を塗布する方法に特に制限はなく、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法などの公知の方法を用いることができる。
【0085】
本発明の感材に用いる支持体には特に制限はない。例えば、紙、ポリエステル、ポリスチレンなどを用いることができる。
【0086】
これらのうちで厚みが50〜300μm 程度の2軸延伸したポリエチレンテレフタレートは強度、耐薬品性その他の点から好ましい支持体である。支持体は表面処理や下塗りを施したものであってもよい。
【0087】
本発明の感材を露光する方法に特に制限はない。例えば、タングステンランプ、水銀ランプ、レーザー光源、CRT光源、キセノンランプ、ヨードランプなどを用いることができる。これらのうち特に好ましいものはレーザー光源である。
【0088】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はもちろんこれに限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(1)試料No. 102〜120の作成
<ハロゲン化銀粒子の調製>
水700mlにフタル化ゼラチン22g および臭化カリウム30mgを溶解して温度35℃にてpHを5.0に合わせた後、硝酸銀18.6g を含む水溶液159mlと臭化カリウムと沃化カリウムを92:8のモル比で含む水溶液をpAg 7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で10分間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.4g を含む水溶液476mlと六塩化イリジウム酸二カリウムを9μモル/リットルと臭化カリウムを1モル/リットルで含む水溶液をpAg 7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で30分かけて添加した。その後、pHを下げて凝集沈降させ脱塩処理をし、フェノキシエタノール0.1g を加え、pH5.9、pAg 8.2に調整し沃臭化銀粒子(沃素含量コア8モル%、平均2モル%、平均サイズ0.05μm 、投影面積変動係数8%、(100)面比率79%の立方体粒子)の調製を終えた。
【0090】
こうして得たハロゲン化粒子を60℃に昇温して銀1モル当たりチオ硫酸ナトリウム85μモルと2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルジフェニルフォスフィンセレニドを11μモル、15μモルのテルル化合物1、塩化金酸3.4μモル、チオシアン酸260μモルを添加し、120分間熟成した後30℃に急冷して目的のハロゲン化銀粒子を得た。
【0091】
<有機酸銀乳剤の調製>
ステアリン酸1.3g 、アラキジン酸0.5g 、ベヘン酸8.5g 、蒸留水300mlを90℃で15分間混合し、激しく攪拌しながら1N−NaOH水溶液31.1mlを15分かけて添加した後、30℃に降温した。次に、1N−リン酸水溶液7mlを添加し、より激しく攪拌しながらN−ブロモスクシンイミド0.02g を添加した後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をハロゲン化銀量が2.5m モルとなるように添加した。さらに、1N−硝酸銀水溶液25mlを2分かけて添加し、そのまま90分間攪拌し続けた。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。
【0092】
この後真空乾燥してハロゲン化銀/有機酸銀の固体を得た。この固体10gに10wt% のヒドロキシプロピルセルロース水溶液40gを添加し、さらに過臭化臭化ピリジニウム0.1mモルと、臭化カルシウム2水和物0.15モルを添加してホモジナイザーで分散して平均粒径約1μのハロゲン化銀/有機酸銀の水分散物(分散物1)を得た。
【0093】
<感光層塗布液の調製>
別途、フェニルチオスルホン酸を10mg、色素1を60mg、色素2を30mg、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾールを2g、4−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸21.5g、5−トリブロモメチルスルホニル−2−メチルチアジアゾール8g、2−トリブロモメチルスルホニルベンゾチアゾール6g、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン150g、4,6−ジトリクロロメチル−2−フェニルトリアジン5g、ジスルフィド化合物1 2g、テトラクロロフタル酸5gにヒドロキシプロピルセルロース水溶液(10wt% )250gを混合し、ホモジナイザーで分散して上記化合物の水分散物を得た。
【0094】
この分散物10.3gを分散物1 50gと混合して、さらにバインダー(種類は表1のとおり)を10g、P−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを3mg加え、そこに蒸留水を加え200mlの塗布液を調製した。
なお、PVAはポリビニルアルコールである。
なお、上記において用いた添加化合物は以下に示すものである。
【0095】
【化1】
【0096】
<表面保護層塗布液の調製>
石灰処理ゼラチン 4g
フタラジン(5wt% 水/メタノール=1/1(重量比)溶液で添加)480mg
4−メチルフタル酸ナトリウム塩(4%水溶液で添加) 240mg
ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径5μm ) 80mg
C7 F15COONa 20mg
P−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 20mg
蒸留水を加えて100mlにした。
【0097】
<試料の作成>
2軸延伸した厚さ175μm のポリエチレンテレフタレート支持体の一方の面に、バインダーが1.5g/m2の塗布量になるように塗布して50℃で20分間乾燥した。このようにして1.5μm 厚(乾燥膜厚)のバック層を形成した。
【0098】
さらにこの反対の面に感光層を塗布銀量が2.3g/m2になるように塗布して50℃で20分間乾燥した。感光層の厚さは乾燥膜厚で20μm であった。
【0099】
続いて、この上に表面保護層をバインダー塗布量が2g/m2になるように塗布して、50℃で20分間乾燥して1.6μm 厚に形成した。このようにして試料No. 102〜120を得た。
【0100】
(2)試料No. 101の作成
感光層処方を以下のように変更する以外は試料No. 102〜120と同様にして感光層を有機溶媒で塗布した試料No. 101を作成した。
【0101】
<有機酸銀乳剤の調製>
試料No. 102〜120のところで述べたハロゲン化銀/有機酸銀固体10gにポリビニルブチラール(デンカブチラール#3000k(電気化学工業(株)製)4gと2−ブタノン36gを加えた。
【0102】
ついで過臭化ピリジニウムの0.1mモルと臭化カルシウム2水和物0.15mモルを添加してホモジナイザーで分散して平均粒径約1μm のハロゲン化銀/有機酸銀の分散物(分散物2)を得た。
【0103】
<感光層塗布液の調製>
フェニルチオスルホン酸ナトリウムを10mg、色素1を60mg、色素2を30mg、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾールを2g、4−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸21.5g、5−トリブロモメチルスルホニル−2−メチルチアジアゾール8g、2−トリブロモメチルスルフォニルベンゾチアゾール6g、4,6−ジトリクロロメチル−2−フェニルトリアジン5g、ジスルフィド化合物1を2g、テトラクロロフタル酸5gを2−ブタノン445gに溶解し、さらにポリビニルブチラール(PVB:デンカブチラール#3000k)5gを加えて溶液1を作った。
【0104】
なお、上記において用いた染料は以下に示すものである。
【0105】
【化2】
【0106】
この溶液11.1gと分散物2 50gを混合してさらにポリビニルブチラール(Butuar B−76(モンサント(株)製)10g、メガファックF176P(大日本インキ化学工業(株)製)3mgを加え、そこに2−ブタノンを加え200mlの塗布液を調製した。
【0107】
以上の試料No. 101〜120について、感光層に用いたバインダーの含水率を以下のようにして求め、さらに以下のようにして写真性能を評価した。
【0108】
<感光層バインダーの含水率の評価>
感光層に用いたポリマーの溶液(または分散液)をガラス板上に塗布して50℃で1時間乾燥して厚さ約100μm のポリマーモデル膜を得た。ただし感光層のバインダーとして2種以上のポリマーを混合して用いている場合はポリマーをその比率で混合したモデル膜を作成した。このようにして得られたポリマーモデル膜をガラス板から剥離して25℃60%RH 下の雰囲気で3日間調湿して重量(w1 )を測定した。ついでポリマーモデル膜を25℃真空中に3日間置いた後すばやく重量のわかっている秤量ビンに入れて重量(w0 =w3 −w2 )を測定した(ただしw3 はポリマーモデル膜と秤量ビンの重量、w2 は秤量ビンの重量)。w0 、w1 を用い以下の式で含水率を求めた。
25℃60%RH における平衡含水率={(w1 −w0 )/w0 }×100(%)
【0109】
<写真性能の評価>
25℃60%RH の雰囲気下で、810nmダイオードを備えたレーザー感光計で感光材料を露光した後、感光材料を120℃25秒間加熱処理(現像)し、得られた画像の評価(感度とカブリおよび最高濃度(Dmax ))を濃度計により行った(常温写真性)。感度はカブリ(最低)濃度(Dmin )より0.3高い濃度を与える露光量の比の逆数で評価し塗布試料No.101を基準として相対評価で表わした。感光材料の露光面と露光レーザー光の角度は80度とした。
【0110】
上記の測定は感材試料を24時間25℃60%RH の雰囲気下に置いた後に行った。
【0111】
さらに25℃80%RH の雰囲気下で同様評価を実施した(高湿写真性)。この場合の測定は感材試料を24時間25℃80%RH の雰囲気下に置いた後に行った。
【0112】
評価結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1の結果から、感光層バインダーに本発明のポリマーを主バインダーとして用いると、高湿雰囲気下でのカブリ上昇がないことがわかる。また、水溶媒による塗布が可能となり環境面、コスト面で好ましい。これに対し、ポリマーの含水率が2wt% をこえるとカブリが上昇してしまい、塗布溶媒の水の含有量が30wt% 未満となると塗布液の安定性が低下し、凝集が発生し、面状不良となる。なお、塗布溶媒に有機溶剤を用いた場合は写真性において特に問題はないが、環境面、コスト面できわめて不利である。
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、環境、人体に有害でコスト上不利な有機溶剤を使用しない感光層の塗設が可能になる。また、高湿雰囲気下で保存してもカブリが低い。
Claims (4)
- 支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀を含有する感光層を有し、長鎖脂肪族カルボン酸銀塩およびこの長鎖脂肪族カルボン酸銀塩の還元剤を含有する熱現像感光材料において、前記還元剤がヒンダードフェノール還元剤であり、前記感光層の主バインダーが25℃60%RH での平衡含水率が2wt% 以下のポリマーであり、前記感光層が、溶媒の30重量%以上が水である塗布液を用いて塗布し乾燥して形成されたことを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記ヒンダードフェノール還元剤がビスフェノールである請求項1の熱現像感光材料。
- 前記感光層の主バインダーが水系溶媒に分散したポリマーである請求項1または請求項2の熱現像感光材料。
- 前記感光層が、溶媒の70重量%以上が水である塗布液を用いて形成された請求項1〜3のいずれかの熱現像感光材料。
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