JP3651837B2 - 熱不融球状樹脂微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐溶剤性に優れた熱不融球状樹脂微粒子の製造方法に関する。この方法によって得られた熱不融球状樹脂微粒子は吸着剤や研磨材への用途に適する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリマー微粒子を合成する方法として、懸濁重合、エマルジョン重合による方法が試みられてきた。
このプロセスは安価なものであるため、汎用プラスチックであるポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート粉体やポリエステル樹脂等の製造分野などで利用されてきた。
近年、ソープフリー乳化重合やシード乳化重合が注目されてきている。これは、懸濁重合や乳化重合とは異なり、懸濁剤や乳化剤、界面活性剤を一切使用しないため、後工程の洗浄が省略できるという非常に大きなメリットがある。また、数μmから数十nm程度の非常に径の小さな粒子の合成が容易にできる、さらに粒度の分布がほとんどない微粒子が合成されるという特長をも有している。
一方、フェノール樹脂の懸濁重合プロセスによる球状硬化物の合成も様々なところで行われている。
特開昭61−127719号公報及び特開昭62−235312号公報では、懸濁重合プロセスによりフェノール樹脂微粒子が得られている。
しかしながら、懸濁重合プロセスでは、粒径が一般的な懸濁重合の粒度分布の範囲である数μm〜2mmであり、サブミクロンオーダーの球状硬化物は、この重合方法では得られていないのが現状である。
さらに、懸濁重合プロセスでは、懸濁安定剤を添加して反応を行うため、反応終了後に洗浄工程を必要とする。小粒径になるほど洗浄−分離工程が困難となる。 特開平10−338728号公報記載の製法において、セルロース類を懸濁安定剤として、粒径が0.1〜10μm程度の樹脂微粒子を合成している。この方法でも、樹脂製造後に、熱水抽出を行って反応に関与しないセルロースを除去する工程が必要となる。しかも、完全に除去を行うことは困難であり、粒子が独立した球とならずに凝集してしまう。
懸濁安定剤を全く使用しない系での微小球状フェノール樹脂の合成も試みられている。特公昭62−30210号公報及び特開平07−18043号公報記載の方法では、懸濁安定剤を全く使用していない。しかし、この方法では、粒度分布が1〜20μmと広く、また凝集物となっていることがある。さらに、この方法は高濃度の塩酸存在下で反応を行うため、洗浄工程が必要となる。洗浄しても、千ppmオーダーで遊離塩素イオンが残留してしまうという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、耐熱性、耐溶剤性に優れた熱不融球状樹脂微粒子の製造方法を提供するものである。更に詳しくは、界面活性剤を使用せずにサブミクロンオーダーの熱不融球状樹脂微粒子を製造する方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に関して、発明者らが鋭意検討を行った結果、ある特定のフェノール類とホルムアルデヒド類とを用いて重合を行うに際し、溶解するだけで、撹拌することなしに均一に重合が進行し、熱不融球状樹脂微粒子が得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は
熱不融球状樹脂微粒子の製造方法であって、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、アルデヒド類とを、
(a)前記樹脂微粒子に対して1〜30重量倍の水の存在下で、
(b)界面活性剤を使用せずに、
(c)無触媒あるいは塩基性触媒のもとで、
反応させることを特徴とする、熱不融球状樹脂微粒子の製造方法、
である。
【0005】
本発明は、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物を使用する。例えば、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール等が挙げられ、これらを単独もしくは併用して使用しても良い。好ましくは、アルデヒド類との反応性がよいことから、レゾルシノール及びフロログルシノールである。
ベンゼン環一個当たりのフェノール性水酸基が2個未満であると、重合反応が進行したときに水との相溶性が低くなり、樹脂層と水層に分離してしまい、目標とする微粒子を得ることができない。
【0006】
本発明におけるアルデヒド類としてはホルマリン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等を単独もしくは併用して使用しても良い。
【0007】
また、重合溶媒は、後工程となる乾燥工程における作業性や安全性の観点から水が最も好ましいが、有機系の溶剤を使用しても構わない。有機系の溶剤としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。これらを単独もしくは併用して使用しても構わない。
【0008】
本発明の、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物とアルデヒド類との反応について以下に説明する。
反応温度は30〜90℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃である。30℃未満であると反応時間が非常に長く実用的ではない。また、90℃を越えると、水の蒸発が激しくなり、反応系の水分割合が変化して、生成する微粒子の粒径が変化する恐れがある。
また、反応時間の最適値は反応温度及びモル比により異なるが、いずれの条件でも12時間反応によりアセトンへの抽出が1%以下の球状硬化物が得られる。また、本発明のベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物とアルデヒド類との水存在下での反応は、触媒がなくても反応は進行するが、炭酸ナトリウムなどの金属系のものや、アミン系の触媒を使用しても良い。触媒量はモノマーに対して0.1%以下であることが好ましい。
例えば、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個有する化合物とアルデヒド類との水存在下で反応は、反応温度50℃〜80℃、反応時間12時間以上で行うことできる。かかる反応では、平均粒径で2〜0.5ミクロンの球状微粒子が得られる。
【0009】
アルデヒド類とベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物とのモル比は特に規定されるものではないが、1.5〜3.0が好ましい。1.5未満であると反応速度が遅くなってしまう。また、有機溶剤への抽出率も高くなってしまう。一方、3.0を越えると臭気が激しくまた、未反応アルデヒド類の濃度も高くなってしまう。
【0010】
得られる熱不融球状樹脂微粒子の重量は、水分と熱不融球状樹脂微粒子との重量比が、1〜30、好ましくは5〜15になるようにする。水分濃度が高いと反応速度が低下したり、安定性が悪くなり、熱不融球状樹脂微粒子が得られない。また、容積当たりの収率を上げるには水分比を低くした方が好ましいが、水分比が低いと得られた球どうしが凝集してしまい、熱不融球状樹脂微粒子が得られにくい。
以上の条件で、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個有するモノマーを出発物質として熱不融球状樹脂微粒子を製造すると、平均粒径で2〜0.5μmの球状微粒子が得られる。また、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を3個有するモノマーを出発物質として得られる熱不融球状樹脂微粒子は、平均粒径が1〜0.05μmの球状微粒子である。
本発明は、混合するだけで重合反応が進行することが特長の1つであるが、撹拌等による混合を行いながら熱不融球状樹脂微粒子を合成しても差し支えない。なお、混合方法は特に限定されるものではない。
【0011】
また、熱不融球状樹脂微粒子と水とのスラリーから熱不融球状樹脂微粒子を取り出す方法は、スラリードライヤーが最も好ましい。流動床は、水分量が多いため使用できない。また、固定床での乾燥は、粒子が凝集してしまうため不可である。
【0012】
本発明によって得られる熱不融球状樹脂微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察で得られた写真中の熱不融球状樹脂微粒子の直径を実測することにより算出した。なお、n=200個の実測値から平均値を求めた。
本発明によって得られる熱不融球状樹脂微粒子の平均粒径が2μmを越えたものはフェノールをモノマーとして、懸濁安定剤を用いた懸濁重合でも製造することが可能となり、特に特徴的なものではない。
【0013】
本発明によって得られる熱不融球状樹脂微粒子のアセトン抽出率は、100mlのガラス瓶に熱不融球状樹脂微粒子を10g、アセトン75gを入れて25℃、24時間浸漬した。浸漬後、溶液を遠心分離機で10000rpmで分離を行い、上澄みを乾燥機で150℃、2時間乾燥し、固形分を算出して求めた。
尚、アセトン抽出率が1%を超えると乾燥する時に熱不融球状樹脂微粒子どうしが凝集してしまう。
【0014】
次に、実施例により本発明で得られた熱不融球状樹脂微粒子を説明する。
平均粒径は上述のように熱不融球状樹脂微粒子を走査型電子顕微鏡にて観察して求めた。加速電圧は25keVで倍率5000〜10000倍で測定した。この写真から、直径を定規で実測し、n=200の平均値を平均粒径とした。
アセトン抽出率は、上述の方法で測定した。
また、耐熱性については、樹脂微粒子の熱重量測定(以下、TG測定と略す)を行った。加熱条件は150℃で10時間とした。そのときの重量減少率を求めた。
【0015】
[実施例1]
レゾルシノール100重量部、水1000重量部、炭酸ナトリウム0.1重量部、37%ホルムアルデヒド水溶液200重量部を添加してレゾルシノールが完全に溶解するまで攪拌した。
攪拌後、ガラス容器に溶液を入れて、80℃の恒温槽で72時間放置した。放置後スラリードライヤーで乾燥を行うことで、平均粒径が1.9μmの球状硬化物が得られた。
【0016】
[実施例2]
レゾルシノールをフロログルシノール10重量部で使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0017】
[実施例3]
レゾルシノール100重量部に対して水を500重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0018】
[実施例4]
レゾルシノールをカテコール100重量部で使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0019】
[比較例1]
フェノールを100重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0020】
[比較例2]
フェノール100重量部、37%ホルマリン水溶液130重量部、水160重量部、トリエチルアミン3重量部、ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA117:クラレ)10重量部を500mlのフラスコに入れて300回転で反応を行った。反応温度は100℃、反応時間は4時間とした。
【0021】
[比較例3]
市販の球状フェノール樹脂微粒子(鐘紡:ベルパールS890)をそのまま用いて評価を行った。
【0022】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】
本発明により、界面活性剤を使用することなく、耐熱性、耐溶剤性に優れた熱不融球状樹脂微粒子が得られる。更に詳しくは、熱硬化型樹脂のミクロン及びサブミクロンオーダーの球状物の合成が可能となった。これらは、粒度分布がシャープであることから、液晶のスペーサーや研磨材、潤滑剤としての利用が可能である。また、固定炭素が高いことから、炭素材料としての応用も可能である。トナー用炭素材、電極材料として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた熱不融球状樹脂微粒子の電子顕微鏡写真
【図2】実施例2で得られた熱不融球状樹脂微粒子の電子顕微鏡写真
【図3】実施例3で得られた熱不融球状樹脂微粒子の電子顕微鏡写真
【図4】実施例4で得られた熱不融球状樹脂微粒子の電子顕微鏡写真
【図5】比較例2で得られた熱不融球状樹脂微粒子の電子顕微鏡写真
【図6】比較例3で得られた熱不融球状樹脂微粒子の電子顕微鏡写真
Claims (4)
- 熱不融球状樹脂微粒子の製造方法であって、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、アルデヒド類とを、
(a)前記樹脂微粒子に対して1〜30重量倍の水の存在下で、
(b)界面活性剤を使用せずに、
(c)無触媒あるいは塩基性触媒のもとで、
反応させることを特徴とする、熱不融球状樹脂微粒子の製造方法。 - ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物が、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロールの中から選ばれた1種以上である請求項1に記載の熱不融球状樹脂微粒子の製造方法。
- 得られる樹脂微粒子の平均粒径が2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱不融球状樹脂微粒子の製造方法。
- 得られる樹脂微粒子が、アセトンを用いて25℃での抽出率が1%以下である請求項1、2又は3に記載の熱不融球状樹脂微粒子の製造方法。
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