JP3649864B2 - 難燃性シリコーンゴム組成物およびその硬化物 - Google Patents

難燃性シリコーンゴム組成物およびその硬化物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は難然性シリコーンゴム組成物に係り、さらに詳しくはテトラゾール化合物を配合してなる難燃性シリコーンゴム組成物およびその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、硬化してシリコーンゴムとなるシリコーンゴム組成物はよく知られており、その耐候性、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性等の優れた性質を利用して、電気・電子部品のポッティング材、コーティング材、型取り用等の成形材料、電線用材料等に広く使用されている。また、シリコーンゴム組成物に各種添加剤を配合することによって、用途に応じた特性、例えば難然性を付与することも一般に行われている。
【0003】
シリコーン組成物に難燃性を付与する技術としては、従来より多数の報告がなされている。例えば、難燃性付与剤として白金系化合物を配合する方法(特公昭 44-2591号公報、特開昭48-92452号公報、同48-20839号公報、同48-356号公報等参照)、また白金系化合物と金属酸化物等を併用する方法(特開昭48-96650号公報、同48-96651号公報、同49-67933号公報、同 53-110650号公報、同50-97644号公報、同50-98961号公報、同52-14654号公報、同 56-5851号公報、同 56-106956号公報、同 57-105455号公報等参照)、さらに白金系化合物とカーボンブラック等とを併用する方法(特開昭 53-130753号公報、同54-53614号公報等参照)等が知られている。
【0004】
一方、白金系化合物を用いずに、シリコーン組成物に難然性を付与する技術としては、有機ハロゲン化合物を配合する方法(特開昭 55-108454号公報、同 58-149948号公報等参照)等が知られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の難燃性シリコーンゴム組成物のうち、白金系化合物あるいはそれと他の物質とを併用したものは、耐熱性等のゴム特性に対して悪影響を及ぼすという欠点を有していた。また、特に白金系化合物は高価な薬剤であることから、製造コストの上昇を招いてしまうという問題もあり、白金系化合物を使用しない難燃化技術、もしくは少量の白金系化合物で良好に難燃性を付与することを可能にした技術が望まれている。
【0006】
また、有機ハロゲン化合物を用いた難燃性シリコーンゴム組成物では、付与特性を十分に発揮させるためには有機ハロゲン化合物を多量に配合する必要があり、そのためゴム強度等の本来の特性が低下したり、また有機ハロゲン化物が経時的に分解することによって、難燃性を長時間にわたって維持することができないと共に、分解により生じるハロゲンラジカルやハロゲン水素等の影響でゴム特性が低下する等の問題があった。
【0007】
シリコーンゴムに対する難燃化の要求は益々高まっており、特に最近では耐熱性と難燃性の両特性を満足させたシリコーンゴム材料の開発が望まれている。
【0008】
一方、発泡剤としてではあるが、樹脂組成物等にテトラゾール化合物を配合する技術が提案されている(特開昭56-61435号公報、同 63-284263号公報、特開平7-145288号公報、特開平7-304891号公報参照)。また、特開平7-304891号公報には、テトラゾール化合物が燃焼時に分解して窒素ガスを発生させることにより難燃性を発現させることが記載されている。しかしながら、上記公報で使用されているテトラゾール化合物は、基本的には発泡剤として使用されるいるものであると共に、いずれもフェニル基を含むフェニルテトラゾールであり、フェニルテトラゾールは融点を有することから、耐熱性という点では劣るものであった。
【0009】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、白金系化合物を配合しなくても、もしくは少量の白金系化合物で、良好な難燃性を長期間にわたって発揮すると共に、耐熱性に優れ、さらにはゴム特性や雰囲気に対する悪影響を抑制した難然性シリコーンゴム組成物、およびその硬化物である難燃性シリコーンゴムを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、硬化性シリコーンゴム組成物に特定の官能基を有するテトラゾール化合物を配合することによって、優れた難燃性を長期間にわたって発揮させることができるだけでなく、耐熱性にも優れたシリコーンゴムを提供することが可能であることを見出し、さらには硬化性シリコーンゴム組成物に特定の官能基を有するテトラゾール化合物と白金系化合物とを併用することによって、より高い難燃性が得られることを見出して、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の難然性シリコーンゴム組成物は、請求項1に記載したように、(A)硬化性シリコーンゴム組成物と、(B)アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオール基から選ばれる少なくとも 1種の官能基を含むテトラゾール化合物を、前記(A)成分のうちシリコーンベースポリマー 100重量部に対して0.01〜30重量部とを含有することを特徴としている。
【0012】
本発明の難然性シリコーンゴム組成物は、さらに請求項2に記載したように、前記(A)成分のうちシリコーンベースポリマー 100重量部に対して、さらに (C)白金またはパラジウム原子として 1〜 3000ppmとなる量の白金、白金化合物、パラジウムまたはパラジウム化合物を含有することを特徴としている。
【0013】
本発明の難然性シリコーンゴム組成物において、(B)成分としてのアミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオール基から選ばれる少なくとも 1種の官能基を含むテトラゾール化合物は、熱分解した際に多量の窒素ガスを発生するために窒息消化を可能にするだけでなく、分解温度が高く、また低温で溶融するようなこともないため、耐熱性に影響を与えるようなことがない。従って、良好な難燃性と耐熱性をシリコーンゴムに付与することができる。さらに、(C)成分の白金またはパラジウム系化合物を(B)成分のテトラゾール化合物と併用することによって、より高い難燃性を付与することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
本発明の難燃性シリコーンゴム組成物は、常温または加熱等によって硬化させることによりゴム弾性体となる、(A)硬化性シリコーンゴム組成物(ポリオルガノシロキサン組成物)を主とし、これに難然性付与剤として(B)テトラゾール化合物を配合したものであり、さらには(B)テトラゾール化合物と共に(C)白金またはパラジウム系化合物を配合したものである。
【0016】
(A)成分のポリオルガノシロキサン組成物は、基本的には(a)ポリオルガノシロキサンベースポリマー(シリコーンベースポリマー)と(b)硬化剤と必要に応じて補強性充填剤や各種添加剤等とを均一に分散させたものである。このような組成物に用いられる各種成分のうち、(a)のポリオルガノシロキサンベースポリマー(シリコーンベースポリマー)および(b)硬化剤は、ゴム弾性体を得るための反応機構に応じて適宜に選択されるものである。
【0017】
その反応機構としては、 (i)有機過酸化物加硫剤による架橋方法、(ii)縮合反応による方法、 (iii)付加反応による方法等が知られており、その反応機構によって、(a)成分と(b)成分すなわち硬化用触媒もしくは架橋剤との好ましい組み合わせが決まることは周知のとおりである。
【0018】
(i)の有機過酸化物による架橋方法を適用する場合、(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー(シリコーンベースポリマー)としては、 1分子中のケイ素原子に結合した有機基のうち、少なくても 2個がビニル基であるポリオルガノシロキサンが用いられる。また、(b)成分の硬化剤としては、ベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミル -t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル -2,5-ジ -t-ブチルペルオキシヘキサン、ジ -t-ブチルペルオキシド等の各種の有機過酸化物加硫剤が用いられ、特に低い圧縮永久歪みを与えることから、ジクミルペルオキシド、クミル -t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル -2,5-ジ -t-ブチルペルオキシヘキサン、ジ -t-ブチルペルオキシドが好ましく用いられる。なお、これらの有機過酸化物加硫剤は 1種または 2種以上の混合物として使用される。
【0019】
(b)成分の硬化剤である有機過酸化物の配合量は、(a)成分のポリオルガノシロキサンべースポリマー 100重量部に対して0.05〜15重量部の範囲とすることが好ましい。有機過酸化物の配合量が0.05重量部未満では、加硫が十分に行われず、また15重量部を超えて配合してもそれ以上の格別の効果がないばかりか、得られるシリコーンゴム成形体の物性に悪影響を与えるおそれがある。
【0020】
また、(ii)の縮合反応を適用する場合においては、(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー(シリコーンベースポリマー)として両末端に水酸基を有するポリオルガノシロキサンが用いられる。
【0021】
(b)成分の硬化剤としては、まず架橋剤として、エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシラン等のアルコキシ型、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシ型、メチルトリ(アセトンオキシム)シラン、ビニルトリ(アセトンオキシム)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン等、およびそれらの加水分解物が例示される。また、へキサメチル−ビス(ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、テトラメチルジブチル−ビス(ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、ヘプタメチル(ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、ヘキサメチル−ビス(メチルエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサンのような環状シロキサン等も例示される。このように、架橋剤はシランやシロキサン構造のいずれであってもよく、またそのシロキサン構造は直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。さらに、これらを使用するに際には、1種類に限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
また、(b)成分の硬化剤のうち硬化用触媒としては、鉄オクトエート、コバルトオクトエート、マンガンオクトエート、スズナフテネート、スズカプリネート、スズオレートのようなカルボン酸金属塩、ジメチルスズジオレート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオレエート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物が用いられる。
【0023】
(b)成分の硬化剤のうち、架橋剤の配合量は(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー(シリコーンベースポリマー) 100重量部に対して 0.1〜20重量部の範囲とすることが好ましい。架橋剤の使用量が 0.1重量部未満では硬化後のゴムに十分な強度を付与することができず、20重量部を超えると得られるゴムが脆くなり、いずれも実用には耐え難い。また、硬化用触媒の配合量は(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー 100重量部に対して0.01〜 5重量部の範囲とすることが好ましい。0.01量部未満では硬化用触媒として不十分であって、硬化に長時間を要し、また空気との接触面から遠い内部での硬化が不良となるおそれがある。一方、 5重量部を超えると保存安定性が低下してしまう。より好ましい配合量は 0.1〜 3重量部である。
【0024】
(iii)の付加反応を適用する場合の(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー(シリコーンベースポリマー)としては、上記 (i)におけるベースポリマーと同様なものが用いられる。また、(b)成分の硬化剤としては、硬化用の塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金カーボン、白金トリフェニルフォスフィン錯体等の白金系触媒が用いられ、架橋剤としてケイ素原子に結合した水素原子が 1分子中に少なくても平均 2個を超える数を有するポリオルガノシロキサンが用いられる。
【0025】
(b)成分の硬化剤のうち、硬化用触媒の配合量は(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー 100重量部に対して白金原子量で 1〜 1000ppmの範囲とすることが好ましい。硬化用触媒の配合量が白金原子量として1ppm未満では十分に硬化が進行せず、また 100Oppmを超えて配合しても特に硬化速度の向上等は期待できない。また、架橋剤の配合量は(a)成分のポリオルガノシロキサンベースポリマー中のアルケニル基に対して、架橋剤中のケイ素原子に結合した水素原子が 0.5〜 4.0個となるような量が好ましく、さらに好ましくは 1.0〜 3.0個となるような量である。水素原子の量が 0.5個未満である場合には、組成物の硬化が十分に進行せずに、硬化後の組成物の硬度が低くなり、また水素原子の量が 4.0個を超えると硬化後の組成物の物理的特性と耐熱性等が低下する。
【0026】
上述した各種の反応機構に用いられる(a)成分のシリコーンベースポリマーとしてのポリオルガノシロキサンの有機基は、 1価の非置換または置換炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β- フェニルエチル基、β- フェニルプロピル基のようなアラルキル基等の非置換炭化水素基や、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基が例示され、一般的にはメチル基が合成のしやすさ等から多用される。
【0027】
なお、上記した(A)成分のポリオルガノシロキサン組成物には、通常のシリコーンゴムコンパウンドに使用される公知の充填剤、顔料、耐熱向上剤、難燃剤、酸化防止剤、接着助剤、加工助剤等を配合してもよく、また本発明の効果を損わない範囲で他のポリオルガノシロキサンを併用してもよい。このようなものとしては、通常、煙霧質シリカ、沈殿シリカ、けいそう土等の補強性充填剤、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、マイカ、クレイ、グラファイト、炭酸亜鉛、マンガン、水酸化セリウム、ガラスビーズ、ポリジメチルシロキサン、アルケニル基含有ポリシロキサン等が例示される。
【0028】
また、本発明の耐熱性シリコーンゴム組成物に公知の発泡剤と硬化剤とを配合してシリコーンゴムスポンジを得ることもできる。発泡剤としては、アゾイソブチロニトリル、 1,1′- アゾビス -1-アセトキシ -1-フェニルエタン、アゾジカルボンアミド等のアゾ系化合物、ジニトリロメンタメイレンテトラミン、N,N-ジメチル -N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物等が例示される。また、硬化剤は前述した有機過酸化物を使用するのが一般的であるが、付加反応による硬化も可能である。
【0029】
本発明の難燃性シリコーンゴム組成物における(B)成分のテトラゾール化合物は、耐熱性を損うことなく、優れた難然性を付与するための特徴的な化合物である。ここで、テトラゾール化合物は 4つの窒素原子と 1つの炭素原子で構成された複素 5員環を有する化合物であり、例えば下記の (1)式または (2)式で表されるテトラゾール、下記の (3)式で表されるビステトラゾール、下記の (4)式で表されるアゾビステトラゾール等、もしくはそれらのアンモニウム塩等の誘導体が例示される。
【0030】
【化1】
Figure 0003649864
そして、上記したようなテトラゾール化合物のうち、本発明における(B)成分としては、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオール基から選ばれる少なくとも 1種の官能基を含むテトラゾール化合物が用いられる。すなわち、上記した (1)〜 (4)式等において、例えばR1 やR2 としてアミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオール基から選ばれる少なくとも 1種の官能基を含むテトラゾール化合物が用いられる。
【0031】
ここで、R1 やR2 はそれぞれ同一であっても、またも異っていてもよい。上記した官能基以外のR1 基もしくはR2 基としては、水素原子または 1価の非置換または置換炭化水素基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β- フェニルエチル基、β- フェニルプロピル基のようなアラルキル基等の非置換炭化水素基、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基が例示される。
【0032】
本発明の難燃性シリコーンゴム組成物において、(B)成分として用いられるテトラゾール化合物の具体例としては、
【化2】
Figure 0003649864
が例示される。
【0033】
上記した官能基を有するテトラゾール化合物はいずれも分解温度が高く、よってシリコーンゴムの耐熱性に影響を与えることなく、良好な難燃性を付与することができる。より高い耐熱性が求められる場合には、分解温度が高いテトラゾール化合物を用いればよく、特に分解温度が473K以上のテトラゾール化合物、例えば5-アミノテトラゾール、5-アセトアミドテトラゾール、2-フェニル -5-アミノテトラゾール、1-メチル -5-アミノテトラゾール、1-メチル -5-メルカプトテトラゾール、1-フェニル -5-メルカプトテトラゾール等が好ましく用いられる。
【0034】
上述したようなアミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオール基から選ばれる少なくとも 1種の官能基を含むテトラゾール化合物は、熱分解した際に多量の窒素ガスを発生するため、窒息消火を可能にするものであり、さらには耐熱性にも優れるものである。従って、このような(B)テトラゾール化合物を(A)ポリオルガノシロキサン組成物に配合することによって、シリコーンゴム組成物に良好な難燃性と耐熱性を共に付与することができる。
【0035】
(B)成分のテトラゾール化合物の配合量は、(A)成分のポリオルガノシロキサン組成物のうちシリコーンベースポリマー 100重量部に対して0.01〜30重量部の範囲とする。(B)成分の使用量が0.01重量部未満では、難然性特性の付与効果を顕著に得ることができず、また30重量部を超えると得られるシリコーンゴムが脆くなり、いずれも実用には耐え難い。
【0036】
さらに、(C)成分の白金またはパラジウム系化合物は、上記した(B)成分のテトラゾール化合物と併用することで、シリコーンゴムにより高い難燃性を付与するものである。このような(C)成分としては、前述したポリオルガノシロキサンの付加反応における硬化用触媒として用いられる白金系化合物と同様なものが用いられ、例えば塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金カーボン、白金トリフェニルフォスフィン錯体等の白金系化合物、アルミナまたはシリカ等の担体に白金を保持させたもの、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウムまたはパラジウム系化合物等が例示される。
【0037】
(C)成分の配合量は、(A)成分のポリオルガノシロキサン組成物のうちシリコーンベースポリマー 100重量部に対し、白金またはパラジウム原子量で 0.1〜1000ppm の範囲であり、より好ましくは 0.5〜200ppmの範囲である。(C)成分の配合量が白金またはパラジウム原子量として0.1ppm未満では難燃性特性を顕著に付与することができず、一方 1000ppmを超えると得られるゴムの耐熱性が逆に低下する。
【0038】
上述したように、本発明の難燃性シリコーンゴム組成物によれば、(B)成分のテトラゾール化合物を配合することにより、さらには(B)成分のテトラゾール化合物と(C)成分の白金またはパラジウム系化合物とを併用することによって、優れた難燃性と共に耐熱性を付与することができる。従って、このような難燃性シリコーンゴム組成物を(A)成分に応じた方法で硬化させた、本発明のシリコーンゴム硬化物は、電線被覆材、建築用ガスケット、シール剤、スポンジシール剤、ロール、スポンジシート、キーパット、プラグブーツ、アノードキャップ、また難燃性が必要とされるシーリング材等、各種電気・電子用部品や建築用部品等に有用である。
【0039】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について説明する。
【0040】
実施例1
まず、(CΗ32SiO単位99.88モル%、(CΗ3)(CH2=CΗ)SiO単位0.12モル%からなり、末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された重合度6000のポリオルガノシロキサン100重量部と、末端がシラノール基で封鎖され、298Kにおける粘度が90cStであるポリジオルガノシロキサン5重量部、フュームドシリカ(AEROSIL 130)45重量部、および下記の(5)式で表されるテトラゾール化合物・5-アミノテトラゾール(東洋化成工業(株)製:分解温度=723K)2重量部とを、ニーダーミキサーで均一になるまで混練した。この後、423Kで2時間加熱処理し、冷却後に粉砕石英(クリスタライトVX-S(商品名、(株)龍森社製))を60重量部配合してシリコーンゴム組成物を得た。
【0041】
【化3】
Figure 0003649864
上記した組成物に2,5-ジメチル -2,5-ジ -t-ブチルペルオキシへキサン 0.2重量部を添加して均一に混合した後、温度443K、圧力 10MPa、10分間のプレス条件で一次加硫を行い、また空気循環乾燥機で473K× 4時間の二次加硫を行って、厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを作製した。これを後述する特性評価に供した。
実施例2
実施例1のシリコーンゴム組成物において、テトラゾール化合物として下記の (6)式で表されるテトラゾール化合物・5A-AD1(商品名、東洋化成工業(株)製:分解温度= 約573K)を 2重量部配合する以外は、実施例1と同様にして組成物を作製すると共に、同様に硬化させて厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを得た。これを後述する特性評価に供した。
【0042】
【化4】
Figure 0003649864
実施例3
実施例1のシリコーンゴム組成物において、テトラゾール化合物として下記の (7)式で表されるテトラゾール化合物・1-メチル -5-メルカプトテトラゾール(東洋化成工業(株)製:分解温度= 約523K)を 2重量部配合する以外は、実施例1と同様にして組成物を作製すると共に、同様に硬化させて厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを得た。これを後述する特性評価に供した。
【0043】
【化5】
Figure 0003649864
実施例4
実施例2のシリコーンゴム組成物において、テトラゾール化合物・5A-AD1の配合量を 0.5重量部とすると共に、白金系化合物として亜燐酸トリフェニル塩化白金酸反応錯体(白金元素量として 5%)を 0.1重量部配合する以外は、実施例2と同様にして組成物を作製すると共に、同様に硬化させて厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを得た。これを後述する特性評価に供した。
【0044】
比較例1
実施例1のシリコーンゴム組成物において、テトラゾール化合物を配合しない以外は、実施例1と同様にして組成物を作製すると共に、同様に硬化させて厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを得た。これを後述する特性評価に供した。
【0045】
比較例2
比較例1のシリコーンゴム組成物に、白金化合物として亜燐酸トリフェニル塩化白金酸反応錯体(白金元素量として 5%)を 0.1重量部配合する以外は、同様にして組成物を作製すると共に、同様に硬化させて厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを得た。これを後述する特性評価に供した。
【0046】
比較例3
比較例1のシリコーンゴム組成物に、テトラゾール化合物として5-フェニルテトラゾールを 0.1重量部配合する以外は、同様にして組成物を作製すると共に、同様に硬化させて厚さ 2mmのシリコーンゴムシートを得た。これを後述する特性評価に供した。
【0047】
上記した実施例1〜4および比較例1〜3で得た各シリコーンゴムシートを用いて、JIS C 2123による耐熱性試験(加熱空気老化試験、473K× 7日または523K× 7日)を実施した。さらに、難燃性試験(UL-94V試験に従う)を行った。詳細には 2mmシートを長さ 127mm、幅12.7mmに切断して試験片とし、下からガスバーナの炎を10秒間ずつ 2回あてて、それぞれの炎が消えるまでの時間を測定した。 5本の試験片に対してそれぞれ難燃性試験を行い、それらの結果の平均時間をとって難燃性の評価結果とした。これらの結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003649864
実施例5
まず、テトラゾール化合物・5-アミノテトラゾール100重量部を、予め末端にメチル基を有するポリジメチルシロキサン(粘度10000cP)100重量部に3本ロールを用いて混合した。
【0049】
次いで、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された298Kにおける粘度が 10000cPであるポリジメチルシロキサン 100重量部に、充填剤として粉砕石英(クリスタライトVX-S)30重量部、架橋剤としてメチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン 8重量部、硬化用触媒としてジブチルスズラウレート 0.2重量部、白金系化合物として亜燐酸トリフェニル塩化白金酸反応錯体(白金元素量として 5%) 0.2重量部、上記したテトラゾール化合物を含む混合物 0.2重量部を配合し、これを均一に混合して難燃性シリコーンゴム組成物を作製した。
【0050】
上記した難燃性シリコーンゴム組成物を298K、 60%RH、 2週間の条件下で硬化させて、厚さ 1mmのシリコーンゴムシートと厚さ 2mmのシリコーンゴムシートをそれぞれ作製した。これらを後述する特性評価に供した。
【0051】
実施例6
テトラゾール化合物・5A-ADI 100重量部を予め末端にメチル基を有するポリジメチルシロキサン(粘度10000cP) 100重量部に 3本ロールを用いて混合した。この混合物をテトラゾール化合物を除く実施例5のシリコーンゴム組成物に 0.2重量部を配合し、これを均一に混合して難燃性シリコーンゴム組成物を調整した。この組成物を実施例5と同一条件下で硬化させて厚さ 1mmおよび厚さ 2mmのシリコーンゴムシートをそれぞれ作製した。これらを後述する特性評価に供した。
【0052】
比較例4
テトラゾール化合物を除く実施例5のシリコーンゴム組成物に、ベンゾトリアゾールの 30%イソプロピルアルコール溶液 0.4重量部を配合し、これを均一に混合してシリコーンゴム組成物を調整した。この組成物を実施例5と同一条件下で硬化させて、厚さ 1mmおよび厚さ 2mmのシリコーンゴムシートをそれぞれ作製した。これらを後述する特性評価に供した。
【0053】
比較例5
5-フェニルテトラゾール化合物 100重量部を予め末端にメチル基を有するポリジメチルシロキサン(粘度10000cP) 100重量部に 3本ロールを用いて混合した。この混合物をテトラゾール化合物を除く実施例5のシリコーンゴム組成物に 0.2重量部配合し、これを均一に混合してシリコーンゴム組成物を調整した。この組成物を実施例5と同一条件下で硬化させて、厚さ 1mmおよび厚さ 2mmのシリコーンゴムシートをそれぞれ作製した。これらを後述する特性評価に供した。
【0054】
比較例6
テトラゾール化合物を除く実施例5のシリコーンゴム組成物を、実施例5と同一条件下で硬化させて、厚さ 1mmおよび厚さ 2mmのシリコーンゴムシートをそれぞれ作製した。これらを後述する特性評価に供した。
【0055】
上記した実施例5、6および比較例4〜6で得た各シリコーンゴムを用いて、JIS C 2123による耐熱性試験(加熱空気老化試験、473K× 7日または523K× 7日)およびUL-94V試験に基く難燃性試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
Figure 0003649864
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば特定の官能基を有するテトラゾール化合物、さらにはそれと白金またはパラジウム系化合物とを併用しているため、耐熱性と共に優れた難燃性を付与したシリコーンゴム組成物を提供することができる。そして、このような難燃性シリコーンゴム組成物の硬化物である本発明のシリコーンゴムは、難燃性および耐熱性が必要とされる各種の用途に有効である。
【0058】

Claims (4)

  1. (A)硬化性シリコーンゴム組成物と、(B)アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオール基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含むテトラゾール化合物を、前記(A)成分のうちシリコーンベースポリマー100重量部に対して0.01〜30重量部とを含有することを特徴とする難然性シリコーンゴム組成物。
  2. 請求項1記載の難然性シリコーンゴム組成物おいて、
    さらに、前記(A)成分のうちシリコーンベースポリマー100重量部に対し、(C)白金またはパラジウム原子として0.11000ppmとなる量の白金、白金化合物、パラジウムまたはパラジウム化合物を含有することを特徴とする難燃性シリコーンゴム組成物。
  3. 請求項1または請求項2記載の難然性シリコーンゴム組成物おいて、
    前記(B)成分のテトラゾール化合物は、分解温度が473K以上であることを特徴とする難然性シリコーンゴム組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の難燃性シリコーンゴム組成物を硬化させてなることを特徴とするシリコーンゴム硬化物。
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