JP3648751B2 - 有機性排液の好気性生物処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は有機性排液の好気性生物処理方法、特に活性汚泥の沈降性および脱水性を改善することができる有機性排液の好気性生物処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
曝気槽において活性汚泥の存在下に曝気を行い、好気性微生物の作用を利用して有機性排液を好気条件で処理する好気性生物処理方法では、被処理液中のBODが同化されて余剰汚泥が増殖し、多量の余剰汚泥が排出される。
このような余剰汚泥の沈降性および脱水性は、下水等の初沈汚泥の場合よりも悪く、固液分離および脱水処理が困難である。この原因にはいろいろな要因が関連しているが、沈降性は原水水質や処理条件によっても変わり、沈降性が悪化すると、処理不能に陥ることもある。
【0003】
活性汚泥の沈降性および脱水性が悪い原因として、汚泥中の無機質含有量が低いことがあげられる。
しかし、従来の好気性生物処理方法では、汚泥中の無機質含有量を無機質を添加することなく調節することは困難であり、このため汚泥の性状は一義的に決定され、汚泥の沈降性および脱水性は悪くなっていた。
【0004】
活性汚泥の沈降性に関しては、バルキング防止のために、原水のBOD/N比などの処理条件を選ぶことが行われていたが、この場合、バルキングが防止できても、活性汚泥の本来的な沈降性の悪さは改善されず、脱水性の悪さも改善されない。
従って従来は、活性汚泥の実質的な沈降性、脱水性の改善のための方策はとられていないのが実情である。
【0005】
ところで、特開平2−227191号および特開平2−277597号には、余剰汚泥をアルカリまたは酸の添加および加熱下に可溶化した後、曝気槽に戻して好気性生物処理することにより、生成する余剰汚泥を減容化することができる有機性汚泥の処理方法が提案されている。
しかし、上記公報の処理方法は余剰汚泥の減容化のみを目的とするものであり、生成する余剰汚泥の性状は考慮されておらず、余剰汚泥の性状に及ぼす可溶化条件も何ら検討されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、汚泥の沈降性および脱水性を改善し、しかも生成する余剰汚泥の量を減容化することができる有機性排液の好気性生物処理方法を提案することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の有機性排液の好気性生物処理方法である。
(1)有機性排液を曝気槽で活性汚泥の存在下に好気性生物処理し、曝気槽内の混合汚泥を固液分離して、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外へ排出し、他の一部を返送汚泥として曝気槽に返送する方法において、
曝気槽内の混合汚泥または分離汚泥の一部を可溶化処理して曝気槽に導入し、
この可溶化処理に供給する汚泥の供給量および系外へ排出する余剰汚泥の排出量を、有機汚泥減容率を目安にし、該有機汚泥減容率が50〜80%となるように制御することにより、
曝気槽内の活性汚泥のVSS/SS比およびMLVSSを所定値に維持する
ことを特徴とする有機性排液の好気性生物処理方法。
(2) 曝気槽内の活性汚泥のVSS/SS比を0.2〜0.7、およびMLVSSを500〜10000mg/lに維持することを特徴とする上記(1)記載の有機性排液の好気性生物処理方法。
(3)前記分離汚泥の可溶化処理がオゾン処理であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の有機性排液の好気性生物処理方法。
(4)オゾン処理する場合のオゾンの供給量は、オゾン注入率が0.002〜0.2−O3/g−VSSとなるように供給することを特徴とする上記(3)記載の有機性排液の好気性生物処理方法。
【0008】
本発明で処理の対象となる排液は、有機物を含有しているものであれば特に限定されず、下水、し尿、産業排液など、通常好気性生物処理法により処理されている排液が処理の対象になる。
【0009】
本発明では、有機性排液を曝気槽内で活性汚泥の存在下に好気性生物処理し、曝気槽内の混合汚泥を固液分離して、分離汚泥の一部を余剰汚泥として排出し、他の一部を返送汚泥として曝気槽に返送する通常の好気性生物処理において、曝気槽内の汚泥、または分離汚泥の一部を可溶化処理して曝気槽に導入する。
【0010】
可溶化のための汚泥の引抜は、曝気槽から槽内液の状態で引抜いてもよく、また汚泥分離槽から分離汚泥を引抜いてもよい。これらの引抜汚泥はそのまま可溶化処理に供してもよく、遠心分離機などにより高濃度に濃縮したものを可溶化してもよい。
【0011】
本発明では可溶化処理に供給する汚泥の供給量および系外に排出する余剰汚泥の排出量を、有機汚泥減容率を目安にし、該有機汚泥減容率が50〜80%となるように制御することにより、曝気槽内活性汚泥のVSS/SS比およびMLVSSを所定値に維持し、これによって生物処理性能を低下させることなく、曝気槽内の活性汚泥の沈降性および脱水性を改善するとともに、減容化を行う。これにより、汚泥分離槽における分離操作が容易となり、また生成する余剰汚泥の脱水処理も容易になる。
【0012】
曝気槽内の活性汚泥のVSS/SS比は0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6、MLVSSは500〜10000mg/l、好ましくは1000〜5000mg/lに維持するように制御することができる。一般的傾向としてVSS/SS比が小さくなるほど汚泥の比重が高くなり、沈降性、脱水性がよくなる。
【0013】
引抜汚泥の可溶化の方法としては、加熱分解等の物理的手段;過酸化水素等の酸化剤による酸化分解、酸溶解、アルカリ溶解等の化学的手段;これらを組合せた手段などがあげられるが、オゾンによる酸化分解(以下、オゾン処理という)が好ましい。
【0014】
すなわち加熱分解では加熱−冷却のサイクルを必要とし、また酸、アルカリ等による処理は後で中和を必要とし、熱や薬剤の無駄が多いが、オゾン処理の場合は反応が迅速で無駄が少なく、生物処理による無機化が容易である。
オゾン処理する場合のオゾンの供給量は、オゾン注入率が0.002〜0.2g−O3/g−VSS、好ましくは0.01〜0.1O3/g−VSSとなるように供給するのが望ましい。
【0015】
このような可溶化処理を行うことにより、汚泥はBOD成分に変換されるので、可溶化処理汚泥を曝気槽に戻すと、BOD成分は微生物代謝を受け、一部はCO2ガスとして系外へ排出される。曝気槽内のVSS/SS比は系外へ排出されるCO2量が多くなるに従って小さくなる。このため、可溶化処理への汚泥の供給量を多くするほどVSS/SS比は小さくなり、汚泥の沈降性、脱水性は改善される。
【0016】
このとき可溶化処理する汚泥の量が多くなると、VSSが減少して好気性生物処理性能が低下するが、ここで余剰汚泥の排出を少なくすると、MLVSSが高くなり、曝気槽内に処理に必要な活性汚泥が保持される。
【0017】
また本発明では、可溶化処理した汚泥を曝気槽に戻して好気性生物処理しているので、可溶化処理によって変換されたBOD成分が容易に生物分解されて除去され、これにより余剰汚泥が減容化される。
【0018】
有機汚泥減容率と活性汚泥のVSS/SS比とには、有機汚泥減容率を高く運転するほどVSS/SS比は小さくなるという関係にある。例えば、被処理液のBODを100mg/l、その汚泥転換率を0.4g−VSS/g−BOD、被処理液の無機SS濃度を10mg/lとした場合の両者の関係を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1のデータからすると、100%減容化した場合にはVSS/SS比はゼロになるが、実際にはVSSがゼロでは好気性生物処理ができないため、適正な有機汚泥減容率が存在することになるが、これは曝気槽内のVSS濃度およびVSS/SS比を勘案して決定する。表1の場合、有機汚泥減容率が50〜80%となるように処理すると、汚泥の沈降性および脱水性が改善されることになる。
上記とはSS/BOD比が異なる他の被処理液の場合でも、有機汚泥減容率を選択することにより、目的とするVSS/SS比が得られる。
【0021】
また本発明では、処理しようとする有機性排液中に無機質SS成分が含まれていない場合は、極く少量の無機質SS成分、例えば砂およびゼオライト、あるいは無機凝集剤などを添加してもよい。
【0022】
【実施例】
次に本発明の実施例について説明する。
図1は実施例の有機性排液の好気性生物処理方法を示すフローシートであり、余剰汚泥をオゾン処理する場合の例を示している。図において、1は曝気槽、2は汚泥分離槽、3はオゾン処理槽である。
【0023】
図1の処理方法では、曝気槽1に有機性排液4および返送汚泥5を導入するとともに、オゾン処理汚泥6を導入し、曝気槽1内の活性汚泥と混合し、空気供給管7から空気を送り散気装置8から散気して好気性生物処理を行う。この場合、曝気槽1内の活性汚泥のVSS/SS比およびMLVSSを前記値に維持する。
【0024】
曝気槽1の槽内液は一部ずつ取出して汚泥分離槽2に導入し、分離液と分離汚泥11とに分離する。分離液は処理液10として系外へ排出し、分離汚泥11は一部を返送汚泥5として曝気槽1に返送し、他の一部を引抜汚泥13としてオゾン処理槽3に導入してオゾン処理し、残部を余剰汚泥14として系外に排出する。この場合、引抜汚泥13の供給量および系外に排出する余剰汚泥14の排出量を、曝気槽1内の活性汚泥のVSS/SS比およびMLVSSが前記値になるように制御する。この制御には有機汚泥減容率を目安にすることができ、表1のような有機性排液4を処理する場合には、減容率が50〜80%になるように引抜汚泥13をオゾン処理すればよい。
【0025】
引抜汚泥13はオゾン処理槽3に導入し、オゾン供給管15からオゾンを供給してオゾンと接触させ、汚泥を酸化分解してBOD成分に変換する。オゾンの供給量は、オゾン注入率が0.002〜0.2g−O3/g−VSS、好ましくは0.01〜0.1O3/g−VSSとなるように供給するのが望ましい。オゾン排ガスは排オゾン管16から排出し、オゾン処理汚泥6は曝気槽1に戻して前記のように好気性生物処理を行う。
【0026】
図2は別の実施例の処理方法を示すフローシートであり、曝気槽内から槽内液を引抜いてオゾン処理する場合の例を示している。
図2の処理方法の場合、曝気槽1内の槽内液を引抜汚泥13として引抜き、これをオゾン処理槽3に導入してオゾン処理する他は図1の場合と同様にして処理する。
【0027】
図1および図2のいずれの処理方法においても、活性汚泥のVSS/SS比が所定値に維持されるので汚泥分離槽2における沈降性は良好であり、また余剰汚泥14は減容化され、しかも脱水性も良好である。また曝気槽1内のMLVSSも所定値に維持されているので、生物処理性能も低下しない。
【0028】
実施例1
可溶化処理としてオゾン処理を採用し、初沈下水を被処理液として図1の方法により下記条件で処理した。結果を表2に示す。
【0029】
脱水ケーキの含水率は次のようにして測定した。
汚泥200mlを300mlビーカーにとり、0.2%に調整したジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロリド四級化物のホモポリマ水溶液をSSに対して1%になるように汚泥に加えた後、タービル羽根を備えた攪拌機を用いて200rpmで30秒間攪拌した。次にナイロン濾布を敷いたブフナーロートに内径5cmの塩化ビニル製パイプを置き、その中へ凝集汚泥を注ぎ込み濾過した。濾過後の汚泥をベルトプレス用濾布にはさみ、面圧0.5kg/cm2で1分間圧搾を行い、脱水ケーキの含水率を測定した。
【0030】
比較例1
実施例1において、オゾン処理を行わなかった以外は同様にして行った。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2の結果から、実施例1の汚泥は比較例1のものに比べて沈降性および脱水性がよいことがわかる。また汚泥が減容化され、しかも処理液の水質も悪化しないことがわかる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の処理方法によれば、可溶化処理に供給する汚泥の供給量および系外に排出する余剰汚泥の排出量を、有機汚泥減容率を目安にし、該有機汚泥減容率が50〜80%となるように制御することにより、曝気槽内の活性汚泥のVSS/SS比およびMLVSSを所定値に維持するようにしたので、生物処理性能を低下させることなく、汚泥の沈降性および脱水性を改善し、しかも生成する余剰汚泥の量を減容化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の有機性排液の好気性生物処理方法を示すフローシートである。
【図2】別の実施例の有機性排液の好気性生物処理方法を示すフローシートである。
【符号の説明】
1 曝気槽
2 汚泥分離槽
3 オゾン処理槽
4 有機性排液
5 返送汚泥
6 オゾン処理汚泥
7 空気供給管
8 散気装置
10 処理液
11 分離汚泥
13 引抜汚泥
14 余剰汚泥
15 オゾン供給管
16 排オゾン管
Claims (4)
- 有機性排液を曝気槽で活性汚泥の存在下に好気性生物処理し、曝気槽内の混合汚泥を固液分離して、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外へ排出し、他の一部を返送汚泥として曝気槽に返送する方法において、
曝気槽内の混合汚泥または分離汚泥の一部を可溶化処理して曝気槽に導入し、
この可溶化処理に供給する汚泥の供給量および系外へ排出する余剰汚泥の排出量を、有機汚泥減容率を目安にし、該有機汚泥減容率が50〜80%となるように制御することにより、
曝気槽内の活性汚泥のVSS/SS比およびMLVSSを所定値に維持する
ことを特徴とする有機性排液の好気性生物処理方法。 - 曝気槽内の活性汚泥のVSS/SS比を0.2〜0.7、およびMLVSSを500〜10000mg/lに維持することを特徴とする請求項1記載の有機性排液の好気性生物処理方法。
- 前記分離汚泥の可溶化処理がオゾン処理であることを特徴とする請求項1または2記載の有機性排液の好気性生物処理方法。
- オゾン処理する場合のオゾンの供給量は、オゾン注入率が0.002〜0.2−O3/g−VSSとなるように供給することを特徴とする請求項3記載の有機性排液の好気性生物処理方法。
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