JP3648646B2 - 構造物の液状化対策構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地震発生時に液状化の恐れのある地盤上に設置された、例えば既設のタンク(貯槽)等の構造物に適用するのに好適な構造物の液状化対策構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軟弱な地盤上に設置された既設の古い(旧消防法により建設された)構造物、例えば地上式のタンクは、地震発生時に下方の地盤が液状化する恐れがある。このときには、タンク中心部の下方の地盤はタンクの重量によって押さえつけられているために液状化しにくいのに対し、タンク外周部の下方の地盤は、押さえつけられる力が中心部に比較して小さいうえにタンクが水平方向に回転しようとする力が地盤に大きく作用する(ロッキング現象)ため、液状化しやすい性質を有している。
【0003】
このため、従来、このような既設のタンクの地震時の地盤の液状化対策として、以下のような構造(工法)が採用されている。
まず、タンクの周囲地盤中に、強固な支持層にまで達する剛性の高い筒状の連続壁を打設する構造がある。
【0004】
また、別の構造として、タンクの周囲から、該タンクの中心部の鉛直下方位置に向けて斜めに棒状のアンカー等の補強材を地盤中に挿入する構造もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の構造物の液状化対策構造には、以下のような問題が存在する。
まず、タンクの周囲地盤中に筒状の連続壁を構築する構造では、タンク直下の地盤が液状化したときに、タンク外周部が連続壁によって強固な支持層上に支持された形態となっているためにその沈下量が小さいのに対し、中心部においては液状化の影響を受けて沈下量が大きくなり、いわゆる不等沈下現象が生じてしまう。この結果、タンク本体に歪みが生じてしまう恐れがある。
【0006】
一方、タンクの周囲から中心部に向けて斜めに補強材を挿入する構造では、地盤の液状化時に最も弱点となるタンク外周部の地盤は強化されないため、液状化に対する根本的な対策とはいえないという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、特に既設の構造物において地盤の液状化による影響を最小限に抑えることのできる構造物の液状化対策構造を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、軟弱な液状化層上に構築された構造物の液状化対策構造であって、該構造物の外周部の下方の地盤中に連続壁が構築され、該連続壁の上端部が前記構造物の外周部に一体化され、かつ下端部が該下端部の下方に空隙を有して強固な支持層上の非液状化層中に位置する構成とされていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に係る発明は、軟弱な液状化層上に構築された構造物の液状化対策構造であって、該構造物の外周部の下方の地盤中に、前記構造物の外周部から鉛直下方に延在する第一のグラウンドアンカーと、前記構造物の外周部からその中央部の鉛直下方位置に向けて斜めに延在する第二のグラウンドアンカーとが打設され、これら第一および第二のグラウンドアンカーそれぞれの上端部が、断面視上方から下方に向けてその幅寸法が漸次小さくなるクサビ状に形成されたブロックを介して前記構造物の外周部に一体化され、下端部が前記液状化層の下方に位置する強固な支持層に固定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の構造物の液状化対策構造において、前記構造物の少なくとも外周部の下方の前記液状化層が地盤改良されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の構造物の液状化対策構造において、前記構造物が既設の構造物であり、かつ、杭または連続壁,グラウンドアンカー,地盤改良が、後施工されたものであることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る構造物の液状化対策構造の第一ないし第五の実施の形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
【0013】
[第一の実施の形態]
ここでは、まず、構造物の外周部の下方の地盤中に、例えば筒状の連続壁を構築する場合の例を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、既設のガス貯蔵用のタンク(構造物)1は、例えば、表層部が液状化しやすい液状化層G1、該液状化層G1の下方が液状化しにくい非液状化層G2、さらにその下方が強固な支持層G3となっている地盤G上に構築されている。
そして、このタンク1は、平面視円筒形のタンク本体2と、液状化層G1の表層部に形成された所定厚さのコンクリート造の基礎3とから構成されている。
【0015】
このような既設のタンク1が構築されている地盤Gの液状化対策構造は、以下のようになっている。
タンク1の外周部の直下方の地盤G中には、該タンク1の外周部に沿った円筒状のリング架構(連続壁)5が構築されている。このリング架構5は、鉄筋コンクリート製の矢板を複数環状に配置して構成されたものである。そして、このリング架構5は、その下端部が液状化層G1中所定の深さに位置するようになっており、上端部は、その全周が鉄筋コンクリート製の環状のコーピング6を介してタンク1の基礎3の外周部に一体化されている。
【0016】
さらに、タンク1の下方の液状化層G1は、該タンク1の外周部でかつコーピング6の内側の環状の部分7が地盤改良されて固化されている。
【0017】
このような液状化対策構造を実現するには、まず既設のタンク1の基礎3から例えば2〜3m外周側に、リング架構5を構成する複数の矢板を地盤Gの液状化層G1中の所定深さまで打設する。この矢板の打設には、打撃・振動による打ち込み工法、先行掘削した孔に埋め込む埋め込み工法、圧入工法等が用いられる。
【0018】
このようにしてリング架構5を構築した後、このリング架構5と基礎3との間隙から、タンク1の基礎3の外周部の下方の液状化層G1の環状の部分7を、薬液注入工法や高圧噴射撹拌工法等の各種地盤改良工法によって、地盤改良して固化させる。
【0019】
次いで、前記構築したリング架構5の上端部近傍の地盤Gを掘り下げ、リング架構5の上端部を出現させる。そして、ここに鉄筋コンクリート造のコーピング6を構築することによってリング架構5とタンク1の基礎3とを一体化させる。これによって、図1に示したタンク1の液状化対策構造の施工が完了する。
【0020】
上述したタンク1の液状化対策構造では、タンク1の外周部の下方の地盤G中にリング架構5が構築され、このリング架構5の上端部がコーピング6を介してタンク1の基礎3の外周部に一体化され、下端部が液状化層G1中に位置する構成とされている。このリング架構5によって地盤Gの液状化層G1中で鉛直および水平方向の抵抗力を生み出すことができ、これによって地震発生時に液状化層G1が液状化したとしてもタンク1のロッキング現象を軽減させることができる。また、このリング架構5によってその外側の液状化層G1で発生する過剰水圧を遮断することができるので、タンク1を支持する液状化層G1の地震時における変形を抑えることができる。加えて、リング架構5の下端部が液状化層G1中に位置して、強固な支持層G3にまで達しない構成となっているので、液状化層G1が液状化した場合にもタンク1の中心部と外周部とでその沈下量に大きな差が生じるのを抑えることができ、これによって不等沈下を軽減してタンク1に歪みが生じるのを防止することができる。
このようにして、地盤Gの液状化層1の液状化による既設のタンク1への影響を従来よりも大幅に軽減することが可能となる。
【0021】
[第二の実施の形態]
次に、本発明に係る構造物の液状化対策構造の第二の実施の形態について説明する。
ここでは、上記第一の実施の形態で示したタンク1の液状化対策構造に対し、リング架構5の下端部を非液状化層G2に位置させるとともに、地盤改良する範囲を拡大した場合の例を用いて説明する。以下の説明においては、前記第一の実施の形態と共通する構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、タンク1は、その外周部の直下方の地盤G中に、該タンク1の外周部に沿った円筒状のリング架構(連続壁)10が構築されており、その上端部は、全周にわたって、鉄筋コンクリート製の環状のコーピング6を介してタンク1の外周部に一体化されている。
【0023】
このリング架構10は、鋼製の矢板を複数環状に配置して連続壁状の構成としたもので、その下端部が非液状化層G2中所定の深さに位置するようになっている。このリング架構10の下方には空隙11が形成されており、これによってリング架構10が沈下可能な構成となっている。
【0024】
さらに、タンク1の下方の液状化層G1は、その全面部分12が地盤改良されて固化されている。
【0025】
このような液状化対策構造を実現するには、上記第一の実施の形態と全く同様の工法を適用するが、リング架構10を構成する複数の矢板を打設するに際しては、この矢板を非液状化層G2中に所定深さまで一旦打ち込んだ後、上方に引き上げることによって、非液状化層G2中に空隙11を形成する。
【0026】
上述したタンク1の液状化対策構造では、タンク1の外周部の下方の地盤G中にリング架構10が構築され、このリング架構10の上端部がコーピング6を介してタンク1の基礎3の外周部に一体化され、下端部が非液状化層G2中に位置する構成とされている。これにより、前記第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、リング架構10の下端部が、非液状化層G2にまで根入れされ、かつその下方に空隙11が形成されてこのリング架構10が沈下可能とされた構成となっている。これによって、液状化層G1が液状化した場合にも、タンク1の側方流動を防止して、強固な支持構造を実現することができる。しかもリング架構10が沈下可能となっているので、タンク1とリング架構10とが一体的に沈下することによって、タンク1の不等沈下を抑えてタンク本体2に歪みが生じるのを防止することができる。
【0028】
さらに、タンク1の下方の全面部分12が地盤改良されて固化されているので、これによって、より高い液状化抵抗を発揮することができる。
【0029】
なお、上記第二の実施の形態において、リング架構10について、必ずしも全周にわたって連続する必要はなく、例えばタンク1に接続する配管等がある場合には、その部分のみには矢板を配置しなくてもよい。これは、リング架構10は、液状化した地盤が基礎下から流出しようとする動きを抑える働きを、そのフープテンションに期待するものではなく、リング架構10の曲げ剛性に期待するものであるから、部分的に矢板が欠落した状態であっても上記の対策効果を発揮することができるからである。
また、このリング架構10を鋼製の矢板で構成するようにしたが、これ以外にも、鋼管矢板、ソイルモルタル壁、コンクリート地中壁等であってもよい。
【0030】
[第三の実施の形態]
次に、本発明に係る構造物の液状化対策構造の第三の実施の形態について説明する。ここでは、例えば、構造物の下方の地盤中に杭を打設する場合の例を用いて説明する。以下の説明において、前記第一および第二の実施の形態と共通する構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、タンク1の外周部の直下方の地盤G中には、該タンク1の外周部に沿った平面視環状の位置に、多数の杭20,20,…が所定間隔毎に打設されている。
【0032】
各杭20は、その軸線方向に沿って所定間隔ごとに多数の節20a,20a,…が形成されたいわゆる節杭で、その下端部が液状化層G1中所定の深さに位置するようになっている。そして、各杭20の上端部は、その全周が鉄筋コンクリート製の環状のコーピング6を介してタンク1の外周部に一体化されている。
このようにして、タンク1は、杭20とコーピング6とからなる、いわば櫛状をなした櫛形架構21によって支持された構成となっている。
【0033】
さらに、タンク1の下方の液状化層G1は、該タンク1の外周部でかつコーピング6の内側の環状の部分7が地盤改良されて固化されている。
【0034】
このような液状化対策構造を実現するには、まず既設のタンク1の基礎3から例えば2〜3m外周側に、杭20,20,…を地盤Gの液状化層G1中の所定深さまで打設する。各杭20の打設には、打撃・振動による打ち込み工法、先行掘削した孔に埋め込む埋め込み工法等が用いられる。
【0035】
このようにして所定数の杭20を打設した後、タンク1の基礎3の外周部の下方の液状化地盤G1の環状の部分7を、薬液注入工法や高圧噴射撹拌工法等の各種地盤改良工法によって地盤改良して固化させる。
【0036】
次いで、杭20,20,…の上端部近傍の地盤Gを掘り下げ、杭20,20,…の上端部を出現させる。そして、ここに鉄筋コンクリート造のコーピング6を構築することによって杭20,20,…とタンク1の基礎3とを一体化させる。これによって、図3に示したタンク1の液状化対策構造の施工が完了する。
【0037】
上述したタンク1の液状化対策構造では、タンク1の外周部の下方の地盤G中に杭20,20,…が所定間隔ごとに打設され、これら杭20の上端部がコーピング6を介してタンク1の基礎3の外周部に一体化され、下端部が液状化層G1中に位置する構成とされている。
これにより、地盤中に打ち込んだ杭20,20,…によって、地盤Gを締め固めることができ、液状化の発生を抑えることができる。
また、杭20,20,…とコーピング6とからなる櫛形架構21によって、地盤Gの液状化層G1中で鉛直および水平方向の抵抗力を生み出すことができ、これによって地震発生時に液状化層G1が液状化した場合にもタンク1のロッキング現象を軽減させることができる。また、この櫛形架構21によってその外側の液状化層G1で発生する過剰水圧を遮断することができるので、タンク1を支持する液状化層G1の地震時における変形を抑えることができる。加えて、各杭20の下端部が液状化層G1中に位置して、強固な支持層G3にまで達しない構成となっているので、液状化層G1が液状化した場合にもタンク1の中心部と外周部とでその沈下量に大きな差が生じるのを抑えることができ、これによって不等沈下を軽減し、タンク本体2に歪みが生じるのを防止することができる。
このようにして、地盤Gの液状化層1の液状化による既設のタンク1への影響を従来よりも大幅に軽減することが可能となる。
【0038】
[第四の実施の形態]
次に、本発明に係る構造物の液状化対策構造の第四の実施の形態について説明する。
例えば上記第三の実施の形態で示したタンク1の液状化対策構造に対し、地盤改良する範囲を拡大した場合の例を用いて説明する。以下の説明においては、前記第三の実施の形態と共通する構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
図4に示すように、タンク1は、その外周部の直下方の地盤G中に、該タンク1の外周部に沿って所定間隔ごとに例えば節杭等の杭30,30,…が打設されており、その上端部は、その鉄筋コンクリート製の環状のコーピング6を介してタンク1の外周部に一体化されている。このようにして、杭30とコーピング6とからなる櫛形架構32が構成されている。各杭30は、その下端部が液状化層G1中所定の深さに位置するようになっている。
さらに、タンク1の下方の液状化層G1は、その全面部分12が地盤改良されて固化されている。
【0040】
このような液状化対策構造を実現するには、上記第三の実施の形態と全く同様の工法を適用する。
【0041】
上述したタンク1の液状化対策構造では、タンク1の外周部の下方の地盤G中に杭30,30,…が所定間隔ごとに打設され、これら杭30の上端部がコーピング6を介してタンク1の基礎3の外周部に一体化され、下端部が液状化層G1中に位置する構成とされている。これにより、前記第三の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、タンク1の下方の全面部分12が地盤改良されて固化されているので、これによって、より高い液状化抵抗を発揮することができる。
【0042】
なお、上記第一ないし第四の実施の形態において、タンク1の下方の液状化層G1の環状の部分7または全面部分12を地盤改良する構成としたが、タンク1の大きさや重量、液状化層G1の土質等によっては地盤改良しない構成としてもよい。
【0043】
[第五の実施の形態]
次に、本発明に係る構造物の液状化対策構造の第五の実施の形態について説明する。ここでは、例えば、構造物の下方にグラウンドアンカーを打設する場合の例を用いて説明する。以下の説明において、前記第一ないし第四の実施の形態と共通する構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図5に示すように、タンク1の外周部の直下方の地盤G中には、該タンク1の外周部に沿った環状の位置に、所定間隔ごとに、多数のグラウンドアンカー40,41が緊張状態で打設されている。
【0045】
グラウンドアンカー(第一のグラウンドアンカー)40は、鉛直下方に向けて延在するよう打設されている。一方、グラウンドアンカー(第二のグラウンドアンカー)41は、タンク1の外周部から、その中心部の鉛直下方位置に向けて斜めに延在するよう打設されている。
これらグラウンドアンカー40,41は、それぞれその下端部が、液状化層G1および非液状化層G2の下方の強固な支持層G3に打ち込まれており、上端部が鉄筋コンクリート製のブロック42を介してタンク1の基礎3の外周部に一体化されている。
このブロック42は、断面視すると上方から下方に向けてその幅寸法が漸次小さくなるクサビ状の形状をなしている。これにより、グラウンドアンカー40,41に緊張力を導入したときに、このブロック42によって地盤Gに対して圧縮力が作用するようになっている。
【0046】
このような液状化対策構造を実現するには、まず既設のタンク1の基礎3から例えば2〜3m外周側に、グラウンドアンカー40,41を削孔・設置する。
次いで、基礎3の外周部の地盤に鉄筋コンクリートでブロック42を構築し、グラウンドアンカー40,41と基礎3とを一体化する。
しかる後に、各グラウンドアンカー40,41に所定の緊張力を導入して定着させる。
これによって、図5に示したタンク1の液状化対策構造の施工が完了する。
【0047】
上述したタンク1の液状化対策構造では、タンク1の外周部の下方の地盤G中に、鉛直下方に延在するグラウンドアンカー40が打設され、該グラウンドアンカー40の上端部がタンク1の基礎3の外周部にブロック42を介して一体化され、下端部が液状化層G1の下方に位置する強固な支持層G3に固定された構成となっている。このグラウンドアンカー40によって、タンク1の外周部に鉛直荷重が導入され、これによってタンク1の外周部から地盤Gに押さえ付け効果を付与することができ、液状化層G1を液状化しにくくすることができる。
また、タンク1の外周部から、中心部の鉛直下方位置に向けて斜めに延在するグラウンドアンカー41が打設された構成となっている。このグラウンドアンカー41の引張抵抗によって液状化層G1の剪断変形を抑制することができる。
【0048】
さらに、これらグラウンドアンカー40、41の上端部が断面視クサビ状のブロック42に固定された構成となっている。これにより、グラウンドアンカー40,41に導入された緊張力によって、ブロック42から地盤Gに圧縮力を有効に作用させることができ、上記効果をより顕著なものとすることができる。
このようにして、地盤Gの液状化層G1の液状化による既設のタンク1への影響を従来よりも大幅に軽減することが可能となる。
【0049】
なお、上記第一ないし第五の実施の形態において、本発明に係る構造物の液状化対策構造を適用する構造物の一例として円筒状のタンク1を用いたが、もちろん、構造物の規模、形状等を問うものではなく、さらには既設の構造物だけでなく、新設の構造物にも適用することが可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る構造物の液状化対策構造によれば、構造物の外周部の下方の地盤中に連続壁を構築し、その上端部を構造物の外周部に一体化し、かつ下端部を該下端部の下方に空隙を有するように強固な支持層上の非液状化層中に位置させる構成とした。このようにして設けた連続壁が地盤内で鉛直および水平方向の抵抗力を生み出し、これによって構造物のロッキング現象を軽減させることができる。また、連続壁の外側の地盤で発生する過剰水圧を遮断することができるので、構造物を支持する地盤の地震時における剪断変形を抑えることができる。加えて、連続壁が非液状化層中に位置しており、強固な支持層にまで達しない構成となっているので、地盤が液状化した場合にも構造物の中心部と外周部とで沈下量に大きな差が生じるのを抑えることができ、これによって不等沈下を軽減し、構造物に歪みが生じるのを防止することができる。
また、連続壁の下端部を非液状化層にまで根入れし、かつその下方に空隙が形成されて連続壁を沈下可能としておくことによって、液状化層が液状化した場合にも構造物の側方流動を防止することができるうえ、構造物と連続壁とが一体的に沈下し、構造物の不等沈下を抑えて構造物本体に歪みが生じるのを防止することができる。
このようにして、上記液状化構造によって、地盤の液状化による影響を従来よりも大幅に軽減することが可能となる。
【0051】
請求項2に係る構造物の液状化対策構造によれば、構造物の外周部の下方の地盤中に、構造物の外周部から鉛直下方に延在する第一のグラウンドアンカーと、外周部から中心部の鉛直下方位置に向けて延在する第二のグラウンドアンカーとを打設し、これらそれぞれのグラウンドアンカーの上端部を、断面視上方から下方に向けてその幅寸法が漸次小さくなるクサビ状に形成されたブロックを介して構造物の外周部に一体化し、下端部を液状化層の下方に位置する強固な支持層に固定する構成とした。これにより、第一のグラウンドアンカーによって、構造物の外周部に鉛直荷重が導入され、これによって構造物の外周部から地盤に押さえ付け効果を付与することができ、液状化しにくくすることができる。また、構造物の外周部から中心部の鉛直下方位置に向けて斜めに打設した第二のグラウンドアンカーにより、その引張抵抗によって、構造物の剪断変形の抑制を図ることも可能となる。
さらに、これら第一および第二のグラウンドアンカーの上端部が断面視クサビ状のブロックに固定された構成となっているので、第一および第二のグラウンドアンカーに導入された緊張力によって、ブロックから地盤に圧縮力を有効に作用させることができ、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0052】
請求項3に係る構造物の液状化対策構造によれば、構造物の少なくとも外周部の下方の地盤を地盤改良した構成となっている。これにより、さらに液状化に対する抵抗力を高めることができ、請求項1または2に係る効果をより一層顕著なものとすることができる。
【0053】
請求項4に係る構造物の液状化対策構造によれば、構造物が既設の構造物であり、かつ杭または連続壁,グラウンドアンカー,地盤改良が後施工されたものである構成となっている。このようにして既設の構造物に後から液状化対策を施すことによって、液状化に対する影響を従来よりも大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る構造物の液状化対策構造の第一の例を示す立断面図である。
【図2】本発明に係る構造物の液状化対策構造の第二の例を示す立断面図である。
【図3】本発明に係る構造物の液状化対策構造の第三の例を示す立断面図である。
【図4】本発明に係る構造物の液状化対策構造の第四の例を示す立断面図である。
【図5】本発明に係る構造物の液状化対策構造の第五の例を示す立断面図である。
【符号の説明】
1 タンク(構造物)
5,10 リング架構(連続壁)
20,30 杭
40 グラウンドアンカー(第一のグラウンドアンカー)
41 グラウンドアンカー(第二のグラウンドアンカー)
G 地盤
G1 液状化層
G2 非液状化層
G3 強固な支持層

Claims (4)

  1. 軟弱な液状化層上に構築された構造物の液状化対策構造であって、該構造物の外周部の下方の地盤中に連続壁が構築され、該連続壁の上端部が前記構造物の外周部に一体化され、かつ下端部が該下端部の下方に空隙を有して強固な支持層上の非液状化層中に位置する構成とされていることを特徴とする構造物の液状化対策構造。
  2. 軟弱な液状化層上に構築された構造物の液状化対策構造であって、該構造物の外周部の下方の地盤中に、前記構造物の外周部から鉛直下方に延在する第一のグラウンドアンカーと、前記構造物の外周部からその中央部の鉛直下方位置に向けて斜めに延在する第二のグラウンドアンカーとが打設され、これら第一および第二のグラウンドアンカーそれぞれの上端部が、断面視上方から下方に向けてその幅寸法が漸次小さくなるクサビ状に形成されたブロックを介して前記構造物の外周部に一体化され、下端部が前記液状化層の下方に位置する強固な支持層に固定されていることを特徴とする構造物の液状化対策構造。
  3. 請求項1または2記載の構造物の液状化対策構造において、前記構造物の少なくとも外周部の下方の前記液状化層が地盤改良されていることを特徴とする構造物の液状化対策構造。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の構造物の液状化対策構造において、前記構造物が既設の構造物であり、かつ杭または連続壁,グラウンドアンカー,地盤改良が、後施工されたものであることを特徴とする構造物の液状化対策構造。
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