JP3646203B2 - プロジェクションボルトの溶接装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
軸部とフランジと溶着用突起からなるプロジェクションボルトを、板状のワークに溶接することがおこなわれている。本発明は、このような溶接の技術分野に属している。
【0002】
【従来の技術】
上述のような技術分野における先行技術としては、特許第2509103号公報があげられる。ここには、プロジェクションボルトの軸部を差し込む受入孔が可動電極に明けられ、可動電極に保持されたプロジェクションボルトは同電極の進出によって鋼板等のワークに溶接されることが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとしている問題点】
上述のような先行技術は、プロジェクションボルトを電極の受入孔に挿入するための機構としては、所要の役割を果たしている。しかし、既存の設備を最小限に改造して、設備の簡素化や設備費用の低減をはかるという面からすると、満足なものではない。とくに、小物の鋼板製ワークにプロジェクションボルトを溶接するようなときには、このような要請事項は非常に重要となる。さらに、両電極間にワークが進入してくるときに、ワークの挙動に支障をきたさないように配慮がなされていなければならない。
【0004】
【問題を解決するための手段とその作用】
本発明は、上述の問題点や要求条件に注目して発案されたもので、請求項1の発明は、軸部とフランジと軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを板状のワークに溶接するものにおいて、定置式溶接機の支持アームに可動電極と固定電極が設置され、両電極のいずれか一方に前記軸部が挿入される受入孔が形成され、支持アームにプロジェクションボルト供給装置を取り付け、他方、ワークを保持してこのワークを前記両電極間に移動するロボット装置が設けられ、前記プロジェクションボルト供給装置は支持アームの長手方向で見て電極よりも後方側に配置され、プロジェクションボルト供給装置は進退式の供給ロッドに取り付けた保持ヘッドとプロジェクションボルトの軸部を受入孔に挿入するための駆動手段から構成され、前記駆動手段は支持ア ームに固定され、この駆動手段の出力部材に供給ロッドの進退駆動手段が固定されており、供給ロッドは支持アームに対して2方向に傾斜させてあり、これによって保持ヘッドに保持されたプロジェクションボルトの軸部が受入孔と同軸になった位置で停止すると共に、その停止位置から軸部が受入孔に挿入されるように構成し、ロボット装置に保持されたワークは、両電極の間において受入孔を有する電極から進出してきた供給ロッドの保持ヘッドがワークに接触しない位置まで離隔した位置と、受入孔に挿入されたプロジェクションボルトの溶着用突起に接触するかあるいは僅かな隙間を形成する位置のと少なくとも2位置をとるように移動させられることを特徴としている。
【0005】
支持アームに取り付けたプロジェクションボルト供給装置から電極の受入孔へ前記軸部を挿入し、その状態でロボット機能により両電極間にワークが進入してきて可動電極が作動すると、溶着用突起とワークとが圧着されて通電・溶接がなされる。このように支持アームとプロジェクションボルト供給装置とがユニット化されているので、電極へのボルト供給をおこないつつ進入してくるワークの目的箇所にプロジェクションボルト溶接を完了させることができる。したがって、既存の定置式溶接機にプロジェクションボルト供給装置を取り付けるだけの簡単な改造で済む。また、ロボット装置は既存のものをそのまま使用するものであるから、この点における経済的な問題は発生しない。
【0006】
プロジェクションボルト供給装置は支持アームの長手方向で見て電極よりも後方側に配置されている。こうすることによって、両電極間にワークが進入してくるときに、プロジェクションボルト供給装置が邪魔になったりしない。このことは、支持アームの最先端部分に両電極が配置されているので、ワークはまず最初に両電極間に導かれることとなり、他の部材と干渉することなく円滑に溶接がなされる。
【0007】
プロジェクションボルト供給装置は進退式の供給ロッドに取り付けた保持ヘッドとプロジェクションボルトの軸部を受入孔に挿入するための駆動手段から構成されている。進退式の供給ロッドが支持アームから突出してきたり、後退したりするので、保持ヘッドに係止されたプロジェクションボルトが両電極の間に首尾よく移行される。とくに、軸部が受入孔と同軸になった位置で供給ロッドの進出を停止させることによって、受入孔への軸部移動が的確になされる。軸部は駆動手段の出力で受入孔に挿入されるので、前記供給ロッドの進出に引き続いて信頼性の高い供給がおこなえる。
【0008】
駆動手段は支持アームに固定され、この駆動手段の出力部材に供給ロッドの進退駆動手段が固定されており、供給ロッドは支持アームに対して2方向に傾斜させてあり、これによって保持ヘッドに保持されたプロジェクションボルトの軸部が受入孔と同軸になった位置で停止すると共に、その停止位置から軸部が受入孔に挿入される。供給ロッドのための進退駆動手段と軸部を受入孔へ導く駆動手段とが設置されているので、ボルトを両電極間に移動させることと、軸部を受入孔へ挿入させることが確実になされ、この挙動は、とくに、駆動手段の出力部材に進退駆動手段が固定されていることによって実現されている。さらに供給ロッドは支持アームに対して2方向に傾斜させてあるので、電極の後方から両電極間にプロジェクションボルトを移動させることが可能となり、支持アームにプロジェクションボルト供給装置をユニット化することがおこないやすくなる。
【0009】
ロボット装置に保持されたワークは、両電極の間において受入孔を有する電極から離隔した位置と受入孔に挿入されたプロジェクションボルトの溶着用突起に接触するかあるいは僅かな隙間を形成する位置の少なくとも2位置をとるように移動させられる。ワークを受入孔付き電極から離隔させておくことによって、ワークが両電極の間に位置したままプロジェクションボルトを受入孔に供給することが可能となる。したがって、一つ目のプロジェクションボルトが溶接されてから、二つ目のプロジェクションボルト溶接、あるいは三つ目へと連続的に溶接をすることができるので、効率向上にとって大変有利である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図示の実施形態にしたがって、本発明をくわしく説明する。鉄製のプロジェクションボルトは符号1で示してあり、軸部2、それと一体の円形のフランジ3、軸部2とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起4から構成されている。なお、この溶着用突起は「いぼ」状のものが3個あるいは4個設置されていてもよい。
【0011】
符号5は定置式溶接機であり、床6から起立している支柱7に支持アーム8、9が結合されている。各支持アーム8、9にはそれぞれ可動電極10と固定電極11が設置してあり、可動電極10は支持アーム8に取り付けたエアシリンダ12で駆動される。両電極10または11のいずれか一方に受入孔13が明けられていて、ここに軸部2が挿入される。なお、エアシリンダ12を電動モータにおき代えることもできる。この場合には、回転運動を直進運動に変換する機構が併用される。
【0012】
プロジェクションボルト供給装置は符号14で示されており、この装置は支持アーム9の長手方向で見て電極よりも後方側に配置されている。すなわち、支持アーム9の先端部に固定電極11が取り付けられ、それよりも後方、つまり図1の左方に供給装置14が配置されている。換言すると、ワークが定置式溶接機5に進入してくるときには、まず最初に両電極10、11の間にワークが入り、このときには供給装置14はワークに対して干渉しないのである。
【0013】
支持アーム9の側面にブラケット15が固定され、それに駆動手段であるエアシリンダ16が取り付けてある。駆動手段の出力部材に相当するピストンロッド17に供給ロッド18の進退駆動手段19が固定されている。この手段19はエアシリンダで構成され、ピストンロッド17とエアシリンダ19は、エアシリンダ19に取り付けた結合ブラケット20を介して一体化されている。エアシリンダ16と19の代わりに電動モータを採用してもよい。電動モータを採用するときには、モータの回転を直進運動に変換する機構を介在させる。
【0014】
供給ロッド18は、横方向に伸びている支持アーム9に対して2方向に傾斜させてある。この傾斜は、図1の方向で見た傾斜が角度θ1、図2の方向で見た傾斜が角度θ2として設定されている。すなわち、供給ロッド18は、支持アーム9に対して斜めに交差する状態になっている。供給ロッド18の先端には保持ヘッド21が結合され、ここに保持されたプロジェクションボルトの軸部2が、保持ヘッド21の進出時に受入孔13の軸線と同軸になるように構成されている。
【0015】
保持ヘッド21の軸線は、供給ロッド18の軸線に対して鋭角的に交差している。ヘッド本体22には下向きに開放された円形の凹部23が形成され、ここにフランジ3が収容される。フランジ3には溶着用突起4が一体化されているので、それをも収容するために凹部23にはフランジ3のための大径部23aと溶着用突起4のための小径部23bが形成されている。凹部23の奥にはマグネット(永久磁石)24が埋設され、凹部23に入ったフランジ3を吸引してプロジェクションボルト1を安定した状態で保持している。この時の状態は、図4のようにフランジ3の外周部が大径部23aの底面に密着させられている。
【0016】
空気通路25がヘッド本体22の中央部に明けられ、小径部23bの底面に開口している。空気通路25からの圧縮空気で、マグネット24の吸引力に抗してフランジ3を凹部23から強制的に脱出させて、軸部2を完全に受入孔13へ移行させる。圧縮空気が供給されるタイミングは、軸部2の一部が受入孔13内に入った時である。なお、符号26は空気通路25に接続された空気ホ−ス、符号27は受入孔13の奥に設置されたマグネット(永久磁石)であり、受入孔13内に移行したボルト1を確実に吸引保持している。もし、図4の上下が逆になった状態のときには、マグネット27によるボルト保持が必須となる。
【0017】
供給ロッド18が後退しているときには、凹部23にフランジ3が進入できるようにしておく必要がある。そのために支持アーム9の側面にに固定したブラケット28に部品供給管29が結合され、その端部が復帰した保持ヘッド21(図1の二点鎖線図示)に合致している。部品供給管29はパ−ツフィ−ダ30に接続され、空気ホ−ス31からの圧縮空気で保持ヘッド21まで搬送されてくる。
【0018】
ロボット装置33は通常の汎用ロボットで、6軸タイプである。関節接手34にアーム35が結合され、その先端にチャック機構36が取り付けられている。鋼板製のワーク37は、チャック機構36でしっかりと挟み付けられている。ロボット装置33に保持されたワーク37は、図1のように軸部2が挿入される電極11から離隔した位置と、図示していないが、受入孔13に挿入されたボルトの溶着用突起4に接触するかあるいは溶着用突起4との間に僅かな隙間ができる位置との少なくとも2位置をとるように移動させられる。
【0019】
上述の実施形態の作動を説明する。保持ヘッド21が図1の二点鎖線図示の位置にあるときに、パ−ツフィ−ダ30からプロジェクションボルト1が送られてくる。するとボルトのフランジ3や溶着用突起4が凹部23内に収容されて、軸部2が保持ヘッド21から下方に突出した状態になる。つぎに、供給ロッド18が進出させられて、軸部2が受入孔13と同軸になった位置で供給ロッド18の進出は停止する。その後、エアシリンダ16の作用で供給ロッド18全体が移動させられると、軸部2は受入孔13内に進入し、空気通路25からの圧縮空気で軸部2、すなわちプロジェクションボルト1は完全に受入孔13内に入り込む。それから保持ヘッド21が前述とは逆の軌跡を経て元の位置に復帰する。
【0020】
ついで、定置式溶接機5から離れた箇所にあったワーク37がチャック機構36でつかまれて、両電極10、11間に入ってくる。このときには、図1の二点鎖線図示のようにワーク37は固定電極11から離れた位置に停止している。それからワーク37が下降させられて、受入孔13に保持されたボルトの溶着用突起4に接触させられる。そして、可動電極10が進出してきて通電がなされ、ワーク37にプロジェクションボルト1が溶接される。溶接完了後は、ロボット装置33の作動で軸部2が受入孔13から抜き取られて、ワーク37全体が次の工程へ移送される。
【0021】
1個のプロジェクションボルト1が溶接されてワーク37が上方へ後退すると、供給ロッド18が再び進出してきて受入孔13にボルト1を挿入する。この状態のところへワーク37が水平方向に位置を変えてから下降してきて二つ目のプロジェクションボルト溶接がなされる。すなわち、ワーク37が両電極10、11の間に設置された状態で、次々とプロジェクションボルトの溶接が連続してゆくのである。
【0022】
このような連続的な溶接は、連続的な溶接が可能になることによって、ワーク37の移動軌跡が短縮できて、効率を高めるのに有効となる。なお、図1の装置全体の上下関係が逆になっても、同様の作動が得られる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、軸部とフランジと軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを板状のワークに溶接するものにおいて、定置式溶接機の支持アームに可動電極と固定電極が設置され、両電極のいずれか一方に前記軸部が挿入される受入孔が形成され、支持アームにプロジェクションボルト供給装置を取り付け、他方、ワークはロボット装置に保持されて前記の両電極間に移動させられることを特徴としている。
【0024】
支持アームに取り付けたプロジェクションボルト供給装置から電極の受入孔へ前記軸部を挿入し、その状態でロボット機能により両電極間にワークが進入してきて可動電極が作動すると、溶着用突起とワークとが圧着されて通電・溶接がなされる。このように支持アームとプロジェクションボルト供給装置とがユニット化されているので、電極へのボルト供給をおこないつつ進入してくるワークの目的箇所にプロジェクションボルト溶接を完了させることができる。したがって、既存の定置式溶接機にプロジェクションボルト供給装置を取り付けるだけの簡単な改造で済む。また、ロボット装置は既存のものをそのまま使用するものであるから、この点における経済的な問題は発生しない。
【0025】
プロジェクションボルト供給装置は支持アームの長手方向で見て電極よりも後方側に配置されているから、両電極間にワークが進入してくるときに、プロジェクションボルト供給装置が邪魔になったりしない。このことは、支持アームの最先端部分に両電極が配置されているので、ワークはまず最初に両電極間に導かれることとなり、他の部材と干渉することなく円滑に溶接がなされる。
【0026】
プロジェクションボルト供給装置は進退式の供給ロッドに取り付けた保持ヘッドとプロジェクションボルトの軸部を受入孔に挿入するための駆動手段から構成されているから、進退式の供給ロッドが支持アームから突出してきたり、後退したりするので、保持ヘッドに係止されたプロジェクションボルトが両電極の間に首尾よく移行される。とくに、軸部が受入孔と同軸になった位置で供給ロッドの進出を停止させることによって、受入孔への軸部移動が的確になされる。軸部は駆動手段の出力で受入孔に挿入されるので、前記供給ロッドの進出に引き続いて信頼性の高い供給がおこなえる。
【0027】
駆動手段は支持アームに固定され、この駆動手段の出力部材に供給ロッドの進退駆動手段が固定されており、供給ロッドは支持アームに対して2方向に傾斜させてあり、これによって保持ヘッドに保持されたプロジェクションボルトの軸部が受入孔と同軸になった位置で停止すると共に、その停止位置から軸部が受入孔に挿入される。供給ロッドのための進退駆動手段と軸部を受入孔へ導く駆動手段とが設置されているので、ボルトを両電極間に移動させることと、軸部を受入孔へ挿入させることが確実になされる。この挙動は、とくに、駆動手段の出力部材に進退駆動手段が固定されていることによって実現されている。さらに供給ロッドは支持アームに対して2方向に傾斜させてあるので、電極の後方から両電極間にプロジェクションボルトを移動させることが可能となり、支持アームにプロジェクションボルト供給装置をユニット化することがおこないやすくなる。
【0028】
ロボット装置に保持されたワークは、両電極の間において受入孔を有する電極から離隔した位置と受入孔に挿入されたプロジェクションボルトの溶着用突起に接触するかあるいは僅かな隙間を形成する位置の少なくとも2位置をとるように移動させられる。ワークを受入孔付き電極から離隔させておくことによって、ワークが両電極の間に位置したままプロジェクションボルトを受入孔に供給することが可能となる。したがって、一つ目のプロジェクションボルトが溶接されてから、二つ目のプロジェクションボルト溶接、あるいは三つ目へと連続的に溶接をすることができるので、効率向上にとって大変有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を示す全体的な側面図である。
【図2】 プロジェクションボルト供給装置の平面図である。
【図3】 プロジェクションボルト供給装置の一部を示す立体図である。
【図4】 保持ヘッドと受入孔との関係を示す縦断側面図である。
【図5】 プロジェクションボルトの外観を示す側面図である。
【符号の説明】
2 軸部
3 フランジ
4 溶着用突起
1 プロジェクションボルト
37 ワーク
5 定置式溶接機
9 支持アーム
10 可動電極
11 固定電極
13 受入孔
14 プロジェクションボルト供給装置
33 ロボット装置
18 供給ロッド
21 保持ヘッド
16 駆動手段
17 出力部材
19 進退駆動手段
Claims (1)
- 軸部とフランジと軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを板状のワークに溶接するものにおいて、定置式溶接機の支持アームに可動電極と固定電極が設置され、両電極のいずれか一方に前記軸部が挿入される受入孔が形成され、支持アームにプロジェクションボルト供給装置を取り付け、他方、ワークを保持してこのワークを前記両電極間に移動するロボット装置が設けられ、前記プロジェクションボルト供給装置は支持アームの長手方向で見て電極よりも後方側に配置され、プロジェクションボルト供給装置は進退式の供給ロッドに取り付けた保持ヘッドとプロジェクションボルトの軸部を受入孔に挿入するための駆動手段から構成され、前記駆動手段は支持アームに固定され、この駆動手段の出力部材に供給ロッドの進退駆動手段が固定されており、供給ロッドは支持アームに対して2方向に傾斜させてあり、これによって保持ヘッドに保持されたプロジェクションボルトの軸部が受入孔と同軸になった位置で停止すると共に、その停止位置から軸部が受入孔に挿入されるように構成し、ロボット装置に保持されたワークは、両電極の間において受入孔を有する電極から進出してきた供給ロッドの保持ヘッドがワークに接触しない位置まで離隔した位置と、受入孔に挿入されたプロジェクションボルトの溶着用突起に接触するかあるいは僅かな隙間を形成する位置のと少なくとも2位置をとるように移動させられることを特徴とするプロジェクションボルトの溶接装置。
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