この発明は、鋼板部品の姿勢変向動作と電極自体の移行動作が複合されたプロジェクションボルトの溶接装置および溶接方法に関している。
一対の電極が装備されたC型ガンをロボット装置によって鋼板部品に接近させて、プロジェクションナットを鋼板部品に溶接することが、特開昭62−166085号公報に開示されている。また、定置式の電気抵抗溶接機に対して、鋼板部品をロボット装置によって接近させ、ボルトを鋼板部品に溶接することが、実開平2−81777号公報に開示されている。
特開昭62−166085号公報 実開平2−81777号公報
上述のような先行技術であると、鋼板部品の種々な形状に対応することが困難である。鋼板部品の形状としては、屈曲したもの、窪みが形成されたもの、平板に屈曲部と凹部が形成されたもの等のように種々な形状とされ、その代表的なものとして自動車のフロアパネルやダッシュパネルがある。
このようなパネルの複数箇所にプロジェクションボルトを電気抵抗溶接で溶接して行く場合には、電極軸線に対して鋼板部品の平坦な部位をほぼ垂直な位置関係としなければならない。そのために、1つ目のプロジェクションボルトを溶接したら、つぎにロボット装置で鋼板部品を大きく移動させて、2つ目の溶接箇所である平坦な部位を電極軸線に対して垂直にする必要がある。
したがって、鋼板部品を電極軸線から離隔した箇所へ移動させてから向きを変えることが行われたり、前記C型ガンの移動範囲を大きくして2つ目の溶接箇所に電極を合致させたりしている。これらの動作は、3つ目以降も同様に継続されている。
上述のような状態であると、鋼板部品やC型ガンの移動範囲が大きくなるので、溶接設備の配置スペースを拡大する必要があり、コンパクトな設備配置の面で不利である。また、鋼板部品の変向を電極軸線から離隔した箇所で行うようなことになると、鋼板部品の移動範囲が広くなり、変向に要する時間が長くなって、生産性を高めることが困難となる。とくに、屈曲形状や凹部形状など鋼板部品の種々な形状に適応した変向や移動を、正確に行うことが重要である。
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、鋼板部品の種々な形状に適応した溶接動作を、できるだけ小規模で行わせることができるプロジェクションボルトの溶接装置および溶接方法の提供を目的とする。
問題を解決するための手段
請求項1記載の発明は、溶接装置の発明であり、雄ねじが形成された軸部とこの軸部と一体に設けられたフランジ部と軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを鋼板部品に電気抵抗溶接をするものであって、電極軸線上に一対の電極が配置されているとともに一方の電極に前記軸部が挿入される受入孔が形成され、鋼板部品を保持するとともに、鋼板部品の姿勢を電極間に挿入した状態で鋼板部品の平坦な部位に対して前記電極軸線が垂直な状態になるように変える変向手段が設けられ、前記垂直な状態を維持しながら鋼板部品の所定溶接箇所に向かって電極を移行させる移行手段が設けられ、前記移行手段は、鋼板部品の傾斜した平坦な部位に対して前記電極軸線が垂直な状態となるように前記電極軸線を傾斜させることができるものであることを特徴とする。
以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。
発明の効果
電極間に鋼板部品が挿入された状態で、鋼板部品の姿勢が変えられて鋼板部品の平坦な部位が電極軸線と垂直な位置関係とされ、その状態で電極が動作して溶接が完了する。このように1つ目のボルトの溶接が完了すると、鋼板部品の平坦な部位と電極軸線との垂直な相対位置関係を維持したまま電極が2つ目のボルトの溶接箇所に移動して、1つ目と同様に溶接が完了する。そして、鋼板部品が例えば屈曲している場合には、屈曲箇所付近を中心にして鋼板部品を回動させて鋼板部品の他の平坦な部位を電極軸線に対して垂直な位置関係とし、それにともなってこの位置関係を維持して電極がさらにつぎの溶接箇所に移行され、そこにボルトが溶接される。
上述のように、鋼板部品は常時、両電極の間に存在したままその姿勢が変えられて、電極軸線と鋼板部品の平坦な部位との垂直な位置関係を維持して次々と溶接箇所へ移行されるものである。電極軸線の向きはほとんど変向することなく溶接箇所への移行だけとなり、また、鋼板部品は電極軸線と垂直となるような姿勢変化となる。
したがって、鋼板部品や電極の移動範囲を小さくし、溶接設備の配置スペースを縮小することができ、コンパクトな設備配置が実現する。また、鋼板部品の変向を電極軸線から離隔した箇所で行うのではなく、電極軸線を含む空間において行うものであるから、鋼板部品の移動範囲が狭くなり、変向に要する時間も短くなって、生産性を高めることできる。とくに、屈曲形状や凹部形状など鋼板部品の種々な形状に適応した変向や移動を、電極の移行動作と複合させて正確に行うことが可能となる。さらに、電極がC型ガンに装備されているような場合であれば、C型ガンの移行が左右前後のような方向となり、例えば、90度や180度の回転動作を伴うことがないので、部品供給ホースや導線等の捻れ等を最小化できて、これらの耐久性を向上させることができる。
前記変向手段は、鋼板部品に仮想的に設定された回動軸線をほぼ中心にして鋼板部品を回動させるものである。
ほぼ平板状の板部材が屈曲されて断面形状が「く」字型になっているような場合には、屈曲箇所を仮想的に設定された回動軸線として鋼板部品を回動させて姿勢変向がなされる。このような回動にともなう姿勢変向によって、鋼板部品のほぼ平坦な部位に対して前記電極軸線がほぼ垂直な状態になり、ボルトの溶接が適正になされる。なお、上記のようにほぼ平板状というのは、細かい凹凸をも含めて平板状となっていることを意味している。
前記電極は、一対のアーム部材に取付けられ、このアーム部材が前記移行手段に結合されている。
したがって、移行手段の移行動作によって、電極はその電極軸線が鋼板部品と垂直になった状態で移行することができる。そして、鋼板部品は一対のアーム部材の間で姿勢変向が行われるので、鋼板部品の変向に要する空間の確保が行いやすくなる。
前記受入孔は、電極軸線と同軸の状態で形成され、そこに前記軸部を挿入する部品供給装置が設けられている。
前記部品供給装置の動作によって、ボルトの軸部が電極軸線と同軸状態の受入孔に挿入される。そのため、ボルトが確実に電極に保持されて、ボルトが所定の溶接箇所に正確に溶接される。ボルトの供給動作が、軸部が電極軸線と同軸になった状態から軸部を受入孔に挿入するものであるから、ボルトの移動軌跡が簡素化され、確実な供給動作がえられる。
前記移行手段は、鋼板部品の傾斜したほぼ平坦な部位に対して前記電極軸線がほぼ垂直な状態となるように電極軸線を傾斜させることができるものである。
前述のように、鋼板部品の姿勢変向を行ってほぼ平坦な部位が電極軸線と垂直な位置関係とされるのであるが、それに加えて電極軸線の側にも傾き動作を付与することによって、電極軸線と鋼板部品の相対位置関係を確実に求めることができる。とくに、鋼板部品の姿勢変向の範囲に制約があるような場合に、電極軸線の側に傾き動作を付与することによって、複雑な形状の鋼板部品などに対応することが行いやすくなる。
請求項2記載の発明は、溶接方法の発明であり、雄ねじが形成された軸部とこの軸部と一体に設けられたフランジ部と軸部とは反対側のフランジ面に形成された溶着用突起からなるプロジェクションボルトを鋼板部品に電気抵抗溶接をするものであって、電極軸線上に配置された一対の電極の一方に受入孔を設けてそこに軸部を挿入した状態でプロジェクションボルトを電極に保持し、鋼板部品を保持している変向手段で鋼板部品を電極間に挿入した状態でその姿勢を変えて鋼板部品の平坦な部位を前記電極軸線に対して垂直な状態とし、前記垂直な状態を維持しながら鋼板部品の所定溶接箇所に向かって電極を移行させてから電極を動作させてプロジェクションボルトを鋼板部品に溶接するとともに、鋼板部品の傾斜した平坦な部位に対しては前記電極軸線が該部位に対して垂直な状態となるように前記電極軸線を傾斜させてから電極を動作させてプロジェクションボルトを鋼板部品に溶接することを特徴とする。
このような溶接方法によれば、電極間に鋼板部品が挿入された状態で、鋼板部品の姿勢が変えられて鋼板部品の平坦な部位が電極軸線と垂直な位置関係とされ、その状態で電極が動作して溶接が完了する。このように1つ目のボルトの溶接が完了すると、鋼板部品の平坦な部位と電極軸線との垂直な相対位置関係を維持したまま電極が2つ目のボルトの溶接箇所に移動して1つ目と同様に溶接が完了する。そして、鋼板部品が例えば屈曲している場合には、屈曲箇所付近を中心にして鋼板部品を回動させて鋼板部品の他の平坦な部位を電極軸線に対して垂直な位置関係とし、それにともなってこの位置関係を維持して電極がさらにつぎの溶接箇所に移行され、そこにボルトが溶接される。
上述のように、鋼板部品は常時、両電極の間に存在したままその姿勢が変えられて、電極軸線と鋼板部品との垂直な位置関係を維持して次々と溶接箇所へ移行されるものである。電極軸線の向きはほとんど変向することなく溶接箇所への移行だけとなり、また、鋼板部品は電極軸線と垂直となるような姿勢変化となる。
したがって、鋼板部品や電極の移動範囲を小さくし、溶接設備の配置スペースを縮小することができ、コンパクトな設備配置が実現する。また、鋼板部品の変向を電極軸線から離隔した箇所で行うのではなく、電極軸線を含む空間において行うものであるから、鋼板部品の移動範囲が狭くなり、変向に要する時間も短くなって、生産性を高めることできる。とくに、屈曲形状や凹部形状など鋼板部品の種々な形状に適応した変向や移動を、電極の移行動作と複合させて正確に行うことが可能となる。さらに、電極がC型ガンに装備されているような場合であれば、C型ガンの移行が左右前後のような方向となり、例えば、90度や180度の回転動作を伴うことがないので、部品供給ホースや導線等の捻れ等を最小化できて、これらの耐久性を向上させることができる。
鋼板部品の姿勢を変える動作と、鋼板部品の溶接箇所に向かって電極を移行させる動作が並行して行われる。
上述のように、2つの動作を並行させることにより、動作時間の短縮を図ることができて、生産性の向上にとって効果的である。さらに、鋼板部品の姿勢を変えることによって、電極軸線に対する鋼板部品の傾斜度合いが小さくなるので、両電極の間隔を小さくすることができる。それによって、電極の動作ストロークが短くなって動作時間の短縮を図ることができる。また、C型部材等の装置の主要部材を小型化して、装置全体をコンパクトにすることができる。
つぎに、本発明のプロジェクションボルトの溶接装置および溶接方法を実施するための最良の形態を説明する。
図1〜図5は、実施例1を示す。
プロジェクションボルトについて説明する。
プロジェクションボルトの形状としては種々なものがあるが、この実施例1におけるボルトは図1(C)に示すようなものである。すなわち、ボルト1は鉄製であり、雄ねじが形成された軸部2と、軸部2と一体の円形のフランジ部3と、軸部2とは反対側にフランジ部2と同心円状に円形に形成された溶着用突起4から構成されている。各部の寸法は、軸部2の直径は5mm、軸部2の長さは23mm、フランジ部3の直径は13mm、フランジ部3の厚さは1mm、溶着用突起4の直径は9mm、溶着用突起4の突出厚さは1.2mmである。なお、溶着用突起4を小さな複数個の突起にしてもよい。
鋼板部品について説明する。
鋼板部品の形状は一般的に、自動車用フロアパネルやダッシュパネル等のように複雑な形状をしているが、この実施例1においては理解しやすくするために、平たい鋼板を屈曲させた形状のものを例示している。鋼板部品は符号5で示され、長方形の平板を真っ直ぐな屈曲線6において屈曲してあり、屈曲線6の両側に主板7と副板8が形成されている。図2(A)に示すように、主板7と副板8とのなす狭角θは、160度である。なお、図1(A)においては、鋼板部品5は理解しやすくするために、2点鎖線で図示してある。上述のように、屈曲線6が仮想的に設定された鋼板部品5の回動軸線である。
溶接装置全体について説明する。
図1(A)は、溶接装置全体を示す斜視図である。ここでの溶接装置はC型ガンタイプのものであり、C型部材9に一対のアーム部材10,11が形成され、アーム部材10に可動電極12が取付けられ、他方のアーム部材11に固定電極13が取付けられている。符号14は、可動電極12を進退させるエアシリンダである。これを進退出力型の電動モータにしてもよい。両電極12,13は電極軸線O−O上に配置されている。
C型部材9は、移行手段15によって少なくとも前後左右に移行するようになっている。移行手段15としては、前後左右すなわちX・Y方向に移動できるガイド機構や、自由な移行形態をとることができるロボット装置を採用することができる。ここではロボット装置であり、汎用性のある6軸タイプ(図示していない)のものである。
鋼板部品5を保持して向きを変えるために、変向手段16が設けられている。この変向手段16は、前記屈曲線6の箇所を保持するもので、チャック機構17により主板7と副板8の境界部分をしっかりと掴むようになっている。このチャック機構17は回転軸18に取付けられ、この回転軸18は回転モータ19の出力軸である。前記回転モータ19は、静止部材22に固定されている。なお、前記チャック機構17は、一般的に実用化されている掴みジョー式のものである。
前記回転軸18は、屈曲線6と同軸になっており、回転軸18が回転すると、鋼板部品5全体が図2(C)に示すように、屈曲線6を中心にして揺動するようになっている。したがって、屈曲線6が鋼板部品5の仮想的な回動軸線になっている。
可動電極12の中心部に電極軸線O−Oと同軸の状態で受入孔23があけられ、可動電極12の端面に開口している。この受入孔23にボルト1の軸部2が挿入される。そして、挿入されたボルト1が落下するのを防止するために、受入孔23の奥に永久磁石24が固定されている。
前記受入孔23にボルト1を挿入するため、図5に示すような部品供給装置25が設けられている。この部品供給装置25は、斜め方向の進退動作と上下方向の進退動作をする保持ヘッド26にボルト1を保持して、受入孔23に挿入する形式である。電極軸線O−Oに対して斜め方向に配置されたエアシリンダ27により、供給ロッド28が進退する。供給ロッド28の先端部に前記保持ヘッド26が取付けられている。エアシリンダ27に三角形のブラケット29が固定され、アーム部材10の横側面に昇降エアシリンダ30が取付けられ、そのピストンロッド31が電極軸線O−Oと同方向に進退する。このピストンロッド31の下端部に前記ブラケット29が結合されている。
図5(B)に示すように、保持ヘッド26は、非磁性材料であるステンレス鋼で作られたブロック材を加工したもので、上方に開放した円形の収容孔33内にフランジ部3が収容される。収容孔33には環状の段部34が形成され、ここにフランジ部3の表面が着座する。保持ヘッド26に埋設した永久磁石35の吸引力がフランジ部3に作用して、前記着座が確実に行われる。
収容孔33の底部に開口する空気通路36が設けられ、この空気通路36は供給ロッド28の内部を通って空気切換弁や空気供給源(図示していない)に連通している。
ボルト1は、パーツフィーダ(図示していない)から合成樹脂製の供給ホース37を経て供給されてくるもので、それにステンレス鋼製の供給管38が接続されている。図5(A)に示すように、供給管38に保持ヘッド26が合致している状態が、保持ヘッド26にボルト1が移載される受取位置である。
エアシリンダ27の動作で保持ヘッド26が進出し、軸部2が受入孔23と同軸になると停止する。この状態が図5(B)である。それから昇降エアシリンダ30の動作でエアシリンダ27、供給ロッド28および保持ヘッド26が上昇すると、軸部2の先端部が受入孔23に進入する。この進入した段階で空気通路36から圧縮空気が噴射され、ボルト1は収容孔33から送り出されて軸部2が受入孔23内に進入し、フランジ部3が可動電極12の端面に密着する。
供給ホース37内を高速で移送されてきたボルト1が直接保持ヘッド26に衝突すると、保持ヘッド26内の段部34や収容孔33が損傷する恐れがある。そのような損傷を防止するために、供給管38の途中にストッパユニット39が設けてある。ストッパユニット39は前記ブラケット29に固定されている。ストッパユニット39の内部構造は図示していないが、進退式のストッパ片に通過孔と停止部が設けられ、高速で移送されてきたボルト1が停止部で一旦停止されてから、ストッパ片が移動して通過孔をボルト1が通過し、保持ヘッド26へ低速で落下するようになっている。
鋼板部品5に対して所定本数のボルト1の溶接が終了するまでは、鋼板部品5は常に可動電極12と固定電極13の間に存在している。そのようにするために、C型部材9が移行手段15によって操作されている。
図4に示すように、可動電極12が主板7の上面に押し付けられたとき、固定電極13が主板7の下面に押し付けられるようにするために、イコライザー40がC型部材9と移行手段15との間に介在してある。このイコライザー40は一般的に使用されている機構であり、C型部材9に固定された突片41が移行手段15に固定されたコ字型部材42内に挿入され、コ字型部材42に架設したガイドロッド43が突片41を摺動可能な状態で貫通している。そして、突片41の上下にそれぞれ圧縮コイルスプリング44,45が圧縮された状態で挿入されている。
上述の構造によって、可動電極12が主板7の上面に押し付けられたとき、その反力によって突片41がガイドロッド43を摺動し圧縮コイルスプリング45が縮小されて、固定電極13が主板7の下面に押し付けられる。このような動作で両電極12,13の間で主板7に対してボルト1が加圧され、溶接電流が通電されて電気抵抗溶接が行われる。
上述のように、受入孔23が可動電極12に設けられているが、この受入孔23を固定電極13に設けるようにしてもよい。その場合には、部品供給装置25を上下逆向きに配置し、鋼板部品5と固定電極13との間に保持ヘッド26が進入できる空間を設ける必要がある。この空間は、変向手段16を動作させたり、移行手段15を動作させたりして確保することができる。
ボルトが順次溶接されてゆく動作は、以下のようにして行われる。
図2(A)は、変向手段16の動作で電極軸線O−Oに対して主板7が垂直になっている状態であり、1つ目のボルト1の溶接が完了した状態を示している。この状態から移行手段15の動作で電極軸線O−Oが主板7に対して垂直になったまま矢線46の方へ移動し、図2(B)に示すように、両電極12,13が次の所定溶接箇所に対向した位置で停止する。その後、2つ目のボルト1が主板7に溶接される。
ボルト1は、部品供給装置25によって矢線46に示す移動に並行して受入孔23に挿入される。このように電極12,13が次の所定溶接箇所へ移動するのと同時に、受入孔23にボルト1が挿入されることにより、装置の動作時間を短縮して、生産性を向上することができる。
2つ目のボルト1の溶接が完了した後、両電極12,13が移行手段15によって移動し屈曲線6を通過するときに、変向手段16が動作して矢線47のように鋼板部品5が屈曲線6を中心にして回転(揺動)する。すなわち、図2(C)に示す状態である。この回転(揺動)は、電極軸線O−Oが副板8に対して垂直になった箇所で停止する。それと同時に、電極軸線O−Oが3つ目のボルト1の溶接箇所に合致した箇所で、移行手段15による両電極12,13の移動も停止する。すなわち、図2(D)に示す状態である。それから両電極12,13の動作で3つ目のボルト1の溶接が完了する。
上述の動作を平面的に見ると、図3のようになっている。
上述のように、両電極12,13の間を相対的に屈曲線6が通過するのと同時に変向手段16を動作させて鋼板部品5の姿勢を変えるようにすることにより、両電極12,13の間隔をできるだけ小さくすることができる。つまり、副板8が電極軸線O−Oに対して傾斜したまま両電極12,13の間を通過する場合には、両電極12,13の間隔を大きく設定する必要があるが、副板8が電極軸線O−Oに対して垂直に近づきつつ両電極間を通過する場合には、副板8の傾斜が小さくなるので、両電極12,13の間隔を小さく設定することができる。したがって、可動電極12の動作ストロークを短くして溶接動作時間を短縮することができる。同時に、C型部材を小型化するのにも、効果的である。
図1(A)において、チャック機構17が実線図示の位置におかれているが、これを2点鎖線図示の位置におき、ロボット装置で鋼板部品5を変向させるようにしてもよい。このような場合には、主板7と電極軸線O−Oとが垂直になった状態をチャック機構17で維持し、両電極12,13を移動させて順次ボルト溶接を行う。主板7へのボルト溶接が完了したらチャック機構17を変位させて、屈曲線6がずれたりしないようにして鋼板部品5の姿勢を揺動させる。それとともに両電極12,13を副板8の方へ移動させてから副板8へのボルト溶接がなされる。換言すると、図2のような動作を行わせているのである。
上述の実施例1において、鋼板部品5が小さな部品であれば、それを両電極12,13間に存在させたまま裏返すことも可能である。
上述のような動作を行わせるためには、図示していないが、通常のシーケンサーのような制御装置や、センサーや、前記制御装置によって動作する空気切換弁などを用いて容易に行うことができる。すなわち、移行手段15の動作に呼応して変向手段16を動作させたり、受入孔23へボルト1を供給したり、所定の溶接箇所で可動電極12を動作させたりすることは、上述の動作信号を発信する制御装置、センサー、空気切換弁などの組合せで実現することができる。また、上述の実施例1においては各種のエアシリンダが採用されているが、これに換えて進退出力をする電動モータを採用してもよい。
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
溶接装置としては、電極12,13間に鋼板部品5が挿入された状態で、鋼板部品5の姿勢が変えられて鋼板部品5の平坦な部位が電極軸線O−Oと垂直な位置関係とされ、その状態で電極12,13が動作して溶接が完了する。このように1つ目のボルトの溶接が完了すると、鋼板部品5の平坦な部位と電極軸線O−Oとの垂直な相対位置関係を維持したまま電極12,13が2つ目のボルト1の溶接箇所に移動して1つ目と同様に溶接が完了する。そして、鋼板部品5が例えば屈曲している場合には、屈曲線6のような屈曲箇所付近を中心にして鋼板部品5を回動させて鋼板部品5の他の平坦な部位を電極軸線O−Oに対して垂直な位置関係とし、それにともなってこの位置関係を維持して電極12,13がさらにつぎの溶接箇所に移行され、そこにボルト1が溶接される。
上述のように、鋼板部品5は常時、両電極12,13の間に存在したままその姿勢が変えられて、電極軸線O−Oと鋼板部品5との垂直な位置関係を維持して次々と溶接箇所へ移行されるものである。電極軸線O−Oの向きはほとんど変向することなく溶接箇所への移行だけとなり、また、鋼板部品5は電極軸線O−Oと垂直となるような姿勢変化となる。
したがって、鋼板部品5や電極12,13の移動範囲を小さくし、溶接設備の配置スペースを縮小することができ、コンパクトな設備配置が実現する。また、鋼板部品5の変向を電極軸線O−Oから離隔した箇所で行うのではなく、電極軸線O−Oを含む空間において行うものであるから、鋼板部品5の移動範囲が狭くなり、変向に要する時間も短くなって、生産性を高めることできる。とくに、屈曲形状や凹部形状など鋼板部品5の種々な形状に適応した変向や移動を、電極12,13の移行動作と複合させて正確に行うことが可能となる。さらに、電極12,13がC型ガンのC型部材9に装備されているような場合であれば、C型部材9の移行が図3に示すように、左右前後方向となり、例えば、90度や180度の回転動作を伴うことがないので、部品供給ホースや導線等の捻れ等を最小化できて、これらの耐久性を向上させることができる。
前記変向手段16は、鋼板部品5に仮想的に設定された回動軸線すなわち屈曲線6をほぼ中心にして鋼板部品5を回動させるものである。
ほぼ平板状の板部材が屈曲されて断面形状が「く」字型になっているので、屈曲線6を仮想的に設定された回動軸線として鋼板部品5を回動させて姿勢変向がなされる。このような回動にともなう姿勢変向によって、鋼板部品5のほぼ平坦な部位である主板7、副板8に対して前記電極軸線O−Oがほぼ垂直な状態になり、ボルト1の溶接が適正になされる。なお、実際には上記のようなほぼ平板状の箇所に、他の目的のために細かい凹凸が形成されている。
前記電極12,13は、一対のアーム部材10,11に取付けられ、このアーム部材10,11が前記移行手段15に結合されている。
したがって、移行手段15の移行動作によって、電極12,13はその電極軸線O−Oが鋼板部品5と垂直になった状態で移行することができる。そして、鋼板部品5は一対のアーム部材10,11の間で姿勢変向が行われるので、鋼板部品5の変向に要する空間の確保が行いやすくなる。
前記受入孔23は、電極軸線O−Oと同軸の状態で形成され、そこに前記軸部2を挿入する部品供給装置25が設けられている。
前記部品供給装置25の動作によって、ボルト1の軸部2が電極軸線O−Oと同軸状態の受入孔23に挿入される。そのため、ボルト1が確実に電極12または13に保持されて、ボルト1が所定の溶接箇所に正確に溶接される。ボルト1の供給動作が、軸部2が電極軸線O−Oと同軸になった状態から軸部2を受入孔23に挿入するものであるから、ボルト1の移動軌跡が簡素化され、確実な供給動作がえられる。
つぎに、溶接方法としては、電極12,13間に鋼板部品5が挿入された状態で、鋼板部品5の姿勢が変えられて鋼板部品5の平坦な部位が電極軸線O−Oと垂直な位置関係とされ、その状態で電極12,13が動作して溶接が完了する。このように1つ目のボルトの溶接が完了すると、鋼板部品5の平坦な部位と電極軸線O−Oとの垂直な相対位置関係を維持したまま電極12,13が2つ目のボルト1の溶接箇所に移動して1つ目と同様に溶接が完了する。そして、鋼板部品5が例えば屈曲している場合には、屈曲線6のような屈曲箇所付近を中心にして鋼板部品5を回動させて鋼板部品5の他の平坦な部位を電極軸線O−Oに対して垂直な位置関係とし、それにともなってこの位置関係を維持して電極12,13がさらにつぎの溶接箇所に移行され、そこにボルト1が溶接される。
上述のように、鋼板部品5は常時、両電極12,13の間に存在したままその姿勢が変えられて、電極軸線O−Oと鋼板部品5との垂直な位置関係を維持して次々と溶接箇所へ移行されるものである。電極軸線O−Oの向きはほとんど変向することなく溶接箇所への移行だけとなり、また、鋼板部品5は電極軸線O−Oと垂直となるような姿勢変化となる。
したがって、鋼板部品5や電極12,13の移動範囲を小さくし、溶接設備の配置スペースを縮小することができ、コンパクトな設備配置が実現する。また、鋼板部品5の変向を電極軸線O−Oから離隔した箇所で行うのではなく、電極軸線O−Oを含む空間において行うものであるから、鋼板部品5の移動範囲が狭くなり、変向に要する時間も短くなって、生産性を高めることできる。とくに、屈曲形状や凹部形状など鋼板部品5の種々な形状に適応した変向や移動を、電極12,13の移行動作と複合させて正確に行うことが可能となる。さらに、電極12,13がC型ガンのC型部材9に装備されているような場合であれば、C型部材9の移行が図3に示すように、左右前後方向となり、例えば、90度や180度の回転動作を伴うことがないので、部品供給ホースや導線等の捻れ等を最小化できて、これらの耐久性を向上させることができる。
鋼板部品5の姿勢を変える動作と、鋼板部品5の溶接箇所に向かって電極12,13を移行させる動作が並行して行われる。
上述のように、2つの動作を並行させることにより、動作時間の短縮を図ることができて、生産性の向上にとって効果的である。さらに、鋼板部品5の姿勢を変えることによって、電極軸線O−Oに対する鋼板部品5の傾斜度合いが小さくなるので、両電極12,13の間隔を小さくすることができる。それによって、可動電極12の動作ストロークが短くなって動作時間の短縮を図ることができる。また、C型部材9等の装置の主要部材を小型化して、装置全体をコンパクトにすることができる。
図6(A)は、実施例2を示す。
この実施例2は、前述の実施例1における電極軸線O−O自体が、傾斜動作をするようにしたものである。変向手段16を動作させて、同図の水平主板7aを電極軸線O−Oと垂直にしておき、この状態で2点鎖線図示の両電極12,13を動作させて溶接を完了する。この鋼板部品5には、水平主板7aに隣接した状態で傾斜主板7bが形成されている。鋼板部品5は変向しないまま両電極12,13を次の溶接箇所へ移動させる。このときに、電極軸線O−Oが傾斜主板7bと垂直となるように移行手段15を動作させる。それが実線図示の状態である。その後、可動電極12の進出によって2つ目のボルト1が傾斜主板7bに溶接される。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例1と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
前述のように、鋼板部品5の姿勢変向を行ってほぼ平坦な部位7が電極軸線O−Oと垂直な位置関係とされるのであるが、それに加えて電極軸線O−Oの側にも傾き動作を付与することによって、電極軸線O−Oと鋼板部品5の相対位置関係を確実に求めることができる。とくに、鋼板部品5の姿勢変向の範囲に制約があるような場合に、電極軸線O−Oの側に傾き動作を付与することによって、複雑な形状の鋼板部品5などに対応することが行いやすくなる。つまり、電極軸線O−O自体の傾斜動作を変向手段16の変向動作に複合させることによって、鋼板部品5の各形状に適合した溶接動作がえられるのである。それ以外の作用効果は、先の実施例1と同じである。
図6(B)は、実施例3を示す。
この実施例3は、前述の実施例1や2とは異なった形状の鋼板部品5の場合である。すなわち、鋼板部品5の中央部に凹部7cが設けられ、端部の水平主板7aと凹部7cの底部主板7dにボルト1を溶接するものである。したがって、変向手段16はロボット装置によって構成され、鋼板部品5は矢線48のような移動挙動とされる。
実線図示の状態で水平主板7aにボルト溶接がなされ、その後、鋼板部品5が矢線48のように持ち上げられて横方向に移動する。これと同時に両電極12,13が移行して底部主板7dにボルト溶接がなされる。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例1、2と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
このような凹部7cを有するような鋼板部品5であっても、所要の箇所にボルト溶接が可能となる。それ以外の作用効果は、先の実施例1、2と同じである。
上述のように、本発明によれば、鋼板部品の種々な形状に適応した溶接動作を、できるだけ小規模で行わせることができるプロジェクションボルトの溶接装置および溶接方法であるから、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
溶接装置全体の斜視図、側面図、一部の断面図である。
電極の移動と鋼板部品の姿勢変化を示す動作図である。
溶接箇所の移行状態を示す平面図である。
C型部材の側面図である。
部品供給装置の側面図と断面図である。
他の実施例を示す側面図である。
符号の説明
1 プロジェクションボルト
2 軸部
3 フランジ部
4 溶着用突起
5 鋼板部品
6 屈曲線
7 主板
8 副板
9 C型部材
10 アーム部材
11 アーム部材
12 可動電極
13 固定電極
O−O 電極軸線
15 移行手段
16 変向手段
23 受入孔
25 部品供給装置
26 保持ヘッド
28 供給ロッド
30 昇降エアシリンダ
33 収容孔
38 供給管
39 ストッパユニット