JP3643505B2 - バランス軸用ハウジング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バランス軸用ハウジングに関し、特にピストンの起振力を打ち消すためのカウンタウェートを備えたバランス軸を収容するためのハウジングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのピストンが発生する二次起振力を打ち消すためのカウンタウェートを備えたバランス軸を、オイルパン内におけるクランク軸の下方に配置し、チェーン/スプロケット機構やギヤ機構などを介してクランク軸の回転をバランス軸に伝達するようにしたつり合い装置が、例えば実公平5−39233号公報などで公知となっている。
【0003】
上記つり合い装置のバランス軸は、オイルパン内の油面下に設けられるので、バランス軸が潤滑油を撹拌することによる不都合が生じないようにするために、バランス軸はその全体をハウジングで覆われている。また、多量の潤滑油がハウジング内に滞留するとバランス軸の回転抵抗となるので、ハウジング内の潤滑油は速やかに排出されねばならず、ハウジング内の潤滑油がバランス軸の回転で排出されるように構成したものが、上記公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記公報に記載の構造によると、潤滑油の排出口は上方へ開かれており、シリンダブロック側から滴下した潤滑油がハウジング内に入り易い構造であるため、ハウジング内からの潤滑油の排出効率を高めることができない。また、開口を設けるとハウジングの剛性を確保するための措置が別途必要となるので、ハウジング自体の形状が複雑化しがちである。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、シリンダブロック側から滴下した潤滑油のハウジング内への侵入を防止することができ、しかもできるだけ高剛性を確保することが可能なように構成されたバランス軸用ハウジングを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明の請求項1においては、ピストンの起振力を打ち消すためのカウンタウェート(19)を備えたバランス軸(13L・13R)を収容するべくオイルパン(7)内に配置され、且つバランス軸に平行な平面に沿って上下に分割された側壁の端縁同士間に潤滑油を排出するための隙間(37)が設けられるバランス軸用ハウジング(アッパハウジング14U・及びロワハウジング14L)を、分割されたハウジングのうちの上側のハウジング(14U)に、前記隙間との対向面を覆う庇状突出部(38)と前記バランス軸の軸方向位置規制部(スラスト軸受壁16)とが互いに連結されて一体形成されるものとした。これにより、ハウジング内への潤滑油の流入が阻止されると共に部品点数の増加を招くことなくハウジング(特に軸方向位置規制部)の剛性が増強されることとなる。
【0007】
また、請求項2においては、ピストンの起振力を打ち消すためのカウンタウェートを備えたバランス軸を収容するべくオイルパン内に配置され、且つ前記バランス軸に平行な平面に沿って上下に分割された側壁の端縁同士間に潤滑油を排出するための隙間が設けられるバランス軸用ハウジングを、分割されたハウジングのうちの上側のハウジングに、前記隙間との対向面を覆う庇状突出部と該上側ハウジングに下側ハウジングを締結する締結部(ボス部39)とが互いに連結されて一体形成されるものとした。これにより、ハウジング内への潤滑油の流入が阻止されると共に部品点数の増加を招くことなくハウジング(特に上下ハウジングの締結部)の剛性の増強が図られる。
【0008】
これらに加えて、請求項3においては、分割されたハウジングの各側壁の端縁同士をバランス軸に平行な平面上で互いにオフセットさせて隙間を形成することにより、潤滑油排出口を設けたことによる側壁の強度低下が実質的に無くされ、ハウジング全体としての剛性の増強が図られることとなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用された往復ピストンエンジンである。このエンジンEは、クランク軸1を水平方向に延在させた直列4気筒エンジンであり、ヘッドカバー2、シリンダヘッド3、シリンダブロック4、ロワブロック5、つり合い装置6、及びオイルパン7を備えている。
【0011】
つり合い装置6は、ピストンの往復運動に起因して発生するエンジンEの二次振動を低減するためのものであり、オイルパン7に内包された状態でロワブロック5の下面(クランク軸1の下方)にボルト止めされている。このつり合い装置6は、クランク軸1の前端部(以下、クランクプーリ又はチェーンケース側を前側とする)に固定された大スプロケット8と、左側(以下、左右方向はクランクプーリ又はチェーンケースに向かってのこととする)のバランス軸(後に詳述する)の前端に固定された小スプロケット9と、大・小両スプロケット8・9間に掛け渡された無端リンクチェーン10とを介し、クランク軸1の回転が伝達されるようになっている。
【0012】
無端リンクチェーン10は、ロワブロック5の前面のクランク軸中心より左側に固定されたチェーンガイド11にて振れ止めがなされると共に、つり合い装置6の前端面の小スプロケット9の右隣に固定されたチェーンテンショナ12により、常時適切な張力が作用するようにされている。
【0013】
図2〜図4に示すように、つり合い装置6は、実質的に同一形状をなす左右一対のバランス軸13L・13Rと、これら2本のバランス軸13L・13Rを互いに平行に支持し且つ収容するべく、両バランス軸13L・13Rの中心を通る平面に沿って上下に2分割されたアッパハウジング14U及びロワハウジング14Lとを備えている。
【0014】
両バランス軸13L・13Rは、各バランス軸13L・13Rに一体結合されたヘリカルギヤ15L・15Rによって互いに連動連結されている。ここで左バランス軸13Lには、上記の通り、大スプロケット8、無端リンクチェーン10、及び小スプロケット9を介してクランク軸1の駆動力が伝達される。そしてこれらにより、クランク軸1の2倍の回転速度で且つクランク軸1と同一方向へ左バランス軸13Lが回転駆動され、ヘリカルギヤ15L・15R同士の噛合によって右バランス軸13Rがそれとは逆向きに回転駆動される。
【0015】
図2並びに図3に示すように、アッパハウジング14Uにおけるヘリカルギヤ15L・15Rに対応する部分は、各バランス軸13L・13Rと一体をなす各ヘリカルギヤ15L・15Rの軸線方向両端面に当接するスラスト受け面を備えたスラスト軸受壁16をなしている。この部分は、上方へ向けて開放されており、両ヘリカルギヤ15L・15Rの外周の一部が常時オイルパン内に露出し、上方から滴下するか、あるいはオイルパン7内を飛散する潤滑油が両ヘリカルギヤ15L・15Rの噛合部およびスラスト軸受壁16内に入り込み、同部分が十分に潤滑されるようになっている。
【0016】
各バランス軸13L・13Rには、その前端側に比較的小径の第1ジャーナル部17が、その後端側に比較的大径の第2ジャーナル部18が、それぞれ一体形成されている。また、各バランス軸13L・13Rの後端側には、第2ジャーナル部18の前後に2分割されたカウンタウェート19が一体形成されている。このカウンタウェート19は、回転中心から径方向外側に重心位置を偏倚させており、その回転軌跡の直径は、第2ジャーナル部18の直径よりも大きくされている(図4参照)。
【0017】
カウンタウェート19をできるだけ小さくした上で所期の等価回転質量を得るために、カウンタウェート19の軸部20は細径とされている。そして径を細くしたことによる剛性低下を補うために、第2ジャーナル部18の軸方向各端面に接続するテーパ形状のリブ21が、第2ジャーナル部18を前後から挟む両軸部20の反ウェート側に設けられている。
【0018】
また、第2ジャーナル部18の重心位置をカウンタウェート19側に偏倚させてカウンタウェート19をより一層小型化するために、第2ジャーナル部18の反ウェート側は、第2ジャーナル部18の軸方向両端のみを残して肉抜きされている。そして肉抜きされてできた両端部間の空間22は、肉抜きによる曲げ剛性の低下を補うために、第2ジャーナル部18の中心軸が通る平面に沿うリブ23で接続されている(図5参照)。なお、上記カウンタウェート19の軸部20に設けられたリブ21と第2ジャーナル部18に設けられたリブ23とは、同一の平面に沿って延設されている。
【0019】
このようにすることにより、第2ジャーナル部18における反ウェート側の軸端部が後記するメタル軸受の内周面に接することとなるので、第2ジャーナル部18全体としての軸受孔との接触面積を小さくしたにも関わらず、油膜切れを起こさずに済み、回転抵抗の低減に寄与することができる。
【0020】
なお、リブ23の軸中心側には、リブ23の両面間を連通する貫通孔24が設けられており、肉抜きされた空間22内の潤滑油を流動し易くすることにより、空間22内に潤滑油が滞留して回転抵抗増大の因になることのないようにされている。
【0021】
他方、各バランス軸13L・13Rの第1ジャーナル部17は、ロワハウジング14Lの前壁に一体的に設けられた第1軸受壁25に支持される。そして各バランス軸の第2ジャーナル部18は、アッパ・ロワ両ハウジング14U・14Lを互いに接合させることによって形成される2つ割のメタル軸受を備えた第2軸受壁26に支持される。
【0022】
両バランス軸13L・13Rを両ハウジング14U・14L内に収容する際に、両バランス軸13L・13Rの各前端をロワハウジング14Lと一体の第1軸受壁25に設けられた孔内にそれぞれ挿入して各第1ジャーナル部17を第1軸受壁25に支持させると共に、2つ割のメタル軸受が設けられた第2軸受壁26におけるロワハウジング14L側の半割部分に各バランス軸13L・13Rの第2ジャーナル部18をそれぞれ載置し、更にこの状態でアッパハウジング14U側の第2軸受壁26の半割部分を各バランス軸13L・13Rの第2ジャーナル部18に整合させた上でアッパ・ロワ両ハウジング14U・14Lを互いに接合させることにより、両バランス軸13L・13Rが両ハウジング14U・14L内に回転自在に収容されることとなる。
【0023】
これにより、カウンタウェート19を軸受孔に挿通する必要がなくなるので、各ジャーナル部18・19を強度上十分な範囲で細くすることができることから、回転抵抗を低減し、且つバランス軸13L・13Rを収容するハウジング14U・14Lの小型化及び軽量化をより一層高次元に推進することができる。
【0024】
アッパ・ロワ両ハウジング14U・14Lの前端面には、図6に併せて示すように、エンジン各部へ潤滑油を圧送するためのトロコイド式の潤滑油ポンプ27が設けられている。この潤滑油ポンプ27は、両ハウジング14U・14Lの前端面にボルト止めされたポンプハウジング28内に受容されたアウタロータ29と、右バランス軸13Rの前端に連結されたインナロータ30とからなっている。そして右バランス軸13Rと一体回転するインナロータ30がアウタロータ29と共働し、ロワハウジング14Lの底壁に取り付けられたオイルストレーナ31からロワハウジング14Lの底壁に一体形成された吸入管32を経て吸引されたオイルパン7内の潤滑油を、ロワブロック5及びシリンダブロック4などに内設された油路(図示せず)に連結された吐出油路33を経てエンジン各部へと圧送するようになっている。
【0025】
図3に示すように、オイルストレーナ31の取付ボス34は、ロワハウジング14Lの前後方向中間部における第2軸受壁26の半割部に連結されている。また、ロワハウジング14Lの下面に一体形成された吸入管32は、前側の第1軸受壁25の近傍へとその終端が至っている。これらオイルストレーナ31の取付ボス34と中空な吸入管32とは、ロワハウジング14Lの下面における2本のバランス軸13L・13Rの間の位置にて連続的に直列するように一体形成されており、ロワハウジング14Lの特にバランス軸13L・13Rの前後各端部を支持する複数の軸受壁(25・26)間をオイルストレーナ31の取付ボス34と吸入管32とで連結することになるので、これらの軸受壁(25・26)の剛性を増強する上に大きく寄与している。
【0026】
なお、吸入管32は、2本のバランス軸13L・13R同士間にその一部を食い込ませている(図4参照)。これにより下方への膨出量が低減される。これと同時に、オイルストレーナ31がロワハウジング14Lの底壁に直接取り付けられているので、ロワハウジング14Lの徒な大型化が回避され、エンジンのコンパクト化にも寄与している。
【0027】
金網からなるオイルストレーナ31が設けられる吸入口の底面には、オイルストレーナ31の内向き変形を抑制するために、ピン状の突起35が立設してある。そしてこの突起35とストレーナ取付ボス34の内周面とは、リブ36で連結されている。このリブ36により、ストレーナ取付ボス34の特に軸受壁26の半割部の剛性がより一層高められている。
【0028】
アッパハウジング14Uとロワハウジング14Lとの互いの分割面に接する左右両側壁の各端縁は、図4に示すように、バランス軸13L・13Rの径方向について互いにオフセットしている。これにより、バランス軸13L・13Rの中心が通る平面上に、上向きに開く隙間37が形成されている。そしてロワハウジング14Lの底部に溜まった潤滑油OLは、両バランス軸13L・13Rの回転(矢印方向)に伴ってカウンタウェート19で掻き上げられ、この隙間37からハウジング14U・14L外へと排出される。
【0029】
アッパハウジング14Uの左右側壁には、庇状突出部38が軸方向に延設されている。この庇状突出部38は、上記した隙間37の開放面に対向しており、上方から滴下した潤滑油が隙間37からハウジング14U・14L内に入り込むことを阻止する働きをなす。
【0030】
この庇状突出部38は、図7並びに図8に示すように、アッパハウジング14Uの左右両側壁の前後方向の全長に渡って形成されており、アッパ・ロワ両ハウジング14U・14L同士を締結するボルトB1を挿通するボス部39と、第2軸受壁26と、各バランス軸13L・13Rに一体結合されたヘリカルギヤ15L・15Rに当接してその軸方向位置を規制するスラスト軸受壁16とを接続しており、アッパハウジング14Uの剛性の増強に寄与している。
【0031】
なお、アッパ・ロワ両ハウジング14U・14Lは、第2ジャーナル部18を支持する第2軸受壁26の位置にて3本のボルトB2で締結されており、特にカウンタウェート19の回転による径方向の加速度が作用する第2軸受壁26の部分に緩みが生じ難くなるように配慮されている。
【0032】
庇状突出部38を左右両側方へ伸延させ、図9に示すような適宜な断面形状を与えることにより、オイルパン内油面のあばれを防止するためのバッフルプレートとしての機能を担わせることもできる。
【0033】
図10に示すように、第1ジャーナル部17を支持するための軸受孔40を、アッパ・ロワ両ハウジング14U・14Lの割面に形成することもできる。この形態によると、第1・第2両ジャーナル部18・19のための各軸受の分割面を共通にできるので、両軸受間の軸心精度を高めることができる。しかも図11並びに図12に示したように庇状突出部38を第1ジャーナル部17の支持部にまで延出させることで前後の軸受壁同士間を庇状突出部38で連結することができるので、前後の軸受壁の剛性をより一層高めることができる。
【0034】
上記の如く構成されたつり合い装置6は、図4に示すように、下方から挿通される通しボルトB3によってロワブロック5に締結される。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明によれば、ハウジング内への潤滑油の流入を阻止すると共にハウジングの特に軸方向位置規制部あるいは上側ハウジングに下側ハウジングを締結する締結部の剛性を増強する上に大きな効果が得られる。
【0036】
また、分割されたハウジングの各側壁の端縁同士間を互いにオフセットさせて隙間を形成することにより、潤滑油排出口を設けることによる側壁の強度低下を実質的に無くし、かつハウジング全体としての剛性の増強が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたエンジンの要部のみを切除して表した正面図
【図2】オイルパン内を左側バランス軸の軸心に沿って切断して表した部分的な縦断面図
【図3】つり合い装置の右側バランス軸の軸心に沿って切断して表した縦断面図
【図4】図3中のIV−IV線に沿う要部縦断面図
【図5】バランス軸における第2ジャーナル部の軸線に直交する面の断面図。
【図6】図3中のVI−VI線に沿う要部縦断面図
【図7】つり合い装置の右側面図
【図8】つり合い装置の上面図
【図9】庇状突出部の別の形態を示す部分的な縦断面図
【図10】第1ジャーナル部の別の形態を示す部分的な縦断面図
【図11】つり合い装置の別の形態を示す右側面図
【図12】つり合い装置の別の形態を示す上面図
【符号の説明】
7 オイルパン
13L・13R バランス軸
14U アッパハウジング
14L ロワハウジング
16 スラスト軸受壁
19カウンタウェート
25・26 軸受壁
37 隙間
38 庇状突出部
39 ボス部
Claims (3)
- ピストンの起振力を打ち消すためのカウンタウェートを備えたバランス軸を収容するべくオイルパン内に配置され、且つ前記バランス軸に平行な平面に沿って上下に分割された側壁の端縁同士間に潤滑油を排出するための隙間が設けられるバランス軸用ハウジングであって、
前記分割されたハウジングのうちの上側のハウジングに、前記隙間との対向面を覆う庇状突出部と前記バランス軸の軸方向位置規制部とが互いに連結されて一体形成されることを特徴とするバランス軸用ハウジング。 - ピストンの起振力を打ち消すためのカウンタウェートを備えたバランス軸を収容するべくオイルパン内に配置され、且つ前記バランス軸に平行な平面に沿って上下に分割された側壁の端縁同士間に潤滑油を排出するための隙間が設けられるバランス軸用ハウジングであって、
前記分割されたハウジングのうちの上側のハウジングに、前記隙間との対向面を覆う庇状突出部と該上側ハウジングに下側のハウジングを締結する締結部とが互いに連結されて一体形成されることを特徴とするバランス軸用ハウジング。 - 前記分割された上下のハウジングの各側壁の端縁同士を前記平面上で互いにオフセットさせて前記隙間を形成することを特徴とする請求項1若しくは2に記載のバランス軸用ハウジング。
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