JP3643226B2 - 多軸試験機の制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試験物に複数の方向から或いは試験物上の複数の点に荷重、変位などをそれぞれ加える複数のアクチュエータを用い、これらのアクチュエータをそれぞれ制御して多軸試験を行う多軸試験機の制御方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の試験は、建築物などの構造物の例えば耐震性を試験する際に行われ、従来一般に、試験物に前後方向、左右方向、上下方向及び回転方向の荷重又は変位を選択的に加えることのできる複数のアクチュエータを有する多軸試験機が用いられ、複数のアクチュエータにより複数の方向から目標とする荷重又は変位を同時に加えた状態で試験物を観測するため、複数のアクチュエータを同時に動作させることが行われる。
【0003】
このような動作を行わせるため従来採用していた制御について説明する前に、多軸試験機及びその操作監視装置の概略構成を図7を参照して説明する。図示の多軸試験機10は、説明を簡単にするため2つのアクチュエータACT1及びACT2を備えるものとする。各アクチュエータは例えば油圧サーボ弁を有する電気油圧式のアクチュエータである。
【0004】
多軸試験機はまた、各アクチュエータに付属して、試験物に加えた荷重の大きさを検出する例えばロードセルからなる荷重検出器LD1及びLD2と、試験物に加えた変位量を検出する例えばディファレンシャルトランスフォーマからなる変位検出器PL1及びPL2と、各アクチュエータによって試験物に加える荷重或いは変位が、予め定めた目標値となるように、これらの検出器からの検出信号と目標値との偏差を求め、この偏差が0となるように油圧サーボ弁の開く方向とその開度を制御するコントローラCT1及びCT2とを備える。
【0005】
各コントローラは予め定めたプログラムによって動作するマイクコンピュータ、いわゆる、μCOMによって構成されている。μCOMは、演算処理部である中央処理ユニットと、プログラムや固定データなどを格納した読み出し専用のROM、データを一時的に格納するデータエリアや処理の過程で使用するワークエリアなどからなる読み出し書き込み自在のRAMなどの記憶手段とを内蔵している。
【0006】
多軸試験機の操作監視装置20はパーソナルコンピュータ、いわゆるパソコンによって構成され、予め定めた試験プログラムに従って、各アクチュエータに付属したコントローラに対してアクチュエータの制御モード、目標値などを設定する設定データを出力する。
【0007】
上述したように多軸試験機を制御することによって、図8に示すような試験を行っている。すなわち、アクチュエータACT1の制御モードを多段階に切り換え、試験物に対して前後方向に、大きさAの荷重、大きさaの変位、大きさBの荷重を加えさせるとともに、アクチュエータACT1の制御モード切り換えに同期してアクチュエータACT2の制御モードも切り換え、試験物の左右方向に大きさbの変位、大きさCの荷重、大きさcの変位を加えさせ、所定の荷重と変位を加えた各段階で試験物の挙動を図示しない各種のセンサによって検出し観測することにより、試験結果を得る。
【0008】
上述の試験では、操作監視装置において、各アクチュエータについて各段階の開始点から最終点までの制御モードと、各段階の目標値と、最終点の目標値までの移動速度とを操作部のキー入力操作によって設定し、この設定した値を操作監視装置からコントローラに対して出力する。コントローラは、設定された移動速度によって最終点まで目標値を順次変化させながら設定された制御モードでフィードバック(FB)制御を行い、各段階の終わりにおいて、設定された目標値の荷重或いは変位を試験物に加えるようになる。
【0009】
図9はアクチュエータACT1及びACT2が設定された荷重FB又は変位FBの制御モードで、設定された移動速度θ1及びθ2にて、設定された目標値TG1及びTG2までそれぞれ動作する様子を示し、同図からは、アクチュエータACT1の動作の方がアクチュエータACT2よりもΔtだけ速く動作を終了していることが分かる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の制御方法による動作は、目標値まで荷重や変位を加えた後の試験物の状態を観測するには問題は少ない。しかし、試験物上の複数の点に加える荷重や変位が目標値まで移動する過程において、試験物が示す挙動、例えば試験物の各部に生じる歪みなどを調べるには都合が悪く、複数の方向から或いは複数の点で試験物に加える荷重や変位の目標値までの移動がほぼ同時に終了することが必要とされる。
【0011】
よって本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、試験物上の複数の点に加える荷重や変位の目標値までの移動がほぼ同時に終了するようにした多軸試験機の制御方法及び装置を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため成された請求項1に記載の発明は、複数のアクチュエータと各アクチュエータに対応して設けた荷重検出手段及び変位検出手段を備え、前記各アクチュエータにより試験物上の複数の点に荷重と変位を加える多軸試験機において、前記各アクチュエータに対応して設定した目標値と前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号とに基づいて行うフィードバック制御の制御モードを荷重又は変位に多段階に切り替え、試験物上の複数の点に荷重と変位をそれぞれ加えるように制御する多軸試験機の制御方法であって、前記複数のアクチュエータに共通に前記各段階に要する所要時間を、前記各アクチュエータ毎に前記各段階の制御モード及び最終目標値をそれぞれ予め定め、前記各段階のフィードバック制御の開始に先だって、前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号により前記試験物に加わっている荷重及び変位の現在値を検出するとともに、当該段階の制御モードに対応した前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差と前記所要時間とにより、前記フィードバック制御の目標値の変化速度を求め、前記フィードバック制御の開始後、前記一方の現在値を前記変化速度で前記最終目標値に向かって増加又は減少させて前記フィードバック制御の目標値を設定するようにした多軸試験機の制御方法に存する。
【0013】
請求項1記載の多軸試験機の制御方法は、複数のアクチュエータの各々に対応して設定した目標値と荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号とに基づいて行うフィードバック制御の制御モードを荷重又は変位に多段階に切り替え、試験物上の複数の点に荷重と変位をそれぞれ加えるように制御するものであって、複数のアクチュエータに共通に各段階に要する所要時間を、各アクチュエータ毎に各段階の制御モード及び最終目標値をそれぞれ予め定め、各段階のフィードバック制御の開始に先だって、荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号により試験物に加わっている荷重及び変位の現在値を検出するとともに、当該段階の制御モードに対応した検出現在値の一方と最終目標値との差と所要時間とにより、フィードバック制御の目標値の変化速度を求め、フィードバック制御の開始後、一方の現在値を、求めた変化速度で最終目標値に向かって増加又は減少させてフィードバック制御の目標値を設定するようにしているので、現在値と最終目標値の差の大小と当該段階の所要時間とに応じた変化速度で各アクチュエータの目標値を増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の多軸試験機の制御方法において、変化速度が単位時間当たりの前記目標値の増減値であり、前記単位時間が前記所要時間を予め定めた分割数で割って求められ、前記単位時間当たりの増減値が前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差を前記分割数で割って求められることを特徴とする多軸試験機の制御方法に存する。
【0015】
請求項2記載の多軸試験機の制御方法は、変化速度を、所要時間を予め定めた分割数で割って求めた単位時間当たりの目標値の増減値とし、これを検出現在値の一方と最終目標値との差を分割数で割って求めているので、各段階の所要時間の分割数を予め定めることによって、所要時間を分割数で割って求めた単位時間毎に現在値に増減値を加算して各アクチュエータの目標値を最終目標値に向かって増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の多軸試験機の制御方法において、前記変化速度が単位時間当たりの前記目標値の増減値であり、前記単位時間が予め定められた時間であり、前記増減値が予め定めた単位時間で前記所要時間を割って求めた数により前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差を割って求められることを特徴とする多軸試験機の制御方法に存する。
【0017】
請求項3記載の多軸試験機の制御方法は、変化速度を、予め定めた単位時間で所要時間を割って求めた数により検出現在値の一方と最終目標値との差を割って求めた目標値の増減値としているので、単位時間を予め定めることによって、単位時間毎に現在値に増減値を加算して各アクチュエータの目標値を増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができる。
【0018】
上記課題を解決するため成された請求項4に記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、複数のアクチュエータACT1〜ACTnと各アクチュエータに対応して設けた荷重検出手段LD及び変位検出手段PLを備え、前記各アクチュエータにより試験物上の複数の点に荷重と変位を加える多軸試験機において、前記各アクチュエータに対応して設定した目標値と前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号とに基づいて行うフィードバック制御の制御モードを荷重又は変位に多段階に切り替え、試験物上の複数の点に荷重と変位をそれぞれ加えるように制御する多軸試験機10の制御装置であって、前記複数のアクチュエータに共通に前記各段階に要する所要時間を、前記各アクチュエータ毎に前記各段階の制御モード及び最終目標値をそれぞれ予め定める設定手段20と、前記各段階のフィードバック制御の開始に先だって、前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号により前記試験物に加わっている荷重及び変位の現在値を検出するとともに、当該段階の制御モードに対応した前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差と前記所要時間とにより、前記フィードバック制御の目標値の変化速度を求める演算手段201と、前記フィードバック制御の開始後、前記一方の現在値を前記変化速度で前記最終目標値に向かって増加又は減少させて前記フィードバック制御の目標値を設定する目標値設定手段102とを備えることを特徴とする多軸試験機の制御装置に存する。
【0019】
請求項4記載の多軸試験機の制御装置は、複数のアクチュエータACT1〜ACTnの各々に対応して設定した目標値と荷重検出手段LD及び変位検出手段PLからの荷重検出信号及び変位検出信号とに基づいて行うフィードバック制御の制御モードを荷重又は変位に多段階に切り替え、試験物上の複数の点に荷重と変位をそれぞれ加えるように制御するものであって、設定手段20が複数のアクチュエータに共通に各段階に要する所要時間を、各アクチュエータ毎に各段階の制御モード及び最終目標値をそれぞれ予め定める。また、演算手段101が、各段階のフィードバック制御の開始に先だって、荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号により試験物に加わっている荷重及び変位の現在値を検出するとともに、当該段階の制御モードに対応した検出現在値の一方と最終目標値との差と所要時間とにより、フィードバック制御の目標値の変化速度を求める。そして、目標値設定手段102が、フィードバック制御の開始後、前記演算手段で求めた変化速度で一方の現在値を最終目標値に向かって増加又は減少させてフィードバック制御の目標値を設定するようにしているので、現在値と最終目標値の差の大小に応じた変化速度で各アクチュエータの目標値を増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2及び図3は本発明による多軸試験機の制御方法を実施する装置の一実施の形態を示す。
【0021】
図2において、10は多軸試験機、20は操作監視装置である。多軸試験機10は、各々が油圧サーボ弁SVを有する電気油圧式の複数のアクチュエータACT1〜ACTnと、各アクチュエータに付属したコントローラCT及びセンサ部110と、アクチュエータACT1〜ACTnによって試験物に加えた荷重或いは変位によって試験物の各部に生じる歪みなどを検知する図示しない各種のセンサを有する監視部120とを有する。
【0022】
多軸試験機10のコントローラCT、センサ部110及び監視部120と操作監視装置20は具体的には図3のように構成される。なお、アクチュエータACT1〜ACTnに付属しているコントローラCT及びセンサ部110はほぼ同一の構成であるので、図3においては、アクチュエータACT1に付属するものについてのみその具体的な構成を示している。
【0023】
同図において、コントローラCTは、予め定めたプログラムによって動作し、制御モードとして設定された荷重又は変位のフィードバック(FB)によって、荷重又は変位が目標値となるように、対応するアクチュエータACT1をフィードバック制御するマイクコンピュータμCOMによって構成されている。マイクロコンピュータμCOMは、演算処理部である中央処理ユニットCPUと、プログラムや固定データなどを格納した読み出し専用のメモリROM、データを一時的に格納するデータエリアや処理の過程で使用するワークエリアなどからなる読み出し書き込み自在のメモリRAMなどの記憶手段の他、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示せず)や出力するデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器(図示せず)などを内蔵している。
【0024】
センサ部110は、試験物に加えた荷重の大きさを検出して荷重信号を発生する荷重検出器LDと、試験物に加えた変位量を検出して変位信号を発生する変位検出器PLとを有する。このセンサ部110が発生する荷重信号及び変位信号は、設定された制御モードでアクチュエータをフィードバック制御するためコントローラCTに図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換して入力される。また、監視部120は、試験物上の複数の点に、例えば複数の異なる方向から加える荷重や変位が最終目標値に達する過程において、試験物が示す挙動、例えば試験物の各部に生じる歪みなどを調べるため試験物に取り付けられたり、或いは、試験物上の任意の点の挙動を観察して監視するため設置された各種のセンサ120aと、これらのセンサ120aからの検知信号をデジタル信号に変換するA/D変換器120bを有する。
【0025】
センサ部110からコントローラCTに入力された荷重信号及び変位信号は、上述したようにμCOM内の図示しないA/D変換器によってデジタル信号に変換されて中央処理ユニットCPUに入力され、アクチュエータACT1によって試験物に加えられる荷重或いは変位が設定された目標値となるように、制御モードに応じた荷重信号又は変位信号と目標値との偏差を求め、この偏差が0となるように油圧サーボ弁SVの開く方向とその開度を制御する弁制御信号を生成するために利用される。この生成された弁制御信号は、μCOM内の図示しないD/A変換器によりアナログ信号に変換されて出力され、アクチュエータACT1のサーボ弁SVに供給される。
【0026】
中央処理ユニットCPUに入力された荷重信号及び変位信号は上述のようにフィードバック制御に使用されるほか、必要に応じ、モニタ或いはデータ収集のため操作監視装置20に送出される。また、監視部120のセンサ120aからの検知信号も、モニタ或いはデータ収集のため操作監視装置20に送出される。
【0027】
多軸試験機の操作監視装置20は、パーソナルコンピュータ、いわゆるパソコンPCによって構成されている。パソコンPCは、バスによって相互に接続されたマイクロコンピュータμCOM、CRTのようなモニタ用の表示装置DP、入力操作のためのキーボードKY、各種のデータを収集し格納するハードディスクなどの記憶手段MM、プロッタ、プリンタなどの出力装置OUTなどを有する。μCOMは図示しない中央処理ユニットCPU、メモリとしてのROM及びRAMなどを内蔵する。
【0028】
上記表示装置DP、キーボードKY及び出力装置OUTは、マン・マシンインタフェースとして使用される。具体的には、表示装置DPの表示画面を見ながらキーボードKYのキー操作によって、各アクチュエータに付属したコントローラCTに対してアクチュエータの制御モード、目標値などを設定するために使用されるとともに、監視部120内の各種のセンサ120aが発生する歪み信号を収集して試験の過程を表示装置DPに表示させてモニタするために使用される。
【0029】
操作監視装置20が、オペレータのキー操作に従って設定データを作成し、この作成した設定データに従って行う制御の内容を以下具体的に説明する。
【0030】
まず、オペレータは複数のアクチュエータACT1〜ACTnの各々について、複数の段階の各々の制御モードと最終目標値とをそれぞれ設定するとともに、全てのアクチュエータに共通に各段階の所要時間を設定する。例えば、図4に示すように、アクチュエータACT1について、第1段階で荷重FBモードとこのモードでの最終目標値Aを、第2段階で変位FBモードとこのモードでの最終目標値aをそれぞれ設定し、アクチュエータACT2について、第1段階で変位FBモードとこのモードでの最終目標値bを、第2段階で荷重FBモードとこのモードでの最終目標値Bをそれぞれ設定するとともに、第1及び第2段階の所要時間としてt1及びt2を設定する。また、各段階において所要時間内に最終目標値まで目標値を増加又は減少させるステップ数、すなわち、所要時間の分割数Nも予め設定される。
【0031】
操作監視装置20においては、上記設定された所要時間t1,t2と分割数Nとに基づいて各段階の単位時間Δt1,Δt2を算出する。そして、設定作業の終了操作に応じて、算出した各段階の単位時間Δt1,Δt2を各段階の制御モード、最終目標値とともに設定データとして各アクチュエータに付属したコントローラCTに対して出力する。操作監視装置20から設定データを受け取ったコントローラCTは、その後の制御のために利用するため、それらをメモリMのRAM内の所定エリアに記憶する。
【0032】
操作監視装置20において試験の開始操作が行われると、その旨の指示が各コントローラCTに対して行われ、これに応じて各コントローラCTは以下の処理を行う。まず、センサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とをデジタル変換して入力し、これを荷重及び変位の現在値Ao及びboとしてRAMの所定エリアに格納する。次に、RAMに格納された設定データの制御モードにより、最終目標値A又はbと上記現在値とに基づいて所要時間t1内に変化させるべき荷重又は変位の変化量、すなわち、最終目標値と現在値との差ΔA又はΔb(=Δ)を求める。続いて、算出した差Δと分割数Nとにより、単位時間Δt1毎に最終目標値に向かって目標値を増加又は減少する増減値dΔを
dΔ=Δ/N
なる計算により求める。
【0033】
なお、第1の段階の初め、すなわち、試験の開始直前に入力するセンサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とは通常0となるように調整されるが、上述の処理により、必ずしも0にしなくてもよくなる。
【0034】
そして、試験が開始すると、荷重又は変位の現在値に上記dΔを加算した値を目標値として出力し、以後単位時間Δt1毎に目標値をdΔづつインクリメントし、これを単位時間毎の新たな目標値として設定し、設定データの制御モードにより荷重フィードバック制御又は変位フィードバック制御を行う。以上により、所要時間t1が経過する単位時間前にはN個目の目標値、すなわち、最終目標値に等しい目標値が設定されるようになる。以上のような処理は、各アクチュエータのコントローラCTについて同じように行う。なお、第1の段階の初め、すなわち、試験の開始直前に入力するセンサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とは通常0となるように調整されるが、上述の処理により、必ずしも0にしなくてもよくなる。
【0035】
第1段階において、最後の目標値を設定してから単位時間が経過して所要時間t1が終了した時点で、センサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とを取り込み、これを荷重及び変位の現在値B1及びa1としてRAMの所定エリアに格納する。そして、次の第2の段階では、このRAMに格納した現在値B1及びa1を第1の段階における上記現在値Ao及びboに代えて利用し、上述と同様の処理を行えばよい。
【0036】
なお、上述の説明では、第1の段階の所要時間の終了を待って検出信号を取り込んでいるが、この代わりに、全てのアクチュエータのコントローラCTが入力する荷重検出信号又は変位検出信号と設定した最終目標値に等しくなるのを待ち、全てが等しくなったら、その時点でセンサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とを取り込み、これを荷重及び変位の現在値B1及びa1としてRAMの所定エリアに格納するようにしてもよい。
【0037】
上述のように試験が開始した後、操作監視装置20は監視部120の各センサ120aが発生しA/D変換器120bによりデジタル信号に変換された検知信号を順次読み込み、この読み込んだ検知信号に基づいて試験物の挙動を表示装置DPの表示画面上に表示させたり、検知信号データをメモリMに格納させる。メモリMに格納された検知信号データは後に表示装置DPに試験物の挙動を再度表示させたり、或いは、格納した検知信号データを解析してその結果を出力装置OUTのプリンタに印字させたり、プロッタに描画させたりするために利用される。
【0038】
以上概略説明した各アクチュエータに付属したコントローラCTの動作の詳細を、アクチュエータACT1に付属したコントローラを構成するマイクロコンピュータμCOMのCPUが予め定めたプログラムに従って行う処理を示す図5のフローチャートを参照して以下に説明するが、その前に、操作監視装置20における設定データの生成の仕方について説明する。
【0039】
操作監視装置20のパソコンは電源の投入により動作を開始し、例えばキーボードのキー操作による設定作業を受け付ける。この設定作業においては、CRT画面に表示されている設定項目の選択によって行うようにすることもできる。ここで設定されるものは、各アクチュエータの各段階の制御モード、例えば荷重FB又は変位FBと各制御モードでの最終目標値A,B,a,bの他、段階数n、各段階の所要時間t1,t2、所要時間の分割数Nなどである。所要時間と分割数によって各段階での単位時間Δt1,Δt2が求められる。これらの設定データは、設定作業が終了したところで、操作監視装置20から各アクチュエータに付属するコントローラCTに送出され、各コントローラ内のRAMのワークエリアに形成された設定データ格納エリアに格納される。図6はアクチュエータACT1に付属したコントローラCTのRAM内の設定データ格納エリアを示している。
【0040】
操作監視装置20のパソコンは設定データの設定作業に続いて行われる試験の開始操作に応じて、各コントローラに試験開始を指令するととともに、監視部120の各センサ120aからの検知信号を取り込み、この取り込んだ検知信号に基づいて試験物の挙動の分かる表示を表示装置DPに行わせたり、検知信号データをメモリMに格納させるなどの仕事を行う。
【0041】
アクチュエータACT1に付属するコントローラCTを構成するμCOMのCPUは、例えば電源の投入によって動作を開始してその最初のステップS1において初期化処理を行う。この初期化処理においては、記憶手段MのRAM内のワークエリアに構成したxカウンタ、yカウンタ、タイマなどの初期設定を行う。具体的には、xカウンタに1、yカウンタに0、タイマに0をそれぞれ設定する。初期化処理が終わったら次に操作監視装置20からの設定データの送信を待つ(ステップS2)。設定データを受信したらこれをRAM内のデータエリアに構成した設定データ格納エリアに格納させる(ステップS3)。
【0042】
設定データを格納させたCPUは次に、操作監視装置20からの試験開始の指示を待つ(ステップS4)。試験開始の指示を受信したらセンサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とをデジタル変換して入力し、これを荷重及び変位の現在値Ao及びaoとしてRAM内の現在値格納エリアに格納させる(ステップS5)。そして、設定データの制御モードに応じた一方をRAM内の目標値格納エリアに格納させる(ステップS6)。次に、設定データ格納エリアに設定データとして格納されているn段階の最終目標値と上記現在値とに基づいてn段階の所要時間内に変化させるべき変化量、すなわち、最終目標値と現在値との差Δを求める(ステップS7)。続いて、算出した差Δと分割数Nとにより、n段階の単位時間Δt毎に最終目標値に向かって目標値を増加又は減少する増減値dΔ(=Δ/N)を求める(ステップS8)とともに、xカウンタをインクリメントする(ステップS9)。なお、段階のnの値はRAM内に構成されたxカウンタのカウント値で指定される。
【0043】
単位時間毎の増減値dΔが求められたら、目標値格納エリアに格納されている値に増減値dΔを加算し、これを初期目標値としてRAM内の目標値格納エリアに格納させる(ステップS10)とともに、単位時間の計時を開始させ(ステップS11)、かつ当初0にされているRAM内のyカウンタをインクリメントさせる(ステップS12)。初期目標値が定まったら設定データによる(xカウンタのカウント値によって指定される)第1の段階のの制御モードによるフィードバック制御処理を行う(ステップS13)。このステップS13のフィードバック制御処理においては、制御モードに応じて荷重検出手段又は変位検出手段からの検出信号を予め定めたサンプリング周期でデジタル変換して読み込み、この読み込んだ検出信号による荷重又は変位と目標値格納エリアに格納している目標値との偏差を逐次求め、この偏差をFID処理した後アナログ信号に変換してアクチュエータACT1のサーボ弁SVを制御する弁制御信号として出力させる。
【0044】
フィードバック制御処理を行いつつステップS11で開始したタイマの計時がタイムオーバとなり、単位時間が経過したかどうかを判断し(ステップS14)、単位時間が経過するまでステップS10で定めた初期目標値によるステップS13のフィードバック制御処理を行う。単位時間が経過したときにはRAM内のyカウンタのカウント値がNに等しいかどうかを判断して、各段階の最後までのフィードバック制御処理が進んでいるかどうかを判断する(ステップS15)。
【0045】
このステップS15の判断がNOで各段階のフィードバック制御処理が終了していないときには、上記ステップS10に戻ってステップS10〜S15の処理を繰り返す。すなわち、ステップS10において目標値格納エリアに格納されている値に増減値dΔを加算し、これを新しい目標値としてRAM内の目標値格納エリアに格納する(ステップS10)とともにタイマを再度スタートさせ(ステップS11)、タイムオーバとなる(ステップS14)まで新しい目標値によるフィードバック制御処理を行う(ステップS13)。
【0046】
上述のように単位時間が経過する毎に目標値がdΔづつ増加又は減少されるとともにyカウンタのカウント値もその都度インクリメントされ、N回目の増加又は減少によって目標値は最終目標値に等しくなるときにはyカウンタのカウント値がNになる。そして、N回目の増加又は減少によって目標値が設定された後、単位時間が経過したとき(ステップS14)には、ステップS15の判定がYESとなり、第1の段階の所要時間t1も経過したことになる。
【0047】
第1の段階の所要時間t1が経過し、アクチュエータACT1に付属したコントローラCTが第1の段階の制御処理が終了したときには、他のアクチュエータACT2などのコントローラCTでも第1の段階の制御処理がほぼ同時に終了している。そして、この第1の段階において、各アクチュエータによって試験物に加えられる荷重や変位によって試験物に生じる歪みなどが監視部120のセンサ120aによって検知され、この検知した結果が操作監視装置20の表示装置DPの表示画面に表示されたり、メモリMMに収集されるようになる。
【0048】
上記ステップS15の判定がYESになると、ステップS16に進み、ここで次の段階のフィードバック制御処理が始まる前のステップS9においてインクリメントされるxカウンタのカウント値がnに等しいかどうかを判断する。n段階目の制御処理が終了するまで、ステップS16の判定はYESになることがなく、上記ステップS5に戻る。
【0049】
ステップS16の判定がNOのときには、次の第2の段階の制御処理のため、上記ステップS5に戻って、センサ部110の荷重検出器LDが発生している荷重信号と変位検出器PLが発生している変位信号とをデジタル変換して入力し、これを荷重及び変位の現在値としてRAM内の現在値格納エリアに格納させる。そして、ステップS6において、設定データの第2の段階の制御モードに応じた一方をRAM内の目標値格納エリアに格納させ、次のステップS7において、第2の段階の最終目標値と上記現在値とに基づいて最終目標値と現在値との差Δを求め、続くステップS8において、算出した差Δと分割数Nとにより、第2の段階の単位時間Δt毎に最終目標値に向かって目標値を増加又は減少する増減値dΔ(=Δ/N)を求め、この求めた増減値dΔを用いて第2の段階の制御処理の目標値を単位時間毎に設定していき(ステップS10)、第2の所要時間t2が経過するまで第1の段階と同様にステップS11以下の処理が行われる。
【0050】
以後、ステップS16の判定がYESになるまで、すなわち、xカウンタのカウント値がnになって第nの段階の制御処理が終了するまで上記第2の段階と同様の処理が繰り返され、ステップS16の判定がYESになるとアクチュエータACT1のコントローラCTの全ての処理を終了する。そして、他のアクチュエータに付属したコントローラの処理も終了する。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、操作監視装置20において所要時間t1,t2の分割数Nを設定するようになっているので、各段階の単位時間Δt1,Δt2を算出するようになっているが、全ての段階に共通な単位時間を予め定めるようにしてもよい。前者の場合、全ての段階の目標値の設定数が同じとなり、他の段階の対応する点のデータと対比する上で有効である。一方、後者の場合、目標値の増減値は、予め定めた単位時間で所要時間を割って求めた数により検出現在値の一方と最終目標値との差を割って求めることになるものの、目標値を増加又は減少させるタイミングが全て等しく、かつ等間隔となるようにできるようになるので、全ての段階の単位時間が同じとなり、他の段階の対応する時間タイミング点のデータと対比する上で有効である。
【0052】
また、上述のフローチャートの例では、所要時間が経過した時点で現在値を取り込むようにしているが、最終目標値を出力した後、全てのアクチュエータによって、最終目標値に等しい荷重又は変位が試験物に加えられるようになったことを条件に、現在値を取り込むようにしてもよい。この場合には、フローチャート中のステップS15とステップS16との間に、最終目標値と荷重検出器LD又は変位検出器PLによる検出信号とが等しいか否かを判定するステップを追加し、この判定がYESになるのを待ってステップS16に進むようにすることになる。
【0053】
更に、上述の実施の形態では、アクチュエータの種類について特に言及していないが、電気油圧式のものが有効に適用できる。また、試験物に加える荷重としては、押圧、引っ張り、回転捻りなどの荷重があり、変位としては押圧、引っ張り、回転捻り荷重などを加えたときに生じる変位がある。そして、加える荷重、変位も0荷重点、0変位点を横切って正から負又はその逆に変化させるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施の形態では、コントローラCTを各アクチュエータに付属して個々に設けるようにしているが、全てのアクチュエータに共通のコントローラを設け、上述の実施形態において個々に行っている処理を共通のコントローラに全て行わせるようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜3記載の本発明によれば、現在値と最終目標値の差の大小と当該段階の所要時間とに応じた変化速度で各アクチュエータの目標値を増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができるので、試験物上の複数の点に加える荷重や変位の目標値までの移動をほぼ同時に終了させることのでき、試験物上の複数の点に加える荷重や変位が目標値まで移動する過程において、試験物が示す挙動を把握するのに有効な多軸試験機の制御方法を提供することができる。
【0056】
特に、所要時間を分割数で割って求めた単位時間毎に現在値に増減値を加算して各アクチュエータの目標値を最終目標値に向かって増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができるので、全ての段階の目標値の設定数が同じとなり、他の段階の対応する点のデータと対比する上で有効である。
【0057】
また、単位時間毎に現在値に増減値を加算して各アクチュエータの目標値を増加又は減少させ、複数のアクチュエータの各段階の動作をほぼ同時に終了させることができるので、全ての段階の単位時間が同じとなり、他の段階の対応する時間タイミング点のデータと対比する上で有効である。
【0058】
また、請求項4記載の本発明によれば、試験物上の複数の点に加える荷重や変位の目標値までの移動をほぼ同時に終了させることのでき、試験物上の複数の点に加える荷重や変位が目標値まで移動する過程において、試験物が示す挙動を把握するのに有効な多軸試験機の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多軸試験機の制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による多軸試験機の制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図3】図2中のアクチュエータに付属したコントローラと操作監視装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図4】操作監視装置における各アクチュエータの制御モードなどの設定の仕方を説明するための図である。
【図5】図3中のコントローラのCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図6】コントローラのRAM内の設定データ格納エリアに格納された設定データを示す図である。
【図7】従来の多軸試験機及び操作監視装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】従来の多軸試験機による試験の内容を説明するための図である。
【図9】従来の多軸試験機の制御の仕方を説明するための図である。
【符号の説明】
10 多軸試験機
20 設定手段(操作監視装置)
101 演算手段(CPU)
102 目標値設定手段(CPU)
ACT1〜ACTn複数のアクチュエータ
LD 荷重検出手段(荷重検出器)
PL 変位検出手段(変位検出器)
Claims (4)
- 複数のアクチュエータと各アクチュエータに対応して設けた荷重検出手段及び変位検出手段を備え、前記各アクチュエータにより試験物上の複数の点に荷重と変位を加える多軸試験機において、前記各アクチュエータに対応して設定した目標値と前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号とに基づいて行うフィードバック制御の制御モードを荷重又は変位に多段階に切り替え、試験物上の複数の点に荷重と変位をそれぞれ加えるように制御する多軸試験機の制御方法であって、
前記複数のアクチュエータに共通に前記各段階に要する所要時間を、前記各アクチュエータ毎に前記各段階の制御モード及び最終目標値をそれぞれ予め定め、前記各段階のフィードバック制御の開始に先だって、前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号により前記試験物に加わっている荷重及び変位の現在値を検出するとともに、当該段階の制御モードに対応した前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差と前記所要時間とにより、前記フィードバック制御の目標値の変化速度を求め、
前記フィードバック制御の開始後、前記変化速度で前記一方の現在値を前記最終目標値に向かって増加又は減少させて前記フィードバック制御の目標値を設定するようにした
ことを特徴とする多軸試験機の制御方法。 - 前記変化速度が単位時間当たりの前記目標値の増減値であり、
前記単位時間が前記所要時間を予め定めた分割数で割って求められ、
前記単位時間当たりの増減値が前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差を前記分割数で割って求められる
ことを特徴とする請求項1記載の多軸試験機の制御方法。 - 前記変化速度が単位時間当たりの前記目標値の増減値であり、
前記単位時間が予め定められた時間であり、
前記増減値が予め定めた単位時間で前記所要時間を割って求めた数により前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差を割って求められる
ことを特徴とする請求項1記載の多軸試験機の制御方法。 - 複数のアクチュエータと各アクチュエータに対応して設けた荷重検出手段及び変位検出手段を備え、前記各アクチュエータにより試験物上の複数の点に荷重と変位を加える多軸試験機において、前記各アクチュエータに対応して設定した目標値と前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号とに基づいて行うフィードバック制御の制御モードを荷重又は変位に多段階に切り替え、試験物上の複数の点に荷重と変位をそれぞれ加えるように制御する多軸試験機の制御装置であって、
前記複数のアクチュエータに共通に前記各段階に要する所要時間を、前記各アクチュエータ毎に前記各段階の制御モード及び最終目標値をそれぞれ予め定める設定手段と、
前記各段階のフィードバック制御の開始に先だって、前記荷重検出手段及び変位検出手段からの荷重検出信号及び変位検出信号により前記試験物に加わっている荷重及び変位の現在値を検出するとともに、当該段階の制御モードに対応した前記検出した現在値の一方と前記最終目標値との差と前記所要時間とにより、前記フィードバック制御の目標値の変化速度を求める演算手段と、
前記フィードバック制御の開始後、前記変化速度で前記一方の現在値を前記最終目標値に向かって増加又は減少させて前記フィードバック制御の目標値を設定する目標値設定手段と
を備えることを特徴とする多軸試験機の制御装置。
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