JP3640361B2 - 建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧ショベルやクレーン等の上部旋回体を有する車両の旋回部に使用されるグリースバス内の歯車のグリース潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧ショベルやクレーン等の建設機械においては、作業装置を備えた旋回体を旋回装置により旋回させる構造となっている。
先ず、油圧ショベル20について図8により説明する。
下部走行体21は図示しない走行モータにより前後走行自在となっている。この下部走行体21の上部にはスイングサークル22を介して、図示しない旋回モータにより旋回可能な上部旋回体23を装着している。
この上部旋回体23には作業機30、マシンキャブ26、オペレータキャビン27およびカウンタウエイト28を取着している。
作業機30はブーム31、アーム33、バケット35、複数の油圧シリンダ32、34、36から構成され、土砂の掘削作業を行うようになっている。
【0003】
従来の油圧ショベルのスイングサークルの歯車潤滑装置について図9乃至図11で説明する。
図9は従来の油圧ショベルのスイングサークル潤滑機構の平面図であり、図10の断面N−Nを示す。上部旋回体のフレーム1に窓1aを設けてある。この窓1aに点検カバー13をボルト14で締着している。スイングピニオン4aはインナレース12の内歯歯車12bと噛み合っている。図に示す断面K−Kを図10にて説明する。
【0004】
図10,図11に示すスイングサークル22は下部走行体21のセンタフレーム2の上部にボルト7により固定された環状体のインナレース12と、その外周に上部旋回体23のフレーム1の下部にボルト6により固定された環状体のアウタレース3と、この両レース12、3の溝12a、3aの間に挿入された多数のボール10とからなり、インナレース12とアウタレース3とはボール10を介して、互いに回転自在となっている。なおこの両レース12、3の溝12a、3aとボール10は旋回ベアリング22aを構成し、シール8、9を介してグリースが封入されている。
【0005】
また、インナレース12の内側には内歯歯車12bが設けられ、この内歯歯車12bにはフレーム1に装着された旋回駆動装置25の出力軸4に取り付けられたスイングピニオン4aが噛み合っている。
スイングピニオン4aが旋回駆動装置25の駆動により回転すると、スイングピニオン4aは内歯歯車12bと噛み合うことにより公転し、上部旋回体23は旋回駆動するようになっている。
【0006】
図11に示すセンタフレーム2にはプレート2aが固着されていて、このプレート2aに円筒部材5がボルト5aで固定されている。このプレート2a、円筒部材5、内歯歯車12bを設けたインナレース12および上部旋回体のフレーム1で閉空間17を構成し、その下方にグリースバス15を形成している。なお円筒部材5の上部にはグリースバスシール11が設けられている。
【0007】
このグリースバス15内にグリース18bを注入して、図12に示すスイングピニオン4aの回転によりスイングピニオンと内歯歯車12bの自然潤滑を行っている。この両歯車4a,12bの潤滑状態を点検するための窓1aがフレーム1に設けられているが、通常はカバー13がフレーム1にボルト14で固定されて、窓1aは塞がれている。
【0008】
従来からスイングサークルの潤滑性を向上するための先行技術が出願されている。例えば実開昭59−102655号公報によれば、旋回フレ−ムの下面部に逆V字形のブレ−ドを、その頂部を内輪の内歯歯車に近接させて固着し、ブレードの二辺部の端部に円筒体の外周面に接触させたシール材を取り付け、グリース溜め内のグリースを内歯歯車に付着するようにした技術が記載されている。
【0009】
また、実開平3−73798号公報によれば、上部旋回体側にスイングピニオンの両側に直立して一側がリング歯車に近接し、他側がグリースバスの壁面に近接した少なくとも一対のスクレーパを固着し、グリースバス内のグリースをリング歯車部に導くようにした技術が記載されている。
【0010】
更に、実開昭63−121665号公報によれば、旋回駆動用スイングピニオンが内歯歯車と噛み合っている部分を除くスイングピニオンの外周部を囲むようにコの字形状のグリース収集部材を設け、そのグリース収集部材上部を上部旋回体の下面部に取り付け、またグリース収集部材の左右両側に下部スクレーパおよびグリース収集窓を設けるとともに、内歯歯車に相対する左右両側にエッジスクレーパ部を設けグリースバス内のグリースをスイングピニオン、内歯歯車の両部に導くようにした技術が記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図9乃至図11に示す潤滑装置では図12に示す如く、一旦グリース18bがスイングピニオン4aの軌道から外れて逃げてしまうと、スイングピニオン4aと内歯歯車12aとの噛み合い部でグリース切れを起こして潤滑ができなくなり、両歯車4a,12a間に焼き付きなどの不具合が起こっていた。
【0012】
また、インナレース12の上部にグリース18aが、円筒部材5の上部にグリース18cが堆積してしまい使用できないグリースが多く無駄となっている。
更に、図11に示すグリースがサークルシール8とグリースバスシール11を押し開いて旋回ベアリング22a内に入り込み、旋回ベアリング22aの消耗を促進したり外部へはみ出すとの問題があった。
【0013】
前記実開昭59−102655号公報、および実開平3−73798号公報においてはグリースバス内のグリースをリング歯車に導くブレートを上部旋回体の下面部に直接溶接しているため、一旦組み込むと溶接部をチエックすることができないので、溶接部の亀裂等により外れた場合には、歯車に噛み込み、損傷を起こすおそれがあった。
【0014】
前記実開昭63−121665号公報においては、グリースバス内のグリースをピニオン、リング両歯車に導くグリース収集部材を上部旋回体の下面部にボルト締めしているため前記と同様、一旦組み込むと溶接部およびボルトの緩みをチエックすることが困難で、溶接外れおよびボルトの緩みが生じた場合、歯車に噛み込み、損傷を起こすおそれがあった。
【0015】
本発明は上記従来の問題点に着目し、上部旋回体に取着された点検窓カバーに内歯歯車にグリースを導くと共に、不要部に堆積したグリースをかき落とすスクレーパを設け、少量のグリースを有効に利用して内歯歯車へグリースを確実に供給し、同時に旋回ベアリングへのグリースの侵入および外部へのはみ出しを防ぎ、スイングサークル全体の寿命を伸ばすして耐久性を向上し、しかも低コストの建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置は、左右のトラツクフレームに連結するセンタフレームと、このセンタフレームの上端部に固着する内歯歯車と、上部旋回体のフレームに取着したスイングピニオンとを備え、この内歯歯車とスイングピニオンとを円環状の旋回ベアリングで支承し、かつ、上部旋回体のフレームとセンタフレームとの間で、インナレースと円筒部材から形成されるグリースバス内で噛み合せて前記上部旋回体のフレームを旋回駆動する建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置であって、前記グリースバス15の上部旋回体のフレーム1に点検カバー16,19A,19Bを有し、この点検カバー16,19A,19Bは、前記グリースバス15内のグリースを前記インナレース12の内歯歯車12bとスイングピニオン4aとの噛み合せ部にグリースをかき落とすスクレーパ16A,16B,19a,19cを備え、前記スクレーパ16A,16B,19a,19cは上面から見てX形に形成されたものである。
【0018】
【作用】
上記構成によれば点検窓カバーに設けられたX形のスクレーパの斜面により上部旋回体の左右旋回動作中にX形の上部でインナレースの上部に溜まったグリースがグリースバスに向かってかき落とされ、X形の下部でグリースバスのグリースがかき集められる。また、内歯歯車に押しつけられ、同時に円筒部材の上部に溜まったグリースがグリースバスに向かってかき落とされる。
【0019】
従って内歯歯車にグリースが確実に供給され、不要部に堆積したグリースがグリースバス内にかき落とされるので、旋回ベアリングへのグリースの侵入および外部へのはみ出しがなく、スイングサークル全体の寿命が延びる。またグリースが有効に利用されるのでグリースの総量が少なくてよい。
【0020】
また、スクレーパが点検窓カバーにX形にコンパクトに設けられているため製作が容易で、装着後のチエックも容易でありコストも安価である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置の実施例を図面を参照して説明する。
尚、図8乃至図12と共通の部品については同一符号を付して説明する。
【0022】
図1は本発明の第1実施例に係る建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置の平面図であり、図2の断面M−Mを示す。上部旋回体のフレーム1に窓1bを設けてある。この窓1bに点検カバー兼スクレーパ16をボルト14で締着している。スイングピニオン4aはインナレース12の内歯歯車12bと噛み合っている。図に示す断面J−Jを図10にて説明する。
【0023】
図2,図3に示すスイングサークル22はセンタフレーム2の上部にボルト7により固定された環状体のインナレース12と、その外周に上部旋回体23のフレーム1の下部にボルト6により固定された環状体のアウタレース3と、この両レース12、3の溝12a、3aの間に挿入された多数のボール10とからなり、インナレース12とアウタレース3とはボール10を介して、互いに回転自在となっている。なおこの両レース12、3の溝12a、3aとボール10は旋回ベアリング22aを構成し、シール8、9を介してグリースが封入されている。
【0024】
また、インナレース12の内側には内歯歯車12bが設けられ、この内歯歯車12bにはフレーム1に装着された旋回駆動装置25の出力軸4に取り付けられたスイングピニオン4aが噛み合っている。
スイングピニオン4aが旋回駆動装置25の駆動により回転すると、スイングピニオン4aは内歯歯車12bと噛み合うことにより公転し、上部旋回体23は旋回駆動するようになっている。図2のP部拡大図を図3により説明する。
【0025】
図3に示すセンタフレーム2にはプレート2aが固着されていて、このプレート2aに円筒部材5がボルト5aで固定されている。このプレート2a、円筒部材5、内歯歯車12bを設けたインナレース12および上部旋回体のフレーム1でグリースバス15を形成している。なお円筒部材5の上部にはグリースバスシール11が設けられている。
【0026】
このグリースバス15内にグリース18bを注入して、前記図12の説明と同様にスイングピニオン4aの回転によりスイングピニオンと内歯歯車12bの自然潤滑を行っている。この両歯車4a,12bの潤滑状態を点検するための窓1bがフレーム1に設けられているが、通常は点検カバー兼スクレーパ16がフレーム1にボルト14で固定されて、窓1bは塞がれている。
【0027】
次に、本発明の点検カバー兼スクレーパ(以下点検カバーと言う。)について図4により説明する。
点検カバー16は図4(a)に示すごとく、くの字形スクレーパ16Aと逆くの字形スクレーパ16Bを背中合わせにしたX形として点検窓カバー16Eの下面に固着されている。
スクレーパ16A、16Bを点検窓1bからグリースバス空間17へ入れて、点検窓カバー16Eをフレーム1にボルト14で固定している。
スクレーパ16Aは右旋回用で、スクレーパ16Bは左旋回用である。
くの字形スクレーパ16Aは図4(b)に示す如くプレート16a、16b、16cの3要素から成り、プレート16aはインナレース12の上部に、プレート16bはグリースバス15内に、プレート16cは円筒部材5の上部にそれぞれカバー16Eの下面から垂伸している。
逆くの字形スクレーパ16Bも、くの字形スクレーパ16Aと同様にプレート16d、16e、16fを有している。
【0028】
次に、スクレーパ16A,16Bの作動について図5(a)、(b)、(c)により説明する。
図5(a)はインナレース上のグリースをかき落とす状況を示す。
図5(b)はグリースバス内のグリースを内歯歯車に導く状況を示す。
図5(c)は円筒部材上のグリースをかき落とす状況を示す。
上部旋回体23が右回転した場合は、くの字形スクレーパ16Aが働く。
上部旋回体23が右回転すると、上部旋回体23のフレーム1に固定されているスクレーパ16の、くの字型スクレーパ16Aも右回転する。この回転に伴い図5(a)に示す如くスクレーパ16Aのプレート16aは斜面作用によりインナレース12の上部に堆積したグリース18aをグリースバス15内へかき落とす。同様に図5(b)に示す如くプレート16bはグリースバス15内のグリース18bを内歯歯車12bに送り出し、更に図5(c)に示す如くプレート16cは円筒部材5の上部に堆積したグリース18cをグリースバス15内へかき落とす。上部旋回体23が左回転した場合は、逆くの字形スクレーパ16Bが働き、その作用は、くの字形スクレーパ16Aと全く同様である。
【0029】
図6は第2実施例に係る建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置の点検カバー兼スクレーパを示しており、図6の(a)は平面図、(b)は側面図である。これ以外は第1実施例と同一であり、説明は省略する。点検カバー兼スクレーパ19Aは図に示すようにカバー19bにV形スクレーパ19aが固着している。このような第2実施例によれば、フレームの点検窓が小さくても装着ができる。
【0030】
図7は第3実施例に係る建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置の点検カバー兼スクレーパを示しており、図7の(a)は平面図、(b)は側面図である。これ以外は第1実施例と同一であり、説明は省略する。点検カバー兼スクレーパ19Bは図に示すようにカバー19dに逆V形スクレーパ19cが固着している。このような第3実施例によれば、フレームの点検窓が小さくても装着ができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、上部旋回体に取着された点検カバーに、内歯歯車にグリースを導くと共に、不要部に堆積したグリースをグリースバス内にかき落とすスクレーパを設けたため、内歯歯車へグリースを確実に供給し、同時に旋回ベアリングへのグリースの侵入および外部へのはみ出しを防ぎ、スイングサークル全体の寿命を伸ばすことができるので耐久性が向上する。
また、不要部にグリースが堆積しないため、グリースを有効に利用することができ、グリース総量を減らすことができる。
【0032】
更に、スクレーパが点検窓カバーにX形あるいはV形にコンパクトに設けられているので、製作が容易で、コストが安価である。また、点検カバーと一体にスクレーパを設けたので、装着後のチエックも容易なためスクレーパの損傷等を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置の平面図である。
【図2】図1の断面J−Jである。
【図3】図2のP部の拡大図である。
【図4】第1実施例の点検カバー兼スクレーパ説明図である。
【図5】同、点検カバー兼スクレーパの作動説明図である。
【図6】第2実施例の点検カバー兼スクレーパ説明図である。
【図7】第3実施例の点検カバー兼スクレーパ説明図である。
【図8】従来の油圧ショベルの側面図である。
【図9】従来の建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置の平面図である。
【図10】図9の断面K−Kである。
【図11】図10のQ部の拡大図である。
【図12】従来の不具合を生じるグリースの状態を示す図である。
【符号の説明】
1…フレーム、1a,1b…点検窓、2…センタフレーム、3…アウタレース、4…出力軸、4a…スイングピニオン、5…円筒部材、12…インナレース、12b…内歯歯車、15…グリースバス、16,19A,19B…点検カバー、16A,16B,19a,19c…スクレーパ、20…油圧ショベル、21…下部走行体、22…スイングサークル、23…上部旋回体、25…旋回駆動装置。
Claims (1)
- 左右のトラツクフレームに連結するセンタフレームと、このセンタフレームの上端部に固着するインナレースの内歯歯車と、上部旋回体のフレームに取着したスイングピニオンとを備え、このインナレースの内歯歯車とスイングピニオンとを円環状の旋回ベアリングで支承し、かつ、上部旋回体のフレームとセンタフレームとの間で、インナレースと円筒部材から形成されるグリースバス内で噛み合せて前記上部旋回体のフレームを旋回駆動する建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置において、前記グリースバス(15)の上部旋回体のフレーム(1) に点検カバー(16,19A,19B)を有し、この点検カバー(16,19A,19B)は、前記グリースバス(15)内のグリースを前記インナレース(12)の内歯歯車(12b) とスイングピニオン(4a)との噛み合せ部にグリースをかき落とすスクレーパ(16A,16B,19a,19c) を備え、前記スクレーパ (16A,16B,19a,19c) は上面から見てX形に形成されていることを特徴とする建設機械のスイングサークルの歯車潤滑装置。
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