JP3639262B2 - 光ピックアップ及び光ディスクシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクに書き込まれた情報を読取る光ピックアップ及び光ピックアップを組み込んだ光ディスクシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
光ピックアップに使用される半導体レーザは、開放型の共振器のため、外部の反射体との間でも共振器を形成しやすく、また、自己の出力光が外部から反射されて戻り光になり、戻り光が半導体レーザに入射すると発振が不安定になることがある。このため、戻り光が大きいと半導体レーザ出力光にノイズを生じることになる。
【0003】
例えば、光ピックアップの半導体レーザからの出力光は光ディスクに集光され、光ディスク上のピットで回折され、変調された反射光となる。この反射光は光ピックアップの対物レンズを通り、受光素子に入力して光ディスク上の信号が読み取られる。従来の光ピックアップは、偏光ビームスプリッタとλ/4板により、光ディスクからの反射光は全て受光素子に入力され、半導体レーザには戻らなかった。最近では、コストの安いハーフミラーが用いられるようになり、この場合は反射光の凡そ50%が半導体レーザ側に戻り、戻り光となる。半導体レーザが光ディスクからの戻り光を受けた場合、半導体レーザは、半導体チップの前端面と後端面で構成される内部共振器と、光ディスクと半導体チップの前端面で構成される外部共振器の2つが組み合わさった複合共振器のモードで発振する。
【0004】
戻り光の影響を軽減する方法として、シングルモード発振する半導体レーザを、直流電流に高周波電流を重畳して駆動することにより、マルチモード発振させて戻り光の影響を軽減させる技術が報告されている(特公昭59−9086)。この技術は直流電流駆動だけではマルチモード発振させることが困難なAlGaAs高出力半導体レーザや、InAlGaP可視光半導体レーザに適用されている。
【0005】
従来の光ピックアップは、半導体レーザの前端面と光ディスクの間の光路長は50mmから70mm程度であり、半導体レーザの出力光の可干渉距離に比べて長かった。この場合、半導体レーザに戻り光が入射しても、外部共振器が構成されず、半導体レーザの発振状態は大きく変化しなかった。近年の装置の小型化により、光ピックアップでは半導体レーザの前端面と光ディスクの間の光路長も30mm程度にまで短くなり、マルチモード発振の半導体レーザといえども、戻り光の影響が無視できないものとなってきた。
【0006】
直流電流に高周波電流を重畳してマルチモード発振させる技術を発展させて、半導体レーザへの戻り光が、レーザ発振が停止している間に半導体レーザに戻るように、半導体レーザと光ディスク間の光路長に応じて高周波電流の周波数を制御する技術が報告されている(特開平5―89465)。しかし、CD−R/RW、MD、DVDは光ディスクが小径で再生装置も小型のため、半導体レーザの前端面と光ディスクとの間の光路長は30mmから50mmとなっている。この光路長に対して、レーザ発振が停止している間に半導体レーザへの反射戻り光が半導体レーザに戻るようにすると、高周波電流の周波数は2.5GHzから1.5GHzとなる。このような高周波電流が、装置内の他の電子回路に影響を与えないようにするには、駆動回路の周りに厳重なシールドが必要となり現実的ではない。
【0007】
また、半導体レーザの前端面と光ディスクとの間の光路長に応じて400MHz以上の高周波電流を重畳する方法(特開平8−139418)も提案されている。しかし、現在のCD−R/RW、MD、DVD用の光ピックアップでは、半導体レーザはpn逆バイアス障壁に起因する並列容量を持ち、また、半導体レーザチップとパッケージとの接続用のリードワイヤがインダクタンスを持っている。そのため、並列容量とインダクタンスで決まる共振周波数よりも高い400MHz以上の高周波電流を重畳するこの方法も採用が困難である。
【0008】
一方、R. Langはシングルモード発振の半導体レーザにおいて、戻り光による影響を報告している(IEEE Journal of Quantum Electron., QE-16, p.347, 1980)。この報告によると、半導体レーザの前端面から外部ミラーまでの距離が半導体レーザの実効共振器長の整数倍の場合は、半導体レーザの出力光は影響を受けないが、半導体レーザの前端面から外部ミラーまでの距離が半導体レーザの実効共振器長の整数倍からずれた場合は、半導体レーザの内部共振器と外部共振器の位相条件がずれているため、レーザ発振は不安定で出力光には高周波ノイズを含むことが明らかにされている。ここで、実効共振器長とは、半導体レーザの屈折率をmとすると、「半導体レーザの共振器長×m」で表される長さをいう。この報告はシングルモード発振の半導体レーザの場合であり、マルチモード発振の半導体レーザに適用できるかどうかは不明である。
【0009】
また、光ピックアップにおいては、半導体レーザの前端面と光ディスクとの間の光路長が半導体レーザの実効共振器の何倍あるかを測定することが極めて困難である。つまり、半導体レーザの屈折率mは半導体レーザの光閉じ込め率によって変化するため、実効共振器長を20倍程度した光路長と比較すると大きな誤差となる。また、半導体レーザの前端面と光ディスクとの間に介在する光学素子の厚さを精度良く測定することも困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来、明確ではなかったマルチモード発振の半導体レーザの挙動を明らかにすべく、発明者は、マルチモード発振の半導体レーザと光ディスクとの間の光路長と半導体レーザ出力光のノイズ及び発光スペクトルの関係を解明した。
【0011】
半導体レーザの前端面と反射ミラーとの間の光路長を変化させて、その影響を測定した。測定系を図1に示す。半導体レーザ11からの出力光をコリメートレンズ14で平行光にする。ハーフミラー18で一部を通過させて、対物レンズ15で全反射ミラーに照射する。ハーフミラー18で残りの一部は反射させて、光スペクトルアナライザ21で半導体レーザ出力光のスペクトルを観測し、また、ノイズ測定機22で半導体レーザ出力光のノイズを測定する。対物レンズ15と全反射ミラー20を一体で移動することにより、半導体レーザ11と全反射ミラー20の距離は可変できる構造になっている。
【0012】
図1の測定系で半導体レーザ11の前端面と全反射ミラー20との間の光路長を変化させて、半導体レーザ出力光のスペクトルとノイズを測定した結果を図2に示す。図2において、下段は半導体レーザ11の前端面と全反射ミラー20との間の光路長に対する半導体レーザ出力光のノイズを、上段は各光路長における半導体レーザ出力光のスペクトルを示す。光路長は絶対値としては精確な値ではなく、おおよその距離を表すが、光路長の変化には微動台を用いたため、相対値としては精確な値となっている。この測定系で使用した半導体レーザの共振器長は0.35mm、屈折率は4.3である。従って、実効共振器長は0.35mm×4.3=1.5mmとなる。光路長を変化させると、半導体レーザの実効共振器長の周期に合わせて、半導体レーザ出力光のノイズ量が変動する。この周期は1.5mmであることから、半導体レーザの実効共振器長の整数倍の周期で雑音が増減することが分かる。Langの報告をマルチモード発振の半導体レーザにも適用すると、半導体レーザ出力光のノイズが大きいのは(図2のC点)、光路長が「半導体レーザの実効共振器長の(n0.5)倍」(nは正整数。以下、同様)になるときで、半導体レーザ出力光のノイズが比較的小さいのは(図2のA点)、光路長が「半導体レーザの実効共振器長のn倍」のときということになる。
【0013】
このときの、半導体レーザ出力光の光スペクトルを図2に併せて示す。半導体レーザ出力光のノイズが小さいときは(図2のA点)、半導体レーザは戻り光がないときと同じ光スペクトルで発振していることから、光路長が「半導体レーザの実効共振器長のn倍」のときであり、また、半導体レーザ出力光のノイズが大きいときは(図2のC点)、半導体レーザ出力光の光スペクトルに外部共振器で決まる光スペクトルが重畳して発振していることから、光路長が「半導体レーザの実効共振器長の(n0.5)倍」であることが分かる。この測定結果より、Langの報告をマルチモード発振の半導体レーザにも適用できることが明確となった。
【0014】
光路長が「半導体レーザの実効共振器長の(n0.5)倍」のときは、戻り光なしの場合のモードと共に、戻り光によって波長のずれたモードが現れる。内部共振器と外部共振器の両方で発振するからである。1nsecの発光パルスが光り始めて、200psec後には、30mm離れた全反射ミラー20からの戻り光が入射する。このため、最初の200psecの間は内部共振器で発振していた半導体レーザは、戻り光を受けて外部共振器でも発振する。
【0015】
従って、光ピックアップでは、半導体の前端面から光ディスクまでの距離が「半導体レーザの実効共振器長の(n−0.5)倍」の位置にならないよう、光ピックアップを設計する必要がある。しかし、半導体レーザの共振器長は各半導体レーザによって異なり、さらに、半導体レーザの実効屈折率は、半導体レーザの光の閉じ込め率によって変化する。光の閉じ込め率は半導体レーザのファーフィールド広がり角にも依存する。このため、たとえ同じ波長の半導体レーザであっても、ストライプ部の構造によって微妙に変化する。この微妙な変化がn倍に拡大されて、半導体レーザ出力光のノイズが最大になる位置が決まるため、光ピックアップの設計時に予め搭載する半導体レーザの実効共振器長から決まる位置を避けることは困難である。
【0016】
本発明は、このような問題を解決するために、半導体レーザの前端面と光ディスクの間の光路長を光ピックアップ製造時に調整できる構造の光ピックアップ及び前記光ピックアップを組み込んだ光ディスクシステムを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、請求項1に係る発明では、光ピックアップにおいて、戻り光によって半導体レーザの出力光の雑音が増加したか、半導体レーザが外部共振器モードでも発振しているときは、半導体レーザからの出力光をコリメートした平行光束部に、光路長が半導体レーザの実効共振器長の(n−0.5)倍変化する光路長調整用光学素子を挿入することにより解決する。
【0018】
具体的には、請求項1に係る発明は、半導体レーザからの出力光をコリメートした後、 光ディスクに集光し、該光ディスクからの反射光を受光することにより、前記光ディスクに書き込まれた情報を読取る光ピックアップにおいて、前記コリメートレンズと前記対物レンズとの間の平行光束部に、光路長が半導体レーザの実効共振器長の(n−0.5)倍変化する光路長調整用光学素子が挿入されていることを特徴とする光ピックアップである。
【0019】
請求項2に係る発明では、光ピックアップと、光ピックアップスライド機構と、光ディスク回転機構とを有する光ディスクシステムにおいて、請求項1に記載の光ピックアップを組み込むことにより解決する。
【0020】
具体的には、請求項2に係る発明は、光ピックアップと、光ピックアップスライド機構と、光ディスク回転機構とを有する光ディスクシステムにおいて、請求項1に記載の光ピックアップを組み込んだことを特徴とする光ディスクシステムである。
【0021】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
各種の半導体レーザにおいて、光路長調整用光学素子を挿抜することの有効性を確認した。図3の測定系は、図1の測定系に光路長調整用光学素子としてガラス製の平行平面板を半導体レーザからの出力光をコリメートした平行光束部に挿入できる構成としたものである。図3の測定系において、半導体レーザ11の前端面と全反射ミラー20との間の光路長が32.3mmのときに半導体レーザ出力光のノイズが最大になった。そこで、光路長が32.3mmのときに、戻り光の量を変化させて、ノイズを測定した。測定結果を図4に示す。図4より、厚さ1.8mmで屈折率1.5のガラス製の平行平面板23を挿抜したときの、半導体レーザ出力光のノイズを測定すると、平行平面板23を挿入することによって、明らかにノイズが低減していることが分かる。前記平行平面板23を挿入することによって、半導体レーザ11の前端面と全反射ミラー20との間の光路長は、1.8×(1.5−1)=0.9mmだけ伸びたに等しい。つまり、図2において、光路長が33.2mmであるのと等しい効果が得られる。図4において、前記平行平面板23を挿入したときの半導体レーザ出力光の発振スペクトルを観測すると、ほぼ、外部共振器の発振波長が内部共振器の発振波長と一致していることが分かる。
【0022】
前記平行平面板23の挿抜だけで調整するには、「半導体レーザの実効共振器長の(n−0.5)倍」に対して、「半導体レーザの実効共振器長の±0.25倍」の余裕を持たせることが有効である。
従って、半導体レーザの前端面と光ディスクとの間の光路長が式「半導体レーザの実効共振器長×(n−0.5±0.25)」(nは正整数)の範囲内となるときは、半導体レーザからの出力光をコリメートした平行光束部に、光路長調整用の平行平面板を挿入することにより解決することが有効であることが判明した。
【0023】
光路長調整用の平行平面板を挿抜できる構造の光ピックアップを図5に示す。図5は、光ディスク37に記録された情報を読取るための光ピックアップ30の概略構造である。半導体レーザ31からの出力光は、ハーフミラー33で反射されて、コリメートレンズ34で平行光束になる。平行光は対物レンズ36で光ディスク上に集光される。光ディスクから反射された光は、対物レンズ36、コリメートレンズ34を通過し、ハーフミラー33を透過して受光素子32で受光される。ここで、コリメートレンズ34と対物レンズ36の間に平行平面板35を挿入しても、半導体レーザ出力光及び反射光は平行光束になっているため、焦点位置には影響せず、光路長のみが伸ばされる。
【0024】
平行平面板としては、光路長が「半導体レーザの実効共振器長の(n0.5)倍」だけ変化させることができる厚さにしておけばよい。これによって、半導体レーザの出力光において、戻り光によるノイズが大きいときには、平行平面板を挿入することによって、ノイズを低減することができる。または、光路長が「半導体レーザの実効共振器長の(n0.5)倍」だけ変化させることができる平行平面板と、光路長が「半導体レーザの実効共振器長のn倍」だけ変化させることができる平行平面板の2種類を用意しておき、いずれかを挿入する構成としてもよい。また、数種類の厚さの平行平面板を用意しておき、最適な厚さの平行平面板を挿入することでもよい。
【0025】
以上説明したように、発明者は、光ピックアップに適用するマルチモード発振の半導体レーザの戻り光によるノイズ増加のメカニズムを解明し、戻り光によって半導体レーザの出力光の雑音が増加したり、半導体レーザが外部共振器モードでも発振しているときは、半導体レーザからの出力光をコリメートした平行光束部に、光路長調整用の平行平面板を挿入することにより、半導体レーザ出力光のノイズを低減することができることを明らかにした。
【0026】
(実施の形態2)
光ディスクシステムは、光ピックアップと、光ピックアップスライド機構と、光ディスク回転機構とを有する。光ピックアップスライド機構は、光ピックアップをスライドさせるための機構であって、光ピックアップをスライドさせる歯車やレール等を備える。光ディスク回転機構は、光ディスクを回転させる機構を備える。本実施の形態では、実施の形態1で説明した光ピックアップを組み込むことにより、要求される許容ノイズ量以下の性能を有する光ディスクシステムを構成することができた。
【0027】
以上のことから、光ピックアップ内の半導体レーザが戻り光によって半導体レーザの出力光の雑音が増加したり、半導体レーザが外部共振器モードでも発振しているときは、半導体レーザからの出力光をコリメートした平行光束部に、光路長調整用の平行平面板を挿入することにより、半導体レーザ出力光のノイズを低減することができる光ディスクシステムを構成することができた。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体レーザの前端面と光ディスクとの間で構成される外部共振器の光路長を光路長調整用光学素子で調整することによって、半導体レーザ出力光のノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の基礎となる戻り光によるノイズの発生メカニズムを解明するための測定系を説明する図である。
【図2】本願発明の基礎となった戻り光によるノイズの測定結果を説明する図である。
【図3】本願発明の有効性を確認するための測定系を説明する図である。
【図4】本願発明の有効性を確認した測定結果を説明する図である。
【図5】本願発明の実施形態を示す光ピックアップの概略図である。
【符号の説明】
11:半導体レーザ
12:受光素子
14、15、16、17:レンズ
18、19、33:ハーフミラー
20:全反射ミラー
21:光スペクトルアナライザ
22:ノイズ測定機
23、35:平行平面板
30:光ピックアップ
31:半導体レーザ
32:受光素子
34:コリメートレンズ
36:対物レンズ
37:光ディスク

Claims (2)

  1. 半導体レーザからの出力光をコリメートした後、光ディスクに集光し、該光ディスクからの反射光を受光することにより、前記光ディスクに書き込まれた情報を読取る光ピックアップにおいて
    半導体レーザからの出力光をコリメートした平行光束部に、光路長が半導体レーザの実効共振器長の(n−0.5)倍(nは正整数)変化する光路長調整用光学素子挿入されていることを特徴とする光ピックアップ。
  2. 光ピックアップと、光ピックアップスライド機構と、光ディスク回転機構とを有する光ディスクシステムにおいて、請求項1に記載の光ピックアップを組み込んだことを特徴とする光ディスクシステム。
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