JP3638774B2 - フッ素徐放性歯科用接着性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用接着性組成物に関する。より詳しくは、口腔内でフッ素イオンを徐々に放出して歯質の強化による齲蝕の予防作用を有し、常温化学重合により硬化し、かつ光重合によっても重合硬化可能な、操作性に優れる歯科用接着性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科医療において、フッ素イオンが歯質に作用して歯質を強化することはすでに良く知られており、歯質の齲蝕予防および/または抑制を目的として、歯質をフッ素イオンで処置することが行われることがある。
一方、接着性モノマーと重合性単量体と重合開始剤を主成分とする歯科用接着性組成物は、コンポジットレジンによる虫歯の修復や、インレー、アンレー、クラウン、ベニヤ、ブリッジ等の補綴物を口腔内に装着する際に、現在広く臨床に用いられている。
これらの歯科用接着性組成物においては、重合開始剤である酸化剤と還元剤を別々に包装して、使用直前に両者を混和して重合させる化学重合型が主流であったが、最近はこれに光重合触媒も添加して、光重合によっても硬化することができる機能を付加した接着剤(デュアルキュア型)が臨床上特に有用である。この理由は以下の通りである。
【0003】
即ち、歯科用接着性組成物の重合方式は、化学重合型のものと光重合型のものに大別されるが、化学重合型の歯科用接着剤は、過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物とアミンの還元剤を重合開始剤として用いるレドックス系のものが主流であり、有機過酸化物を含む組成物と還元剤を含む組成物を分割して保管し、使用直前に混合するものが多い。
また、歯質接着性を向上させるために酸性基を有する重合性単量体を配合した場合には、レドックス系の重合速度が極めて遅くなることが明らかとなっており、その対策として、特開昭53−110637号の発明には、有機過酸化物とアミンに加えて、スルフィン酸またはその塩を加えることにより、酸性モノマー存在下でも速やかに重合が進行することが記載されている。
【0004】
しかしいずれの場合も問題がある。即ち化学重合型の歯科用接着剤では、分割保存していた有機過酸化物を含む組成物と還元剤を含む組成物、または有機過酸化物を含む組成物と還元剤およびスルフィン酸またはスルフィン酸塩(以下、スルフィン酸(塩)の表記で両化合物を意味するものとする)を含む組成物を混合すると、一定の誘導期は実質的に重合が起きず、混合物はほぼ液状であるが、誘導期を過ぎると重合が急激に進行して硬化するため、接着操作時間の調整が困難であると言う問題点がある。
一方、光重合型の歯科用接着剤は、カンファーキノンと還元剤とを組み合わせた重合開始剤が標準的に使用されており、光照射を行うと直ちに重合が開始されるため、化学重合の誘導期よる重合開始の遅延の問題はない。しかし、金属製のクラウン、インレー、アンレー等を合着する場合には、接着剤の表面に対しては容易に重合を進めることができるが、光が十分到達し得ない深部にまで重合を進まない問題点がある。
【0005】
かかる問題を解決するために、化学重合性と光重合性を合わせ持ついわゆるデュアルキュア型の重合開始機能を有する技術が、特開昭58−203907号、60−89407号、62−246514号、特開平2−191207号等に提案されており、このような公知の技術によって、接着操作時間の調整、即ち接着操作を行うと同時にほぼ完全な接着が可能となり、かつ、修復物の表面に対しては光重合の機能により容易に高い重合率にまで重合を進め、重合に必要な光が十分到達しない深い部位も問題なく化学重合させることができる。それ以降、この様なデュアルキュア型の歯科用接着剤や合着剤の有効性が広く認識されるに至っている。
しかし、この様な歯科用接着剤で修復してから一定期間の後、不幸にして歯質と修復材料の間に間隙ができ辺縁漏洩が生じた場合、その歯質と修復物の間隙に虫歯原因菌が侵入し二次齲蝕を生じる場合があり、臨床上しばしば問題となっている。
この様な臨床上の問題点に鑑み、最近では歯科用接着剤にフッ素イオンを放出することができるフッ化物を予め添加しておき、それから溶出するフッ素イオンにより窩洞歯質壁をフッ素化し、歯質を強化して二次齲蝕の防止を図る歯科用接着剤が一部に上市されている。
【0006】
この様な目的で使用されるフッ素化合物としては、フッ化ナトリウム等に代表される金属フッ化物、フッ化アンモニウムやアミン化合物のフッ化水素塩に代表されるアンモニウム塩フッ化物、フルオロアルミノシリケートガラス等に代表されるフッ素含有ガラスが知られている。
【0007】
しかし、金属フッ化物およびアンモニウム塩フッ化物は、フッ素イオンの放出量は高く、周囲歯質へフッ素イオンを放出して歯質のフッ素化を図ることはできるが、フッ素イオンの放出に伴い接着剤自体の機械的性質や接着力が著しく低下し、修復物の脱落が生じてしまうという問題点があった。一方、フッ素含有ガラスにおいては、これを配合した歯科用接着剤の機械的性質や接着性能の低下は、前者ほど甚大ではないが、フッ素イオンの放出量が少ないため、齲蝕予防を期待できるほど歯質を十分強化するに至らないという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
かかる問題点から、接着耐久性の優れた実用価値の高いフッ素イオン徐放性接着性組成物を提供するためには、フッ素イオンを多量に放出し、かつ接着性組成物自体の機械的性質や接着性能の低下を生じせしめないフッ素イオン供給源の開発が必要であることが明らかである。
本発明者等は歯科用接着性組成物にフッ化物を配合し、フッ素イオンの供給により歯質を強化して、二次齲蝕の防止を図ることを目的とした場合、フッ化物としてはフッ素イオン放出量が多いことが望ましいと考えた。この観点から、本発明者らは数あるフッ化物の中から特に金属フッ化物を選択し、これを歯科用接着性組成物に配合するための検討を行った。
【0009】
金属フッ化物を配合した歯科用接着性組成物について、フッ素イオン放出量と接着耐久性との関係を調べると、金属フッ化物の配合量が多いほどフッ素イオン放出量は多くなるものの、一方で接着耐久性が劣ってくる。また、初期に多量のフッ素イオンの放出が起こった後の放出量は少なくなってしまい、フッ素イオンの放出を長期間持続することが出来ない。
一方、接着耐久性の低下を被らない程度に金属フッ化物の添加量を抑えると、臨床上有効な量のフッ素イオンを放出できない。
本発明者等は、金属フッ化物からのフッ素イオンの放出速度を適切に調整すれば、多量のフッ素イオンが放出する性能を維持しつつ歯科用接着性組成物の接着耐久性の低下の抑制を図ることが出来るのではないかという着想を得、金属フッ化物表面を何らかの物質で均一にコーティング処理する方法を鋭意検討した。
【0010】
一般に、粉体表面を均一にコーティングする方法として、マイクロカプセル化という手法が知られている。これは、例えば、「高分子大辞典」(平成6年、丸善株式会社)および「新版高分子辞典」(1988年、朝倉書店)に説明されるように、小さな固体粒子、液滴、気泡等の芯物質の表面を被覆でコーティングして封入したものであり、その目的は芯物質の外部環境からの保護、また芯物質を外部に放出する速度を抑制する点にある。
金属フッ化物を配合した歯科用接着性組成物からの放出速度の抑制だけを目的とするだけならば、従来公知のマイクロカプセル化の技術で達成し得る。例えば、特公平2−31049号にはフッ化物をマイクロカプセル化する技術が開示されている。しかし、ここではフッ化物を配合した同一系内の他の成分との反応を抑制するためにフッ化物からのフッ素イオンの放出を阻止することを目的としており、フッ素イオンを積極的に放出させることを必要とする本発明の目的には全くそぐわない。さらに、フッ化物を含むアルミノシリケートガラス粉末を可溶性のポリマーで表面を被覆した粉体が特開昭58−99406号に開示されているが、可溶性ポリマーで被覆された粉末を歯科用接着剤に用いた場合、口腔内という湿潤条件下においては可溶性ポリマーが唾液あるいは飲食される水分により流出してしまい、粉末に対する長期的な被覆という機能を維持することができず、本発明が目的とする機械的性質や接着性能の保持を達し得ない。
【0011】
一方、金属フッ化物を、公知のシランカップリング剤等の表面処理剤で表明処理を施してから配合すると、粉末表面に一層コーティングされた表面処理剤によってフッ素イオンの放出速度の制御が期待されるが、本発明者等の検討によれば、この様なシランカップリング処理等の表面処理を施した金属フッ化物を歯科用接着剤に配合しても、表面処理を施さないものを用いた場合同様に、接着耐久性が劣ることが判明した。
特開平7−331112号、同8−3473号には、無機粉体をポリシロキサンでコーティングする技術が開示されている。これらには、無機粉体として金属フッ化物に関しては何ら言及されていないばかりでなく、これらから得られる知見は無機粉体と樹脂とを混合して使用する際に無機粉体と樹脂との結合力、無機粉体同士の密着性の向上を意図するものであり、本発明の目的とするフッ素イオンの放出速度をコントロールするという意図を類推できるものではない。また、歯科用接着剤への応用を示唆する記述は全く見られない。
この様に、従来技術をそのまま用いる限り、フッ素イオンを多量に放出し、かつ、接着耐久性に優れた歯科用接着剤を得ることはできなかった。
本発明の目的は、フッ素イオンを多量に長期間持続的に放出し、接着性およびその耐久性に優れ、光・化学重合可能な操作性に優れるという、これらの好ましい性質を兼ね備えた有用な歯科用接着性組成物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、種々の処理を施した金属フッ化物を歯科用接着剤に配合して、フッ素イオンの放出量と接着耐久性を検討した結果、金属フッ化物表面をポリシロキサンで被覆して得られた被覆処理フッ化物を配合することにより、上記の目的を達成することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、(a)表面にポリシロキサン被覆層を有する金属フッ化物、(b)オレフィン性基を有する重合性単量体、(c)酸性基を有する重合性単量体、(d)光重合開始剤、(e)有機過酸化物、(f)第3級アミン、及び(g)芳香族スルフィン酸またはその塩とを構成成分とし、少なくとも有機過酸化物(e)と第3級アミン(f)および芳香族スルフィン酸またはその塩(g)とを別包装にするように2分割以上に分割保存されるフッ素徐放性歯科用接着性組成物である。
【0013】
本発明の最大の特徴は、ポリシロキサンで表面を被覆した金属フッ化を配合する点にある。本発明者等の検討によれば、金属フッ化物表面をポリシロキサンで被覆することにより、フッ素イオンを放出しても、実質的に接着耐久性の低下を生じせしめることはないばかりか、フッ素イオンの放出速度は抑制されず、むしろ、表面を被覆せずにそのまま配合した場合よりフッ素イオン放出量が増大することが明らかになった。
本発明者らは当初、従来のマイクロカプセル化の技術と同じく、金属フッ化物をポリシロキサンで被覆することにより金属フッ化物からのフッ素イオンの溶出速度が抑制されるものと予想したが、むしろ、ポリシロキサンで被覆することによりフッ素イオン放出量が増大したことは大きな驚きである。また、さらにフッ素イオンを多量に放出するにもかかわらず、該金属フッ化物を配合した歯科用接着性組成物の接着耐久性が、配合しない場合と同様に優れていたということも同様である。これらの効果は従来の知見からは全く予想し得なかったものであるが、この理由を現時点で明確に説明することは出来ない。
【0014】
本発明で用いられる金属フッ化物としては、水に溶解し、フッ素イオンを放出し得る金属フッ化物であれば使用可能であり、具体的にはフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化アルミニウム、フッ化マンガン(II)、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、フッ化コバルト(II)、フッ化銅(II)、フッ化亜鉛、フッ化アンチモン(III)、フッ化鉛(II)、フッ化銀(I)、フッ化カドミウム、フッ化スズ(II)、フッ化スズ(IV)、フッ化ジアミン銀、フッ化アンモニウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化水素カリウム、フルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸カリウム、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロスズ(IV)ナトリウム、ヘキサフルオロスズ酸(IV)アラニン、ペンタフルオロスズ酸(II)ナトリウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸カリウム等を挙げることができる。
【0015】
この中でも周期律表第1族と第2族の金属のフッ化物であるフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウムが好ましく、これらの中でも特にフッ化ナトリウムが好ましく用いられる。これらの金属フッ化物は単独もしくは数種を組み合わせて使用することができる。
【0016】
これらの金属フッ化物の形状は、本発明の効果に影響を及ぼすものではなく、粒状、針状、繊維状あるいは板状等、いずれの形状のものでも使用できる。その大きさ及び粒度分布は、本発明の効果に影響を及ぼすものではなく特に制限は無いが、表面をポリシロキサンにより被覆して得られた被覆処理金属フッ化物(a)は、原料の金属フッ化物より大きくなることを考慮しておく必要がある。特に、本発明の歯科用接着剤に配合する場合は、歯科用接着剤の操作性の観点から、金属フッ化物の大きさは、0.5mm以下、特に0.05mm以下であることが望ましい。
【0017】
なお、本発明で用いている「ポリシロキサン」の用語は、−Si−O−結合が網状に連鎖した分子構造を有する珪素化合物を意味し、さらに該用語は、ケイ素原子の一結合手が酸素原子の代わりに有機基と結合したオルガノポリシロキサンをも包含するものとして用いる。該ポリシロキサンは、シラノール基を有するシラン化合物を脱水縮合した化合物が用いられ、更に詳しく説明すると、該ポリシロキサンは加水分解によりシラノール基を生成するシラン化合物を加水分解、あるいは部分加水分解することによって得られるシラノール化合物のシラノール基を分子間で脱水縮合することにより得られるものである。
【0018】
金属フッ化物の表面をポリシロキサンで被覆するには次の方法が可能であるが、ここで挙げるシラン化合物を加水分解して、さらに脱水縮合して高分子量化する方法自体は公知の方法によることができる。
【0019】
(1)シラン化合物の加水分解性基を加水分解して得られたシラノール化合物を金属フッ化物に被覆し、その後、シロキサン化合物の分子間のシラノール基を脱水縮合する方法。
具体的には、例えば次の方法が例示される。すなわち、水と混和する有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、t−ブタノールにシラン化合物、およびシラン化合物を加水分解あるいは部分加水分解するのに必要な理論量程度の水を加えて酸触媒の存在下に加水分解し、加水分解生成物を含有する有機溶剤溶液を作製する。その後この溶液を金属フッ化物に加え、有機溶剤を加熱および/または減圧除去することにより、表面に加水分解生成物が付着した金属フッ化物粉体が得られる。これに必要に応じて酸または塩基を加え加熱処理し、シラノールの脱水縮合反応を進めることによりポリシロキサンにより被覆された金属フッ化物(a)を得ることができる。ここでシラノール基が脱水縮合し、ポリシロキサンを形成している分子構造は、該金属フッ化物(a)の被覆層の赤外線吸収スペクトルにて確認することができる。
【0020】
あるいは、シラン化合物に過剰の水を加えて酸触媒の存在下に加水分解し、その後、水層から加水分解生成物を水と混合しない有機溶剤、例えば酢酸エチル、エチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン等により抽出する。この加水分解生成物を含有する有機溶剤溶液を金属フッ化物に加え、有機溶剤を加熱もしくは減圧除去することにより、表面に加水分解生成物が付着した金属フッ化物粉末が得られる。これに必要に応じて酸または塩基を加え加熱処理し、シラノールの脱水縮合反応を進めることによりポリシロキサンにより被覆された金属フッ化物(a)を得ることができる。
【0021】
(2)シラン化合物を加水分解し、あらかじめ分子間でシラノール基を脱水縮合して高分子量化しておき、これを金属フッ化物に被覆する方法。具体的には、例えば次の方法が挙げられる。すなわち、シラン化合物に所定量の水を加えて酸触媒の存在下に加水分解し、副生するアルコールを留去していくとシラン化合物は縮合し、該シラン化合物のオリゴマーが生成する。これを金属フッ化物に加え、金属フッ化物表面に付着させ、必要に応じて酸または塩基を加えて加熱処理し、オリゴマーのシラノールの脱水縮合反応を進めることによりポリシロキサンにより被覆された金属フッ化物(a)を得ることができる。
【0022】
ポリシロキサンの原料となるシラン化合物としては、加水分解によりシラノール基を生成し、しかる後に該シラノール化合物のシラノール基を分子間で脱水縮合することでポリシロキサンを生成し得るものならば何ら制限無く使用できるが、中でも一般式
【0023】
[(R1Ol(X)m]4−n−Si−R2n (I)
【0024】
(R1は炭素数8以下の有機基、Xはハロゲン、R2は炭素数6以下の有機基、lおよびmは0または1でかつl+m=1を満たす整数、nは0または1の整数を表す。)
で表されるシラン化合物が好ましく用いられる。
【0025】
I式化合物において、R 1 O基およびX基は加水分解によりシラノール基を生成し得る官能基または原子であり、具体的には、R 1 はメチル、エチル、2−クロロエチル、アリル、アミノエチル、プロピル、イソペンチル、ヘキシル、2−メトキシエチル、フェニル、m−ニトロフェニル、2,4−ジクロロフェニルが挙げられ、Xは塩素、臭素が挙げられる。中でも、R 1 はメチルおよびエチル、Xは塩素が好ましい。
【0026】
R 2 は本発明の目的により適したポリシロキサン被膜を形成するためには炭素数6以下の有機基であることが好ましく、具体的にはR 2 としてはメチル、クロロメチル、ブロモエチル、エチル、ビニル、1,2−ジブロモビニル、1,2−ジクロロエチル、2−シアノエチル、ジエチルアミノエチル、2−アミノエチル、2−(2−アミノエチルチオエチル)、プロピル、イソプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−メルカプトプロピル、3−アミノプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−グリシドキシプロピル、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)、アリル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル等が挙げられ、特にメチル、エチル、プロピル、ビニル、フェニルが好ましい。
【0027】
I式化合物のn=0のシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン等が挙げられる。特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0028】
I式化合物のn=1の化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が挙げられ、特にメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシランが挙げられる。これらの化合物は単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0029】
ポリシロキサンで金属フッ化物の表面を被覆して、本発明が目的とする効果を得るためには、該金属フッ化物100重量部に対し、ポリシロキサンを20重量部以上、より好ましくは50重量部以上の量を被覆することが望ましい。それ以下では所期の目的を十分達せられないことがある。一方、被覆量の上限に対しては特に制限はないものの、金属フッ化物100重量部に対し、ポリシロキサンが500重量部を越えると効果は飽和してさらなる効果の増大がないこと、およびポリシロキサンの比率が高くなると、相対的に金属フッ化物量の比率が低下し、もともとの目的であるフッ素イオンの放出量が実質的に低くなってしまうことより、500重量部を上限として考えることが望ましい。
【0030】
ポリシロキサンで被覆された金属フッ化物(a)の構造は、金属フッ化物粒子の表面全体をポリシロキサンが被覆した状態であればよく、一個の金属フッ化物粒子を核としその表面をポリシロキサンでコートした単一核型の構造、および、単一核型が凝集した構造、すなわちポリシロキサンの凝集体中に金属フッ化物粒子が分散した構造等いずれの構造でも構わない。金属フッ化物粒子を被覆するポリシロキサン層の厚さは0.1〜100μmであることが望ましく、特に1〜50μmがより好ましい。
【0031】
さらに、表面がポロシロキサンで被覆された金属フッ化物(a)は、重合性単量体中での分散性や沈降防止、また接着剤組成物の粘度調整等の目的で、さらに従来公知のシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理を施してから、本発明の歯科用接着剤に配合してもかまわない。
【0032】
また、該金属フッ化物(a)の形状は、粒状、針状、繊維状あるいは板状等、いずれの形状のものでも使用できる。大きさ及び粒度分布は本発明の歯科用接着剤の効果に影響を及ぼすものではなく特に制限は無いが、接着剤の使用性の観点から粒径が1mm以下、特に0.1mm以下であることが好ましい。また、合着材に使用される場合は、皮膜厚さや強度への影響を考慮して、0.05mm以下であることが好ましい。なお、粒径の小さい粒子は大きい比表面積を持ち、溶出速度が大となるが、反面、溶出期間が短くなる傾向があるので、フッ化物の大きさはこれらの要素も考慮して選択すべきである。
金属フッ化物(a)は、後述の重量性単量体(b)に対し、0.01〜95重量%の範囲で用いられるが、特に好ましいのは0.1〜90重量%の範囲である。
【0033】
本発明で用いられる重合性単量体(b)は、目的・用途に応じて適宜選択されるが、通常α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体、等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。
【0034】
かかる重合性単量体を例を以下に示す。なお本発明においては(メタ)アクリルをもってメタクリルとアクリルの両者を包括的に表記する。
(イ)一官能性
メチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、オキシラニルメチル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン。
【0035】
(ロ)二官能性
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタンなど。
【0036】
(ハ)三官能性基以上
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど。これらの重合性単量体は1種または数種組み合わせて用いられる。
【0037】
本発明において使用される酸性基を有する重合性単量体(c)は、歯質および修復物に対する接着性を確保することを目的として配合され、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基またはスルホン酸残基等の酸性基を有する重合性単量体である。該化合物の具体例として、以下のものが挙げられる。
リン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル フェニルリン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2’−ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチル フェニルホスホネート等、およびこれらの酸塩化物。
【0038】
ピロリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)等、およびこれらの酸塩化物。チオリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等、およびこれらの酸塩化物。
【0039】
カルボン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等およびこれらの酸塩化物。
【0040】
スルホン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を含有する化合物などを挙げることができる。
本発明の歯科用接着性組成物においては、これらの酸性基を有する重合性単量体(c)は、1種または数種組み合わせて用いてもよく、通常、重合性単量体(b)に対し、通常、0.1〜80重量%の範囲で用いられる。
【0041】
本発明で用いられる光重合開始剤(d)としては、公知のものが何ら制限無く用いられ、例えば、α−ジケトン/還元剤、ケタール/還元剤、チオキサントン/還元剤等があげられる。α−ジケトンの例としては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどが挙げられる。ケタールの例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。チオキサントンの例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。還元剤の例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕−N−メチルアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、N−メチルジエタノールアミン等の三級アミン、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等のチオール基を有する化合物等を挙げることが出来る。さらにこれらの酸化還元系に、有機過酸化物を添加した系も好適に用いられる。
【0042】
また、紫外線照射による光重合を行う場合は、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が好適である。さらに、各種のアシルホスフィンオキサイドも好適に用いられ、かかるアシルホスフィンオキサイドとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどがあげられる。これらアシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤は、単独もしくは各種アミン類、アルデヒド類またはメルカプタン類等の還元剤と併用して用いる場合もある。
また、必要に応じて、これらアシルホスフィンオキサイドに加えて、種々の加熱重合触媒、可視光線重合触媒、紫外線重合触媒が更に添加されると、重合硬化速度が上がり、より好ましい場合がある。
これらの光重合開始剤(d)の配合量は、重合性単量体(b)に対し、通常0.05〜10重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で使用される。
【0043】
本発明で使用される有機過酸化物(e)としては、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などが有効である。具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシエステル類としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0044】
また、本発明で用いられる還元剤の第3級アミン(f)としては、芳香族第3級アミン、脂肪族第3級アミンのいずれも有効である。具体的には、芳香族第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
【0045】
脂肪族第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
【0046】
本発明で用いられる他の還元剤であるスルフィン酸またはその塩(g)としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。これらの還元剤(f)(g)の添加量は重合性単量体に対し、通常0.05〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で使用される。
【0047】
本発明の歯科用接着性組成物の構成成分である(a)〜(g)においては、貯蔵安定性の観点から、少なくとも、有機過酸化物(e)と、還元剤(f)および(g)は、同一包装内に共存しないように、少なくとも二分割以上に包装された形態である必要がある。
【0048】
本発明の歯科用接着性組成物においては、光重合開始剤(d)と有機過酸化物(e)において、光重合開始剤としてアシルホオスフィンオキサイド、および有機過酸化物としてジアシルパーオキサイドの組み合わせであると特に好ましい。この両者の組み合わせにより、光重合速度が優れるほか、接着剤の硬化物の機械的強度に優れて接着耐久性がより向上したり、硬化前の接着性組成物の着色や硬化後の変着色が少なく、審美性に優れる。さらに、αジケトンやチオキサントン等の光重合開始剤を用いると、光重合のために通常併用する還元剤が、化学重合のための還元剤(f)(g)と相互作用をきたして、化学重合速度をコントロールする事が困難になり、臨床操作上許容できる硬化時間を安定的に得ることが困難になるという問題があったが、この組み合わせを用いると、歯科用接着剤を設計する際に、この問題を比較的容易に解決する事が出来る。
【0049】
また、本発明の接着性組成物には、目的に応じ、さらにフィラーを加えて、ペースト状の組成物として供給することもできる。かかるフィラーとしては、無機系あるいは有機物及びこれらの複合体が用いられる。無機系フィラーとしては、シリカあるいはカオリン、クレー、雲母などのシリカを基材とする鉱物、シリカを基材とし、Al 2 O 3 、B 2 O 3 、TiO 2 、ZrO 2 、BaO,La 2 O 3 、SrO 2 、CaO、P 2 O 5 等を含有するセラミックスやガラスの類、特にランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラス等が挙げられる。さらには結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等も好適に用いられる。
【0050】
有機物のフィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の有機樹脂が挙げられる。
また、これらの有機樹脂中に無機フィラーが分散したり、無機フィラーを上記有機樹脂でコーティングした無機/有機複合フィラー等も挙げられる。
【0051】
これらのフィラーは、重合性単量体(b)との接着性を向上させるために、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのフィラーは、単独または数種類を組み合わせて配合され、用いるフィラーとその添加量は、本発明の接着性組成物の臨床上の使用目的により決められる。
【0052】
例えば、液体(ペースト)状の接着剤に高い流動性を持たせて、筆等を用いて本発明の接着性組成物を接着面に塗布するのに都合がいい粘度とする場合のフィラーの添加量は、接着性組成物全体に対して、40重量%以下、より好ましくは、20重量%以下の範囲で添加される。特にこの場合、好適なフィラーとしては、平均粒径0.1μmの以下のコロイドシリカが挙げられる。
また、本発明の接着性組成物を、補綴物を口腔内に合着する際のセメントとしようとすると、フィラーの添加量は、接着性組成物全体に対して、20〜95重量%、好ましくは、40〜90重量%の範囲である。この場合好適に用いられるフィラーとしては、平均粒径1〜5μm、粒径範囲0.1〜20μmの各種ガラスフィラーが挙げられる。
【0053】
本発明の組成物には以上に述べた各成分の他、実用上必要に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等を添加することができる。本発明の歯科用接着性組成物は、窩洞を被覆するためのライニング剤、インレー・アンレー・クラウン等を窩洞または支台歯に接着するための接着剤、ブリッジ・ポスト等を保持するための接着剤、フィッシャーシーラントに用いられ、フッ素イオンの積極的な放出により歯質を強化する一方で、接着性組成物自体の理工学的物性の低下は生じず、また、接着耐久性に優れている。
【0054】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
実施例1
テトラエトキシシラン34.7gにテトラエトキシシランのエトキシ基と等モル量の水12g、エタノール10gおよび塩酸0.02gを加え、2時間撹拌しながら加熱還流を行いテトラエトキシシランを加水分解した。
この溶液にフッ化ナトリウム粉末10gを加え、撹拌した後、エタノールを減圧溜去し、引き続いて、120℃の加熱処理を30分間行い、白色の粉体19gを得た。
該粉体を酢酸エチルで洗浄しても洗浄液中にシラン化合物の溶出は無く、テトラエトキシシランは加水分解後にフッ化ナトリウム表面で縮合重合し、不溶化していることが確認された。
【0056】
さらに、テトラエトキシシランと該フッ化物の赤外吸収スペクトルを比較したところ、該フッ化物では960、1170cm −1 のテトラエトキシシランのエトキシ基の吸収が消失し、一方、1000〜1200cm −1 付加にSiO 2 のブロードな吸収が出現し、テトラエトキシシランは加水分解の後、脱水縮合されポリシロキサン構造を形成し、ポリシロキサンで被覆されたフッ化ナトリウムが生成していることが確認された。
【0057】
実施例2〜4
表1に示すシラン化合物および金属フッ化物を用い、実施例1と同様の方法にてアルコキシシランを加水分解した後、金属フッ化物表面に被覆し、脱水縮合を行い、金属フッ化物をポリシロキサンで被覆したフッ化物を得た。
【0058】
実施例5
ビニルトリエトキシシラン100gおよび水100gの混合液に酢酸0.2gを加え、系が均一になるまで室温下で撹拌した。この水溶液に飽和食塩水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、酢酸で除去した後、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除去し、酢酸エチルを減圧溜去したところ、加水分解されたビニルトリエトキシシラン23gが得られた。
加水分解されたビニルトリエトキシシラン10gをトルエン10gに溶解し、さらに硬化触媒として3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5gを加えた。
【0059】
この溶液をフッ化ナトリウム粉末10gに加え、撹拌した後、トルエンを減圧溜去し、引き続いて、120℃の加熱処理を30分間行い、白色の粉末19gを得た。該粉体をトルエンで洗浄しても洗浄液中にシラン化合物の溶出は無く、ビニルトリエトキシシランは加水分解後にフッ化ナトリウム表面で縮合重合し、不溶化していることが確認された。さらに、ビニルトリエトキシシランと該フッ化物の赤外吸収スペクトルを比較したところ、該フッ化物では950,1170cm −1 のビニルトリエトキシシランのエトキシ基の吸収が消失し、一方、1000〜1200cm −1 付近にSiO 2 のブロードな吸収が出現し、ビニルトリエトキシシランは加水分解の後、脱水縮合されポリシロキサン構造を形成し、ポリシロキサンで被覆されたフッ化ナトリウムが生成していくことが確認された。
【0060】
実施例6
表1に示すシラン化合物および金属フッ化物を用い、実施例1と同様の方法にてアルコキシシランを加水分解した後、金属フッ化物表面に被覆、脱水縮合を行い、ポリシロキサンで被覆した金属フッ化物を得た。
【0061】
実施例7〜10
表1に示すシラン化合物および金属フッ化物を用い、実施例5と同様の方法にてアルコキシシランを加水分解した後、金属フッ化物表面に被覆、脱水縮合を行い、ポリシロキサンで被覆した金属フッ化物を得た。
【0062】
実施例11
表1に示すシラン化合物および金属フッ化物を用い、実施例1と同様の方法にてアルコキシシランを加水分解した後、金属フッ化物表面に被覆、脱水縮合を行い、ポリシロキサンで被覆した金属フッ化物を得た。
【0063】
実施例12
表1に示すシラン化合物および金属フッ化物を用い、実施例5と同様の方法にてアルコキシシランを加水分解した後、金属フッ化物表面に被覆、脱水縮合を行い、ポリシロキサンで被覆した金属フッ化物を得た。
【0064】
実施例13
シロキサンオリゴマー(商品名MSAC、三菱化学(株)製)10gをトルエン10gに溶解し、さらに硬化触媒として硝酸を0.1gを加えた。
この溶液をフッ化ナトリウム粉末10gに加え、撹拌した後、トルエンを減圧溜去し、引き続いて、120℃の加熱処理を行い、白色の粉体18gを得た。
該フッ化物をトルエンで洗浄しても洗浄液中にシラン化合物の溶出は無く、シロキサンオリゴマーが架橋してポリシロキサンで被覆されたフッ化ナトリウムが生成していることを確認した。
【0065】
実施例14
表1に示すシラン化合物および金属フッ化物を用い、実施例13と同様の方法にてシロキサンオリゴマーを金属フッ化物表面に被覆、脱水縮合を行い、ポリシロキサンで被覆した金属フッ化物を得た。
【0066】
参考例1
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10gをトルエン10gに溶解し、この溶液をフッ化ナトリウム粉末10gに加え撹拌した後、トルエンを減圧溜去し、引き続いて、120℃の加熱処理を行い、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたフッ化ナトリウム18gを得た。
【0067】
参考例2
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis−GMA)50重量部と1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート50重量部および過酸化ベンゾイル1重量部からなる混合物10gをトルエン10gに溶解し、この溶液をフッ化ナトリウム粉末10gに加え撹拌した後、トルエンを減圧溜去し、引き続いて、120℃の加熱処理を3時間行い、メタクリル系樹脂で被覆されたフッ化ナトリウム18gを得た。
【0068】
参考例3
ポリエチレングリコール(PEG:分子量15000〜25000)10gをメタノールに溶解し、これにフッ化ナトリウム粉末10gを加え撹拌した後、メタノールを減圧溜去し、PEGで被覆されたフッ化ナトリウム18gを得た。
【0069】
実施例15〜28および比較例1〜6
下記の組成物AおよびBを調製し、さらに組成物A 100重量部に対し、実施例1〜14で製造した金属フッ化物をそれぞれ純金属フッ化物(被覆層を含まない)の配合量が5重量部となるように配合した組成物A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−10、A−11、A−12、A−13およびA−14を調製し、これらを用い金属に対する接着耐久性を測定した。
【0070】
組成物A
Bis−GMA 40重量部
トリエチレングリコールジメタクリレート 40
10−メタクリロイルオキシデシル
ジハイドロジェンホスフェート 20
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル
ホスフィンオキサイド 1
ベンゾイルパーオキサイド 2
シラン処理した石英粉末 300
【0071】
組成物B
Bis−GMA 40重量部
トリエチレングリコールジメタクリレート 30
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 30
2,4,6−トリイソプロピルベンゼン
スルフィン酸ナトリウム塩 1
N,N−ジエタノール−p−トルイジン 2
シラン処理した石英粉末 300
【0072】
ニッケル−クロム合金「ナウクロム(I)」(トーワ技研製)を#1000シリコン・カーバイド紙で平滑に研磨した後、この面に5mmの穴を開けた粘着テープを貼り付けて被着面とした。一方7mmφ×25mmのステンレス製丸棒を準備し、棒端面を粒径50μmのアルミナ砥粒でサンドブラストを行った。次いで組成物A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9、A−10、A−11、A−12、A−13またはA−14と組成物Bとを等量ずつ練和し、これを丸棒サンドブラスト面に盛り上げ、これを合金被着面に押し付けてた。歯科用可視光線照射器ライテルII(群馬牛尾電気(株)製)を用いて接着部周辺を20秒間光照射を行って接着し、1時間後に接着試験片を37℃水中に浸漬した。8個の試験片については37℃水中24時間浸漬後に接着強度を測定し、8個の試験片については37℃水中24時間浸漬後さらに70℃水中に1ヶ月間浸漬した後に接着強度を測定した。接着強度の測定は、万能試験機(インストロン製)を用い、クロス・ヘッドスピード2mm/minの条件で引張接着強度を測定した。各々の測定値を平均し、表2に測定結果を示した。
【0073】
フッ化物を配合してない組成物Aを用いた場合、組成物A 100重量部に対しポリシロキサンで被覆していないフッ化ナトリウムを5重量部配合した組成物A−15、ポリシロキサンで被覆していないフッ化カルシウムを5重量部配合した組成物A−16について、実施例15〜28と同様の方法で金属接着耐久性を測定し、それぞれ比較例1、2および3とし、結果を表2に併記した。
また、表面をポリシロキサンで被覆されておらずシランカップリング剤で表面処理されただけのフッ化物として参考例1のフッ化物、表面をポリシロキサンではなくポリメタクリレートで被覆されたフッ化物として参考例2のフッ化物、および表面をPEGで被覆された参考例3によるフッ化物を、それぞれ金属フッ化物の配合量が5重量部となるように組成物Aに配合した組成物A−17、A−18、およびA−19を調整し、実施例15〜28と同様の方法で金属接着耐久性を測定し、それぞれ比較例4、5および6とし、結果を表2に併記した。
【0074】
ポリシロキサンで被覆されていない金属フッ化物を配合した組成物、参考例のシランカップリング剤で表面処理しただけのフッ化物を配合した組成物、およびPEGで被覆したフッ化物を配合した組成物は、耐久性試験により、接着強度が著しく低下するのに対し、ポリシロキサンで金属フッ化物の表面を被覆したフッ化物を配合した組成物は、接着強度の低下が小さかった。
【0075】
実施例29〜32および比較例7〜9
人歯大臼歯を#1000シリコン・カーバイド紙で平滑に研磨した後、この面に5mmφの穴を開けた粘着テープを貼り付けて被着面とした。一方7mmφ×25mmステンレス製丸棒を準備し、棒端面を粒径50μmのアルミナ砥粒でサンドブラストを行った。被着面の部分に歯科用歯面処理材「パナビア21EDプライマー」((株)クラレ製)を塗布し、60秒放置後にエアーシリンジで乾燥させた。組成物A−1、A−2、A−5、またはA−13と組成物Bとを等量ずつ練和し、これを丸棒サンドブラスト面に盛り上げ、これを歯質被着面に押し付けた。接着部の周囲から歯科用光照射器「ライテルII」(群馬牛尾電気(株)製)を用いて接着部周辺を20秒間光照射を行って接着し、1時間後に接着試験片を37℃水中に浸漬した。8個の試験片については37℃水中24時間浸漬後に接着強度を測定した。また、残りの8個の試験片に対しては、4℃の冷水中と60℃の温水中に各々1分間ずつ浸漬する熱サイクルを4000回負荷した後に接着強度を測定した。接着強度の測定には、万能試験機(インストロン製)を用い、クロス・ヘッドスピード2mm/minの条件で引張接着強度を測定した。各々の測定値を平均し、表3に測定結果を示した。
【0076】
比較例1で用いたフッ化物を配合していない組成物A、比較例2で用いたフッ化ナトリウムを5重量部配合した組成物A−15、比較例4で用いたフッ化ナトリウムの表面をポリシロキサンで被覆せずシランカップリング剤で被覆した参考例1のフッ化物を配合した組成物A−17ついて、各々組成物Bと練和し、実施例29〜32と同様の方法で歯質に対する接着耐久性を測定した。それぞれ比較例7〜9とし、結果を表3に併記した。
【0077】
ポリシロキサンで被覆されていない金属フッ化物を配合した組成物、および参考例のフッ化物を配合した場合は、熱サイクル負荷により接着強度が著しく低下するのに対し、ポリシロキサンで被覆した金属フッ化物を配合した場合は、接着強度の低下は小さかった。
【0078】
実施例33〜37および比較例10〜12
下記の組成物CおよびDを調製し、さらに組成物A 100重量部に対し、実施例1、2、5、12および13で用いた組成物C−1、C−2、C−3、C−4およびC−5を調製し、これらの硬化物の曲げ強度の耐久性を測定した。
【0079】
組成物C
Bis−GMA 40重量部
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート 15
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 15
10−メタクリロイルオキシデシル
ジハイドロジェンホスフェート 30
カンファーキノン 1
ベンゾイルパーオキサイド 1
シラン処理した石英粉末 300
【0080】
組成物D
Bis−GMA 45重量部
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート 30
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 25
2,4,6−トリイソプロピルベンゼン
スルフィン酸ナトリウム塩 1
N,N−ジエタノール−p−トルイジン 2
p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル 1
シラン処理した石英粉末 300
【0081】
上記組成物C−1、C−2、C−3、C−4またはC−5と組成物Dとを等量ずつ練り合わせ、これらを長さ30mm、高さ2mm、幅2mmの金属に填入し、歯科用可視光線照射器ライテルII(群馬牛尾電気(株)製)で光照射を行い、硬化物を作製した。この試験片を37℃水中に浸漬し、8個の試験片については37℃水中24時間浸漬後に曲げ強度を測定し、8個の試験片に対しては37℃水中24時間浸漬後、さらに70℃水中に1ヶ月間浸漬した後に曲げ強度を測定した。曲げ強度の測定は、万能試験機(インストロン製)を用い、クロス・ヘッドスピード1mm/minの条件で測定した。各々の測定値を平均し、表4に測定結果を示した。
【0082】
フッ化物を配合していない組成物C、フッ化ナトリウムを配合した組成物C−6、表面をポリシロキサンで被覆せず、シランカップリング剤で表面処理した参考例1のフッ化物を配合した組成物C−7について、実施例33〜37と同様の方法で測定し、それぞれ比較例10〜12とし、結果を表4に併記した。
【0083】
ポリシロキサンで被覆されていない金属フッ化物を配合した組成物、および参考例のフッ化物を配合した組成物は、耐久性試験により曲げ強度が著しく低下するのに対し、ポリシロキサンで金属フッ化物の表面を被覆したフッ化物を配合した組成物は、曲げ強度の低下が小さかった。
【0084】
実施例38〜41および比較例13〜15
実施例15、19、20および27で用いた組成物A−1、A−5、A−6およびA−13と組成物Bとを等量練り合わせ、金型を用いて、直径2cm、厚さ1mmの円盤状硬化物を作製した。これらを37℃のリン酸緩衝液(pH7)4mlに浸漬し、円盤状硬化物からのフッ素イオンの溶出量を定量した。定量はフッ素イオン電極(オリオンリサーチ社製)を用いて行った。放出されたフッ素イオン量の測定結果を図1に示した。
比較例1で用いたフッ化物を配合してない組成物Aを用いた場合、比較例2で用いたフッ化ナトリウムを5重量部配合した組成物A−15、およびフッ化ナトリウムの表面をポリメタクリレートで被覆した参考例2のフッ化物を配合した組成物A−18について実施例38〜41と同様の方法で測定し、それぞれ比較例13〜15とし、図1に併記した。
【0085】
金属フッ化物をポリシロキサン化合物で被覆することにより、フッ素イオンの放出量は低下することはなく、むしろ増加することが認められた。一方、被覆剤をポリシロキサンではなく、ポリメタクリレートを用いた場合は、金属フッ化物を被覆することによりフッ素イオンの溶出量は減少した。
【0086】
【発明の効果】
フッ素放出性接着性組成物において、フッ素イオンの溶出に伴う機械的性質や接着性能の低下を実質的に解消し、さらに常温化学重合、光重合のいずれでも重合硬化することができる操作性に優れたデュアルキュア型のフッ素放出性接着性組成物が提供される。
本発明によるフッ素放出性接着性組成物は、例えば、歯科用接着剤、歯科用合着剤、フィッシャーシーラント等として使用できる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【図面の簡単な説明】
【図1】硬化物から放出されるフッ素イオン量を示すグラフである。
Claims (6)
- (a)表面にポリシロキサン被覆層を有する金属フッ化物、(b)オレフィン性基を有する重合性単量体、(c)酸性基を有する重合性単量体、(d)光重合開始剤、(e)有機過酸化物、(f)第3級アミン、及び(g)芳香族スルフィン酸またはその塩とを構成成分とし、少なくとも有機過酸化物(e)と第3級アミン(f)および芳香族スルフィン酸またはその塩(g)とを別包装にするように2分割以上に分割保存されるフッ素徐放性歯科用接着性組成物。
- 該金属フッ化物(a)が、周期律表第1族および第2族から選ばれる金属フッ化物である請求項1に記載のフッ素徐放性歯科用接着性組成物。
- 該金属フッ化物(a)が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ストロンチウム、およびフッ化カルシウムからなる群から選ばれる金属フッ化物である請求項2に記載のフッ素徐放性歯科用接着性組成物。
- 金属フッ化物の被覆層である該ポリシロキサンが、一般式
[(R1Ol(X)m]4−n−Si−R2n (I)
(R1は炭素数8以下の有機基、Xはハロゲン、R2は炭素数6以下の有機基、lおよびmは0または1でかつl+m=1を満たす整数、nは0または1の整数を表す。)で表されるシラン化合物を加水分解あるいは部分加水分解して得られるシラノール化合物を縮合して得られるポリシロキサンである、請求項1ないし3に記載のフッ素徐放性歯科用接着性組成物。 - 該光重合開始剤(d)がアシルホスフィンオキサイドであり、該有機過酸化物(e)がジアシルパーオキサイドである、請求項1ないし4に記載のフッ素徐放性歯科用接着性組成物。
- 該光重合開始剤(d)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、該有機過酸化物(e)がベンゾイルパーオキサイドである請求項1ないし5に記載のフッ素徐放性歯科用接着性組成物。
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