JP3638571B2 - 既設建物の支持荷重移載工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地震などにより基礎の地下杭の強度が低下した既設建物に対して補強する場合や、既設建物に対して新たに免震機構を付加する場合などに採用する既設建物の支持荷重移載工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物の支持荷重を移載する従来例としては、次のようなものがあった。
A.第1従来例(特開平10−152895号公報)
第1従来例では、大空間構造物の構築に際して、トラス形状の梁の柱脚の基部をPCケーブルで連結し、両柱脚のいずれか一方をピンローラとし、小型のジャッキによりPCケーブルを緊張できるように構成されている。
これにより、梁と柱脚を固定して床スラブのコンクリートを打設した後、打設コンクリートの強度が発現してから、短期荷重時のスラスト力を打ち消す緊張力をPCケーブルに与え、積雪などによる短期荷重時において、梁端と梁中央のモーメントが同一となるようにしてその分布を均一化できるように構成されている。
【0003】
B.第2従来例(特許第2700811号公報)
第2従来例では、基礎杭上で建て込んだ充填コンクリート鋼管柱に鉄骨梁を接合して鉄骨架構を構築し、その鉄骨架構の上に、充填コンクリート鋼管柱、鉄骨梁およびブレースによりトラス柱とトラス梁とを門形に組んだスーパーフレームを組み立て、そのトラス梁に所要のむくりを与えるようになっている。
そして、トラス梁の各節点に支持金物を取り付け、支持金物に垂設したPC鋼材と、鉄骨架構側のPC鋼材とをジャッキを介して結合し、PC鋼材に張力を付与してトラス梁のむくりを戻すようになっている。
これにより、トラス梁の上部に、PC鋼材によって付与した張力に見合った上部架構を、スーパーフレームの応力や形態を変化させずに構築できるように構成されている。
【0004】
C.第3従来例(特開平11−36608号公報)
第3従来例では、既存構造物の中央部の土砂を掘削して新設基礎を構築し、この新設基礎と既存構造物との間に、サポートジャッキを介装することにより、既存構造物を新設基礎に支持させる。次いで、その掘削部に隣接する区画に新設基礎を構築し、この新設基礎と既存構造物との間に、サポートジャッキを介装することにより、既存構造物を新設基礎に支持させる。これと並行して、先の掘削部で露出した杭の内、免震装置を介装すべき位置の杭を切断し、その箇所で、新設基礎と既存構造物との間に、免震装置を配設し、既存構造物を免震化するように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述従来例の場合、それぞれ次のような欠点があった。
a.第1従来例
この第1従来例による場合、積雪などによる短期荷重時に、梁にかかる荷重分布を均一化しようとするものであり、既設建物と梁とを連結したところで、既設建物の大きな荷重を梁から柱脚を介して支持杭などに移載できるものでは無く、既設建物の支持荷重の移載には適用できない欠点があった。
【0006】
b.第2従来例
この第2従来例は、支持金物側のPC鋼材と鉄骨架構側のPC鋼材とを連結したジャッキにより、PC鋼材に張力を付与し、基礎杭に対して、予め上部架構に見合った荷重をかけておき、上部架構の構築に伴い、その実際の荷重が増加していく分を、トラス梁のむくりを戻すことによって吸収し、トラス梁にかかる荷重の変化を無くそうとするものであり、既設建物の荷重の移載には適用できないものであった。
【0007】
c.第3従来例
この第3従来例の場合、建物の内部で掘削を必要とするとともに、新設基礎を構築しなければならず、その工事の間は既設建物を使用できない欠点があった。
【0008】
また、既設建物において、地震などにより基礎の地下杭が損壊するなど、地下杭の強度が低下した場合、従来一般に、建物を一部解体し、そこに新たに支持杭を立設し、その支持杭上に建物を構築しており、前述した第3従来例の場合と同様に、その工事の間は既設建物を使用できない欠点があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、簡単な構造で、建物の支持荷重を既設の地下杭から新たに立設した支持杭に移載させて、既設建物に対し、建物の使用を中断せずに補強や免震化を行えるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、簡単な操作で、建物の支持荷重を既設の地下杭から新たに立設した支持杭に移載させて、既設建物に対し、建物の使用を中断せずに補強や免震化を行えるようにすることを目的とし、請求項3に係る発明は、簡単な構成で支持荷重を移載できるようにすることを目的とし、請求項4に係る発明は、より良好に支持荷重を移載できるようにすることを目的とし、請求項5に係る発明は、安全に支持荷重を移載できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法は、上述のような目的を達成するために、
既設建物の建物立設域を挟んで支持杭を立設し、上弦材と下弦材とを斜材で一体連結して構成される鋼製のトラスの下弦材を地表面より上の床上に配置されるように設置し、前記トラスの長手方向両端それぞれに一体連結したトラス支持材の下端部を、前記既設建物の荷重を支持可能に前記支持杭に固定し、前記トラスと前記既設建物の柱との間に、建物荷重を支持する柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な伸縮手段を設け、前記トラス支持材の下端側どうしにわたって、付与張力を調節可能にケーブルを設け、前記伸縮手段による建物荷重の前記トラスへの移載に伴い、前記両トラス支持材の対向間隔が拡がる方向への応力に抗するように、前記ケーブルの張力を調節し、前記伸縮手段を伸張して建物荷重を前記柱から前記伸縮手段を介して前記トラスに移載するとともに、建物荷重を前記トラスから前記支持杭に移載することを特徴としている。
【0011】
(作用・効果)請求項1に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法の構成によれば、2階の床スラブなど、地表面より上の床上にトラスの下弦材を配置し、そのトラスを建物立設域を挟んで立設した支持杭に支持させ、既設の柱の軸力をトラスに受け止め可能に伸縮手段を設け、伸縮手段を伸縮することにより、トラスにかかる建物荷重が増加するに伴い、ケーブルの張力を増大させ、トラスの撓みを抑え、トラスを所定の姿勢に維持し、上部の建物荷重を伸縮手段を介してトラスに移載し、さらに、トラスから支持杭に移載できる。
これにより、既設建物の支持荷重を柱から伸縮手段およびトラスを介して支持杭に移載し、建物立設域内の地下杭にかかる建物荷重を低減するから、地震などで強度が低下した地下杭の補強を行う場合とか免震化する場合などにあって、既設建物を解体せずに、その既設建物を支持しながら、既設地下杭を補強したり、既設建物に対して免震機構を組み込むなど、建物の使用を中断せずに補強や免震化を行うことができ、実用上極めて有用である。
しかも、ケーブルの張力を調節してトラスから支持杭にかかるスラスト力を調整するから、支持杭に備えさせるスラスト力に耐える耐力を少なくでき、支持杭の構造を簡単にでき、簡単な構造で支持荷重を移載できる。
また、請求項2に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
既設建物の建物立設域を挟んで支持杭を立設し、上弦材と下弦材とを斜材で一体連結して構成される鋼製のトラスの下弦材を地表面より上の床上に配置されるように設置し、前記トラスの長手方向両端それぞれに一体連結したトラス支持材の下端部を、前記既設建物の荷重を支持可能に前記支持杭に固定し、前記トラスと前記既設建物の柱との間に、建物荷重を支持する柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な伸縮手段を設け、水平方向の荷重成分をも含めた前記既設建物の最大荷重を支持できる耐力を備えるように、前記支持杭の軸線方向が前記既設建物側を向く状態で、前記支持杭を傾斜姿勢に立設し、前記伸縮手段を伸張して建物荷重を前記柱から前記伸縮手段を介して前記トラスに移載するとともに、建物荷重を前記トラスから前記支持杭に移載することを特徴としている。
(作用・効果)請求項2に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法の構成によれば、2階の床スラブなど、地表面より上の床上にトラスの下弦材を配置し、そのトラスを建物立設域を挟んで立設した支持杭に支持させ、既設の柱の軸力をトラスに受け止め可能に伸縮手段を設け、伸縮手段を伸縮することにより、上部の建物荷重を伸縮手段を介してトラスに移載し、さらに、トラスから支持杭に移載し、支持杭で水平方向の荷重成分をも含めた既設建物の最大荷重を支持できる。
これにより、既設建物の支持荷重を柱から伸縮手段およびトラスを介して支持杭に移載し、建物立設域内の地下杭にかかる建物荷重を低減するから、地震などで強度が低下した地下杭の補強を行う場合とか免震化する場合などにあって、既設建物を解体せずに、その既設建物を支持しながら、既設地下杭を補強したり、既設建物に対して免震機構を組み込むなど、建物の使用を中断せずに補強や免震化を行うことができ、実用上極めて有用である。
しかも、支持杭にかかるスラスト力を調整するためにケーブルの張力を調整するといったことをせずに済み、簡単な操作で支持荷重を移載できる。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1または2に記載の既設建物の支持荷重移載工法において、
トラスと柱とを、前記トラスと前記柱との鉛直方向の相対移動を許容しながら前記トラスの水平方向の移動を規制する状態で連結する。
【0013】
(作用・効果)請求項3に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法の構成によれば、荷重の移載に伴うトラスと柱との鉛直方向での相対移動を許容しながら、トラスの水平方向の移動を規制し、トラスの水平方向での座屈を防止して所定の姿勢に維持することができる。
これにより、既設建物の柱を利用してトラスを所定の姿勢に維持するから、トラスを橋状に形成して単独で自立するような構成にせずに済み、トラスを簡単な構成にでき、簡単な構成で支持荷重を移載できる。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1、2、3のいずれかに記載の既設建物の支持荷重移載工法において、
トラスの長手方向に直交する方向の既設建物の外周近くに外周支持杭を立設し、前記トラスに柱軸力を受け止めさせる柱と前記既設建物の外周の柱とを連結部材を介して一体連結し、前記連結部材と前記外周支持杭との間に、建物荷重を支持する前記外周の柱の柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な外周伸縮手段を設け、前記外周伸縮手段を伸張して建物荷重を前記外周伸縮手段を介して前記外周支持杭にも移載させるように構成する。
【0015】
(作用・効果)請求項4に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法の構成によれば、トラスの長手方向に直交する方向の建物の外周近くに立設した外周支持杭に、外周伸縮手段を介して建物荷重を移載することができる。
これにより、建物立設域内の地下杭にかかる建物荷重を、トラスと支持杭とに加えて外周支持杭にも分散して移載支持させることができるから、地下杭にかかる建物荷重をより良好に低減できる。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1、2、3、4のいずれかに記載の既設建物の支持荷重移載工法において、
伸縮手段を間歇的に伸張し、移載すべき最終荷重の10%分づつ建物荷重を移載していくように構成する。
【0017】
(作用・効果)請求項5に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法の構成によれば、10回に分けて建物荷重を移載する。
これにより、建物荷重を支持杭に少しづつ移載するから、既設建物に急激に大きな力がかかることを回避するのみならず、1回移載するたびに既設建物への影響を確認するなど、良好な状態を確認しながら移載作業を進めることができ、安全に支持荷重を移載できる。
【0018】
(削除)
【0019】
(削除)
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る既設建物の支持荷重移載工法の第1実施例を示す図であり、(a)は支持杭立設工程を示す全体概略正面図、(b)は全体概略平面断面図である。
【0023】
以下、工程順に説明する。
(1)先ず、既設の地下杭1に支持するように立設された既設建物2の建物立設域Kを挟んで支持杭3を立設する。
【0024】
(2)次いで、2階部分の床スラブ(地表面より上の床)4a上にトラス構成材を搬入し、図2の(a)のトラス設置工程を示す全体概略正面図に示すように、上弦材5と下弦材6とを斜材(鉛直方向を向いた縦材も含む)7とで一体連結して2本の鋼製のトラス8を組み立て、下弦材6が2階部分の床スラブ4a上に配置されるようにトラス8を平行に設置し、トラス8の長手方向両端それぞれにトラス支持材9を一体連結し、そのトラス支持材9の下端部を支持杭3に固定する。
【0025】
(3)また、2階空間部分において、図3の要部の平面断面図、図4(図3のA―A線拡大断面図)および図5の側面図(図3のB―B線拡大断面図)に示すように、両トラス8それぞれについて、トラス8の上弦材5および下弦材6それぞれの柱10に近接する箇所で、柱10を外嵌するチャンネル状の枠体11をトラス8に取り付け、トラス8と柱10との鉛直方向での相対移動を許容しながら、トラス8の水平方向の移動を規制し、トラス8の水平方向での座屈を防止する。
【0026】
トラス8と柱10とが遠近する方向で柱10と対向するトラス8の側面と枠体11の内面それぞれに、テフロン樹脂等の摩擦低減材12が付設されるとともに、それに対向する柱10側にステンレス板13が付設され、トラス8と柱10それぞれの当接による損傷を防止できるように構成されている。
【0027】
(4)その後、図2の(b)の油圧ジャッキおよびケーブル付設工程を示す全体概略正面図、図6の拡大正面図、図7の要部の平面断面図、および、図8の要部の拡大正面図に示すように、3階空間の床スラブ4bに近い箇所において、隣り合って配置されるトラス8に近接する柱10にわたり、対向プレート14を柱10を挟むように設け、対向プレート14と柱10とを貫通ボルト15aとナット15bとによって一体的に連結する。
【0028】
(5)図8に示すように、対向プレート14の下方に位置させて、伸縮および固定自在な伸縮手段としての油圧ジャッキ16を上弦材5に設け、そのヘッド16aを対向プレート14の下面に当接させるようにする。
図8では、荷重移載作業の完了後の状態を示している。すなわち、油圧ジャッキ16の周囲に補強筋Hが配筋され、作業完了後にコンクリートCが打設され、油圧ジャッキ16を埋め殺しにした状態で既設建物2とトラス8とが一体化されている。
【0029】
(6)また、図9の要部の正面図、および、図10の要部の側面図に示すように、トラス支持材9の下端側どうしにわたって、付与張力を調節可能にケーブル17を設ける。ケーブル17の一端側とトラス支持材9との間に、伸縮手段18を付設し、ケーブル17に張力を付与してトラス8のスラスト力を処理できるように構成する。張力を付与した後の固定は、トラス支持材9とケーブルヘッド17aとの間にくさび19を嵌めることによって行うようになっている。図10において、9aは補強リブを示している。
伸縮手段18は、反力支持ブラケット18aと、ケーブルヘッド17aのネジ部17bに一体的に連結する引っ張り部材18bと、その引っ張り部材18bを把持して引っ張り力を付与するセンターホール形の油圧ジャッキ18cとから構成されている。
【0030】
(7)また、上記(1)〜(6)の工程と並行して(前後しても良い)、図1の(b)、および、図11の要部の側面図に示すように、支持杭3の対向する方向(トラスの長手方向)に直交する方向の既設建物2の一方の外周近くに外周支持杭20を立設する。
【0031】
(8)1階部分において、トラス8に柱軸力を受け止めさせる柱10と外周支持杭20を立設した側の既設建物2の外周の柱10aとを、アングル部材21と、センターホール形の油圧ジャッキ22aおよびケーブル22bを介装した引っ張り部材23とから成る連結部材24を介して連結し、連結部材24と外周支持杭20との間に、建物荷重を支持する外周の柱10aの柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な外周伸縮手段としての外周油圧ジャッキ25を設ける。
【0032】
(9)上記(1)〜(8)の工程の後、油圧ジャッキ16、22aおよび外周油圧ジャッキ25を、油圧計(図示せず)などで確認しながら、移載すべき最終荷重の10%分に対応する長さだけ伸張するとともに、油圧ジャッキ22aにより引っ張り部材23に引っ張り力を付与し、かつ、両トラス支持材9,9の対向間隔が拡がる方向への応力に抗する張力をケーブル17に付与するように油圧ジャッキ18cを作動する。
【0033】
この移載の際に、既設建物2への影響などを確認し、良好な状態を確認した後に上記(9)の工程を最終荷重を移載するまで繰返す。すなわち、10回に分けて、それぞれ良好な状態を確認しながら、既設建物2の建物荷重をトラス8から支持杭3へと移載する。
【0034】
このとき、図12の荷重移載の説明図に示すように、油圧ジャッキ25を伸張することにより、その力F1(外周支持杭20側に分散される力F2の鉛直成分)で外周の柱10aにかかる荷重F3の80%程度を支持する。
残りの20%の荷重F4が外周の柱10aから地下杭側にかかるが、油圧ジャッキ22により引っ張り部材23に引っ張り力F5を付与することにより、柱10に引っ張り力F5の鉛直成分となる下向きの力F6が働く。ところが、油圧ジャッキ16の作用により、柱10には、下向きの力F6よりも大きい上方への支持力F7が作用している。
これらの結果、外周の柱10aにかかる下向きの荷重F3の80%分を外周の柱10aから外周支持杭20に移載でき、残りの20%分をトラス8から支持杭3に移載できることとなる。
最終的に、トラス支持材9とケーブルヘッド17aとの間にくさび19を嵌めることによってケーブル17を固定し、移載作業の終了後には、油圧ジャッキ16および外周油圧ジャッキ25はコンクリートを打設して埋設する。
【0035】
上記構成により、地震等で地下杭1が損傷した既設建物2の荷重を新たに立設した支持杭3に移載し、既設建物2に対して補強することができる。その建物荷重の移載後に、地下杭1に対する補修等を行っても良い。
また、トラス支持材9と支持杭3との間に免震機構を組み込んでおき、建物荷重の移載後に、地下杭1と柱10との間に免震機構を組み込んでいくことによって免震化することができる。
【0036】
図13は、本発明に係る既設建物の支持荷重移載工法の第2実施例を示す一部省略正面図であり、第1実施例と異なるところは次の通りである。
すなわち、スラスト力を処理する荷重支持機構として、第1実施例の、ケーブル17による付与張力の調節により、両トラス支持材9,9の対向間隔が拡がる方向への応力に抗するようにする構成に代えて、水平方向の荷重成分をも含めた既設建物2の最大荷重を支持できる耐力を備えるように、支持杭31の軸線方向が既設建物2側を向く状態で、支持杭31を傾斜姿勢に立設して構成してある。他の構成は第1実施例と同じであり、同一図番を付すことによりその説明は省略する。
【0037】
上記実施例では、2本のトラス8,8それぞれにおいて、チャンネル状の枠体11を介して連結し、柱10と鉛直方向の相対移動を許容しながら水平方向の移動を規制し、トラス8を所定の姿勢に維持するように構成しているが、例えば、図14のトラスの変形例の斜視図に示すように、上弦材5および下弦材6を連結材41で連結することにより2本のトラス8,8を一体的に連結し、一方のトラス8だけを柱10にチャンネル状の枠体11を介して連結するだけで済むようにして、構成を簡略化するようにしても良い。
【0038】
上記実施例では、支持杭3の対向する方向(トラスの長手方向)に直交する方向の既設建物2の一方の外周近くに外周支持杭20を立設し、その外周支持杭20にも建物荷重を移載するように構成しているが、本発明としては、このような構成を備えないものでも良い。
【0039】
本発明としては、例えば、油圧ジャッキ16と対向プレート14との間、および、外周油圧ジャッキ25と連結部材24との間それぞれにロードセルなどの荷重測定手段を設け、その荷重測定手段にマイクロコンピュータを接続するとともに、マイクロコンピュータにケーブル17伸張用の油圧ジャッキ18の駆動系を接続し、移載すべき最終荷重の10%分などの設定荷重の増加を荷重測定手段が測定するに伴い、それに対応する張力を付与するように油圧ジャッキ18を自動的に作動するように構成しても良い。上記設定荷重としては、最終荷重の20%分など、状況に応じて適宜設定すればよいものである。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法によれば、既設建物の支持荷重を柱から伸縮手段およびトラスを介して支持杭に移載し、建物立設域内の地下杭にかかる建物荷重を低減するから、地震などで強度が低下した地下杭の補強を行う場合とか免震化する場合などにあって、既設建物を解体せずに、その既設建物を支持しながら、既設地下杭を補強したり、既設建物に対して免震機構を組み込むなど、建物の使用を中断せずに補強や免震化を行うことができ、実用上極めて有用である。
しかも、ケーブルの張力を調節してトラスから支持杭にかかるスラスト力を調整するから、支持杭に備えさせるスラスト力に耐える耐力を少なくでき、支持杭の構造を簡単にでき、簡単な構造で支持荷重を移載できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る既設建物の支持荷重移載工法の第1実施例を示す図であり、(a)は支持杭立設工程を示す全体概略正面図、(b)は全体概略平面断面図である。
【図2】 (a)はトラス設置工程を示す全体概略正面図、(b)は油圧ジャッキおよびケーブル付設工程を示す全体概略正面図である。
【図3】 要部の平面断面図である。
【図4】 図3のA―A線拡大断面図である。
【図5】 図3のB―B線拡大断面図である。
【図6】 拡大正面図である。
【図7】 要部の平面断面図である。
【図8】 要部の拡大正面図である。
【図9】 要部の正面図である。
【図10】 要部の側面図である。
【図11】 要部の側面図である。
【図12】 荷重移載の説明図である。
【図13】 本発明に係る既設建物の支持荷重移載工法の第2実施例を示す一部省略正面図である。
【図14】 トラスの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
2…既設建物
3…支持杭
5…上弦材
6…下弦材
7…斜材
8…トラス
9…トラス支持材
10…柱
16…油圧ジャッキ(伸縮手段)
17…ケーブル
18…伸縮手段
20…外周支持杭
24…連結部材
25…外周油圧ジャッキ(外周伸縮手段)
31…支持杭
Claims (5)
- 既設建物の建物立設域を挟んで支持杭を立設し、上弦材と下弦材とを斜材で一体連結して構成される鋼製のトラスの下弦材を地表面より上の床上に配置されるように設置し、前記トラスの長手方向両端それぞれに一体連結したトラス支持材の下端部を、前記既設建物の荷重を支持可能に前記支持杭に固定し、前記トラスと前記既設建物の柱との間に、建物荷重を支持する柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な伸縮手段を設け、前記トラス支持材の下端側どうしにわたって、付与張力を調節可能にケーブルを設け、前記伸縮手段による建物荷重の前記トラスへの移載に伴い、前記両トラス支持材の対向間隔が拡がる方向への応力に抗するように、前記ケーブルの張力を調節し、前記伸縮手段を伸張して建物荷重を前記柱から前記伸縮手段を介して前記トラスに移載するとともに、建物荷重を前記トラスから前記支持杭に移載することを特徴とする既設建物の支持荷重移載工法。
- 既設建物の建物立設域を挟んで支持杭を立設し、上弦材と下弦材とを斜材で一体連結して構成される鋼製のトラスの下弦材を地表面より上の床上に配置されるように設置し、前記トラスの長手方向両端それぞれに一体連結したトラス支持材の下端部を、前記既設建物の荷重を支持可能に前記支持杭に固定し、前記トラスと前記既設建物の柱との間に、建物荷重を支持する柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な伸縮手段を設け、水平方向の荷重成分をも含めた前記既設建物の最大荷重を支持できる耐力を備えるように、前記支持杭の軸線方向が前記既設建物側を向く状態で、前記支持杭を傾斜姿勢に立設し、前記伸縮手段を伸張して建物荷重を前記柱から前記伸縮手段を介して前記トラスに移載するとともに、建物荷重を前記トラスから前記支持杭に移載することを特徴とする既設建物の支持荷重移載工法。
- 請求項1または2に記載の既設建物の支持荷重移載工法において、
トラスと柱とを、前記トラスと前記柱との鉛直方向の相対移動を許容しながら前記トラスの水平方向の移動を規制する状態で連結してある既設建物の支持荷重移載工法。 - 請求項1,2,3のいずれかに記載の既設建物の支持荷重移載工法において、
トラスの長手方向に直交する方向の既設建物の外周近くに外周支持杭を立設し、前記トラスに柱軸力を受け止めさせる柱と前記既設建物の外周の柱とを連結部材を介して一体連結し、前記連結部材と前記外周支持杭との間に、建物荷重を支持する前記外周の柱の柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な外周伸縮手段を設け、前記外周伸縮手段を伸張して建物荷重を前記外周伸縮手段を介して前記外周支持杭にも移載させるものである既設建物の支持荷重移載工法。 - 請求項1、2、3、4のいずれかに記載の既設建物の支持荷重移載工法において、
伸縮手段を間歇的に伸張し、移載すべき最終荷重の10%分づつ建物荷重を移載していくものである既設建物の支持荷重移載工法。
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