JP2003336402A - 既設建物の支持荷重移載工法 - Google Patents

既設建物の支持荷重移載工法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 既設建物の支持荷重を新たに立設した支持杭
に移載させて、既設建物に対し、建物の使用を中断せず
に補強や免震化を行えるようにする。 【解決手段】 既設建物2の建物立設域を挟んで支持杭
3を立設する。次いで、2階部分の床スラブ4a上で上
弦材5と下弦材6とを斜材7とで一体連結して2本の鋼
製のトラス8を組み立て、下弦材6が2階部分の床スラ
ブ4a上に配置されるようにトラス8を設置し、トラス
8の長手方向両端に一体連結したトラス支持材9の下端
部を支持杭3に固定する。その後、トラス8に近接する
柱10に設けた対向プレート14の下方に位置させて、
油圧ジャッキ16を上弦材5に設ける。トラス支持材9
の下端側どうしにわたって、付与張力を調節可能にケー
ブル17を設け、油圧ジャッキ16の伸張とケーブル1
7への張力付与とにより、建物荷重を柱10からトラス
8を介して支持杭3に移載する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地震などにより基
礎の地下杭の強度が低下した既設建物に対して補強する
場合や、既設建物に対して新たに免震機構を付加する場
合などに採用する既設建物の支持荷重移載工法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】建物の支持荷重を移載する従来例として
は、次のようなものがあった。 A.第1従来例(特開平10−152895号公報) 第1従来例では、大空間構造物の構築に際して、トラス
形状の梁の柱脚の基部をPCケーブルで連結し、両柱脚
のいずれか一方をピンローラとし、小型のジャッキによ
りPCケーブルを緊張できるように構成されている。こ
れにより、梁と柱脚を固定して床スラブのコンクリート
を打設した後、打設コンクリートの強度が発現してか
ら、短期荷重時のスラスト力を打ち消す緊張力をPCケ
ーブルに与え、積雪などによる短期荷重時において、梁
端と梁中央のモーメントが同一となるようにしてその分
布を均一化できるように構成されている。
【0003】B.第2従来例(特許第2700811号
公報) 第2従来例では、基礎杭上で建て込んだ充填コンクリー
ト鋼管柱に鉄骨梁を接合して鉄骨架構を構築し、その鉄
骨架構の上に、充填コンクリート鋼管柱、鉄骨梁および
ブレースによりトラス柱とトラス梁とを門形に組んだス
ーパーフレームを組み立て、そのトラス梁に所要のむく
りを与えるようになっている。そして、トラス梁の各節
点に支持金物を取り付け、支持金物に垂設したPC鋼材
と、鉄骨架構側のPC鋼材とをジャッキを介して結合
し、PC鋼材に張力を付与してトラス梁のむくりを戻す
ようになっている。これにより、トラス梁の上部に、P
C鋼材によって付与した張力に見合った上部架構を、ス
ーパーフレームの応力や形態を変化させずに構築できる
ように構成されている。
【0004】C.第3従来例(特開平11−36608
号公報) 第3従来例では、既存構造物の中央部の土砂を掘削して
新設基礎を構築し、この新設基礎と既存構造物との間
に、サポートジャッキを介装することにより、既存構造
物を新設基礎に支持させる。次いで、その掘削部に隣接
する区画に新設基礎を構築し、この新設基礎と既存構造
物との間に、サポートジャッキを介装することにより、
既存構造物を新設基礎に支持させる。これと並行して、
先の掘削部で露出した杭の内、免震装置を介装すべき位
置の杭を切断し、その箇所で、新設基礎と既存構造物と
の間に、免震装置を配設し、既存構造物を免震化するよ
うに構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述従
来例の場合、それぞれ次のような欠点があった。 a.第1従来例 この第1従来例による場合、積雪などによる短期荷重時
に、梁にかかる荷重分布を均一化しようとするものであ
り、既設建物と梁とを連結したところで、既設建物の大
きな荷重を梁から柱脚を介して支持杭などに移載できる
ものでは無く、既設建物の支持荷重の移載には適用でき
ない欠点があった。
【0006】b.第2従来例 この第2従来例は、支持金物側のPC鋼材と鉄骨架構側
のPC鋼材とを連結したジャッキにより、PC鋼材に張
力を付与し、基礎杭に対して、予め上部架構に見合った
荷重をかけておき、上部架構の構築に伴い、その実際の
荷重が増加していく分を、トラス梁のむくりを戻すこと
によって吸収し、トラス梁にかかる荷重の変化を無くそ
うとするものであり、既設建物の荷重の移載には適用で
きないものであった。
【0007】c.第3従来例 この第3従来例の場合、建物の内部で掘削を必要とする
とともに、新設基礎を構築しなければならず、その工事
の間は既設建物を使用できない欠点があった。
【0008】また、既設建物において、地震などにより
基礎の地下杭が損壊するなど、地下杭の強度が低下した
場合、従来一般に、建物を一部解体し、そこに新たに支
持杭を立設し、その支持杭上に建物を構築しており、前
述した第3従来例の場合と同様に、その工事の間は既設
建物を使用できない欠点があった。
【0009】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、請求項1に係る発明は、建物の支持荷
重を既設の地下杭から新たに立設した支持杭に移載させ
て、既設建物に対し、建物の使用を中断せずに補強や免
震化を行えるようにすることを目的とし、請求項2に係
る発明は、簡単な構成で支持荷重を移載できるようにす
ることを目的とし、請求項3に係る発明は、より良好に
支持荷重を移載できるようにすることを目的とし、請求
項4に係る発明は、安全に支持荷重を移載できるように
することを目的とし、請求項5に係る発明は、簡単な構
造で支持荷重を移載できるようにすることを目的とし、
請求項6に係る発明は、簡単な操作で支持荷重を移載で
きるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明の既
設建物の支持荷重移載工法は、上述のような目的を達成
するために、既設建物の建物立設域を挟んで支持杭を立
設し、上弦材と下弦材とを斜材で一体連結して構成され
る鋼製のトラスの下弦材を地表面より上の床上に配置さ
れるように設置し、前記トラスの長手方向両端それぞれ
に一体連結したトラス支持材の下端部を、前記既設建物
の荷重を支持可能な荷重支持機構を介して前記支持杭に
固定し、前記トラスと前記既設建物の柱との間に、建物
荷重を支持する柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固
定自在な伸縮手段を設け、前記伸縮手段を伸張して建物
荷重を前記柱から前記伸縮手段を介して前記トラスに移
載するとともに、建物荷重を前記トラスから前記支持杭
に移載することを特徴としている。
【0011】(作用・効果)請求項1に係る発明の既設
建物の支持荷重移載工法の構成によれば、2階の床スラ
ブなど、地表面より上の床上にトラスの下弦材を配置
し、そのトラスを建物立設域を挟んで立設した支持杭に
支持させ、既設の柱の軸力をトラスに受け止め可能に伸
縮手段を設け、伸縮手段を伸縮することにより、上部の
建物荷重を伸縮手段を介してトラスに移載し、さらに、
トラスから支持杭に移載できる。これにより、既設建物
の支持荷重を柱から伸縮手段およびトラスを介して支持
杭に移載し、建物立設域内の地下杭にかかる建物荷重を
低減するから、地震などで強度が低下した地下杭の補強
を行う場合とか免震化する場合などにあって、既設建物
を解体せずに、その既設建物を支持しながら、既設地下
杭を補強したり、既設建物に対して免震機構を組み込む
など、建物の使用を中断せずに補強や免震化を行うこと
ができ、実用上極めて有用である。
【0012】また、請求項2に係る発明は、前述のよう
な目的を達成するために、請求項1に記載の既設建物の
支持荷重移載工法において、トラスと柱とを、前記トラ
スと前記柱との鉛直方向の相対移動を許容しながら前記
トラスの水平方向の移動を規制する状態で連結する。
【0013】(作用・効果)請求項2に係る発明の既設
建物の支持荷重移載工法の構成によれば、荷重の移載に
伴うトラスと柱との鉛直方向での相対移動を許容しなが
ら、トラスの水平方向の移動を規制し、トラスの水平方
向での座屈を防止して所定の姿勢に維持することができ
る。これにより、既設建物の柱を利用してトラスを所定
の姿勢に維持するから、トラスを橋状に形成して単独で
自立するような構成にせずに済み、トラスを簡単な構成
にでき、簡単な構成で支持荷重を移載できる。
【0014】また、請求項3に係る発明は、前述のよう
な目的を達成するために、請求項1または2に記載の既
設建物の支持荷重移載工法において、トラスの長手方向
に直交する方向の既設建物の外周近くに外周支持杭を立
設し、前記トラスに柱軸力を受け止めさせる柱と前記既
設建物の外周の柱とを連結部材を介して一体連結し、前
記連結部材と前記外周支持杭との間に、建物荷重を支持
する前記外周の柱の柱軸力を受け止め可能に、伸縮およ
び固定自在な外周伸縮手段を設け、前記外周伸縮手段を
伸張して建物荷重を前記外周伸縮手段を介して前記外周
支持杭にも移載させるように構成する。
【0015】(作用・効果)請求項3に係る発明の既設
建物の支持荷重移載工法の構成によれば、トラスの長手
方向に直交する方向の建物の外周近くに立設した外周支
持杭に、外周伸縮手段を介して建物荷重を移載すること
ができる。これにより、建物立設域内の地下杭にかかる
建物荷重を、トラスと支持杭とに加えて外周支持杭にも
分散して移載支持させることができるから、地下杭にか
かる建物荷重をより良好に低減できる。
【0016】また、請求項4に係る発明は、前述のよう
な目的を達成するために、請求項1、2、3のいずれか
に記載の既設建物の支持荷重移載工法において、伸縮手
段を間歇的に伸張し、移載すべき最終荷重の10%分づ
つ建物荷重を移載していくように構成する。
【0017】(作用・効果)請求項4に係る発明の既設
建物の支持荷重移載工法の構成によれば、10回に分け
て建物荷重を移載する。これにより、建物荷重を支持杭
に少しづつ移載するから、既設建物に急激に大きな力が
かかることを回避するのみならず、1回移載するたびに
既設建物への影響を確認するなど、良好な状態を確認し
ながら移載作業を進めることができ、安全に支持荷重を
移載できる。
【0018】また、請求項5に係る発明は、前述のよう
な目的を達成するために、請求項1、2、3、4のいず
れかに記載の既設建物の支持荷重移載工法において、荷
重支持機構を、トラス支持材の下端側どうしにわたっ
て、付与張力を調節可能にケーブルを設け、伸縮手段に
よる建物荷重のトラスへの移載に伴い、前記両トラス支
持材の対向間隔が拡がる方向への応力に抗するように、
前記ケーブルの張力を調節するように構成する。
【0019】(作用・効果)請求項5に係る発明の既設
建物の支持荷重移載工法の構成によれば、伸縮手段の伸
縮によりトラスにかかる建物荷重が増加するに伴い、ケ
ーブルの張力を増大させ、トラスの撓みを抑え、トラス
を所定の姿勢に維持することができる。これにより、ケ
ーブルの張力を調節してトラスから支持杭にかかるスラ
スト力を調整するから、支持杭に備えさせるスラスト力
に耐える耐力を少なくでき、支持杭の構造を簡単にで
き、簡単な構造で支持荷重を移載できる。
【0020】また、請求項6に係る発明は、前述のよう
な目的を達成するために、請求項1、2、3、4のいず
れかに記載の既設建物の支持荷重移載工法において、荷
重支持機構を、水平方向の荷重成分をも含めた既設建物
の最大荷重を支持できる耐力を備えるように、支持杭の
軸線方向が前記既設建物側を向く状態で、前記支持杭を
傾斜姿勢に立設して構成する。
【0021】(作用・効果)請求項6に係る発明の既設
建物の支持荷重移載工法の構成によれば、支持杭で水平
方向の荷重成分をも含めた既設建物の最大荷重を支持で
きる。これにより、支持杭にかかるスラスト力を調整す
るためにケーブルの張力を調整するといったことをせず
に済み、簡単な操作で支持荷重を移載できる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例を図面に基
づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る既設建物
の支持荷重移載工法の第1実施例を示す図であり、
(a)は支持杭立設工程を示す全体概略正面図、(b)
は全体概略平面断面図である。
【0023】以下、工程順に説明する。 (1)先ず、既設の地下杭1に支持するように立設され
た既設建物2の建物立設域Kを挟んで支持杭3を立設す
る。
【0024】(2)次いで、2階部分の床スラブ(地表
面より上の床)4a上にトラス構成材を搬入し、図2の
(a)のトラス設置工程を示す全体概略正面図に示すよ
うに、上弦材5と下弦材6とを斜材(鉛直方向を向いた
縦材も含む)7とで一体連結して2本の鋼製のトラス8
を組み立て、下弦材6が2階部分の床スラブ4a上に配
置されるようにトラス8を平行に設置し、トラス8の長
手方向両端それぞれにトラス支持材9を一体連結し、そ
のトラス支持材9の下端部を支持杭3に固定する。
【0025】(3)また、2階空間部分において、図3
の要部の平面断面図、図4(図3のA―A線拡大断面図)
および図5の側面図(図3のB―B線拡大断面図)に示す
ように、両トラス8それぞれについて、トラス8の上弦
材5および下弦材6それぞれの柱10に近接する箇所
で、柱10を外嵌するチャンネル状の枠体11をトラス
8に取り付け、トラス8と柱10との鉛直方向での相対
移動を許容しながら、トラス8の水平方向の移動を規制
し、トラス8の水平方向での座屈を防止する。
【0026】トラス8と柱10とが遠近する方向で柱1
0と対向するトラス8の側面と枠体11の内面それぞれ
に、テフロン(登録商標)樹脂等の摩擦低減材12が付
設されるとともに、それに対向する柱10側にステンレ
ス板13が付設され、トラス8と柱10それぞれの当接
による損傷を防止できるように構成されている。
【0027】(4)その後、図2の(b)の油圧ジャッ
キおよびケーブル付設工程を示す全体概略正面図、図6
の拡大正面図、図7の要部の平面断面図、および、図8
の要部の拡大正面図に示すように、3階空間の床スラブ
4bに近い箇所において、隣り合って配置されるトラス
8に近接する柱10にわたり、対向プレート14を柱1
0を挟むように設け、対向プレート14と柱10とを貫
通ボルト15aとナット15bとによって一体的に連結
する。
【0028】(5)図8に示すように、対向プレート1
4の下方に位置させて、伸縮および固定自在な伸縮手段
としての油圧ジャッキ16を上弦材5に設け、そのヘッ
ド16aを対向プレート14の下面に当接させるように
する。図8では、荷重移載作業の完了後の状態を示して
いる。すなわち、油圧ジャッキ16の周囲に補強筋Hが
配筋され、作業完了後にコンクリートCが打設され、油
圧ジャッキ16を埋め殺しにした状態で既設建物2とト
ラス8とが一体化されている。
【0029】(6)また、図9の要部の正面図、およ
び、図10の要部の側面図に示すように、トラス支持材
9の下端側どうしにわたって、付与張力を調節可能にケ
ーブル17を設ける。ケーブル17の一端側とトラス支
持材9との間に、伸縮手段18を付設し、ケーブル17
に張力を付与してトラス8のスラスト力を処理できるよ
うに構成する。張力を付与した後の固定は、トラス支持
材9とケーブルヘッド17aとの間にくさび19を嵌め
ることによって行うようになっている。図10におい
て、9aは補強リブを示している。伸縮手段18は、反
力支持ブラケット18aと、ケーブルヘッド17aのネ
ジ部17bに一体的に連結する引っ張り部材18bと、
その引っ張り部材18bを把持して引っ張り力を付与す
るセンターホール形の油圧ジャッキ18cとから構成さ
れている。
【0030】(7)また、上記(1)〜(6)の工程と
並行して(前後しても良い)、図1の(b)、および、
図11の要部の側面図に示すように、支持杭3の対向す
る方向(トラスの長手方向)に直交する方向の既設建物
2の一方の外周近くに外周支持杭20を立設する。
【0031】(8)1階部分において、トラス8に柱軸
力を受け止めさせる柱10と外周支持杭20を立設した
側の既設建物2の外周の柱10aとを、アングル部材2
1と、センターホール形の油圧ジャッキ22aおよびケ
ーブル22bを介装した引っ張り部材23とから成る連
結部材24を介して連結し、連結部材24と外周支持杭
20との間に、建物荷重を支持する外周の柱10aの柱
軸力を受け止め可能に、伸縮および固定自在な外周伸縮
手段としての外周油圧ジャッキ25を設ける。
【0032】(9)上記(1)〜(8)の工程の後、油
圧ジャッキ16、22aおよび外周油圧ジャッキ25
を、油圧計(図示せず)などで確認しながら、移載すべ
き最終荷重の10%分に対応する長さだけ伸張するとと
もに、油圧ジャッキ22aにより引っ張り部材23に引
っ張り力を付与し、かつ、両トラス支持材9,9の対向
間隔が拡がる方向への応力に抗する張力をケーブル17
に付与するように油圧ジャッキ18cを作動する。
【0033】この移載の際に、既設建物2への影響など
を確認し、良好な状態を確認した後に上記(9)の工程
を最終荷重を移載するまで繰返す。すなわち、10回に
分けて、それぞれ良好な状態を確認しながら、既設建物
2の建物荷重をトラス8から支持杭3へと移載する。
【0034】このとき、図12の荷重移載の説明図に示
すように、油圧ジャッキ25を伸張することにより、そ
の力F1(外周支持杭20側に分散される力F2の鉛直
成分)で外周の柱10aにかかる荷重F3の80%程度
を支持する。残りの20%の荷重F4が外周の柱10a
から地下杭側にかかるが、油圧ジャッキ22により引っ
張り部材23に引っ張り力F5を付与することにより、
柱10に引っ張り力F5の鉛直成分となる下向きの力F
6が働く。ところが、油圧ジャッキ16の作用により、
柱10には、下向きの力F6よりも大きい上方への支持
力F7が作用している。これらの結果、外周の柱10a
にかかる下向きの荷重F3の80%分を外周の柱10a
から外周支持杭20に移載でき、残りの20%分をトラ
ス8から支持杭3に移載できることとなる。最終的に、
トラス支持材9とケーブルヘッド17aとの間にくさび
19を嵌めることによってケーブル17を固定し、移載
作業の終了後には、油圧ジャッキ16および外周油圧ジ
ャッキ25はコンクリートを打設して埋設する。
【0035】上記構成により、地震等で地下杭1が損傷
した既設建物2の荷重を新たに立設した支持杭3に移載
し、既設建物2に対して補強することができる。その建
物荷重の移載後に、地下杭1に対する補修等を行っても
良い。また、トラス支持材9と支持杭3との間に免震機
構を組み込んでおき、建物荷重の移載後に、地下杭1と
柱10との間に免震機構を組み込んでいくことによって
免震化することができる。
【0036】図13は、本発明に係る既設建物の支持荷
重移載工法の第2実施例を示す一部省略正面図であり、
第1実施例と異なるところは次の通りである。すなわ
ち、スラスト力を処理する荷重支持機構として、第1実
施例の、ケーブル17による付与張力の調節により、両
トラス支持材9,9の対向間隔が拡がる方向への応力に
抗するようにする構成に代えて、水平方向の荷重成分を
も含めた既設建物2の最大荷重を支持できる耐力を備え
るように、支持杭31の軸線方向が既設建物2側を向く
状態で、支持杭31を傾斜姿勢に立設して構成してあ
る。他の構成は第1実施例と同じであり、同一図番を付
すことによりその説明は省略する。
【0037】上記実施例では、2本のトラス8,8それ
ぞれにおいて、チャンネル状の枠体11を介して連結
し、柱10と鉛直方向の相対移動を許容しながら水平方
向の移動を規制し、トラス8を所定の姿勢に維持するよ
うに構成しているが、例えば、図14のトラスの変形例
の斜視図に示すように、上弦材5および下弦材6を連結
材41で連結することにより2本のトラス8,8を一体
的に連結し、一方のトラス8だけを柱10にチャンネル
状の枠体11を介して連結するだけで済むようにして、
構成を簡略化するようにしても良い。
【0038】上記実施例では、支持杭3の対向する方向
(トラスの長手方向)に直交する方向の既設建物2の一
方の外周近くに外周支持杭20を立設し、その外周支持
杭20にも建物荷重を移載するように構成しているが、
本発明としては、このような構成を備えないものでも良
い。
【0039】本発明としては、例えば、油圧ジャッキ1
6と対向プレート14との間、および、外周油圧ジャッ
キ25と連結部材24との間それぞれにロードセルなど
の荷重測定手段を設け、その荷重測定手段にマイクロコ
ンピュータを接続するとともに、マイクロコンピュータ
にケーブル17伸張用の油圧ジャッキ18の駆動系を接
続し、移載すべき最終荷重の10%分などの設定荷重の
増加を荷重測定手段が測定するに伴い、それに対応する
張力を付与するように油圧ジャッキ18を自動的に作動
するように構成しても良い。上記設定荷重としては、最
終荷重の20%分など、状況に応じて適宜設定すればよ
いものである。
【0040】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1に係る発明の既設建物の支持荷重移載工法によれば、
既設建物の支持荷重を柱から伸縮手段およびトラスを介
して支持杭に移載し、建物立設域内の地下杭にかかる建
物荷重を低減するから、地震などで強度が低下した地下
杭の補強を行う場合とか免震化する場合などにあって、
既設建物を解体せずに、その既設建物を支持しながら、
既設地下杭を補強したり、既設建物に対して免震機構を
組み込むなど、建物の使用を中断せずに補強や免震化を
行うことができ、実用上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る既設建物の支持荷重移載工法の第
1実施例を示す図であり、(a)は支持杭立設工程を示
す全体概略正面図、(b)は全体概略平面断面図であ
る。
【図2】(a)はトラス設置工程を示す全体概略正面
図、(b)は油圧ジャッキおよびケーブル付設工程を示
す全体概略正面図である。
【図3】要部の平面断面図である。
【図4】図3のA―A線拡大断面図である。
【図5】図3のB―B線拡大断面図である。
【図6】拡大正面図である。
【図7】要部の平面断面図である。
【図8】要部の拡大正面図である。
【図9】要部の正面図である。
【図10】要部の側面図である。
【図11】要部の側面図である。
【図12】荷重移載の説明図である。
【図13】本発明に係る既設建物の支持荷重移載工法の
第2実施例を示す一部省略正面図である。
【図14】トラスの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
2…既設建物 3…支持杭 5…上弦材 6…下弦材 7…斜材 8…トラス 9…トラス支持材 10…柱 16…油圧ジャッキ(伸縮手段) 17…ケーブル 18…伸縮手段 20…外周支持杭 24…連結部材 25…外周油圧ジャッキ(外周伸縮手段) 31…支持杭
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊池 公男 大阪市中央区本町四丁目1番13号 株式会 社竹中工務店大阪本店内 Fターム(参考) 2E176 AA01 AA07 BB00

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】既設建物の建物立設域を挟んで支持杭を立
    設し、上弦材と下弦材とを斜材で一体連結して構成され
    る鋼製のトラスの下弦材を地表面より上の床上に配置さ
    れるように設置し、前記トラスの長手方向両端それぞれ
    に一体連結したトラス支持材の下端部を、前記既設建物
    の荷重を支持可能な荷重支持機構を介して前記支持杭に
    固定し、前記トラスと前記既設建物の柱との間に、建物
    荷重を支持する柱軸力を受け止め可能に、伸縮および固
    定自在な伸縮手段を設け、前記伸縮手段を伸張して建物
    荷重を前記柱から前記伸縮手段を介して前記トラスに移
    載するとともに、建物荷重を前記トラスから前記支持杭
    に移載することを特徴とする既設建物の支持荷重移載工
    法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の既設建物の支持荷重移載
    工法において、トラスと柱とを、前記トラスと前記柱と
    の鉛直方向の相対移動を許容しながら前記トラスの水平
    方向の移動を規制する状態で連結してある既設建物の支
    持荷重移載工法。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の既設建物の支持
    荷重移載工法において、 トラスの長手方向に直交する方向の既設建物の外周近く
    に外周支持杭を立設し、前記トラスに柱軸力を受け止め
    させる柱と前記既設建物の外周の柱とを連結部材を介し
    て一体連結し、前記連結部材と前記外周支持杭との間
    に、建物荷重を支持する前記外周の柱の柱軸力を受け止
    め可能に、伸縮および固定自在な外周伸縮手段を設け、
    前記外周伸縮手段を伸張して建物荷重を前記外周伸縮手
    段を介して前記外周支持杭にも移載させるものである既
    設建物の支持荷重移載工法。
  4. 【請求項4】請求項1、2、3のいずれかに記載の既設
    建物の支持荷重移載工法において、 伸縮手段を間歇的に伸張し、移載すべき最終荷重の10
    %分づつ建物荷重を移載していくものである既設建物の
    支持荷重移載工法。
  5. 【請求項5】請求項1、2、3、4のいずれかに記載の
    既設建物の支持荷重移載工法において、 荷重支持機構を、トラス支持材の下端側どうしにわたっ
    て、付与張力を調節可能にケーブルを設け、伸縮手段に
    よる建物荷重のトラスへの移載に伴い、前記両トラス支
    持材の対向間隔が拡がる方向への応力に抗するように、
    前記ケーブルの張力を調節するように構成してある既設
    建物の支持荷重移載工法。
  6. 【請求項6】請求項1、2、3、4のいずれかに記載の
    既設建物の支持荷重移載工法において、 荷重支持機構を、水平方向の荷重成分をも含めた既設建
    物の最大荷重を支持できる耐力を備えるように、支持杭
    の軸線方向が前記既設建物側を向く状態で、前記支持杭
    を傾斜姿勢に立設して構成してある既設建物の支持荷重
    移載工法。
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