JP3903315B2 - 既存外壁構造体の保存方法 - Google Patents

既存外壁構造体の保存方法

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JP3903315B2 JP2002332188A JP2002332188A JP3903315B2 JP 3903315 B2 JP3903315 B2 JP 3903315B2 JP 2002332188 A JP2002332188 A JP 2002332188A JP 2002332188 A JP2002332188 A JP 2002332188A JP 3903315 B2 JP3903315 B2 JP 3903315B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存構造物を構成する既存外壁構造体の一部を、部分的に保存する既存構造物の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、近代的な名建築物は、老朽化の進行や耐震性の問題等を理由に取り壊しを余儀なくされる場合が多い。しかし、これらの建築物は、歴史的に価値が高いことから、建築物自身もしくは建築物を構成する構造部材の一部を保存しようとするニーズが高まりつつある。
このような中、特許文献1に示すように、既存建築物の壁面を保存するに際し、壁面を鉄筋コンクリート版と一体化した上で任意の大きさに切りだし、これを外装版として新たな構造物に用いる方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭54−77424号公報(第4図参照)
【0004】
ところで、既存建築物の保存したい壁面のみを残し、他の構造部材を解体する際には、まず保存したい壁面を取り囲むように補強鉄骨フレームを設置する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記補強鉄骨フレームの設置には、既存建築物が存在することから重機等を用いることができないため、作業性に課題が生じる場合が多い。また、敷地に余裕がない場合には、前記壁面の表面側つまり既存建築物の外側に補強鉄骨フレームを張り出して設置することができず、施工自体が非常に煩雑なものとなっていた。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、作業性が良く、敷地条件等に左右されない既存外壁構造体の保存方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の既存外壁構造体の保存方法は、既存構造物を構成する既存外壁及び該既存外壁の両側部各々に一体的に立設する対をなす第1の既存柱よりなる既存外壁構造体を、部分的に保存する既存外壁構造体の保存方法であって、保存したい既存外壁構造体の裏面に向かい合うとともに、前記第1の既存柱に対向する位置に立設する対をなす第2の既存柱と、隣り合う該第2の既存柱どうし及び第2の既存柱と第1の既存柱を各々連結する複数の既存梁により構成される既存ラーメン躯体を残して、前記既存構造物を解体し、次に、前記既存ラーメン躯体の内方に、前記既存外壁構造体を支持する仮設フレームを構築して、該仮設フレームで既存外壁構造体を支持させた後、前記既存ラーメン躯体を構成する対をなす第2の既存柱の地上部及び既存梁を解体することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の既存外壁構造体の保存方法は、前記仮設フレームで既存外壁構造体を支持させた後、既存外壁構造体の裏面側で仮設フレームとの間に、自立して立設する補強フレームを構築し、該補強フレームに既存外壁構造体を支持する第1の工程と、前記既存外壁構造体を鉛直支持する既存基礎部を補強し、該既存基礎部と一体化するように、前記既存外壁構造体に隣接して構築される新設構造物を支持する新設基礎部を構築する第2の工程と、前記新設基礎部の上部に新設構造物を、少なくとも前記既存外壁構造体の高さと同程度に位置する階層まで構築するとともに、前記補強フレームの頂部近傍と同レベルの階層から前記補強フレームに向けて張り出す張出し床を構築し、前記補強フレームの新設構造物に向かい合う面側の頂部近傍と、新設構造物の前記張出し床とを、回転及び水平方向に移動自在なピンローラー支承付き連結部材を用いて水平に連結する第3の工程と、前記仮設フレームを解体撤去し、新設構造物の各階層に前記補強フレームに向けて張り出す張出し床を構築するとともに、新設構造物を完成させる第4の工程とによりなること特徴としている。
【0009】
請求項3記載の既存外壁構造体の保存方法は、第2の工程で実施する前記既存基礎部の補強を、前記既存ラーメン躯体を支持していた既存基礎部の領域外方で、第1の既存柱と第2の既存柱の脚部を結ぶ直線各々の脇近傍に、向かい合うように対をなして新設杭を配置するとともに、隣り合う第2の既存柱の脚部どうし、及び第1の既存柱と第2の既存柱の脚部を連結するように第1の地中壁、第2の地中壁を構築し、前記向かい合う新設杭どうしを連結するとともに、第2の地中壁と一体となるように基礎梁を構築した後、前記新設杭を新設基礎部の一部となるように、新設基礎部を構築することを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の既存外壁構造体の保存方法は、第3の工程で用いる前記ピンローラー支承付き連結部材が、鉛直方向の剛性を調整できる水平材よりなる固定部材と、該固定部材と同一平面上で平行に配されて、両端部を連結手段を介して固定部材に固定される丸棒状の軸部材と、該軸部材に貫通され周方向に自在に回転するとともに、長さ方向に自在に移動する回転部材と、該回転部材に備えられ、前記軸部材に直交する方向に突出するブラケットを備えてなり、前記固定部材を、前記補強フレームの新設構造物に向かい合う面側の頂部近傍で新設構造物の張出し床と同一レベルとなる高さ位置に、締結手段を介して水平に締結した後、レベル調整を行った上で、同一高さに位置する前記新設構造物の張出し床に、前記ブラケットを締結手段を介して締結することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の既存外壁構造体の保存方法は、保存したい既存外壁構造体と周囲の構造体により既存ラーメン躯体を構築し、該既存ラーメン躯体を残して既存構造物を解体するとともに、該既存ラーメン躯体の内方に前記既存外壁構造体を支持する仮設フレームを設置することにより、敷地条件に影響されることなく、作業性を向上させるものである。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1(a)に示すように、既存構造物1は、柱2と梁3とを備える鉄骨造もしくは鉄筋コンクリート造のラーメン架構より構成されている。本実施の形態では、該既存構造物1を構成する構造部材の一部である既存外壁構造体6を保存する方法を詳述する。
なお、図1には既存構造物の保存方法の断面図、図2には、基礎構造物の保存方法の平面図を示している。また、該既存外壁構造体6は、既存外壁6a及び該既存外壁6aの両側端部に一体に配されている対をなす第1の既存柱6bにより構成されている。
【0013】
まず、図1(a)及び図2(a)に示すように、前記既存構造物1を解体するが、保存したい前記既存外壁構造体6以外をすべて解体するのではなく、該既存外壁構造体6の裏面に向かい合うとともに対をなす前記第1の既存柱6a各々と対向する位置に配置されている対をなす第2の既存柱4、及び該第2の既存柱4と第1の既存柱6a、及び第2の既存柱4どうしを連結する複数の既存梁5を残しておく。これは、前記既存構造物1を解体した際にも、前記既存外壁構造体6が仮設材を用いることなく立設する状態を維持できることを目的とするもので、これら既存外壁構造体6、第2の既存柱4、及び既存梁5は、自立できるラーメン構造である既存ラーメン躯体7を形成している。
【0014】
次に、図1(b)及び図2(b)に示すように、該既存ラーメン躯体7の内方に、仮設フレーム8を設置する。該仮設フレーム8は、前記既存外壁構造体6を一時的に支持することを目的に設置されるもので、本実施の形態では柱8aと梁8bとを備えるラーメン架構を形成している。なお、仮設フレーム8は、後に解体撤去されることを考慮して柱8aと梁8b等の部材同士を、図示しないボルト及びナット等の締結手段により締結する構成となっている。これら、前記仮設フレーム8の柱8aは、前記既存構造物1の既存基礎部11の上面に立設された状態で、脚部をコンクリート9により埋設されることにより支持されている。
なお、既存ラーメン躯体7の周囲は既存構造物1が解体されたことにより、既存構造物1の跡地を作業スペースとして確保できることから、前記仮設フレーム8の設置に際し、柱8aや梁8b等の構造部材を揚重する重機等を用いることが可能である。
【0015】
この後、図1(c)及び図2(c)に示すように、前記既存外壁構造体6を立設させるために残した既存ラーメン躯体7の第2の既存柱4の地上部及び既存梁5を解体し、既存外壁構造体6を前記仮設フレーム8に支持させる。
【0016】
上述する構成によれば、前記既存外壁構造体6を一時的に支持する仮設フレーム8を既存構造物1の敷地内に構築することから、既存構造物1周辺の敷地条件によることなく、汎用的に本工法を用いることが可能となる。
また、前記既存外壁構造体6は、第2の既存柱4及び既存梁5とともに自立できる既存ラーメン躯体7を構成し、該既存ラーメン躯体7を残して他の既存構造物1を解体した後、仮設フレーム8を構築することから、解体された既存構造物1の跡地の新築工事と平行して仮設フレーム8を構築することができ、工期短縮を図れるとともに、新築工事に用いる重機等を利用して仮設フレーム8の構築作業を行うこともできるため、作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0017】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態により、既存外壁構造体6は、既存構造物1から部分的に保存されたこととなる。このような既存外壁構造体6を、既存構造物1の跡地に構築される新設構造物12の外壁として利用保存する方法を以下に示す。
なお、図3には既存構造物の保存方法の断面図、図4には、基礎構造物の保存方法の平面図を示している。
【0018】
第1の工程では、図3(a)及び図4(a)に示すように、前記既存外壁構造体6の裏面側で仮設フレーム8に挟まれる位置に、自立して立設できる補強フレーム10を構築し、該補強フレーム10と既存外壁構造体6とを高さ方向に所定の距離を持って複数設けられた支持部材10bを介して連結する。
該補強フレーム10は、鉄骨造により構成されており、図6に示すように、前記既存外壁構造体6とほぼ同様の大きさを有する枠組み状に形成される補強フレーム本体10aと、該補強フレーム本体10aの一方の面に所定の離間間隔で配置される支持部材10bとにより構成されている。これら補強フレーム10は、支持部材10bが設けられている補強フレーム本体10aの一方の面を既存外壁構造体6の裏面に向けた状態で、既存外壁構造体6と所定の離間距離を持って平行に配置される。
【0019】
なお、本実施の形態では、補強フレーム本体10aの開口部で、前記既存外壁構造体6に内包された梁6cが配置されている位置と同様の高さ位置に水平部材10cを架け渡し、該水平部材10cに、前記支持部材10bを固定手段を介して固定する構成としている。これにより、該支持部材10bは、前記既存外壁構造体6に内包された梁6c位置を支持することとなるため、より安全に既存外壁構造体6を支持することができるものである。しかし、補強フレーム10の開口部には必ずしも水平部材10cを設ける必要はなく、補強フレーム本体10aがラーメン構造として機能できれば、開口部は何れに処理してもよい。この場合には、前記支持部材10bを補強フレーム本体10aに固定手段を介して固定すればよい。
また、本実施の形態では、該支持部材10bに、前記水平部材10cと同程度の長さを有するスラブ材を用いており、前記既存外壁構造体6は補強フレーム10に、線的に支持される構成となっている。しかし、該支持部材10bには、必ずしもスラブ材を用いる必要はなく、複数の剛性を有する突状部材を補強フレーム本体10aの一方の面に設け、前記既存外壁構造体6を補強フレーム10に点的に支持する構成としてもよい。
【0020】
第2の工程では、図3(b)に示すように、前記既存ラーメン躯体7を支持していた既存基礎部11を補強し、該既存基礎部11と一体化するように、前記既存外壁構造体6に隣接して構築される新設構造物12を支持する新設基礎部13を構築する。
前記既存基礎部11の補強及び新設構造物12との一体化を、図5に示す既存基礎部13の平面図を参照し、以下に手順を詳述する。
【0021】
まず、図5に示すように、前記既存基礎部11の外側で、前記第1の既存柱6bと第2既存柱4の脚部4aとを結ぶ直線各々の近傍に、対をなして新設杭14を構築する。該新設杭14には、一般に用いられているBH杭を用いており、これらを直線で結ぶと前記既存外壁構造体6の壁面と平行となるように配置する。次に、隣り合う第2の既存柱4の脚部4aどうし、及び前記第1の既存柱6bと第2の既存柱4の脚部4aを連結するように、第1の地中壁16a、第2の地中壁16bを構築する。該第1の地中壁16a、第2の地中壁16bは、鉄筋コンクリート造によりなるもので、既存基礎部11、前記第1の既存柱6b及び第2の既存柱4の脚部4a各々との両者に跨るように、図示しないアンカーが配されることにより、強固に固着されている。
次いで、前記対をなす新設杭14の杭頭部を架け渡すように、基礎梁17を構築する。このとき、該基礎梁17は、前記第2の地中壁16bと一体化するように構築する。これにより、前記既存基礎部11及び該既存基礎部11に支持される前記既存外壁構造体6は、前記新設杭14に支持されることとなる。
この後、新設構造物12を支持する新設基礎部13を構築する。このとき、該新設基礎部13は、新設基礎部13として設けられる基礎杭15とともに前記新設杭14を取り込む構成とし、該新設基礎部13の上部で、既存外壁構造体6を取り囲むようにして設けられる新設地中壁18を、新設杭14及びこれと隣り合う基礎杭15を連結するように構築する。これにより、前記既存外壁構造体6、及び該既存外壁構造体6を支持する補強フレーム10を支持する既存基礎部11は、新設基礎部13に一体化されるだけでなく、該新設基礎部13に支持されることとなる。
【0022】
第3の工程では、図3(b)及び図4(b)に示すように、前記新設基礎部13の上部に新設構造物12を、少なくとも前記既存外壁構造体6の高さと同程度に位置する階層まで構築し、前記補強フレーム10の頂部近傍と同レベルの階層から前記補強フレーム10に向けて張り出す張出し床19aを構築し、前記補強フレーム10の新設構造物12に向かい合う面側の頂部近傍と、新設構造物12の前記張出し床19aとを、ピンローラー支承付き連結部材20を用いて連結する。
【0023】
該ピンローラー支承付き連結部材20は、図6に示すように、丸棒状の軸部材21と、該軸部材21に貫通され軸部材21の長さ方向に自在にスライドするとともに、周方向にも自在に回転する回転部材22と、該回転部材22に備えられたブラケット26と、前記軸部材21と平行に配され、連結部材24を介して軸部材21の両端部に固着された水平板状の固定部材23とにより構成されている。該ピンローラー支承付き連結部材20は、外力が作用すると、前記回転部材22が軸部材21に対して水平移動、もしくは回転を行い、これにより回転部材22に備えられたブラケット26が、固定部材23に対して回転もしくは水平に移動するものである。
本実施の形態では、対をなす軸部材21を直列に配置し、各々に回転部材22を取り付け、これら回転部材22どうしを、軸部材21と平行に配されたつなぎ部材25に固定し、該つなぎ部材25にブラケット26を備える構成としている。一方、前記固定部材23には、水平に配されたトラス部材を用いる構成としている。なお、固定部材23は、必ずしも水平に配されたトラス部材を用いる必要はなく、固定部材23に鉛直方向の力が作用した際に、剛性を調整できる構成であれば、何れを用いてもよい。
【0024】
このようなピンローラー支承付き連結部材20の取り付け方法を以下に示す。まず、図7(a)に示すように、前記既存外壁構造体6の頂部近傍の所定位置に、前記固定部材23を締結手段を介して締結する。また、前記固定部材23の下部には、斜材よりなる頬杖部材27が設けられており、該頬杖部材27を前記既存外壁構造体6の所定位置に締結手段を介して締結し、前記既存外壁構造体6にピンローラー支承付き連結部材20を水平に固定する。このとき、前記ブラケット26は、前記軸部材21の周方向に回転させて、上向きにした状態で保持しておく。
【0025】
次に、図7(b)に示すように、前記新設構造物12の張出し床19aにブラケット26を固定するが、張出し床19aは、その突端部の上部が前記ブラケット26の先端下部に嵌合する形状に切り欠かれており、該切り欠き部に上向きに保持していたブラケット26を回転移動して水平に配することにより嵌合させ、両者を締結手段を介して締結する。なお、前記張出し床19aに設けられた切り欠き部の上面と、ブラケット26の下面とでレベルが合致しない場合を考慮し、前記ブラケット26と張出し床19aとの連結に、ルーズホールを設置したジョイントプレート28を用いて両者を締結する構成としても良い。
【0026】
このようにして、ピンローラー支承付き連結部材20を介して連結された前記既存外壁構造体6と新設構造物12は、前記既存外壁構造体6が前記新設構造物12に支持されるものの、両者は絶縁され、地震等が生じた際にも両者の挙動を緩衝することはない。
【0027】
第4の工程では、図3(c)に示すように、前記仮設フレーム8を解体撤去し、新設構造物12の各階層に前記補強フレーム10に向けて張出す張出し床19を構築するとともに、新設構造物12を完成させる。
図3(c)を見てもわかるように、既存基礎部11は、既存外壁構造体6と比較して新設構造物12側に大きく張り出す構成となっている。このため、既存外壁構造体6と新設構造物12との間には、大きな空間が形成されることとなる。このような、前記新設構造物12に、既存外壁構造体6に向けて突出する張出し床19を設ける構成は、既存外壁構造体6と新設構造物12との間の空間を有効利用しようとするものである。
なお、地震等が生じた際に、既存外壁構造体6及び新設構造物12は各々異なる挙動を示すこととなる。このような挙動に際し、既存外壁構造体6と張出し床19が抵触することを防止するべく、両者の間には所定のクリアランスLを設けている。
【0028】
上述する構成によれば、前記既存基礎部11の補強、及びこれと一体とするように設けられる新設基礎部13の構築を、上部に既存外壁構造体6、該既存外壁構造体6を支持する補強フレーム10及び仮設フレーム8を残すのみの状態で行えるため、既存構造物1の下に潜り込むなどの劣環境のもとで作業する必要がないため、作業安全性が高く、作業効率を大幅に向上できるとともに、精度向上、工費削減、工期短縮に大きく寄与することが可能となる。
【0029】
前記既存外壁構造体6と新設構造物12の連結は、ピンローラー支承付き連結部材20を両者各々に締結手段を介して締結することにより行えるため、現場溶接等の繁雑な作業を省略でき、作業性がよいとともに施工精度を向上することが可能となる。また、既存外壁構造体6の頂部近傍の1カ所のみにピンローラー支承付き連結部材20を設ければよいため、高所作業を大幅に削減でき作業安全性を向上することが可能となる。
【0030】
【発明の効果】
請求項1記載の既存外壁構造体の保存方法によれば、既存構造物を構成する既存外壁及び該既存外壁の両側部各々に一体的に立設する対をなす第1の既存柱よりなる既存外壁構造体を、部分的に保存する既存外壁構造体の保存方法であって、保存したい既存外壁構造体の裏面に向かい合うとともに、前記第1の既存柱に対向する位置に立設する対をなす第2の既存柱と、隣り合う該第2の既存柱どうし及び第2の既存柱と第1の既存柱を各々連結する複数の既存梁により構成される既存ラーメン躯体を残して、前記既存構造物を解体し、次に、前記既存ラーメン躯体の内方に、前記既存外壁構造体を支持する仮設フレームを構築して、該仮設フレームで既存外壁構造体を支持させた後、前記既存ラーメン躯体を構成する対をなす第2の既存柱の地上部及び既存梁を解体することから、前記既存外壁構造体を一時的に支持する仮設フレームを既存構造物の敷地内に構築するため、既存構造物周辺の敷地条件によることなく、汎用的に本工法を用いることが可能となる。
また、前記既存外壁構造体は、第2の既存柱及び既存梁とともに自立できる既存ラーメン躯体を構成し、該既存ラーメン躯体を残して他の既存構造物を解体した後、仮設フレームを構築することから、解体された既存構造物の跡地の新築工事と平行して仮設フレームを構築することができ、工期短縮を図れるとともに、新築工事に用いる重機等を利用して仮設フレームの構築作業を行うこともできるため、作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0031】
請求項2記載の既存外壁構造体の保存方法によれば、前記仮設フレームで既存外壁構造体を支持させた後、既存外壁構造体の裏面側で仮設フレームとの間に、自立して立設する補強フレームを構築し、該補強フレームに既存外壁構造体を支持する第1の工程と、前記既存外壁構造体を鉛直支持する既存基礎部を補強し、該既存基礎部と一体化するように、前記既存外壁構造体に隣接して構築される新設構造物を支持する新設基礎部を構築する第2の工程と、前記新設基礎部の上部に新設構造物を、少なくとも前記既存外壁構造体の高さと同程度に位置する階層まで構築するとともに、前記補強フレームの頂部近傍と同レベルの階層から前記補強フレームに向けて張り出す張出し床を構築し、前記補強フレームの新設構造物に向かい合う面側の頂部近傍と、新設構造物の前記張出し床とを、回転及び水平方向に移動自在なピンローラー支承付き連結部材を用いて水平に連結する第3の工程と、前記仮設フレームを解体撤去し、新設構造物の各階層に前記補強フレームに向けて張り出す張出し床を構築するとともに、新設構造物を完成させる第4の工程とによりなることから、既存外壁部自身に手を加えることなく、新設構造物に再利用できるため、歴史的価値の高い建築物の保存等、歴史的建造物を取り巻くニーズに適宜対応することが可能となる。
【0032】
請求項3記載の既存外壁構造体の保存方法によれば、第2の工程で実施する前記既存基礎部の補強を、前記既存ラーメン躯体を支持していた既存基礎部の領域外方で、第1の既存柱と第2の既存柱の脚部を結ぶ直線各々の脇近傍に、向かい合うように対をなして新設杭を配置するとともに、隣り合う第2の既存柱の脚部どうし、及び第1の既存柱と第2の既存柱の脚部を連結するように第1の地中壁、第2の地中壁を構築し、前記向かい合う新設杭どうしを連結するとともに、第2の地中壁と一体となるように基礎梁を構築した後、前記新設杭を新設基礎部の一部となるように、新設基礎部を構築することから、前記既存基礎部の補強、及びこれと一体とするように設けられる新設基礎部の構築を、上部に既存外壁構造体、該既存外壁構造体を支持する補強フレーム及び仮設フレームを残すのみの状態で行えるため、既存構造物の下に潜り込むなどの劣環境のもとで作業する必要がなく、作業安全性が向上でき、作業効率を大幅に向上できるとともに、精度向上、工費削減、工期短縮に大きく寄与することが可能となる。
【0033】
請求項4記載の既存外壁構造体の保存方法によれば、第3の工程で用いる前記ピンローラー支承付き連結部材が、鉛直方向の剛性を調整できる水平材よりなる固定部材と、該固定部材と同一平面上で平行に配されて、両端部を連結手段を介して固定部材に固定される丸棒状の軸部材と、該軸部材に貫通され周方向に自在に回転するとともに、長さ方向に自在に移動する回転部材と、該回転部材に備えられ、前記軸部材に直交する方向に突出するブラケットを備えてなり、前記固定部材を、前記補強フレームの新設構造物に向かい合う面側の頂部近傍で新設構造物の張出し床と同一レベルとなる高さ位置に、締結手段を介して水平に締結した後、レベル調整を行った上で、同一高さに位置する前記新設構造物の張出し床に、前記ブラケットを締結手段を介して締結することから、前記既存外壁構造体と新設構造物の連結は、ピンローラー支承付き連結部材を両者各々に締結手段を介して締結することにより行えるため、現場溶接等の繁雑な作業を省略でき、作業性がよいとともに施工精度を向上することが可能となる。また、既存外壁構造体の頂部近傍の1カ所のみにピンローラー支承付き連結部材を設ければよいため、高所作業を大幅に削減でき作業安全性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る既設外壁構造体の保存方法に係る第1の実施の形態の側面図を示す図である。
【図2】 本発明に係る既設外壁構造体の保存方法に係る第1の実施の形態の断面図を示す図である。
【図3】 本発明に係る既設外壁構造体の保存方法に係る第2の実施の形態の側面図を示す図である。
【図4】 本発明に係る既設外壁構造体の保存方法に係る第2の実施の形態の断面図を示す図である。
【図5】 本発明に係る既設外壁構造体の保存方法に係る既存基礎部と新設基礎部を示す図である。
【図6】 本発明に係るピンローラー支承付き連結部材を示す図である。
【図7】 本発明に係るピンローラー支承付き連結部材の取り付け方法を示す図である。
【符号の説明】
1 既存構造物
2 柱
3 梁
4 既存柱
5 既存梁
6 既存外壁構造体
7 既存ラーメン躯体
8 仮設フレーム
8a 柱
8b 梁
9 コンクリート
10 補強フレーム
10a 補強フレーム本体
10b 支持部材
10c 水平部材
11 既存基礎部
12 新設構造物
13 新設基礎部
14 新設杭
15 基礎杭
16a 第1の地中壁
16b 第2の地中壁
17 基礎梁
18 新設地中壁
19 張出し床
19a 張出し床
20 ピンローラー支承付き連結部材
21 軸部材
22 回転部材
23 固定部材
24 連結部材
25 つなぎ部材
26 ブラケット
27 頬杖部材
28 ジョイントプレート

Claims (4)

  1. 既存構造物を構成する既存外壁及び該既存外壁の両側部各々に一体的に立設する対をなす第1の既存柱よりなる既存外壁構造体を、部分的に保存する既存外壁構造体の保存方法であって、
    保存したい既存外壁構造体の裏面に向かい合うとともに、前記第1の既存柱に対向する位置に立設する対をなす第2の既存柱と、隣り合う該第2の既存柱どうし及び第2の既存柱と第1の既存柱を各々連結する複数の既存梁により構成される既存ラーメン躯体を残して、前記既存構造物を解体し、
    次に、前記既存ラーメン躯体の内方に、前記既存外壁構造体を支持する仮設フレームを構築して、該仮設フレームで既存外壁構造体を支持させた後、
    前記既存ラーメン躯体を構成する対をなす第2の既存柱の地上部及び既存梁を解体することを特徴とする既存外壁構造体の保存方法。
  2. 請求項1に記載の既存外壁構造体の保存方法において、
    前記仮設フレームで既存外壁構造体を支持させた後、既存外壁構造体の裏面側で仮設フレームとの間に、自立して立設する補強フレームを構築し、該補強フレームに既存外壁構造体を支持する第1の工程と、
    前記既存外壁構造体を鉛直支持する既存基礎部を補強し、該既存基礎部と一体化するように、前記既存外壁構造体に隣接して構築される新設構造物を支持する新設基礎部を構築する第2の工程と、
    前記新設基礎部の上部に新設構造物を、少なくとも前記既存外壁構造体の高さと同程度に位置する階層まで構築するとともに、前記補強フレームの頂部近傍と同レベルの階層から前記補強フレームに向けて張り出す張出し床を構築し、
    前記補強フレームの新設構造物に向かい合う面側の頂部近傍と、新設構造物の前記張出し床とを、回転及び水平方向に移動自在なピンローラー支承付き連結部材を用いて水平に連結する第3の工程と、
    前記仮設フレームを解体撤去し、新設構造物の各階層に前記補強フレームに向けて張り出す張出し床を構築するとともに、新設構造物を完成させる第4の工程とによりなること特徴とする既存外壁構造体の保存方法。
  3. 請求項2に記載の既存外壁構造体の保存方法において、
    第2の工程で実施する前記既存基礎部の補強を、
    前記既存ラーメン躯体を支持していた既存基礎部の領域外方で、第1の既存柱と第2の既存柱の脚部を結ぶ直線各々の脇近傍に、向かい合うように対をなして新設杭を配置するとともに、
    隣り合う第2の既存柱の脚部どうし、及び第1の既存柱と第2の既存柱の脚部を連結するように第1の地中壁、第2の地中壁を構築し、
    前記向かい合う新設杭どうしを連結するとともに、第2の地中壁と一体となるように基礎梁を構築した後、
    前記新設杭を新設基礎部の一部となるように、新設基礎部を構築することを特徴とする既存外壁構造体の保存方法。
  4. 請求項2に記載の既存外壁構造体の保存方法において、
    第3の工程で用いる前記ピンローラー支承付き連結部材が、鉛直方向の剛性を調整できる水平材よりなる固定部材と、該固定部材と同一平面上で平行に配されて、両端部を連結手段を介して固定部材に固定される丸棒状の軸部材と、該軸部材に貫通され周方向に自在に回転するとともに、長さ方向に自在に移動する回転部材と、該回転部材に備えられ、前記軸部材に直交する方向に突出するブラケットを備えてなり、
    前記固定部材を、前記補強フレームの新設構造物に向かい合う面側の頂部近傍で新設構造物の張出し床と同一レベルとなる高さ位置に、締結手段を介して水平に締結した後、
    レベル調整を行った上で、同一高さに位置する前記新設構造物の張出し床に、前記ブラケットを締結手段を介して締結することを特徴とする既存外壁構造体の保存方法。
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