JP5998858B2 - 既存建物の免震化工法 - Google Patents

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Description

本発明は、既存建物の免震化工法に関する。
既存建物に免震装置を設置することで既存建物の免震化を図ることができる。その工法として、例えば、既存建物の直下の地盤を掘削して免震ピットを構築し、建物の上部構造体をジャッキ等で支持した状態で上部構造体と既存杭を切り離し、免震ピットと上部構造体との間、即ち、建物の基礎部分に免震装置を設置する方法が知られている。その他、既存建物の中間階の柱が受けていた建物の荷重をジャッキ等に移行した状態で、柱の一部分を除去して免震装置を設置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−115656号公報
柱の一部分を除去して免震装置を設置する方法は、既存建物の基礎部分に免震装置を設置する方法に比べて、工期が短くコストも安く抑えられるが、柱を太くしたり、ジャッキ等の設置場所を補強したりする必要がある。また、地震発生時に免震装置により変位する領域は危険であるため、使用者が立ち入らないようにする必要がある。そのため、免震装置の設置階における有効スペースが減ってしまう。
そこで、免震装置の設置階の柱や壁の全てを水平に切断し、その切断位置よりも上方の上部構造体をジャッキ等で持ち上げて柱に空間を形成し、その空間に免震装置を設置する。そうすることで、免震装置の設置階における有効スペースの減少を抑えることができる。但し、柱や壁を全て切断することになるため、施工中に地震が発生すると、下部構造体に対する上部構造体の水平方向の位置が変位して危険である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、免震装置の設置階における有効スペースの減少を抑えつつ安全に既存建物を免震化することを目的とする。
かかる目的を達成するための既存建物の免震化工法は、既存建物の所定階の柱に免震装置を設置する既存建物の免震化工法であって、前記所定階に仮設支持部材を設置し、前記柱から前記仮設支持部材に前記既存建物の荷重を移行する工程と、前記既存建物のうち前記免震装置の設置位置よりも上方の上部構造体と下方の下部構造体との水平方向の変位は規制するが鉛直方向の変位は許容する水平方向規制部材を設置する工程と、前記所定階の前記柱及び壁を切断し、前記既存建物を前記上部構造体と前記下部構造体に分離する工程と、前記仮設支持部材を上方に伸長させることにより前記下部構造体に対する前記上部構造体の鉛直方向の位置を上方に移行すると共に、前記柱の切断部に空間を形成する工程と、前記柱の前記空間に前記免震装置を設置する工程と、前記仮設支持部材から前記免震装置に前記既存建物の荷重を移行した後に、前記仮設支持部材と前記水平方向規制部材とを撤去する工程と、を備えることを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、免震装置の設置階における有効スペースの減少を抑えることができる。また、仮設支持部材の伸長前も伸長後も上部構造体と下部構造体の水平方向の位置ずれを規制することができるため、安全に既存建物を免震化(施工)することができる。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記所定階の前記壁を切断し、前記壁を上部と下部に分離する際に、前記上部の切断面の一部を前記下部の切断面よりも前記鉛直方向に突出させる、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、壁の上部と下部の各切断面が当接することにより、壁面方向(水平方向)における上部構造体と下部構造体の変位を規制することができ、より安全に施工することができる。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記壁を前記上部と前記下部に分離した後に、当該壁面の垂直方向における前記上部と前記下部の水平変位を規制する規制部材を前記壁に取り付ける、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、壁面の垂直方向における上部構造体と下部構造体の水平変位を規制することができ、より安全に施工することができる。但し、壁の切断方法を工夫することで壁面方向における既存建物の変位を規制する力に比べて、規制部材が壁面の垂直方向における既存建物の変位を規制する力はやや弱いため、規制部材の取り付けはオプションとして提供してもよい。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記水平方向規制部材は、前記上部構造体に固定されて前記仮設支持部材の伸長により上方に移動する移動部と、前記下部構造体に固定され、且つ、所定方向に所定の間隔を空けて対向配置された一対の固定部と、を備え、前記仮設支持部材の伸長前も伸長後も前記一対の固定部の間に前記移動部を位置させる、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、仮設支持部材の伸長前も伸長後も所定方向における上部構造体と下部構造体の水平変位を規制することができる。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記水平方向規制部材は、前記所定方向と交差する方向に所定の間隔を空けて対向配置された一対の交差部を備え、各前記交差部は前記一対の固定部のうちの一方から他方まで少なくとも延び、前記仮設支持部材の伸長前も伸長後も前記一対の交差部の間に前記移動部を位置させる、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、仮設支持部材の伸長前も伸長後も所定方向と交差する方向における上部構造体と下部構造体の水平変位を規制することができる。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記水平方向規制部材は、前記所定方向に並ぶ一方の柱から他方の柱まで延びる基礎部を備え、前記移動部は、前記基礎部に取り付けられており、前記基礎部を介して前記上部構造体に固定される、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、1個の水平方向規制部材により所定方向に並ぶ2本の柱の水平変位を規制することができる。従って、上部構造体と下部構造体の所定方向の水平変位をより強固に規制することができる。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記水平方向規制部材と同じ構造である別の水平方向規制部材が備える一対の固定部が前記所定方向と交差する方向に対向配置されるように、前記別の水平方向規制部材を設置する、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、所定方向だけでなく交差する方向に関しても、上部構造体と下部構造体の水平変位を強固に規制することができる。
かかる既存建物の免震化工法であって、前記所定階の前記柱の柱頭部を切断し、前記仮設支持部材を上方に伸長させる際に、前記免震装置の設置に必要な空間の高さ以上の長さを伸長させる、ことを特徴とする既存建物の免震化工法である。
このような既存建物の免震化工法によれば、免震装置の設置階における有効スペースの減少をより抑えることができる。
本発明によれば、免震装置の設置階における有効スペースの減少を抑えつつ安全に既存建物を免震化することができる。また、柱の切断および撤去解体を減少または省略することができる。
本実施例における既存建物の免震化工法のフローである。 図2Aは柱と梁の補強を説明する図であり、図2Bは柱周りの補強部の図である。 仮設支持部材の設置を説明する図である。 図4Aは幅方向に見た移動部材の側面図であり、図4Bは移動部材の断面図であり、図4Cは幅方向に見た固定部材の側面図であり、図4Dは固定部材の断面図である。 図5Aは油圧ジャッキの伸長前の水平方向規制部材の説明図であり、図5Bは油圧ジャッキの伸長後の水平方向規制部材の説明図である。 水平方向規制部材の設置位置の説明図である。 図7Aは柱及び壁の切断を説明する図であり、図7Bは切断後の壁の位置ズレを規制する垂直方向規制部材の説明図である。 仮設支持部材の伸長を説明する図である。 免震装置の設置を説明する図である。 復旧作業を説明する図である。
以下、既存建物の免震化工法の実施例について図を用いて詳細に説明する。
===実施例===
図1は、本実施例における既存建物の免震化工法のフローである。既存建物の耐震性を向上させるために、既存建物の中間階の柱に免震装置を設置し、地震発生時の建物の揺れを免震装置で緩和するようにして免震化する工法が知られている。この免震化工法では、地震発生時の免震装置による変位に耐えられるように、免震装置の設置階(施工階)の柱や梁を太く補強する必要がある。また、免震装置を設置するために柱を切断する際に、柱が受けていた建物の荷重をジャッキ等に移行する必要がある。そのため、ジャッキ等が設置される場所、即ち、ジャッキ等からの反力を受ける場所も補強する必要がある。
そのため、柱の一部分を除去して免震装置を設置する工法、即ち、施工階の床面から直上階の床面までの高さ(階高)を変えずに免震装置を設置する工法では、柱等の補強部により施工階の有効スペースが施工前に比べて減少してしまう。特に、施工階を居室として利用する場合、補強部が使用者に圧迫感を与えてしまう。また、施工階のうち地震発生時に免震装置により変位する領域は危険であるため、使用者が立ち入らないようにしたり、家具等が配置されないようにしたりする必要がある。そうすると、施工階の有効スペースが更に減少し、施工階をそれまでと同様に、例えば、居室として利用することが難しくなってしまう。
そこで、本実施例では、施工階の柱や壁が受けていた建物の荷重をジャッキ等に移行した後に、施工階の柱と壁を全て切断し、その切断位置よりも上方の上部構造体を下部構造体に対して持ち上げて、施工階の階高を上げる。そして、柱の切断部に形成された空間に免震装置を設置する。そうすることで、階高を変えずに免震装置を設置する場合に比べて、免震装置の設置階における有効スペースの減少を抑えることができ、施工階をそれまでと同様に例えば居室として利用することができる。
以下、本実施例の具体的な免震化工法について説明する。
<S01:柱,梁の補強>
図2Aは、柱10と梁12a,12bの補強を説明する図であり、図2Bは、図2Aの位置aa’から上方に柱10周りの補強部を見た図である。本実施例では、既存建物1の1階を施工階とする。既存建物1では、柱10が1階の床板11(1)と2階の床板11(2)を貫通して鉛直方向に延びて立設し、柱10間には、X方向に延びた梁12aがY方向に所定の間隔を空けて設けられ、その梁12aと交差してY方向に延びた梁12bがX方向に所定の間隔を空けて設けられている。
まず、地震発生時の免震装置の変位による施工階の柱10や梁12a,12bの曲がりを抑制するために、柱10と梁12a,12bを補強する。図2Bに示すように、例えば、柱10の周囲にコンクリートを打設して柱の補強部13を形成し、柱10を太くする。また、梁12a,12bの両側面にコンクリートを打設して梁の補強部14を形成し、梁12a,12bを厚くする。
また、後述の図3に示すように柱10の周囲には仮設支持部材20が設置される。この仮設支持部材20からの反力を受けるために、仮設支持部材20が設置される位置の上部と下部も補強する。即ち、施工階である1階の柱10の柱頭部分と地下1階の柱10の柱頭部分にコンクリートを打設して、仮受け補強部15を形成する。なお、本実施例では、仮受け補強部15を、柱の補強部13よりも一回り大きくし、また、梁下よりも少し下方の位置まで延ばす。
<S02:仮設支持部材の設置>
図3は、仮設支持部材20の設置を説明する図である。次に、補強した施工階の柱10の全て又は一部の周囲に仮設支持部材20を設置する。なお、本実施例では、1本の柱10に対してX方向の両側に2本の仮設支持部材20を設置する。仮設支持部材20は、柱10や壁を切断した後に、建物(上部構造体)の鉛直方向の荷重を支持するためのものであり、油圧ジャッキ21と、油圧ジャッキ21の上部に取り付けられた仮受け鋼材22とを有する。また、仮設支持部材20の鉛直方向の長さは、施工階の床面11(1)から施工階の仮受け補強部15の下面までの長さとなっている。そして、施工階の仮受け補強部15の下面に仮設支持部材20の上面が接触し、また、下に仮受け補強部15が存在する施工階の床板11(1)の部位に仮設支持部材20の下面が接触するように、仮設支持部材20を設置する。そうすることで、仮設支持部材20からの反力を仮受け補強部15で受けることができる。
<S03:水平方向規制部材の設置>
図4Aは、幅方向に見た移動部材40の側面図であり、図4Bは、図4Aの位置aa’,位置bb’,位置cc’における移動部材40の断面図であり、図4Cは、幅方向に見た固定部材50の側面図であり、図4Dは、図4Cの位置aa’,位置bb’,位置cc’における固定部材50の断面図である。本実施例とは異なり、施工階の階高を変えずに柱の一部分を除去して免震装置を設置する場合、施工階の全ての柱を同時期に切断することなく、一部の柱ごとに柱の切断と免震装置の設置および柱部の水平拘束処置を行うことができる。これに対して、本実施例では、施工階の階高を上げるため、施工階の柱10や壁を同時期に全て切断しなければならない。そのため、柱10や壁の切断後に地震が発生すると、下部構造体(切断位置よりも下方の建物の部位)に対して上部構造体(切断位置よりも上方の建物の部位)が水平方向に位置ずれする虞があり危険である。そこで、本実施例では、柱10や壁の切断前に、柱10と柱10の間に、移動部材40と固定部材50から成る水平方向規制部材30を設置する。
移動部材40(図4A)は、上部横材41と、下部横材42と、左縦材43と、右縦材44と、左斜材45と、右斜材46と、第1中央斜材47と、第2中央斜材48とを有し、例えばH形鋼などから構成される。上部横材41は下部横材42よりも長く、2つの横材41,42の横方向における中央部が揃っている。左縦材43と右縦材44は、2つの横材41,42の横方向における中央部において、横方向に所定の間隔を空けて対向配置され、左縦材43と右縦材44の各上端が上部横材41に取り付けられ、各下端が下部横材42に取り付けられている。左斜材45は、上端が上部横材41の左端に取り付けられ、下端が下部横材42の左端に取り付けられており、右斜材46は、上端が上部横材41の右端に取り付けられ、下端が下部横材42の右端に取り付けられている。第1中央斜材47は、上端が右縦材44の上端に取り付けられ、下端が左縦材43の下端に取り付けられており、第2中央斜材48は、上端が左縦材43の上端に取り付けられ、下端が右縦材44の下端に取り付けられている。
固定部材50は、幅方向に所定の間隔を空けて対向配置される一対の上部横材51と、一対の下部横材52と、一対の第1縦材531と、一対の第2縦材532と、一対の第3縦材533と、一対の第4縦材534と、一対の左斜材54と、一対の右斜材55と、図4Dに示すように、第1上部交差材561と、第2上部交差材562と、第3上部交差材563と、第4上部交差材564と、第1下部交差材571と、第2下部交差材572と、第3下部交差材573と、第4下部交差材574とを有し、例えばH形鋼などから構成される。
図4Cに示すように、上部横材51と下部横材52と第1縦材531と第4縦材534により、横方向に長い長方形フレームが構成されている。その長方形フレームの中央部において第2縦材532と第3縦材533が横方向に所定の間隔を空けて対向配置されており、第2縦材532と第3縦材533の各上端が上部横材51に取り付けられ、各下端が下部横材52に取り付けられている。左斜材54は、上端が第2縦材532の上端に取り付けられ、下端が第1縦材531の下端に取り付けられており、右斜材55は、上端が第3縦材533の上端に取り付けられ、下端が第4縦材534の下端に取り付けられている。このような構成の部材(図4Cに示す形状の部材)が幅方向に所定の間隔を空けて対向配置されている。
そして、図4Dに示すように、4個の上部交差材561〜564により、幅方向に対向配置された一対の上部横材51が繋がれている。横方向の左側から順に、第1上部交差材561、第2上部交差材562、第3上部交差材563、第4上部交差材564とし、第1〜第4上部交差材561〜564の横方向の各位置と、第1〜第4縦材531〜534の横方向の各位置とが等しくなっている。同様に、第1〜第4下部交差材571〜574により、幅方向に対向配置された一対の下部横材52が繋がれている。
図5Aは、油圧ジャッキ21の伸長前の水平方向規制部材30の説明図であり、図5Bは、油圧ジャッキ21の伸長後の水平方向規制部材30の説明図である。なお、各図の上図がY方向(幅方向)に見た水平方向規制部材30の側面図であり、各図の下図が上図の位置aa’における水平方向規制部材30の断面図である。図5では、水平方向規制部材30の横方向をX方向とし、幅方向をY方向とする。図6は、施工階における水平方向規制部材30の設置位置の説明図である。
移動部材40が有する上部横材41の横方向の長さ、及び、固定部材50が有する上部横材51,下部横材52の横方向の長さを、X方向に並ぶ柱10の間隔と同等の長さとする。そして、X方向に並ぶ柱10の間に移動部材40及び固定部材50を設置する。
また、図4Dに示すように、固定部材50が有する一対の上部横材51の幅方向の間隔(内側側面同士の間隔)「W2+α」を、図4Bに示すように、移動部材40を構成する各部材の幅方向の長さ「W2」以上とする。そして、図5Aに示すように、固定部材50が有する一対の上部横材51の間に移動部材40を挟みこんだ状態で、水平方向規制部材30を設置する。
また、図4Dに示すように、固定部材50が有する第2上部交差材562の右側側面と第3上部交差材563の左側側面の幅方向の間隔「W1+α」を、図4Aに示すように、移動部材40が有する左縦材43の左側側面と右縦材44の右側側面の幅方向の間隔「W1」以上とする。そして、図5Aに示すように、固定部材50が有する第2上部交差材562と第3上部交差材563の間に、移動部材40が有する左縦材43と右縦材44を挟み込んだ状態で、水平方向規制部材30を設置する。
また、既存建物1のうち柱10等の切断位置よりも上方の上部構造体に移動部材40を固定して取り付け、下部構造体に固定部材50を固定して取り付ける。具体的には、移動部材40が有する上部横材41のX方向の側面を、柱10のX方向の側面のうち切断位置よりも上方の部位に固定する。但し、これに限らず、例えば、上部横材41の上面を仮受け補強部15の下面に固定してもよい。また、固定部材50が有する上部横材51及び下部横材52のX方向の側面を、柱10のX方向の側面のうち切断位置よりも下方の部位に固定する。但し、これに限らず、例えば、下部横材51の下面を床面11(1)に固定してもよい。そうすることで、柱10等を切断して油圧ジャッキ21を伸長させた際に、移動部材40だけを上部構造体と共に上方に持ち上げることができる。
また、固定部材50が有する第1〜第4上部交差材561〜564の上に、移動部材40が有する上部横材41が位置するように、水平方向規制部材30を設置する。そのため、移動部材40が有する下部横材42が、固定部材50が有する第2上部交差材562と第3上部交差材563に当接するまで、移動部材40を固定部材50に対して鉛直方向の上方に移動させることができる。
以上のように水平方向規制部材30を設置することで、柱10等の切断後であり油圧ジャッキ21の伸長前に地震が発生し、固定部材50に対して移動部材40がX方向(水平方向)に移動しようとしても、移動部材40が有する左縦材43の左側側面と固定部材50が有する第2上部交差材562の右側側面が当接し、また、移動部材40が有する右縦材44の右側側面と固定部材50が有する第3上部交差材563の左側側面が当接するため、固定部材50に対する移動部材40のX方向の位置ずれを規制することができる。よって、固定部材50が取り付けられた既存建物1の下部構造体に対して、移動部材40が取り付けられた上部構造体がX方向に位置ずれしてしまうことを規制することができる。
そして、移動部材40が有する左縦材43及び右縦材44の鉛直方向の長さを、油圧ジャッキ21の伸長長さ以上とする。そのため、油圧ジャッキ21が伸長し、固定部材50に対して移動部材40が上方に移動した後も(図5B)、移動部材40が有する左縦材43及び右縦材44を、固定部材50が有する第2上部交差材562及び第3上部交差材563にそれぞれ当接させることができる。従って、油圧ジャッキ21の伸長後も、固定部材50に対する移動部材40のX方向の位置ずれを規制することができ、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体のX方向の位置ずれを規制することができる。
以上のように、水平方向規制部材30は、既存建物1の上部構造体に固定され、且つ、油圧ジャッキ21(仮設支持部材20)の伸長により上方に移動する移動部材40の左縦材43及び右縦材44(移動部に相当)を備え、また、既存建物1の下部構造体に固定され、且つ、X方向(所定方向)に所定の間隔を空けて対向配置された固定部材50の第2上部交差材562及び第3上部交差材563(一対の固定部に相当)を備える。そして、油圧ジャッキ21の伸長前も伸長後も、固定部材50が有する第2上部交差材562と第3上部交差材563の間に、移動部材40が有する左縦材43及び右縦材44を位置させる。そうすることで、油圧ジャッキ21の伸長前も伸長後も、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体のX方向の位置ずれ(変位)を規制することができる。
また、移動部材40の左縦材43及び右縦材44は、油圧ジャッキ21の伸長長さよりも長い。そのため、移動部材40の上昇中に、移動部材40を構成する部材(例えば、下部横材42)が固定部材50を構成する部材(例えば、第2上部交差材562や第3上部交差材563)に当接して鉛直方向の動きが規制されてしまうことを防止でき、移動部材40は固定部材50に対して上昇することができる。
つまり、水平方向規制部材30は、既存建物1の上部構造体と下部構造体との水平方向の変位は規制するが、鉛直方向の変位は許容する部材である。従って、油圧ジャッキ21の伸長前も伸長後も上部構造体と下部構造体の水平方向の位置ずれを規制することができ、本実施例のように施工階の柱10や壁を同時期に全て切断する場合であっても、安全に施工することができる。
また、油圧ジャッキ21の伸長前と伸長後の位置ずれを1種類の水平方向規制部材30で規制することができ、油圧ジャッキ21の伸長前と伸長後で水平方向規制部材30を組み直す必要がない。そのため、コストを抑えつつ、施工効率を高めることができる。また、油圧ジャッキ21の伸長中も、移動部材40が有する左縦材43と右縦材44は、固定部材50が有する第2上部交差材562と第3上部交差材563の間に位置する。そのため、移動部材40の上昇中も、既存建物1の上部構造体と下部構造体との水平方向の位置ずれを規制することができ、安全である。
更に、油圧ジャッキ21の伸長前は(図5A)、固定部材50に対して移動部材40がY方向(水平方向)に移動しようとしても、移動部材40が有する左縦材43,右縦材44,左斜材45,右斜材46,第1中央斜材47,第2中央斜材48のY方向の側面が、固定部材50が有する一対の上部横材51のY方向の内側側面に当接する。その他、移動部材40が有する下部横材42のY方向の側面が、固定部材50が有する一対の第2縦材532や一対の第3縦材533のY方向の内側側面に当接し、移動部材40が有する左斜材45のY方向の側面が、固定部材50が有する一対の左斜材54のY方向の内側側面に当接し、移動部材40が有する右斜材46のY方向の側面が、固定部材50が有する一対の右斜材55のY方向の内側側面に当接する。
そして、油圧ジャッキ21の伸長後も(図5B)、移動部材40が有する左縦材43,右縦材44,左斜材45,右斜材46,第1中央斜材47,第2中央斜材48を、固定部材50が有する一対の上部横材51に当接させることができる。また、移動部材40が有する下部横材42を固定部材50が有する一対の第2縦材532や一対の第3縦材533に当接させることができる。
つまり、水平方向規制部材30は、Y方向(所定方向と交差する方向)に所定の間隔を空けて対向配置された固定部材50の一対の上部横材51(一対の交差部に相当)を備え、その上部横材51は、第2上部交差材562から第3上部交差材563までの長さ以上に延びている。そして、油圧ジャッキ21の伸長前も伸長後も、固定部材50が有する一対の上部横材51の間に、移動部材40が有する左縦材43及び右縦材44を位置させる。そうすることで、油圧ジャッキ21の伸長前も伸長後も、固定部材50に対する移動部材40のY方向の位置ずれを規制することができ、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体のY方向の位置ずれ(変位)を規制することができる。
但し、水平方向規制部材30が既存建物1の上部構造体と下部構造体のX方向(横方向)の位置ずれを規制する力に比べて、水平方向規制部材30が上部構造体と下部構造体のY方向(幅方向)の位置ずれを規制する力は弱い。そのため、図6に示すように、水平方向規制部材30の横方向をX方向に沿わせて設置するとともに、水平方向規制部材30の横方向をY方向に沿わせて設置する。そうすることで、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体の水平方向の位置ずれをより強固に規制することができる。
また、水平方向規制部材30は、X方向(所定方向)に並ぶ一方の柱10から他方の柱10まで延びる移動部材40の上部横材41(基礎部に相当)を備え、移動部材40が有する左縦材43及び右縦材44は、上部横材41に取り付けられており、上部横材41を介して既存建物1の上部構造体に固定されている。そのため、1個の水平方向規制部材30により、X方向に並ぶ2本の柱10のX方向の位置ずれを規制することができる。従って、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体のX方向の位置ずれをより強固に規制することができる。
また、固定部材50が有する上部横材51と下部横材52も、X方向に並ぶ一方の柱10から他方の柱10まで延ばす。そうすることで、固定部材50を下部構造体により強固に固定することができ(固定部材50のX方向の位置ずれを規制することができ)、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体のX方向の位置ずれをより強固に規制することができる。
以上のように、水平方向規制部材30は、横方向(図5ではX方向)における既存建物1の位置ずれをより強固に規制することができる。そのため、図6に示すように、角度を90度変えて複数の水平方向規制部材30を設置する(なお厳密に角度を90度変える場合に限らず、その近傍の角度に変える場合も含む)。換言すると、ある水平方向規制部材30が有する第2上部交差材562と第3上部交差材563がX方向に対向配置されるように、その水平方向規制部材30を設置し、同じ構造である別の水平方向規制部材30が有する第2上部交差材562と第3上部交差材563がY方向に対向配置されるように、別の水平方向規制部材30を設置する。そうすることで、水平方向規制部材30を一方向に沿ってしか設置しない場合に比べて、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体の水平方向の位置ずれをより強固に規制することができる。
<S04:柱,壁の切断>
図7Aは、柱10及び壁70の切断を説明する図であり、図7Bは、切断後の壁70の位置ずれを規制する垂直方向規制部材71の説明図である。次に、施工階の柱10や壁70が受けていた既存建物1(上部構造体)の鉛直方向の荷重を仮設支持部材20に移行する。具体的には、油圧ジャッキ21のシリンダ(不図示)に作動油を送り込む。その後、施工階の柱10及び壁70を全て切断する。その結果、その切断位置を境界として既存建物1が上部構造体と下部構造体に分離される。なお、本実施例では、柱10の柱頭部分に免震装置を設置する。そのため、図7Aに示すように、施工階の仮受け補強部15の直下の位置にて、柱10を水平に(一直線)に切断する。
一方、壁70は、仮受け補強部15の直下の位置にて水平に(一直線)に切断せずに、図7Aに示すように、切断ラインの方向を一部変えて切断する。具体的に説明すると、壁70の右端から仮受け補強部15の直下の位置にて所定の距離だけ水平に延びた切断ラインL1と、その切断ラインL1から鉛直方向の下方に所定の距離だけ延びた切断ラインL2と、その切断ラインL2からX方向の左側に所定の距離だけ水平に延びた切断ラインL3と、その切断ラインL3から仮受け補強部15の直下の位置まで鉛直方向の上方に延びた切断ラインL4と、その切断ラインL4から壁70の左端まで水平に延びた切断ラインL5とにより、壁70を切断する。
つまり、施工階の壁70を切断して壁70を上部と下部に分離する際に、上部の壁701の切断面の一部を、下部の壁702の切断面よりも鉛直方向(図7では下側)に突出させる。そうすることで、上部の壁701と下部の壁702の接触面(切断面)のうち鉛直方向に延びた接触面L2,L4によって、下部の壁702に対する上部の壁701の壁面方向の位置ずれ(図7ではX方向の位置ずれ)を規制することができる。その結果、下部の壁702が属する既存建物1の下部構造体に対して、上部の壁701が属する既存建物1の上部構造体が、壁面方向(水平方向)に位置ずれしてしまうことを規制することができる。このように、壁70の切断方法を工夫するだけで、下部構造体に対する上部構造体の水平方向の位置ずれをより強固に規制することができる。
また、鉛直方向に延びた切断ラインL2,L4の長さを、油圧ジャッキ21の伸長長さ以上にするとよい。そうすることで、後述の図9に示すように、油圧ジャッキ21の伸長後も、上部の壁701と下部の壁702の鉛直方向に延びた接触面(切断面)L2,L4を当接させることができる。その結果、油圧ジャッキ21の伸長後も、下部の壁702に対する上部の壁701の壁面方向の位置ずれを規制することができる。
なお、施工階に設けられた壁のうち、耐力壁(例:鉄骨鉄筋コンクリート造の壁や、鉄筋コンクリート造の壁)の切断方法を工夫するとよい。そうすることで、下部の壁702に対する上部の壁701の位置ずれをより強固に規制することができる。また、図7Aでは、上部の壁701の切断面を下部の壁702の切断面に対して鉛直方向の下側に長方形状に突出させているが、これに限らない。例えば、免震装置を施工階の下方に設ける場合には壁70の切断ラインも下方となるため、上部の壁701の切断面を下部の壁702の切断面に対して鉛直方向の上側に突出させてもよいし、また、両側に突出させてもよい。なお、免震装置を下方に設置する場合には、施工階を二重床にし、床下に免震装置を設置するとよい。また、壁70の切断面を丸や三角形状に突出させてもよい。
また、壁70の切断方法を工夫することで、切断後の上部の壁701と下部の壁702の壁面方向の位置ずれを規制することはできるが、壁面の垂直方向(図7ではY方向)の位置ずれを規制することはできない。そこで、壁70を上部の壁701と下部の壁702に分離した後に、その壁面の垂直方向における上部の壁701と下部の壁702の変位を規制する垂直方向規制部材71(規制部材に相当)を壁70に取り付けるとよい。本実施例では、鉛直方向に延びた2本の切断ラインL2,L4にそれぞれ垂直方向規制部材71を取り付ける。
但し、壁の切断方法を工夫することで壁面方向の変位を規制する力に比べると、垂直方向規制部材71が壁面の垂直方向の変位を規制する力はやや弱い。そのため、垂直方向規制部材71の取り付けはオプションとして提供してもよい。例えば、施工階にX方向に沿う耐力壁とY方向に沿う耐力壁が存在し、その2方向に沿う耐力壁の切断方法を工夫する場合や、90度角度を変えて水平方向規制部材30を複数設置する場合には、垂直方向規制部材71を取り付けないようにしてもよい。
垂直方向規制部材71は、1対の規制プレート711と、ボルト712及びナット713(締結部材)とを有する。規制プレート711には、厚さ方向に貫通するボルト孔の列が2列設けられている。そして、図7Bに示すように、壁70を一対の規制プレート711で挟み込み、且つ、上部の壁701と下部の壁702の境界部分(切断ライン)を規制プレート711が跨ぐようにして(即ち、上部の壁701にも下部の壁702にも規制プレート711のボルト孔が位置するようにして)、規制プレート711を取り付ける。また、規制プレート711のボルト孔の位置に合わせて、上部の壁701と下部の壁702に壁面方向に貫通するボルト孔を形成しておく。そして、一方の規制プレート711側から、壁701,702と他方の規制プレート711のボルト孔にボルト712を通し、他方の規制プレート711側からボルト712の軸にナット713を螺合し締め付ける。
そうすることで、壁面の垂直方向における上部の壁701と下部の壁702の位置ずれを規制することができ、既存建物1の下部構造体に対する上部構造体の位置ずれをより強固に規制することができる。但し、垂直方向規制部材71は、下部の壁701に対する上部の壁702の鉛直方向の変位も規制してしまうため、油圧ジャッキ20により上部構造体を持ち上げる際には取り外す。
<S05:仮設支持部材の伸長>
図8は、仮設支持部材20の伸長を説明する図である。施工階の柱10と壁70を全て切断した後、壁70に取り付けられている垂直方向規制部材71を取り外し、仮設支持部材20を伸長させる。具体的には、油圧ジャッキ21を上方に伸長させて、仮受け鋼材22を上方に持ち上げる。その結果、施工前の階高(図2のH)に比べて、油圧ジャッキ21を伸長させた長さ分(d)だけ階高(H+d)が高くなり、柱10の柱頭部分に空間Aが形成される。なお、後述の図9に示すように、油圧ジャッキ21の伸長後も、切断された上部の壁701と下部の壁702の境界部に垂直方向規制部材71を取り付けるとよい。
このように、施工階の柱10の柱頭部(仮受け補強部15の直下の位置)を切断し、油圧ジャッキ21を上方に伸長させる際に、免震装置の設置に必要な空間の高さ以上の長さ(d)を伸長させるとよい。そうすることで、免震装置の設置階における有効スペースの減少を抑えることができ、これまでと同様に施工階を例えば居室として利用することができる。特に、施工前の天井パネルの位置(図2の高さh)よりも上方の位置に免震装置80が設置されるように油圧ジャッキ21を伸長させることで(後述の図10参照)、地震発生時に免震装置の揺れにより変位して危険となる部位を天井パネルの裏に隠しつつ、これまでの居住空間の高さ(床面11(1)から天井パネルまでの高さh)を確保することができる。また、仮受け補強部15も目立ち難くなり、施工階の使用者に圧迫感を与えてしまうことを防止できる。
<S06:免震装置の設置>
図9は、免震装置80の設置を説明する図である。既存建物1の上部構造体を持ち上げて柱10の柱頭部分に空間を形成した後、免震装置80を設置する。具体的には、まず、免震装置80の下部となる基礎部81を、コンクリートを打設する等して形成する。なお、油圧ジャッキ21の伸長長さに応じて、下部の基礎部81の高さを調整するとよい。次に、下部の基礎部81の上に免震装置80を設置し、下部プレート82を介して免震装置80を下部の基礎部81に固定する。次に、免震装置80の上の上部プレート83を仮受け補強部15の下面に固定し、上部プレート83の上方にコンクリートを打設する等して上部の基礎部84を形成し、免震装置80の設置が完了する。なお、本実施例では、ゴム板と鋼板を交互に積層した積層ゴムを免震装置80とするがこれに限らず、例えば、転がり支承による免震装置や滑り支承による免震装置でもよい。
<S07:撤去作業>
免震装置80の設置後、壁70から垂直方向規制部材71を取り外し、油圧ジャッキ21を収縮させる。そうして、既存建物1(上部構造体)の荷重を仮設支持部材20から免震装置80に移行する。その後、仮設支持部材20と水平方向規制部材30を撤去する。
<S08:復旧作業>
図10は、復旧作業を説明する図である。最後に、復旧作業として、例えば、階高を上げたことにより生じた壁70の空間(上部の壁701と下部の壁702との間)を埋めたり、免震装置80の設置工事のために取り外した仕上げ材等を元に戻したりする。
また、地震発生時には既存建物1の上部構造体(免震装置80よりも上方の部位)と下部構造体(免震装置80よりも下方の部位)との間で水平方向の変位が生じる。そのため、免震装置80の設置高さにおいて、壁70に水平方向に延びる免震スリット90を形成する。なお、耐火区画を構成する耐火壁にも免震スリット90が設けられるため、免震スリット90から耐火区画を超えて延焼してしまうことを防止するために、免震スリット90に耐火目地材を設けるとよい。また、免震装置80の周囲にも耐火被覆材91を設けるとよい。以上により、既存建物1の免震化工法が完了する。
<まとめ>
本実施例における既存建物1の免震化工法では、施工階(所定階)に仮設支持部材20を設置し、柱10から仮設支持部材20に既存建物1の荷重を移行する工程と、既存建物1のうち免震装置80の設置位置(柱10の切断位置)よりも上方の上部構造体と下方の下部構造体との水平方向の変位は規制するが鉛直方向の変位は許容する水平方向規制部材30を設置する工程と、施工階の柱10及び壁70を切断し、既存建物1を上部構造体と下部構造体に分離する工程と、仮設支持部材20を上方に伸長させることにより下部構造体に対する上部構造体の鉛直方向の位置を上方に移行すると共に、柱10の切断部に空間を形成する工程と、柱10の空間に免震装置80を設置する工程と、仮設支持部材20から免震装置80に既存建物1の荷重を移行した後に、仮設支持部材20と水平方向規制部材30を撤去する工程と、を実施する。そうすることで、免震装置80の設置階における有効スペースの減少を抑えつつ安全に既存建物1を免震化することができる。また、柱10を水平方向に切断すればよいため、柱10の一部分を除去する場合に比べて、柱10の切断および撤去解体を減少または省略することができる。
なお、地下階の柱10に免震装置を設置する場合、既存建物1の外周を掘削して工事する必要があるが、本実施例では免震装置80の設置位置が高くなるため、既存建物1の外周の掘削深さを浅くすることができ、施工効率を高めることができる。また、地下水位の高い地域では、掘削時の地下水対策を不要にすることができる。また、免震装置80の設置階よりも上階の階高が高くなるため、洪水時に室内浸水し難くなる。また、積雪地域では、積雪高さよりも免震装置80の設置位置を高くすることができる。よって、積雪により免震装置80の動きが規制されてしまうことを防止でき、免震装置80を適切に機能させることができる。
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、図4Aに示す部材(移動部材40)が図4Cに示す部材(固定部材50)に対して上方に移動するが、これに限らず、図4Cに示す部材が図4Aに示す部材に対して上方に移動するようにしてもよい。また、水平方向規制部材30を上記実施形態よりも簡易な構造にしてもよい。例えば、固定部材50が有する一対の第2縦材532と一対の第3縦材533と第2上部交差材562と第3上部交差材563で構成される部材を床面に固定し、移動部材40が有する左縦材43と右縦材44で構成される部材を梁下に固定するだけでもよい。また、所定方向に並ぶ2本の柱10に水平方向規制部材30を取り付けるに限らず、一方の柱10にだけ水平方向規制部材30を取り付けるようにしてもよい。また、柱10の柱頭部分に免震装置80を設置するに限らず、柱10の中間部分や根元部分に免震装置80を設置してもよい。また、免震装置80の設置に必要な高さ以上に階高を上げるに限らず、それよりも低い高さに階高を上げて柱10の一部を除去するようにしてもよい。
1 既存建物、10 柱、11(1) 床板、11(2) 床板、12a 梁、
12b 梁、13 柱の補強部、14 梁の補強部、15 仮受け補強部、
20 仮設支持部材、21 油圧ジャッキ、22 仮受け鋼材、30 水平方向規制部材、
40 移動部材、41 上部横材(基礎部)、42 下部横材、43 左縦材(移動部)、
44 右縦材(移動部)、45 左斜材、46 右斜材、47 第1中央斜材、
48 第2中央斜材、50 固定部材、51 上部横材(一対の交差部)、
52 下部横材、531 第1縦材、532 第2縦材、533 第3縦材、
534 第4縦材、55 右斜材、561 第1上部交差材、
562 第2上部交差材(一対の固定部)、563 第3上部交差材(一対の固定部)、
564 第4上部交差材、571 第1下部交差材、572 第2下部交差材、
573 第3下部交差材、574 第4下部交差材、70 壁、
701 上部の壁(上部)、702 下部の壁(下部)、
71 垂直方向規制部材(規制部材)、711 規制プレート、712 ボルト、
713 ナット、80 免震装置、81 下部の基礎部、82 下部プレート、
83 上部プレート、84 上部の基礎部、
90 免震スリット、91 耐火被覆材

Claims (8)

  1. 既存建物の所定階の柱に免震装置を設置する既存建物の免震化工法であって、
    前記所定階に仮設支持部材を設置し、前記柱から前記仮設支持部材に前記既存建物の荷重を移行する工程と、
    前記既存建物のうち前記免震装置の設置位置よりも上方の上部構造体と下方の下部構造体との水平方向の変位は規制するが鉛直方向の変位は許容する水平方向規制部材を設置する工程と、
    前記所定階の前記柱及び壁を切断し、前記既存建物を前記上部構造体と前記下部構造体に分離する工程と、
    前記仮設支持部材を上方に伸長させることにより前記下部構造体に対する前記上部構造体の鉛直方向の位置を上方に移行すると共に、前記柱の切断部に空間を形成する工程と、
    前記柱の前記空間に前記免震装置を設置する工程と、
    前記仮設支持部材から前記免震装置に前記既存建物の荷重を移行した後に、前記仮設支持部材と前記水平方向規制部材とを撤去する工程と、
    を備えることを特徴とする既存建物の免震化工法。
  2. 請求項1に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記所定階の前記壁を切断し、前記壁を上部と下部に分離する際に、
    前記上部の切断面の一部を前記下部の切断面よりも前記鉛直方向に突出させる、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
  3. 請求項2に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記壁を前記上部と前記下部に分離した後に、当該壁面の垂直方向における前記上部と前記下部の水平変位を規制する規制部材を前記壁に取り付ける、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
  4. 請求項1から請求項3の何れか1項に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記水平方向規制部材は、前記上部構造体に固定されて前記仮設支持部材の伸長により上方に移動する移動部と、前記下部構造体に固定され、且つ、所定方向に所定の間隔を空けて対向配置された一対の固定部と、を備え、
    前記仮設支持部材の伸長前も伸長後も前記一対の固定部の間に前記移動部を位置させる、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
  5. 請求項4に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記水平方向規制部材は、前記所定方向と交差する方向に所定の間隔を空けて対向配置された一対の交差部を備え、
    各前記交差部は前記一対の固定部のうちの一方から他方まで少なくとも延び、
    前記仮設支持部材の伸長前も伸長後も前記一対の交差部の間に前記移動部を位置させる、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
  6. 請求項4または請求項5に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記水平方向規制部材は、前記所定方向に並ぶ一方の柱から他方の柱まで延びる基礎部を備え、
    前記移動部は、前記基礎部に取り付けられており、前記基礎部を介して前記上部構造体に固定される、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
  7. 請求項4から請求項6の何れか1項に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記水平方向規制部材と同じ構造である別の水平方向規制部材が備える一対の固定部が前記所定方向と交差する方向に対向配置されるように、前記別の水平方向規制部材を設置する、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
  8. 請求項1から請求項7の何れか1項に記載の既存建物の免震化工法であって、
    前記所定階の前記柱の柱頭部を切断し、
    前記仮設支持部材を上方に伸長させる際に、前記免震装置の設置に必要な空間の高さ以上の長さを伸長させる、
    ことを特徴とする既存建物の免震化工法。
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