JP3638358B2 - 二酸化炭素改質化触媒及びこれを用いた改質化法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は炭化水素の二酸化炭素改質化触媒及びこれを用いた二酸化炭素の改質化法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、炭酸ガスは地球温暖化の主要原因物質であることから排出の削減、有効利用が課題とされている。このため炭酸ガスの電気的還元法、光合成法、接触水素還元法等の化学的変換方法が検討されており、一例としてメタン等の飽和炭化水素を還元剤として、炭酸ガスを工業的に有用な合成ガスである水素と一酸化炭素に変換する方法(炭化水素の二酸化炭素改質)がある。
【0003】
炭化水素の二酸化炭素改質化触媒としてはアルミナ等にニッケルを担持したニッケル系触媒、アルミナ等にルテニウム、ロジウム、白金等の貴金属を担持した貴金属系触媒が知られている。ニッケル系触媒を用いた場合には、触媒上に炭素析出を起こし易く、これにより活性低下を起こすという欠点を有している。貴金属系触媒は、炭素析出を抑制する作用を持つため、従来のニッケル系触媒と比較して、炭素の析出が少なく活性の維持も容易ではあるが、硫化水素等の硫黄分により被毒されやすい(触媒、35巻、224頁(1993))という欠点を有する。また、エチレンなどの不飽和炭化水素を用いて二酸化炭素改質する場合、触媒被毒以外の原因での熱的炭素析出が起こりやすく、たとえ、貴金属系触媒が炭素析出抑制効果を持っていても、安定かつ効率的に反応を行うことは難しい。
【0004】
このように、二酸化炭素改質の原料は、主に、メタンもしくは天然ガスのようなメタンを主成分とする飽和炭化水素が一般的である。一方、天然ガスは資源として貴重であり、これを用いることなく代替ガスを石油系炭化水素から水蒸気改質反応により製造する研究もなされている。しかしながら、特に、重質油の水蒸気改質の生成物には、メタンの他、不飽和炭化水素や硫化水素が含まれ、これらは、二酸化炭素改質反応の原料には不適であるという問題がある。これらを解決するものとしては、不飽和炭化水素又は硫化水素を含む原料と二酸化炭素を特定金属酸化物にルテニウムを担持した触媒の存在下で反応させる方法(特願平7−294383号公報)があるが、それ以外はほとんどみあたらない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、不飽和炭化水素や硫化水素を含む原料であっても、炭素析出や、硫黄被毒による触媒活性の低下を抑制しながら、より効率的に二酸化炭素の改質化を行う新規触媒及びこれを用いた二酸化炭素の改質化法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討した結果、不飽和炭化水素又は硫化水素を含む原料を用いた二酸化炭素の改質化法において、特定金属酸化物担体にロジウムを担持させた触媒が改質活性に優れ、炭素の析出や硫化水素の被毒による活性の低下が少ないことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、周期律表第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属酸化物から選ばれた1種以上の担体又はこれら金属酸化物を含有するアルミナの複合担体にロジウムを担持した二酸化炭素改質化触媒を提供するものである。
また、本願発明は、上記触媒の存在下、不飽和炭化水素又は硫化水素を含む原料を用いた二酸化炭素の改質化法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の二酸化炭素改質化触媒は、第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属酸化物から選ばれた1種以上の担体又はこれら酸化物とアルミナの複合体を担体とし、これにロジウムを担持させたものである。
【0009】
第2族金属酸化物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の酸化物が使用できるが、特にマグネシウム、カルシウム又はバリウムの酸化物を用いるのがよい。
【0010】
第3族金属酸化物としては、スカンジウム、イットリウム等の酸化物が使用できるが、特にイットリウムの酸化物を用いるのがよい。
【0011】
第4族金属酸化物としては、チタン、ジルコニウムの酸化物が使用できる。
【0012】
ランタノイド金属酸化物としては、ランタン、セリウム等の酸化物が使用できる。なお、本明細書において用いた元素の周期律表の族は、化学45巻5号(1990)314頁に記載の新IUPAC方式のものによった。
【0013】
第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属酸化物は、これを直接担体に担持させることもできるが、前駆体としての塩化物、硝酸塩等を担持させた後担体上で酸化させて酸化物に変換することもできる。
【0014】
また、アルミナは、これを直接使用することもできるが、アルミニウムイソプロポキシド等のアルコキシドを前駆体として用い、第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属酸化物から選ばれた1種以上又はその前駆体との混合物を酸化することにより担持反応系内でアルミナを生成させることもできる。
【0015】
アルミナを含有しない担体における第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属化合物の各割合は、特に制限されないが、アルミナとの複合担体における第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属酸化物の量は、担体基準で、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。かかる範囲とすることにより耐硫黄性及び触媒活性が特に優れる。
【0016】
担体の比表面積、細孔容積は、特に制限されないが、担体の比表面積は50m2/g以上、特に60m2/g以上、細孔容積は0.1〜0.8ml/g、特に0.2〜0.6ml/gが好ましい。
【0017】
担体の調製方法は、特に制限されないが、前記金属酸化物を水、メタノール、エタノール、アセトン等の溶媒に分散させ混練し、これを焼成するか;前記金属の塩化物、硝酸塩の混合液をpH調整し共沈物を焼成する方法が挙げられる。また前記金属酸化物を単に機械的に混合して焼成してもよい。
【0018】
これらの担体にロジウムを担持する方法としては、含浸等の公知の方法を用いることができる。
【0019】
ロジウムの担持量は0.5〜5重量%、特に0.5〜3重量%とするのが好ましい。これは担持量があまり少ないと活性点量が少なくなり、余り多すぎても活性点量の飽和やさらには分散性の低下も招き、技術的意味が無くなるだけでなく不経済となるからである。
【0020】
ロジウムを固定化した担体は、好ましくは200℃未満、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは100℃以下で減圧又は常圧乾燥する。
【0021】
担持ロジウム触媒は、改質反応前に還元することが必要であり、かかる還元方法としては、触媒を固定化、乾燥後還元ガスを用いて反応器内で行うのが好ましい。
【0022】
還元ガスとしては、純水素、水素・水蒸気及び一酸化炭素を用いることができ、水素ガスを用いるのが好ましい。
【0023】
還元温度は、改質反応の反応温度でよいが、該金属が凝集しないようより低温で行うことができる。
本発明の二酸化炭素改質化法は、触媒を還元後直ちに原料ガスと接触させる方法が好ましい。
【0024】
本発明の二酸化炭素の改質化法としては、上記触媒の存在下、不飽和炭化水素又は硫化水素を含む原料を用いて行うことができる。
【0025】
斯かる原料としては、不飽和炭化水素又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素の混合物、又はこれらに硫化水素が含まれているものである。ここで、使用する原料の飽和炭化水素としては、特に限定されないが炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和炭化水素が好ましく、特にメタン、エタン、プロパン又はこれらの混合物が好ましい。
また、不飽和炭化水素としては、特に限定されないが、炭素数2〜6の直鎖、分岐鎖又は環状の不飽和炭化水素が好ましく、具体的にはエチレン、プロペン、ブテン、又はこれらの混合物等が好ましい。
【0026】
原料に含まれる硫化水素の量は、特に制限されないが、原料ガス中の100ppm 以下、特に10ppm 以下が触媒被毒の観点から好ましい。
【0027】
本発明で用いる原料として特に好ましいのは、減圧残渣等の重質油を水蒸気改質して得られる生成ガス(代替天然ガス)である。当該代替天然ガスの組成は、通常、飽和炭化水素10〜30モル%、不飽和炭化水素1〜50モル%、硫化水素0〜100ppm 、水素10〜60モル%、一酸化炭素1〜20モル%であるので、本発明の原料には、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、硫化水素の他、水素、一酸化炭素が含まれていてもよい。
【0028】
二酸化炭素の供給量は、特に制限されないが、二酸化炭素のモル数/原料中の全炭化水素の炭素のモル数(CO2/C)が0.5〜5程度とすることが好ましく、特に、1.2〜2.8、さらに1.5〜2.5とするのが炭素の析出が少なく、転化率が高くなり好ましい。
【0029】
本発明の二酸化炭素改質化法における反応温度は、好ましくは500〜1200℃、より好ましくは800〜1000℃で行うことができる。圧力は、炭素析出抑制の点から10気圧以下、特に常圧程度が好ましい。また、原料ガスは、GHSV500〜20000h-1で供給するのが好ましい。
【0030】
本発明の二酸化炭素改質化法により水素及び一酸化炭素が生成するが、これらは、合成ガスや燃料ガス等に利用できる他、圧力スウィング吸着の手段により両者をそれぞれ分離して回収することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、不飽和炭化水素や硫化水素を含む原料の二酸化炭素改質を炭化析出や硫黄被毒による触媒活性の低下を抑制しながら、高収率で行うことができる。これは、第2族、第3族、第4族及びランタノイド金属酸化物成分によって原料ガス中の硫化水素等の硫黄化合物が吸着・吸収され、活性成分のロジウムが被毒されにくくなり、寿命が延長するものと思われる。また、本発明により、資源として貴重な天然ガスからだけではなく、重質油の水蒸気改質から得られるガス等、広い範囲の原料を用いて、水素及び一酸化炭素を合成することが可能となる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
【0033】
実施例及び比較例において、生成ガスはガスクロマトグラフィーにより分析した。表中、炭化水素の転化率、炭素析出量は、次式によって求めた。
【0034】
炭化水素転化率=(原料中の炭化水素のモル数−生成ガス中の炭化水素のモル数)/(原料中の炭化水素のモル数)×100
【0035】
炭素析出量=(析出した炭素のモル数)/(原料中の炭素原子のモル数)×100
【0036】
実施例1
酸化セリウム粉末100gを乳鉢で充分混合した後、約40mlの水を加えてさらに混練した。このペースト状の混合物を約2.7KPaの減圧下60〜70℃に加温して水分を除去した。これを105℃に保った乾燥器で予備乾燥した後、電気炉を用いて500℃で3時間焼成し担体(A)を得た。該担体20gを塩化ロジウム三水和物1gを37mlの水に溶解した水溶液に1時間浸漬し、残液を除去後、約2.7KPaの減圧下で40〜50℃に加温して水分を除去した。これを10〜15容量%のアンモニア水中に加えて40℃に保ち、2時間攪拌し、ロジウムを不溶・固定化した後、触媒を濾別し、純水により充分洗浄した。さらに、これを真空乾燥器中40〜45℃で8時間乾燥し、触媒(A−1)を調製した。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、温度900℃に昇温する過程で水素を常圧にて約4時間供給し還元処理を行った。その後、メタン及びエチレンをそれぞれ14モル%、水素を22モル%、一酸化炭素を7モル%、二酸化炭素43モル%含むガスを900℃、常圧にてGHSV約4000h-1で供給し、4時間反応させた。この時の転化率及び炭素析出量を表1に示す。
【0037】
実施例2
酸化セリウム粉末100gに代えて酸化マグネシウム粉末20gとアルミナ粉末80gを用いた以外は実施例1と同様の方法で担体(B)を調製し、該担体に実施例1と同様の方法でロジウムを担持して触媒(B−1)を調製した。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0038】
実施例3
酸化セリウム粉末100gに代えて酸化イットリウム粉末20gとアルミナ粉末80gを用いた以外は実施例1と同様の方法で担体(C)を調製し、該担体に実施例1と同様の方法でロジウムを担持して触媒(C−1)を調製した。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0039】
実施例4
酸化セリウム粉末100gに代えて酸化ジルコニウム100gを用いた以外は実施例1と同様の方法で担体(D)を調製し、この担体に実施例1と同様の方法でロジウムを担持して触媒(D−1)を調製した。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0040】
比較例1
実施例1の担体(A)25g、塩化ルテニウム−水和物1gを37mlの水に溶解した水溶液に1時間浸漬し、残液を除去後、約2.7KPaの減圧下で40〜50℃に加温して水分を除去した。これを10〜15容量%のアンモニア水中に加えて40℃に保ち、2時間攪拌し、ルテニウムを不溶・固定化した後、触媒を濾別し、純水により充分洗浄した。さらに、これを真空乾燥器中40〜45℃で8時間乾燥し、触媒(A−2)を得た。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0041】
比較例2
実施例2で得た担体(B)20gに比較例1と同様の方法でルテニウムを担持して触媒(B−2)を得た。
この触媒4mlをステンレス製反応器に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0042】
比較例3
実施例2の担体(B)20gを塩化白金酸六水和物1gを37mlの水に溶解した水溶液に1時間浸漬し、残液を除去後、純水で洗浄し、約2.7KPaの減圧下で40〜50℃に加温して水分を除去した。これを真空乾燥器中40〜45℃で8時間乾燥し、触媒(B−3)を得た。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0043】
比較例4
実施例2で得た担体(B)20gに含浸法でニッケルを10重量%担持して触媒(B−4)を得た。
この触媒4mlをステンレス製反応管に充填し、実施例1と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から、ロジウムを担持した触媒は、ルテニウム、白金及びニッケル触媒に比べ、転化率が高く、炭素析出も少ない。
【0046】
実施例5
実施例1で調製した触媒(A−1)4mlをステンレス製反応管に充填し、温度900℃に昇温する過程において水素を常圧にて約4時間供給し、還元処理を行った。その後、メタン及びエチレンをそれぞれ13モル%、水素を27モル%、一酸化炭素を6モル%、二酸化炭素を41モル%、硫化水素を5ppm 含むガスを900℃、常圧にてGHSV約4000h-1で供給し、二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0047】
実施例6
実施例2で調製した触媒(B−1)4mlを実施例5と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0048】
実施例7
実施例3で調製した触媒(C−1)4mlを実施例5と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0049】
実施例8
実施例4で調製した触媒(D−1)4mlを実施例5と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0050】
比較例5
比較例2で調製した触媒(B−2)4mlを実施例5と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0051】
比較例6
比較例3で調製した触媒(B−3)4mlを実施例5と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0052】
比較例7
比較例4で調製した触媒(B−4)4mlを実施例5と同様に還元処理及び二酸化炭素改質反応を行った。反応開始20時間後の転化率を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2より、ルテニウム、白金及びニッケル触媒と比較するとロジウム触媒の方が転化率が高く、硫化水素存在下でも高活性を維持していることが判る。
Claims (3)
- 周期律表第2族、第3族、第4族金属酸化物及びランタノイド金属酸化物から選ばれた1種以上の担体又はこれら金属酸化物を含有するアルミナの複合担体にロジウムを担持したことを特徴とする二酸化炭素改質化触媒。
- 請求項1記載の触媒存在下、不飽和炭化水素又は硫化水素を含む原料を用いた二酸化炭素の改質化法。
- 二酸化炭素と原料中の全炭化水素のモル比が0.5〜5である請求項2記載の改質化法。
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