JP3635764B2 - 新規なゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びその成形方法 - Google Patents
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Description
本発明は、シート熱成形後の透明性と、耐衝撃性、成形性とのバランスに優れたゴム変性スチレン系樹脂組成物、及び、これを用いたシート熱成形体、及び、シート熱成形体の成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)は、耐衝撃性、成形性に優れた樹脂であることから、家庭用品、電化製品、食品容器等の成形材料や、包装材料として広く用いられている。ゴム変性スチレン系樹脂は、耐衝撃性、成形性に優れるものの、光沢、透明性といった外観特性に劣っており、特に、包装材料としては、光沢、透明性が要求される場合が多く、これら外観特性と、耐衝撃性、成形性を同時に満足するゴム変性スチレン系樹脂の出現の要望が高まっている。
【0003】
従来のゴム変性スチレン系樹脂は、ポリスチレンからなる連続相にゴム状重合体を含む分散粒子とからなるが、両者の屈折率が異なる為、この樹脂に入射した光が、連続相と分散粒子との界面で反射され、樹脂全体としては、乳白色を呈した不透明体となる。さらに成形体とした場合、成形体表面に分散粒子が突出するため、表面が微小な凹凸を有し、表面光沢、透明性をさらに低下させてしまう。また、厚みを薄くしたシート、フィルムであっても、表面の凹凸はさらに顕著となり、半透明で光沢の低いものしか得ることができない。
【0004】
ゴム変性スチレン系樹脂の表面光沢を向上させる方法としては、分散粒子の粒径を小さくする方法が一般的であるが、耐衝撃性が低下すると言う問題があった。さらに透明性を向上させる方法としては、上記の方法に加えて、連続相をスチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルを重合してなる共重合体とし、分散粒子に含まれるゴム状重合体をスチレン−ブタジエンブロック共重合体として、両者の屈折率を事実上一致させる方法(特開昭62−169812)が提案されている。かかる方法で作成された樹脂そのものは、透明ではあるものの、耐衝撃強度が不十分であり、また、この樹脂を用いて得られる成形体は、通常のゴム変性スチレン系樹脂と同様に、成形工程にて表面が荒れ、透明性、光沢が低下するという問題があった。
【0005】
さらに、耐衝撃強度とシート熱成形体の透明性、光沢を向上させる方法として、上述の方法に加えて、テルペン系水素添加樹脂を添加する方法(特開平5−171001号公報)がある。かかる方法では、成形体の表面耐衝撃強度と透明性、光沢のバランスが向上するものの、単にテルペン系水素添加樹脂を添加するだけでは未だ十分なものでは無かった。同様に、石油樹脂、クマロン樹脂を添加する方法(特開平7−292191号公報)が開示されているが、シート熱成形用素材として提示されているにも関わらず、樹脂の透明性の評価はシート熱成形前のシート段階におけるHaze(曇価)をもっておこなわれており、多くの場合市場において要求される、シート熱成形後の成形体における透明性を満足するものでは無かった。
【0006】
また、用いるゴム状重合体を25℃における5重量%スチレン溶液粘度、結合スチレン量によって規定した技術(特開平4−180907号公報)も開示されている。しかし、この場合は、樹脂の透明性は、射出成形による成形体のHazeによって評価されており、射出成形品としての透明性は高いものの、シート熱成形用の素材として用いた場合、成形体の表面が荒れ、磨りガラス状になって透明性、光沢が低下すると言う問題を解決したものでは無かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シート熱成形後の透明性の低下が小さく、従来相反する特性である成形後の透明性と、耐衝撃性とを同時に解決した優れたゴム変性スチレン系樹脂組成物およびそのシート熱成形体を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためには、連続相と分散粒子の屈折率を一致させることに加えて、樹脂中の分散粒子が、成形工程において成形体表面に突出することを抑制することが重要であることを見いだした。この観点にたって鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、該抑制を達成するためには、ゴム変性スチレン系樹脂中に分散する粒子と連続相を構成するスチレン系樹脂の粘弾性の関係に注目し、両者の貯蔵弾性率を、成形可能な温度範囲において、特定の関係を満足させることが重要であることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、スチレン系樹脂97〜80重量%、ゴム状重合体3〜20重量%よりなり、スチレン系樹脂よりなる連続相と、ゴム状重合体を含む平均粒径が0.3〜2.0μmである分散粒子よりなるゴム変性スチレン系樹脂組成物で、連続層を構成するスチレン系樹脂の屈折率と、変性前のゴム状重合体の屈折率との差が0〜0.01の範囲にあり、且つ該分散粒子の貯蔵弾性率Gr’と該連続層をなすスチレン系樹脂の貯蔵弾性率Gm’が等しくなる温度Tcが、下記(1)式を満足することを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物である。
【0010】
Tv+25≦Tc ‥‥‥‥ (1)
Tc(℃):Gr’とGm’が等しくなる時の温度
Tv(℃):ゴム変性スチレン系樹脂組成物のVicat軟化点
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のゴム変性スチレン系樹脂は、ゴム状重合体に、連続相をなすスチレン系樹脂を構成する単量体と同種の単量体をグラフトさせ、且つ、一部を架橋した状態で、スチレン系樹脂からなる連続相に粒子状に分散させた、いわゆるグラフトタイプの耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)に準じた構造からなる。本発明において、変性前のゴム状重合体とは、グラフト前、及び、架橋前の状態のものを指す。
【0011】
本発明において、連続相をなすスチレン系樹脂と、変性前のゴム状重合体の屈折率との差が0〜0.01の範囲にあることが必要である。
本発明は、分散粒子の貯蔵弾性率Gr’と連続相をなすスチレン系樹脂の貯蔵弾性率Gm’が等しくなる温度Tcは、(1)式を満足することである。
【0012】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物からなるシート状成形体を用いて容器等を成形する際に、良好な形状の成形体を得るには、Vicat軟化点Tvよりも25℃高い温度で加熱することが好ましい。Tv+25℃に満たない温度で成形すると、連続相を形成するスチレン系樹脂の成形性が低いため、得られた成形体の表面が荒れ、透明性が低下する場合がある。一方、Tcを越える温度で成形すると、得られた成形体の表面へ分散粒子の突出が激しくなり、凹凸が顕著になって透明性が低下する。従って、透明性が高く、良好な形状を有する成形体を得るには、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用い、成形温度Tが下記(2)式を満足する成形温度で成形することが好ましい。
【0013】
Tv+25≦T≦Tc ‥‥‥‥ (2)
T(℃):成形温度
Tc(℃):Gr’とGm’が等しくなる時の温度
Tv(℃):ゴム変性スチレン系樹脂組成物のVicat軟化点
これらの要件を満足するためには、スチレン系樹脂の屈折率、Vicat軟化点を調節することが必要となるが、スチレン系単量体と、これと共重合可能な単量体成分との割合を調節することによって達成できる。また、Vicat軟化点の調節には、屈折率が実質的に等しくVicat軟化点の異なるスチレン系樹脂を混合したり、可塑剤などVicat軟化点を変化させる添加剤を混合することによっても可能である。
【0014】
本発明において、スチレン系単量体としては、スチレン、αーメチルスチレンp−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等が用いられる。単独で用いても良く、また、これらを混合して用いても良い。
また、スチレン系単量体と共重合される単量体は、スチレン系単量体単独からなる重合体の屈折率、及び/または、Vicat軟化点と、異なる屈折率、及び/または、Vicat軟化点の重合体を生成する単量体である必要がある。スチレン系単量体と共重合される単量体は、この条件を満足するものであれば特に制限されるものでは無いが、得られるスチレン系樹脂の成形性や、表面特性(耐傷性)、工業的な入手のしやすさ等を考慮すると、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が望ましい。さらに具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0015】
本発明において、連続相を形成するスチレン系樹脂に含まれるスチレン系単量体の量は、20〜80重量%が好ましく、更には30〜70重量%が好ましい。20重量%未満もしくは80重量%を越える場合は、耐熱性が実用に耐えうる範囲でゴム状重合体と屈折率を一致させるのが困難となる。さらに、20重量%未満の場合は、吸湿水分が多くなり、樹脂の物性を変化させる他、成形時に乾燥工程が必要となるなど生産性の点からも好ましくない。また、80重量%を越えると、透明性、耐衝撃強度、成形性のバランスに優れた樹脂が得られない。
【0016】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体を含む分散粒子は、その貯蔵弾性率Gr’と、連続相を構成するスチレン系樹脂の貯蔵弾性率Gm’は、式(1)の関係を満足する必要がある。
Gr’は、分散粒子を構成するゴム状重合体、及びこれにグラフトされる単量体組成、及び粒子内に内包されるスチレン系樹脂の特性によって決定される。本発明は、そのGr’の調整方法に制限をうけるものではないが、ゴム状重合体、及びこれにグラフトされる単量体組成、及び粒子内に内包されるスチレン系樹脂のいずれか、もしくは2つ以上の特性を調節することによっって調整することができる。また、分散粒子に作用してGr’を変化させる添加剤を添加することによって調整しても良い。
【0017】
本発明においては、上記の要件を満足するゴム変性スチレン系樹脂は、成形後の透明性と耐衝撃性のバランスに優れたものであるが、これに、下記化学式(1)で表されるテルペン系水素添加樹脂を1〜20重量%添加することによって、さらに透明性と耐衝撃性のレベル同時に高めることも可能である。
【0018】
【化2】
【0019】
テルペン系水素添加樹脂の添加方法として、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を重合する際の、原料溶液に加えても良いし、重合過程の任意の工程、回収工程前後の任意の工程、さらに、該樹脂組成物を押出す段階で加えても良い。
分散粒子の平均粒径は、小さいほど透明性を発揮しやすいが、耐衝撃性が劣り、反対に、粒径が大きくなると、シート熱成形後の成形体の表面の荒れが激しくなって透明性が悪化する場合がある。本発明によるゴム変性スチレン系樹脂は、透明性と耐衝撃性がバランスしたものであるが、その性能を十二分に発揮させたい場合には、0.3〜2.0μmにあることが好ましい。
【0020】
本発明に用いるゴム状重合体は、常温でゴム的性質を示しすものであれば良い。例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体類が用いられる。スチレン−ブタジエン共重合体の場合は、ブロック構造、ランダム構造のいずれでも良い。但し、変性前のゴム状重合体に含まれるスチレン成分量は、連続相の屈折率の調整のしやすさ、補強効果の発現しやすさを鑑みて、10〜45重量%であることが好ましい。
【0021】
スチレン系樹脂中のゴム状重合体の量は、3〜20重量%が好ましい。3重量%未満であると、高い透明性が得られるが補強効果が十分でなく、耐衝撃性が不足する。20重量%を越える場合は、樹脂の剛性が低下し、シート成形体としての用途には適さない。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂の製造には、塊状重合、溶液重合のいずれの方法も用いることができ、公知の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の製造方法を用いることができる。例えば、スチレン系単量体、その他の単量体、重合溶媒、重合開始剤からなる原料溶液に、ゴム状重合体を溶解せしめ、このゴム状重合体を溶解した原料溶液を撹拌機付反応器に供給し重合を行う。分散粒子の粒子径の制御は、例えば、撹拌数を変化、あるいは、重合途中に、必要に応じて単量体を添加する等が挙げられる。
【0022】
ゴム状重合体の含有量は、目標とする含有量になるように、原材料中のゴム状重合体の含有量や重合率を調整することによって達成することもできるが、高濃度のゴム状重合体を含むゴム変性スチレン系樹脂を上記の方法で作成し、別に作成した、ゴム状重合体を含まない、屈折率が等しいスチレン系樹脂と混合することによっても達成できる。但し、混合後の樹脂が本発明の構成要件を全て満たすことは当然である。
【0023】
重合溶媒としては、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることが可能である。また、重合開始剤として、例えば、スチレン系樹脂の重合に常用されている有機過酸化物を用いても良いし、これを途中添加しても良い。
重合反応器を出た重合溶液は、回収装置に導かれる。回収装置は、スチレン系樹脂の製造で常用される装置、例えば、フラッシュタンクシステム、多段ベント付き押出機等を用いることができる。
【0024】
また、本発明において、ゴム変性スチレン系樹脂製造時の、回収工程の前又は後ろの任意の段階、あるいは、ゴム変性スチレン系樹脂を押出す段階において、テルペン系水素樹脂を添加することができる。さらに、スチレン系樹脂に慣用される各種添加剤、例えば、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等を本発明の要件から逸脱しない範囲において添加しても良い。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物についての測定には、以下の方法を用いた。
(1)分散粒子の貯蔵弾性率Gr’:ゴム変性スチレン系樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解し、遠心分離器((株)日立製作所製 himac R−20(ローター:R20A2)で、20,000rpmで60分間処理した後、沈殿物と上澄み液を分離する。得られた沈殿物をメチルエチルケトンに懸濁させ、この懸濁液を上記と同様の条件で遠心分離する。得られた沈澱物を取り出し、50℃、10mmHgの減圧下で乾燥させる。乾燥後のサンプルを200℃で加圧成形し、厚さ2mm程度の成形体を作成する。この成形体を、レオメトリックス社製RMS−800を用いて、掃引様式で、温度を変えて、下記の条件で、貯蔵弾性率Gr’を測定する。
【0026】
温度範囲:250〜50℃(降温)、降温速度3℃/分、周波数:6.28rad/秒、トルク範囲:200g−cm、歪み:2.5%
(2)スチレン系樹脂の貯蔵弾性率Gm’:ゴム変性スチレン系樹脂組成物を10重量%のメタノールを含むメチルエチルケトンに溶解し、遠心分離器(株)日立製作所製himac R−20(ローター:R20A2)で、20,000rpmで60分間処理したのち、沈殿物と上澄み液を分離する。上澄み液に大量のメタノールを加え、スチレン系樹脂部を沈殿させる。この沈殿物を取り出し、50℃、10mmHgの減圧下で乾燥させる。乾燥後のサンプルを200℃で加圧成形し、厚さ2mm程度の成形体を作成する。この成形体を、上記(1)の分散粒子の貯蔵弾性率Gr’と同じ測定条件で、レオメトリックス社製RMS−800を用いて、貯蔵弾性率Gm’を測定する。但し、歪みは7%とした。
【0027】
(3)分散粒子の平均粒径:約0.5重量%の濃度となるように試料をジメチルホルムアミドと混合し、超音波を照射して連続相部分を溶解し、分散粒子を分散させる。この試料溶液をさらにジメチルホルムアミドで約30倍に希釈して測定試料液とし、Coulter社製LS−130を用いて、体積基準粒子径分布を求め、その中位径を平均粒径とした。
【0028】
(4)MFR(メルトフローレート):ISO R1133に準じて測定した。
(5)Vicat軟化点:ASTM D1525に準じて測定した。
(6)屈折率:アッベ式屈折率計を用いて測定した。
(7)ゴム状重合体含有量:重合直後のゴム変性スチレン系樹脂組成物溶液から溶媒、未反応単量体を除去をする前の溶液を採取する。230℃、10mmHgの減圧下で乾燥して、重合溶液中の固形分の重量%を求める。この値と、重合前の原料溶液に含まれるゴム状重合体の重量%から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体の重量%を求めた。
【0029】
(8)スチレン系樹脂組成:ゴム変性スチレン系樹脂組成物をメタノール10重量%を含むメチルエチルケトンに溶解し、遠心分離器((株)日立製作所製 himacR−20(ローター:R20A2)で、20,000rpmで60分間処理したもち、沈殿物と上澄み液を分離し、上澄み液に大量のメタノールを加え、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のスチレン系樹脂部を沈澱させる。この沈澱物を取り出し、50℃、10mmHgの減圧下で乾燥させる。乾燥後のサンプルを、日本分光(株)JNM−G400 FT−NMRを用いて、以下の条件下で1Hを測定する。
【0030】
パルス幅=8.4μs、積算回数=1000、サンプル濃度=2wt%、溶媒=1,1,2,2−テトラクロロエタン(d2)、サンプル管=5mmφ
6.2〜7.4ppmのピークをスチレン系単量体由来のものとし、3.4〜3.8ppmのピークをアクリル酸エステル由来のものとし、0.2〜1.1ppmのピークをメタクリル酸エステル由来のものとして、各々のピークをピーク分離して面積比を求め、この値よりスチレン系樹脂部の組成重量比を求めた。この値と、上記(5)で求めたゴム状重合体含有量から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中の各単量体成分の重量%を求めた。
【0031】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いて作成したシート、及びシートより容器状成形体の熱成形方法、及びこれらについての測定方法を以下に示す。
(1)シート:ゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いて、Tダイを備えた30mm押出機で、ダイ温度230℃のもとで、厚さ0.30mm、幅約40cmのシートを作成した。
【0032】
(2)容器状成形体:シートを、成形体表面から10cm離れたところに配した電熱ヒーター(温度220℃)で上下から加熱し、金型温度50℃、成形時間2秒の条件下で、真空成形法にて図1に示す形状の角形容器状成形体を作成した。この際、加熱時間を変化させて角形容器状成形体を作成し、この時のシートの表面温度を測定し、作成された角形容器状成形体の状態を観察した。
【0033】
(3)Haze(曇価):シート、及び、容器状成形体の底部について、ASTM D−1003に準じて測定した。
(4)耐衝撃強度(デュポン式衝撃強度):シートを25℃のもとで、ダート先端径1/8インチR、受け径3/16インチRの装置を用い、50%破壊率のエネルギーを測定した。
【0034】
「ゴム変性スチレン系樹脂A〜D」
撹拌機を備えた反応器に、原料モノマーとして、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、溶媒として、エチルベンゼンを表1に示した割合で仕込み、これにゴム状重合体として、旭化成工業株式会社のアサプレン680A(スチレン含有量30重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体 屈折率1.539)を表1に示した量を溶解して原料溶液とする。これに、日本油脂(株)製の有機過酸化物パーヘキサ3Mを0.02部投入し、120℃で2時間、135℃で2時間、145℃で2時間重合した。得られたゴム変性樹脂組成物のMFRが、2.5〜3.5g/分の範囲になる様に、原料溶液に、適当量のα−メチルスチレンダイマーを添加した。重合終了後、速やかに重合溶液を230℃の減圧下に導いて未反応単量体、溶媒等の揮発分を除去し、押出機にてペレット化した。分散粒子の粒子径は、撹拌機の撹拌数によって制御した。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物の性状を表1に示す。
【0035】
「スチレン系樹脂E〜F」
撹拌機を備えた反応器に、原料モノマーとして、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、溶媒として、エチルベンゼンを表1に示した割合で仕込み、これを原料溶液とする。これに、日本油脂(株)製の有機過酸化物パーヘキサ3Mを0.02部投入し、115℃で2時間、130℃で2時間、145℃で2時間重合した。得られたゴム変性樹脂組成物のMFRが、2.5〜3.5g/分の範囲になる様に、原料溶液に、適当量のα−メチルスチレンダイマーを添加した。重合終了後、速やかに重合溶液を230℃の減圧下に導いて未反応単量体、溶媒等の揮発分を除去し、押出機にてペレット化した。得られたスチレン系樹脂組成物の性状を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【実施例1】
ゴム変性スチレン系樹脂Aを67部、スチレン系樹脂Fを33部をペレットブレンドし、二軸押出機で造粒し、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性値を表3に示す。Tvは86℃、Tcは124℃であった。このゴム変性スチレン系樹脂を用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。さらにこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表3に示す。
【0038】
【実施例2】
ゴム変性スチレン系樹脂Bを67部、スチレン系樹脂Fを33部をペレットブレンドし、二軸押出機で造粒し、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性値を表2に示す。Tvは93℃、Tcは120℃であった。このゴム変性スチレン系樹脂を用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。さらにこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表3に示す。
【0039】
【比較例1】
ゴム変性スチレン系樹脂Cを用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。更にこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表3に示す。
【0040】
【比較例2】
ゴム変性スチレン系樹脂Dを用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。更にこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表4に示す。
【0041】
【比較例3】
ゴム変性スチレン系樹脂Aを67部、スチレン系樹脂Eを33部をペレットブレンドし、二軸押出機で造粒し、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性値を表2に示す。Tvは78℃、Tcが101℃であった。このゴム変性スチレン系樹脂を用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。さらにこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表4に示す。
【0042】
【比較例4】
ゴム変性スチレン系樹脂Bを67部、スチレン系樹脂Eを33部をペレットブレンドし、二軸押出機で造粒し、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性値を表2に示す。Tvは83℃、Tcは99℃であった。このゴム変性スチレン系樹脂を用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。さらにこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表4に示す。
【0043】
【実施例3】
ゴム変性スチレン系樹脂Bを63部、スチレン系樹脂Fを32部、テルペン系水素添加樹脂(ヤスハラケミカル(株)製クリアロンM115)を5重量部ペレットブレンドし、二軸押出機で造粒し、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性値を表2に示す。Tvが85℃、Tcが124℃であった。このゴム変性スチレン系樹脂を用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。さらにこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表3に示す。
【0044】
【実施例4】
ゴム変性スチレン系樹脂Bを60部、スチレン系樹脂Fを30部、テルペン系水素添加樹脂(ヤスハラケミカル(株)製クリアロンM115)を10重量部ペレットブレンドし、二軸押出機で造粒し、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂の物性値を表2に示す。Tvは83℃、Tcが128℃であった。このゴム変性スチレン系樹脂を用いて得たシートのHaze、耐衝撃強度を表2に示す。更にこのシートから作成した容器状成形体のHazeを表3に示す。
【0045】
なお、表3、表4中の形状の評価において、○:形状良好で表面平滑、△:形状はほぼ良好シワがある、×:金型の形状と大きく異なる。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
図2は、それぞれ実施例2(成形温度:126℃、Haze1.1%)及び比較例3(成形温度:125℃、Haze15.9%)で得られた成形体の底部を原子間力顕微鏡による観察像を3次元的にコンピューター処理した図(縦、横それぞれ50μm、高さ2μm)である。実施例で得られたHazeが低い成形体の表面は、ほぼ平滑であるのに対し、比較例で得られたHazeが高い成形体表面は、分散粒子が突出し、激しい凹凸を有している。
【0050】
表2、表3の結果から明らかな様に、本発明の要件を満足したゴム変性スチレン系樹脂組成物は、シートにした場合の透明性と耐衝撃性のバランスに優れ、且つ、シートを熱成形して得た成形体の透明性も高く、高い透明性を発揮できる成形温度範囲が広いことがわかる。
これに対し、本発明以外の範囲で得たゴム変性スチレン系樹脂は、透明性、特に、シート熱成形後の成形体の透明性が劣る。さらに、その中でも、比較的良好な透明性を発揮できる成形温度範囲が狭いことがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いた成形体及びその製法は、耐衝撃性と透明性とが同時に満足でき、特に、成形後の成形体の透明性も高く、またその成形温度範囲も広いことから、容器などの透明性と耐衝撃性が要求される分野に広範囲に使用でき、発明の効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で作成された容器状成形体の外観図。
【図2】実施例1及び比較例3で得られた成形体の底部表面の原子間力顕微鏡による観察像を3次元的にコンピューター処理した図である。
Claims (4)
- スチレン系樹脂97〜80重量%、ゴム状重合体3〜20重量%よりなり、スチレン系樹脂よりなる連続相と、ゴム状重合体を含む平均粒径が0.3〜2.0μmである分散粒子よりなるゴム変性スチレン系樹脂組成物で、連続層を構成するスチレン系樹脂の屈折率と、変性前のゴム状重合体の屈折率との差が0〜0.01の範囲にあり、且つ該分散粒子の貯蔵弾性率Gr’と該連続層をなすスチレン系樹脂の貯蔵弾性率Gm’が等しくなる温度Tcが、下記(1)式を満足することを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。
Tv+25≦Tc………(1)
Tc(℃):Gr’とGm’が等しくなる時の温度
Tv(℃):ゴム変性スチレン系樹脂組成物のVicat軟化点 - 連続層がスチレン系単量体20〜80重量%、アクリル酸(メタアクリル酸)エステル単量体20〜80重量%よりなることを特徴とする請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
- 請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用い、成形温度Tが下記(2)式を満足することを特徴とするシート熱成形体の成形方法。
Tv+25≦T≦Tc
T(℃):成形温度
Tc(℃):Gr’とGm’が等しくなる時の温度
Tv(℃):ゴム変性スチレン系樹脂組成物のVicat軟化点
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